WO2018096613A1

WO2018096613A1 - 鋸鞘

Info

Publication number: WO2018096613A1
Application number: PCT/JP2016/084770
Authority: WO
Inventors: 昌三宮脇
Original assignee: 株式会社ユーエム工業
Priority date: 2016-11-24
Filing date: 2016-11-24
Publication date: 2018-05-31

Abstract

鋸刃を鞘口部の入口から入れ易く、鋸刃の刃先を確実に案内することができ、鞘口部の軽量化を図ることができると共に、製造効率を効果的に向上させることができる鋸鞘の提供を課題とする。鞘口部（１０）と鞘本体（２０）を備える鋸鞘（１）であって、鞘口部（１０）は第１の入口（１７ａ）と第２の入口（１７ｃ）とを備え、第１の入口（１７ａ）の横幅方向両側に、鋸刃の刃先を鞘口部（１０）内へ案内する一対の第１案内ロール（１３）を備え、第２の入口（１７ｃ）の鞘口部（１０）の口内縦幅方向片側に、入ってきた鋸刃の向きを扁平な鞘本体（２０）の扁平方向と一致するよう矯正しながら鞘本体（２０）へ向けて案内する第２案内ロール（１４）を備え、第２案内ロール（１４）の直前の位置に刃先（３１ａ）を第２案内ロール（１４）に向けて案内する傾斜案内櫛歯部（１１ｊ）を備える。

Description

鋸鞘

　本発明は鋸の刃を収容する鋸鞘に関する。

　従来、手引き鋸等の鋸の刃を収容する鋸鞘として、案内ロールを用いた鋸鞘が提供されている。
　例えば実開平７－３７５８５号（特許文献１）には、鞘体（２）に鋸身（１）を出し入れ操作する際に、鋸身差入用挿入口（３）付近に、鋸身（１）を案内接触させうる硬質ローラ部材（４）を、鞘体（２）に回転自在に軸着するように構成した鋸の鞘が開示されている。これによって、鋸身（１）の鞘体への出し入れ操作が容易となり、また鞘体（２）を傷つけるのを低減することができる。
　また特開平１１－９８５８号（特許文献２）には、鞘本体（１）の内部に鋸等の刃部（４）を差し入れ得る形の収容部（２）を形成すると共に、収容部（２）おける刃部（４）の差入れ口や内部に回転ローラー（３）を取り付けた鋸等の鞘が開示されている。
　一方、特開２００５－１３１０７３号（特許文献３）には、鞘（１）の上部の開口部（２）に絞り込み部（３）を形成し、鋸柄（４）の凹部（５）が前記鞘（１）の開口部（２）の絞込み部（３）で弾性嵌合して保持されるようにした鋸等の鞘が開示されている。これによって、鋸が鞘（１）に保持され、不本意に鞘から飛び出るのを防止することができる。
　また国際公開第ＷＯ２０１２／１５３３９８号（特許文献４）には、鞘口部（１０）の入口（１４ａ）の幅方向両側に、刃先（３１ａ）を鞘口部（１０）内へ案内する一対の第１案内ロール（１１ａ）と、鞘口部（１０）の奥口内の幅方向両側に、刃先（３１ａ）を鞘本体（２０）へ案内する一対の第３案内ロール（１１ｃ）と、鞘口部（１０）の入口（１４ａ）と奥口内との間における鞘口部（１０）の幅方向と直角方向両側に、鞘本体（２０）へ向けて侵入する鋸刃（３１ａ）の向きを鞘本体（２０）の扁平方向に一致させるように案内する一対の第２案内ロール（１１ｂ）と、を備える鋸鞘が開示されている。また上記特許文献４には、第２案内ロールの手前の位置で且つ鞘口部（１０）の幅方向と直角方向の両側に、刃先（３１ａ）を一対の第２案内ロール（１１ｂ）の隙間に向けて案内する一対の傾斜案内面（１７）を備える構成が開示されている。加えて、第１案内ロール（１１ａ）の背後に、それぞれ一定の間隙を持って、鋸グリップのそれ以上の侵入を阻止する一対のグリップ侵入阻止部（１５）を備えると共に、グリップ侵入阻止部（１５）と第１案内ロール（１１ａ）との間の一定の間隙を、鋸グリップの一部を受け入れて弾性嵌合させるグリップ弾性嵌合用空間（１６）とする構成が開示されている。これによって、鋸の差し入れがスムーズに行え、また差し入れた鋸が容易に飛び出したり、鞘内でガタついたりすることがなく、鋸刃の刃先が内壁に閊えて、内壁が削り取られるのを低減することができる。
　また上記特許文献４と同様の構成を備える鋸鞘として、国際公開第ＷＯ２０１３／１４７３７号（特許文献５）と、国際公開第ＷＯ２０１３／１４７８７号（特許文献６）とがある。

実開平７－３７５８５号公報特開平１１－９８５８号公報特開２００５－１３１０７３号公報国際公開第ＷＯ２０１２／１５３３９８号国際公開第ＷＯ２０１３／１４７３７号国際公開第ＷＯ２０１３／１４７８７号

　しかしながら上記特許文献１の鋸の鞘の場合は、鋸身（１）を鞘（６）内に差し入れる案内を行うのに効果を発揮するものの、鞘（６）内に入った鋸身（１）の刃先の案内が十分には行えず、鞘（６）の内壁を傷付けながら侵入するという問題があった。また一対の硬質ローラ部材（４）を入口付近に大雑把に配置する程度では、鞘（６）内に入った刃先面の向きを案内することができない問題があった。このため鋸身（１）の刃先面が鞘（６）内空の扁平面に対して回転ズレする結果、刃先が鞘内壁に接触して傷つけ、或いは内壁に閊えて、スムーズに挿入が行えない問題が残っていた。
　上記特許文献２の鋸等の鞘の場合は、ローラ（３）を鞘本体（１）内の片側に配置させることで、鋸の刃部（４）をそのロール上を移動させ、鋸刃によって鞘が削り取られるのを防止する効果を奏するものであるが、鞘本体（１）の入口からの鋸の挿入をスムーズにすることを目的とするものではなく、またそのような作用効果を発揮するものではないという問題があった。
　上記特許文献３の鋸等の鞘の場合は、鞘（１）に挿入された鋸が不本意に鞘から飛び出すのを防止するものであるが、鋸柄（４）と鞘（１）との弾性嵌合は、単なる凹凸嵌合によるものであり、鋸刃で削り取られ易く、何度も繰り返して利用できるような耐久性を備えたものではないという問題があった。
　上記特許文献４～６の鋸鞘の場合は、案内ロール（１１ａ～１１ｃ）の数が多いと共に、鞘口部（１０）の内面を一体的に膨出させて傾斜案内面を形成する構成であることから、鞘口部（１０）の軽量化を図ることができず、また鋸鞘の組み付け作業が煩雑になるという問題があった。

　そこで本発明は上記従来技術の種々の問題点を解消し、鋸刃を鞘口部の入口から入れ易く、且つ鋸刃の刃先を確実に案内することができ、更に鞘口部の軽量化を図ることができると共に、製造効率を効果的に向上させることができる鋸鞘の提供を課題とする。

