WO2018190296A1 - スラストころ軸受の組立方法および組立装置 - Google Patents

Abstract

スラスト軸受の組立装置は、複数のポケットに挿入されるべき複数のころを、複数のポケットと同じ配置形態となっている複数のころ取出し部（３２）に供給するころ供給部材（３３）と、複数のころ取出し部（３２）に位置する複数のころを、そのままの配置形態で保持するころ保持部材（４２）と、保持された複数のころを複数のポケットそれぞれに対面させるために、保持器およびころ保持部材の少なくとも一方を移動させる移動部材（１０）と、複数のころを、対面する複数のポケットに圧入する圧入具（５２）とを備える。

Description

スラストころ軸受の組立方法および組立装置

　本発明は、スラストころ軸受の組立方法および組立装置に関する。

　スラストころ軸受は、２つの平行な軌道輪の間に放射状に配列された複数のころを、環状の保持器の円周方向に等間隔で放射状に形成されたポケットに保持したものであり、軌道輪は組み込まれる装置の部品の受け面で代用されることもある。

　スラストころ軸受のころと保持器とを一体に組み立てる際には、一般的に、金属製や樹脂製の保持器を水平（軸垂直）に配置し、横向きにした１列または２列のころを、ハンマ等の圧入工具で上方からポケットに圧入する。保持器を垂直軸の回りに間欠回転させ、円周方向の所定箇所に位置するポケットに、圧入工具でころを順次圧入するスラストころ軸受の組立装置もある。

　また、特開２００７－２１８３２３号公報（特許文献１）には、保持器を垂直（軸水平）に配置して、間欠回転する保持器のポケットが、ころが投入された収納部に対向しているときに、この収納部の底に設けられた孔に圧入工具を押し込み、収納部に収納されたころをポケットに圧入するスラストころ軸受の組立装置が提案されている。

特開２００７－２１８３２３号公報

　特許文献１では、ポケットに圧入されるころを縦向きの安定した姿勢で収納部に保持することで、ころのポケットへの圧入ミスに起因して組立時間が嵩むことを防止している。

　しかしながら、特許文献１の組立装置を含む従来の装置においては、保持器のポケットに対面する位置に１本のころを供給する度に、圧入工具での打ち込みが行われる。つまり、ころの本数分、ころの供給および圧入という連続動作が繰り返される。そのため、従来の組立装置においては、この連続動作によりスラスト軸受の組立時間が嵩んでしまうという問題があった。一度に２～４本程度のころを供給する組立装置も存在するが、組立時間を短縮するには十分でない。

　本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ころと保持器とを一体に組み立てる組立時間を短縮することのできるスラスト軸受の組立方法および組立装置を提供することである。

　この発明のある局面に従うスラスト軸受の組立方法は、環状の保持器の円周方向に放射状に形成された複数のポケットにころを圧入して、ころと保持器とを一体に組み立てるスラストころ軸受の組立方法である。この組立方法は、複数のポケットに挿入されるべき複数のころを、複数のポケットと同じ配置形態となっている複数のころ取出し部に供給するころ供給工程と、複数のころ取出し部に位置する複数のころを、そのままの配置形態で保持するころ保持工程と、保持された複数のころを、複数のポケットそれぞれに対面させる対面工程と、複数のころを、対面する複数のポケットに圧入する圧入工程とを備える。

　この発明の他の局面に従うスラスト軸受の組立装置は、環状の保持器の円周方向に放射状に形成された複数のポケットにころを圧入して、ころと保持器とを一体に組み立てるスラストころ軸受の組立装置である。この組立装置は、複数のポケットに挿入されるべき複数のころを、複数のポケットと同じ配置形態となっている複数のころ取出し部に供給するころ供給部材と、複数のころ取出し部に位置する複数のころを、そのままの配置形態で保持するころ保持部材と、保持された複数のころを複数のポケットそれぞれに対面させるために、保持器およびころ保持部材の少なくとも一方を移動させる移動部材と、複数のころを、対面する複数のポケットに圧入する圧入具とを備える。

