JP2021161298A - グリース組成物 - Google Patents

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祐輔 中西
Yusuke Nakanishi
秀樹 鎌野
Hideki Kamano
浩紀 関口
Hironori Sekiguchi
孝仁 高根
Takahito Takane
行敏 藤浪
Yukitoshi Fujinami
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Abstract

【課題】潤滑性能に加えて、高い耐摩耗性を達成できるグリース組成物及びそれを用いた潤滑方法を提供することができる。【解決手段】基油(A)と、所定のナノファイバー(B)と、ポリリン酸ナトリウム(C)と、金属系清浄剤(D)と、サルコシン誘導体(E)及びリン酸エステルアミン塩(F)から選択される1種以上と、を含有するグリース組成物であり、前記ナノファイバー(B)が、セルロースナノファイバー(B1)等から選択される1種以上であり、前記ポリリン酸ナトリウム(C)の含有量が所定量であり、前記金属系清浄剤(D)由来の金属原子含有量が所定量であり、前記サルコシン誘導体(E)由来の窒素原子含有量が所定量であり、前記リン酸エステルアミン塩(F)由来のリン原子含有量が所定量である、グリース組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、グリース組成物に関する。
グリースは、潤滑油に比べて封止が容易であり、適用される機械の小型化及び軽量化が可能である。そのため、自動車、電気機器、産業機械、及び工業機械等の種々の摺動部分の潤滑のために従来から広く用いられている。
近年では、産業用ロボット等に用いられる減速機や増速機、及び風力発電設備等に用いられる減速機や増速機等においてもグリースが用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
減速機は、入力側にトルクを加えることで、出力側に減速してトルクを伝達する機構を有する。
増速機は、入力側にトルクを加えることで、出力側に増速してトルクを伝達する機構を有する。
減速機や増速機の潤滑部位に用いられるグリースには、入力側に加えられたトルク(エネルギー)の損失を抑えて無駄なく出力側に伝達する観点から、優れたエネルギー伝達効率が要求される。
ここで、減速機や増速機の潤滑部位は、トルク伝達時に高荷重がかかりやすいため、潤滑部位を構成する部材に摩耗及び焼き付きが生じやすい。当該潤滑部位を構成する部材に摩耗及び焼き付きが生じると、出力側のトルクが変動する。そのため、減速機や増速機の潤滑部位に用いられるグリースには、当該潤滑部位における摩耗及び焼き付きを極力低減し、減速機や増速機を長寿命にできる性能も求められる。
例えば、特許文献2には、基油、増ちょう剤、モリブデンジチオホスフェート、及びカルシウムスルホネート等のカルシウム塩を含むグリース組成物を減速機に用いることで、高温下で金属接触部の損傷を低減し、減速機を長寿命にできることが記載されている。
特開2017−203069号公報 特開2011−042747号公報
ところで、食用原料の混合や加工用の食品機械にも、増速機や減速機が装着されており、それらの摺動部分にはグリースが使用される場合が多い。このため、食用原料の混合や加工用の食品機械に用いられるグリースとしては、一般的なグリースに求められる潤滑性能だけでなく、基油の低粘度化に伴い耐摩耗性も要求されるようになってきた。
本発明は、潤滑性能に加えて、高い耐摩耗性も達成できるグリース組成物及びそれを用いた潤滑方法を提供することを目的とするものであり、特に、減速機や増速機を備える食品機械に用いる場合に、人体への安全性を維持しつつ高い耐摩耗性も達成できるグリース組成物及びそれを用いた潤滑方法を提供することを目的とするものである。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[13]を提供する。
[1] 基油(A)と、
太さ(d)が1〜500nmのナノファイバー(B)と、
ポリリン酸ナトリウム(C)と、
金属系清浄剤(D)と、
サルコシン誘導体(E)及びリン酸エステルアミン塩(F)から選択される1種以上と、を含有するグリース組成物であり、
前記ナノファイバー(B)が、セルロースナノファイバー(B1)及び変性セルロースナノファイバー(B2)から選択される1種以上であり、
前記ポリリン酸ナトリウム(C)の含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.5質量%〜3.0質量%であり、
前記金属系清浄剤(D)由来の金属原子含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.1質量%〜2.5質量%であり、
前記グリース組成物が前記サルコシン誘導体(E)を含有する場合、前記サルコシン誘導体(E)由来の窒素原子含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.003質量%〜0.20質量%であり、
前記グリース組成物が前記リン酸エステルアミン塩(F)を含有する場合、前記リン酸エステルアミン塩(F)由来のリン原子含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.002質量%〜0.30質量%である、グリース組成物。
[2] 前記ナノファイバー(B)の含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.1質量%〜20質量%である、上記[1]に記載のグリース組成物。
[3] 前記金属系清浄剤(D)の含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.5質量%〜15質量%である、上記[1]又は[2]に記載のグリース組成物。
[4] 前記金属系清浄剤(D)が、過塩基性カルシウムスルホネート(D1)を含む上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のグリース組成物。
[5] 前記ポリリン酸ナトリウム(C)と前記金属系清浄剤(D)との含有比率[(C)/(D)]が、質量比で、1/15〜2/1である、上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載のグリース組成物。
[6] 前記ナノファイバー(B)と前記ポリリン酸ナトリウム(C)との含有比率[(B)/(C)]が、質量比で、1/1〜5/1である、上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載のグリース組成物。
[7] 前記ナノファイバー(B)と前記金属系清浄剤(D)との含有比率[(B)/(D)]が、質量比で、1/10〜5/1である、上記[1]〜[6]のいずれか1つに記載のグリース組成物。
[8] 前記グリース組成物が前記サルコシン誘導体(E)を含有する場合、前記サルコシン誘導体(E)の含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、1.0質量%以下である、上記[1]〜[7]のいずれか1つに記載のグリース組成物。
[9] 前記グリース組成物が前記リン酸エステルアミン塩(F)を含有する場合、前記リン酸エステルアミン塩(F)の含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、1.0質量%以下である、上記[1]〜[8]のいずれか1つに記載のグリース組成物。
[10] 前記基油(A)が、40℃における動粘度が5〜150mm/sである低粘度基油(A1)と、40℃における動粘度が200〜1,000mm/sである高粘度基油(A2)とを含む混合基油である、上記[1]〜[10]のいずれか1つに記載のグリース組成物。
[11] 25℃における混和ちょう度が、220〜440である、上記[1]〜[11]のいずれか1つに記載のグリース組成物。
[12] 減速機又は増速機を備える食品機械に用いられる、上記[1]〜[11]のいずれか1つに記載のグリース組成物。
[13] 上記[1]〜[11]のいずれか1つに記載のグリース組成物により、減速機又は増速機を備える食品機械の潤滑部位を潤滑する、潤滑方法。
本発明によれば、潤滑性能に加えて、高い耐摩耗性も達成できるグリース組成物及びそれを用いた潤滑方法を提供するができ、特に、減速機や増速機を備える食品機械に用いる場合に、人体への安全性を維持しつつ高い耐摩耗性も達成できるグリース組成物及びそれを用いた潤滑方法を提供することができる。
