WO2019188122A1 - サブマージアーク溶接用フラックス - Google Patents

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Abstract

高速での溶接作業性、溶接金属の耐欠陥性及び耐低温割れ性に優れたサブマージアーク溶接用フラックスを提供する。フラックス全質量あたり、アルカリ土類金属の酸化物、SiのSiO換算値、MgのMgO換算値、FのCaF換算値、MnのMnO換算値、AlのAl換算値、NaのNaO換算値及びKのKO換算値のうち少なくとも一つ以上の合計、FeのFeO換算値、ZrのZrO換算値、TiのTiO換算値をそれぞれ所定範囲で含有するとともに、ZrのZrO換算値を[ZrO]、SiのSiO換算値を[SiO]及びFのCaF換算値を[CaF]とした場合、0.10≦[ZrO]/([SiO]+[CaF])×100≦1.40を満たすサブマージアーク溶接用フラックス。

Description

サブマージアーク溶接用フラックス
 本発明は、サブマージアーク溶接に用いられるフラックスに関し、より詳しくは、高速での溶接作業性、溶接金属の耐欠陥性及び耐低温割れ性に優れたサブマージアーク溶接用フラックスに関する。
 サブマージアーク溶接に用いられるフラックスは、その形態から、溶融型フラックスと焼成型フラックスに大別される。溶融型フラックスは、種々の原料を電気炉などで溶解し、粉砕することにより製造される。一方、焼成型フラックスは、種々の原料をケイ酸アルカリなどのバインダにより結合し、造粒した後、焼成することにより製造される。
 また、焼成型フラックスは、焼成温度によって分類され、一般に、400℃以上600℃未満で焼成したものを低温焼成型フラックスと呼称されており、600~1200℃で焼成したものを高温焼成型フラックスと呼称されている。
 従来、突合せ継手の高速溶接を行う場合は、ビード外観を良好とするため溶融温度の低い溶融型フラックスが一般的に用いられる。その反面、溶融温度が低いため入熱の高い溶接には不向きであるものの、吹上げを低減しシールド性を向上する目的で、フラックスの粒度を細かくして対応する技術が確立されている。しかし、細かい粒度を多く含むフラックスは、耐アンダーカット性が劣ったり、溶接前の搬送や溶接時の散布及び回収において大気中に巻き上がり、堆積粉塵となって溶接作業環境が劣化するため、溶接作業者が吸入することで人体への悪影響が懸念されたりする。
 そこで、高速サブマージアーク溶接用焼成型フラックスに関し、種々の検討がなされている。
 例えば、特許文献1には、高速サブマージアーク溶接用焼成型フラックスに関し、特に多電極サブマージアーク溶接において高速溶接が可能であり、かつ高靭性溶接金属の得られる焼成型フラックスに関する技術が開示されている。
 特許文献1の高速サブマージアーク溶接用焼成型フラックスは、SiO:12~24%、TiO:9~20%、Al:15~25%、MnO:8~15%、MgO:18~25%、CaO:1~13%、CaF:10~20%、FeO:2%以下を主要成分として含有する。そして、このフラックスは、溶接時に前記フラックスが熱分解して発生するガス量が1.5~3%であり、前記主要成分とガス成分の他は不可避的不純物からなる。また、フラックス累積粒度分布において50重量%を占める粒子のメジアン径が500~800μmの範囲内にあり、フラックス中の粒子径295μm以下の粒子は全体の15%以下であり、フラックスのかさ比重が0.7~1.2g/cmの範囲内にある。
 また、例えば、特許文献2には、高速サブマージアーク溶接用焼成型フラックスに関し、特に、多電極サブマージアーク溶接において高速溶接が可能であり、かつ溶接金属の酸素量を低減して高靭性が得られる焼成型フラックスに関する技術が開示されている。
 特許文献2の、高速サブマージアーク溶接用焼成型フラックスは、SiO:12~24%、TiO:1~6%、Al:15~25%、MnO:6%以下、MgO:25~40%、CaO:1~13%、CaF:15~28%、FeO:2%以下を主要成分として含有する。そして、このフラックスは、溶接時に前記フラックスが熱分解して発生するガス量が1.5~3%であり、前記主要成分とガス成分の他は不可避的不純物からなる。また、フラックス累積粒度分布において50重量%を占める粒子のメジアン径が500~800μmの範囲内にあり、フラックス中の粒子径295μm以下の粒子は全体の15%以下であり、フラックスのかさ比重が0.7~1.2g/cmの範囲内にある。
 ところで、高温焼成型フラックスは、ビード外観やスラグ剥離性などの溶接作業性が優れている。その一方で、高温焼成型フラックスは、溶接金属の拡散性水素量が溶融型フラックスや低温焼成型フラックスより高く、耐低温割れ性が劣るため、日本国内ではほとんど使用されることがなかった。なお、本明細書において「溶接金属」とは、溶接を施した際に溶接中に溶融して凝固した金属をいう。