　上記課題を達成するため本発明の鋸鞘は、扁平な鞘口部とそれに続く扁平な鞘本体とを備え、鋸刃をその刃先から前記鞘口部を介して前記鞘本体に挿入するようにした鋸鞘であって、前記鞘口部は、鋸刃を差し入れる第１の入口と、該第１の入口から差し入れられた鋸刃を鞘本体に導く第２の入口とを備え、前記第１の入口の横幅方向両側に、鋸刃の刃先を前記鞘口部内へ案内する一対の第１案内ロールを備え、前記第２の入口の口内縦幅方向片側若しくは両側に、前記第１の入口から入ってきた鋸刃の向きを前記扁平な鞘本体の扁平方向と一致するよう矯正しながら鞘本体へ向けて案内する第２案内ロールを備え、且つ前記第２案内ロールの直前の位置に、刃先を前記第２案内ロールに向けて案内する傾斜案内櫛歯部を備えることを第１の特徴としている。
　また本発明の鋸鞘は、上記第１の特徴に加えて、傾斜案内櫛歯部は、第２案内ロールに向けて傾斜する傾斜面を備える傾斜案内櫛歯を、鞘口部の口内横幅方向に複数並列配置させてなり、各傾斜案内櫛歯の傾斜面の集合体で、鋸刃を第２案内ロールに向けて案内する統一傾斜案内面を形成していることを第２の特徴としている。
　また本発明の鋸鞘は、上記第２の特徴に加えて、傾斜案内櫛歯の傾斜面は、湾曲面で構成されると共に、各傾斜案内櫛歯のそれぞれの傾斜面の曲率半径を同じ曲率半径に構成してあることを第３の特徴としている。
　また本発明の鋸鞘は、上記第１～第３の何れか１つの特徴に加えて、鞘口部の口内の第１案内ロールと第２案内ロールとの間の位置における前記鞘口部の口内横幅方向両側に、鋸グリップのそれ以上の侵入を阻止する一対のグリップ侵入阻止部を設けることを第４の特徴としている。
　また本発明の鋸鞘は、上記第４の特徴に加えて、グリップ侵入阻止部は、鞘口部の口内横幅方向両側の内壁を、鞘口部の口内の奥に行くにつれて内壁間の間隙が狭くなるように内向きに傾斜させてなる内向き傾斜壁で構成されると共に、第１案内ロールと前記内向き傾斜壁における鞘口部の奥側の端部との間の一定の間隙を、鋸グリップの一部を受け入れて挟持させるグリップ弾性挟持用空間として構成してあることを第５の特徴としている。
　また本発明の鋸鞘は、上記第４の特徴に加えて、グリップ侵入阻止部は、鞘口部の口内横幅方向両側位置で口内に突出する突出部として構成されると共に、第１案内ロールと前記突出部との間の一定の間隙を、弾性変形によって前記第１案内ロールを乗り越えてくる鋸グリップの一部を受け入れて嵌合させるグリップ弾性嵌合用空間として構成してあることを第６の特徴としている。
　また本発明の鋸鞘は、上記第１～第６の何れか１つの特徴に加えて、第２の入口の口内縦幅方向両側に、一対の第２案内ロールを備えると共に、口内の上側と下側の何れか一方の前記第２案内ロールの直前には、傾斜案内櫛歯部を備え、残る他方の前記第２案内ロールの直前には、刃先を前記第２案内ロールに向けて案内する傾斜案内面を備えることを第７の特徴としている。
　また本発明の鋸鞘は、上記第１～第７の何れか１つの特徴に加えて、扁平な鞘口部は、上口体と下口体とからなる分割体を分離自在に結合することで構成されていると共に、前記上口体は、下口体との結合位置に嵌合用凸部を一乃至複数備え、前記下口体は、上口体との結合位置に前記嵌合用凸部と嵌合する嵌合用凹部を一乃至複数備えることを第８の特徴としている。

　請求項１に記載の鋸鞘によれば、鋸鞘は扁平な鞘口部とそれに続く扁平な鞘本体とからなり、前記鞘口部から鋸刃が挿入され、奥の鞘本体へと入ってゆく。鞘口部は第１の入口の幅方向両側に一対の第１案内ロールを備えているので、前記第１案内ロールによって鋸刃の刃先を鞘口部の入口に容易に案内することができる。
　鞘口部の入口から中に入った鋸刃の刃先は、次に傾斜案内櫛歯部に達する。この傾斜案内櫛歯部を通過する際に、鋸刃の刃先が第２案内ロールに向かうように矯正される。よって、傾斜案内櫛歯部により、鞘本体へのスムーズな刃先の侵入の準備を始めることができる。
　傾斜案内櫛歯部を通過した鋸刃の刃先は、次に第２の入口に備える第２案内ロールに達する。この第２案内ロールは、前記第１案内ロールとは直角に配置されている。即ち、扁平な鞘口部の口内の幅方向とは直角な方向に配置されている。この第２案内ロールを鋸刃の刃先が通過する際に、第１の入口から入ってきた鋸刃の刃先の面が鞘口部の口内の扁平方向と一致するように案内される。そして刃先の面に続いて侵入する鋸刃の面も案内される。よって第２案内ロールにより、鋸刃の面が鞘の扁平方向と一致するように矯正され、鞘本体へのスムーズな刃先の侵入の準備を更に進めることができる。
　従って請求項１の発明によれば、鋸刃を鞘口部の入口から入れ易く、且つ鋸刃の刃先を確実に案内することができるので、鋸刃により鞘内壁が傷付けられるのを十分に低減することができる。

　また請求項２に記載の鋸鞘によれば、上記請求項１に記載の構成による効果に加えて、第２の案内ロールに向けて傾斜する傾斜面を備える傾斜案内櫛歯を、鞘口部の口内横幅方向に複数並列配置させて傾斜案内櫛歯部を構成すると共に、各傾斜案内櫛歯の傾斜面の集合体で、鋸刃を第２案内ロールに向けて案内する統一傾斜案内面を形成していることで、統一傾斜案内面で鋸刃を第２案内ロールに向けて一体的に案内することができる。よって鞘本体へのスムーズな刃先の侵入の準備を一段と効率的に行うことができる。また隣接する傾斜案内櫛歯間に間隙を設けることができることで、統一傾斜案内面に対する鋸刃の接触面積を効率的に減少させることができ、鋸刃のスムーズな侵入を実現することができる。また鞘口部の軽量化を図ることができる。

　また請求項３に記載の鋸鞘によれば、上記請求項２に記載の構成による作用効果に加えて、傾斜面を湾曲面で形成することで、傾斜面での鋸刃の引っ掛かりを効果的に低減でき、鋸刃のスムーズな案内を実現することができる。また各傾斜案内櫛歯のそれぞれの傾斜面の曲率半径を同じ曲率半径とすることで、統一傾斜案内面で鋸刃を第２案内ロールに向けて一段と確実に一体的に案内することができる。

　また請求項４に記載の鋸鞘によれば、上記請求項１～３の何れか１つに記載の構成による作用効果に加えて、鞘口部の口内の第１案内ロールの背後に一対のグリップ侵入阻止部を備えることで、鋸のグリップがそれ以上鋸鞘に入るのを防止し、鋸刃の刃先が鋸鞘の底に当たるのを防止することができる。

