JP6843289B1 - グリース組成物の製造方法およびグリース組成物 - Google Patents

グリース組成物の製造方法およびグリース組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】金属石けんの製造工程の内、増ちょう剤生成に極めて重要で繊細なコントロールが必要な脱水工程を短時間で効率的効果的に実施でき、得られたグリースの品質が満足な性能を有するグリース製造方法の提供。【解決手段】増ちょう剤として金属石けんを用いたグリースの製造方法において、基油中で金属石けんを反応生成する際に、アルコール成分(アルコールないしはアルコールと水の混合液)を処方し、加圧けん化方式を用いて脱水することを特徴とするグリースの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、グリース組成物の製造方法およびグリース組成物に関する。
グリースの製造方法は基本的に基油の中で、増ちょう剤となる基材を反応または混合する事によってグリースたる物質が生成すものであるが、具体的には、例えば、リチウムグリースの場合は、水と水酸化リチウムとの懸濁液を、あらかじめ基油に溶解させたステアリン酸または12ヒドロキシステアリン酸とをけん化反応させ、増ちょう剤となるリチウム石けんを生成させる。このけん化反応の際には、水が生成することになるが、水酸化リチウムとの懸濁液には、水が混合されているため、同時にその水も加熱に伴いグリース中から、外部へ抜け出すことになる。水の沸点は100℃であることから、これ以上の温度に加熱することで、水はグリースの中から大気中へ放出されることになるが、処方する水の量ならびに熱の加減や攪拌速度には最大限に注意し、繊細なコントロールが必要である。
なぜならば、けん化反応後、基油と石けんと水は乳化状態にあるため、誤って急激に昇温させた場合には、共沸してしまい、反応釜から内容物がすべて溢れだし不良品となってしまう。この時、けん化反応を経て脱水する方法は、開放式と加圧式の2種類あるが、開放式の場合は、熱の加減、加圧式の場合は、温度と圧力ならびに脱水時のバルブの開度を繊細にコントロールする必要がある。
現在リチウムグリースの製造方法については、ほとんどの製品において、短時間で効率的効果的に製造可能な加圧式が用いられており、そこでは、長年の研究により、反応時の含水量、温度、圧力、バルブの開度が各製造品によって既に構築されている。
また、一例として、カルシウムグリースの場合は、水酸化カルシウム単体または水と水酸化カルシウムの懸濁液とを、あらかじめ基油に溶解させ、ステアリン酸などの高級脂肪酸とをけん化反応させ、増ちょう剤となるカルシウム石けんを生成させる。このけん化反応の際には、水が生成することになるが、カルシウムグリースの場合、構造水として数パーセントの水を含有させないと、適度な硬さのグリースを得る事が出来ないため、脱水時には、加熱の加減や攪拌速度などを十分に注意し繊細にコントロールしながら目視でも観察している。従って、カルシウムグリースの製造は開放式けん化方法にて製造しており、長年の研究により、反応時の含水量、温度、攪拌速度などの重要な工程における条件は既に構築されている。
ここで、近年、高温度の過酷な環境下におりても、グリース構造が脆弱になりにくく長寿命を有するグリースが種々開発されており、その中で、例えば、低級脂肪酸と高級脂肪酸に水酸化カルシウムをけん化反応させて成るカルシウム複合石けんグリースや、さらに、耐熱性やせん断安定性を向上させた処方として、低級脂肪酸と高級脂肪酸および芳香族モノカルボン酸または二塩基酸に水酸化カルシウムをけん化反応させて得るカルシウム複合石けんグリースを本出願人は発明している(特許文献1〜3)。
特許第5943479号 特許第6072532号 特開2019−65207号公報
従来、カルシウム複合石けんグリースの製造に関しては、複数の低級脂肪酸や高級脂肪酸を用いることから、けん反応後に系内に存在する配合水や反応にて生成する水が、抜け難く、少しでも加熱温度の調整を誤ると、即座にエマルジョンと成した内容物が共沸し、反応釜から全て溢れだし製造不可になる。このことから、カルシウム複合石けんグリースは他の石けん系グリースよりも、加熱の加減や攪拌速度のコントロールが難しく、繊細な注意が必要であり、開放型のけん化方法にて非常に長い脱水時間が必要で極めて非効率的な製造方法であった。
そこで、本発明はこのような状況に鑑みて、カルシウム複合石けんを含めた金属石けんグリースの製造工程の内、増ちょう剤生成に極めて重要で繊細なコントロールが必要な脱水工程を短時間で効率的効果的に実施でき、得られたグリースの品質が満足な性能を有するグリース製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、金属石けんグリースの製造工程において、基油中で、カルボン酸成分(例えば、低級脂肪酸と高級脂肪酸)に金属成分(例えば、水酸化カルシウム)をけん化反応させて成る金属石けん増ちょう剤(特には、低級脂肪酸と、高級脂肪酸と、芳香族モノカルボン酸および/または二塩基酸とに水酸化カルシウムをけん化反応させて得るカルシウム複合増ちょう剤)を生成させる際に、少なくともアルコールを処方して(例えば、水酸化カルシウムとアルコールとを混合した懸濁液を用いて)加圧けん化方法にて製造することで、効率的効果的に脱水が可能となり、得られたグリースの品質が満足であり、且つ、全製造に掛かる時間を、従来の開放式に比較し極めて短時間とする(例えば、従来の1/2以下の時間に短縮する)ことが可能となった。
即ち、本発明は以下のとおりである。
本発明(1)は、
