WO2018087962A1

WO2018087962A1 - 車両有生性知覚促進システム、車両、車両有生性知覚促進プログラム及び制御方法

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Publication number: WO2018087962A1
Application number: PCT/JP2017/026727
Authority: WO
Inventors: 翔末神; 浩司大本; 聡一郎田中; 以起原; 雅也川島
Original assignee: ヤマハ発動機株式会社
Priority date: 2016-11-08
Filing date: 2017-07-24
Publication date: 2018-05-17
Also published as: TW201817381A; EP3524500A4; EP3524500A1; TWI655933B; WO2018087962A8

Abstract

車両有生性知覚促進システム９０は、車両に乗っている乗員が、乗員の筋力で車両に対して圧力を加える動作を検出する乗員加圧検出部４２と、乗員の身体の異なる部分にそれぞれ接する２つの接触部８Ｒ、８Ｌと、アクチュエータ６と、指示部５２と、駆動部５３を備える。アクチュエータ６は、２つの接触部が、２つの接触部の間に位置する乗員の身体部分を挟み込んで圧力を加えるように、２つの接触部の身体部分に接する部分を結ぶ方向において２つの接触部を近づける成分を含む力を、２つの接触部の少なくとも一方に付与する。指示部５２は、乗員加圧検出部で検出された動作に基づいて、乗員が車両の有生性を知覚することを促進するように、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に付与する力を決定する。

Description

車両有生性知覚促進システム、車両、車両有生性知覚促進プログラム及び制御方法

　本発明は、乗員が車両の有生性を知覚して、乗員の心理状態又は生理状態を変化させることができる機能を持つ車両に関する。

　特開平４－２５０１７１号公報（特許文献１）には、自動車とドライバとの関係においてドライバの感性に働きかけるマン・マシン・システムであるヒューマンマシンシステムに関する技術が開示されている。このヒューマンマシンシステムは、ドライバの生理、心理状態を推定する人間状態検出部と、ドライバに対する人間的反応の呈示パターンを決定する刺激制御部と、刺激制御部からの指令に基づきドライバに対する刺激を生成する感覚刺激発生部を含む。具体的には、指先容積脈波検出器の検出結果からドライバのイライラやビックリ度を示す状態量が算出される。この状態量に基づくパラメータに応じて運転席を支持する加振器が駆動される。これにより、シートゆらぎ振動を刺激としてドライバに与える。その結果として、ドライバが快適な運転を行えるようにする。

　また、特許第５２５６８２６号公報（特許文献２）では、車両のステアリングに作用する荷重及び車両に生じる横加速度に基づいて、ステアリングとシートとの相対位置を調整する運転姿勢調整装置が開示されている。これにより、横加速度に起因してステアリングに付与された荷重の影響を考慮して、ステアリングとシートの相対位置を適切に調整することが可能となる。

特開平４－２５０１７１号公報特許第５２５６８２６号公報

　上記従来技術におけるヒューマンマシンシステムは、人間の感性を検出し、マシンの機械機能を人間の感性に適用させたり、非適用させたりすることで、マシンの疑似人間化を図っている。また、上記従来技術における運転姿勢調整装置は、走行時のステアリングの入力に基づいて、ステアリングとシートの相対位置を適切に調整する。本願は、上記従来技術とは異なる態様で、乗員の動作の検出及び乗員への刺激の付与を行うことで、乗員が車両の有生性（animacy）を知覚して、乗員の心理状態又は生理状態を変化させることができる車両を開示する。

課題を解決するための手段及び発明の効果

　人の脳は、新奇の感覚や刺激に接すると、喜びや高揚感を感じる。車両においては、車両の走行性能や操縦性を向上させることで、乗員の新奇の感覚や刺激を促し、乗員の車両に対する満足度を向上させることができる。一方で、上記感覚や刺激が繰り返し入力されると、慣れが生じる。乗員が、車両の走行性能及び操縦性に慣れてくると、乗員の車両に対する飽きが生じる。その結果、乗員は、高揚感を感じにくくなる。ひいては、乗員の車両に対する満足度が低下する場合がある。

　そこで、発明者らは、車両の走行性能や操縦性の向上に因らずに、乗員の車両に対する満足度を向上させるため、乗員に車両に対する有生性を知覚させることができる車両について研究した。その結果、乗員が車両を、意思疎通の対象となり得る存在として認識する、すなわち、乗員が車両に存在感を感じる場合に、乗員が車両に対して有生性を知覚することを、発明者らは見出した。

　そのため、乗員と車両との意思疎通の態様を研究した。まず、車両における乗員の感情の動きとそれに伴う挙動を詳しく調べた。その結果、乗員の感情の動きは、乗員の身体の互いに離間した部分が近づく動作に現れる場合が少なくないことを見出した。例えば、乗員は、気分が高揚した場合、手を握ることで指先と掌を近づける動作や、右膝と左膝を近づける動作、又は、腹と腿を近づける動作等をすることが多い。また、乗員の身体の互いに離間した部分が近づく動作と、乗員が車両に対して圧力を加える動作とは密接な関係があることを見出した。

　発明者らは、乗員が身体の互いに離間した部分を近づける動作又は、車両に対して圧力を加える動作を検出することにより、乗員の感情の動きを検出できることに想到した。さらに、検出した乗員の上記動作に対して、車両が上記動作を模した様式によって反応することで、乗員と車両との意思疎通を実現する構成に想到した。すなわち、乗員の上記動作を車両が検出すると、乗員の身体の車体に接する部分のうち互いに離間した２つの接触部に、互いに近づける方向の力を付与する構成を想到した。この構成により、乗員に車両に対する有生性を知覚させ、乗員の心理状態又は生理状態を変化させることができることを見出した。このような知見に基づいて、下記の車両の構成に想到した。

　（構成１）
　本発明の１つの観点に基づく構成１の車両有生性知覚促進システムは、車両に乗っている乗員が、前記乗員の筋力で前記車両に対して圧力を加える動作を検出する乗員加圧検出部と、前記乗員の身体の異なる部分にそれぞれ接する２つの接触部と、前記２つの接触部が、前記２つの接触部の間に位置する前記乗員の身体部分を挟み込んで前記身体部分に対して圧力を加えるように、前記２つの接触部の前記身体部分に接する部分を結ぶ方向において前記２つの接触部を近づける成分を含む力を、前記２つの接触部の少なくとも一方に付与するアクチュエータと、前記乗員加圧検出部で検出された前記動作に基づいて、前記乗員が前記車両の有生性を知覚することを促進するように、前記アクチュエータが前記２つの接触部の少なくとも一方に付与する力を決定する指示部と、前記指示部から前記指示部が決定した前記力を示す指示を受けて前記アクチュエータを駆動する駆動部と、を備える。

　上記第１の構成において、乗員加圧検出部は、乗員が車両に対して圧力を加える動作を検出する。例えば、乗員が車両に対して、掴む、抱く、挟む又は撫でるといった動作が検出される。これにより、乗員の感情の動きを検出することができる。指示部、及び駆動部によって、乗員加圧検出部で検出された動作に基づいて、車体に接する乗員の身体の部分に力を付与する。そのため、乗員の感情の動きに対応した触覚を乗員に提示することができる。ここで、アクチュエータは、乗員の身体の異なる部分に接する車体の２つの接触部を結ぶ方向において２つの接触部を近づける成分を含む力を、これら２つの接触部の少なくとも一方に付与する。この時、２つの接触部は、乗員の身体の２つの接触部の間の部分を挟み込むように乗員の身体の部分に圧力を加える。これにより、乗員は、２つの互いに離間した身体部分において車体から包まれる、抱かれる、掴まれる、又は挟まれるといった感覚を感じることができる。そのため、乗員は、自分の感情の動きに合わせて車体から包まれる、または抱擁されるように感じることができる。すなわち、乗員の車両に対する有生性を生じさせることができる。その結果、乗員の心理状態又は生理状態を変化させることができる。

　（構成２）
　上記構成２において、前記乗員加圧検出部で検出された前記乗員が前記車両に対して圧力を加える動作に基づいて、音声の特徴量を含む音を出力する聴覚刺激提示部をさらに備えてもよい。これにより、乗員の車両に対する有生性の知覚をより促進させることができる。

　（構成３）
　上記構成１又は２において、指示部は、前記乗員加圧検出部で検出された前記乗員が前記車両に対して圧力を加える動作の量に基づいて、前記乗員が前記車両の有生性を知覚することを促進するように、前記アクチュエータが前記２つの接触部の少なくとも一方に付与する前記力を決定してもよい。これにより、より乗員の感情の動きに対応した触覚を乗員に提示することができる。その結果、乗員の車両に対する有生性の知覚をより促進させることができる。

　（構成４）
　上記構成１～３のいずれかにおいて、前記指示部は、前記アクチュエータが前記２つの接触部の少なくとも一方に付与する前記力を、車速に応じて調整してもよい。これにより、車両の状態に応じて、乗員へ提示する触覚が変化する。その結果、乗員が車両に対して意思疎通の相手としての存在感を感じやすくなる。

　（構成５）
　本発明の他の観点に基づく構成５の車両は、この車両前記乗員の身体の異なる部分にそれぞれ接する２つの接触部と、前記２つの接触部の少なくとも一方に力を付与するアクチュエータと、乗員加圧検出部で検出された動作に基づいて、前記アクチュエータが前記２つの接触部の少なくとも一方に付与する力を決定する指示部と、前記アクチュエータを駆動する駆動部とを備える。前記アクチュエータは、前記２つの接触部が、前記２つの接触部の間に位置する前記乗員の身体部分を挟み込んで前記身体部分に対して圧力を加えるように、前記２つの接触部の前記身体部分に接する部分を結ぶ方向において前記２つの接触部を近づける成分を含む力を、前記２つの接触部の少なくとも一方に付与する。前記乗員加圧検出部は、車両に乗っている乗員が前記乗員の筋力で前記車両に対して圧力を加える動作を検出する。前記駆動部は、前記指示部から前記指示部が決定した前記力を示す指示を受けて前記アクチュエータを駆動する。前記指示部は、前記乗員加圧検出部で検出された前記動作に基づいて、前記乗員が前記車両の有生性を知覚することを促進するように、前記アクチュエータが前記２つの接触部の少なくとも一方に付与する力を決定する。