以下、実施形態により本発明を具体的に説明する。
[本発明のグリース組成物の態様]
本発明のグリース組成物は、基油(A)と、太さ(d)が1〜500nmのナノファイバー(B)と、ポリリン酸ナトリウム(C)と金属系清浄剤(D)と、サルコシン誘導体(E)及びリン酸エステルアミン塩(F)から選択される1種以上とを含有し、前記ナノファイバー(B)が、セルロースナノファイバー(B1)及び変性セルロースナノファイバー(B2)から選択される1種以上であるグリース組成物である。
ナノファイバー(B)を含む本発明のグリース組成物は、食品機械等にも用いられることから、安全性が要求される。このため、耐摩耗性向上のためにサルコシン誘導体(E)やリン酸エステルアミン塩(F)を用いるとしても、その添加量に限界があった。
しかしながら、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、これらと人体への安全性の高いポリリン酸ナトリウム及び金属清浄剤である過塩基性カルシウムスルホネート等を組み合わせることにより、所望の耐摩耗性を達成することができることが分かった。また、サルコシン誘導体(E)やリン酸エステルアミン塩(F)を多量に配合することなく(人体への安全性を維持しつつ)、減速機や増速機を備える食品機械等において、十分な耐摩耗性も確保できるグリース組成物が得られることを見出した。
本明細書において、以降の説明では、「基油(A)」、「ナノファイバー(B)」、「ポリリン酸ナトリウム(C)」、「金属系清浄剤(D)」、「サルコシン誘導体(E)」、及び「リン酸エステルアミン塩(F)」を、それぞれ「成分(A)」、「成分(B)」、「成分(C)」、「成分(D)」、「成分(E)」、及び「成分(F)」ともいう。また、「セルロースナノファイバー(B1)」及び「変性セルロースナノファイバー(B2)」を、それぞれ「成分(B1)」及び「成分(B2)」ともいう。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)、並びに、成分(E)及び/又は成分(F)の合計含有量は、グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上である。
なお、本発明の一態様のグリース組成物において、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)、並びに、成分(E)及び/又は成分(F)の合計含有量の上限値は、成分(B)以外の添加剤の含有量との関係で調整すればよく、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95量%以下、更に好ましくは92質量%以下である。
以下、まず基油(A)及びナノファイバー(B)について、詳細に説明する。
<基油(A)>
本発明のグリース組成物に含まれる基油(A)は、特に限定されず、例えば、鉱油、合成油、動物性油、植物性油、及び流動パラフィン等が挙げられる。
基油(A)は、1種のみからなる基油であってもよく、2種以上を組み合わせた混合基油であってもよい。
(鉱油)
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、又はナフテン系原油を常圧蒸留もしくは常圧蒸留残渣油を減圧蒸留して得られる留出油;これらの留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、及び水素化精製等の精製処理、並びに溶剤脱ろう及び接触脱ろう等の精製処理から選択される一つ以上の精製処理を施した精製油(具体的には溶剤精製油、水添精製油、脱ロウ処理油、白土処理油等);等が挙げられる。
これらの鉱油の中でも、API(米国石油協会)基油カテゴリーのグループ3に分類される鉱油が好ましい。
(合成油)
合成油としては、例えば、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、エーテル系油、及び脂肪酸エステル、フィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス(Gas To Liquids WAX))を異性化することで得られるGTL基油等が挙げられる。
炭化水素系油としては、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1−デセンオリゴマー、1−デセンとエチレンコオリゴマー等のポリ−α−オレフィン(PAO)及びこれらの水素化物等が挙げられる。
芳香族系油としては、例えば、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン;モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン;などが挙げられる。
エステル系油としては、例えば、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチルアセチルリシノレート等のジエステル系油;トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル系油;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンベラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネート等のポリオールエステル系油;多価アルコールと二塩基酸及び一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステル等のコンプレックスエステル系油;などが挙げられる。
エーテル系油としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル等のポリグリコール;モノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル等のフェニルエーテル系油;等が挙げられる。
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数が8〜22の脂肪酸が好ましく、具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、アラキン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
具体的な脂肪酸エステルとしては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリンモノオレエート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノカプリレート、グリセリンジオレエート、グリセリンジステアレート、グリセリンジカプリレート等が挙げられる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ジグリセリンモノオレエート、ジグリセリンモノイソステアレート、ジグリセリンジオレエート、ジグリセリントリオレエート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリントリステアレート、ジグリセリントリイソステアレート、ジグリセリンモノカプリレート、ジグリセリンジカプリレート、ジグリセリントリカプリレート、トリグリセリンモノオレエート、トリグリセリンジオレエート、トリグリセリントリオレエート、トリグリセリンテトラオレエート、トリグリセリンモノステアレート、トリグリセリンジステアレート、トリグリセリントリステアレート、トリグリセリンテトラステアレート、トリグリセリンモノカプリレート、トリグリセリンジカプリレート、トリグリセリントリカプリレート、トリグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンモノオレイン酸モノステアリン酸エステル、ジグリセリンモノオレイン酸ジステアリン酸エステル、ジグリセリンモノカプリル酸モノステアリン酸エステル、トリグリセリンモノオレイン酸モノステアリン酸エステル、トリグリセリンジオレイン酸ジステアリン酸エステル、トリグリセリンジオレイン酸モノステアリン酸エステル、トリグリセリンモノオレイン酸モノステアリン酸モノカプリル酸エステル、ジグリセリンモノラウリレート、ジグリセリンジラウリレート、トリグリセリンモノラウリレート、トリグリセリントリラウリレート、トリグリセリントリラウリレート、ジグリセリンモノミリスチレート、ジグリセリンジミリスチレート、トリグリセリンモノミリスチレート、トリグリセリンジミリスチレート、トリグリセリントリミリスチレート、ジグリセリンモノリノレート、ジグリセリンジリノレート、トリグリセリンモノリノレート、トリグリセリンジリノレート、トリグリセリントリリノレート、デカグリセリンモノオレエート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノカプリル酸モノオレイン酸エステル等が挙げられる。
プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、プロピレングリコールモノオレエート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウリレート等が挙げられる。
(植物性油)
植物性油としては、植物に由来する油類であって、具体的には、菜種油、ピーナッツ油、コーン油、綿実油、キャノーラ油、大豆油、ヒマワリ油、パーム油、やし油、ベニバナ油、ツバキ油、オリーブ油、落花生油等が挙げられる。
(動物性油)
動物性油としては、動物に由来する油類であって、具体的には、ラード、牛脚油、サナギ油、イワシ油、ニシン油等が挙げられる。
(流動パラフィン)
流動パラフィンとしては、C(mは炭素数であり、n<2m+2である)で示される分岐構造、環構造を有する脂環式炭化水素化合物又はそれらの混合物が挙げられる。
上記の基油の中でも、ナノファイバー(B)との親和性の観点から、本発明の一態様のグリース組成物に含まれる基油(A)としては、API基油カテゴリーのグループ3に分類される鉱油、合成油、植物性油、動物性油、脂肪酸エステル、及び流動パラフィンから選ばれる1種以上を含むことが好ましく、API基油カテゴリーのグループ3に分類される鉱油及び合成油から選択される1種以上を用いることがより好ましい。合成油としては、ポリ−α−オレフィン(PAO)を用いることが好ましい。
(基油(A)の動粘度及び粘度指数)
本発明の一態様で用いる基油(A)は、40℃における動粘度(以下、「40℃動粘度」ともいう)が、好ましくは10〜400mm/s、より好ましくは15〜300mm/s、更に好ましくは20〜200mm/s、より更に好ましくは20〜130mm/sである。
基油(A)の40℃動粘度を上記範囲に調整することで、本発明の効果をより発現させやすくなる。
なお、本発明の一態様で用いる基油(A)は、低粘度基油(A1)と高粘度基油(A2)とを組み合わせて、動粘度を上記範囲に調整した混合基油としてもよい。
低粘度基油(A1)の40℃動粘度としては、好ましくは5〜150mm/s、より好ましくは7〜120mm/s、更に好ましくは10〜100mm/sである。
高粘度基油(A2)の40℃動粘度としては、好ましくは200〜1,000mm/s、より好ましくは250〜800mm/s、更に好ましくは300〜600mm/sである。
本発明の一態様で用いる基油(A)の粘度指数としては、好ましくは60以上、より好ましくは70以上、更に好ましくは80以上である。
なお、本発明において、40℃動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定又は算出した値を意味する。
(基油(A)の含有量)
本発明の一態様のグリース組成物に含まれる基油(A)の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上である。
<ナノファイバー(B)>
本発明のグリース組成物に含まれるナノファイバー(B)は、セルロースナノファイバー(B1)及び変性セルロースナノファイバー(B2)から選択される1種以上である。
グリース組成物がナノファイバー(B)を含有することで、ナノファイバー(B)がグリース組成物中に均一に分散し高次構造を形成する。ナノファイバー(B)は機械的安定性に優れるため、ナノファイバー(B)による高次構造はせん断に対して安定となる。そのため、グリース組成物のせん断安定性が向上し、グリースの漏れ防止性能が向上する。
また、ナノファイバー(B)の含有量が少量であっても、グリース組成物の混和ちょう度を適切な範囲に調整することにより、グリース組成物中に占める基油(A)の割合を高めることができる。したがって、グリース組成物の潤滑性が高まり、耐摩耗性も向上させやすい。
(セルロースナノファイバー(B1))
セルロースナノファイバーとは、植物繊維をナノレベルに解繊することにより製造される、太さが500nm以下の繊維状物を意味し、フレーク状物、パウダー状物、及び粒子状物とは区別される。
なお、セルロースナノファイバーの原料としてリグノセルロースも用いることができる。リグノセルロースは、植物の細胞壁を構成する、複合炭化水素高分子であり、主に多糖類のセルロース、ヘミセルロースと芳香族高分子であるリグニンから構成されていることが知られている。
セルロースナノファイバーを構成するセルロースは、リグノセルロース及びアセチル化リグノセルロースから選択される1種以上でもよい。また、セルロースナノファイバーは、ヘミセルロース及びリグニンから選択される1種以上を含んでいてもよい。更に、セルロースナノファイバーを構成するセルロースは、ヘミセルロース及びリグニンから選択される1種以上と化学的に結合していてもよい。
セルロースナノファイバーを構成するセルロースの重合度は、好ましくは50〜3,000、より好ましくは100〜1,500、更に好ましくは150〜1,000、より更に好ましくは200〜800である。
なお、本明細書において、セルロースの重合度は、粘度法により測定された値を意味する。
(変性セルロースナノファイバー(B2))
変性セルロースナノファイバーは、セルロースナノファイバーに対して改質処理が施されたものである。
改質処理の具体例としては、アセチル化等のエステル化、リン酸化、ウレタン化、カルバミド化、エーテル化、カルボキシメチル化、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルラジカル)酸化、及び過ヨウ素酸酸化等が挙げられる。
本発明で用いる変性セルロースナノファイバーは、これらの改質処理のうち1種のみが施されたものであってもよいし、2種以上が施されたものであってもよい。
また、セルロースナノファイバー及び変性セルロースナノファイバーから選択される1種以上と熱可塑性樹脂とを含む樹脂補強繊維が知られている。このような樹脂補強繊維も、変性セルロースナノファイバーに包含される。
セルロースナノファイバー及び変性セルロースナノファイバーから選択される1種以上と熱可塑性樹脂とは、混合又は混練されていてもよく、互いに分散されていてもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル、ポリ乳酸樹脂、ポリ乳酸とポリエステル共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、(熱可塑性)ポリウレタン、ポリアセタール、ビニルエーテル樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂(例えば、トリアセチル化セルロース、ジアセチル化セルロース)等が挙げられる。なお、(メタ)アクリルは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
前記熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(ナノファイバー(B)の「太さ」)
ナノファイバー(B)の「太さ」の定義は、一般的な繊維状物の太さに関する定義と同様である。
具体的には、ナノファイバー(B)の側面上の任意の点における接線方向に対して垂直に切断したときの切断面において、当該切断面が円又は楕円であれば、直径又は長径がナノファイバー(B)の「太さ」である。当該切断面が多角形であれば、当該多角形の外接円の直径がナノファイバー(B)の「太さ」である。
なお、増ちょう剤として、数μm以上のサイズを有するフレーク状物、パウダー状物、又は粒子状物(以下、「ミクロサイズ粒子」ともいう)を基油(A)に配合した場合、基油(A)中において、ミクロサイズ粒子が凝集し、いわゆる「ダマ」となり易い。その結果、得られるグリース組成物の表面上には、ミクロサイズ粒子の凝集物が析出し、分散状態が不均一となり易い。この場合、得られるグリース組成物の混和ちょう度を高めるためには、ミクロサイズ粒子を多量に添加することが必要になる。しかし、油膜厚さよりも大きな粒子を含むため、耐摩耗性が劣るグリース組成物となる。
一方で、本発明のグリース組成物は、太さ(d)が1〜500nmのナノファイバー(B)が基油(A)に配合されるため、基油(A)中において、当該ナノファイバー(B)が凝集することなく、ナノファイバー(B)を均一に分散させながらも、ナノファイバー(B)による高次構造が形成される。その結果、ナノファイバー(B)の含有量が少量であるにも関わらず、適度な混和ちょう度を有するグリース組成物とすることができる。
