WO2018179193A1 - 記憶素子及び記憶素子の駆動方法 - Google Patents

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Abstract

連続量または多値の離散量を選択値として効率的に記憶することができる記憶素子及び記憶素子の駆動方法を提供する。記憶素子(10)は、記録層(11)、非磁性層(12)、電極(13a)を順番に積層した構造になっている。記録層(11)に対してその磁化容易軸に平行な磁界を印加した状態で、書き込むべき選択値に対応した電界強度を印加してから、電界強度を0にする。記録層(11)の残留磁化が書き込むべき選択値に対応した電界強度に対応する値になる。記録層(11)に読み出し電流(Ir)を流して、ホール抵抗から記憶素子(10)に記憶されている選択値を読み出す。

Description

記憶素子及び記憶素子の駆動方法
 本発明は、記憶素子及び記憶素子の駆動方法に関する。
 磁気トンネル接合素子(Magnetic Tunnel Junction素子、以下、MTJ素子という)を記憶素子とする不揮発性のMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory:磁気ランダムアクセスメモリ)が注目されている。MTJ素子は、磁化の方向が固定された参照層(固定磁化層)と、磁化の方向が変化する記録層(自由磁化層)とを絶縁層を挟んで積層した構成である(例えば、非特許文献1参照)。MTJ素子では、スピン注入による磁化反転により、記録層の磁化の方向を参照層の磁化の方向と同じ方向または逆の方向にすることによって、二値すなわち「1」と「0」のいずれか一方を不揮発的に記憶する。
 また、強磁性体からなる記録層と、絶縁層と、電極とを積層した構造において、電界の印加により記録層の磁化の方向を反転させる電界誘起磁化反転方式が発明者らによって提案されている(非特許文献1を参照)。この電界誘起磁化反転方式では、例えば、膜面に垂直な方向に磁化容易軸を有する記録層と電極との間に電圧を印加し、記録層の磁気異方性を変化させ、記録層の膜面に平行な一方向に有効磁界を変化させる。印加した電圧による電界は、変化した有効磁界を軸とした歳差運動を記録層の磁化に誘起する。記録層の磁化が半周期分の歳差運動をした時点で電圧の印加を停止することにより、歳差運動が停止されると同時に、記録層の磁化容易軸が垂直方向に戻ることで、記録層の磁化が反転する。
 一方、近年では人工知能の開発が進められている。人工知能においては、その学習に連続量(アナログ量)を取り扱えるようにすることで、人工知能の高速化、高性能化を図ることが可能である。
S. Kanai, M. Yamanouchi, S. Ikeda, Y. Nakatani, F. Matsukura, and H. Ohno, "Electric field-induced magnetization reversal in a perpendicular-anisotropy CoFeB-MgO magnetic tunnel junction," Applied Physics Letters, vol. 101, 122403 (3 pages), September 2012. doi:10.1063/1.4753816
 ところで、多値を記憶することができるようにしたMRAMでは、一対のMTJ素子のそれぞれが1ビット(「1」と「0」のいずれか一方)を記録することにより4状態を記憶することができるようにした構成もある。しかしながら、構造が複雑化したり、単位面積当たりの記憶容量の大きな向上が望めないという問題があった。このため、効率的に、連続量または多値の離散量を選択値として記憶することができる記憶素子が望まれている。
 本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、連続量または多値の離散量を選択値として効率的に記憶することができる記憶素子及び記憶素子の駆動方法を提供することを目的とする。
 本発明の記憶素子は、強磁性体で形成され、印加される書き込み電圧または書き込み電流によって3以上の磁化状態のうちの1の磁化状態に変化する記録層と、前記記録層の一方の面上に設けられた非磁性層と、記憶すべき値として3値以上の値のうちから選択される選択値に基づいて印加時間または大きさが制御される前記書き込み電圧または前記書き込み電流を、前記記録層に対して前記記録層と前記非磁性層との積層方向に印加する第1の電極とを備えるものである。
 本発明の記憶素子の駆動方法は、強磁性体で形成され、印加される書き込み電圧または書き込み電流によって3以上の磁化状態のうちの1の磁化状態に変化する記録層と、前記記録層の一方の面上に設けられた非磁性層と、前記書き込み電圧または前記書き込み電流を、前記記録層に対して前記記録層と前記非磁性層との積層方向に印加する第1の電極とを有する記憶素子に記憶すべき値として3値以上の値のうちから選択される選択値に基づいて前記書き込み電圧または前記書き込み電流の印加時間または大きさを決める決定ステップと、前記決定ステップで決められた印加時間または大きさで前記書き込み電圧または前記書き込み電流を前記第1の電極を介して前記記録層に印加する印加ステップとを有するものである。
 本発明によれば、記憶素子を構成する記録層の磁化状態を、記録層に印加される書き込み電圧または書き込み電流によって3以上の磁化状態のうちの1の磁化状態に変化させて選択値を記憶させるから連続量または多値の離散量を効率的に記憶することができる。
第1実施形態の記憶素子の構成を示す斜視図である。 電界強度の変化に対するホール抵抗の変化を模式的に示すグラフである。 電界強度の変化に対する記録層の磁化の状態の変化を示す説明図である。 所定の磁界の下で電界強度を変化させたときのホール抵抗を測定したグラフである。 書き込み電圧とホール抵抗及び選択値との関係を模式的に示すグラフである。 書き込み時に記憶素子に印加する電圧の例を示すグラフである。 トンネル磁気抵抗効果を利用して記憶素子の読み出しを行う例を示す説明図である。 磁気カー効果を利用して記憶素子の読み出しを行う例を示す説明図である。 磁気カー効果を利用して電極側から記憶素子の読み出しを行う例を示す説明図である。 第2実施形態の記憶素子の構成を示す斜視図である。 第2実施形態の記憶素子における書き込み電圧とホール抵抗及び選択値との関係を模式的に示すグラフである。 第2実施形態の記憶素子における書き込み時に記憶素子に印加する電圧の例を示すグラフである。 第3実施形態の記憶素子の構成を示す斜視図である。 第3実施形態の記憶素子における記録層の磁化の方向の回転を説明する説明図である。 第3実施形態の記憶素子における書き込み電圧、磁化回転角度及びホール抵抗の関係を示すグラフである。 第4実施形態の記憶素子の構成を示す斜視図である。 第4実施形態の記憶素子における書き込み電圧、磁化回転角度及びホール抵抗の関係を示すグラフである。
[第1実施形態]
 図1に示すように、第1実施形態の記憶素子10は、記録層(自由磁化層)11と、非磁性層12と、電極13aとを有している。この記憶素子10は、電界によって記録層11の磁化状態を変化させることにより、3値以上から選択される選択値を不揮発的に記憶する。この記憶素子10は、記録層11の磁化状態を段階的に変化させることによって、離散量を選択値として記憶するいわゆる多値メモリの記憶素子としても、また連続量を選択値として記憶するアナログメモリの記憶素子としても利用することができる。なお、複数の記憶素子10により、複数の選択値を記憶するメモリ装置を構成することができる。