 このような状況下、溶接金属中の拡散性水素量を低減するとともに、フラックスの粉化に起因する作業性の低下を防止できる、耐吸湿性と耐粉化性に優れたサブマージアーク溶接用焼成型フラックスが特許文献3に記載されている。このサブマージアーク溶接用焼成型フラックスは、粒子径300μm超えの比率が10質量%以下、かつ粒子径75μm未満の比率が30質量%以下になるように調整した原料粉に結合剤を加えて混合した後、造粒し、焼成したフラックスである。また、このサブマージアーク溶接用焼成型フラックスは、その成分組成としてSiO:30~70質量%、マンガン酸化物(MnO換算):5~30質量%、MgO:3~30質量%、Al:2~20質量%を含有することを特徴としている。
日本国特開昭59-137194号公報 日本国特開昭60-64792号公報 日本国特開2001-38486号公報
 しかしながら、特許文献1に関しては、3電極溶接で溶接速度は200cm/minのため、溶融フラックスで可能な溶接速度と比較すると高速とは言えない。また、特許文献2に関しては、3電極溶接で溶接速度は160cm/minのため、溶融フラックスで可能な溶接速度と比較すると高速とは言えない。
 さらに、高速サブマージアーク溶接用焼成型フラックスでは、溶接金属の耐欠陥性に優れることも要求されている。
 一方、特許文献3に記載されているサブマージアーク溶接用焼成型フラックスは、耐吸湿性に優れているものの、溶融型フラックスと比較すると耐吸湿性が若干劣っている。そのため、このサブマージアーク溶接用焼成型フラックスは、溶融型フラックスと比較して拡散性水素量が若干高い傾向にあり、また、これが原因で耐低温割れ性が劣る傾向にある。
 本発明は、上記した状況に鑑みてなされたものであり、高速での溶接作業性、溶接金属の耐欠陥性及び耐低温割れ性に優れたサブマージアーク溶接用フラックスを提供することを目的とする。
 本発明の一態様に係るサブマージアーク溶接用フラックスは、フラックス全質量あたり、アルカリ土類金属の酸化物:1.0~25.0質量%、SiのSiO換算値:12.0~32.0質量%、MgのMgO換算値:8.0~28.0質量%、FのCaF換算値:2.0~22.0質量%、MnのMnO換算値:2.0~22.0質量%、AlのAl換算値:16.0~36.0質量%、NaのNaO換算値及びKのKO換算値のうち少なくとも一つ以上の合計:0.5~6.5質量%、FeのFeO換算値:0.5~6.5質量%、ZrのZrO換算値:0.05~0.70質量%、TiのTiO換算値:0.2~6.0質量%を含有するとともに、
 ZrのZrO換算値を[ZrO]、SiのSiO換算値を[SiO]及びFのCaF換算値を[CaF]とした場合、下記式(1)を満たすものである。
 0.10≦[ZrO]/([SiO]+[CaF])×100≦1.40・・・(1)
 上記サブマージアーク溶接用フラックスは、前記アルカリ土類金属の酸化物として、CaO及びBaOのうちBaOのみを含有するか、CaOとBaOの両方を含有するとともに、BaOの含有量がCaOの含有量よりも多いものであってもよい。
 上記サブマージアーク溶接用フラックスは、更に、B:0.10~3.00質量%を含有するものであってもよい。
 上記サブマージアーク溶接用フラックスは、高温焼成型フラックスであってもよい。
 本発明によれば、高速での溶接作業性、溶接金属の耐欠陥性及び耐低温割れ性に優れたサブマージアーク溶接用フラックスを提供することができる。
図1は、実施例の溶接試験で用いた試験片の開先形状を示す側面図である。 図2は、実施例の溶接試験における電極配置を示す側面図である。
 以下、本発明を実施するための形態(本実施形態)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
 なお、本願明細書における「高速」とは、例えば210~600cm/min以下の溶接速度をいう。また、本願明細書における「溶接作業性」とは、アーク安定性、スラグ剥離性及びビード外観の良劣をいう。
 本実施形態に係るサブマージアーク溶接用フラックス(以下、単にフラックスともいう。)は、アルカリ土類金属の酸化物、SiのSiO換算値、MgのMgO換算値、FのCaF換算値、MnのMnO換算値、AlのAl換算値、NaのNaO換算値及びKのKO換算値のうち少なくとも一つ以上の合計、FeのFeO換算値、ZrのZrO換算値、TiのTiO換算値についての含有量を規定したものである。
 また、本実施形態に係るフラックスは、更に、Bを所定範囲で含有していてもよい。
 以下、本実施形態のフラックスにおける組成限定理由について説明する。なお、本実施形態のフラックスにおける各成分の含有量は、特に断りのない限り、JIS Z 3352:2010に規定される方法で定量した値を、酸化物又はフッ化物に換算した換算値である。また、各成分の含有量は、フラックス全体についての含有量である。
[アルカリ土類金属の酸化物:1.0~25.0質量%]
 従来の高温焼成型フラックスには、溶融型フラックスのようにガラス質とすることで吸湿しないようにして拡散性水素量を低減する技術や、低温焼成型フラックスのように炭酸塩を最終製品に残存させて溶接時の水素分圧を下げて拡散性水素量を低減する技術はなかった。
 本発明者らは、耐低温割れ性に優れたフラックスを得るため検討した結果、フラックスに所定量のアルカリ土類金属の酸化物を含有させることにより、吸湿量を溶融型フラックスと同程度に抑えることが可能であることを見出した。