(ナノファイバー(B)の太さ(d)及びアスペクト比)
本発明において、「ナノファイバー(B)の太さ(d)」は、基油(A)中に分散しているナノファイバー(B)の太さを示し、基油(A)中に配合される前の原料としての「ナノファイバー(B)の太さ(d’)」とは区別している。
但し、基油(A)中に分散している「ナノファイバー(B)の太さ(d)」と、基油(A)中に配合される前の原料としての「ナノファイバー(B)の太さ(d’)」とは、ほとんど差がない。したがって、基油(A)中に分散している「ナノファイバー(B)の太さ(d)」と、基油(A)中に配合される前の原料としての「ナノファイバー(B)の太さ(d’)」とは、実質的には同一とみなすこともできる。
基油(A)中に分散しているナノファイバー(B)の太さ(d)は、1〜500nmであるが、基油(A)中において、ナノファイバー(B)による高次構造を形成する観点、及びナノファイバー(B)をより均一に分散させる観点から、好ましくは1〜300nm、より好ましくは1〜200nm、更に好ましくは2〜100nmである。
なお、本発明のグリース組成物に含まれるナノファイバー(B)については、少なくとも太さ(d)が上記範囲のナノファイバー(B)の分散が確認されればよく、太さ(d)が上記範囲から外れたナノファイバー(B)が分散していてもよい。
ただし、本発明の一態様のグリース組成物の基油(A)中において、ナノファイバー(B)による高次構造を形成する観点、及びナノファイバー(B)をより均一に分散させる観点から、基油(A)中に分散しているナノファイバー(B)から任意に選択した10本のナノファイバー(B)の太さ(d)の平均値は、好ましくは1〜500nm、より好ましくは1〜300nm、更に好ましくは1〜200nm、より更に好ましくは2〜100nmである。
また、上記観点から、本発明のグリース組成物中に含まれるナノファイバー(B)のうち、任意に選択した10本中、太さ(d)が上記範囲のナノファイバー(B)の本数は、好ましくは1本以上、より好ましくは5本以上、更に好ましくは7本以上存在し、選択した10本のナノファイバー(B)の太さ(d)のいずれも上記範囲のナノファイバー(B)であることがより更に好ましい。
本発明の一態様のグリース組成物において、ナノファイバー(B)のアスペクト比は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上、より更に好ましくは30以上、更になお好ましくは50以上、一層好ましくは70以上、より一層好ましくは90以上、更に一層好ましくは100以上である。
なお、本明細書において、「アスペクト比」とは、観察対象であるナノファイバー(B)の太さに対する長さの割合(長さ/太さ)を意味し、ナノファイバー(B)の「長さ」とは、ナノファイバー(B)の最も離れた2点間の距離を意味する。
また、観察対象となるナノファイバー(B)の一部分が、他のナノファイバー(B)と接触し、「長さ」の認定が難しい場合には、観察対象のナノファイバー(B)のうち、太さの測定が可能な部分のみの長さを測定し、当該部分のアスペクト比が上記範囲であればよい。
更に、本発明のグリース組成物に含まれるナノファイバー(B)のうち、任意に選択した10本のナノファイバー(B)のアスペクト比の平均値(以下、「平均アスペクト比」ともいう)は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上、より更に好ましくは30以上、更になお好ましくは50以上、一層好ましくは70以上、より一層好ましくは90以上、更に一層好ましくは100以上である。
(ナノファイバー(B)の太さ(d’)及びアスペクト比)
基油(A)に配合する前の原料としてのナノファイバー(B)の太さ(d’)としては、好ましくは1〜500nm、より好ましくは1〜300nm、更に好ましくは1〜200nm、より更に好ましくは2〜100nmである。
また、基油(A)と混合する前の原料としてのナノファイバー(B)の平均アスペクト比としては、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上、より更に好ましくは30以上、更になお好ましくは50以上、一層好ましくは70以上、より一層好ましくは90以上、更に一層好ましくは100以上である。
なお、本明細書において、基油(A)中に分散しているナノファイバー(B)の「太さ(d)」及び基油(A)中に配合される前の原料としてのナノファイバー(B)の「太さ(d’)」、並びに、これらのナノファイバー(B)のアスペクト比は、電子顕微鏡等を用いて測定した値である。
(ナノファイバー(B)の含有量)
本発明の一態様のグリース組成物は、既述のように、ナノファイバー(B)の含有量が少ない場合であっても、混和ちょう度が適切な範囲に調整される。具体的には、本発明の一態様のグリース組成物において、ナノファイバー(B)の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜18質量%、更に好ましくは0.8〜15質量%、より更に好ましくは1.0〜12質量%、更になお好ましくは1.0〜10質量%、一層好ましくは1.0〜9.0質量%である。
ナノファイバー(B)の含有量が0.1質量%以上であれば、高い滴点を有するグリース組成物を調製しやすい。
一方、ナノファイバー(B)の含有量が20質量%以下であれば、耐摩耗性に優れたグリース組成物を調製しやすい。
また、ナノファイバー(B)の含有量を上記範囲内に調整することによって、グリース組成物の混和ちょう度も適切な範囲に調整しやすい。
以下、本発明の一態様のグリース組成物の好ましい態様である、ポリリン酸ナトリウム(C)、金属系清浄剤(D)、サルコシン誘導体(E)、及びリン酸エステルアミン塩(F)から選択される1種以上を更に含有する態様について説明する。
<ポリリン酸ナトリウム(C)>
ポリリン酸ナトリウム(C)は、ポリリン酸にナトリウムイオンがイオン結合した、下記式(c−1)で示される繰り返し単位を有するものである。
Figure 2021161298

前記式(c−1)において、nは、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10であり、更に好ましくは1〜5である。
上記ポリリン酸ナトリウムの中でも、本発明の効果をより有効に発揮させる観点から、ピロリン酸ナトリウム(二リン酸塩)、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウムが好ましい。
ポリリン酸ナトリウム(C)の含有量としては、グリース組成物の全量(100質量%)基準で、0.5〜3.0質量%である。ポリリン酸ナトリウム(C)の含有量が0.5質量%に満たないと、人体への安全性を確保しつつ耐摩耗性の効果を得ることができない。ポリリン酸ナトリウム(C)の含有量が3.0質量%を超えると、後述するサルコシン誘導体(E)やリン酸エステルアミン塩(F)との量比のバランスから、逆に耐摩耗性が低下する。
ポリリン酸ナトリウム(C)の含有量は、好ましくは0.6〜2.8質量%、より好ましくは0.8〜2.6質量%である。
本発明の一態様のグリース組成物において、潤滑性能及び耐摩耗性により優れるグリース組成物とする観点から、ナノファイバー(B)とポリリン酸ナトリウム(C)との含有量比[(B)/(C)]は、質量比で、好ましくは1/1〜5/1、より好ましくは1.5/1〜4.5/1、更に好ましくは2/1〜4/1である。
<金属系清浄剤(D)>
金属系清浄剤(D)としては、アルカリ金属スルホネート、アルカリ金属フェネート、アルカリ金属サリチレート、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、及びアルカリ土類金属サリチレートから選ばれる1種以上の化合物が含まれる。これらの中でも、アルカリ金属スルホネート又はアルカリ土類金属スルホネートの少なくともいずれか一方であることが好ましい。
アルカリ土類金属スルホネートとしては、例えば、分子量300〜1,500(好ましくは400〜700)のアルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のアルカリ土類金属塩が挙げられる。具体的には、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられ、これらの中でも、カルシウム塩が好ましい。