増ちょう剤として金属石けんを用いたグリースの製造方法において、基油中で金属石けんを反応生成する際に、アルコールないしはアルコールと水の混合液であるアルコール成分を処方し、加圧けん化方式を用いて脱水することを特徴とする、グリース組成物の製造方法である。
本発明(2)は、
前記金属石けんを構成するカルボン酸が、置換又は非置換のC18〜22の直鎖状高級脂肪酸と、C2〜4の直鎖状飽和低級脂肪酸とを必須成分として含み、更に、置換又は非置換のベンゼン環を有する芳香族モノカルボン酸、および/または、置換又は非置換の飽和ジカルボン酸を含んでなる、発明1記載のグリース組成物の製造方法である。
本発明(3)は、
前記アルコール成分が、エタノールおよび/またはイソプロパノールを含む、発明1又は2記載のグリース組成物の製造方法である。
本発明(4)は、
前記アルコール成分におけるアルコールと水との質量比(アルコール:水)が、100:0〜10:90の範囲にある、発明1〜3のいずれか記載のグリース組成物の製造方法である。
本発明(5)は、
発明1〜4のいずれか記載のグリース組成物の製造方法により製造されたグリース組成物である。
尚、本発明において、カルシウム複合石けん等における「複合」とは、複数種のカルボン酸を用いているという意味である。
本発明に係るグリース組成物(特に、カルシウム複合グリース組成物)の製造方法によれば、脱水時間が、従来よりも極めて短時間(例えば、後述する実施例においては、比較例1の1/5以下の時間)で安全且つ容易に脱水でき、また、全製造に要する時間も極めて短時間(例えば、従来の1/2の時間)となることで、更に低コスト性を発揮できると共に、高効率で熱エネルギーの削減にも繋がることから環境に良く、また、得られたグリースは従来の開放式で製造したグリースと遜色ない高品質高性能なグリース組成物(特に、カルシウム複合グリース組成物)を提供可能である。
≪グリース組成物の製造方法≫
本実施形態に係るグリース組成物の製造方法は、増ちょう剤として金属石けんを用いたグリース組成物の製造方法において、基油中で金属石けんを反応生成する際に、アルコール成分(アルコールないしはアルコールと水の混合液)を処方し、加圧けん化方式を用いて脱水することを特徴とするグリース組成物の製造方法である。
別の表現によれば、本実施形態に係るグリース組成物の製造方法は、基油と、カルボン酸と、金属成分(例えば、水酸化カルシウム等のカルシウム成分)と、を含む原料組成物を使用して、加圧けん化方式により、基油中での金属石けん(例えば、カルシウム複合石けん)の生成と、脱水と、を行うことを含み、原料組成物が、アルコール成分を含むことを特徴とする。
<原料>
まず、本実施形態に係るグリース組成物の製造方法に用いられる原料に関して説明する。尚、本実施形態に係るグリース組成物に用いられる原料としては、本例には何ら限定されず、一般的なグリース組成物(例えば、カルシウム複合グリース組成物)にて用いられる原料も好適に使用可能である。
(基油)
基油は、特に限定されない。例えば、一般的なグリース組成物に使用される鉱油、合成油、動植物油、これらの混合油を適宜使用することができる。具体例としては、API(American Petroleum Institute;米国石油協会)基油カテゴリーでグループ1、グループ2、グループ3、グループ4等に属する基油を、単独又は混合物として使用してもよい。
グループ1基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、溶剤精製、水素化精製、脱ろう等の精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られるパラフィン系鉱油がある。グループ2基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、水素化分解、脱ろう等の精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られたパラフィン系鉱油がある。ガルフ社法等の水素化精製法により精製されたグループ2基油は、全イオウ分が10ppm未満、アロマ分が5%以下であり、本発明において好適に用いることができる。グループ3基油及びグループ2プラス基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、高度水素化精製により製造されるパラフィン系鉱油や、脱ろうプロセスにて生成されるワックスをイソパラフィンに変換・脱ろうするISODEWAXプロセスにより精製された基油や、モービルWAX異性化プロセスにより精製された基油があり、これらも本実施形態において好適に用いることができる。
合成油としては、例えば、ポリオレフィン、セバシン酸ジオクチルのような二塩基酸のジエステル、ポリオールエステル、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、エステル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールエステル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、ポリフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、含フッ素化合物(パーフルオロポリエーテル、フッ素化ポリオレフィン等)、シリコーン等が挙げられる。上記ポリオレフィンには、各種オレフィンの重合物又はこれらの水素化物が含まれる。オレフィンとしては任意のものが用いられるが、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、炭素数5以上のα−オレフィン等が挙げられる。ポリオレフィンの製造にあたっては、上記オレフィンの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特にポリ−α−オレフィン(PAO)と呼ばれているポリオレフィンが好適であり、これはグループ4基油である。