　構成５の車両は、乗員の車両に対する加圧動作に対する応答として、２つの接触部の間を挟み込むように乗員の身体の部分に圧力を加える。これにより、乗員の感情の動きに対応した触覚を乗員に提示することができる。そのため、乗員の車両に対する有生性を生じさせることができる。その結果、乗員の心理状態又は生理状態を変化させることができる。

　（構成６）
　上記構成５において、前記接触部は、前記車両の左右方向に並んで配置され、前記車両に乗っている乗員の胴部又は右足に接する右押圧部、及び、前記乗員の胴部又は左足に接する左押圧部を含んでもよい。前記アクチュエータは、前記右押圧部が前記乗員に接する部分及び前記左押圧部が前記乗員に接する部分を互いに近づける力を前記右押圧部及び前記左押圧部の少なくとも一方に付与してもよい。前記駆動部は、前記乗員加圧検出部で検出された前記動作に基づいて、前記アクチュエータが、前記乗員が前記車両の有生性を知覚することを促進するように、前記右押圧部及び前記左押圧部の少なくとも一方に付与する力を決定する前記指示部から前記指示部が決定した前記力を示す指示を受けて前記アクチュエータを駆動することができる。なお、上記構成１～４のいずれかの車両有生性知覚推進システムは、上記構成６の車両を含んでもよい。

　（構成７）
　上記構成６において、前記車両は、車体フレームと、前記車体フレームの前記車両の前後方向の前部に回転可能に支持されたハンドルと、前記車体フレームに支持され、前記乗員が跨がるためのシートを備えてもよい。この構成において、前記右押圧部及び前記左押圧部は、前記ハンドルと前記シートの間に配置されてもよい。なお、上記構成１～４のいずれかの車両有生性知覚推進システムは、上記構成７の車両を含んでもよい。

　（構成８）
　上記構成６において、前記車両は、前記車体フレームと、前記車体フレームの前記車両の前後方向の前部に回転可能に支持されたハンドルと、前記ハンドルに対して前記車両の前後方向において後方に設けられ、前記乗員が跨がるためのシートを備えてもよい。この構成において、前記右押圧部及び前記左押圧部は、前記シートに跨がる乗員に対して前記車両の前後方向における後方から接触する位置に設けられてもよい。なお、上記構成１～４のいずれかの車両有生性知覚推進システムは、上記構成８の車両を含んでもよい。

　（プログラム１）
　本発明の他の観点におけるプログラム１は、アクチュエータを制御する車両有生性知覚促進プログラムである。前記アクチュエータは、車両に乗っている乗員の身体の異なる部分にそれぞれ接する２つの接触部が、前記２つの接触部の間に位置する前記乗員の身体部分を挟み込んで前記身体部分に対して圧力を加えるように、前記２つの接触部の前記身体部分に接する部分を結ぶ方向において前記２つの接触部を近づける成分を含む力を、前記２つの接触部の少なくとも一方に付与するアクチュエータである。前記車両有生性知覚促進プログラムは、車両に乗っている乗員が、前記乗員の筋力で前記車両に対して圧力を加える動作を検出する乗員加圧検出部から検出結果と取得する処理と、前記乗員加圧検出部で検出された前記動作に基づいて、前記乗員が前記車両の有生性を知覚することを促進するように、前記アクチュエータが前記２つの接触部の少なくとも一方に付与する力を決定する処理と、前記決定した前記力を示す指示を、前記アクチュエータを駆動する駆動部に指示する処理と、をコンピュータに実行させる。

　上記プログラム１によってアクチュエータが制御されることにより、乗員の車両に対する加圧動作に対する応答として、２つの接触部の間を挟み込むように乗員の身体の部分に圧力を加えることができる。そのため、乗員の車両に対する有生性を生じさせることができる。その結果、乗員の心理状態又は生理状態を変化させることができる。なお、車両有生性知覚促進プログラムを記録した非一時的(non-transitory)な記録媒体も、本発明の実施形態に含まれる。

　（制御方法１）
　本発明の他の観点における制御方法１は、アクチュエータを制御して車両有生性知覚を促進する制御方法である。前記アクチュエータは、車両に乗っている乗員の身体の異なる部分にそれぞれ接する２つの接触部が、前記２つの接触部の間に位置する前記乗員の身体部分を挟み込んで前記身体部分に対して圧力を加えるように、前記２つの接触部の前記身体部分に接する部分を結ぶ方向において前記２つの接触部を近づける成分を含む力を、前記２つの接触部の少なくとも一方に付与するアクチュエータである。前記制御方法は、車両に乗っている乗員が、前記乗員の筋力で前記車両に対して圧力を加える動作を乗員加圧検出部が検出するステップと、前記乗員加圧検出部で検出された前記動作に基づいて、前記乗員が前記車両の有生性を知覚することを促進するように、前記アクチュエータが前記２つの接触部の少なくとも一方に付与する力を決定するステップと、前記決定した前記力を示す指示を受けた前記アクチュエータの駆動部が、前記アクチュエータを駆動することにより、前記アクチュエータが前記２つの接触部の少なくとも一方に力を付与するステップと、を有する。前記乗員加圧検出部は、センサであってもよい。前記アクチュエータが前記２つの接触部の少なくとも一方に付与する力を決定するステップは、例えば、プロセッサにより実行されてもよい。

　上記制御方向１によってアクチュエータが制御されることにより、乗員の車両に対する加圧動作に対する応答として、２つの接触部の間を挟み込むように乗員の身体の部分に圧力を加えることができる。そのため、乗員の車両に対する有生性を生じさせることができる。その結果、乗員の心理状態又は生理状態を変化させることができる。

　本発明の実施形態における車両は、車体フレームと、前記車体フレームに支持され、乗員の身体を支持する乗員支持部と、前記乗員支持部に支持された乗員の身体の互いに離間した部分が近づく動作を検出する近接動作検出部と、触覚刺激提示部とを備える。触覚刺激提示部は、車体の一部であって前記乗員の身体の異なる部分にそれぞれ接する２つの接触部と、前記２つの接触部を結ぶ方向において前記２つの接触部を近づける成分を含む力を、前記２つの接触部の少なくとも一方に付与するアクチュエータと、前記近接動作検出部で検出された前記動作に基づいて前記アクチュエータが付与する力を制御する制御部とを含む（第１の構成）。

　上記第１の構成において、近接動作検出部は、乗員の身体の互いに離間した部分が近づく動作を検出する。すなわち、近接動作検出部により、乗員の異なる身体の部分同士を近づける動作が検出される。例えば、乗員が何かを包む、掴む、抱く、又は挟むといった動作が検出される。これにより、乗員の感情の動きを検出することができる。触覚刺激提示部は、制御部、アクチュエータ及び接触部によって、近接動作検出部で検出された動作に基づいて、車体に接する乗員の身体の部分に力を付与する。そのため、乗員の感情の動きに対応した触覚を乗員に提示することができる。また、触覚刺激提示部は、乗員の身体の異なる部分に接する車体の２つの接触部を結ぶ方向において２つの接触部を近づける成分を含む力を、これら２つの接触部に付与する。すなわち、触覚刺激提示部は、身体の車体に接する部分のうち、異なる２つの身体部分の間を結ぶ線の方向においてこれら２つの身体部分を近づける成分を含む力を、前記２つの接触部の少なくとも一方に対して付与する。これにより、乗員は、２つの互いに離間した身体部分において車体から包まれる、抱かれる、掴まれる、又は挟まれるといった感覚を感じることができる。そのため、乗員は、自分の感情の動きに合わせて車体から包まれる、または抱擁されるように感じることができる。その結果、乗員の車両に対する愛着度を向上させることができる。

　上記第１の構成において、車両は、前記近接動作検出部で検出された前記動作に基づいて、感嘆音声の特徴量を含む音を出力する聴覚刺激提示部をさらに備えてもよい（第２の構成）。これにより、触覚刺激提示による触覚の提示に合わせて、乗員の感情の動きに対応した音を乗員に提示することができる。これにより、乗員は、車両が息づいている感覚を感じることができる。その結果、乗員の車両に対する愛着度をより向上させることができる。

　上記第１又は第２の構成において、触覚刺激提示部の制御部は、前記近接動作検出部で検出された動作の量に応じた前記力を前記２つの接触部の少なくとも一方に付与するようアクチュエータを制御することができる（第３の構成）。これにより、より乗員の感情の動きに対応した触覚を乗員に提示することができる。

　上記第１～第３の構成のいずれかにおいて、前記触覚刺激提示部の制御部は、前記アクチュエータが前記２つの接触部の少なくとも一方に付与する前記力を、車速に応じて調整することができる（第４の構成）。これにより、車両の状態に応じて、乗員へ提示する触覚が変化する。その結果、乗員が車両に対して意思疎通の相手としての存在感を感じやすくなる。

　上記第１～第４の構成のいずれかにおいて、前記触覚刺激提示部の接触部は、前記車体フレームに支持された状態で前記車両の左右方向に並んで配置され、前記乗員支持部に支持された乗員の胴部又は右足に接する右押圧部、及び、前記乗員支持部に支持された乗員の胴部又は左足に接する左押圧部を含む構成とすることができる。この場合、前記触覚刺激提示部の前記アクチュエータは、前記右押圧部及び前記左押圧部を互いに近づける力を前記右押圧部及び前記左押圧部の少なくとも一方に付与することができる。前記触覚刺激提示部の前記制御部は、前記近接動作検出部で検出された前記動作に基づいて、前記アクチュエータが、前記右押圧部及び前記左押圧部の少なくとも一方に付与する力を制御することができる（第５の構成）。これにより、乗員は、車体から包まれる、又は抱かれるといった感覚をより感じやすくなる。なお、ここで、胴は、腰、腹、尻、背中を含む。足は、つま先から足の付け根までを含むものとする。

　上記第５の構成において、前記車両は、前記車体フレームの前部に回転可能に支持されたハンドルをさらに備えてもよい。この場合、前記乗員支持部は、前記乗員が跨がるためのシートを含み、前記右押圧部及び前記左押圧部は、前記ハンドルと前記シートの間に配置される構成とすることができる（第６の構成）。これにより、乗員の車両に対する愛着度を向上させることができる鞍乗型車両が実現できる。