　好ましくは、ころ保持部材は、ポケットと同じ数分設けられており、各ころ保持部材の先端部に、ころを吸引保持するための吸引爪が設けられている。

　好ましくは、スラストころ軸受の組立装置は、保持器を受け入れる受入れ部と外周面が切り欠かれた切欠き部とが円周方向に沿って設けられ、上下方向に延びる中心軸の回りを回転するインデックステーブルをさらに備える。この場合、複数のころ取出し部は、インデックステーブルよりも下方に配置される。また、ころ保持部材は、インデックステーブルの切欠き部を上下移動することによって、ころ取出し部に位置する複数のころを吸引し、吸引した複数のころをインデックステーブルよりも上方位置で保持する。

　好ましくは、インデックステーブルは、移動部材を構成し、複数のころ保持部材の下方位置に保持器を移動させる。

　好ましくは、インデックステーブルの受入れ部に保持器を挿入する保持器挿入部と、ころが圧入された後の組立後の保持器を、受入れ部から取出して搬出する保持器取出し部とをさらに備える。

　好ましくは、圧入具は、ころの個数分設けられている。

　本発明によれば、ころと保持器とを一体に組み立てる組立時間を短縮することができる。

本発明の実施の形態に係るスラスト軸受の組立装置を概念的に示す図である。 本発明の実施の形態における保持器挿入部の構成を模式的に示す斜視図である。 本発明の実施の形態における保持器組立部の構成を模式的に示す斜視図である。 ころ取出し部に全数のころが供給された状態を模式的に示す図である。 本発明の実施の形態における各ころ保持部材の構成例を模式的に示す図である。 ころ保持部材の先端部（下端部）を拡大して示す斜視図である。 ころ取出し部に配置されたころが、ころ保持部材の吸引爪によって吸引保持される様子を模式的に示す図である。 本発明の実施の形態におけるスラストころ軸受の組立方法の大まかな流れを示すフローチャートである。 本発明の実施の形態における保持器組立処理を示すフローチャートである。 ころ保持部材に吸引保持された全数のころと保持器のポケットとが対面した状態を示す斜視図である。 各ころ保持部材が吸引保持したころとポケットとが対面している状態を模式的に示す断面図である。 全数のころが、保持器のポケット上に仮置きされた状態、および、ハンマがころ保持部材の上面に当接している状態を模式的に示す図である。 ハンマによりころがポケットに圧入された状態を模式的に示す断面図である。 組立後の保持器を模式的に示す平面図である。 本発明の実施の形態の変形例における加圧機構を模式的に示す図である。 本発明の実施の形態の変形例において、１ユニットを構成する複数のハンマの側面を展開して示す図である。

　本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。

　（概略構成）
　はじめに、本実施の形態に係るスラスト軸受の組立装置の概略構成について説明する。

　図１は、本実施の形態に係るスラスト軸受の組立装置（以下「組立装置」と略す）１を概念的に示す図である。図１を参照して、組立装置１は、主に、インデックステーブル１０と、保持器挿入部１１と、保持器組立部１２と、保持器取出し部１３とで構成される。

　インデックステーブル１０は、たとえば平面視において略円形であり、上下方向に延びる中心軸１０ａを中心に回転する。インデックステーブル１０は、保持器を受け入れる２つの受入れ部１４と、２つの切欠き部１５とを含む。各受入れ部１４は、たとえば、インデックステーブル１０を上下方向に貫通する円形状の貫通孔１４ａと、貫通孔１４ａに挿入された保持器を下方から支持する複数の支持片１４ｂとで構成される。切欠き部１５は、インデックステーブル１０の外周面を円弧状に切り欠いた部分であり、その円弧の半径は受入れ部１４の半径よりも大きい。