 なお、吸湿量を抑えることができるメカニズムについては明らかではないが、フラックスの粉体表面を覆う水ガラス(結合剤)中に、該アルカリ土類金属の酸化物が含まれることで、ガラス構造が安定化し、吸湿量を溶融型フラックスと同程度に抑えることができるものと考えられる。より詳細には、水ガラスのSi-O鎖中にアルカリ土類金属の酸化物が含まれることでガラス構造がより安定化し、鎖端(-ONa、-OH)が減少するので吸湿量が減少する。これにより拡散性水素量が低減し、耐低温割れ性に優れたものとなると考えられる。
 アルカリ土類金属の酸化物は、ガラス構造を安定化させる効果があり、この効果を発揮するためにはフラックス中に1.0質量%以上含有している必要がある。一方、アルカリ土類金属の酸化物がフラックス中に25.0質量%を超えて含有されていると、水ガラス構造中から排除されたフリーのアルカリ金属(Na、Kなど)が増加するため、フラックス中の水分量が多くなってしまう。そのため、拡散性水素量が多くなり、耐低温割れ性に劣ることになる。また、スラグの流動性が高くなり過ぎてスラグ形成が不安定となるため、ビード外観が不良となる。よって、アルカリ土類金属の酸化物は1.0~25.0質量%とする。
 上記効果をより向上させる観点から、アルカリ土類金属の酸化物は2.0質量%以上とするのが好ましく、3.0質量%以上とするのがより好ましい。また、耐低温割れ性をより向上させる観点から、アルカリ土類金属の酸化物は24.0質量%以下とするのが好ましく、23.0質量%以下とするのがより好ましい。
 なお、アルカリ土類金属としてはCa、Sr、Ba、Raが挙げられる。これらの中でも、本実施形態においては、アルカリ土類金属としてCaおよびBaの一方または両方であるのが好ましい。つまり、本実施形態に係るフラックスは、アルカリ土類金属の酸化物として、CaOおよびBaOの一方または両方を含んでいるのが好ましい。このようにすると、より確実に耐低温割れ性に優れたものとすることができる。アルカリ土類金属の酸化物を2種類以上含有する場合、上記したアルカリ土類金属の酸化物の含有量は合計量で1.0~25.0質量%とする。
 また、アルカリ土類金属の酸化物として、CaO及びBaOのうちBaOのみを含有するか、CaOとBaOの両方を含有するとともに、BaOの含有量がCaOの含有量よりも多いことが好ましい。このようにすると、より確実に耐低温割れ性に優れたものとすることができる。
[SiのSiO換算値:12.0~32.0質量%]
 SiOは、溶融スラグに適度の粘性を与えることによって、主にビード外観を良好にする効果がある。
 しかしながら、SiのSiO換算値が12.0質量%未満の場合、前述した効果が十分に得られず、ビード外観が不良となる。また、SiのSiO換算値が32.0質量%を超える場合、スラグの焼付きが激しくなり、スラグ剥離性が低下する。よって、SiのSiO換算値は12.0~32.0質量%とする。
 ビード外観向上の観点から、SiのSiO換算値は14.0質量%以上とすることが好ましく、16.0質量%以上とすることがより好ましい。また、スラグ剥離性向上の観点から、SiのSiO換算値は30.0質量%以下とすることが好ましく、28.0質量%以下とすることがより好ましい。
 なお、ここでいうSiのSiO換算値は、JIS Z 3352:2010に規定される方法(例えばJIS M 8214:1995など)で分析して得たフラックスの全Si量を、SiOで換算した値である。この方法で測定した全Si量には、Fe-Siなどの合金として添加されるSiなどのSiO以外の成分が含まれているが、SiのSiO換算値が前述した範囲内であれば、前述したSiOの効果には影響しない。
[MgのMgO換算値:8.0~28.0質量%]
 MgOは、スラグ剥離性の向上に大きく寄与する成分であり、溶接電源の方式によらず、良好なスラグ剥離性を確保するために必須の成分である。
 しかしながら、MgのMgO換算値が8.0質量%未満の場合、その効果が十分に得られず、スラグ剥離性が低下する。また、MgのMgO換算値が28.0質量%を超える場合、ビード外観が不良となり、溶接電源の種別に依存してスラグ巻込み、融合不良、更にはアンダーカットなどの欠陥が発生しやすくなる。特に、交流式溶接電源においては、前述したスラグ巻き込み及び溶融不良などの溶接欠陥の発生が顕著になる。よって、MgのMgO換算値は8.0~28.0質量%とする。
 スラグ剥離性向上の観点から、MgのMgO換算値は10.0質量%以上とすることが好ましく、12.0質量%以上とすることがより好ましい。また、ビード外観向上及び欠陥発生の抑制の観点から、MgのMgO換算値は26.0質量%以下とすることが好ましく、24.0質量%以下とすることがより好ましい。
 なお、ここでいうMgのMgO換算値は、JIS Z 3352:2010に規定される方法(例えばJIS M 8222:1997など)で分析して得たフラックスの全Mg量を、MgOで換算した値である。この方法で測定した全Mg量には、MgFなどのMgO以外の成分が含まれることがあるが、これらの成分は微量であるため、MgのMgO換算値が前述した範囲内であれば、前述したMgOの効果には影響しない。