 記憶素子10は、記録層11と電極13aとの間に非磁性層12を挟むように、これら記録層11、非磁性層12、電極13aを積層した構造になっている。なお、以下では、図1に示すように、記憶素子10の積層方向をZ方向とし、このZ方向に対して直交し、かつ互い直交する方向をX方向及びY方向とし、特にX、Y、Z方向での向きを区別する場合には、それぞれ図1中に矢印で示される向きの場合には「+」を、逆向きの場合には「-」を付して説明する。また、図1の記憶素子10において、電極13aが存在する方を上とし、記録層11が存在する方を下として説明するが、記憶素子10の姿勢を限定するものではない。さらに、以下では、記録層11、非磁性層12のZ方向を向く面を膜面と称して説明する。
 記録層11は、選択値が記録される層である。この記録層11は、強磁性体で形成されており、磁化容易軸が膜面と垂直な方向(Z方向)となる垂直磁気異方性を有している。詳細を後述するように、記録層11は、それに印加する電界を変化させることで磁化状態としての残留磁化が増減する。記録層11は、選択値を残留磁化の大きさとして記憶する。
 記録層11としては、非磁性層12を介した電界の印加によって、非磁性層12との界面でキャリア濃度が変化し、印加される電界によって垂直磁気異方性が変化する強磁性体であれば、特には限定されるものではない。記録層11の強磁性体としては、例えばCo、Ni、Fe、Mn、Cr、Nd、Gdを含む合金を用いることができる。具体的には、記録層11として、CoFeBやFeやCo、FeGd、(Ga、Mn)As等を用いることができる。この例では、記録層11の材料としてCoFeBを用いている。
 記録層11の厚み(Z方向の長さ)は、電界印加によるキャリア濃度の効率的な制御の観点から0nmよりも大きく20nm以下の範囲内とするのがよく、薄膜化による超常磁性化をより確実に防ぎ、残留磁化をより確実に持たせるために0.2nm以上20nm以下の範囲内にすることが更に好ましい。また、記録層11のX方向及びY方向の長さは、多磁区化するために少なくとも30nmとするのがよい。
 非磁性層12としては、絶縁体のうちでも常誘電性絶縁体、すなわち電界の印加により誘電分極が生じるが、電界を取り除くと分極が解消される誘電体が用いられる。非磁性層12としての常誘電性絶縁体としては、MgOやAlO、ZrO、SiO、SiN等の酸化物、窒化物等を用いることができる。非磁性層12の厚みは、より高品質な絶縁膜を作製するために少なくとも1nmとするのがよく、書き込み電流とリーク電流とをより確実に十分小さくするために少なくとも2nmとすることがさらに好ましい。
 上記記録層11の電界によって垂直磁気異方性が変化する効果は、非磁性層12との界面で生じる。このため、記録層11の膜面全体で垂直磁気異方性が変化するように、非磁性層12は、記録層11の一方の膜面の全面を覆うように設けられている。
 この例においては、非磁性層12を1層としているが、非磁性層12を異なる材料で形成された複数の層で構成してもよい。例えば記録層11側からMgO、ZrOを順番に積層した構成としてもよい。積層の順番は、記録層材料と接合した際に記録層11が好ましい磁気特性を得る順番とし、各層の厚みは、上述の通り高品質でリーク電流を十分小さくする厚さとすることが好ましい。例えば記録層11側からMgO、ZrOを順番に積層した構成とし、MgO層の厚みを2nm程度、ZrO層の厚みを45nm程度とすることができる。
 第1の電極としての電極13aは、記録層11に電界をかけるためのものである。この電極13aは、記録層11の下面に設けた電極13bとともに、書き込み電極対13を構成する。書き込み電極対13に電圧を印加することによって、記録層11に電界が印加される。電極13aは、非磁性層12の一方の面を覆うように形成されており、その一方の面に記録層11の膜面の全面が非磁性層12を挟んで対面する。電極13aは、それを形成する材料は特に限定されない。
 電極13bを形成する材料は、金属材料である。電極13bは、記録層11の非磁性層12が設けられた膜面以外に接続してもよい。電極13bは、記録層11と電気的に接続されて、電極13aと対をなして電圧を印加するためのものであり、そのようなものであればどのようなものであってもよい。したがって、例えば、半導体基板に形成された活性領域や配線層、コンタクト、MOSFETのゲート電極等の一部ないし一体に形成された部分が記録層11に電極13bとして接続される構成であってもよい。
 この例における記憶素子10では、記録層11に読み出し電流Irを流したときに生じるホール効果を利用して、記憶素子10に記憶されている選択値を読み出す。記憶素子10には、読み出し電流Irを流すための読み出し電極対16と、ホール効果によって発生するホール電圧VHallを取り出すための出力電極対17とが設けられている。読み出し電極対16は、記録層11のY方向に向く各面に接続された電極16a、16bからなる。出力電極対17は、記録層11のX方向に向く各面に接続された電極17a、17bからなる。すなわち、電極17a、17bは、読み出し電流Irが流れる方向に直交する記録層11の面に接続されている。この例では、ホール電圧VHallが読み出し電圧に相当する。
 書き込み電極対13の電極13bと同様に、読み出し電極対16の電極16a、16b及び出力電極対17の電極17a、17bは、それぞれ対をなして所定の方向に読み出し電流を流し、また出力されるホール電圧VHallを取り出すためのものであり、そのようなものであればどのようなものであってもよい。したがって、半導体基板に形成された活性領域や配線層、コンタクト、MOSFETのゲート電極等の一部ないし一体に形成された部分が記録層11に電極16a、16b、電極17a、17bとして接続される構成であってもよい。
 磁界印加部19は、記録層11に対して、その記録層11の膜面に垂直な磁界を印加する。すなわち、磁界印加部19は、記録層11の磁化容易軸に平行な磁界を印加する。この例では、磁界印加部19によって、矢印Bで示すように、記録層11から非磁性層12、電極13aの方向に向かう方向(+Z方向)に磁界がかけられている。この磁界印加部19は、例えば、磁化の方向が垂直方向に固定にされた強磁性体で形成されており、記憶素子10に近接して配されることにより、磁界印加部19からの漏れ磁界が記録層11に印加される。複数の記憶素子10によりメモリ装置を構成する場合、磁界印加部19は、各記憶素子10に共通のものとして設けることもできる。なお、磁界印加部19の構成は、上記構成に限定されるものではない。
 記録層11への情報の不揮発的な記録は、詳細を後述するように、記録層11に対してその磁化容易軸に平行な磁界を印加した状態で、記録層11に印加する電界を変化させたときに磁気特性、この例では磁化がヒステリシスをもって変化することを利用している。このように記録層11の磁化を電界の変化に対してヒステリシスをもって変化させるために、上記磁界印加部19は、記録層11に磁界を印加する。記録層11に印加する磁界の大きさは、電界を印加した際に十分なヒステリシスを有する大きさで、典型的には0A/mよりも大きくかつ、記録層11の異方性磁界以下である。地磁気等の記憶素子10ないしメモリ装置の外部の磁界(例えば地磁気)の影響を受けないようにするために磁気シールドを設けることが好ましい。
 書き込み制御部21は、書き込み電極対13に接続されており、記録層11に電界を印加するための電圧を出力する。記憶素子10に選択値を書き込む際に、書き込み電極対13を介して、記録層11の磁化特性を初期化する初期化電圧VRstを出力してから、記憶素子10に書き込むべき選択値に基づいて決まる書き込み電圧を出力する。書き込み制御部21は、初期化電圧VRst、書き込み電圧の出力を所定時間(印加時間)だけ行う。これにより、記録層11の残留磁化を選択値に対応したものとし、記憶素子10に選択値を記憶させる。初期化電圧VRst、各選択値に対応する書き込み電圧は、後述するように、記録層11の磁化特性等に基づいて予め決められている。