　２つの受入れ部１４の位置は、１８０°位相がずれた位置である。各切欠き部１５は、円周方向において２つの受入れ部１４の間に設けられており、２つの切欠き部１５の位置もまた、１８０°位相がずれている。円周方向において隣り合う受入れ部１４と切欠き部１５とは、９０°位相がずれている。インデックステーブル１０は、９０°ずつ一方方向（たとえば反時計回り）に回転する。保持器挿入部１１と保持器組立部１２と保持器取出し部１３とは、インデックステーブル１０の周辺部にこの順序で配置される。

　保持器挿入部１１は、インデックステーブル１０の一方の受入れ部１４に、ころが組み込まれる前の保持器（保持器単体）を挿入する。図２は、保持器挿入部１１の構成を模式的に示す斜視図である。図２を参照して、保持器挿入部１１は、保持器２の供給路１１ａを有する。保持器挿入部１１は、供給路１１ａ上を搬送されてきた保持器２を、インデックステーブル１０の受入れ部１４に上方から挿入する。保持器２は、環状部２１と、ころを挿入すべき複数のポケット２２とで構成される。なお、環状部２１の断面形状やポケット２２の個数などは限定されない。

　保持器組立部１２は、保持器挿入部１１により受入れ部１４に挿入された保持器に、全数のころを組み込む。保持器組立部１２の構成については後に詳述する。

　保持器取出し部１３は、保持器組立部１２により組み立てられた保持器、すなわち、ころが組み込まれた保持器（以下「組立後の保持器」という）を、受入れ部１４から取出す。保持器取出し部１３は、組立後の保持器の搬出路を有し、取出した保持器を搬出路から次工程に搬出する。

　（保持器組立部の構成）
　図３は、保持器組立部１２の構成を模式的に示す斜視図である。図３を参照して、保持器組立部１２は、ころ供給機構３と、ころ保持機構４と、加圧機構５とを含む。

　ころ供給機構３は、インデックステーブル１０よりも下方高さに位置する。ころ供給機構３は、外観視において略円柱形状の基台部（台座）３１と、基台部３１の上面３１ａに設けられた複数のころ取出し部３２と、基台部３１の環状の外周面３１ｂに接続された複数のスプリングシュート３３とで構成される。

　複数のころ取出し部３２は、保持器２の複数のポケット２２と同じ配置形態となっている。すなわち、ポケット２２の数（つまり、ころの数）が２０個であると仮定すると、２０個のころ取出し部３２が、ポケット２２と同じピッチで、円周方向に放射状に形成されている。

　スプリングシュート３３は、ころ取出し部３２にころを供給するころ供給部材である。本実施の形態において、スプリングシュート３３は、ポケット２２と同じ数だけ設けられている。具体的には、２０個のスプリングシュート３３それぞれが、保持器２のポケット２２に挿入されるべき２０個のころを、ころ取出し部３２に供給する。図４には、ころ取出し部３２に全数のころ２３が供給された状態が模式的に示されている。

　ころ保持機構４は、初期位置においてインデックステーブル１０よりも上方高さに位置するが、上下移動可能に構成されている。ころ保持機構４は、上下方向に延びる軸部６に対し、上下移動可能に取り付けられた環状の基板部４１と、基板部４１に設けられた複数のころ保持部材４２とで構成されている。

　ころ保持部材４２は、ポケット２２と同じ数だけ設けられており、ころ取出し部３２と同様に、保持器２の複数のポケット２２と同じ配置形態となっている。つまり、２０個のころ保持部材４２が、ポケット２２と同じピッチで、円周方向に放射状に設けられている。

　図５は、各ころ保持部材４２の構成例を模式的に示す図である。ころ保持部材４２は、基板部４１を貫通して上下方向に延びる部分（以下「縦部」という）４２１と、縦部４２１の上端から軸部６に向かって延びる部分（以下「横部」という）４２２とを有しており、側面視において略Ｌ字状に形成されている。