　また請求項５に記載の鋸鞘によれば、上記請求項４に記載の構成による作用効果に加えて、第１案内ロールと、鞘口部の口内の横幅方向両側の内壁を内向きに傾斜させてなる傾斜壁で構成されるグリップ侵入阻止部における鞘口部の奥側の端部との間の一定の間隙を、鋸グリップの一部を受け入れて挟持させるグリップ弾性挟持用空間としたので、第１案内ロールによって鋸グリップの先端部が鋸口部内に案内され且つ前記グリップ侵入阻止部で停止された鋸は、同時に鋸グリップの部分が前記グリップ侵入阻止部と第１案内ロールとの間のグリップ弾性挟持用空間において、弾性変形され、その位置に挟持される。また鋸を鞘から抜き出す場合は、鋸グリップを持って抜き出し方向に引っ張ることで、第１案内ロールが回って、鋸グリップの弾性挟持が解除され、鋸が鞘の外に引き出される。
　よって請求項５に記載の鋸鞘によれば、鞘に挿入された鋸は、その挿入位置で不動状態に保持されると共に、抜き出す場合は第１案内ロールの回転により容易に弾性挟持を解除して、抜き出すことができる。

　また請求項６に記載の鋸鞘によれば、上記請求項４に記載の構成による作用効果に加えて、第１案内ロールと、鞘口部の口内横幅方向両側位置で口内に突出する突出部で構成されるグリップ侵入阻止部との間の一定の間隙を、弾性変形によって前記第１案内ロールを乗り越えてくる鋸グリップの一部を受け入れて嵌合させるグリップ弾性嵌合用空間としたので、第１案内ロールによって鋸グリップの先端部が鋸口部内に案内され且つグリップ侵入阻止部たる前記突出部で停止された鋸は、同時に鋸グリップの部分が前記グリップ侵入阻止部と第１案内ロールとの間のグリップ弾性嵌合用空間において、弾性変形され、その位置に嵌合される。また鋸を鞘から抜き出す場合は、鋸グリップを持って抜き出し方向に引っ張ることで、第１案内ロールが回って、鋸グリップの弾性嵌合が解除され、鋸が鞘の外に引き出される。
　よって請求項６に記載の鋸鞘によれば、鞘に挿入された鋸は、その挿入位置で不動状態に保持されると共に、抜き出す場合は第１案内ロールの回転により容易に弾性嵌合を解除して、抜き出すことができる。

　また請求項７に記載の鋸鞘によれば、上記請求項１～６の何れか１つに記載の構成による作用効果に加えて、第２の入口の口内縦幅方向両側に一対の第２案内ロールを備える構成とすることで、鋸刃の面を鞘の扁平方向と一致するように一段と確実に矯正することができ、鞘本体への一段とスムーズな刃先の侵入の準備を進めることができる。また第２の入口の口内縦幅方向の上側と下側の何れか一方の第２案内ロールの直前には傾斜案内櫛歯部を備え、残る他方の第２案内ロールの直前には傾斜案内面を備える構成とすることで、鋸鞘の軽量化を効果的に実現することができる。

　また請求項８に記載の鋸鞘によれば、上記請求項１～７の何れか１つに記載の構成による作用効果に加えて、鞘口部は、下口体と上口体とからなる分割体で構成されているので、内部に配置される複数のロール等を含めた鞘口部の構成を容易に実現することができる。またロール等を必要に応じて容易に取り替えることが可能となる。
　また上口体には下口体との結合位置に嵌合用凸部を備え、下口体には上口体との結合位置に嵌合用凹部を備える構成とすることで、分割体で構成される上口体と下口体との位置決めが容易となり、製造効率を効果的に向上させることができる。

本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘と鋸を示す正面図である。本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘に鋸を収納した状態を示す図で、鞘本体が断面され、且つ鞘口部の下口体を取り外した状態を示す図である。本発明の第１の実施形態に係る鞘口部と鞘本体とを示す図で、（ａ）は分解された状態の鞘口部と鞘本体とを示す斜視図、（ｂ）は鞘口部に鞘本体が嵌合された状態を示す斜視図である。本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘の鞘口部を示す図で、（ａ）は上口体の背面図、（ｂ）は下口体の正面図である。本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘の鞘口部と鞘本体とを示す図で、（ａ）は上口体と下口体とを結合した状態を示す平面図、（ｂ）は上口体と下口体とを分離させた状態を示す平面図、（ｃ）は鞘本体の輪切り断面図である。本発明の第１の実施形態に係る鞘口部の上口体の裏側を示す斜視図である。本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘の鞘口部の縦断面図である。本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘に鋸を収納する状態を示す図である。本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘に鋸を収納する状態を示す図である。本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘の変形例を示す図で、鋸鞘に鋸を収納した状態を示すもので、鞘本体が断面され、且つ鞘口部の下口体を取り外した状態を示す図である。本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘の変形例を示す図で、（ａ）は鞘口部の上口体の背面図、（ｂ）は鞘口部の上口体の平面図である。本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘の変形例を示す図で、鞘口部の上口体の裏側を示す斜視図である。本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘の変形例を示す図で、鋸鞘に鋸を収納する状態を示す図である。本発明の第２の実施形態に係る鞘口部と鞘本体とを示す図で、（ａ）は分解された状態の鞘口部と鞘本体とを示す斜視図、（ｂ）は鞘口部に鞘本体が嵌合された状態を示す斜視図である。本発明の第２の実施形態に係る鋸鞘の鞘口部を示す図で、（ａ）は上口体と下口体とを結合した状態を示す平面図、（ｂ）は上口体と下口体とを分離させた状態を示す平面図である。本発明の第２の実施形態に係る鋸鞘の鞘口部を示す図で、（ａ）は下口体の正面図、（ｂ）は鞘口部の縦断面図である。

　以下の図面を参照して、本発明の実施形態に係る鋸鞘を説明する。
　先ず図１を参照して、第１の実施形態に係る鋸鞘１は、鞘口部１０と鞘本体２０とからなる。この鋸鞘１に対して鋸３０が差し入れ自在に挿入される。
　図２に鋸３０が鋸鞘１に挿入されて保持されている状態を示す。
　この鋸鞘１は、図示しない取り付け具を用いて、作業者の腰等に取り付けられる。
　作業者は必要に応じて鋸鞘１から鋸３０を取り出し、また作業が終わると鋸鞘１に収容することができる。

　図３を参照して、前記鋸鞘１の鞘口部１０は、上口体１１と下口体１２とからなる分割体を分離自在に結合させることで構成される。また第１案内ロール１３、第２案内ロール１４も、それら上口体１１、下口体１２とは分離可能に備えられている。
　なお、上口体１１と下口体１２とは、特に位置における上下の関係はなく、鞘口部１０という口部を構成する半部の一方を上口体、残る半部を下口体と便宜上称しているだけである。

　前記第１案内ロール１３は、鋸刃３１の刃先３１ａを、鞘口部１０内へと案内する役割を果たす。第１案内ロール１３は、具体的には、鞘口部１０の扁平な第１の入口１７ａの両側において、扁平面に対してロール軸が直角になるよう（ロール軸が扁平な第１の入口１７ａの短手方向になるよう）に一対配置されている。