 なお、例えば記憶素子10に多値を記憶する場合では、各選択値に書き込み電圧を対応付けた変換テーブルを用意しておき、その変換テーブルを用いて書き込むべき選択値に対する書き込み電圧に変換すればよい。また、記憶素子10に連続量を記憶する場合では、例えば選択値と書き込み電圧との関係を示す関数の演算処理を行って、書き込むべき選択値に対する書き込み電圧を求めればよい。
 読み出し電源22aと検出部22bとは、記録層11に記憶された選択値を読み出す読み出し部22を構成している。読み出し電源22aは、読み出し電極対16に接続されており、読み出しの際に読み出し電極対16を介して読み出し電流Irを記録層11にその面内方向に流す。読み出し電流Irは、この例では、記録層11に対して電極16aから電極16bに向かう方向(+Y方向)に流される。
 検出部22bは、出力電極対17に接続されており、読み出し電流Irが流れたときに電極17aと電極17bと間に発生する電圧、すなわち記録層11に発生するホール電圧VHallを検出する。ホール電圧VHallは、周知のように、正常ホール効果成分と異常ホール効果成分とがあるが、正常ホール効果成分は磁界に比例するため変化しないので、異常ホール効果を介して、記録層11の残留磁化に対応したホール電圧VHallを得ることができる。この例では、検出部22bは、ホール電圧VHallと読み出し電流Irとから決まるホール抵抗RHall(=VHall/Ir)から選択値を特定する。これにより、記録層11に記憶されている選択値が読み出される。
 なお、この例では、上記のようにホール抵抗RHallから選択値を特定するが、ホール電圧VHallから選択値を特定してもよい。この場合には、読み出し電流Irの大きさに応じてホール電圧VHallが増減するので読み出しごとの読み出し電流Irを同じにする。また、複数の記憶素子10を設けたメモリ装置では、例えば行列状に配列された記憶素子10の列ごとに、上記書き込み制御部21及び読み出し部22を設けてもよい。また、このようなメモリ装置では、選択値に対する書き込み電圧を決める機能やホール抵抗RHallあるいはホール電圧VHallから選択値を特定する機能を、各書き込み制御部21及び各読み出し部22から分離して、それらに共通な1つの変換部とすることもできる。
 図2のグラフは、磁界印加部19によって磁界を印加した状態で、記録層11に印加する電界を電界強度E0(<0)から変化させたときのホール抵抗RHallの変化を模式的に示している。なお、印加する電界の向きと磁界の向きの正負を同方向にとるものとして、この例では磁界印加部19によって正の磁界を印加するようにしている。また、電界強度E0は、それよりも電界強度を小さくしても記録層11から得られるホール電圧VHallが変化しない電界強度としている。
 記録層11に印加する電界の電界強度を高くする過程では、電界強度が高くなるにしたがってホール抵抗RHallは減少する。このとき、電界強度E0を開始点として電界強度を高くすれば、それまでの電界強度によらずホール抵抗RHallは同じ変化を示す。一方、電界を電界強度E0から高くして任意の最大電界強度E1、E2、E3(0<E1<E2<E3)のいずれかにまで達してから、電界強度を低くした場合では、ホール抵抗RHallは異なる変化態様、すなわちヒステリシスを示し、電界強度を「0」としたときのホール抵抗RHallが互いに異なったものとなる。図示の例では、最大電界強度E1、E2、E3のそれぞれに対して、電界強度を「0」としたときホール抵抗RHallは、値Q1、Q2、Q3(Q1<Q2<Q3)となる。
 図3は、上記のように電界を変化させた場合の記録層11の磁化状態を模式的に示している。なお、図3中の記録層11内の矢印は、記録層11の各磁区における磁化の方向を示している。電界強度E0のときには、図3(A)のように、記録層11の各磁区の磁化が同じ方向(この例では上向き)に揃っており、ほぼ単磁区状態である。このときの磁化の向きは、磁界印加部19による磁界の向き(図3中の矢印B)と同じ向きである。また、このように所定の大きさの電界が印加されることによって、磁化の方向が一方向に揃うのは、当該電界の印加によって垂直磁気異方性が増大することで、磁壁のエネルギーが上昇し、また上述した磁界が印加されているためである。
 電界強度が高くなるのにともなって、記録層11の一部の磁区に磁化反転が生じ、下向きの磁化が増える。このように電界強度が高くなることによって、一部の磁区で磁化反転が生じる。これは、電界強度の増大(電界強度のプラス方向への変化)によって、磁壁のエネルギーが減少して静磁エネルギーが下るため、磁化の総和をゼロにする方向に変化が生じるからである。
 電界強度が高くなる過程における電界強度が「0」のときには、図3(B)のように、記録層11には、上向きの磁化と下向きの磁化が一定の比率で存在する。さらに、高い電界を増大して、例えば電界強度E3としたときには、図3(C)に示すように、下向きの磁化の比率は、電界強度が「0」のときよりもさらに増加する。
 この電界強度をE3から低くすると、これにともなって下向きの磁化の比率が減少し、電界強度E0になると、再び図3(A)のように記録層11の全ての磁化が上向きに揃った状態になる。この電界強度が低くなる過程における電界強度が「0」のときには、図3(D)のように、上向きの磁化と下向きの磁化が一定の比率で存在する。
 しかし、電界強度が低くなる過程において電界強度が「0」のときの上向きの磁化に対する下向きの磁化の比率は、電界強度が高くなる過程において電界強度が「0」のときの比率より大きくなる。これは、記録層11に磁界印加部19からの磁界が印加されており、上向きと下向きとの間のエネルギー障壁の存在に起因する。したがって、電界強度が「0」のときの上向きの磁化に対する下向きの磁化の比率は、直前の最大電界強度ごとに異なる。
 ここで、記録層11の各磁化の正負(上向き、下向き)を考慮した総和の平均が残留磁化である。したがって、電界強度が高くなる過程と低くなる過程とにおける上向きの磁化に対する下向きの磁化の比率の差が生じることが、電界の変化における磁化のヒステリシスとなる。電界強度の変化に対して磁化にヒステリシスが生じることで、電界強度を「0」としても、記録層11には最大電界強度に対応し、かつ最大電界強度ごとに異なる磁化が存在するので、選択値を不揮発的に記憶することができる。残留磁化は、膜面に垂直な磁化の平均であるから、上向きの磁化に対する下向きの磁化の比率に応じて決まり、それがホール抵抗RHallないしホール電圧VHallとして検出される。
 図4は、記憶素子10と同様な構成を持つ素子に、異なる強さの磁界をかけた状態で、それぞれ電界強度を-0.52V/nmと+0.52V/nmとの間で10回変化させたときのホール抵抗RHallの変化を実測したものである。磁界の強さは、磁束密度で+3.5mTと、0mTと、-3.5mTの3種類である。この測定により、磁界が+3.5mTと-3.5mTの場合で、電界強度が-0.1V/nmと+0.3V/nmとの間に磁化のヒステリシスが観測された。
 また、磁界が0mTかつ電界強度が-0.52V/nmであって、記録層に残留磁化が存在しホール抵抗RHallが飽和して一定値になっている状態(図4中の点A)から、電界を0mTとすることにより、ホール抵抗RHallは、ほぼ「0」となった。この状態から、再び電界強度を-0.52V/nmにしても、ホール抵抗RHallがほぼ「0」を維持することから、記録層11(図1参照)が多磁区状態になっていることがわかる。
 図5に一例を模式的に示すホール抵抗RHall(選択値)と印加する電圧との関係に基づいて、書き込むべき選択値に対応した書き込み電圧が決められている。ホール抵抗RHallと書き込み電圧の関係は、上述の電界強度E0を開始点として最大電界強度まで電界を高くしてから電界強度を低くしたときの、電界強度「0」におけるホール抵抗RHallと最大電界強度との関係から決められている。