　図５に示されるように、基板部４１の上面４１ａには、ころ保持部材４２（の横部４２２）を上方に付勢するバネ４３が固定されている。ころ保持部材４２の移動範囲の上端は、横部４２２の上面が、基板部４１の上面４１ａよりも上方に位置する押さえ部４４の下面に当接する位置である。押さえ部４４は、基板部４１に固定されている。ころ保持部材４２の移動範囲の下端は、バネ４３が縮められることによって、横部４２２の下面が基板部４１の上面４１ａに当接または近接する位置である。

　図６は、ころ保持部材４２の縦部４２１の先端部（下端部）を拡大して示す斜視図である。図６に示されるように、ころ保持部材４２の縦部４２１の先端部には、ころ２３を吸引して保持する吸引爪４５が設けられている。吸引爪４５は、ころ２３の外径面と面接触するよう円弧状に形成された吸着面４５ａを有する。２０個の縦部４２１それぞれの吸引爪４５（吸着面４５ａ）は、ころ供給機構３の２０個のころ取出し部３２と向き合う。

　この吸着面４５ａの中央に、エア吸引孔４６が設けられている。各ころ保持部材４２の縦部４２１には、エア吸引孔４６に連通する吸引チューブ４７が接続されている。吸引チューブ４７は、エア吸引孔４６から空気を吸引する。

　ころ保持機構４は、図３に示す初期位置から、ころ供給機構３に近接する下端位置まで下降可能である。ころ保持機構４の下端位置は、少なくともころ保持機構４の下端部がインデックステーブル１０よりも下に配置される位置である。

　ころ保持部材４２の先端部が上記のように構成されているため、ころ保持機構４が下端位置まで下降した段階でエア吸引が行われると、ころ保持部材４２が、ころ供給機構３のころ取出し部３２に配置された２０個のころ２３を一度に吸引して保持することができる。図７は、ころ供給機構３のころ取出し部３２に配置されたころ２３が、ころ保持部材４２の吸引爪４５によって吸引保持される様子を模式的に示す図である。

　再び図３を参照して、加圧機構５は、軸部６に対して上下移動可能に設けられた環状の加圧盤５１と、加圧盤５１の下面に取付けられた複数のハンマ（圧入具）５２とで構成される。複数のハンマ５２もまた、ポケット２２およびころ２３と同じ数分設けられており、円周方向に沿って放射状に設けられている。ハンマ５２は、ころ２３を保持したころ保持部材４２を、上から押さえ付けることによって、ころ２３をポケット２２に圧入する。なお、ハンマ５２と加圧盤５１との間には、ころ圧入力を有するバネ５３（図１３）が設けられる。

　（スラストころ軸受の組立方法）
　組立装置１が実行するスラストころ軸受の組立方法について説明する。図８は、スラストころ軸受の組立方法の大まかな流れを示すフローチャートである。なお、以下に示す処理は、図示しない制御装置が、インデックステーブル１０の回転動作、保持器挿入部１１、保持器組立部１２、および保持器取出し部１３の動作を制御することによって実現される。

　はじめに、図２に示されるように、保持器挿入部１１が、インデックステーブル１０の受入れ部１４に、保持器２を挿入する（工程Ｐ１）。このとき、図１に示すように、保持器組立部１２は、インデックステーブル１０の切欠き部１５に対応する位置に配置され、保持器取出し部１３は、インデックステーブル１０の他方の受入れ部１４に対応する位置に配置される。このときの保持器組立部１２を構成する各部の上下方向位置は図３に示す通りである。なお、他方の切欠き部１５は、単なる空きスペースとなる。

　保持器２が受入れ部１４に挿入されると、保持器２の位相出しが行われた後、保持器組立処理が実行される（工程Ｐ２）。保持器組立処理については、図９にサブルーチンを挙げて説明する。

　図４に示されるように、スプリングシュート３３によって、全てのころ取出し部３２に全数のころ２３が同時に供給される（工程Ｐ１１）。これにより、基台部３１の上面３１ａに、全数のころ２３が保持器２のポケット２２と同位相で配置される。