　前記第２案内ロール１４は、第１の入口１７ａから差し入れられた鋸刃３１を鞘本体２０へ導く第２の入口１７ｃの口内縦幅方向片側に配置され、鋸刃３１の刃先３１ａを、円滑に鞘本体２０に案内するための役割を果たす。即ち本実施形態においては、第２案内ロール１４と下口体１２の内面との間の間隙が第２の入口１７ｃとなる。
　また第２案内ロール１４は、第２案内ロール１４と下口体１２の内面との間の間隙が鞘本体２０の入口２０ａの縦幅以下となるように配置される。第２案内ロール１４の向きは第１案内ロール１３の向きと直角になるように配置される。これによって前記第１の入口１７ａから口内１７ｂを侵入してきた刃先３１ａは、第２案内ロール１４によって案内され、且つロールの回転と共に進出して、速やかに且つ円滑に鞘本体２０内に導かれる。
　なお本実施形態においては、第２の入口１７ｃの口内縦幅方向片側に第２案内ロール１４を設ける構成としてある。勿論、このような構成に限るものではなく、第２の入口１７ｃの鞘口部１０の口内縦幅方向両側に第２案内ロール１４を設ける構成としてもよい。この場合は、一対の第２案内ロール１４の間隙が鞘本体２０の入口２０ａの縦幅以下となるように配置されることが必要である。

　既述したように、前記上口体１１は、下口体１２と分離自在に結合されて鞘口部１０を構成するものである。
　図３に示すように、上口体１１の第１の入口１７ａの幅方向両側の内面には、一対の枢軸柱１１ａが立設状態（入口１７ａの長手方向に直角な短手方向）に一体成形されている。この枢軸柱１１ａは、第１案内ロール１３を回転自在に嵌めて枢軸となる柱である。この枢軸柱１１ａは筒状に構成され、ネジ１５が通るようになされている。
　また一対の枢軸柱１１ａに対応する上口体１１の外面には、枢軸柱１１ａの貫通孔と同一大きさの貫通孔を備えてネジ１５を受ける一対の第１ネジ受け部１１ｂを設けてある。

　また一対の第１ネジ受け部１１ｂには、枢軸柱１１ａを保護するための一対のカバー片１１ｃを第１ネジ受け部１１ｂの外周から立設させてある。更に一対のカバー片１１ｃの端部には、カバー片１１ｃの内面を切り欠いてなる段差部１１ｄを設けてある。この段差部１１ｄは、後述する下口体１２に設ける段差部１２ｃに載置される。

　また一対の第１ネジ受け部１１ｂの背後には、下口体１２との結合位置となる上口体１１の外周面を下口体１２との結合方向に延出させてなる一対の嵌合用凸部１１ｅを設けてある。この嵌合用凸部１１ｅは、後述する下口体１２に設ける嵌合用凹部１２ｄに嵌め合わされる。

　また一対の嵌合用凸部１１ｅの背後には、ネジ１５を介して上口体１１に第２案内ロール１４を回転自在に固定するための、一対の第２ネジ受け部１１ｆを設けてある。本実施形態においては、鞘口部１０の口内１７ｂの横幅方向に略半円の筒状体を配置するような構成とし、筒状体の一対の端部を一対の第２ネジ受け部１１ｆとする構成としてある。
　更に一対の第２ネジ受け部１１ｆには、上口体１１の外周面を下口体１２との結合方向に延出させてなる一対の延出片１１ｇを設けてある。この一対の延出片１１ｇは、後述する下口体１２の一対の段差部１２ｅに載置される。

　また一対の第２ネジ受け部１１ｆの背後で、且つ上口体１１の最奥部には、下口体１２との結合位置となる上口体１１の外周を外方（鋸刃３１の差し込み方向）に延出させてなる差し込み用片１１ｈを設けてある。この差し込み用片１１ｈは、後述する下口体１２に設ける差し込み用片受け入れ部１２ｆに差し入れられる、いわゆる嵌合用凸部であり、上口体１１を下口体１２に結合させる際の始点となる。

　また本実施形態においては、図３に示すように、第１案内ロール１３と第２案内ロール１４との間、より具体的には、第２案内ロール１４の手前の位置における上口体１１の内面に、鋸刃３１の刃先３１ａを第２案内ロール１４に向けて案内する傾斜案内櫛歯部１１ｊを設けてある。
　この傾斜案内櫛歯部１１ｊは、図３～図６に示すように、第２案内ロール１４に向けて傾斜する傾斜面Ｔ１を備える傾斜案内櫛歯Ｔを、鞘口部１０の口内横幅方向に複数並列配置させて構成される。
　また図５、図６に示すように、各傾斜案内櫛歯Ｔの傾斜面Ｔ１の集合体を、鋸刃３１を第２案内ロール１４に向けて案内する統一傾斜案内面Ｕとして形成してある。

　また本実施形態においては、図６に示すように、傾斜案内櫛歯Ｔの構成として、第２案内ロール１４に向けて刃先３１ａを案内する傾斜面Ｔ１を、鞘口部１０の内側に湾曲させた湾曲面とする構成としてある。加えて、各傾斜案内櫛歯Ｔのそれぞれの傾斜面Ｔ１の曲率半径を同じ曲率半径とする構成としてある。
　本実施形態においては、図５に示すように、上口体１１の外面を上方に湾曲させた構成としてある。具体的には、上口体１１の外面形状を、第１の入口１７ａから第２案内ロール１４までの位置において、上口体１１の中央部（鞘口部１０の口内の横幅方向の中央部）が頂点となるように、上方に湾曲させた形状とする構成としてある。よって本実施形態においては、図６に簡略化して示すように、複数の傾斜案内櫛歯Ｔにおいて、真ん中に配置される傾斜案内櫛歯Ｔの傾斜面Ｔ１の長手方向の長さを最も長く、それよりも外側に配置されるにつれて、傾斜面Ｔ１の長手方向の長さが短くなるような構成とし、これによって各傾斜案内櫛歯Ｔのそれぞれの傾斜面Ｔ１の曲率半径を同じ曲率半径とする構成としてある。
　このように上口体１１の外面を上方に湾曲させる構成とすることで、鞘口部１０の第１の入口１７ａを一段と広く開口させることができ、鋸刃３１のスムーズな挿入を実現することができる。
　また本実施形態においては、図５に示すように、複数の傾斜案内櫛歯Ｔにおいて、鞘口部１０の口内の縦幅方向の長さを全て同じ長さとする構成としてある。これによって鋸刃３１を第２案内ロール１４に一段と効率的に案内することが可能となる。
　鋸刃３１は、このような構成からなる傾斜案内櫛歯部１１ｊにより接触案内されることで、その刃先３１ａ面の向きが矯正され、第２案内ロール１４と下口体１２との間隙に導かれる。

　また本実施形態においては、図４～図６、図８、図９に示すように、鞘口部１０の口内１７ｂの第１案内ロール１３と第２案内ロール１４との間の位置に、鞘口部１０の口内１７ｂの横幅方向両側の内壁を、鞘口部１０の口内の奥に行くにつれて内壁間の間隙が狭くなるように内向きに傾斜させてなる一対のグリップ侵入阻止部１１ｋを設ける構成としてある。
　このグリップ侵入阻止部１１ｋは、鞘口部１０の口内１７ｂの第１案内ロール１３と第２案内ロール１４との間の位置における鞘口部１０の口内横幅方向両側に配置されて、鞘口部１０の第１の入口１７ａから口内１７ｂに入ってきた鋸グリップ３２をそれ以上侵入できないようにするものである。
　前記第１ネジ受け部１１ｂ、カバー片１１ｃ、段差部１１ｄ、嵌合用凸部１１ｅ、第２ネジ受け部１１ｆ、延出片１１ｇ、差し込み用片１１ｈ、傾斜案内櫛歯部１１ｊ、グリップ侵入阻止部１１ｋは、型を用いて一体成形することができる。