アルカリ土類金属フェネートとしては、例えば、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応物のアルカリ土類金属塩、具体的には、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられ、これらの中でも、カルシウム塩が好ましい。
アルカリ土類金属サリシレートとしては、例えば、アルキルサリチル酸のアルカリ土類金属塩、具体的には、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられ、これらの中でも、カルシウム塩が好ましい。
アルカリ土類金属系清浄剤を構成するアルキル基としては、好ましくは炭素数4〜30、より好ましくは6〜18のアルキル基であり、これらは直鎖状でも分枝状でもよい。また、これらは、1級アルキル基、2級アルキル基、又は3級アルキル基でもよい。
また、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート及びアルカリ土類金属サリシレートには、前述のアルキル芳香族スルホン酸、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応物、アルキルサリチル酸等を、マグネシウム及びカルシウムから選ばれる1以上のアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等のアルカリ土類金属塩基と直接反応させて得られる中性アルカリ土類金属スルホネート、中性アルカリ土類金属フェネート及び中性アルカリ土類金属サリシレートが含まれる。
更に、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、及びアルカリ土類金属サリシレートには、中性アルカリ土類金属スルホネート、中性アルカリ土類金属フェネート及び中性アルカリ土類金属サリシレートと、過剰のアルカリ土類金属塩やアルカリ土類金属塩基とを水の存在下で加熱することにより得られる塩基性アルカリ土類金属スルホネート、塩基性アルカリ土類金属フェネート及び塩基性アルカリ土類金属サリシレートが含まれる。
さらにまた、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート及びアルカリ土類金属サリシレートには、炭酸ガスの存在下で中性アルカリ土類金属スルホネート、中性アルカリ土類金属フェネート及び中性アルカリ土類金属サリシレートを、アルカリ土類金属の炭酸塩又はホウ酸塩と反応させることにより得られる過塩基性アルカリ土類金属スルホネート、過塩基性アルカリ土類金属フェネート及び過塩基性アルカリ土類金属サリシレートが含まれる。
金属系清浄剤(D)としては、上記の中性塩、塩基性塩、過塩基性塩、及びこれらの混合物等を用いることができるが、本実施形態においては、過塩基性スルホネートを含むことが本発明の効果を発揮させる観点から好ましく、耐摩耗性向上の観点から、過塩基性カルシウムスルホネート(D1)を含むことがより好ましい。金属系清浄剤(D)は、通常、軽質潤滑油基油等で希釈された状態で市販されており入手可能である。金属系清浄剤(D)における金属含有量は、1.0質量%以上20質量%以下であり、好ましくは2.0質量%以上16質量%以下である。
金属系清浄剤(D)の塩基価としては、100mgKOH/g以上600mgKOH/g以下が好ましく、150mgKOH/g以上550mgKOH/g以下がより好ましく、150mgKOH/g以上500mgKOH/g以下が更に好ましい。なお、ここでいう塩基価とは、JIS K 2501「石油製品および潤滑油−中和価試験方法」の9:2003に準拠して測定される電位差滴定法(塩基価・過塩素酸法)による塩基価を意味する。
金属系清浄剤(D)の含有量としては、グリース組成物の全量(100質量%)基準で0.5〜15質量%であることが好ましい。金属清浄剤(D)の含有量がこの範囲にあれば、安全性を確保しつつ十分な耐摩耗性の効果を得ることができる。
金属清浄剤(D)の含有量としては、好ましくは0.8〜12質量%、より好ましくは1.0〜10質量%である。
本発明の一態様のグリース組成物において、潤滑性能及び耐摩耗性により優れるグリース組成物とする観点から、ナノファイバー(B)と金属系清浄剤(D)との含有量比[(B)/(D)]は、質量比で、好ましくは1/10〜5/1、より好ましくは1/5〜4.5/1、更に好ましくは1/3〜4/1である。
本発明の一態様のグリース組成物において、潤滑性能及び耐摩耗性により優れるグリース組成物とする観点から、前記ポリリン酸ナトリウム(C)と金属系清浄剤(D)との含有量比[(C)/(D)]は、質量比で、好ましくは1/15〜2/1、より好ましくは1/12〜1.5/1、更に好ましくは1/10〜1/1である。
<サルコシン誘導体(E)及びリン酸エステルアミン塩(F)から選択される1種以上>
本発明の一態様のグリース組成物は、サルコシン誘導体(E)及びリン酸エステルアミン塩(F)から選択される1種以上を含有する。
−サルコシン誘導体(E)−
サルコシン誘導体(E)としては、カルボキシル基が結合している炭素原子にメチル基を有するアミノ基が結合しているα−アミノ酸であり、N−メチルグリシン、又はN−メチルグリシン骨格を有する脂肪族アミノ酸であればよい。
サルコシン誘導体(E)としては、例えば、N−オレオイルサルコシン、N−ステアロイルサルコシン、N−ラウロイルサルコシン、N−ミリストイルサルコシン及びN−パルミトイルサルコシン等が挙げられる。
これらのサルコシン誘導体(E)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
サルコシン誘導体(E)としては、下記一般式(e−1)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2021161298

[前記一般式(e−1)中、Rは、炭素数1〜30のアルキル基、又は、炭素数1〜30のアルケニル基である。]
前記一般式(e−1)において、Rのアルキル基及びアルケニル基の炭素数は、1〜30であるが、好ましくは6〜27、より好ましくは10〜24、更に好ましくは12〜20である。当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。また、当該アルケニル基は、直鎖アルケニル基であってもよく、分岐鎖アルケニル基であってもよい。
サルコシン誘導体(E)としては、N−オレオイルサルコシンが好ましい。
サルコシン誘導体(E)を含有する場合、サルコシン誘導体(E)の含有量としては、グリース組成物の全量(100質量%)基準で、1.0質量%以下が好ましい。サルコシン誘導体(E)の含有量がこの範囲にあれば、人体への安全性を確保しつつ十分な耐摩耗性の効果を得ることができる。
なお、サルコシン誘導体(E)は、腐食性の問題があるが、金属系清浄剤(D)と組み合わせることにより、腐食性が抑制され、本発明の効果が発揮されやすくなる。
サルコシン誘導体(E)の含有量は、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。なお、サルコシン誘導体(E)を含有する場合の含有量の下限値は、0.05質量%程度である。
−リン酸エステルアミン塩(F)−
リン酸エステルアミン塩(F)は、リン酸エステルとアミンとの塩である。
当該リン酸エステルとしては、例えば、アリールホスフェート、アルキルホスフェート、アルケニルホスフェート、アルキルアリールホスフェート等の中性リン酸エステル;モノアリールアシッドホスフェート、ジアリールアシッドホスフェート、モノアルキルアシッドホスフェート、ジアルキルアシッドホスフェート、モノアルケニルアシッドホスフェート、ジアルケニルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステル;アリールハイドロゲンホスファイト、アルキルハイドロゲンホスファイト、アリールホスファイト、アルキルホスファイト、アルケニルホスファイト、アリールアルキルホスファイト等の亜リン酸エステル;モノアルキルアシッドホスファイト、ジアルキルアシッドホスファイト、モノアルケニルアシッドホスファイト、ジアルケニルアシッドホスファイト等の酸性亜リン酸エステル;等が挙げられる。
前記アミンとしては、例えば、オクチルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジブチルエタノールアミン、ドデシルジエタノールアミン等が挙げられる。
リン酸エステルアミン塩としては、モノヘキシルホスフェートアミン塩、ジヘキシルホスフェートアミン塩が好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