天然ガスの液体燃料化技術のフィッシャートロプッシュ法により合成されたGTL(ガストゥリキッド)により得られた油は、原油から精製された鉱油基油と比較して、硫黄分や芳香族分が極めて低く、パラフィン構成比率が極めて高いため、酸化安定性に優れ、蒸発損失も非常に小さいため、本実施形態の基油として好適に用いることができる。
(カルボン酸)
金属石けんを構成するカルボン酸は、特に限定されないが、複数のカルボン酸を含むことが好ましい。このような複数のカルボン酸が、金属成分(例えば、水酸化カルシウムなどのカルシウム成分)と反応することで、複合化された石けん(例えば、カルシウム複合石けん)が形成される。ここで、本形態に係るカルシウム複合石けん等における「複合」とは、複数のカルボン酸を用いているという意味である。
カルボン酸としては、複数種が使用されていれば特に限定されないが、好ましくは、低級脂肪酸と、高級脂肪酸と、芳香族モノカルボン酸および/またはジカルボン酸と、が用いられる。なお、本発明の効果を阻害しない範囲で、これら以外のカルボン酸を使用してもよい。以下、当該金属石けん(例えば、カルシウム複合石けん)のカルボン酸部分(アニオン部分)について詳述する。
高級脂肪酸は、好ましくはC18〜22の直鎖状高級脂肪酸である。ここで、当該直鎖状高級脂肪酸は、非置換でも一以上の置換基(例えば、ヒドロキシル基等) を有していてもよい。また、当該直鎖状高級脂肪酸は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよいが、飽和脂肪酸であることが好適である。具体例として、飽和脂肪酸としては、ステアリン酸(オクタデカン酸、C18)、ツベルクロステアリン酸(ノナデカン酸、C19)、アラキジン酸(イコサン酸、C20)、ヘンイコサン酸(C21)、ベヘニン酸(ドコサン酸、C22)、ヒドロキシステアリン酸(C18、ヒマシ硬化脂肪酸)、不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸(C18)、ガドレイン酸、エイコサジエン酸、ミード酸(C20)、エルカ酸、ドコサジエン酸(C22)等を挙げることができる。また、ひまし油などの不飽和脂肪酸を多く含む油脂に、ニッケルなどの触媒を用いて水素付加を行って得た硬化油を高級脂肪酸の代わりに用いてもよい。尚、これらは一種でも複数種を組み合わせて用いてもよい。例えば、不飽和脂肪酸を用いる場合には飽和脂肪酸と組み合わせて用いることが好適である。
芳香族モノカルボン酸は、好ましくは置換又は非置換のベンゼン環を有する芳香族モノカルボン酸である。ここで、当該芳香族モノカルボン酸は、非置換でも一以上の置換基(例えば、o−、m−又はp−アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基等)を有していてもよい。具体例として、安息香酸、メチル安息香酸{トルイル酸(p−、m−、o−)}、ジメチル安息香酸(キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸)、トリメチル安息香酸{プレーニチル酸、ジュリル酸、イソジュリル酸(α−、β−、γ−)}、4−イソプロピル安息香酸(クミン酸)、ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)、ジヒドロキシ安息香酸{ピロカテク酸、レソルシル酸(α−、β−、γ−)、ゲンチジン酸、プロトカテク酸}、トリヒドロキシ安息香酸(没食子酸)、ヒドロキシ−メチル安息香酸{クレソチン酸(p−、m−、o−)}、ジヒドロキシ−メチル安息香酸( オルセリン酸)、メトキシ安息香酸{ アニス酸(p−、m−、o−)}、ジメトキシ安息香酸(ベラトルム酸)、トリメトキシ安息香酸(アサロン酸)、ヒドロキシ−メトキシ安息香酸(バニリン酸、イソバニリン酸)、ヒドロキシ−ジメトキシ安息香酸(シリング酸)等を挙げることができる。尚、これらは一種でも複数種を組み合わせて用いてもよい。尚、本明細書における「置換基」のアルキル及びアルコキシのアルキル部分は、例えば、1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルである。
低級脂肪酸は、好ましくはC2〜4の直鎖状飽和低級脂肪酸である。具体例として、酢酸(C2)、プロピオン酸(C3)、酪酸(C4)を挙げることができる。これらの内、酢酸(C2)が特に好適である。尚、これらは一種でも複数種を組み合わせて用いてもよい。
ジカルボン酸は、好ましくは置換又は非置換の飽和ジカルボン酸である。ここで、当該飽和ジカルボン酸は、非置換でも一以上の置換基( 例えば、ヒドロキシル基等)を有していてもよい。また、当該飽和ジカルボン酸は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよいが、直鎖状であることが好ましい。当該飽和ジカルボン酸の炭素数(分岐鎖状の場合には、主鎖及び側鎖の炭素数の合計)は、特に限定されないが、4〜20であることが好適であり、4〜16であることがより好適であり、4〜10であることが特に好適である。具体例としては、シュウ酸(C2)、マロン酸(C3)、コハク酸(C4)、2−メチルコハク酸、グルタル酸等のペンタン二酸(C5)、アジピン酸等のヘキサン二酸(C6)、ピメリン酸等のヘプタン二酸(C7)、スベリン酸等のオクタン二酸(C8)、アゼライン酸等のノナン二酸(C9)、セバシン酸等のデカン二酸(C10)、ウンデカン二酸(C11)、ドデカン二酸(C11)、ブラシル酸等のトリデカン二酸(C13)、テトラデカン二酸(C14)、ペンタデカン二酸(C15)、ヘキサデカン二酸(C16)、ヘプタデカン二酸(C17)、オクタデカン二酸(C18)、ノナデカン二酸(C19)、イコサン二酸(C20)等を挙げることができる。尚、これらは一種でも複数種を組み合わせて用いてもよい。