　前記一対のグリップ侵入阻止部１１ｋに対して、鋸グリップ３２の先端付近の両側には一対の膨出部３３を設けている。鋸グリップ３２の膨出部３３が侵入して前記グリップ侵入阻止部１１ｋに達すると、グリップ侵入阻止部１１ｋにより、それ以上の侵入を阻止される。
　膨出部３３は鋸グリップ３２の一部をなし、弾性変形可能なゴム、プラスチックで構成される。
　一方、前記一対の膨出部３３間の距離は、前記一対の第１案内ロール１３の間隙よりも少しその寸法を大きくしている。一対の膨出部３３は、前記材質として弾性変形できるものを用いることで、弾性変形しながら前記一対の第１案内ロール１３を越えて鞘口部１０に侵入することができるようにしている。前記弾性変形の変形能は第１案内ロール１３を乗り越えることができる程度の変形能とすることができる。

　また図４に示すように、前記第１案内ロール１３とその背後のグリップ侵入阻止部１１ｋにおける鞘口部１０の奥側の端部との間の一定の間隙を、グリップ弾性挟持用空間１１ｍとして構成している。
　グリップ弾性挟持用空間１１ｍは、鋸グリップ３２の膨出部３３を弾性変形させて口内１７ｂにおける鋸グリップ３２の侵入を停止させて挟持する空間である。膨出部３３は前記グリップ侵入阻止部１１ｋと第１案内ロール１３とによって、いわば挟まれた状態でグリップ弾性挟持用空間１１ｍに保持される。
　鋸グリップ３２の先端付近が鞘口部１０に侵入する際、膨出部３３が第１案内ロール１３を乗り越えて、グリップ弾性挟持用空間１１ｍで弾性変形され、且つグリップ侵入阻止部１１ｋによってそれ以上の侵入を阻止されて挟持される。一方、鋸３０を鋸鞘１から抜き出す際には、鋸グリップ３２を引っ張ることで、グリップ弾性挟持用空間１１ｍにある膨出部３３が第１案内ロール１３を乗り越えて、鞘口部１０から脱出する。

　前記下口体１２は、既述したように、上口体１１と分離自在に結合されて鞘口部１０を構成するものである。
　図４に示すように、下口体１２は、上口体１１と結合されて鋸刃３１の侵入空間を構成する結合領域Ｐと、筒状体に形成されて、上口体１１と結合されることのなく鋸刃３１の侵入空間を構成する非結合領域Ｑとの二つの領域で構成される。

　前記結合領域Ｐは、図３、図５に示すように、平面視略コの字状に形成され、上口体１１と結合されて、鞘口部１０における鋸刃３１の差し込み側の空間を形成するものである。
　この結合領域Ｐには、まず第１の入口１７ａの背後における、鞘口部１０の口内１７ｂの横幅方向両側の下面に、上口体１１の第１ネジ受け部１１ｂと対応する一対の第１ネジ受け部１２ａを設けてある。この第１ネジ受け部１２ａには、第１ネジ受け部１１ｂに備える貫通孔と同一形状、同一大きさの貫通孔を設けてある。

　また第１ネジ受け部１２ａには、枢軸柱１１ａを保護するための一対のカバー片１２ｂを、第１ネジ受け部１２ａの外周から立設させてある。更に一対のカバー片１２ｂの端部には、上口体１１の段差部１１ｄに対応する段差部１２ｃを設けてある。この段差部１２ｃは、上口体１１に設ける段差部１１ｄを載置させるためのものである。

　また前記第１ネジ受け部１２ａの背後で、且つ鞘口部１０の口内１７ｂの横幅方向両側における上口体１１との結合位置には、上口体１１に設ける一対の嵌合用凸部１１ｅを嵌め合わせる、一対の嵌合用凹部１２ｄを設けてある。

　また一対の嵌合用凹部１２ｄの背後で、且つ鞘口部１０の口内１７ｂの横幅方向両側には、上口体１１に設ける一対の延出片１１ｇを載置させる一対の段差部１２ｅを設けてある。
　前記第１ネジ受け部１２ａ、カバー片１２ｂ、段差部１２ｃ、嵌合用凹部１２ｄ、段差部１２ｅは、型を用いて一体成形することができる。

　前記非結合領域Ｑは、既述したように、筒状体に形成されて、上口体１１と結合されることのなく鋸刃３１が侵入する侵入空間を構成するものである。また鞘本体２０を鞘口部１０に嵌合させるための嵌合用空間１７ｄを構成するものである。
　図３に示すように、この非結合領域Ｑを形成する筒状体の入口１７ａ側の開口端には、上口体１１に設ける差し込み用片１１ｈを受け入れる差し込み用片受け入れ部１２ｆを設けてある。この差し込み用片受け入れ部１２ｆは、非結合領域Ｑを構成する筒状体における、差し込み用片１１ｈとの結合位置を、差し込み用片１１ｈと略同一大きさ、同一形状に切り欠くことで形成することができる。

　また、非結合領域Ｑの奥側の上方内面と、下方内面とには、鞘本体２０の端部（鞘口部１０と結合される側の端部）に設ける一対の嵌合用孔２１に嵌合させる一対の嵌合用凸部１２ｇを設けてある。この一対の嵌合用凸部１２ｇと、一対の嵌合用孔２１とを嵌合させることで、鞘本体２０と鞘口部１０と一体化させることができる。
　なお、嵌合用凸部１２ｇの突出長さは、嵌合用孔２１の深さ以下とすることが必要である。これによって、嵌合用凸部１２ｇが鞘本体２０内に露出することを効果的に防止することができる。

　前記鞘本体２０は、扁平な細長い筒状体からなり（図１、図２を参照）、必要に応じてその末端が閉塞される。鞘本体２０の長さ、幅（扁平断面の長径方向の寸法長さ）及び厚み（扁平断面の短径方向の長さ）は、鋸刃３１を収容できる範囲で、できるだけ短寸法、短幅、薄厚として軽量にするのが好ましい。
　鞘本体２０の材質は、合成樹脂、アルミ等の軽金属、その他の材料を用いることが可能である。
　鞘本体２０の入口２０ａ付近（基端部付近）には、鞘口部１０の下口体１２との嵌合用手段として、扁平な上下面に一対の嵌合用孔２１が設けられている。
　鞘本体２０は、下口体１２に嵌合されることで鞘口部１０と一体化される。

　図３、図５、図７も参照して、上口体１１と下口体１２との結合により構成される鞘口部１０は、楕円形状乃至扁平円形状を呈する第１の入口１７ａと、それに続く口内１７ｂと、楕円形状乃至扁平円形状を呈する嵌合用空間１７ｄとを備えた扁平な筒状体からなる。
　また詳しくは図示していないが、鞘口部１０の口幅は、第１の入口１７ａから口内１７ｂの奥にいくにつれて狭くなるように構成している。口内１７ｂの最奥部（嵌合空間１７ｄ）は、鞘本体２０の入口２０ａ付近（基端部付近）を丁度受け入れる形状とされている。