 例えば、選択値P2に対応するホール抵抗RHallの値をQ2とした場合、ホール抵抗RHallの値Q2に対応する最大電界強度がE2であるから、記録層11に最大電界強度E2を印加する書き込み電圧Vw2が選択値P2を書き込むための書き込み電圧とされる。また、初期化電圧VRstとしては、記録層11に電界強度E0以下の電界を印加することができる電圧に設定される。
 書き込み電圧の設定可能な範囲は、電界強度を高くする過程と低くする過程とにおいて電界強度が「0」であるときにホール抵抗RHallに差が生じる範囲であるが、その範囲の上限電圧VUpper未満とする。書き込み電圧が上限電圧VUpperに達した後に書き込み電圧を低く(電界強度を低く)した場合は、図5に二点鎖線で示すように、それまでのホール抵抗RHallと書き込み電圧との関係とは異なるものとなって、記憶素子10に記憶されている1つの選択値Paに対して、異なる書き込む選択値が対応することになるためである。
 なお、上記の上限電圧VUpperを初期化電圧VRstとして、図5に二点鎖線で示される関係に基づいて、選択値に対する書き込み電圧を決めることもできる。この場合には、書き込み制御部21は、初期化電圧VRst(=VUpper)を出力してから、初期化電圧VRstよりも低い選択値に対応した書き込み電圧を出力する。また、図5に実線で示す関係と二点鎖線で示す関係を併用することも可能である。
 次に、上記構成の作用について説明する。選択値を記憶素子10に書き込む場合には、書き込み制御部21は、図6に示すように、まず初期化電圧VRstを所定時間出力する。初期化電圧VRstが書き込み電極対13、非磁性層12を介して記録層11に所定時間印加されることにより、記録層11には電界強度E0の電界がかかり、図3(A)に示されるように、記録層11内の各磁化方向が揃った状態に初期化される。
 初期化電圧VRstの出力後、書き込み制御部21は、書き込むべき選択値に応じた書き込み電圧を所定時間出力する。例えば、選択値P2を書き込む場合には、選択値P2に対応した書き込み電圧Vw2が出力される。この書き込み電圧Vw2が書き込み電極対13、非磁性層12を介して記録層11に所定時間印加される。この後に記録層11に印加される電圧が0Vとなる。これにより、記録層11にかかる電界は、電界強度E0から書き込み電圧Vw2に応じた最大電界強度E2まで高くされてから電界強度「0」になる。この結果、記録層11の磁化の状態が変化し、その状態が保持される。このとき、記録層11は、最大電界強度E2に対応した残留磁化となる。
 同様に、選択値P1、P3を書き込む場合には、書き込み制御部21は、初期化電圧VRstを所定時間出力した後に、選択値P1、P3に対応した書き込み電圧Vw1、Vw3を所定時間出力する。これにより、記録層11にかかる電界は、電界強度E0から書き込み電圧Vw1、Vw3に応じた最大電界強度E1、E3まで高くされてから電界強度「0」になり、結果として記録層11は、最大電界強度E1、E3に対応した残留磁化になる。なお、他の選択値の書き込みについても同様である。
 上記のようにして、電圧の印加により記録層11の残留磁化を段階的あるいは連続的に変化させて離散量あるいは連続量の選択値が記憶素子10に書き込まれる。そして、記憶素子10には、記録層11への電界の印加によって選択値を書き込んでいるため、電流を流して磁化状態を変化させる構成の記憶素子、例えば電流による外部磁界を印加して記録層の磁化状態を変化させる構成やスピン注入によって記録層の磁化状態を変化させる構成の記憶素子に比べて、書き込み動作の消費電力が小さい。1個の記憶素子の消費電力は、スピン注入方式に対して、上記構成の記憶素子10では100倍から1000倍程度低減可能である。
 記憶素子10から選択値を読み出す場合には、読み出し電源22aからの読み出し電流Irが記録層11に対して電極16aから電極16bに向かう方向に流される。記録層11に対して読み出し電流Irが流れると、記録層11の残留磁化に応じたホール効果が発生する。そして、そのホール効果によるホール電圧VHallが出力電極対17から出力され検出部22bに入力される。検出部22bは、入力されるホール電圧VHallと読み出し電流Irとからホール抵抗RHallを取得する。
 残留磁化は、選択値の書き込み時の書き込み電圧に対応したものとなっている。したがって、例えば、読み出しの直前に書き込み電圧Vw2で書き込みがなされている場合には、読み出し時には最大電界強度E2に対応した残留磁化による値Q2のホール抵抗RHallが得られる。これにより、値Q2に対応した選択値P2が特定される。結果として、記憶素子10から選択値P2を読み出される。
 読み出しの直前に書き込み電圧Vw1、Vw3で書き込みがなされている場合には、それぞれの残留磁化による値Q1、値Q3のホール抵抗RHallが得られ、これにより選択値P1,P2が特定されるので、結果として選択値P1、P3が読み出される。なお、他の選択値の読み出しについても同様である。
 上記のようにして、記憶素子10からは、その記録層11の磁化状態として記憶されている離散量あるいは連続量の選択値が読み出される。
 上記の例では、ホール効果を利用して選択値の読み出しを行っているが、読み出しの手法は、これに限定されない。図7はトンネル磁気抵抗効果(TMR:Tunnel Magneto Resistance Effect)を利用して選択値の読み出しを行う例を示している。この例の記憶素子30では、記録層11上に非磁性層32、参照層(固定磁化層)33が積層されており、磁気トンネル接合(以下、MTJ:Magnetic Tunnel Junction)が形成されている。記録層11の膜面上に設けられた非磁性層32は、トンネルバリアとして非常に薄く例えば2nmのMgO等の常誘電性絶縁体で形成されている。
 記録層11との間に非磁性層32を挟むように設けた参照層33は、強磁性体で形成されており、磁化方向が垂直方向(Z方向)の一方、例えば上方向に固定されている。参照層33は、電極34が接続されており、この電極34を介して書き込み制御部21に接続されている。参照層33は、非磁性層32と記録層11との界面の全体に電界がかかるようにする電極としても機能する。電極34は、電極13bとともに電極対を構成し、この電極対は、選択値の書き込みと読み出しの両方に用いられる。
 この記憶素子30では、選択値の書き込みの際には、電極34と電極13bとを介して、書き込み制御部21からの初期化電圧VRstと選択値に対応した書き込み電圧が印加される。一方、読み出しでは、非磁性層32を介して記録層11にトンネル電流が流れるように、読み出し部35が電極34と電極13bとの間に電圧を印加し、このときに流れる電流から記憶素子30の電気抵抗を検出する。記録層11の残留磁化が検出される電気抵抗として現われるので、記憶素子30に記憶されている選択値を読み出すことができる。なお、読み出し時に記憶素子30に流す読み出し電流の向きは電極34から電極13bに向かう方向でも、その逆向きでもよい。
 なお、同様な構成を用いて巨大磁気抵抗効果(GMR:Giant Magneto Resistive effect)を用いて選択値の読み出しを行ってもよい。この場合、非磁性層32としては、非磁性金属を用いる。
 また、図8に示すように、磁気カー効果を利用して記憶素子10から光学的に選択値を読み出すこともできる。図8の例では、非磁性層12とは反対側の記録層11の面11aに読み出し光としての直線偏光を照射する照射部36と、面11aからの反射光を受光する受光部37とを備えている。受光部37は、特定の方向の偏光だけを透過する偏光フィルタと、この偏光フィルタを介して光を受光する検出器を有している。照射部36からの直線偏光が面11aで反射されると、その反射光は、磁気光学カー効果(この例では極カー効果)によって楕円偏光となって、その主軸の向きが入射した直線偏光の偏光方向から回転する。受光部37は、特定の方向の偏光だけを透過する偏光フィルタと、この偏光フィルタを介して光を受光する検出器を有している。このため、受光部37の検出器で検出される光の強度は、楕円偏光の主軸の向きに応じたものになる。偏光方向の回転角(カー回転角)は、記録層11の残留磁化に比例するので、受光部37の検出器で検出される光の強度により、記録層の残留磁化を検出でき、選択値を読み出すことができる。