　ころ２３の供給が行われると、ころ保持機構４が下端位置まで下降する。これにより、ころ保持機構４の複数のころ保持部材４２の吸着面４５ａが、ころ取出し部３２において露出する全数のころ２３それぞれの外周面に当接する（図７参照）。あるいは、ころ保持部材４２の吸着面４５ａが、全数のころ２３それぞれの外周面と近接した位置で対面する。吸引チューブ４７を介したエア吸引が作動すると、ころ保持部材４２によって、全数のころ２３が吸引保持される（工程Ｐ１２）。

　全数のころ２３が吸引保持されると、ころ保持機構４が初期位置まで上昇する。ころ保持部材４２は、インデックステーブル１０よりも上方位置で、全数のころ２３を保持した状態で待機する。その後またはころ保持機構４の上昇途中において、インデックステーブル１０は９０°回転する。つまり、ころ保持機構４のすぐ下方位置に、受入れ部１４に受入れられた保持器２を移動させる。これにより、ころ保持部材４２に保持された全数のころ２３が保持器２のポケット２２と対面する（工程Ｐ１３）。

　このときの状態が図１０および図１１に示される。図１０は、ころ保持部材４２に吸引保持された全数のころ２３と保持器２のポケット２２とが対面した状態を全体的に示す斜視図である。図１１は、各ころ保持部材４２が吸引保持したころ２３とポケット２２とが対面している状態を模式的に示す断面図である。

　その後、全数のころ２３が、保持器２のポケット２２上に仮置きされる。具体的には、ポケット２２の両側部に設けられたころ止め部２４（図１１）に、ころ２３が載せられる。なお、吸引チューブ４７を介したころ２３の吸引は、この段階で停止してもよい。

　ころ２３が、ポケット２２上に仮置きされると、ハンマ５２がころ保持部材４２の（横部４２２の）上面に当接または近接するように、加圧機構５が下降する。このときの状態が図１２に示される。図１２は、全数のころ２３が、保持器２のポケット２２上に仮置きされた状態、および、ハンマ５２がころ保持部材４２の上面に当接している状態を模式的に示す図である。

　なお、加圧機構５は、ハンマ５２ところ保持部材４２とが当接または近接した状態で、常にころ保持機構４と一体的に上下移動する構成であってもよい。この場合、組立時間のさらなる短縮化が図れる。

　その後、加圧機構５のハンマ５２によって、ころ保持部材４２に上方からの荷重を加えることにより、ころ２３をポケット２２に圧入する（工程Ｐ１４）。図１３には、ころ２３がポケット２２に圧入された状態が示される。これにより、図１４に示すように、保持器２にころ２３が組み込まれた組立後の保持器２Ａが完成する。以上で、保持器２の組立処理が完了する。

　なお、ころ２３の圧入工程においては、たとえば円周上等間隔の４個のハンマ５２を１セットとし、ハンマ５２の降下タイミングをセット単位でずらすことで、所定数のころ２３を順にポケット２２に圧入する。この場合であっても、ハンマ５２の個数がポケット２２およびころ２３と同じ数であるため、加圧盤５１を回転させる必要がない。したがって、従来よりも全数のころ２３をポケット２２に高速圧入することができる。

　本実施の形態では、全数のころ２３を保持器２のポケット２２上に仮置きする段階で、吸引チューブ４７を介したころ２３の吸引を停止することとしたが、ハンマ５２によるころ２３の圧入時まで、ころ２３の吸引が継続されてもよい。このようにすることで、ポケット２２へのころ２３の圧入動作の安定化を図ることも可能である。

　再び図８を参照して、保持器２の組立処理が完成すると、インデックステーブル１０を９０°回転させて（工程Ｐ３）、組立後の保持器２Ａを保持器取出し部１３に対応する位置に移動させる。保持器取出し部１３は、保持器２Ａを受入れ部１４から取出して、次工程へ搬出する（工程Ｐ４）。以上で保持器組立の１サイクルが終了する。