図１は、車両の全体を右方から見た右側面図である。図２は、車両１の全体を上方から見た平面図である。図３は、車両１の全体を前方から見た正面図である。図４は、可動部が第２の位置にある時の車両の全体を右方から見た右側面図である。図５は、可動部が第２の位置にある時の車両の全体を上方から見た平面図である。図６は、可動部が第２の位置にある時の車両の全体を前方から見た正面図である。図７は、車両１が備える制御システムの構成例を示すブロック図である。図８は制御システムの変形例を示すブロック図である。図９は、接触部に付与される力を制御する処理の一例を示すフローチャートである。図１０は、制御システムの変形例を示すブロック図である。図１１は、聴覚刺激提示部の動作例を示すフローチャートである。図１２は、変形例における車両の左側面図である。図１３は、接触部の変形例を示す図である。図１４は、変形例に係る接触部及びアクチュエータを含む車両部分の左側面図である。図１５は、変形例に係る接触部及びアクチュエータを含む車両部分の上面図である。図１６は、変形例に係る接触部及びアクチュエータを含む車両部分の斜視図である。図１７は、図１５におけるＡ―Ａ線の断面図である。図である。図１８は、車両有生性知覚促進システムの構成例を示す機能ブロック図である。図１９は、車両有生性知覚促進システムの変形例を示す図である。図２０は、車両有生性知覚促進システムの他の変形例を示す図である。

　以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳細に説明する。

　図面において、矢印Ｆは、車両の前方向を示している。矢印Ｂは、車両の後方向を示している。矢印Ｕは、車両の上方向を示している。矢印Ｄは、車両の下方向を示している。矢印Ｒは、車両の右方向を示している。矢印Ｌは、車両の左方向を示している。本明細書において、車両の前後方向、車両の左右方向、および車両の上下方向は、車両を運転する乗員から見て、車両を基準とした前後方向、左右方向、および上下方向を意味する。

　車体フレームは、鉛直方向に対して車両の左右方向又は車両の前後方向に傾斜する場合がある。そこで、車両を基準とした方向に加え、車体フレームを基準とした方向が定められる。添付の図面においては、車体フレームの前後方向、左右方向、及び上下方向は、車両の前後方向、左右方向、及び上下方向と、それぞれ、一致している。つまり、添付の図面は、車両が左右に傾斜することなく、直立している状態を示している。

　本明細書において、「車体フレームの前後方向」、「車体フレームの左右方向」、および「車体フレームの上下方向」とは、車両を運転する乗員から見て、車体フレームを基準とした前後方向、左右方向、および上下方向を意味する。

　以下の説明において、単に「前方」、「後方」、「左方」、「右方」、「上方」、又は、「下方」と記載した場合は、それぞれ、車体フレームの前後方向の前方、車体フレームの前後方向の後方、車体フレームの左右方向の左方、車体フレームの左右方向の右方、車体フレームの上下方向の上方、又は、車体フレームの上下方向の下方を意味するものとする。

　本明細書において、「車体フレームの前後方向の前方に延びる」とは、車体フレームの前後方向に対して傾いた方向に延びることを含む。「車体フレームの前後方向の後方に延びる」とは、車体フレームの前後方向に対して傾いた方向に延びることを含む。

　本明細書において、「車体フレームの左右方向の左方に延びる」とは、車体フレームの左右方向に対して傾いた方向に延びることを含む。「車体フレームの左右方向の右方に延びる」とは、車体フレームの左右方向に対して傾いた方向に延びることを含む。

　本明細書において、「車体フレームの上下方向の上方に延びる」とは、車体フレームの上下方向に対して傾いた方向に延びることを含む。「車体フレームの上下方向の下方に延びる」とは、車体フレームの上下方向に対して傾いた方向に延びることを含む。

　本明細書において、「車体フレームの直立状態」とは、車体フレームの上下方向が鉛直方向と一致している状態を意味する。この状態においては、車両を基準にした方向と車両フレームを基準にした方向は一致する。車体フレームが鉛直方向に対して左右方向に傾斜しているときは、車両の左右方向と車体フレームの左右方向は一致せず、車両の上下方向と車体フレームの上下方向も一致しない。これに対して、車体フレームが鉛直方向に対して左右方向に傾斜しているときであっても、車両の前後方向と車体フレームの前後方向は一致する。

　本明細書において、「接続」は、物理的な接続の他、電気的な接続、及び、通信可能な状態になることを含む。物理的な接続の場合は、例えば、２つの部材が直接接続される場合と、２つの部材が、他の部材を介して間接的に接続される場合を含む。

　（車両の構成）
　図１は、車両１の全体を右方から見た右側面図である。図２は、車両１の全体を上方から見た平面図である。図３は、車両１の全体を前方から見た正面図である。図１に示すように、車両１は、車体フレーム２ａ、２ｂ、２ｃ、２ｄ（以下、特に区別しない場合は、車体フレーム２ａ～２ｄを車体フレーム２と総称する）、着座シート３、前輪支持部７Ｒ、７Ｌ、前輪３１、後輪３２、パワーユニット１３、リヤサスペンション３３、及び、リヤアーム３４を備える。なお、図２及び図３に示すように、前輪支持部７Ｒ、７Ｌは、右の前輪支持部７Ｒと左の前輪支持部７Ｌで構成されるが、図１では、右の前輪支持部７Ｒのみ図示している。

　車体フレーム２は、着座シート３、前輪支持部７Ｒ、７Ｌ及びパワーユニット１３を支持している。前輪支持部７Ｒ、７Ｌは、その前端７１Ｒ、７１Ｌ（図１には右の前端７１Ｒのみ図示）において、前輪３１を回転可能に支持する。

　パワーユニット１３は、車体フレーム２に懸架される。パワーユニット１３は、エンジン、電動モータ、バッテリなどの駆動源や、トランスミッションなどの装置を備えている。

　車体フレーム２の後部には、リヤアーム３４が、ピボット軸２２を中心に回転可能に取り付けられる。リヤアーム３４は、後端において、後輪３２を回転可能に支持する。リヤサスペンション３３の一端はリヤアーム３４に、他端はパワーユニット１３に、それぞれ、回転可能に取り付けられる。なお、リヤサスペンション３３の他端は、車体フレーム２に取り付けられてもよい。また、図示していないが、車両１は、パワーユニットで発生した駆動力を後輪３２へ伝達する伝達部材（例えば、チェーン、ベルト又はシャフト等）を備える。

　図１に示す例では、車体フレーム２は、左右方向の中央に配置されるフレーム２ａと、フレーム２ａに接続され、フレーム２ａの左右に配置されるフレーム２ｂ、２ｃ、２ｄを含む。フレーム２ａは、湾曲しながら前後方向に延びている。フレーム２ａの一端は着座シート３に接続される。フレーム２ａは、着座シート３から前方に延び、下方に湾曲した後、後方に延びている。フレーム２ａの他端すなわち後端は、リヤアーム３４のピボット軸２２を支持している。フレーム２ｃは、フレーム２ａから分岐して上方に延び、ベース部４に接続される。フレーム２ｄは、フレーム２ｃとフレーム２ａとの分岐部より後方において、フレーム２ａから分岐して下方に延び、接続部２１においてフレーム２ｂと接続される。フレーム２ｂは、接続部２１から上方に延び、フレーム２ｃの前を通ってフレーム２ａより上の位置で、ガード２３に接続される。フレーム２ｂ、２ｃ、２ｄは、いずれもフレーム２ａの左右に配置される一対のフレームで構成される。図３に示すように、フレーム２ｂは、フレーム２ａの左右に配置される。

　また、車両１は、着座シート３の前方に配置されるベース部４と、ベース部４に支持される可動部５、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌを備える（図１では、右押圧部８Ｒのみ図示）。ベース部４は、車体フレーム２に支持される。可動部５は、ベース部４に対して上下方向に移動可能に支持される。右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌは、ベース部４に対して左右方向に移動可能に支持される。車両１は、可動部５、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌを動かすアクチュエータ６１、６２、６３（以下、特に区別しない場合は、アクチュエータ６と総称する）を備える。

　ベース部４は、着座シート３の前端に接し、着座シート３から前方へ延びて形成される。車両１の側方（右方）から見て、ベース部４と重なる位置で、可動部５の被支持部が配置される。可動部５は、被支持部で、ベース部４に支持される。被支持部は、可動部５のピボット軸Ｊ１となっている。ピボット軸Ｊ１の軸方向は、車体フレーム２の左右方向と同じである。可動部５は、被支持部から前方へ延びて形成される。可動部５は、ピボット軸Ｊ１を中心に回転可能に支持される。これにより、可動部５は、ベース部４に対して上下方向に移動可能に支持される。

　図２に示すように、ベース部４は、可動部５の被支持部の左右に配置される。すなわち、ベース部４は、着座シート３から前方に延び、途中で左右に分岐して、右の前輪支持部７Ｒ及び左の前輪支持部７Ｌにそれぞれ繋がる。左右に分岐したベース部４の間に、可動部５のピボット軸Ｊ１が配置される。本例では、ベース部４は、前輪支持部７Ｒ、７Ｌと一体的に形成される。具体的には、可動部５の右に配置されたベース部４の部分は、右の前輪支持部７Ｒにつながっている。同様に、可動部５の左に配置されたベース部４の部分は、左の前輪支持部７Ｌにつながっている。

　また、図２に示すように、ベース部４は、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌと一体的に形成される。具体的には、可動部５の右に配置されたベース部４の部分は、右押圧部８Ｒにつながっている。同様に、可動部５の左に配置されたベース部４の部分は、左押圧部８Ｌにつながっている。右押圧部８Ｒは、ベース部４から右方に突出する。左押圧部８Ｌはベース部４から左に突出する。

　図２に示すように、上方から見て、右押圧部８Ｒは、ベース部４よりも右の位置に配置される。左押圧部８Ｌは、上方から見て、ベース部４より左の位置に配置される。上方から見て、右押圧部８Ｒのベース部４に対する付け根８Ｒａ及び左押圧部８Ｌのベース部４に対する付け根８Ｌａは、着座シート３における乗員の着座位置より前に位置している。右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌの後端は、上方から見て、乗員の着座位置と車体フレーム２の前後方向において重なっている。すなわち、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌの後端は、着座シート３の前端より後ろに位置している。