[FのCaF換算値:2.0~22.0質量%]
 CaFなどのフッ化物は、溶融スラグの電気伝導性や流動性を高める効果があり、溶融スラグの高温粘性に影響を与える成分の1つである。
 しかしながら、FのCaF換算値が2.0質量%未満の場合、前述した効果が十分に得られず、また、溶融スラグからCOガスの排出を促進し、耐ポックマーク性を改善する効果も期待できない。また、フッ素ガスのシールド性不足とアーク雰囲気中の水蒸気分圧が抑えられないため、拡散性水素量が多くなり、耐低温割れ性に劣ることになる。一方、FのCaF換算値が22.0質量%を超える場合、溶融スラグの流動性が高くなりすぎて、ビード外観が不良となる。よって、FのCaF換算値は2.0~22.0質量%とする。
 耐ポックマーク性向上及び耐低温割れ性向上の観点から、FのCaF換算値は4.0質量%以上とすることが好ましく、6.0質量%以上とすることがより好ましい。また、ビード外観向上の観点からは、FのCaF換算値は、20.0質量%以下とすることが好ましく、18.0質量%以下とすることがより好ましい。
 なお、ここでいうFのCaF換算値は、JIS Z 3352:2010に規定される方法(例えばJIS K 1468-2:1999など)で分析して得たフラックスの全F量を、CaFで換算した値である。また、本実施形態のフラックスにおけるフッ化物成分は、主にCaFであり、その他にAlFやMgFなどが含まれることがあるが、FのCaF換算値が前述した範囲内であれば、前述したフッ化物の効果には影響しない。
[MnのMnO換算値:2.0~22.0質量%]
 Mnは、溶融スラグの粘性及び凝固温度に影響を与えると共に、耐ポックマーク性改善に有効な成分であり、主に、MnO、MnO及びMnなどの酸化物の形態で添加される。各種形態の中でも、特に一酸化マンガン(MnO)の形態で添加すると、その有用性が発揮される。
 しかしながら、MnのMnO換算値が2.0質量%未満の場合、その効果が十分に発揮されない。また、スラグの流動性が低くなり過ぎて、スラグ形成が不安定となるため、ビード外観が不良となる。一方、MnのMnO換算値が22.0質量%を超える場合、スラグが脆くなってスラグ剥離性が低下する。よって、MnのMnO換算値は、2.0~22.0質量%とする。
 耐ポックマーク性向上及びビード外観向上の観点から、MnのMnO換算値は、4.0質量%以上とすることが好ましく、6.0質量%以上とすることがより好ましい。また、スラグ剥離性向上の観点から、MnのMnO換算値は、20.0質量%以下とすることが好ましく、18.0質量%以下とすることがより好ましい。
 なお、ここでいうMnのMnO換算値は、JIS Z 3352:2010に規定される方法(例えばJIS M 8232:2005など)で分析して得たフラックスの全Mn量を、MnOで換算した値である。この方法で測定した全Mn量には、MnOなどのMnO以外の成分が含まれることがあるが、これらの成分は微量であるため、MnのMnO換算値が前述した範囲内であれば、前述したMnの効果には影響しない。
[AlのAl換算値:16.0~36.0質量%]
 Alは、溶融スラグの粘性及び融点を調整する成分であり、溶接時のビード外観を良好にする効果がある。
 しかしながら、AlのAl換算値が16.0質量%未満の場合、前述した効果が十分に得られない。また、AlのAl換算値が36.0質量%を超える場合、溶融スラグの融点が上昇しすぎて、溶接時にビード外観の不良を招く。よって、AlのAl換算値は16.0~36.0質量%とする。
 溶融スラグの粘性及び融点の調整の観点から、AlのAl換算値は18.0質量%以上とすることが好ましく、20.0質量%以上とすることがより好ましい。また、溶融スラグの融点の観点からは、AlのAl換算値は34.0質量%以下とすることが好ましく、32.0質量%以下とすることがより好ましい。これにより、ビード形状を更に良好にすることができる。
 なお、ここでいうAlのAl換算値は、JIS Z 3352:2010に規定される方法(例えばJIS M 8220:1995など)で分析して得たフラックスの全Al量を、Alで換算した値である。この方法で測定した全Al量には、AlFなどのAl以外の成分が含まれることがあるが、これらの成分は微量であるため、AlのAl換算値が前述した範囲内であれば、前述したAlの効果には影響しない。
[NaのNaO換算値及びKのKO換算値のうち少なくとも一つ以上の合計:0.5~6.5質量%]
 Na及びKは、主に溶接時のアーク安定性とフラックスの吸湿特性に影響を与える成分であり、主に、NaO及びKOなどの酸化物の形態で添加される。
 しかしながら、NaのNaO換算値及びKのKO換算値が合計で0.5質量%未満の場合、溶接時のアーク電圧が不安定となり、また、ビード外観が不良となる。一方、NaのNaO換算値及びKのKO換算値が合計で6.5質量%を超える場合、フラックスの吸湿特性が劣化すると共に、アークが強くなりすぎて不安定となり、また、ビード外観が不良となる。よって、NaのNaO換算値及びKのKO換算値は、合計で0.5~6.5質量%とする。なお、本実施形態のフラックスは、Na及びKのうち少なくとも一種類が添加されていればよい。