このように、ガルボン酸は、上記直鎖状高級脂肪酸、上記芳香族モノカルボン酸及び上記低級脂肪酸のみならず更に上記ジカルボン酸を含有することが好ましい。このように、高級モノ脂肪酸、芳香族モノカルボン酸、低級モノ脂肪酸という構成成分に、更にジカルボン酸を処方することで、これら複数の石けんの繊維が、非常に複雑且つ強固に絡み合うようになる。その結果、本形態に係るグリース組成物は、せん断安定性がより優れる(更には、耐熱性に優れる)ものと推定される。なお、ジカルボン酸を処方することで、繊維同士が効果的に絡み強固になる理由は、現在のところ明確ではないが、2価のカルシウムとジカルボン酸がランダムに結合することで、ジカルボン酸カルシウムをはじめとした高分子となり、繊維が長繊維に遷移しやすく、より単体の繊維に絡み易くなり強固になるものと考えられる。
なお、直鎖状高級脂肪酸としてはステアリン酸、芳香族モノカルボン酸としては安息香酸、低級脂肪酸としては酢酸、の組み合わせが最も好適である。
金属石けんを構成する金属としては、特に限定されず、リチウム、カルシウム、アルミニウム等とすることができるが、カルシウムであることが好ましい。カルボン酸と反応させ金属石けんを形成させるために配合される金属成分は、金属がカルシウムである場合には水酸化カルシウムとする等、金属種に応じて適宜変更可能である。
金属石けんは、複合石けんであることが好ましく、カルシウム複合石けんであることが特に好ましい。
(アルコール成分)
アルコール成分は、アルコール、または、アルコールと水との混合液である。アルコールは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
アルコールは、常圧で沸点が100℃未満、95℃未満、90℃未満、または、85℃未満のものが好ましい。
このようなアルコール成分を、金属石けんを生成させるための原料組成物に含有させることで、加圧けん化方式における脱水(加圧状態にある系からの水の排出)を促進させることができる。
このようなアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、tert−ブチルアルコールなどが挙げられる。アルコールは、エタノールおよび/またはイソプロパノールを含むことが好ましい。この場合、アルコール全体に対するエタノールおよびイソプロパノールの合計の割合は、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上とすることができる。
アルコール成分は、アルコールのみ(不可避的に含有する水は許容する。)であっても、アルコールの他に水を含むものであってもよいが、アルコールと水との質量比(アルコール:水)が、100:0〜10:90の範囲、100:0:0〜20:80の範囲、100:0〜40:60の範囲、100:0〜60:40の範囲、100:0〜70:30の範囲、100:0〜80:20の範囲、または、100:0〜90:10の範囲になるとが好ましい。
(任意の成分)
本実施形態に係るカルシウム複合グリース組成物には、更に任意の酸化防止剤、防錆剤、油性剤、極圧剤、耐摩耗剤、固体潤滑剤、金属不活性剤、ポリマー、金属系清浄剤、非金属系清浄剤、消泡剤、着色剤、撥水剤等の添加剤を必要に応じて加えてもよい。例えば、酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルパラクレゾール、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、N−フェニル−α−ナフチルアミン、フェノチアジン等がある。例えば、防錆剤としては、酸化パラフィン、カルボン酸金属塩、スルフォン酸金属塩、カルボン酸エステル、スルフォン酸エステル、サリチル酸エステル、コハク酸エステル、ソルビタンエステルや各種アミン塩等がある。例えば、油性剤や極圧剤並びに耐摩耗剤としては、硫化ジアルキルジチオリン酸亜鉛、硫化ジアリルジチオリン酸亜鉛、硫化ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛、硫化ジアリルジチオカルバミン酸亜鉛、硫化ジアルキルジチオリン酸モリブテン、硫化ジアリルジチオリン酸モリブテン、硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブテン、硫化ジアリルジチオカルバミン酸モリブテン、有機モリブテン錯体、硫化オレフィン、トリフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフォロチオネート、トリクレジンフォスフェート、その他リン酸エステル類、硫化油脂類等がある。例えば、固体潤滑剤としては、二硫化モリブテン、グラファイト、窒化ホウ素、メラミンシアヌレート、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、二硫化タングステン、フッ化黒鉛等がある。例えば、金属不活性剤としては、N,N’ジサリチリデン−1,2−ジアミノプロパン、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、チアジアゾール等がある。例えば、ポリマーとしては、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリメタクリレート等が挙げられる。例えば、金属系清浄剤として、金属スルホネート、金属サリチレート、金属フィネート等を挙げることができる。例えば、非金属系清浄剤として、コハク酸イミド等を挙げることができる。例えば、消泡剤として、メチルシリコーン、ジメチルシリコーン、フルオロシリコーン、ポリアクリレート等を挙げることができる。