　次に本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘１の組み立て方を説明する。
　先ず上口体１１の枢軸柱１１ａに第１案内ロール１３を嵌め込む。また上口体１１の第２ネジ受け部１１ｆを備える略筒状体部分の内側に第２案内ロール１４を配置し、ネジ１５を第２ネジ受け部１１ｆに挿入して、ナット１６を介して締め付ける。これにより、上口体１１に第２案内ロール１４が取り付けられる。
　次に上口体１１の差し込み用片１１ｈを、下口体１２の差し込み用片受け入れ部１２ｆに差し入れる。また上口体１１の嵌合用凸部１１ｅを、下口体１２の嵌合用凹部１２ｄに嵌合させる。同時に、上口体１１の段差部１１ｄを下口体１２の段差部１２ｃに、上口体１１の延出片１１ｇを下口体１２の段差部１２ｅに、それぞれ載置させる。
　そしてネジ１５を上口体１１の第１ネジ受け部１１ｂと下口体１２の第１ネジ受け部１２ａとに挿入して、ナット１６を介して締め付ける。
　これによって上口体１１と下口体１２とが結合され、鞘口部１０が形成される。
　次に下口体１２の嵌合空間１７ｄに鞘本体２０を嵌め合わせる。嵌め合わせは、下口体１２に設ける嵌合用突部１２ｇに対して、鞘本体２０の入口２０ａ付近に形成した嵌合用孔２１を嵌め合わせることにより行う。
　以上で鋸鞘１の組み立てが完了する。

　次に図８、図９を参照して、本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘１への鋸３０乃至鋸刃３１の挿入動作について説明する。なお図８、図９において、説明を判り易くするため、鞘口部１０は下口体１２をとった状態で示している。
　鋸鞘１は通常において作業者が取り付け具を介して腰等に取り付けており、鞘口部１０の第１の入口１７ａが上向きに開口した状態となっている。
　まず図８（ａ）を参照して、鋸刃３１を鋸鞘１に収納しようとする作業者は、鋸グリップ３２を持った状態で、鋸刃３１の刃先３１ａを鞘口部１０の広くされた第１の入口１７ａに当てる。第１の入口１７ａにはフリーに回転する一対の第１案内ロール１３が両側で待ち構えているので、刃先３１ａは第１案内ロール１３の何れか１つに当たって、ロールの回転と共に口内１７ｂに案内される。

　図８（ｂ）を参照して、口内１７ｂに入った刃先３１ａは、次第に口幅が細くなる口内１７ｂを進み、上口体１１の傾斜案内櫛歯部１１ｊに当接し、統一傾斜案内面Ｕに沿って案内されながら、その位置を前方の第２案内ロール１４に向かって修正された後、第２案内ロール１４に導かれる。
　そして刃先３１ａは、第２案内ロール１４の回転を伴う案内を受けつつ、ロールを通過する際に刃先３１ａの面が第２案内ロール１４と下口体１２との間隙方向に一致するように修正を受ける。これによって刃先３１ａの面及びそれに続く鋸刃３１の面が、後方で待機する鞘本体２０の入口２０ａの扁平方向と一致される。

　図９（ａ）を参照して、第２の入口１７ｃを構成する第２案内ロール１４を通過した刃先３１ａは、下口体１２の非結合領域Ｑ（図４参照）に達し、進行方向に口を明けた鞘本体２０の入口２０ａ（図示しない）にスムーズに侵入される。

　鞘本体２０に鋸刃３１の刃先３１ａを侵入させた鋸３０は、最後にその鋸グリップ３２の先端付近の両側に設けられた膨出部３３が、鞘口部１０の入口１７ａに達する。両膨出部３３間の寸法は第１の入口１７ａの両側に配された第１案内ロール１３間の距離よりも少し大きくしてある。一方、前記膨出部３３には少なくとも多少の弾性変形能を付与している。これによって、鋸グリップ３２を力で少し押してやると、第１案内ロール１３の回転を伴う案内を受けて、図９（ｂ）に示すように、前記膨出部３３が第１案内ロール１３を乗り越えて第１の入口１７ａから口内１７ｂに入る。

　図９（ｂ）を参照して、第１案内ロール１３を乗り越えた一対の膨出部３３はグリップ侵入阻止部１１ｋによってその進出を阻止される。これによって鋸グリップ３２はその先端付近だけが鋸鞘１に侵入した状態となる。
　前記グリップ侵入阻止部１１ｋでそれ以上の侵入を阻止された膨出部３３は、グリップ侵入阻止部１１ｋと第１案内ロール１３との間のグリップ弾性挟持用空間１１ｍで弾性変形され、鞘口部１０への侵入が停止された状態となって挟持（保持）される。
　鋸３０は、図９（ｂ）に示す状態となって鋸鞘１に収容され、保持される。
　鋸３０を鋸鞘１から抜き出すときは、鋸グリップ３２を持って、少し力を加えて引っ張れば、膨出部３３が第１案内ロール１３を回転させながら乗り越えて、鋸３０の抜き出しができる。

　このような構成からなる本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘は、以下の効果を奏する。

　鞘口部１０の第１の入口１７ａの横幅方向両側に一対の第１案内ロール１３を備えることで、鋸刃３１の刃先３１ａを容易に鞘口部１０内に案内することができる。また第１案内ロール１３による回転を伴う案内であるので、鋸３０の刃先３１ａ等がロール面に接触しながら、ロールの回転に伴って進出し、スムーズに鞘口部１０内に導くことができる。

　また第２案内ロール１４の手前に、複数の傾斜案内櫛歯Ｔで構成される傾斜案内櫛歯部１１ｊを備える構成とすることで、鋸刃３１の刃先３１ａが第２案内ロール１４に向かうように効率的に矯正することができる。よって傾斜案内櫛歯部１１ｊにより、鞘本体２０へのスムーズな刃先３１ａの侵入の準備を始めることができる。
　更に各傾斜案内櫛歯Ｔの傾斜面Ｔ１の集合体で、鋸刃３１を第２案内ロール１４に向けて案内する統一傾斜案内面Ｕを形成する構成とすることで、鋸刃３１を第２案内ロール１４に向けて一体的に案内することができる。よって鞘本体２０へのスムーズな刃先３１ａの侵入の準備を一段と効率的に行うことができる。また隣接する傾斜案内櫛歯Ｔ間に間隙を設けることができ、統一傾斜案内面Ｕに対する鋸刃３１の接触面積を減少させることができる。よって一体的に形成される統一傾斜案内面Ｕへの鋸刃３１の引っ掛かりを効果的に低減させることができ、傾斜案内櫛歯部１１ｊのすぐ背後に位置する第２の入口１７ｃへの鋸刃３１のスムーズな侵入を実現することができる。また鞘口部１０の軽量化を図ることができる。

　統一傾斜案内面Ｕを各傾斜案内櫛歯Ｔの傾斜面Ｔ１の集合体で構成すると共に、傾斜面Ｔ１を湾曲面とすることで、統一傾斜案内面Ｕでの鋸刃３１の引っ掛かりを一段と効果的に低減でき、鋸刃３１のスムーズな案内を一段と実現することができる。更に各傾斜案内櫛歯Ｔのそれぞれの傾斜面Ｔ１の曲率半径を、同じ曲率半径とすることで、統一傾斜案内面Ｕで鋸刃３１を第２案内ロール１４に向けて一段と確実に一体的に案内することができる。