リン酸エステルアミン塩(F)を含有する場合、リン酸エステルアミン塩(F)の含有量としては、グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。リン酸エステルアミン塩(F)の含有量が1.0質量%以下であることにより、人体への安全性を確保しつつ十分な耐摩耗性の効果を得ることができる。
なお、リン酸エステルアミン塩(F)を含有する場合の含有量の下限値は、0.05質量%程度である。
本発明の一実施形態のグリース組成物は、以上説明した各成分を含むが、前記金属系清浄剤(D)、サルコシン誘導体(E)、及びリン酸エステルアミン塩(F)を含む場合に関しては、以下の(1)〜(3)の要件を満たすことが必要である。
(1)前記金属系清浄剤(D)由来の金属原子含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.1質量%〜2.5質量%である。
(2)前記グリース組成物が前記サルコシン誘導体(E)を含有する場合、前記サルコシン誘導体(E)由来の窒素原子含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.003質量%〜0.20質量%である。
(3)前記グリース組成物が前記リン酸エステルアミン塩(F)を含有する場合、前記リン酸エステルアミン塩(F)由来のリン原子含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.002質量%〜0.30質量%である。
上記(1)〜(3)の要件で規定する含有量の範囲を外れる場合、いずれも人体への安全性を確保しつつ十分な耐摩耗性の効果を得ることができない。
上記要件(1)に関し、金属系清浄剤(D)由来の金属原子含有量は、前記グリース組成物の全量基準で、0.2質量%〜2.3質量%が好ましく、0.3質量%〜2.0質量%がより好ましい。
上記要件(2)に関し、サルコシン誘導体(E)由来の窒素原子含有量は、前記グリース組成物の全量基準で、0.003質量%〜0.15質量%が好ましく、0.005質量%〜0.10質量%がより好ましい。
上記要件(3)に関し、リン酸エステルアミン塩(F)由来のリン原子含有量は、前記グリース組成物の全量基準で、0.004質量%〜0.25質量%が好ましく、0.01質量%〜0.20質量%がより好ましい。
なお、上記窒素原子の含有量(全量、実測値)は、JIS K 2609:1998に準拠して測定することができ、上記金属原子、リン原子の含有量は、JPI−5S−38−03に準拠して測定することができる。
<各種添加剤>
本発明の一態様のグリース組成物において、本発明の効果を損なわない範囲で、一般的なグリース組成物に配合される各種添加剤を更に含有してもよい。
当該各種添加剤としては、例えば、防錆剤、酸化防止剤、清浄分散剤、腐食防止剤、消泡剤、金属不活性剤等が挙げられる。
なお、これらの各種添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の一態様のグリース組成物において、グリース状態を維持できる範囲で、グリース化の際に用いた、後述する分散剤及び水を含有してもよい。
本発明の一態様のグリース組成物において、分散剤及び水の合計含有量としては、当該グリースの全量(100質量%)基準で、好ましくは0〜60質量%、より好ましくは0〜30質量%、更に好ましくは0〜10質量%、より更に好ましくは0〜5質量%である。
(防錆剤)
防錆剤としては、例えば、カルボン酸系防錆剤、アミン系防錆剤、カルボン酸塩系防錆剤等が挙げられる。
本発明の一態様のグリース組成物が、防錆剤を含有する場合において、防錆剤の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1〜10.0質量%、より好ましくは0.3〜8.0質量%、更に好ましくは1.0〜5.0質量%である。
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、例えば、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
本発明の一態様のグリース組成物が酸化防止剤を含有する場合において、酸化防止剤の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜7質量%、更に好ましくは0.2〜5質量%である。
(清浄分散剤、腐食防止剤、消泡剤、金属不活性剤)
清浄分散剤としては、例えば、コハク酸イミド、ボロン系コハク酸イミド等が挙げられる。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、チアゾール系化合物等が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン系化合物、フッ素化シリコーン系化合物等が挙げられる。
金属不活性剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
本発明の一態様のグリース組成物が、これらの添加剤を含有する場合において、これらの添加剤の各含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.2〜5質量%である。
[グリース組成物の特性]
(混和ちょう度)
本発明の一態様のグリース組成物の25℃における混和ちょう度としては、好ましくは220〜440、より好ましくは240〜400、更に好ましくは250〜380、より更に好ましくは270〜360である。
本発明の一態様のグリース組成物は、25℃における混和ちょう度を上記範囲に調整した場合、安全性を維持しつつ耐摩耗性に優れるグリース組成物となる。
なお、本発明の25℃における混和ちょう度は、JIS K2220 7:2013に準拠して測定できる。
(耐摩耗特性)
本発明の一態様のグリース組成物について、後述する実施例に記載の方法により測定される、シェル摩耗試験における摩耗量は、好ましくは0.60mm以下、より好ましくは0.58mm以下、更に好ましくは0.56mm以下、より更に好ましくは0.54mm以下である。
(耐荷重特性)
本発明の一態様のグリース組成物について、後述する実施例に記載の方法により測定される、シェルEP試験における融着荷重(WL)は、好ましくは1,961N超、より好ましくは2,452N以上、更に好ましくは3,089N以上である。
[グリース組成物の製造方法]
本発明のグリース組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、下記工程(1)を有し、必要に応じて工程(2)が実施される。
・工程(1):太さ(d’)が1〜500nmのナノファイバー(B)が基油(A)に分散された混合液を調製する工程
・工程(2):前記混合液から、不要な成分を除去する工程
ナノファイバー(B)は、セルロースナノファイバー(B1)及び変性セルロースナノファイバー(B2)から選択される1種以上である。
このような工程を経て得られるグリース組成物は、基油(A)中において、ナノファイバー(B)同士の凝集が抑制され、繊維形状を維持した状態で、太さ(d)が1〜500nmのナノファイバーを分散させることができる。その結果、基油中において、ナノファイバー(B)による高次構造が形成され、ナノファイバー(B)を基油(A)中に均一に分散させることができる。したがって、ナノファイバー(B)を少量添加することで、適度な混和ちょう度を有するグリース組成物が調製され、人体への安全性を維持しつつ耐摩耗性に優れるグリース組成物とすることができる。
以下、工程(1)〜(2)について説明する。
<工程(1)>
工程(S1a)は、太さ(d’)が1〜500nmのナノファイバー(B)が基油(A)に分散された混合液を調製する工程である。
工程(S1a)で用いるナノファイバー(B)及び基油(A)の詳細は、上述のとおりである。
なお、ここでいう「太さ(d’)」は、上述のとおり、基油(A)中に配合される前の原料としてのナノファイバー(B)の太さを示すものであり、「太さ(d’)」の好適範囲は、上記と同じである。
本発明の一態様において、ナノファイバー(B)は、水、有機溶媒、又は基油(A)に分散可能な粉末化セルロースナノファイバーを用いても良いし、水、有機溶媒、又は基油(A)に分散された分散液を用いても良い。或いは、基油(A)の中でせん断を与えて、ナノファイバー化しても良い。ナノファイバー(B)が水に分散された水分散液やナノファイバー(B)が有機溶媒に分散された有機溶媒分散液を用いる場合、ナノファイバー(B)を配合してなるこれらの分散液の固形分濃度としては、当該分散液の全量(100質量%)基準で、通常0.1〜70質量%、好ましくは0.1〜65質量%、より好ましくは0.1〜60質量%、更に好ましくは0.5〜55質量%、より更に好ましくは1.0〜50質量%である。