また、本実施形態に係るカルシウム複合グリース組成物は、任意の成分として、上記カルシウム複合石けん以外の増ちょう剤(他の増ちょう剤)を含んでいてもよい。こうした他の増ちょう剤としては、第三リン酸カルシウム、アルカリ金属石けん、アルカリ金属複合石けん、アルカリ土類金属石けん、アルカリ土類金属複合石けん、アルカリ金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、その他の金属石けん、テレフタラメート金属塩、クレイ、シリカエアロゲル等のシリカ(酸化ケイ素)、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を併せて使用することができる。また、これら以外にも、カルシウム複合グリース組成物に粘ちょう効果を付与できるものはいずれも使用することができる。
このような任意の成分は、原料組成物に添加されてもよいが、上記カルシウム複合石けんが生成されたグリース組成物に、後から添加されることが好ましい。
<各成分の配合量>
次に、本実施形態に係るグリース組成物の製造方法における、原料組成物における各成分の配合量を説明する。以下においては、好ましい形態であるカルシウム複合グリース組成物における各成分の配合量について述べる。
(3ないしは4成分系カルシウム複合グリース組成物における各成分の配合量)
本実施形態においては、前述のように、カルシウム複合石けんのカルボン酸成分として、高級脂肪酸及び低級脂肪酸と合わせて芳香族モノカルボン酸および/または、飽和ジカルボン酸を用いる(即ち、カルシウム複合石けんが、3ないしは4成分系のカルシウム複合石けんである)ことが好適である。以下に、3ないしは4成分系のカルシウム複合石けんを含有するカルシウム複合グリース組成物における各原料の配合量を例示する。
・基油
基油の配合量としては、原料組成物全体を100質量部として、好ましくは60〜99質量部であり、より好ましくは70〜97質量部であり、更に好ましくは80〜95質量部である。
・カルボン酸
カルボン酸の配合量は、グリース組成物中の増ちょう剤量が所望の範囲となるように配合量を変更可能であり、特に限定されないが、例えば、原材料組成物全体を100質量部として、1〜31質量部、より好ましくは2〜23質量部とすることができる。
高級脂肪酸は、原料組成物全体を100質量部として、例えば、0.5〜22質量部、より好ましくは1〜18質量部、更に好ましくは2〜15質量部配合することができる。
芳香族モノカルボン酸は、原料組成物全体原料組成物全体を100質量部として、例えば、0.05〜5質量部、より好ましくは0.1〜4質量部、更に好ましくは0.5〜3質量部配合することができる。
飽和ジカルボン酸は、原料組成物全体を100質量部として、例えば、0.05〜22質量部、より好ましくは1〜18質量部、更に好ましくは2〜15質量部配合することができる。
低級脂肪酸は、原料組成物全体を100質量部として、例えば、0.15〜7質量部、より好ましくは0.5〜6質量部、更に好ましくは1〜5質量部配合することができる。
・水酸化カルシウム
水酸化カルシウムは、カルボン酸の配合量に合わせて(カルボン酸が十分にけん化反応可能な量とするように)適宜配合すればよい。
・アルコール成分
アルコール成分は、アルコールの量が、原料組成物全体を100質量部として、例えば、0.1〜5.0質量部、より好ましくは0.2〜3.0質量部、更に好ましくは0.25〜2.0質量部となるように配合することができる。
また、別の観点では、アルコール成分は、アルコールの量が、基油を100質量部として、例えば、0.1〜6.0質量部、より好ましくは0.25〜3.5質量部、更に好ましくは0.3〜2.5質量部となるように配合することができる。
尚、その他の原料(他の増ちょう剤や任意の成分)の配合量に関しては、残部として適宜配合すればよい。例えば、任意の成分は、グリース組成物全体を100質量部として、任意の成分全体で約0.1〜20質量部となるように加えることができる。
上述のように、グリース組成物に含まれるカルシウム複合石けんを3成分系とすることが好適であるが、これには何ら限定されず、カルシウム複合石けんが、高級脂肪酸及び低級脂肪酸のみをカルボン酸成分とする2成分系のカルシウム複合石けんであってもよいし、カルボン酸成分が1種類であるカルシウム石けんであってもよい。その場合には、カルボン酸成分の含有量の合計が上記と同じ範囲になるようにし、また、高級脂肪酸と低級脂肪酸との含有量比が上記と同じ範囲になるようにすればよい。また、カルシウム複合石けんをその他の金属石けんとする場合には、水酸化カルシウムを別の金属成分とすればよい。
<製造工程>
次に、本実施形態に係るグリース組成物の製造方法における、各製造工程について説明する。以下においては、好ましい形態であるカルシウム複合グリース組成物の製造方法における各製造工程について述べるが、使用する原料を変更することで、カルシウム複合グリース組成物以外のグリース組成物を製造することができる。