　また傾斜案内櫛歯部１１ｊの背後において、鞘口部１０の口内１７ｂの幅方向とは直角な方向に、第２の入口１７ｃを構成する第２案内ロール１４を配置することで、第２案内ロール１４を鋸刃３１の刃先３１ａが通過する際に、刃先３１ａの面が鞘口部１０の口内１７ｂの扁平方向と一致するように案内することができる。加えて、刃先３１ａの面に続いて侵入する鋸刃３１の面も口内１７ｂの扁平方向と一致するように案内することができる。よって第２案内ロール１４により、鞘本体２０へのスムーズ且つ確実な刃先３１ａの侵入の準備を更に進めることができる。

　また第１案内ロール１３、傾斜案内櫛歯部１１ｊ、第２案内ロール１４を、この順に鞘口部１０の第１の入口１７ａから備える構成とすることで、鋸刃３１により鞘内壁が傷付けられるのを充分に低減することができる。

　また鞘口部１０の口内１７ｂの第１案内ロール１３の背後に一対のグリップ侵入阻止部１１ｋを備えることで、鋸３０の鋸グリップ３２がそれ以上鋸鞘１に入るのを防止し、鋸刃３１の刃先３１ａが鋸鞘１の底に当たるのを防止することができる。
　更に第１案内ロール１３とグリップ侵入阻止部１１ｋにおける鞘口部１０の奥側の端部との間の一定の間隙を、鋸グリップ３２の一部を受け入れて弾性挟持させるグリップ弾性挟持用空間１１ｍとすることで、グリップ侵入阻止部１１ｋで侵入が停止された鋸刃３１をその位置に保持させることができる。また鋸３０を鋸鞘１から抜き出す場合は、鋸グリップ３２を持って抜き出し方向に引っ張ることで、第１案内ロール１３が回って、鋸グリップ３２の弾性挟持を容易に解除して、鋸鞘１から鋸３０を外に引き出すことができる。

　鞘口部１０を上口体１１と下口体１２とからなる分割体で構成することで、内部に配置される複数のロール等を含めた鞘口部１０の構成を容易に実現することができる。またロール等を必要に応じて容易に取り替えることが可能となる。
　また上口体１１には下口体１２との結合位置に嵌合用凸部１１ｅを設け、下口体１２には上口体１１との結合位置に嵌合用凹部１２ｄを設け、嵌合用凸部１１ｅと嵌合用凹部１２ｄとを嵌め合わせる構成とすることで、分割体で構成される上口体１１と下口体１２との位置決めが容易となり、製造効率を効果的に向上させることができる。また嵌合用凸部１１ｅと嵌合用凹部１２ｄとの少なくとも何れか一つに僅かな寸法誤差が生じた場合であっても、その寸法誤差を効果的に吸収することができる。

　次に図１０～図１３を参照して、本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘１の変形例を説明する。
　本変形例は、既述した本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘１に対して、上口体に設けるグリップ侵入阻止部の構成のみを変形したものである。その他の構成は、既述した本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘１と同一である。よって既述した本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘１と同一部材、同一機能を果たすものには同一番号、同一記号を付し、以下の詳細な説明を省略するもととする。

　本変形例においては、鞘口部１０の口内１７ｂの横幅方向両側位置で口内１７ｂに突出する突出部としてグリップ侵入阻止部１１ｋを形成する構成としてある。より具体的には、鞘口部１０の口内１７ｂの第１案内ロール１３と第２案内ロール１４との間の位置に、鞘口部１０の口内１７ｂの横幅方向両側の内壁を内向きに突出させた一対の半球体状の突出部を設けることで、グリップ侵入阻止部１１ｋを形成する構成としてある。
　なお、グリップ侵入阻止部１１ｋを構成する突出部は、上口体１１と一体成形することができる。

　更に第１案内ロール１３と突出部で構成されるグリップ侵入阻止部１１ｋとの間の一定の間隙を、弾性変形によって第１案内ロール１３を乗り越えてくる鋸グリップ３２の一部を受け入れて嵌合させるグリップ弾性嵌合用空間１１ｎとする構成としてある。

　このようにグリップ侵入阻止部１１ｋを突出部で構成すると共に、第１案内ロール１３と、突出部で構成されるグリップ侵入阻止部１１ｋとの間の一定の間隙を、グリップ弾性嵌合用空間１１ｎとすることで、図１３に示すように、第１案内ロール１３を乗り越えて侵入した鋸グリップ３２の膨出部３３は、グリップ侵入阻止部１１ｋによりそれ以上の侵入を阻止される。同時に膨出部３３は、グリップ侵入阻止部１１ｋと第１案内ロール１３とによって前後から挟まれた状態でグリップ弾性嵌合用空間１１ｎに弾性嵌合する。これによって侵入を阻止された鋸刃３１を、その位置に不動状態に保持させることができる。また鋸３０を鋸鞘１から抜き出す場合は、鋸グリップ３２を持って抜き出し方向に引っ張ることで、第１案内ロール１３が回って、鋸グリップ３２の弾性嵌合を容易に解除して、鋸鞘１から鋸３０を外に引き出すことができる。

　なお本変形例においては、グリップ侵入阻止部１１ｋを形成する突出部の構成として、鞘口部１０の口内１７ｂの横幅方向両側の内壁を内向きに半球体状に突出させる構成としたが、グリップ侵入阻止部１１ｋを形成する突出部の構成は必ずしもこのような構成に限るものではない。
　例えば鞘口部１０の口内１７ｂの横幅方向両側位置に、第１案内ロール１３の軸方向と同方向に突出する柱を設けることでグリップ侵入阻止部１１ｋを形成する構成としてもよい。つまり本変形例においては、鞘口部１０の口内１７ｂの横幅方向両側位置に、口内に突出して鋸グリップ３２の侵入を阻止する突出部を設けることができる構成であれば、突出部の形状や形成方法は如何なるものであってもよい。

　次に図１４～図１６を参照して本発明の第２の実施形態に係る鋸鞘２を説明する。
　本発明の第２の実施形態に係る鋸鞘２は、既述した本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘１に対して、下口体の構成のみを変形したものである。その他の構成は、既述した本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘１と同一である。よって、既述した本発明の第１の実施形態に係る鋸鞘１と同一部材、同一機能を果たすものには同一番号、同一記号を付し、以下詳細な説明を省略するものとする。

　図１４～図１６を参照して、本発明の第２の実施形態に係る鋸鞘２は、下口体１２において、上口体１１に設ける第２案内ロール１４と対向する位置（口内１７ｂの縦幅方向に対向する位置）に第２案内ロール１４ａを設けると共に、第２案内ロール１４ａの直前の位置に、鋸刃３１を第２案内ロール１４、１４ａに向けて案内する傾斜案内面１１ｐを設ける構成とするものである。
　つまり第２の実施形態に係る鋸鞘２においては、第２の入口１７ｃの口内縦幅方向の上側の第２案内ロール１４の直前には傾斜案内櫛歯部１１ｊを設け、下側の第２案内ロール１４ａの直前には傾斜案内面１１ｐを設ける構成としてある。
　なお、本発明の第２の実施形態に係る鋸鞘２においては、上口体１１に設ける第２案内ロール１４と、下口体１２に設ける第２案内ロール１４ａとの間の間隙が第２の入口１７ｃとなる。