 なお、非磁性層12、電極13aが光学的透明としてみなせる場合には、図9に示すように電極13aに直線偏光を照射し、その電極からの反射光を受光するように照射部36と受光部37とを配してもよい。
 上記実施形態では、印加する書き込み電圧によって、記録層の磁化特性として残留磁化を増減して選択値を記憶素子に記憶させているが、印加する書き込み電圧によって、保磁力、磁化率、磁気異方性等の磁化特性を変化させて選択値を記憶素子に記憶させてもよい。また、上記実施形態では、書き込みを行う場合に、初期化電圧の印加によって、記録層を初期化しているが、初期化を行う代わりに、書き込みの直前に記憶素子に記憶されている選択値(記録層の磁化状態)と書き込むべき選択値とから書き込み電圧を決めてもよい。
 [第2実施形態]
 第2実施形態は、スピン注入(スピントランスファートルク)方式により、磁化状態(残留磁化)を段階的あるいは連続的に変化させて離散量あるいは連続量の選択値を記憶素子に書き込むものである。なお、以下に詳細を説明する他は、第1実施形態と同じであり、同じ構成部材には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
 図10に示すように、第2実施形態の記憶素子40は、記録層11上に非磁性層42と参照層43とを順番に積層した構成であり、磁気トンネル接合(以下、MTJ:Magnetic Tunnel Junction)が形成されている。非磁性層42は、トンネルバリアとして形成されている。参照層43は、強磁性体で形成されており、磁化方向が垂直方向(Z方向)の一方、例えば上方向(+Z方向)に固定されている。参照層43には、電極44が接続されており、この電極44を介して参照層43が書き込み制御部45に接続されている。電極44は、電極13bとともに、書き込み電極対を構成する。
 非磁性層42としては、絶縁体でも非磁性金属であってもよい。例えば、MgOやAlO、ZrO、SiO、SiN等の酸化物、窒化物絶縁体等、あるいはCuなどの非磁性金属を用いることができる。また、非磁性層42の厚みは、スピン緩和長と同程度かそれよりも小さいことが好ましく、0nmよりも大きく2nm以下の範囲内とするのがよい。
 書き込み制御部45は、選択値を記憶素子40に書き込む際に、電極13bと電極44との間に電圧を印加して、記録層11と非磁性層42と参照層43との積層体に書き込み電流を流すこと(書き込み電流の印加)により、スピン注入方式で記録層11の磁化状態を変化させる。このスピン注入により、第1実施形態と同じく、記録層11中の上向きの磁化と下向きの磁化の比率を変化させる。なお、スピン注入方式で記録層11の磁化状態を変化させる場合では、記録層11中の各磁区が上向きに揃った状態と下向きに揃った状態との間で変化する。
 書き込み制御部45は、選択値の書き込みの際には、第1実施形態と同様に、初期化電圧VRstと、選択値に対応した書き込み電圧とを順番に印加して書き込み電流を流す。初期化電圧VRstと書き込み電圧によって書き込み電流を流す時間(印加時間)は、それぞれ予め決められた一定の時間となるように制御される。
 スピン注入で磁化反転させる場合、記録層11内の各磁区の磁化の反転は、確率的に生じ、印加電圧を高くして書き込み電流を大きくすることで反転確率が高くなる。初期化電圧VRstはいずれの磁化状態からも、上記一定時間の下で記録層11中の各磁化を一方向に揃えることができる印加電圧に設定されている。各々の選択値に対応する書き込み電圧は、一定時間の下で書き込むべき当該選択値に対応したホール抵抗RHallが得られる状態に記録層11中の上向きの磁化と下向きの磁化の比率を変化させる印加電圧として決められる。
 図11にホール抵抗RHall(選択値)と印加電圧との関係の一例を示す。印加電圧の変化に対する残留磁化、すなわちホール抵抗RHallの変化は、ヒステリシスを有しており、図中に実線と二点鎖線とで示されるように、記録層11中の各磁化が上向きに揃った状態から磁化反転していく場合と、各磁化が下向きに揃った状態から磁化反転していく場合とでは、印加電圧とホール抵抗RHallとの関係が異なる。この例では、実線で示される関係に基づいて、初期化電圧VRstと選択値に対する書き込み電圧とを設定している。このため、初期化電圧VRstとして負の印加電圧が設定され、書き込み電圧として正の電圧が設定されている。なお、二点鎖線で示される関係に基づいて、書き込み電圧を決めてもよい。この場合、初期化電圧VRstを正の電圧(Vupper)以上に設定する。
 図12に示すように、例えば、記憶素子40に選択値P2を書き込む場合には、書き込み制御部45によって、まず記憶素子40に初期化電圧VRstを一定の印加時間だけ印加する。この初期化電圧VRstの印加により、例えば電極44から電極13bに向けて書き込み電流が流される。これにより、電子が記録層11から非磁性層42を透過して参照層43に移動し記録層11の電子のスピンにトルクを作用することによって、記録層11の各磁化の方向が順次に参照層43の磁化の方向と逆向き(反平行)になる。この結果、初期化電圧VRstの印加終了までには、記録層11の全ての磁化の方向が参照層43の磁化の方向(上向き)と逆の下向きになる。このようにして、初期化電圧VRstの印加で記録層11が初期化される。
 続いて、選択値P2に対応する書き込み電圧Vw2が一定の印加時間だけ記憶素子40に印加される。この例では、書き込み電圧Vw2は、正の電圧であるから、電極13bから電極44に向けて書き込み電流が流される。これにより、記録層11の下向きであった磁化が上向きに反転する。このときに、書き込み電圧Vw2と印加時間が限定的であるため、磁化反転する量は、その書き込み電圧Vw2と印加時間とに基づくものとなる。この結果、記録層11は、選択値P2に対応した残留磁化を有する状態になり、選択値P2を記憶した状態になる。なお、他の選択値の場合についても同様である。
 上記のようにして、記憶素子40は、記録層11の磁化状態(残留磁化)を段階的あるいは連続的に変化させて離散量あるいは連続量の選択値が書き込まれる。記憶素子40からの選択値の読み出しは、ホール効果を利用して読み出す。この読み出しは、第1実施形態と同様であるからその説明を省略する。
 なお、スピン注入方式で記録層11の磁化状態を変化させる場合においても、図7、図8及び図9に示す例と同様に、トンネル磁気抵抗効果、巨大磁気抵抗効果、磁気カー効果を利用して記憶素子から選択値を読み出すこともできる。トンネル磁気抵抗効果、巨大磁気抵抗効果を利用する場合は、記録層11の磁化状態と参照層43との関係でトンネル磁気抵抗効果、巨大磁気抵抗効果による電気抵抗を取得すればよい。また、トンネル磁気抵抗効果を利用する場合には、非磁性層42として絶縁体を用い、巨大磁気抵抗効果を利用する場合には非磁性層42として非磁性金属を用いる。
[第3実施形態]
 第3実施形態の記憶素子は、記録層の面内磁化をその面内で回転させることにより、3値以上から選択される選択値を不揮発的に記憶して、多値を記憶することができるようにしたものである。なお、この第3実施形態の記憶素子についても、複数の記憶素子により、複数の選択値を記憶するメモリ装置を構成することができる。
 図13に示すように、第3実施形態の記憶素子50は、記録層51と、非磁性層52と、参照層53とを有し、これらはその順番で積層されている。また、記憶素子50には、磁界印加部54が設けられている。さらに、記録層51の上面及び参照層53の下面にはそれぞれ電極55a、55bが設けられている。電極55a、55bは、記憶素子50に書き込み電圧として電圧パルスの印加と、読み出し電流を流す電極対として用いられる。上記電極55a、55bは、書き込み制御部57と読み出し部58とに接続されている。