当該分散液は、水又は有機溶媒中にナノファイバー(B)を配合すると共に、前記水分散液を用いる場合には、必要に応じて分散剤等を配合し、手動もしくは撹拌機により、十分に撹拌をして、調製することができる。
分散剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、及びN−メチルピロリドン(NMP)等の非プロトン性極性溶媒;プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びヘキシレングリコール等のアルコール類;ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンソルビタン酸エステル、及びソルビタン酸エステル等の界面活性剤等が挙げられる。
前記水分散液を用いる場合、工程(S1a)で調製する混合液における、分散剤の配合量としては、混合液の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜40質量%、更に好ましくは1.0〜30質量%、より更に好ましくは1.0〜20質量%、更になお好ましくは1.0〜10質量%である。
前記水分散液や前記有機溶媒分散液を用いる場合、工程(S1a)で調製する混合液における水又は有機溶媒の配合量は、混合液の全量(100質量%)基準で、好ましくは1〜60質量%、より好ましくは3〜50質量%、更に好ましくは5〜40質量%である。
前記水分散液を用いる場合、工程(S1a)で調製する混合液中における水と分散溶媒との配合量比(水/分散溶媒)としては、質量比で、好ましくは0.01〜600、より好ましくは0.05〜400、更に好ましくは0.1〜300、より更に好ましくは0.2〜200である。
混合液を手動又は撹拌機によって十分に撹拌をすることにより、太さ(d’)が1〜500nmのナノファイバー(B)が基油(A)に分散された混合液を調製することができる。
なお、太さ(d’)が1〜500nmのナノファイバー(B)が基油(A)に分散された混合液は、ナノファイバー(B)を直接基油(A)に分散させることでも調製され得る。また、基油(A)の中でナノファイバー原料にせん断を与えてナノファイバー化することでも調製され得る。
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で調製した混合液から、不要な成分を除去する工程である。
不要な成分とは、混合液中の水、有機溶媒、及び分散剤から選択される1種以上である。
但し、これらの成分は、グリース組成物がグリースの状態を維持できる場合、必ずしも完全に除去せずともよい。
混合液中の水、有機溶媒、及び分散剤から選択される1種以上を除去する方法としては、混合液を加熱して、蒸発除去する方法が好ましい。
蒸発除去する際の条件としては、圧力が0.001〜0.1MPaの環境下で、有機溶媒及び分散剤から選択される1種以上の沸点を考慮して温度範囲を設定し、加熱することが好ましい。加熱温度としては、例えば、0〜100℃である。
工程(2)により、グリース組成物が調製される。
なお、前記成分(C)〜成分(F)、更には他の添加剤を含有するグリース組成物を調製する場合、上記各成分、更には他の添加剤を、工程(1)において混合液に混合してもよいし、工程(2)で調製されたグリース組成物に混合した後、ロールミル等を用いて均一化等の処理を行ってもよい。
<グリース組成物の用途>
本発明のグリース組成物は、人体への安全性を維持しつつ耐摩耗性に優れる。したがって、本発明の一態様のグリース組成物は、減速機や増速機を備える食品機械に好適に使用することができる。
当該減速機及び増速機としては、例えば、歯車機構からなる減速機及び歯車機構からなる増速機等が挙げられる。但し、本発明の一態様のグリース組成物の適用対象は、歯車機構からなる減速機及び歯車機構からなる増速機には限定されず、例えば、トラクションドライブ、ハーモニックドライブ(登録商標)、精密減速機、ローラードライブ等に適用することができる。
また、本発明の一態様では、本発明のグリース組成物を潤滑部位に有する、減速機又は増速機が提供される。
更に、本発明の一態様では、本発明のグリース組成物により、減速機又は増速機の潤滑部位を潤滑する、潤滑方法が提供される。
ナノファイバー(B)は、環境負荷が低く、人体への安全性に優れる。したがって、本発明のグリース組成物は、増速機又は減速機を備える食品機械等に好適に用いることができる。
また、ポリリン酸ナトリウム(C)や金属系清浄剤(D)についても環境負荷が低く、人体への安全性に優れる。したがって、これらを含む本発明の一態様のグリース組成物もまた、減速機を備える食品機械等に好適に用いることができる。
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
[原料の物性値]
原料の物性値は、以下に示す方法で求めた。
(1)ナノファイバー(B)の太さ、アスペクト比
透過性電子顕微鏡(TEM)を用いて、任意に選択した10本の親水性ナノファイバーの太さ及び長さをそれぞれ測定し、「長さ」/「太さ」から算出される値を、対象となる親水性ナノファイバーの「アスペクト比」とした。
(2)40℃動粘度、粘度指数
JIS K2283:2000に準拠して、測定及び算出した。
(3)金属原子、及びリン原子の含有量
各金属原子、及びリン原子の含有量は、JPI−5S−38−03に準拠して測定した。
(4)窒素原子の含有量
窒素原子の含有量(全量、実測値)は、JIS K 2609:1998に準拠して測定した。
[実施例1〜5、比較例1〜5]
実施例1〜5、比較例1〜5では、以下に示す原料を用いた。
<基油(A)>
・低粘度基油(A1)と高粘度基油(A2)とを組み合わせて、40℃動粘度=60mm/s、粘度指数=135の混合基油を調製した。
・低粘度基油(A1):ポリアルファオレフィン、40℃動粘度=46mm/s、粘度指数=137
・高粘度基油(A2):ポリアルファオレフィン、40℃動粘度=403mm/s、粘度指数=150
<ナノファイバー(B)分散液>
・ナノファイバー(B):株式会社スギノマシン製、製品名「BiNFi−s」(重合度600のセルロースナノファイバー(CNF)(太さ(d’)=20〜50nm(平均値35nm)、アスペクト比=100以上(平均値100以上))を含む水分散液)。以下、「セルロースナノファイバー(B1)の分散液」ともいう。
<ポリリン酸ナトリウム(C)>
・ポリリン酸ナトリウム(C)(富士フィルム和光純薬株式会社製)
<金属系清浄剤(D)>
・過塩基性カルシウムスルホネート
<サルコシン誘導体(E)>
・N−オレオイルサルコシン
<リン酸エステルアミン塩(F)>
・モノヘキシルホスフェートアミン塩及びジヘキシルホスフェートアミン塩の混合物
<実施例1>
セルロースナノファイバー(B1)の分散液40質量部(そのうちCNF量:4.0質量部)と、基油(A)92.0質量部とを混合し、25℃にて十分に撹拌して、混合液を調製した。その後、当該混合液を150℃まで加熱し、当該混合液から水を蒸発除去した。
次いで、室温(25℃)まで冷却後、ポリリン酸ナトリウム(C)1.0質量部と金属系清浄剤(D)2.5質量部とサルコシン誘導体(E)0.5質量部とを混合液に添加して十分に撹拌し、その後、3本ロールミルを用いて均質化処理を行い、表1の実施例1に示す配合のグリース組成物を調製した。
なお、実施例1において、(B)/(C)=4.0(質量比)である。
<実施例2>
セルロースナノファイバー(B1)の分散液40質量部(そのうちCNF量:4.0質量部)と、基油(A)90.5質量部とを混合し、25℃にて十分に撹拌して、混合液を調製した。その後、当該混合液を150℃まで加熱し、当該混合液から水を蒸発除去した。
次いで、室温(25℃)まで冷却後、ポリリン酸ナトリウム(C)2.5質量部と金属系清浄剤(D)2.5質量部とサルコシン誘導体(E)0.5質量部とを混合液に添加して十分に撹拌し、その後、3本ロールミルを用いて均質化処理を行い、表1の実施例1に示す配合のグリース組成物を調製した。
なお、実施例1において、(B)/(C)=1.6(質量比)である。
<実施例3>
セルロースナノファイバー(B1)の分散液40質量部(そのうちCNF量:4.0質量部)と、基油(A)84.5質量部とを混合し、25℃にて十分に撹拌して、混合液を調製した。その後、当該混合液を150℃まで加熱し、当該混合液から水を蒸発除去した。
次いで、室温(25℃)まで冷却後、ポリリン酸ナトリウム(C)1.0質量部と金属系清浄剤(D)10.0質量部とサルコシン誘導体(E)0.5質量部とを混合液に添加して十分に撹拌し、その後、3本ロールミルを用いて均質化処理を行い、表1の実施例1に示す配合のグリース組成物を調製した。