　この構成により、右押圧部８Ｒのベース部４に対する付け根８Ｒａは、着座シート３に跨がった乗員の右膝の上に位置する。左押圧部８Ｌのベース部４に対する付け根８Ｌａは、着座シート３に跨がった乗員の左膝の上に位置する。そのため、右押圧部８Ｒは、着座シート３に跨がった乗員の右膝の上から、胴の右へ向かって延びる形態となる。右押圧部８Ｒが左方に動くと乗員の胴の右を押す。左押圧部８Ｌが右方に動くと乗員の胴の左を押す。すなわち、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌは、乗員の胴を支持する構成となっている。乗員の身体において、右押圧部８Ｒが接する位置と、左押圧部８Ｌが接する位置は異なる。右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌは、乗員の異なる部分にそれぞれ接する接触部の一例である。なお、着座シート３は、車体フレームに支持され、乗員の身体を支持する乗員支持部の一例である。

　図１に示すように、右押圧部８Ｒの一部は、右方から見て、可動部５の一部及びベース部４の一部と重なっている。右押圧部８Ｒは、後方かつ上方に延びて形成される。図１では図示しないが、左押圧部８Ｌは、車体フレーム２の左右方向から見て、右押圧部８Ｒと重なる位置に設けられる。すなわち、左押圧部８Ｌの一部は、左方から見て、可動部５の一部及びベース部４の一部と重なっている。右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌは、ベース部４を介して、車体フレーム２ｂに支持される。

　図２に示すように、本例では、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌは、ベース部４に対して左右方向に可動に支持される。具体的には、右押圧部８Ｒは、右固定部８Ｒｂと右突出可動部８Ｒｃを含む。右固定部８Ｒｂは、車体フレーム２に支持される。右突出可動部８Ｒｃは、右固定部８Ｒｂに可動に支持され、右固定部８Ｒｂから右方かつ後方に延びる。右突出可動部８Ｒｃは、右固定部８Ｒｂの右端に沿う線を回転軸Ｊ２Ｒとして回転可能に支持される。右突出可動部８Ｒｃが回転軸Ｊ２Ｒ周りに回転することで、右突出可動部８Ｒｃの左右方向における位置が変化する。本例では、回転軸Ｊ２Ｒは、車体フレーム２の前後方向軸に対して傾いている。回転軸Ｊ２Ｒの前端は、後端より右に位置している。

　左押圧部８Ｌは、左固定部８Ｌｂと、左突出可動部８Ｌｃを含む。左固定部８Ｌｂは、車体フレーム２に支持される。左突出可動部８Ｌｃは、左固定部８Ｌｂに可動に支持され、左固定部８Ｌｂから左方かつ後方に延びる。左突出可動部８Ｌｃは、左固定部８Ｌｂの左端に沿う線を回転軸Ｊ２Ｌとして回転可能に支持される。左突出可動部８Ｌｃが回転軸Ｊ２Ｌ周りに回転することで、左突出可動部８Ｌｃの左右方向における位置が変化する。本例では、回転軸Ｊ２Ｌは、車体フレーム２の前後方向軸に対して傾いている。回転軸Ｊ２Ｌの前端は、後端より左に位置している。

　右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌを動かすアクチュエータ６は、例えば、モータ６１を動力源とすることができる。図２に示す例では、モータ６１の動力を伝達する手段として、ワイヤー８１Ｒ、８１Ｌが設けられる。ワイヤー８１Ｒ、８１Ｌは、車体フレーム２に固定された巻取機６４に巻き付けられる。巻取機６４は、モータ６１によって駆動される。ワイヤー８１Ｒの一方端は、巻取機６４に取り付けられる。ワイヤー８１Ｒの他方端は、右突出可動部８Ｒｃの回転軸Ｊ２Ｒから離れた位置に取り付けられる。ワイヤー８１Ｒは、回転軸Ｊ２Ｒと交差する。ワイヤー８１Ｌの一方端は、巻取機６４に取り付けられる。ワイヤー８１Ｌの他方端は、左突出可動部８Ｌｃの回転軸Ｊ２Ｌから離れた位置に取り付けられる。ワイヤー８１Ｌは、回転軸Ｊ２Ｌと交差する。巻取機６４がワイヤー８１Ｒ、８１Ｌを巻き取ると、ワイヤー８１Ｒが右突出可動部８Ｒｃを引っ張って、右突出可動部８Ｒｃを回転軸Ｊ２Ｒ周りに回転させ、ワイヤー８１Ｌが左突出可動部８Ｌｃを引っ張って、左突出可動部８Ｌｃを回転軸Ｊ２Ｌ周りに回転させる。

　右押圧部８Ｒの右突出可動部８Ｒｃが回転軸Ｊ２Ｒ周りに回転すると、右突出可動部８Ｒｃは、ベース部４に対して左右方向に動く。左押圧部８Ｌの左突出可動部８Ｌｃが回転軸Ｊ２Ｌ周りに回転すると、左突出可動部８Ｌｃは、ベース部４に対して左右方向に動く。ワイヤー８１Ｒ、８１Ｌが同時に巻き取られると、右突出可動部８Ｒｃは左へ、左突出可動部８Ｌｃは右へ動く。すなわち、右突出可動部８Ｒｃ及び左突出可動部８Ｌｃは、互いに近づくように動く。これにより、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌは、乗員の胴を左右から押すことができる。すなわち、乗員の身体の異なる部分に接触する２つの接触部（右押圧部８Ｒが身体に接する部分及び左押圧部８Ｌが身体に接する部分）を結ぶ方向において、２つの接触部を互いに近づける成分を含む力が生じる。

　なお、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌを互いに近づけるように動かす機構は、上記例に限られない。例えば、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌのそれぞれに、モータを設けることもできる。すなわち、右押圧部８Ｒを駆動する右モータ及び左押圧部８Ｌを駆動する左モータが設けられてもよい。この場合、例えば、右モータの出力軸を、右突出可動部８Ｒｃの回転軸Ｊ２Ｒに平行に配置することができる。そして、右モータの出力軸の回転を右突出可動部８Ｒｃに伝達する伝達部材を設けてもよい。これにより、右モータの出力軸の回転に伴って右突出可動部８Ｒｃが回転軸Ｊ２Ｒ周りに回転する。同様に、例えば、左モータの出力軸を、左突出可動部８Ｌｃの回転軸Ｊ２Ｌに平行に配置してもよい。そして、左モータの出力軸の回転を左突出可動部８Ｌｃに伝達する伝達部材を設けてもよい。これにより、左モータの出力軸の回転に伴って左突出可動部８Ｌｃが回転軸Ｊ２Ｌ周りに回転する。右モータと左モータは、例えば、同じ制御信号によって制御することができる。

　他の例として、例えば、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌは、それぞれ、乗員に接する部分にエアバックを備える構成であってもよい。この場合、アクチュエータとしてのコンプレッサと、コンプレッサ及びエアバックを接続するエアパイプとを、車両１に設けることができる。コンプレッサは、例えば、モータ又はエンジンによって駆動することができる。また、エアパイプにはエアバルブを設けることができる。エアバルブの開閉制御により、コンプレッサの圧力によってエアバックに封入された空気の量を調整することができる。右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌのエアバックの空気量を増やすことで、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌのエアバッグが互いに近づく。これにより、乗員の身体の異なる部分を互いに近づける方向に力を加えることができる。

　アクチュエータは、モータ及びエアバックのコンプレッサの両方を備える構成であってもよい。例えば、モータ６１によって右突出可動部８Ｒｃ及び左突出可動部８Ｌｃを回転軸Ｊ２Ｒ、Ｊ２Ｌの周りに回転させる機構と、エアバックによって、右突出可動部８Ｒｃ及び左突出可動部８Ｌｃを膨らませる機構の双方を車両１に設けることができる。

　上記例では、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌを動かすアクチュエータ６は、モータ６１、巻取機６４及びワイヤー８１Ｒ、８１Ｌを含む。これに対して、可動部５を動かすアクチュエータ６は、図１に示すように、モータ６１、及び減速機（ギヤ）６２、６３を含む。モータ６１の出力軸の回転は、減速機６２、６３を介して、ピボット軸Ｊ１に伝達される。この例では、モータ６１の出力軸及び減速機６２、６３の回転軸は、ピボット軸Ｊ１と平行になっている。減速機６２は、モータ６１の出力軸と同軸であり、モータ６１の出力軸の回転に伴って回転する。減速機６３は、ピボット軸Ｊ１と同軸であり、減速機６２と噛み合っている。減速機６２が回転すると、減速機６３が回転する。減速機６３の回転に伴ってピボット軸Ｊ１が回転する。なお、可動部５を動かすアクチュエータ６の構成は、図１に示す例に限られない。

　図１に示すように、前輪支持部７Ｒは、ベース部４から前方かつ下方に前輪３１に向かって延びる。前輪支持部７Ｒは、ベース部４と連続して形成される。図１には図示していないが、前輪支持部７Ｌは、ベース部４から可動部５の左を通って前方かつ下方に前輪３１に向かって延びる（図２、図３参照）。前輪支持部７Ｌは、ベース部４と連続して形成される。

　図１に示すように、前輪支持部７Ｒの右側面には、ベース部４から前方かつ下方に前輪３１に向かって延びる溝１１が形成される。溝１１は、前輪支持部７Ｒの右側面が車両内側に凹んだ部分である。溝１１は、前方かつ下方に延びる底面と、底面の延びる方向に垂直な方向に対向する一対の側面を有する。溝１１が形成する凹部内に把持部１２が設けられる。把持部１２は、溝１１の互いに対向する一対の側面の一方から他方へ向かって延びる棒状の部材で形成される。

　図１には表れていないが、前輪支持部７Ｌの左側面には、ベース部４から前方かつ下方に前輪３１に向かって延びる溝１１が形成される（図２、図３参照）。溝１１は、前輪支持部７Ｌの左側面が車両内側に凹んだ部分である。溝１１は、前方かつ下方に延びる底面と、底面の延びる方向に垂直な方向に対向する一対の側面を有する。溝１１が形成する凹部内に把持部１２が設けられる。把持部１２は、溝１１の互いに対向する一対の側面の一方から他方へ向かって延びる棒状の部材で形成される。