 記録層51は、強磁性体で形成されており、膜面に平行な磁化容易軸を有し、その膜面に垂直な磁界の下で電界がかけられることによって、磁化状態として、その面内で磁化の方向が変化する。この記録層51は、選択値を磁化の方向として記憶する。記録層51の強磁性体としては、例えばCo、Ni、Fe、Mn、Cr、Nd、Gdを含む合金を用いることができる。具体的には、記録層51として、CoFeB等を用いることができる。この例では、記録層51の材料としてCoFeBを用いている。記録層51の厚み(Z方向の長さ)は、電界印加によるキャリア濃度の効率的な制御の観点からは0nmよりも大きく20nm以下の範囲内とするのが好ましく、より確実に面内磁化容易軸を発現させる観点からは1nm以上3nm以下の範囲内が好ましい。
 記録層51は、図14に示すように、複数、この例では8個の突出部(突出領域)51a~51hが周縁部に時計回りにその順番で形成されている。突出部51a~51hは、記録層51の周方向に45度間隔で設けられている。なお、非磁性層52及び参照層53についても、記録層51と同じ形状にされており、積層体がその周縁部に8個の突出部を有した形状になっている。
 記録層51は、上記のように突出部51a~51hを形成することによって形状異方性を持ち、これにより形状磁気異方性を有している。すなわち、記録層51は、互いに180度ずれた一対の突出部を結ぶ各軸がそれぞれ長軸になり、互いに180度ずれた一対のノッチを結ぶ各軸がそれぞれ短軸になり、各長軸方向に磁化の安定位置がある。ノッチは、隣接した突出部と突出部との間の谷部である。また、記録層51の長軸の長さと短軸の長さとの比(長軸の長さ/短軸の長さ)は、形状磁気異方性により十分な熱安定性を確保するために、デバイスの大きさや膜厚等に応じて設計される。
 記録層51の磁化の方向は、面内で回転されることにより、突出部51a~51hを向く第1~第8磁化方向のいずれか1つの方向になる。第1磁化方向は、突出部51aを向いた方向である。また、第2磁化方向は、第1磁化方向から磁化の方向が時計方向に45度回転し、突出部51bを向いた状態である。以下、同様に、第3~第8磁化方向は、時計方向に45度ずつ回転し、突出部51c~51hを向く方向である。なお、参照層53は、この例では、図14に示すように、記録層11の第7磁化方向と同じ方向に磁化の方向が固定されている。
 磁界印加部54による磁界の下で、記録層51に書き込み電圧を印加することにより、記録層51の強磁性体としての磁気異方性が変化するため、磁化は歳差運動が誘起されて面内で回転する。書き込み制御部57は、書き込み電圧のパルス幅を制御することにより、磁化の歳差運動を第1~第8磁化方向のいずれかの位置で停止する。第1~第8磁化方向の隣接したいずれか2つの間には、ノッチによるエネルギー障壁があるため、書き込み電圧の印加を停止した後にも、磁化方向は電圧を切った状態を維持する。これにより、記憶素子50は、不揮発的に選択値を記憶する。この例では、磁界印加部54によって、矢印Bで示すように、記録層51から非磁性層52、参照層53に向かう方向(-Z方向)に磁界がかけられている。
 非磁性層52は、トンネル磁気抵抗効果を利用して記憶素子50から選択値の読み出しをするために、絶縁体で例えば1nm程度に極薄く形成されている。非磁性層52を形成する絶縁体としては、例えばAlO、ZrO、SiO、SiN等の酸化物、窒化物等を用いることができる。
 参照層53は、強磁性体で形成されており、その磁化の方向が膜面に平行な一方向に固定されている。参照層53としては、例えばCo、Ni、Fe、Mn、Cr、Nd、Gdを含む合金を含む材料で構成される。具体的には、CoFeBやFeやCo、FePt、CoPt、(Ga、Mn)As等を用いることができる。特には、Fe合金が高いトンネル磁気抵抗比を有するという点から好ましい。参照層53の厚み(Z方向の長さ)は、十分に磁化が固定される膜厚として設計する。参照層53の厚みは、少なくとも1nmとするのがよい。
 磁界印加部54は、記録層51に対して、その記録層11の膜面に垂直な方向に磁界を印加する。すなわち、磁界印加部54は、記録層51の磁化方向と直交する方向に磁界を印加する。この磁界は、記録層51に電界がかけられたときに、記録層51の磁化をその面内で回転させるためのものである。記録層51に印加する磁界の大きさ(絶対値)は、メモリ書き込みに要求される速度により決定され、例えば1ナノ秒での第1磁化方向から第8磁化方向までの動作が期待される場合、30000A/m(約36mT)以上とすることが好ましい。
 磁界印加部54は、例えば、記憶素子50に近接して配され、磁化の方向が垂直方向に固定にされた強磁性体で形成されており、その強磁性体からの漏れ磁界が記録層51に印加される。第1実施形態の磁界印加部19と同様に、複数の記憶素子50を設けてメモリ装置を構成する場合、磁界印加部54は、各記憶素子50に共通のものとして設けることもできる。なお、磁界印加部54の構成は、上記構成に限定されるものではない。磁界印加部54による磁界は、記録層51に電界を印加したときに、面内で磁化方向を回転させるためなので、例えば配線に電流を流して、必要な磁界を発生させてもよい。外部磁界の方向により、磁化の回転方向が決定されるから、外部磁界の方向を切り替え、回転方向を任意に制御することが可能である。
 書き込み制御部57は、電極55a、55bを介して記憶素子50にパルス状の書き込み電圧を印加する。この書き込み制御部57は、書き込み電圧のパルス幅すなわち印加時間を書き込むべき選択値に基づいて決める。より具体的には、書き込み制御部57は、書き込むべき選択値と書き込みの直前に記憶素子50に記憶されている選択値(記録層51の磁化の方向)とからパルス幅を決める。書き込みの直前に記憶素子50に記憶されている選択値は、読み出し部58による読み出しを行って取得する。書き込み電圧のパルス幅が大きくなると、記録層51の磁化の回転する角度が大きくなり、また書き込み電圧を印加するごとに、基準からの記録層51の回転角度が増大する。
 読み出し部58は、読み出しの際に、非磁性層52を介して記録層11にトンネル電流が流れるように、一方向に読み出し電流を流し、このときのトンネル磁気抵抗効果による記憶素子50の電気抵抗Rmを検出する。周知のように、この電気抵抗Rmは、参照層53の磁化の方向に対する記録層51の磁化の方向に応じて変化するから、記録層51が第1~第8磁化方向のいずれであるか、すなわち記憶素子50が記憶している選択値を読み出すことができる。なお、読み出し時に記憶素子50に流す読み出し電流の向きは電極55aから電極55bに向かう方向でも、その逆向きでもよい。
 記憶素子50では、参照層53の磁化の方向を軸にして、記録層51における第1磁化方向と第5磁化方向、第2磁化方向と第4磁化方向、第6磁化方向と第8磁化方向とがそれぞれ線対称である。このため、線対称な磁化方向同士では、トンネル磁気抵抗効果による電気抵抗Rmが同じになる。そこで、この例は、線対称な磁化方向同士では、その一方にだけ選択値を対応させている。例えば、第1磁化方向に選択値P1、第2磁化方向に選択値P2、参照層53の磁化の方向に対して逆の方向を向く第3磁化方向に選択値P3、第6磁化方向に選択値P4、参照層53の磁化の方向に対して同じ方向を向く第7磁化方向に選択値P5をそれぞれ対応させている。これにより、記憶素子50は、互いに異なる5値(選択値P1~P5)の記憶が可能である。上記の説明からわかるように、この例では、記録層51の8つの安定位置のうち、実際に選択値に対応するのは5つの安定位置である。