 アーク電圧の安定化の観点から、NaのNaO換算値及びKのKO換算値が合計で1.0質量%以上とすることが好ましく、1.5質量%以上とすることがより好ましい。また、フラックスの吸湿特性及びアーク安定性向上の観点から、NaのNaO換算値及びKのKO換算値が合計で6.0質量%以下とすることが好ましく、5.5質量%以下とすることがより好ましい。
 なお、ここでいうNaのNaO換算値及びKのKO換算値は、JIS Z 3352:2010に規定される方法(例えばJIS M 8852:1998など)で分析して得たフラックスの全Na量及び全K量を、それぞれNaO及びKOで換算した値である。
 また、本実施形態のフラックスにおけるNa成分及びK成分は、主にNaO及びKOであるが、その他にNaAlSiやKAlSiなどが含まれることがある。
 また、ここでのNa、Kは、鉱石原料及び水ガラスに由来するものである。
[FeのFeO換算値:0.5~6.5質量%]
 Feは、脱酸現象を促進し、耐ポックマーク性を高める効果があり、主に、Fe-Siなどの金属粉の形態で添加される。
 しかしながら、FeのFeO換算値が0.5質量%未満の場合、特に溶接電源が直流式の場合に、十分な効果が得られない。また、FeのFeO換算値が6.5質量%を超える場合、スラグの凝固温度に影響を与え、ビード外観が不良となり、また、スラグ剥離性が低下する。よって、FeのFeO換算値は0.5~6.5質量%とする。
 耐ポックマーク性向上の観点から、FeのFeO換算値は1.0質量%以上とすることが好ましく、1.5質量%以上とすることがより好ましい。また、スラグの凝固温度への影響の観点から、FeのFeO換算値は6.0質量%以下とすることが好ましく、5.5質量%以下とすることがより好ましい。
 なお、ここでいうFeのFeO換算値は、JIS Z 3352:2010に規定される方法(例えばJIS M 8202:2000など)で分析して得たフラックスの全Fe量を、FeOで換算した値である。この方法で測定した全Fe量には、不可避的不純物として添加されるFeO、Fe及びFeなどの、金属粉として添加されるFe以外の成分が含まれているが、FeのFeO換算値が前述した範囲内であれば、前述したFeの効果には影響しない。
[ZrのZrO換算値:0.05~0.70質量%]
 ZrOは、溶融スラグの粘性及び凝固温度に影響を与えると共に、良好なビード外観及び良好なスラグ剥離性を得るためには極めて重要な成分である。
 しかしながら、ZrのZrO換算値が0.05質量%未満の場合、前述した効果が得られない。また、ZrのZrO換算値が0.70質量%を超える場合、ビード外観が不良となる。よって、ZrのZrO換算値は0.05~0.70質量%とする。
 スラグ剥離性及びビード外観向上の観点から、ZrのZrO換算値は0.10質量%以上とすることが好ましく、0.15質量%以上とすることがより好ましい。また、ビード外観向上の観点から、ZrのZrO換算値は0.60質量%以下とすることが好ましく、0.50質量%以下とすることがより好ましく、0.40質量%未満とすることが更に好ましい。
 なお、ここでいうZrのZrO換算値は、全Zr量をZrOで換算した値であり、例えばJIS R 2216:2005に規定される方法で分析することができる。
[TiのTiO換算値:0.2~6.0質量%]
 TiOは、スラグ剥離性向上に有効な成分であり、ビード外観を良好に整える効果もある。また、TiOの一部は、溶接時の還元反応によりTiとなり、このTiは溶接金属中に添加されて、靭性向上に寄与する。
 しかしながら、TiのTiO換算値が0.2質量%未満の場合、ビード外観が不良となり、また、靱性が低下する。一方、TiのTiO換算値が6.0質量%を超える場合、スラグ剥離性が低下する。よって、TiのTiO換算値は0.2~6.0質量%とする。
 ビード外観向上及び靱性向上の観点から、TiのTiO換算値は0.5質量%以上とすることが好ましく、1.0質量%以上とすることがより好ましい。また、スラグ剥離性向上の観点から、TiのTiO換算値は5.0質量%以下とすることが好ましく、4.0質量%以下とすることがより好ましい。
 なお、ここでいうTiのTiO換算値は、JIS Z 3352:2010に規定される方法(例えばJIS M 8219:2012など)で分析して得たフラックスの全Ti量を、TiOで換算した値である。
[0.10≦[ZrO]/([SiO]+[CaF])×100≦1.40]
 本実施形態に係るフラックスは、ZrのZrO換算値を[ZrO]、SiのSiO換算値を[SiO]及びFのCaF換算値を[CaF]とした場合、下記式(1)を満たす。
 0.10≦[ZrO]/([SiO]+[CaF])×100≦1.40・・・(1)
 上記式(1)は、スラグ剥離性、ビード外観及び耐低温割れ性を両立させるための重要な指標である。そして、この式によって算出される値を所定範囲内とすることにより、スラグ剥離性が向上し、ビード外観の劣化が少ないことから溶接作業性に優れ、かつ、耐低温割れ性にも優れたものとなる。