　なお、図１に示されるように、保持器取出し部１３の位置に一方の受入れ部１４が位置するとき、他方の受入れ部１４は保持器挿入部１１の位置に位置する。そのため、保持器取出し部１３による保持器取出し工程（工程Ｐ４）と並行して、次の保持器２の挿入工程（工程Ｐ１）が行われることが望ましい。これにより、保持器２の供給から組立後の保持器２Ａの搬出までの組立サイクルに要する時間を短縮することができる。

　以上説明したように、本実施の形態に係る組立装置１によれば、全数のころ２３を、保持器２のポケット２２と同じ配置形態となっているころ取出し部３２に一度に供給することができる。したがって、従来の組立装置のように、ころを１～４本ずつ供給する方法に比べて、１つの保持器２に必要なころ２３の供給時間を短縮することができる。

　また、組立装置１は、ころ取出し部３２に供給された全数のころ２３を、そのままの配置形態で吸引保持し、保持器２のポケット２２に対面させる。そのため、保持器２自体を軸回りに回転させることなく、ころ２３の圧入動作を行うことができる。したがって、ころ２３を従来よりも高速で圧入することができる。

　これらの結果、ころ２３の供給からころ２３の圧入までの、保持器２へのころ２３の組み込みに要する時間を、従来の約９秒から約３秒にまで短縮することができる。

　また、本実施の形態では、インデックステーブル１０を用いるため、ころ供給機構３、ころ保持機構４、および加圧機構５を水平移動させたり回転させたりする必要がない。したがって、効率良く短時間で保持器２を組み立てることができる。

　（変形例）
　ころ２３の圧入工程（図９の工程Ｐ１４）において、全てのハンマ５２を同時に降下させて全数のころ２３を同時に圧入してもよい。全数のころ２３を適切にポケット２２に圧入するためには、上記した加圧機構５を次のように構成してもよい。

　図１５および図１６は、本実施の形態の変形例における加圧機構５Ａを模式的に示す図である。本変形例では、２０個のハンマ５２をたとえば４つのユニットＵ１～Ｕ４に分割し、各ユニット内のハンマ５２ａ～５２ｅの上下長さを異ならせている。

　具体的には、図１６に示されるように、各ユニットの一端に位置するハンマ５２ａから他端に位置するハンマ５２ｅの上下長さが順に短くなっている。つまり、隣り合うハンマ５２の先端位置には段差が設けられている。隣り合うハンマ５２間の段差Ｌは、保持器２（環状部２１）の板厚（たとえば０．５ｍｍ）と同じか、若干それよりも大きいことが望ましい。

　このように、隣り合うハンマ５２間に段差が設けられることで、全てのハンマ５２を同時に下降させたとしても、全数のころ２３を一度にポケット２２に圧入することができる。これにより、ころ２３の圧入動作による保持器２への負荷を大幅に低減できるため、保持器２の品質を確保することができる。なお、図１３に示したバネ５３により、ハンマ５２ａ～５２ｅの段差を吸収することができる。

　本変形例で示した加圧機構５Ａは、全数のころ２３を順次圧入する機構の一例であり、カム、シリンダ、モータ等を用いた順次圧入機構を採用してもよい。

　（他の変形例）
　以上説明した組立装置１において、ころ保持部材４２は、全数のころ２３をエアー吸引して保持する構成であることとしたが、取出し部３２に位置する全数のころ２３を、そのままの配置形態で保持できれば、エアー吸引以外の方法によってころ２３を保持してもよい。

　また、ころ２３と保持器２とを対面させる対面工程（図９の工程Ｐ１３）において、インデックステーブル１０により保持器２を移動させることとした。しかしながら、保持器２の移動はインデックステーブル１０以外の部材により実現されてもよい。あるいは、保持器２でなく（または、保持器２とともに）ころ保持部材４２を移動させることによって、ころ２３と保持器２とを対面させてもよい。すなわち、組立装置１は、吸引保持された複数のころ２３を複数のポケット２２それぞれに対面させるために、保持器２およびころ保持部材４２の少なくとも一方を移動させる移動部材を備えていればよい。