 上記構成の作用について説明する。選択値を記憶素子50に書き込む場合には、まず読み出し部58による当該記憶素子50の読み出しを行う。読み出し部58は、例えば記録層51に対して電極55aから電極55bに向う方向に読み出し電流を流すことにより、記憶素子50の電気抵抗Rmを検出する。そして、この電気抵抗Rmから記録層51の磁化方向、すなわち記憶素子50に記憶されている選択値を特定する。このようにして、選択値の読み出しが行われる。
 書き込み制御部57は、上記のように読み出された選択値を読み出し部58から取得し、この読み出された選択値とこれから書き込む選択値とに基づいて、書き込み電圧のパルス幅を決定する。
 図15に一例を示すように、書き込み電圧のパルス幅が大きくなると、磁化の回転する角度が大きくなり、また書き込み電圧を印加するごとに、基準からの記録層51の回転角度である磁化回転角度θが増大する。このため、書き込み制御部57は、読み出された選択値に対応した記録層51の磁化方向から書き込む選択値の磁化方向までの一方向(図14の時計方向)における角度にほぼ比例した書き込み電圧のパルス幅を決定し、このパルス幅の書き込み電圧を電極55a、55bを介して記録層51に印加する。なお、図15の磁化回転角度θは、図14に示すように、第1磁化方向を基準とした角度としてある。
 磁界印加部54による磁界の下での書き込み電圧の印加により、記録層51の磁化の歳差運動が誘起されて、その磁化の面内での回転が開始する。そして、書き込み電圧の印加が停止することで、磁化の歳差運動が停止される。書き込み電圧のパルス幅は、上記のように決められているので、記録層51の磁化は、書き込む選択値に対応した第1~第3、第6、第7磁化方向のいずれかの位置で停止する。そして、電圧の印加の停止後もその方向を維持する。
 例えば、図15に示すように、記録層51が第1磁化方向であって選択値P1が記憶されているときに、選択値P3を記憶素子50に書き込む場合では、パルス幅W1の書き込み電圧を記憶素子50に印加する。このパルス幅W1は、第1磁化方向から選択値P3に対応した第3磁化方向との時計方向での角度にほぼ比例した幅にされる。これにより、記録層51の磁化方向は、磁界が印加されている方向からみて時計方向に回転して第1磁化方向から第3磁化方向に変化する。
 この後に、選択値P6を記憶素子50に書き込む場合では、パルス幅W2の書き込み電圧を記憶素子50に印加する。このパルス幅W2は、第3磁化方向から選択値P6に対応した第6磁化方向との時計方向での角度にほぼ比例した幅にされる。これにより、記録層51の磁化方向は、磁界が印加されている方向からみて時計方向に回転して第3磁化方向から第6磁化方向に変化する。
 他の選択値を書き込む場合においても、同様に書き込み電圧のパルス幅を決定して、そのパルス幅の書き込み電圧を記憶素子50に印加する。これにより、書き込むべき選択値に対応した記録層51の磁化の方向が変化し、選択値が記憶素子50に記憶される。なお、磁化回転角度θが360度となると、記録層51の磁化の方向が1回転して第1磁化方向に戻る。
 記憶素子50から選択値を読み出す場合には、選択値を記憶素子50に書き込む前の読み出しと同様に、読み出し部58は、電極55aから電極55bに向かう方向に記憶素子50に読み出し電流を流すことにより、記憶素子50の電気抵抗Rmを検出する。そして、この電気抵抗Rmから選択値を特定する。
 例えば、記録層51の磁化の方向が第3磁化方向である場合には、その磁化の方向と参照層53の磁化方向とが反平行になるから、電気抵抗Rmが最も高くなる。一方、記録層51の磁化の方向が第7磁化方向である場合には、その磁化の方向と参照層53の磁化方向とが平行になるから、電気抵抗Rmが最も低くなる。そして、記録層51のそれら以外の磁化の方向についての電気抵抗Rmは、第3磁化方向と第7磁化方向の各電気抵抗Rmの間で、参照層53の磁化の方向との角度の違いに応じた互いに異なる値となる。これにより、電気抵抗Rmより選択値が特定される。
 上記の例では、トンネル磁気抵抗効果を利用して記憶素子から選択値の読み出しを行っているが、第1、第2実施形態と同様に、記録層のホール効果、巨大磁気抵抗効果、磁気カー効果を用いて選択値の読み出しを行ってもよい。読み出しに、ホール効果、巨大磁気抵抗効果、磁気カー効果を用いる場合は、非磁性層は、非磁性金属であってもよい。
 また、上記の例では、記録層の磁化の方向が5の安定位置のいずれか1つに移動する例について説明したが、安定位置の個数は、これに限定されず、3以上の安定位置のいずれか1つに移動するように形状磁気異方性を記録層に持たせてもよい。また、形状異方性以外の手法で安定位置を設定してもよい。形状異方性以外の手法としては、例えば結晶磁気異方性がある。
[第4実施形態]
 第4実施形態の記憶素子は、スピン注入により記録層の磁化の方向を回転させるものである。この第4実施形態の記憶素子は、以下に詳細を説明するように、スピン注入により磁化の方向を回転させる構成となっている他は、第3実施形態と同じである。このため、第3実施形態と、実質的に同じ構成部材には、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。なお、第4実施形態の記憶素子60では、磁界印加部は設けられていない。
 図16に示すように、記憶素子60の記録層51は、強磁性体から構成され、膜面に平行な方向に磁化容易軸を有し、スピン注入により磁化の方向が変化する。この例における記録層51は、記録層51の強磁性体としては、例えばCo、Ni、Fe、Mn、Cr、Nd、Gdを含む合金を用いることができる。具体的には、記録層51として、CoFeBやFeやCo、FeGd、(Ga、Mn)As等を用いることができる。特には、Fe合金が高いトンネル磁気抵抗比を有するという点から好ましい。この例では、記録層51の材料としてCoFeBを用いている。記録層51の厚み(Z方向の長さ)は、スピン緩和長と同程度のオーダーかそれよりも小さいことが好ましく、0nmよりも大きく10nm以下の範囲内とするのがよい。
 非磁性層52は、スピン注入による記録層51の磁化方向の回転、トンネル磁気抵抗効果を利用した記憶素子50から選択値の読み出しをするために、絶縁体で例えば1nm程度に極薄く形成されている。
 参照層53は、強磁性体で形成されており、その磁化の方向が膜面に平行な一方向に固定されているが、膜面と平行ではない一方向に磁化が固定されていてもよい。参照層53の厚み(Z方向の長さ)は、十分に磁化が固定される膜厚として設計する。このため、参照層53の厚みは、少なくとも1nmとするのがよい。
 書き込み制御部61は、電極55a、55bに電圧を印加することにより、記憶素子50に書き込み電流を流す。この書き込み制御部57は、電圧を印加する時間と電圧、すなわち書き込み電流を流す時間(印加時間)と、書き込み電流の大きさとを制御して、スピン注入による記録層51の磁化の方向の回転角度を制御する。また、書き込み電流の向きにより、記録層51の磁化の方向の回転方向を制御する。
 第3実施形態と同様に、参照層53の磁化の方向を軸にして記録層51の線対称な磁化方向同士では、その一方にだけ選択値を対応させている。この例では、例えば第1磁化方向に選択値P1、第2磁化方向に選択値P2、第3磁化方向に選択値P3、第8磁化方向に選択値P4、第7磁化方向に選択値P5をそれぞれ対応させており、第1磁化方向を中心とする180度の範囲で磁化方向を変化させるようにしている。第3実施形態と同様に、書き込み電流を流す時間と書き込み電流の大きさ、向きとは、書き込むべき選択値と書き込みの直前に記憶素子50に記憶されている選択値(記録層51の磁化方向)とから決める。
 図17に示すように、書き込み電流を流す時間を増減することにより、スピン注入によって記録層51に与えられる角運動量が増減され、記録層51の磁化の面内での回転角度が増減される。また、書き込み電流の向きにより、記録層51の磁化の回転方向を変えることができる。書き込み制御部61は、書き込むべき選択値に対応した第1~第3、第7、第8磁化方向のいずれかに記録層51の磁化の方向が停止するように、書き込み電流を流す時間と書き込み電流の向きを制御する。これにより、記憶素子60に任意の選択値を書き込むことができる。