本実施形態に係るグリース組成物の製造方法は、基油中でカルシウム複合石けんを反応生成する際に、アルコール成分を処方し、加圧けん化方式を用いて脱水する。換言すれば、アルコール成分を系に含有させ(アルコール成分を含む原料組成物を準備し)、加圧けん化を行い(加圧下にて、けん化によるカルシウム複合石けんの生成および脱水を行い)、必要に応じて均質化を行う。以下、詳細な工程について説明するが、これらはあくまで一例であり、アルコール成分を処方する(原料組成物にアルコール成分を含ませる)他は、加圧けん化方式を用いた従来のカルシウム複合石けんを含むグリース組成物の製造方法を適用することができる。
(原料組成物の準備)
グリース製造用の釜内に、原料組成物を準備する。原料組成物は、上述した各原料(基油、カルボン酸、水酸化カルシウム、アルコール成分)を適宜混合して得ることができる。混合の順序としては特に限定されないが、基油にカルボン酸を溶解(加熱溶解)させた溶解物を準備し、その溶解物と、アルコール成分と、水酸化カルシウムとを混合することが好ましい。更に、アルコール成分と、水酸化カルシウムとを予め混合させた混合物を準備し、この混合物と、上記溶解物と、を混合することが好ましい。原料組成物におけるアルコール成分がアルコールと水との混合液である場合、アルコールおよび水の混合液を準備し、その混合液をその他の原料と混合してもよいし、アルコールおよび水を、個別にその他の原料と混合してもよい。
グリース製造用の釜としては、加圧けん化方式で使用される適宜の釜とすればよい。例えば、密閉可能であり、釜内の圧力を調整するためのバルブ、釜内の圧力や温度を測定する手段、釜内の組成物を攪拌する手段等を有しているものを使用できる。
(加圧けん化)
釜を密閉し、釜を加熱することで、釜内でけん化反応が生じ、基油中にカルシウム複合石けんが生成される。加熱と共に、釜内の圧力が高まる。釜内の温度が十分に高まった状態にて、バルブを開放し、釜内の圧力によりバルブを介して釜から水分が排除される。釜内の水分が排除され釜内の圧力が十分に低くなった後に、必要に応じて再度加熱し釜内の混合を行い、冷却を行い、生成物を釜から取り出す。
バルブを開放する際の条件としては、特に限定されないが、釜内の温度が130〜180℃等となるようにすればよい。この際の釜内の圧力は、例えば、0.3〜0.6MPaとなる。
(均質化)
加圧けん化によって得られた生成物に対して、必要に応じて、攪拌混合(例えば、三本ロールミルを使用した混合)を実施し、均質化してもよい。
また任意のタイミング(例えば、均質化の時点)で、任意の成分を添加してもよい。
以上のようにして、加圧けん化方式を使用し、カルシウム複合石けんを含むグリース組成物を製造することができる。
<グリース組成物>
上記製造方法によって得られるグリース組成物について、簡単に説明する。
(金属石けんの含有量)
金属石けんは、グリース組成物全体を100質量部として、好ましくは1〜40質量部、より好ましくは3〜25質量部、更に好ましくは5〜20質量部配合することができる。
基油に対する金属石けんの質量比は、好ましくは約99:1〜60:40であり、より好ましくは約97:3〜70:30であり、更に好ましくは約95:5〜80:20である。
(滴点)
本形態のグリース組成物は、滴点が180℃以上又は超となるものが好ましく、210℃以上となるものがより好ましく、250℃以上となるものが更に好ましく、260℃超又は以上となるものが特に好ましい。グリース組成物の滴点が180℃以上(通常のカルシウムグリースと比較して50℃以上高い温度)であれば、潤滑上の問題、例えば、高温での粘性喪失やそれに伴う漏洩、焼付け等が生じる可能性を抑えられると考えられる。尚、滴点は、粘性を有するグリースが、温度を上げてゆくと増ちょう剤構造を失う温度をいう。ここで、滴点の測定は、JIS K 2220 8に従って行うことができる。
(ちょう度)
本形態のグリースは、ちょう度試験において、好ましくは000号〜6号(85〜475)のちょう度であり、より好ましくは0号〜4号(175〜385)のちょう度であり、更に好ましくは1号〜3号(220〜340)のちょう度である。尚、ちょう度はグリースの外観的硬さを表す。ここで、ちょう度の測定方法は、JIS K 2220 7に従って混和ちょう度の測定を行うことができる。尚、本発明において、単純にちょう度とした場合には、混和ちょう度を示すものとする。
(ロール安定度)
本形態のグリースは、ロール安定度試験(室温、24h)において、試験前後のグリースの混和ちょう度の差(絶対値)が100以下となるものが好ましく、80以下となるものがより好ましく、70以下となるものが更に好ましい。なお、ロール安定度試験は、供試グリース50gを、本装置にいて一定時間混練した後にグリースのちょう度(硬さ)を測定する事により、グリースのせん断安定性を評価するものであり、グリース組成物において、せん断安定性は潤滑機能やグリースの物理挙動を維持するために重要な要素である。せん断安定性が劣ると、機械の潤滑箇所からグリースが流出し易くなり、所望の潤滑を与える事ができず、寿命が短くなったり、また、グリースが飛散することで機械の周辺を汚染し、作業環境を悪化させたりする。ここで、せん断安定性の評価に用いるロール安定度試験の測定は、ASTM D1831に従って行う事ができる。
<グリース組成物の用途>
本実施形態のグリース組成物は、一般に使用される機械、軸受、歯車等に使用可能であることはもちろん、より苛酷な条件下、例えば、高温条件下で優れた性能を発揮することができる。例えば、自動車では、スターター、オルターネーター及び各種アクチュエーター部のエンジン周辺、プロペラシャフト、等速ジョイント(CVJ)、ホイールベアリング及びクラッチ等のパワートレイン、電動パワーステアリング(EPS)、制動装置、ボールジョイント、ドアヒンジ、ハンドル部、冷却ファンモーター、ブレーキのエキスパンダー等の各種部品等の潤滑に好適に用いることができる。更に、パワーショベル、ブルドーザー、クレーン車等の建設機械、鉄鋼産業、製紙工業、林業機械、農業機械、化学プラント、発電設備、乾燥炉、複写機、鉄道車両、シームレスパイプのネジジョイント等の各種高温・高荷重部位に用いることも好ましい。その他の用途としては、ハードディスク軸受用、プラスチック潤滑用、カートリッジグリース等が挙げられるが、これらの用途にも好適である。