　また、本実施の形態では、水平面上に配置された保持器２に上からころ２３を組み込む形態について説明したが、このような形態に限定されない。たとえば、垂直面上に配置された保持器２にころ２３を横向きで組み込む形態を採用してもよい。

　今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

　１　スラスト軸受の組立装置、２　保持器（単体）、２Ａ　組立後の保持器、３　供給機構、４　保持機構、５，５Ａ　加圧機構、６　軸部、１０　インデックステーブル、１１　保持器挿入部、１２　保持器組立部、１３　保持器取出し部、１４　受入れ部、１５　切欠き部、２１　環状部、２２　ポケット、２３　ころ、２４　ころ止め部、３１　基台部、３２　取出し部、３３　スプリングシュート、４１　基板部、４２　ころ保持部材、４３，５３　バネ、４４　押さえ部、４５　吸引爪、４５ａ　吸着面、４６　エア吸引孔、４７　吸引チューブ、５１　加圧盤、５２，５２ａ～５２ｅ　ハンマ、４２１　縦部、４２２　横部、Ｕ１～Ｕ４　ユニット。

Claims (7)

1. 　環状の保持器の円周方向に放射状に形成された複数のポケットにころを圧入して、ころと保持器とを一体に組み立てるスラストころ軸受の組立方法であって、
   　前記複数のポケットに挿入されるべき複数のころを、前記複数のポケットと同じ配置形態となっている複数のころ取出し部に供給するころ供給工程と、
   　前記複数のころ取出し部に位置する前記複数のころを、そのままの配置形態で保持するころ保持工程と、
   　保持された前記複数のころを、前記複数のポケットそれぞれに対面させる対面工程と、
   　前記複数のころを、対面する前記複数のポケットに圧入する圧入工程とを備える、スラストころ軸受の組立方法。
2. 　環状の保持器の円周方向に放射状に形成された複数のポケットにころを圧入して、ころと保持器とを一体に組み立てるスラストころ軸受の組立装置であって、
   　前記複数のポケットに挿入されるべき複数のころを、前記複数のポケットと同じ配置形態となっている複数のころ取出し部に供給するころ供給部材と、
   　前記複数のころ取出し部に位置する前記複数のころを、そのままの配置形態で保持するころ保持部材と、
   　保持された前記複数のころを前記複数のポケットそれぞれに対面させるために、前記保持器および前記ころ保持部材の少なくとも一方を移動させる移動部材と、
   　前記複数のころを、対面する前記複数のポケットに圧入する圧入具とを備える、スラストころ軸受の組立装置。
3. 　前記ころ保持部材は、前記ポケットと同じ数分設けられており、
   　前記各ころ保持部材の先端部に、前記ころを吸引保持するための吸引爪が設けられている、請求項２に記載のスラストころ軸受の組立装置。
4. 　前記保持器を受け入れる受入れ部と外周面が切り欠かれた切欠き部とが円周方向に沿って設けられ、上下方向に延びる中心軸の回りを回転するインデックステーブルをさらに備え、
   　前記複数のころ取出し部は、前記インデックステーブルよりも下方に配置され、
   　前記ころ保持部材は、前記インデックステーブルの前記切欠き部を上下移動することによって、前記ころ取出し部に位置する前記複数のころを吸引し、吸引した前記複数のころを前記インデックステーブルよりも上方位置で保持する、請求項２または３に記載のスラストころ軸受の組立装置。
5. 　前記インデックステーブルは、前記移動部材を構成し、前記ころ保持部材の下方位置に前記保持器を移動させる、請求項４に記載のスラストころ軸受の組立装置。
6. 　前記インデックステーブルの前記受入れ部に前記保持器を挿入する保持器挿入部と、
   　前記ころが圧入された後の組立後の保持器を、前記受入れ部から取出して搬出する保持器取出し部とをさらに備える、請求項４または５に記載のスラストころ軸受の組立装置。
7. 　前記圧入具は、前記ころの個数分設けられている、請求項２～６のいずれかに記載のスラストころ軸受の組立装置。

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