　把持部１２は、着座シート３に跨がった乗員が手で握る部分である。把持部１２には、圧力センサ４１が設けられる。圧力センサ４１は、乗員の手が把持部１２に与える圧力を検出する。圧力センサ４１は、乗員が把持部１２を握る動作、すなわち乗員の指と掌を近づける動作を検出することができる。圧力センサ４１は、乗員の身体の互いに離間した部分が近づく動作を検出する近接動作検出部の一例である。乗員の指と掌が、乗員の身体の互いに離間した部分に相当する。なお、把持部１２には、ブレーキ操作子が設けられてもよい。

　ベース部４の上面は、着座シート３、前輪支持部７Ｌ、７Ｒ、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌの上面と連続している。例えば、前輪支持部７Ｌ、７Ｒ、ベース部４、着座シート３、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌの上面を同じカバーで覆うことにより、上面が連続した構成とすることができる。

　（動作例）
　図１、図２及び図３は、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌが第１の位置にある状態の車両１を示している。これに対して、図４、図５及び図６は、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌが、第２の位置にある状態の車両１を示す。

　図２及び図３に示すように、第１の位置は、右押圧部８Ｒの右突出可動部８Ｒｃが、回転軸Ｊ２Ｒを中心として、車体フレーム２の上下方向線に対して右へ倒れる方向へ回転した状態であり、左押圧部８Ｌの左突出可動部８Ｌｃが、回転軸Ｊ２Ｌを中心として、車体フレーム２の上下方向線に対して左へ倒れる方向へ回転した状態である。これに対して、図５及び図６に示すように、第２の位置は、右押圧部８Ｒの右突出可動部８Ｒｃが、回転軸Ｊ２Ｒを中心として、車体フレーム２の上下方向線に近づく方向へ回転した状態であり、左押圧部８Ｌの左突出可動部８Ｌｃが、回転軸Ｊ２Ｌを中心として、車体フレーム２の上下方向線に近づく方向へ回転した状態である。

　右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌが第２の位置にある時（図５参照）の右押圧部８Ｒの右端と、左押圧部８Ｌの左端との左右方向の距離は、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌが第１の位置にある時（図２参照）の右押圧部８Ｒの右端と、左押圧部８Ｌの左端との左右方向の距離より短い。すなわち、第２の位置は、第１の位置よりも右押圧部８Ｒと左押圧部８Ｌとの間隔が狭くなっている。すなわち、第２の位置では、第１の位置よりも、右押圧部８Ｒと左押圧部８Ｌが互いに近づいている。

　図６に示すように、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌが第２の位置にある時は、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌは、車体フレーム２の上下方向線に対して、左右方向に傾いていない。図３に示すように、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌが第１の位置にある時は、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌは、車体フレーム２の上下方向線に対して、左右方向に傾いている。すなわち、アクチュエータにより、右押圧部８Ｒを、車体フレーム２の上下方向軸に対して、右に傾かせることができる。また、アクチュエータにより、左押圧部８Ｌを、車体フレーム２の上下方向軸に対して、左に傾かせることができる。

　アクチュエータ６は、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌを、第１の位置と第２の位置の間で動かすことができる。アクチュエータ６により、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌを互いに近づける方向の成分を含む力が付与される。アクチュエータ６により付与される力は、圧力センサ４１で検出された乗員の握る動作に基づいて制御される。

　（制御システムの構成例）
　図７は、車両１が備える制御システムの構成例を示すブロック図である。図７に示す制御システムは、近接動作検出部４２及び触覚刺激提示部４３を有する。近接動作検出部４２は、着座シート３（乗員支持部）に支持された乗員の身体の互いに離間した部分が近づく動作を検出する。近接動作検出部４２は、一例として、圧力センサ４１を含む。圧力センサ４１は、把持部１２を握る乗員の手が、把持部１２に与える圧力を検出する。触覚刺激提示部４３は、制御部６８、アクチュエータ６、及び２つの接触部８２を有する。２つの接触部８２は、車体の一部であって乗員の身体の異なる部分にそれぞれ接する。一例として、２つの接触部８２は、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌをそれぞれ含む。アクチュエータ６は、２つの接触部８２を結ぶ方向において当該２つの接触部８２を近づける成分を含む力を、２つの接触部８２の少なくとも一方に付与する。一例として、アクチュエータ６は、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌに、互いに近づける方向の成分を含む力を付与する。制御部６８は、近接動作検出部４２で検出された乗員の動作に基づいて、アクチュエータ６が接触部８２に付与する力を制御する。

　近接動作検出部４２で検出された乗員の動作を示す情報は、制御部６８に伝えられる。しなわち、制御部６８は、近接動作検出部４２の検出結果を取得する。ここでは、一例として、制御部６８は、圧力センサ４１で検出された把持部１２の圧力を示す信号を受信する。制御部６８は、受信した圧力を示す信号に基づいて制御信号を生成し、生成した制御信号をアクチュエータ６へ供給する。一例として、制御部６８は、アクチュエータ６のモータ６１の電流値を示す信号をモータ６１へ供給することにより、アクチュエータ６を制御することができる。

　制御部６８は、ＥＣＵ等のコンピュータ又は電子回路によって構成することができる。制御部６８を構成するコンピュータピ又は電子回路を実装する基板は、アクチュエータ６を収納する筐体に内蔵されてもよいし、アクチュエータ６を収納する筐体の外に設けられてもよい。

　制御部６８は、近接動作検出部４２で検出された乗員の動作が、予め決められた条件を満たす場合に、アクチュエータ６が、接触部８２の２つの部分を互い近づける成分を含む力を接触部８２に付与するよう制御することができる。一例として、制御部６８は、圧力センサ４１で検出された圧力が、閾値を超える場合に、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌを互いに近づけるようアクチュエータ６を制御する。これにより、例えば、乗員が把持部１２を握る力が所定量を超えると、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌが乗員の胴を左右から押すという制御が可能になる。

　また、制御部６８は、近接動作検出部４２で検出された乗員の動作に応じて、アクチュエータ６により接触部８２に付与される力の大きさ又はタイミングを調整してもよい。例えば、制御部６８は、検出された乗員の動作の量に応じて、接触部８２に付与される力の大きさを変えることができる。具体例としては、圧力センサ４１で検出された圧力に応じて、アクチュエータ６が右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌを動かす力の大きさを制御することができる。これにより、例えば、乗員の握る力に応じて、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌが乗員の胴を左右から押す力を変化させることができる。

　制御部６８は、アクチュエータ６が接触部８２に付与する力の大きさの他にも、接触部８２を動かす早さ、又は、力を付与するタイミングを、近接動作検出部で検出された乗員の動作に応じて制御してもよい。

　このように、制御部６８は、近接動作検出部４２で検出された乗員の動作を示す検出値から、アクチュエータ６による力を制御するための制御値（制御データ）を決定することができる。この乗員の動作を示す値を用いてアクチュエータ６の制御値を決定する処理は、例えば、検出値をパラメータとする予め決められた数式を用いて制御値を算出する処理とすることができる。或いは、制御部６８は、様々な検出値と、それらに対応する制御値とを記録したデータ（例えば、テーブル又はマップデータ）を用いて、近接動作検出部４２から取得した検出に対応する制御値を決定する処理を実行することもできる。

　制御部６８は、近接動作検出部４２で検出される乗員の動作として、２つ以上のセンサからの情報を受け取ってもよい。例えば、把持部１２の圧力センサ４１の他に、ニーグリップの圧力を検出するニーグリップ圧力センサを車両１に設けることができる。この場合、制御部６８は、把持部１２の圧力センサと、ニーグリップ圧力センサの両方から取得した信号を用いて、アクチュエータ６が右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌに付与する力を制御することができる。

　アクチュエータ６は、２組以上の接触部８２に対して、力を付与する構成であってもよい。例えば、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌに加えて、さらに他の接触部を車両１に設けることができる。例えば、溝１１内において把持部１２を囲む位置にエアバッグを配置することができる。エアバッグを膨張させることにより、エアバッグが、把持部１２を握る乗員の手の甲と指を押す構成とすることができる。この場合、アクチュエータ６としてのコンプレッサ、コンプレッサとエアバックを接続するエアパイプ、及びエアパイプに設けられたエアバルブを、車両１に設けることができる。制御部６８は、右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌを動かすアクチュエータ６と、エアバルブの両方を制御する。制御部６８は、これらの制御を、近接動作検出部４２で検出される乗員の動作に基づいて行うことができる。

　また、制御部６８は、近接動作検出部４２で検出される乗員の動作に加えて、車両の状態を示す情報に基づいて、アクチュエータ６が接触部８２に付与する力を制御することができる。図８は、制御部６８が、車両状態を用いてアクチュエータにより接触部８２に付与される力を制御することができる制御システムの構成例を示すブロック図である。図８に示す制御システムは、車両状態検出部４４を備える。車両状態検出部４４は、車両１に設けられ、車両の状態を示す物理量を検出する。一例として、車速センサ４５及び傾斜角センサ４６が、車両状態検出部４４に含まれる。制御部６８は、車両状態検出部４４で検出された車両の状態に基づいて、アクチュエータ６が接触部８２に付与する力を制御する。例えば、制御部６８は、アクチュエータ６が接触部８２に付与する力を、車速センサ４５で検出された車速に応じて調整することができる。

　図９は、乗員の動作及び車両状態に基づいて、接触部に付与される力を制御する処理の一例を示すフローチャートである。図９に示す例では、制御部６８は、近接動作検出部４２から、乗員の動作に関する情報を取得する（Ｓ０）。例えば、制御部６８は、把持部１２に設けられた圧力センサ４１から、把持部１２を握る手から把持部１２にかかる圧力を示す信号を取得する。

　制御部６８は、近接動作検出部４２からの信号により、乗員が互いに離れた身体の部分を近づける動作（以下、近接動作と称する）をしたことを検出する（Ｓ１でＹＥＳ）。例えば、制御部６８は、把持部１２の圧力センサ４１で検出される圧力が閾値を超える場合に、近接動作があると判断する。この例では、乗員が互いに離れた身体の部分として、指と掌を近づける動作を、圧力センサ４１により検出する。

　近接動作を検出すると、制御部６８は、車両状態検出部４４から車両状態を示す情報を取得する（Ｓ２）。例えば、制御部６８は、車両状態を示す情報として、乗員の動作に起因する車両状態を示す物理量を示す信号を取得する。具体例として、制御部６８は、車速センサ４５から、車速を示す信号を取得する。