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
≪製造方法≫
次に、本実施例及び比較例に係るグリース組成物の製造方法に関して説明する。
<原料>
本実施例及び比較例で用いた原料は以下の通りである。
(増ちょう剤原料)
・水酸化カルシウム:純度96.0%の特級試薬である。
・ステアリン酸:C18の直鎖アルキル飽和脂肪酸で純度95.0%の特級試薬である。
・酢酸:炭素数2のアルキル脂肪酸で純度99.7%の特級試薬である。
・安息香酸:純度99.5%の特級試薬である。
(脱水促進剤)
・アルコールA:純度99.0%の1級イソプロパノールである。
・アルコールB:純度99.5%の1級エタノールである。
・アルコールC:アルコールA+アルコールB(50質量%:50質量%)
(基油)
・基油:脱ろう溶剤精製により得られたパラフィン系鉱油で、グループ1に属するものであり、100℃動粘度が11.25mm/s、粘度指数が97のものである。
<製造方法>
本実施例及び比較例に係るグリース組成物の製造方法の詳細は以下の通りである。
(実施例1)
グリース製造釜内に、原料として基油Aと、増ちょう剤原料であるステアリン酸と酢酸及び安息香酸を投入し、85℃に加熱し内容物を溶解させた。次に、これらの酸とけん化反応させてカルシウム複合石けんを生成させるために、あらかじめ表内記載の分量のイソプロパノールと水酸化カルシウムを溶解分散させた溶液を釜内に入れ速やかに密閉した。密閉後攪拌しながら、160℃まで昇温させた。この時の釜内の圧力が0.5MPaまで上昇しことを確認後、ゆっくりとバルブを開放した。開放するに伴い、けん化反応にて生成した水とアルコールが開放したバルブより噴出し、徐々に内圧が低下した。バルブ開放から釜内の圧力が大気圧になるまでの時間が約20分であったことから、脱水に要した時間が20分であることになる。脱水終了後、約200℃までグリースを加熱し、充分に撹拌混合させた後、室温まで冷却させた。その後、三本ロールミルを使用して、均質な2号ちょう度のグリースを得た。尚、グリース増ちょう剤量は実施例記載のとおり18質量%であり、その増ちょう剤原料のモル分率は、水酸化カルシウム1.0に対して、ステアリン酸が0.8、酢酸が1.0、安息香酸が0.2である。
本グリースの開始から終了までの全グリース製造に要した時間は、4時間であった。
(実施例2)
グリース製造釜内に、原料として基油Aと、増ちょう剤原料であるステアリン酸と酢酸を投入し、85℃に加熱し内容物を溶解させた。次に、これらの酸とけん化反応させてカルシウム複合石けんを生成させるために、あらかじめ表内記載の分量のイソプロパノールと水酸化カルシウムを溶解分散させた溶液を釜内に入れ速やかに密閉した。密閉後攪拌しながら、160℃まで昇温させた。この時の釜内の圧力が0.5MPaまで上昇しことを確認後、ゆっくりとバルブを開放した。開放するに伴い、けん化反応にて生成した水とアルコールが開放したバルブより噴出し、徐々に内圧が低下した。バルブ開放から釜内の圧力が大気圧になるまでの時間が約20分であったことから、脱水に要した時間が20分であることになる。脱水終了後、約200℃までグリースを加熱し、充分に撹拌混合させた後、室温まで冷却させた。その後、三本ロールミルを使用して、均質な2号ちょう度のグリースを得た。尚、グリース増ちょう剤量は実施例記載のとおり18質量%であり、その増ちょう剤原料のモル分率は、水酸化カルシウム1.0に対して、ステアリン酸が1.0、酢酸が1.0である。
本グリースの開始から終了までの全グリース製造に要した時間は、4時間であった。
(実施例3)
カルシウム複合石けんをけん化反応させる際に、水酸化カルシウムとの混合溶媒としてイソプロパノールと水を用いた以外は、実施例1記載の製造方法ならびに増ちょう剤原料の種類およびモル分率は同じである。
また、イソプロパノールと水の分量は表内記載のとおりであり、脱水に要した時間は20分で、得られたグリースは均質な2号ちょう度であった。
本グリースの開始から終了までの全グリース製造に要した時間は、4時間であった。
(実施例4)
カルシウム複合石けんをけん化反応させる際に、水酸化カルシウムとの混合溶媒としてエタノールと水を用いた以外は、実施例1記載の製造方法ならびに増ちょう剤原料の種類およびモル分率は同じである。
また、エタノールと水の分量は表内記載のとおりであり、脱水に要した時間は20分で、得られたグリースは均質な2号ちょう度であった。
本グリースの開始から終了までの全グリース製造に要した時間は、4時間であった。
(実施例5)
実施例4記載の混合溶媒のエタノールと水の分量を表内記載のとおりとした以外は、実施例4に準拠し製造したものである。尚、脱水に要した時間は20分で、得られたグリースは均質な2号ちょう度であった。
本グリースの開始から終了までの全グリース製造に要した時間は、4時間であった。
(実施例6)
カルシウム複合石けんをけん化反応させる際に、水酸化カルシウムとの混合溶媒としてエタノールと水を用いた以外は、実施例2記載の製造方法ならびに増ちょう剤原料の種類およびモル分率は同じである。
また、エタノールと水の分量は表内記載のとおりであり、脱水に要した時間は20分で、得られたグリースは均質な2号ちょう度であった。
本グリースの開始から終了までの全グリース製造に要した時間は、4時間であった。