 しかしながら、[ZrO]/([SiO]+[CaF])×100により算出される値が0.10未満の場合、スラグ剥離性が低下し、また、ビード外観が不良となるため、溶接作業性に劣る。また、[ZrO]/([SiO]+[CaF])×100により算出される値が1.40を超える場合、ビード外観が劣化し、溶接作業性に劣るのに加え、溶接金属中の拡散性水素量が多くなり、耐低温割れ性に劣る。
 スラグ剥離性向上及びビード外観向上の観点から、[ZrO]/([SiO]+[CaF])×100により算出される値は、0.20以上であることが好ましく、0.30以上であることがより好ましい。また、ビード外観向上及び耐低温割れ性の向上の観点から、[ZrO]/([SiO]+[CaF])×100により算出される値は、1.30以下であることが好ましく、1.20以下であることがより好ましい。
[B:0.10~3.00質量%]
 本実施形態のフラックスは、前述した成分に加えて、酸化硼素、硼砂などを原料とするBを含有していてもよい。Bは靱性向上に有効な成分である。
 しかしながら、Bが0.10質量%未満の場合、前述した効果が得られない。また、Bが3.00質量%を超える場合、溶接金属が硬化しやすくなり、靱性が低下する。よって、Bをフラックスに含有させる場合、B含有量は0.10~3.00質量%とする。
 靱性向上の観点から、B含有量は0.15質量%以上とすることが好ましく、0.20質量%以上とすることがより好ましい。また、靱性向上の観点から、B含有量は2.5質量%以下とすることが好ましく、2.0質量%以下とすることがより好ましい。
[その他の成分]
 本実施形態のフラックスにおける上記以外の成分は、Ba、Li、P及びSなどの不可避的不純物である。これらの不可避的不純物のうち、Ba及びLiなどはそれぞれ1.0質量%以下に規制することが好ましく、特に溶接品質に影響するP及びSはそれぞれ0.05質量%以下に規制することが好ましい。また、Ba、Li、P及びSなどは、合計で3質量%以下であることが好ましい。
[高温焼成型フラックス]
 本実施形態フラックスの成分組成は、高温焼成型フラックスとして好適である。すなわち、600~1200℃で焼成することが好ましい。
[製造方法]
 本実施形態のフラックスを製造する場合は、例えば、前述した組成となるように原料粉を配合し、結合剤と共に混練した後、造粒し、焼成する。その際、結合剤(バインダ)としては、例えば、ポリビニルアルコールや水ガラスを使用することができる。また、造粒法は、特に限定されるものではないが、転動式造粒機や押し出し式造粒機などを用いる方法が好ましい。
 更に、造粒されたフラックスは、ダスト除去及び粗大粒の解砕などの整粒処理を行い、粒子径を2.5mm以下とすることが好ましい。一方、造粒後の焼成は、ロータリーキルン、定置式バッチ炉及びベルト式焼成炉などで行うことができる。その際の焼成温度は、例えば600~1200℃とすることができる。
 以上詳述したように、本実施形態のフラックスは、各成分の含有量を特定の範囲にしているため、高速溶接時に良好な溶接作業性、溶接金属の耐欠陥性及び耐低温割れ性を得ることが可能となる。
 なお、耐欠陥性は、溶接金属内部に存在する欠陥(スラグ巻込み、融合不良、ブローホールなど)及び溶接金属表面に存在する欠陥(ポックマーク、アンダーカット、ピットなど)があり、本願明細書では、溶融スラグの流動性を制御しているため、特に溶接金属表面に存在するポックマークへの耐欠陥性に効果が高い。
 また、本実施形態のフラックスの成分組成は、高温焼成型フラックスとして好適であるが、溶融型フラックスとして適用しても、高温焼成型フラックスと同様の効果を得ることができる。
 以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、下記表1に示す鋼板及び表2に示すワイヤを使用し、図1に示す開先形状及び図2に示す電極配置で、下記表3に示す溶接条件により、サブマージアーク溶接における溶接継手試験を実施した。
 そして、下記表4に示す実施例のフラックス及び下記表5に示す比較例のフラックスについて、その性能を評価した。
 なお、本実施例では、下記表4及び表5に示す組成となるように原料を配合し、結合剤(水ガラス)と共に混練した後、造粒し、更にロータリーキルンを用いて750~1000℃で焼成し、整粒することによりフラックスを得た。なお、参照する図面については、説明を明確にするため、各部材のスケールや間隔、位置関係などが誇張、あるいは、部材の一部の図示が省略されている場合がある。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
 
 なお、表1における鋼板組成及び上記表2に示すワイヤ組成の残部は、Fe及び不可避的不純物である。
 表4及び表5において、「式(1)」は[ZrO]/([SiO]+[CaF])×100の値であり、「アルカリ土類金属の酸化物」内の「合計」は、CaO含有量とBaO含有量の合計量を示す。また、表4及び表5において、フラックス化学成分の残部は不可避的不純物であり、「CaO」又は「BaO」における「-」は、該当する成分が積極的に添加されていないことを示す。