　制御部６８は、Ｓ２で取得した車両状態に基づいて、接触部８２を近づける力を付与するか否かを判断する（Ｓ３）。例えば、制御部６８は、車速センサ４５で検出された車速が予め決められた範囲にある場合に、力を付与すると判断する（Ｓ３でＹＥＳ）。なお、力を付与しないと判断した場合（Ｓ３でＮＯ）は、制御部６８は、制御を終了する否かの判断処理（Ｓ６）を実行する。

　Ｓ３でＹＥＳの場合、制御部６８は、接触部８２を互いに近づける力の大きさを決定する（Ｓ４）。Ｓ４において、制御部６８は、Ｓ１で検出した近接動作、及びＳ２で取得した車両状態に関する情報を用いて、力の大きさを決定することができる。例えば、Ｓ１で取得した圧力センサ４１の圧力、及び、Ｓ２で取得した車速に応じて、接触部８２すなわち右押圧部８Ｒと左押圧部８Ｌを互いに近づける力の大きさを決定する。例えば、予め記録した車両状態と付与する力の大きさとの対応を示す対応データを参照して、Ｓ０で取得した圧力センサ４１の圧力及びＳ１で取得した車速に対応する力の大きさを決定することができる。なお、Ｓ４において、制御部６８は、力の大きさの代わりに、または力の大きさに加えて、力を付与するタイミング又は接触部８２を動かす速度その他制御内容を決定してもよい。

　制御部６８は、Ｓ４で決定した内容に基づく制御信号をアクチュエータ６に供給する（Ｓ５）。これにより、アクチュエータ６は、Ｓ４で決定された大きさの力を接触部８２に付与する。制御部６８は、制御終了と判断（Ｓ６でＹＥＳ）するまで、Ｓ０～Ｓ５の処理を繰り返す。

　なお、制御部６８の動作は、図９に示す例に限られない。例えば、図９において、Ｓ３の処理を省略してもよい。また、Ｓ２の処理を省略することもできる。この場合、Ｓ４では、Ｓ０で取得した乗員の近接動作に基づいて、付与する力が決定される。また、Ｓ２で取得される車両状態は、車速に限らず、車速に加えて又は代えて、ブレーキ操作量、スロットル開度、左右方向の傾斜量又は速度、スリップ率、又は、エンジン回転数その他の車両状態を取得することができる。Ｓ４における出力音声の決定処理は、上記のように予め記録された対応データを用いる処理に限られない。例えば、乗員の動作や車両状態を示す値を所定の数式又はアルゴリズムに従って処理することにより、力の大きさ、速度又はタイミングを決定することができる。

　図９に示す動作により、乗員が把持部１２を握る圧力を、接触部８２を介して乗員の胴に返すことができる。車両１は、乗員の手を握る動作に応じた触覚刺激を乗員に与えることができる。乗員は、人の手を握った時に、胴が締め付けられるので、車両１に抱きしめられた感覚になる。

　（聴覚刺激提示部を含む構成例）
　図１０は、車両１が備える制御システムの変形例を示すブロック図である。図１０に示す制御システムは、近接動作検出部４２及び触覚刺激提示部４３に加えて、聴覚刺激提示部４７を有する。聴覚刺激提示部４７は、近接動作検出部４２で検出された動作に基づいて、感嘆音声の特徴量を含む音を出力する。聴覚刺激提示部４７は、制御部５８と、スピーカ４８を含む。

　聴覚刺激提示部４７の制御部５８は、近接動作検出部４２で検出された動作に基づいて、感嘆音声の出力の有無（要否）を決定することができる。すなわち、制御部５８は、近接動作検出部４２で検出された、着座シート３に跨った乗員の身体における互いに離間した部分が近づく動作に基づいて、感嘆音声を出力するか否かを判断する。例えば、制御部５８は、検出された動作の量が所定範囲にある場合に、感嘆音声を出力する判断することができる。この場合、制御部５８は、スピーカ４８に感嘆音声を出力させる。

　或いは、聴覚刺激提示部４７の制御部５８は、近接動作検出部４２で検出された動作に基づいて、出力する感嘆音声を決定してもよい。例えば、制御部５８は、近接動作検出部４２で検出された動作に基づいて、予め記録された感嘆音声の音声データの中から、出力する音声データを選択することができる。制御部５８は、選択した音声データの感嘆音声をスピーカ４８に出力させる。例えば、制御部５８は、検出された動作の量に応じて、出力する感嘆音声を変えることができる。

　聴覚刺激提示部４７は、近接動作検出部４２で検出された動作に基づいて感嘆音声を出力することで、触覚刺激提示部４３による接触部８２を介した力の付与に合わせて、感嘆音声を出力することができる。制御部５８は、接触部８２が乗員の身体に力を付与するタイミングに合わせて、触覚刺激提示部４３が感嘆音声を出力することができる。すなわち、触覚刺激提示部４３による力の付与と、聴覚刺激提示部４７による感嘆音声の出力とを同期させることができる。例えば、触覚刺激提示部４３による力の付与と、聴覚刺激提示部４７による感嘆音声の出力を同時にすることができる。乗員は、車両１に愛着をより感じることができる。

　感嘆音声は、言語によらず人間の感情を表す音声である。感嘆音声は、例えば、吐息音の高さ又は大きさの抑揚によって人間の感情を表す音声である。また、感嘆音声は、人の吐息音と他の音（例えば、エンジン音等）を合成したものであってもよい。感嘆音声の例として、叫び声、鳴き声、笑い声、喘ぎ声、ため息、又は、口笛等が挙げられる。叫び声や鳴き声は、驚き、怒り、悲痛等を表す。笑い声、口笛は、リラックス、愉快、歓喜等を表す。喘ぎ声は、興奮、苦痛、快感等を表す。ため息は、疲労、諦め、等を表す。感嘆音声を出力することにより、言語によらず感情を表現することができる。

　例えば、触覚刺激提示部４３及び聴覚刺激提示部４７は、乗員が、把持部１２を強く握った時に、接触部８２による乗員の胴へのホールド圧を強めるとともに、感嘆音声をエンジン音と合成した音を提示することができる。これにより、乗員は、車両１と抱き合う感覚を強める。そして、乗員は、車両１に愛着をより感じることができる。

　なお、聴覚刺激提示部４７は、触覚刺激提示部４３で接触部８２から乗員の身体に力を付与すると決定された場合に、感嘆音声を出力する構成であってもよい。この場合、間接的に、近接動作検出部４２の検出結果に基づいて感嘆音声を出力する形態となる。このような形態も、近接動作検出部４２で検出された動作に基づく感嘆音声の出力に含まれる。

　触覚刺激提示部４３の制御部５８は、近接動作検出部４２で検出された動作に加えて、さらに車両状態を用いて、感嘆音声出力を制御してもよい。例えば、制御部５８は、近接動作検出部４２で検出された動作に基づいて感嘆音声を出力すると決定した場合に、車両状態検出部４４で検出された車両状態に基づいて出力する感嘆音声を決定することができる。これにより、車両状態に応じた適切な感嘆音声を出力することができる。

　図１１は、聴覚刺激提示部４７の動作例を示すフローチャートである。図１１におけるＳ０、Ｓ１、Ｓ２は、図９に示すＳ０、Ｓ１、Ｓ２と同様の処理とすることができる。

　聴覚刺激提示部４７の制御部６８は、Ｓ２で取得した車両状態に基づいて、感嘆音声を出力するか否かを判断する（Ｓ１３）。例えば、制御部６８は、車速センサ４５で検出された車速が予め決められた範囲にある場合に、感嘆音声を出力すると判断する（Ｓ１３でＹＥＳ）。なお、力を付与しないと判断した場合（Ｓ１３でＮＯ）は、制御部６８は、制御を終了する否かの判断処理（Ｓ６）を実行する。

　Ｓ１３でＹＥＳの場合、制御部６８は、出力する感嘆音声を決定する（Ｓ１４）。Ｓ１４において、制御部６８は、Ｓ１で検出した近接動作、及びＳ２で取得した車両状態に関する情報を用いて、出力する感嘆音声を決定することができる。例えば、制御部６８は、Ｓ０で取得した圧力センサ４１の圧力、及び、Ｓ２で取得した車速に応じて、感嘆音声を決定する。

　一例として、制御部５８がアクセス可能なメモリに、複数の感嘆音声の音声データファイルを予め記録しておくことができる。また、各音声データファイルに対応づけて、近接動作及び車両状態の条件を示す条件データも予めメモリに記録される。制御部５８は、条件データを参照し、Ｓ０で取得した近接動作及びＳ２で取得した車両状態が条件を満たすような条件データを特定する。特定した条件データに対応する音声データファイルが出力する感嘆音声として決定される。

　制御部６８は、Ｓ１４で決定した音声データファイルを再生して音声信号を生成し、スピーカ４８に供給する（Ｓ１５）。これにより、スピーカ４８は、Ｓ１４で決定された感嘆音声を出力する。制御部６８は、制御終了と判断（Ｓ６でＹＥＳ）するまで、Ｓ０～Ｓ１５の処理を繰り返す。

　図１１に示す動作により、乗員が把持部１２を握る圧力を、接触部８２を介して乗員の胴に返すことができる。車両１は、乗員の手を握る動作に応じた触覚刺激を乗員に与えることができる。乗員は、人の手を握った時に、胴が締め付けられるので、車両１に抱きしめられた感覚になる。

　なお、聴覚刺激提示部４７の動作は、図１１に示す例に限られない。例えば、図１１において、Ｓ１３の処理を省略してもよい。また、Ｓ２の処理を省略することもできる。この場合、Ｓ１４では、Ｓ０で取得した乗員の近接動作に基づいて、感嘆音声が決定される。また、Ｓ２で取得される車両状態は、車速に限らず、車速に加えて又は代えて、ブレーキ操作量、スロットル開度、左右方向の傾斜量又は速度、スリップ率、又は、エンジン回転数その他の車両状態を取得することができる。Ｓ１４における出力音声の決定処理は、上記のように予め記録された条件データを用いる処理に限られない。例えば、乗員の動作や車両状態を示す値を所定の数式又はアルゴリズムに従って処理することにより、感嘆音声を決定することができる。