なお、実施例1において、(B)/(C)=4.0(質量比)である。
<実施例4>
セルロースナノファイバー(B1)の分散液40質量部(そのうちCNF量:4.0質量部)と、基油(A)93.5質量部とを混合し、25℃にて十分に撹拌して、混合液を調製した。その後、当該混合液を150℃まで加熱し、当該混合液から水を蒸発除去した。
次いで、室温(25℃)まで冷却後、ポリリン酸ナトリウム(C)1.0質量部と金属系清浄剤(D)1.0質量部とサルコシン誘導体(E)0.5質量部とを混合液に添加して十分に撹拌し、その後、3本ロールミルを用いて均質化処理を行い、表1の実施例1に示す配合のグリース組成物を調製した。
なお、実施例1において、(B)/(C)=4.0(質量比)である。
<実施例5>
セルロースナノファイバー(B1)の分散液40質量部(そのうちCNF量:4.0質量部)と、基油(A)92.0質量部とを混合し、25℃にて十分に撹拌して、混合液を調製した。その後、当該混合液を150℃まで加熱し、当該混合液から水を蒸発除去した。
次いで、室温(25℃)まで冷却後、ポリリン酸ナトリウム(C)1.0質量部と金属系清浄剤(D)2.5質量部とリン酸エステルアミン塩(F)0.5質量部とを混合液に添加して十分に撹拌し、その後、3本ロールミルを用いて均質化処理を行い、表1の実施例1に示す配合のグリース組成物を調製した。
なお、実施例1において、(B)/(C)=4.0(質量比)である。
<比較例1〜5>
表2に示す成分を表2に示す割合で混合し、比較例1〜5のグリース組成物を調製した。
[評価]
調製したグリース組成物について、以下の評価を行った。
<混和ちょう度の評価>
JIS K2220 7:2013に準拠して、25℃にて測定した。
<耐摩耗性試験(シェル摩耗試験)>
ASTM 2266に準拠して、四球試験機により、荷重:392N、回転数:1,200rpm、グリース温度:75℃、試験時間:60分の条件で行った。1/2インチ球3個の摩耗痕径の平均値を「シェル摩耗量」として算出した。当該値が小さいほど、耐摩耗性が良好といえる。
<耐荷重性試験(シェルEP試験)>
ASTM 2596に準拠して、四球試験機により、回転数:1,800rpm、グリース温度:18.3〜35.0℃の条件にて、融着荷重(WL)を算出した。当該値が大きいほど、耐荷重性が良好といえる。
結果を表1に示す。
Figure 2021161298
Figure 2021161298
表1及び表2から、以下のことがわかる。
実施例1〜5のグリース組成物は、適度な混和ちょう度を有し、シェル摩耗試験及びシェルEP試験による摩耗量及び融着荷重に優れることがわかる。したがって、耐摩耗性に優れるグリース組成物であることがわかる。
これに対し、比較例3及び5のグリース組成物のように、サルコシン誘導体(E)もリン酸エステルアミン塩(F)も配合していないグリース組成物は、耐摩耗性に劣ることがわかる。
また、サルコシン誘導体(E)やリン酸エステルアミン塩(F)を配合したとしても、比較例1及び4のグリース組成物のように、ポリリン酸ナトリウム(C)や金属系清浄剤(D)を配合していないグリース組成物でも、十分な耐摩耗性が得られないことがわかる。
ただし、比較例2のように、ポリリン酸ナトリウム(C)の量を過剰にした場合には、配合のバランスがくずれ、耐摩耗性が悪化することがわかる。

Claims (13)

  1. 基油(A)と、
    太さ(d)が1〜500nmのナノファイバー(B)と、
    ポリリン酸ナトリウム(C)と、
    金属系清浄剤(D)と、
    サルコシン誘導体(E)及びリン酸エステルアミン塩(F)から選択される1種以上と、を含有するグリース組成物であり、
    前記ナノファイバー(B)が、セルロースナノファイバー(B1)及び変性セルロースナノファイバー(B2)から選択される1種以上であり、
    前記ポリリン酸ナトリウム(C)の含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.5質量%〜3.0質量%であり、
    前記金属系清浄剤(D)由来の金属原子含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.1質量%〜2.5質量%であり、
    前記グリース組成物が前記サルコシン誘導体(E)を含有する場合、前記サルコシン誘導体(E)由来の窒素原子含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.003質量%〜0.20質量%であり、
    前記グリース組成物が前記リン酸エステルアミン塩(F)を含有する場合、前記リン酸エステルアミン塩(F)由来のリン原子含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.002質量%〜0.30質量%である、グリース組成物。
  2. 前記ナノファイバー(B)の含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.1質量%〜20質量%である、請求項1に記載のグリース組成物。
  3. 前記金属系清浄剤(D)の含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.5質量%〜15質量%である、請求項1又は2に記載のグリース組成物。
  4. 前記金属系清浄剤(D)が、過塩基性カルシウムスルホネート(D1)を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のグリース組成物。
  5. 前記ポリリン酸ナトリウム(C)と前記金属系清浄剤(D)との含有比率[(C)/(D)]が、質量比で、1/15〜2/1である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のグリース組成物。
  6. 前記ナノファイバー(B)と前記ポリリン酸ナトリウム(C)との含有比率[(B)/(C)]が、質量比で、1/1〜5/1である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のグリース組成物。
  7. 前記ナノファイバー(B)と前記金属系清浄剤(D)との含有比率[(B)/(D)]が、質量比で、1/10〜5/1である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のグリース組成物。
  8. 前記グリース組成物が前記サルコシン誘導体(E)を含有する場合、前記サルコシン誘導体(E)の含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、1.0質量%以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のグリース組成物。
  9. 前記グリース組成物が前記リン酸エステルアミン塩(F)を含有する場合、前記リン酸エステルアミン塩(F)の含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、1.0質量%以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のグリース組成物。
  10. 前記基油(A)が、40℃における動粘度が5〜150mm/sである低粘度基油(A1)と、40℃における動粘度が200〜1,000mm/sである高粘度基油(A2)とを含む混合基油である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のグリース組成物。
  11. 25℃における混和ちょう度が、220〜440である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のグリース組成物。
  12. 減速機又は増速機を備える食品機械に用いられる、請求項1〜11のいずれか1項に記載のグリース組成物。
  13. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のグリース組成物により、減速機又は増速機を備える食品機械の潤滑部位を潤滑する、潤滑方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2024203765A1 (ja) * 2023-03-31 2024-10-03 出光興産株式会社 グリース組成物

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