(実施例7)
カルシウム複合石けんをけん化反応させる際に、水酸化カルシウムとの混合溶媒としてイソプロパノールとエタノールおよび水を用いた以外は、実施例1記載の製造方法ならびに増ちょう剤原料の種類およびモル分率は同じである。
また、エタノールと水の分量は表内記載のとおりであり、脱水に要した時間は20分で、得られたグリースは均質な2号ちょう度であった。
本グリースの開始から終了までの全グリース製造に要した時間は、4時間であった。
(実施例8)
カルシウム複合石けんをけん化反応させる際に、水酸化カルシウムとの混合溶媒としてイソプロパノールとエタノールおよび水を用いた以外は、実施例2記載の製造方法ならびに増ちょう剤原料の種類およびモル分率は同じである。
また、エタノールと水の分量は表内記載のとおりであり、脱水に要した時間は20分で、得られたグリースは均質な2号ちょう度であった。
本グリースの開始から終了までの全グリース製造に要した時間は、4時間であった。
(実施例9)
カルシウム複合石けんをけん化反応させる際に、水酸化カルシウムとの混合溶媒としてイソプロパノールと水を用いた以外は、実施例1記載の製造方法ならびに増ちょう剤原料の種類およびモル分率は同じである。
また、ソプロピルアルコールと水の分量は表内記載のとおりであり、脱水に要した時間は40分でやや長いが、得られたグリースは均質な2号ちょう度であった。
本グリースの開始から終了までの全グリース製造に要した時間は、5時間であった。
(比較例1)
グリース製造釜内に、原料として基油Aと、増ちょう剤原料であるステアリン酸と酢酸及び安息香酸を投入し、85℃に加熱し内容物を溶解させた。次に、これらの酸とけん化反応させてカルシウム複合石けんを生成させるために、あらかじめ表内記載の分量の水と水酸化カルシウムを溶解分散させた溶液を釜内に投入した。投入後、系内では徐々にけん化反応が進み、乳化したゲル状の物質に変化すると共に、水蒸気が徐々に系内より放出される。この時、水分を系内より放出(脱水)させる際には、適度な加熱をする必要があるが、加熱を強め過ぎると、水分の気化が活発になるため内容物の体積が増加し、釜内(開放釜)より溢れ出す事態になるため、慎重に脱水を行った。水と水酸化カルシウムの混合溶液投入から、内容物の体積膨張がおさまり、系内より水蒸気の放出が確認できなくなるまでの時間が約200であったことから、脱水に要した時間が200分であることになる。脱水終了後、約200℃までグリースを加熱し、充分に撹拌混合させた後、室温まで冷却させた。その後、三本ロールミルを使用して、均質な2号ちょう度のグリースを得たが、開始から終了までの全グリース製造に要した時間は、8時間であった。
(比較例2)
グリース製造釜内に、原料として基油Aと、増ちょう剤原料であるステアリン酸と酢酸及び安息香酸を投入し、85℃に加熱し内容物を溶解させた。次に、これらの酸とけん化反応させてカルシウム複合石けんを生成させるために、あらかじめ表内記載の分量の水と水酸化カルシウムを溶解分散させた溶液を釜内に入れ速やかに密閉した。密閉後攪拌しながら、160℃まで昇温させた。この時の釜内の圧力が0.5MPaまで上昇しことを確認後、ゆっくりとバルブを開放した。しかしながら、開放するに伴い、内容物がバルブより止め処なく噴出する状態になったため製造を中止した。
≪グリース組成物の評価≫
以上の原料の構成及び製造方法により調製した実施例1〜9及び比較例1〜2に係る製造時の脱水に要する時間、脱水の容易性、および全製造に要する時間を表記1に記載した。また、製造後のグリース外観、混和ちょう度、滴点及びシェルロール後のちょう度を測定し、同じく表1にその結果を示した。
≪結果及び考察≫
実施例1〜9記載の製造方法(けん化反応時にアルコールを含む加圧脱水製法)は、脱水時間が、従来(比較例1)の1/5以下の時間で安全且つ容易に脱水でき、また、全製造に要する時間が大幅に短縮される(例えば、1/2とすることができる)ため、更に低コスト性を発揮できると共に、高効率で熱エネルギーの削減にも繋がることから環境に良く、また、得られたグリースは全ての実施例において、外観がなめらかで、適度なちょう度及び高い滴点を有し、シェルロール後のちょう度が適度な高品質のグリース組成物が得られた。

Claims (4)

  1. 増ちょう剤として金属石けんを用いたグリース組成物の製造方法において、基油中で金属石けんを反応生成する際に、アルコールないしはアルコールと水の混合液であるアルコール成分を処方し、加圧けん化方式を用いて脱水するグリース組成物の製造方法であり、
    前記アルコール成分が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、又は、tert−ブチルアルコールを含むことを特徴とするグリース組成物の製造方法。
  2. 前記金属石けんを構成するカルボン酸が、置換又は非置換のC18〜22の直鎖状高級脂肪酸と、C2〜4の直鎖状飽和低級脂肪酸とを必須成分として含み、更に、置換又は非置換のベンゼン環を有する芳香族モノカルボン酸、および/または、置換又は非置換の飽和ジカルボン酸を含む、請求項1記載のグリース組成物の製造方法。
  3. 前記アルコール成分が、エタノールおよび/またはイソプロパノールを含む、請求項1又は2に記載のグリース組成物の製造方法。
  4. 前記アルコール成分におけるアルコールと水との質量比(アルコール:水)が、100:0〜10:90の範囲にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載のグリース組成物の製造方法。
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