　以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られない。

　（車両の変形例）
　例えば、車体フレームの前部にヘッドパイプ及びハンドルを設けることもできる。図１２は、変形例における車両の左側面図である。図１２に示す車両１００は、自動二輪車である。車両１００は、車体フレーム１０、パワーユニット１８、前輪３１、後輪３２、及び燃料タンク３０を備える。

　車体フレーム１０は、ヘッドパイプ２４、タンクフレーム２５、リヤフレーム３５、及びリヤアーム１４を含んでいる。ヘッドパイプ２４は車体フレーム１０の前部に配置されている。タンクフレーム２５は、左右一対に構成されている。タンクフレーム２５は、ヘッドパイプ２４から後方へ延びている。車両１００の側面視において、左右一対のタンクフレーム２５は、それぞれ下方に湾曲する部分を有している。タンクフレーム２５が湾曲する部分には、それぞれ左右一対のリヤフレーム３５が接続されている。リヤアーム１４は、タンクフレーム２５の後端に接続されている。左右一対のタンクフレーム２５の後端には、左右方向に突出するステップ２８が取り付けられている。

　ヘッドパイプ２４にはステアリングシャフト１７が回転自在に挿入されている。ステアリングシャフト１７の上部にはハンドル１６が取り付けられている。ステアリングシャフト１７にはブラケット（図示せず）を介して左右一対のフロントフォーク１５が取り付けられている。フロントフォーク１５の下端には、前輪３１が回転自在に支持されている。ハンドル１６の操作に伴って、前輪３１は左右方向に回転する。リヤアーム１４の後端には、後輪３２が回転自在に支持されている。後輪３２は、パワーユニット１８の動力が伝達されることにより回転する。

　燃料タンク３０は、タンクフレーム２５及びリヤフレーム３５に取り付けられている。車両１００の側面視において、燃料タンク３０の後方には、着座シート１９が配置される。着座シート１９の前部は、燃料タンク３０の後部の一部を覆っている。

　ハンドル１６は、乗員が握る部分であるグリップ１６ａを含む。ハンドル１６のグリップ１６ａには、圧力センサ４１が取り付けられる。圧力センサ４１により、乗員がグリップ１６ａを握る動作、すなわち、指と掌を近づける動作が検出される。

　ハンドル１６の前方には、フロントカウル３６が配置される。ハンドル１６の後方には、カバー２６が配置される。カバー２６の後部は、燃料タンク３０の前部の一部を覆っている。カバー２６の下方には、左右一対のベース部２７が配置される。ベース部２７は、タンクフレーム２５及びリヤフレーム３５に取り付けられている。ベース部２７は、車両１００の側面視において、燃料タンク３０の下部の一部を覆っている。ベース部２７は、車両１００の側面視において、着座シート１９の前部の一部を覆っている。

　左右一対のベース部２７には、右押圧部８３Ｒ及び左押圧部８３Ｌが、それぞれ設けられる（図１２では、右押圧部８３Ｒのみ図示）。右押圧部８３Ｒ及び左押圧部８３Ｌは、ベース部２７に支持される。右押圧部８３Ｒ及び左押圧部８３Ｌは、ベース部２７から後方かつ上方に延びて形成される。

　この構成により、右押圧部８３Ｒ及び左押圧部８３Ｌは、着座シート１９に跨がって足をステップ２８に置いた乗員の膝の付近から乗員の胴の横にかけて配置される。右押圧部８３Ｒ及び左押圧部８３Ｌは、すなわち、乗員の胴の右側と、左側にそれぞれ接触する接触部である。

　右押圧部８３Ｒ及び左押圧部８３Ｌのベース部２７から離れた端部は、互いに近づく方向に移動可能に構成される。例えば、右押圧部８３Ｒの後端の左面、及び左押圧部８３Ｌの端部の右面に、それぞれエアバッグ（図示せず）が設けられてもよい。この場合、車両１００は、アクチュエータとして、コンプレッサ（図示せず）を備える。エアバックは、エアパイプを介してコンプレッサに接続される。エアパイプには、エアバルブが設けられる。エアバルブの開閉を制御することで、右押圧部８３Ｒ及び左押圧部８３Ｌのエアバッグに封入される空気量が調整される。その結果、右押圧部８３Ｒ及び左押圧部８３Ｌは、互いに近づく方向に移動する。これにより、右押圧部８３Ｒ及び左押圧部８３Ｌは、乗員の胴の右側と左側を同時に押す。

　なお、右押圧部８３Ｒ及び左押圧部８３Ｌを互いに近づく方向に動かす機構は、上記例に限られない。例えば、右押圧部８３Ｒ及び左押圧部８３Ｌは、左右方向に揺動可能に構成されてもよい。

　車両１００は、図７、図８又は図１０と同様の制御システムを備える。車両１００は、近接動作検出部４２として、圧力センサ４１を備え、２つの接触部８２として、右押圧部８３Ｒ及び左押圧部８３Ｌを備える。また、車両１００は、制御部６８及びアクチュエータ６を備える。アクチュエータ６は、２つの接触部８２を互いに近づける成分を含む力を、２つの接触部８２の少なくとも一方に付与する。制御部６８は、圧力センサ４１で検出された圧力に基づいて、アクチュエータ６が接触部８２に付与する力を制御する。

　これにより、触覚刺激提示部４３は、乗員がハンドル１６のグリップ１６ａを握る動作に反応して、右押圧部８３Ｒ及び左押圧部８３Ｌが乗員の胴のホールドする圧力を強くすることができる。そのため、乗員は、自分の感情の動きに合わせて車体から抱擁されるように感じることができる。その結果、乗員の車両に対する愛着度を向上させることができる。

　なお、ベース部２７の構成は、図１２に示す例に限られない。例えば、ハンドル１６にベース部２７が取り付けられてもよい。または、燃料タンク３０をベース部とするか、又は燃料タンク３０にベース部２７を取り付けることができる。右押圧部８３Ｒ及び左押圧部８３Ｌは、ベース部２７から突出する部材で構成することができる。また、カバー２６をベース部２７として、カバー２６に右押圧部８３Ｒ及び左押圧部８３Ｌを取り付けることもできる。

　図１２では、２つの接触部である右押圧部８３Ｒ及び左押圧部８３Ｌが、左右方向に並んで配置される。２つの接触部の配置は、これに限られない。例えば、２つの接触部を乗員の前後に配置してもよい。着座シート１９の前後に前押圧部と後押圧部を配置してもよい。この場合、着座シート１９をベース部とすることができる。また、２つの接触部のうち一方が動く構成とすることもできる。例えば、着座シート１９の後部に押圧部を配置し、押圧部で乗員の背中を押す構成とすることができる。この場合、例えば、燃料タンク３０に接する乗員の腹と押圧部に接す背中とが互いに近づく方向の成分を含む力が付与される。

　接触部が接する乗員の身体は、胴に限られない。例えば、接触部は、乗員の足首又はふくらはぎに、圧を加えるフットレストで構成されてもよい。また、他の例として、手に接する２つの接触部を車両に設けることができる。図１３は、接触部の変形例を示す図である。図１３は、車両１００のハンドル１６のグリップの部分の断面図である。図１３に示す例では、ハンドル１６のグリップ１６ａの前方及び上方を覆うグリップカバー３２が設けられる。グリップ１６ａの前方であってグリップカバー３２の後方には、レバー２９が配置される。グリップカバー３２の内面のうち、グリップ１６ａの前方の面と、グリップ１６ａの上方の面に、それぞれエアバッグ８４Ｆ、８４Ｕが取り付けられる。すなわち、グリップカバー３２とグリップ１６ａとの間の空間において前後方向及び上下方向に互いに離れた２箇所にエアバッグ８４Ｆ、８４Ｕが取り付けられる。

　エアバッグ８４Ｆ、８４Ｕは、乗員の手の異なる部分にそれぞれ接する２つの接触部となる。エアバッグ８４Ｆ、８４Ｕが膨らむことにより、乗員の手の異なる部分に上方及び前方からそれぞれ力が付与される。これら２つの力は、２つの接触部が互いに近づく方向の成分を含んでいる。すなわち、エアバッグ８４Ｆ、８４Ｕを膨らませることにより、２つの接触部であるエアバッグ８４Ｆ、８４Ｕを結ぶ方向において２つの接触部を近づける成分を含む力が付与される。これにより、乗員は、手の甲に手を重ねられて握られたように感じる。乗員は、人の手を握ると、その人から手を握り返された時のような感情を、車両１００に対して抱きやすくなる。

　図１４～図１７は、接触部及びアクチュエータの変形例を示す図である。図１４は、変形例に係る接触部８５及びアクチュエータ６５を含む車両の部分を、車両の左方から見た構成を示す左側面図である。図１５は、接触部８５及びアクチュエータ６５を含む車両の部分を車両の上方から見た上面図である。図１６は、接触部８５及びアクチュエータ６５を含む車両の部分を斜め左下後方から見た斜視図である。図１７は、図１５におけるＡーＡ線の断面図である。

　図１４に示すように、接触部８５は、車体フレーム３７に対して、第１ピボット軸Ｊ３を中心に回転可能に支持される。車体フレーム３７には、着座シート１９が取り付けられる。車体フレーム３７は、例えば、車両の後部のリヤフレームとすることができる。車体フレーム３７には、さらに、接触部８５を回転させるアクチュエータ６５が取り付けられる。この例では、車体フレーム３７の着座シート１９とは反対側にアクチュエータ６５が設けられる。すなわち、着座シート１９とアクチュエータ６５の間に、これらを支持する車体フレーム３７が配置される。

　接触部８５は、着座シート１９に着座する乗員へ向かって屈曲する形状を有する。すなわち、接触部８５は、第１ピボット軸Ｊ３から後方に延びてから、着座シート１９に近づく方向に屈曲して延びる形状を有する。言い換えれば、接触部８５は、回転軸である第１ピボット軸Ｊ３の回転周方向Ｙにおいて、着座シート１９に近づく方に屈曲する屈曲部８５ｃを有する。接触部８５が第１ピボット軸Ｊ３を中心に回転することで、接触部８５が着座シート１９に着座した乗員に、車両の前後方向の後方から接触できるように、接触部８５は構成される。図１４に示す例では、接触部８５の第１ピボット軸Ｊ３の軸方向は、車体フレーム３７の左右方向と同じである。なお、第１ピボット軸Ｊ３は、車体フレーム３７の左右方向と同じでなくてもよい。