　下口体１２に設ける第２案内ロール１４ａは、図１４に示すように、第２ネジ受け部１２ｈに取り付けられるネジ１５、ナット１６を介して、下口体１２に取り付けることができる。
　また傾斜案内面１１ｐは、下口体１２と一体成形することができる。

　このように第２の入口１７ｃの口内縦幅方向両側に、一対の第２案内ロール１４、１４ａを設ける構成とすることで、鋸刃３１の面を鋸鞘２の扁平方向と一致するように一段と確実に矯正することができ、鞘本体２０への一段とスムーズな刃先３１ａの侵入の準備を進めることができる。
　更に第２の入口１７ｃの口内縦幅方向の上側の第２案内ロール１４の直前には傾斜案内櫛歯部１１ｊを設け、口内縦幅方向の残る下側の第２案内ロール１４ａの直前には傾斜案内面１１ｐを備える構成とすることで、鋸鞘２の軽量化を効果的に実現することができる。

　なお、鞘口部１０の上口体１１と下口体１２とのうち、下口体１２側で取り付け具を介して作業者に鋸鞘１、２を取り付ける場合には、上口体１１に比較して下口体１２の第１の入口１７ａに刃先受部を延長突出させて設けることができる。刃先受部を下口体１２に設けることで、鋸刃３１の刃先３１ａが体に当たるのを刃先受部で防止しつつ、刃先３１ａを第１の入口１７ａに導くことができる。

　また鞘口部１０と鞘本体２０とを一体化させる方法は、既述した本発明の実施形態の構成に限るものではなく、他の構成としてもよい。例えば鞘本体２０の入口２０ａの形状を、鞘口部１０の最奥部を受け入れる形状とし、下口体１２の最奥部の外面に嵌合用凸部を設け、鞘本体２０の入口２０ａ付近（基端部付近）に嵌合用孔を設け、前記嵌合用凸部と前記嵌合用孔とを嵌め合わせることで、鞘口部１０と鞘本体２０とを一体化させる構成としてもよい。

　本発明の鋸鞘は、鋸を収容する鞘として、鋸と共に産業上の利用可能性がある。

　１　　　　鋸鞘
　２　　　　鋸鞘
　１０　　　鞘口部
　１１　　　上口体
　１１ａ　　枢軸柱
　１１ｂ　　第１ネジ受け部
　１１ｃ　　カバー片
　１１ｄ　　段差部
　１１ｅ　　嵌合用凸部
　１１ｆ　　第２ネジ受け部
　１１ｇ　　延出片
　１１ｈ　　差し込み用片
　１１ｊ　　傾斜案内櫛歯部
　１１ｋ　　グリップ侵入阻止部
　１１ｍ　　グリップ弾性挟持用空間
　１１ｎ　　グリップ弾性嵌合用空間
　１１ｐ　　傾斜案内面
　１２　　　下口体
　１２ａ　　第１ネジ受け部
　１２ｂ　　カバー片
　１２ｃ　　段差部
　１２ｄ　　嵌合用凹部
　１２ｅ　　段差部
　１２ｆ　　差し込み用片受け入れ部
　１２ｇ　　嵌合用凸部
　１２ｈ　　第２ネジ受け部
　１３　　　第１案内ロール
　１４　　　第２案内ロール
　１４ａ　　第２案内ロール
　１５　　　ネジ
　１６　　　ナット
　１７ａ　　第１の入口
　１７ｂ　　口内
　１７ｃ　　第２の入口
　１７ｄ　　嵌合空間
　２０　　　鞘本体
　２０ａ　　入口
　２１　　　嵌合用孔
　３０　　　鋸
　３１　　　鋸刃
　３１ａ　　刃先
　３２　　　鋸グリップ
　３３　　　膨出部
　Ｐ　　　　結合領域
　Ｑ　　　　非結合領域
　Ｔ　　　　傾斜案内櫛歯
　Ｔ１　　　傾斜面
　Ｕ　　　　統一傾斜案内面

Claims

　扁平な鞘口部とそれに続く扁平な鞘本体とを備え、鋸刃をその刃先から前記鞘口部を介して前記鞘本体に挿入するようにした鋸鞘であって、前記鞘口部は、鋸刃を差し入れる第１の入口と、該第１の入口から差し入れられた鋸刃を鞘本体に導く第２の入口とを備え、前記第１の入口の横幅方向両側に、鋸刃の刃先を前記鞘口部内へ案内する一対の第１案内ロールを備え、前記第２の入口の口内縦幅方向片側若しくは両側に、前記第１の入口から入ってきた鋸刃の向きを前記扁平な鞘本体の扁平方向と一致するよう矯正しながら鞘本体へ向けて案内する第２案内ロールを備え、且つ前記第２案内ロールの直前の位置に、刃先を前記第２案内ロールに向けて案内する傾斜案内櫛歯部を備えることを特徴とする鋸鞘。
　傾斜案内櫛歯部は、第２案内ロールに向けて傾斜する傾斜面を備える傾斜案内櫛歯を、鞘口部の口内横幅方向に複数並列配置させてなり、各傾斜案内櫛歯の傾斜面の集合体で、鋸刃を第２案内ロールに向けて案内する統一傾斜案内面を形成していることを特徴とする請求項１に記載の鋸鞘。
　傾斜案内櫛歯の傾斜面は、湾曲面で構成されると共に、各傾斜案内櫛歯のそれぞれの傾斜面の曲率半径を同じ曲率半径に構成してあることを特徴とする請求項２に記載の鋸鞘。
　鞘口部の口内の第１案内ロールと第２案内ロールとの間の位置における前記鞘口部の口内横幅方向両側に、鋸グリップのそれ以上の侵入を阻止する一対のグリップ侵入阻止部を設けることを特徴とする請求項１～３の何れか１項に記載の鋸鞘。
　グリップ侵入阻止部は、鞘口部の口内横幅方向両側の内壁を、鞘口部の口内の奥に行くにつれて内壁間の間隙が狭くなるように内向きに傾斜させてなる内向き傾斜壁で構成されると共に、第１案内ロールと前記内向き傾斜壁における鞘口部の奥側の端部との間の一定の間隙を、鋸グリップの一部を受け入れて挟持させるグリップ弾性挟持用空間として構成してあることを特徴とする請求項４に記載の鋸鞘。
　グリップ侵入阻止部は、鞘口部の口内横幅方向両側位置で口内に突出する突出部として構成されると共に、第１案内ロールと前記突出部との間の一定の間隙を、弾性変形によって前記第１案内ロールを乗り越えてくる鋸グリップの一部を受け入れて嵌合させるグリップ弾性嵌合用空間として構成してあることを特徴とする請求項４に記載の鋸鞘。
　第２の入口の口内縦幅方向両側に、一対の第２案内ロールを備えると共に、口内の上側と下側の何れか一方の前記第２案内ロールの直前には、傾斜案内櫛歯部を備え、残る他方の前記第２案内ロールの直前には、刃先を前記第２案内ロールに向けて案内する傾斜案内面を備えることを特徴とする請求項１～６の何れか１項に記載の鋸鞘。
　扁平な鞘口部は、上口体と下口体とからなる分割体を分離自在に結合することで構成されていると共に、前記上口体は、下口体との結合位置に嵌合用凸部を一乃至複数備え、前記下口体は、上口体との結合位置に前記嵌合用凸部と嵌合する嵌合用凹部を一乃至複数備えることを特徴とする請求項１～７の何れか１項に記載の鋸鞘。