 実施例及び比較例の各フラックスの評価は、溶接作業性に関する評価項目であるアーク安定性、スラグ剥離性及びビード外観、耐欠陥性に関する評価項目であるポックマーク発生率、耐低温割れ性に関する評価項目である拡散性水素量、低温靱性に関する評価項目である吸収エネルギーvE-20℃について行った。
<アーク安定性>
 アーク安定性は、溶接時の電流や電圧の振れにより評価した。具体的には、溶接電流が±50Aかつアーク電圧が±2Vであったものを◎、溶接電流が±100Aかつアーク電圧が±2Vであったものを○、溶接電流が±100Aかつアーク電圧が±4Vであったものを△、溶接困難であったものを×とした。そして、本実施例では、評価が◎又は○であったものを合格とした。
<スラグ剥離性>
 スラグ剥離性は、スラグ除去の容易さや焼き付きの有無により評価した。具体的には、スラグが、自然剥離し、焼き付きがなかったものを◎、自然剥離するが、単位溶接長(1m)あたり3箇所以下で焼き付きが発生したものを○、自然剥離せず、単位溶接長(1m)あたり4~9箇所で焼き付きが発生したものを△、自然剥離せず、単位溶接長(1m)あたり10箇所以上で焼き付きが発生したものを×とした。そして、本実施例では、評価が◎又は○であったものを合格とした。
<ビード外観>
 ビード外観は、主にビードの波目や光沢に関する評価であり、溶接部を目視観察することにより行った。その結果、ビードの波目に乱れがなくビードに金属光沢があるものを◎、単位溶接長(1m)あたりにビード波目の乱れが1箇所でビードに金属光沢があるものを○、単位溶接長(1m)あたりにビード波目の乱れが2~4箇所でビードに金属光沢がないものを△、単位溶接長(1m)あたりにビード波目の乱れが5箇所以上ありビードに金属光沢がないものを×とした。そして、本実施例では、評価が◎又は○であったものを合格とした。
<ポックマーク発生率>
 ポックマークは、発生がなかったものを◎、単位溶接長(1m)あたりの発生比率が0.5%以下であったものを○、単位溶接長(1m)あたりの発生比率が0.5%を超え1.0%以下であったものを△、単位溶接長(1m)あたりの発生比率が1.0%を超えていたものを×とした。そして、本実施例では、評価が◎又は○であったものを合格とした。
 なお、ポックマークの検出は、目視により行った。ポックマークの評価における単位溶接長(1m)あたりの発生比率とは、個々のポックマークなどの長さを目視で測定し、ポックマークの総長さを算出した後、試験部の有効長さで割り返し、単位溶接長あたりに換算したものである。
<拡散性水素量>
 溶接金属の拡散性水素量は、AWS A4.3(GC)に準じて測定を行った。
 なお、試験材に係るフラックスは、250℃×1hrの予備乾燥を行い、AWS A5.17 EH14に該当する4.0mmφのワイヤを使用して溶接を行った。
 溶接条件は、電流525A、電圧29V、溶接速度42cm/minで行い、極性は直流棒プラス(Direct Current Electrode Positive;DCEP)、フラックス散布高さ及びワイヤ突出し長さは30mmで行った。溶接される鋼板はASTM A36を使用した。
 そして、本実施例では、拡散性水素量が5.0mL/min以下のものを合格とした。
<吸収エネルギーvE-20℃
 溶接継手試験における2nd側のビード表面から7mmの位置が中心軸となるような、シャルピー衝撃試験片(2mmVノッチ試験片)を採取し、JIS Z 2242に記載の方法で-20℃におけるシャルピー衝撃試験を実施した。
 同様の試験を3回行い、その平均値を算出したとき、吸収エネルギーvE-20℃が50J以上の溶接金属を低温靭性に優れるとして合格とした。
 以上の評価結果を、下記表6及び表7にまとめて示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
 
 表6に示されるように、実施例である試験No.F1~F12のフラックスは、本発明の範囲を満足するものであるため、溶接作業性、耐欠陥性及び耐低温割れ性の評価項目において優れていた。
 ただし、試験No.F11のフラックスは、Bの含有量が好ましい数値範囲の下限未満であるため、吸収エネルギーvE-20℃が50J未満となり、低温靱性において劣っていた。また、試験No.F12のフラックスは、Bの含有量が好ましい数値範囲の上限を超えているため、吸収エネルギーvE-20℃が50J未満となり、低温靱性が劣っていた。
 一方、表7に示されるように、比較例である試験No.F13~F34のフラックスは、本発明の範囲を満足しないものであるため、以下の結果となった。
 試験No.13のフラックスは、アルカリ土類金属の酸化物(CaO含有量とBaO含有量の合計)の含有量が下限値未満であるため、拡散性水素量が5.0mL/min以上となり、耐低温割れ性に劣っていた。
 試験No.14のフラックスは、アルカリ土類金属の酸化物(CaO含有量とBaO含有量の合計)の含有量が上限値を超えているため、拡散性水素量が5.0mL/min以上となり、耐低温割れ性に劣るとともに、ビード外観が不良であった。
 試験No.15のフラックスは、SiO換算値が下限値未満であるため、ビード外観が不良であった。
 試験No.16のフラックスは、SiO換算値が上限値を超えているため、スラグ剥離性が劣っていた。