 本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形・変更が可能であることは言うまでもない。記録層は、3以上の磁化状態を取り得るものであればよく、当然4以上の磁化状態、5以上の磁化状態を取り得るものであってもよい。
10、30、40、50、60 記憶素子
11、51 記録層
12、32、42、52 非磁性層
13 書き込み電極対
16 読み出し電極対
17 出力電極対
19、54 磁界印加部
33、43、53 参照層

 

Claims (16)

  1.  強磁性体で形成され、印加される書き込み電圧または書き込み電流によって3以上の磁化状態のうちの1の磁化状態に変化する記録層と、
     前記記録層の一方の面上に設けられた非磁性層と、
     記憶すべき値として3値以上の値のうちから選択される選択値に基づいて印加時間または大きさが制御される前記書き込み電圧または前記書き込み電流を、前記記録層に対して前記記録層と前記非磁性層との積層方向に印加する第1の電極と
     を備えることを特徴とする記憶素子。
  2.  前記記録層の面に直交する方向の磁界を前記記録層に印加する磁界印加部を備え、
     前記非磁性層は、常誘電性絶縁体であり、
     前記第1の電極は、前記記録層との間に前記非磁性層を挟むように形成され、
     前記記録層は、印加される前記書き込み電圧によって前記磁化状態としての残留磁化が増減するように磁化特性が変化する
     ことを特徴とする請求項1に記載の記憶素子。
  3.  前記記録層との間に前記非磁性層を挟むように設けられ、磁化の方向が固定された参照層を有し、
     前記第1の電極は、前記記録層、前記非磁性層及び前記参照層の積層体に前記書き込み電流を流し、
     前記記録層は、前記書き込み電流によって、前記磁化状態としての残留磁化が増減することを特徴とする請求項1に記載の記憶素子。
  4.  前記記録層は、前記3以上の磁化状態に対応して、前記記録層の磁化の方向についての3以上の安定位置を面内にもつ磁気異方性を有すること特徴とする請求項1に記載の記憶素子。
  5.  前記記録層は、周縁部に各前記安定位置に対応した複数の突出領域が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の記憶素子。
  6.  前記記録層の面に直交する方向の磁界を前記記録層に印加する磁界印加部を備え、
     前記第1の電極は、前記記録層に前記書き込み電圧を印加し、
     前記記録層は、前記磁界印加部による磁界を印加した状態で前記書き込み電圧の印加により磁化の方向が前記安定位置のいずれか1つに移動する
     ことを特徴とする請求項4または5に記載の記憶素子。
  7.  前記記録層との間に前記非磁性層を挟むように設けられ、磁化の方向が固定された参照層を有し、
     前記第1の電極は、前記記録層、前記非磁性層及び前記参照層の積層体に前記書き込み電流を流し、
     前記記録層は、前記書き込み電流により前記記録層の磁化の方向が前記安定位置のいずれか1つに移動する
     ことを特徴とする請求項4または5に記載の記憶素子。
  8.  前記記録層に接続され、前記記録層の面内方向に読み出し電流を流す読み出し電極対と、
     前記読み出し電流が流れることによって前記記録層に生じるホール効果によって発生する前記記録層の残留磁化に対応した読み出し電圧を出力する出力電極対と
     を備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の記憶素子。
  9.  前記記録層との間に前記非磁性層を挟むように設けられ、磁化の方向が固定された参照層を有し、
     前記第1の電極は、前記記録層、前記非磁性層及び前記参照層の積層体に読み出し電流を流す
     ことを特徴とする請求項1または2,4ないし6のいずれか1項に記載の記憶素子。
  10.  前記第1の電極は、前記記録層、前記非磁性層及び前記参照層の積層体に読み出し電流を流すことを特徴とする請求項3または7に記載の記憶素子。
  11.  所定の偏光状態の読み出し光を前記記録層または前記記録層を含む積層体の表面に照射する照射部と、
     前記記録層または前記積層体の表面で反射された読み出し光を受光する受光部と
     を備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の記憶素子。
  12.  強磁性体で形成され、印加される書き込み電圧または書き込み電流によって3以上の磁化状態のうちの1の磁化状態に変化する記録層と、前記記録層の一方の面上に設けられた非磁性層と、前記書き込み電圧または前記書き込み電流を、前記記録層に対して前記記録層と前記非磁性層との積層方向に印加する第1の電極とを有する記憶素子に記憶すべき値として3値以上の値のうちから選択される選択値に基づいて前記書き込み電圧または前記書き込み電流の印加時間または大きさを決める決定ステップと、
     前記決定ステップで決められた印加時間または大きさで前記書き込み電圧または前記書き込み電流を前記第1の電極を介して前記記録層に印加する印加ステップと
     を有することを特徴とする記憶素子の駆動方法。
  13.  前記非磁性層は、常誘電性絶縁体であり、前記第1の電極は、前記記録層との間に前記非磁性層を挟むように形成され、
     前記記録層の面に直交する方向の磁界を前記記録層に印加する磁界印加ステップを有し、
     前記決定ステップは、前記選択値に基づいて前記書き込み電圧の大きさを決め、
     前記印加ステップは、前記磁界印加ステップによって前記記録層に磁界が印加された状態で前記書き込み電圧を前記記録層に印加し、前記磁化状態としての残留磁化が増減するように前記記録層の磁化特性を変化させることを特徴とする請求項12に記載の記憶素子の駆動方法。
  14.  前記記録層との間に前記非磁性層を挟むように設けられ、磁化の方向が固定された参照層を前記記憶素子が有し、
     前記決定ステップは、前記選択値に基づいて前記書き込み電流の印加時間または大きさを決め、
     前記印加ステップは、前記書き込み電流を前記記録層に印加し、前記磁化状態としての前記記録層の残留磁化を増減する
     ことを特徴とする請求項12に記載の記憶素子の駆動方法。
  15.  前記記録層は、前記3以上の磁化状態に対応して、前記記録層の磁化の方向についての3以上の安定位置を面内に有しており、
     前記記録層の面に直交する方向の磁界を前記記録層に印加する磁界印加ステップを有し、
     前記決定ステップは、前記書き込み電圧の印加時間または大きさを決め、
     前記印加ステップは、磁界印加ステップによって前記記録層に磁界を印加した状態で前記記録層に、前記書き込み電圧を印加し、前記記録層の磁化の方向を前記安定位置のいずれか1つに移動する
     ことを特徴とする請求項12に記載の記憶素子の駆動方法。
  16.  前記記憶素子は、前記3以上の磁化状態に対応して、前記記録層が前記記録層の磁化の方向についての3以上の安定位置を面内にもつ形状異方性を有するとともに、前記記録層との間に前記非磁性層を挟むように設けられ磁化の方向が固定された参照層を備え、
     前記決定ステップは、前記書き込み電流の印加時間または大きさを決め、
     前記印加ステップは、前記記録層、前記非磁性層及び前記参照層の積層体に前記書き込み電流を流し、前記記録層の磁化の方向を前記安定位置のいずれか1つに移動する
     ことを特徴とする請求項12に記載の記憶素子の駆動方法。

     
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