 試験No.17のフラックスは、MgO換算値が下限値未満であるため、スラグ剥離性が劣っていた。
 試験No.18のフラックスは、MgO換算値が上限値を超えているため、ビード外観が不良であった。
 試験No.19のフラックスは、CaF換算値が下限値未満であるため、ポックマークが発生し、耐欠陥性に劣るとともに、拡散性水素量が5.0mL/min以上となり、耐低温割れ性に劣っていた。
 試験No.20のフラックスは、CaF換算値が上限値を超えているため、ビード外観が不良であった。
 試験No.21のフラックスは、MnO換算値が下限値未満であるため、ビード外観が不良であるとともに、ポックマークが発生し、耐欠陥性に劣っていた。
 試験No.22のフラックスは、MnO換算値が上限値を超えているため、スラグ剥離性が劣っていた。
 試験No.23のフラックスは、Al換算値が下限値未満であるため、ビード外観が不良であった。
 試験No.24のフラックスは、Al換算値が上限値を超えているため、ビード外観が不良であった。
 試験No.25のフラックスは、NaO換算値とKO換算値の合計が下限値未満であるため、アーク安定性が劣るとともにビード外観が不良であった。
 試験No.26のフラックスは、NaO換算値とKO換算値の合計が上限値を超えているため、アーク安定性が劣るとともにビード外観が不良であった。
 試験No.27のフラックスは、FeO換算値が下限値未満であるため、ポックマークが発生し、耐欠陥性に劣っていた。
 試験No.28のフラックスは、FeO換算値が上限値を超えているため、スラグ剥離性に劣るとともにビード外観が不良であった。
 試験No.29のフラックスは、ZrO換算値が下限値未満であるため、スラグ剥離性に劣るとともにビード外観が不良であった。
 試験No.30のフラックスは、ZrO換算値が上限値を超えているため、ビード外観が不良であった。
 試験No.31のフラックスは、TiO換算値が下限値未満であるため、ビード外観が不良であるとともに、吸収エネルギーvE-20℃が50J未満となり、低温靱性が劣っていた。
 試験No.32のフラックスは、TiO換算値が上限値を超えているため、スラグ剥離性が劣っていた。
 試験No.33のフラックスは、[ZrO]/([SiO]+[CaF])×100により算出される値が下限値未満であるため、スラグ剥離性に劣るとともにビード外観が不良であった。
 試験No.34のフラックスは、[ZrO]/([SiO]+[CaF])×100により算出される値が上限値を超えているため、ビード外観が不良であるとともに、拡散性水素量が5.0mL/min以上となり、耐低温割れ性に劣っていた。
 以上の結果から、本発明のフラックスを用いることにより、高速での溶接作業性、溶接金属の耐欠陥性及び耐低温割れ性を良好にすることが可能であることが確認された。
 以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
 なお、本出願は、2018年3月28日出願の日本特許出願(特願2018-062793)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。

Claims (5)

  1.  フラックス全質量あたり、
     アルカリ土類金属の酸化物:1.0~25.0質量%、
     SiのSiO換算値:12.0~32.0質量%、
     MgのMgO換算値:8.0~28.0質量%、
     FのCaF換算値:2.0~22.0質量%、
     MnのMnO換算値:2.0~22.0質量%、
     AlのAl換算値:16.0~36.0質量%、
     NaのNaO換算値及びKのKO換算値のうち少なくとも一つ以上の合計:0.5~6.5質量%、
     FeのFeO換算値:0.5~6.5質量%、
     ZrのZrO換算値:0.05~0.70質量%、
     TiのTiO換算値:0.2~6.0質量%を含有するとともに、
     ZrのZrO換算値を[ZrO]、SiのSiO換算値を[SiO]及びFのCaF換算値を[CaF]とした場合、下記式(1)を満たすことを特徴とするサブマージアーク溶接用フラックス。
     0.10≦[ZrO]/([SiO]+[CaF])×100≦1.40・・・(1)
  2.  前記アルカリ土類金属の酸化物として、CaO及びBaOのうちBaOのみを含有するか、CaOとBaOの両方を含有するとともに、BaOの含有量がCaOの含有量よりも多いことを特徴とする請求項1に記載のサブマージアーク溶接用フラックス。
  3.  更に、B:0.10~3.00質量%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のサブマージアーク溶接用フラックス。
  4.  高温焼成型フラックスであることを特徴とする請求項1または2に記載のサブマージアーク溶接用フラックス。
  5.  高温焼成型フラックスであることを特徴とする請求項3に記載のサブマージアーク溶接用フラックス。
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