　図１５に示すように、接触部８５は、右押圧部８５ａＲ及び左押圧部８５ａＬを有する。右押圧部８５ａＲは、着座シート１９に着座した乗員の胴部の背面すなわち背中の右側に接する。左押圧部８５ａＬは、乗員の胴部の背面すなわち背中の左側に接する。図１５に示す例では、接触部８５の屈曲部８５ｃより先端に近い部分に、右押圧部８５ａＲ及び左押圧部８５ａＬが形成される。接触部８５は、屈曲部８５ｃにおいて右押圧部８５ａＲと左押圧部８５ａＬに分岐している。右押圧部８５ａＲと左押圧部８５ａＬは、それぞれ、屈曲部８５ｃから第１ピボット軸Ｊ３を中心とする回転の周方向Ｙに、着座シート１９に近づく方向に延びる。

　右押圧部８５ａＲが乗員に接する面と、左押圧部８５ａＬが乗員に接する面とは、互いに平行ではない。右押圧部８５ａＲが乗員に接する面と、左押圧部８５ａＬが乗員に接する面とは、車両の左右方向において互いに対向している。車両の左右方向から見て、右押圧部８５ａＲの少なくとも一部と、左押圧部８５ａＬの少なくとも一部が重なっている。図１５に示す例では、右押圧部８５ａＲの乗員に向く面と、左押圧部８５ａＬの乗員に向く面は、いずれも平面である。なお、これらの面は、曲面であってもよい。

　接触部８５がアクチュエータ６５によって動かされることで、右押圧部８５ａＲ及び左押圧部８５ａＬが、乗員に対して一方向に押し付けられる。この例では、右押圧部８５ａＲ及び左押圧部８５ａＬが乗員に押し付けられる方向は、接触部８５の第１ピボット軸Ｊ３周りの回転の周方向Ｙである。この時、右押圧部８５ａＲが乗員に接する面の法線と、左押圧部８５ａＬが乗員に接する面の法線は、右押圧部８５ａＲ及び左押圧部８５ａＬが乗員に対して押し付けられる方向に対して、車両の左右方向に傾いている。右押圧部８５ａＲと左押圧部８５ａＬとの間隔は、これらが乗員に対して押し付けられる方向（周方向Ｙ）において、乗員から離れるに従って狭くなっている。すなわち、右押圧部８５ａＲと左押圧部８５ａＬとの間の空間が、右押圧部８５ａＲと左押圧部８５ａＬが乗員に押し付けられる方向において、乗員から離れるに従って狭くなるように、右押圧部８５ａＲと左押圧部８５ａＬが形成されている。これにより、右押圧部８５ａＲ及び左押圧部８５ａＬが、乗員に対して一方向に押し付けられると、右押圧部８５ａＲが乗員に接する部分と、左押圧部８５ａＬが乗員に接する部分とを近づける成分を含む力が乗員に作用する。そのため、アクチュエータ６５が接触部８５を動かすことで、乗員の身体の右押圧部８５ａＲと左押圧部８５ａＬとの間を挟み込むように乗員の身体の部分に圧力を加えることができる。

　図１５に示す例では、右押圧部８５ａＲ及び左押圧部８５ａＬは、１つのアクチュエータ６５よって一体的に動かされる。これに対して、右押圧部及び左押圧部がそれぞれ独立してアクチュエータによって動かされる構成であってもよい。

　図１６及び図１７に示すように、アクチュエータ６５は、接触部８５と車体フレーム３７の間に接続される。アクチュエータ６５の一方端６５ｅは、接触部８５に対して、第２ピボット軸Ｊ４１周りに回転可能に接続される。アクチュエータ６５の一方端６５ｅは、接触部８５の第１ピボット軸Ｊ３とは異なる位置に接続される。アクチュエータ６５の他方端６５ｆは、車体フレーム３７に対して、第３ピボット軸Ｊ４２周りに回転可能に接続される。第２ピボット軸Ｊ４１及び第３ピボット軸Ｊ４２は、第１ピボット軸Ｊ３と同軸である。アクチュエータ６５は、一方端６５ｅと他方端６５ｆの間を結ぶ方向に伸縮可能に形成される。アクチュエータ６５は、一方端６５ｅと他方端６５ｆの間で伸縮することで、接触部８５を第１ピボット軸Ｊ３周りに回転させる。

　図１６及び図１７に示す例では、アクチュエータ６５は、油圧シリンダである。アクチュエータ６５は、シリンダ６５ａ及びシリンダ６５ａに挿入されるピストン６５ｂを有する。ピストン６５ｂは、シリンダ６５ａに対して、挿入方向に可動である。ピストン６５ｂは、一方端６５ｅと一体的に形成される。シリンダ６５ａは、他方端６５ｆと一体的に形成される。アクチュエータ６５は、一方端６５ｅと他方端６５ｆの間で伸縮可能に構成される。アクチュエータ６５は、シリンダ６５ａ内の油圧を制御する駆動部（図示略）を備えてもよい。駆動部は、例えば、モータを駆動原とする油圧ポンプとすることができる。この場合、モータの出力を制御することにより、アクチュエータ６５の一方端６５ｅと他方端６５ｆの間の伸縮を制御することができる。これにより、接触部８５の第１ピボット軸Ｊ３周りの回転運動を制御できる。すなわち、接触部８５の右押圧部８５ａＲ及び左押圧部８５ａＬが乗員を押す力を制御できる。このようにして、アクチュエータ６５は、右押圧部８５ａＲが乗員に接する部分と左押圧部８５ａＬが乗員に接する部分を互いに近づける成分を含む力を付与することができる。

　このように、右押圧部８５ａＲ及び左押圧部８５ａＬは、アクチュエータ６５によって力を付与されることで、着座シート１９に跨がる乗員に対して車両の前後方向における後方から接触できる位置に設けられる。この例では、右押圧部８５ａＲ及び左押圧部８５ａＬは、着座シート１９に跨がった乗員に対してハンドル（図示略）とは反対側から接触する位置に配置される。

　なお、アクチュエータ６５の構成は、図１６及び図１７に示す例に限られない。アクチュエータは、例えば、モータとモータの回転を伝達する減速機を含んでもよい。この場合、減速機が回転することにより、接触部８５が第１ピボット軸Ｊ３周りに回転する構成とすることができる。また、乗員に対して後方から接触する位置に設けられる接触部の形態は、図１４～図１７に示す例に限られない。

　上記の変形例を含めた実施形態は、車両有生性知覚促進システムの一例と捉えることができる。図１８は、上記の実施形態を車両有生性知覚促進システムとして捉えた場合の構成例を示す機能ブロック図である。図１８に示す車両有生性知覚促進システム９０は、乗員加圧検出部４２と、指示部５２と、駆動部５３と、アクチュエータ６と、２つの接触部８２とを備える。乗員加圧検出部４２は、車両に乗っている乗員ＲＤが、乗員ＲＤの筋力で車両に対して圧力を加える動作を検出する。２つの接触部８２は、乗員ＲＤの身体の異なる部分にそれぞれ接する。アクチュエータ６は、２つの接触部８２を結ぶ方向において、２つの接触部８２を近づける成分を含む力を、２つの接触部８２の少なくとも一方に付与する。アクチュエータ６が接触部８２に力を付与することにより、乗員ＲＤの身体の２つの接触部８２の間の部分を挟み込むように乗員ＲＤの身体の部分に圧力が加わる。指示部５２は、乗員加圧検出部４２で検出された乗員ＲＤの動作に基づいて、乗員ＲＤが車両の有生性を知覚することを促進するように、アクチュエータ６が２つの接触部８２の少なくとも一方に付与する力を決定する。駆動部５３は、指示部５２から指示部５２が決定した力を示す指示を受けて、アクチュエータ６を駆動する。駆動部５３により駆動されたアクチュエータ６は、指示部５２が決定した力を、２つの接触部８２の少なくとも一方に付与する。

　乗員加圧検出部４２は、乗員ＲＤが車両に対して圧力を加える動作を検出するセンサ４１とすることができる。乗員加圧検出部４２により、例えば、乗員ＲＤが車両に対して、握る、掴む、抱く、挟む、撫でる、押す、引く、持ち上げる、又は、引き下げるといった動作が検出される。これにより、乗員ＲＤの感情の動きを検出することができる。指示部５２、駆動部５３及びアクチュエータ６によって、乗員加圧検出部４２で検出された動作に基づいて、２つの接触部８２が乗員ＲＤの身体の部分に力を付与する。アクチュエータ６は、乗員ＲＤの身体の異なる部分に接する２つの接触部を結ぶ方向において２つの接触部を近づける成分を含む力を、これら２つの接触部の少なくとも一方に付与する。この時、２つの接触部は、乗員の身体の２つの接触部の間の部分を挟み込むように乗員の身体の部分に圧力を加える。指示部５２は、乗員加圧検出部４２が検出した乗員ＲＤの動作に対する応答として、乗員ＲＤに対して２つ接触部８２を介して付与する力を決定する。駆動部５３は、指示部５２から指示を受けてアクチュエータ６を駆動する。乗員ＲＤは、車両に圧力を加える動作に対して、車両が反応して乗員ＲＤの身体に２箇所から挟む力を返したように感じることができる。この時、乗員ＲＤは、２つの互いに離間した身体部分において車体から包まれる、抱かれる、掴まれる、又は挟まれるといった感覚を感じることができる。そのため、乗員ＲＤは、自分の感情の動きに合わせて車体から包まれる、または抱擁されるように感じることができる。すなわち、乗員ＲＤの車両に対する有生性を生じさせることができる。その結果、乗員ＲＤの心理状態又は生理状態を変化させることができる。

　（実験結果）
　発明者らは、車両有生性知覚促進システムによる乗員ＲＤの心理状態又は生理状態の変化を調べた。被験者に、図１４～図１７に示す接触部８５及びアクチュエータ６５を備えた第１の自動二輪車と、これらを備えない第２の自動二輪車の運転シミュレーションをしてもらった。第１の自動二輪車の運転シミュレーションにおいて、被験者の車両を加圧する動作に応答して接触部８５が被験者に力を付与するようアクチュエータを駆動した。第１の自動二輪車は、聴覚刺激提示部を備える。第１の自動二輪車の運転シミュレーションにおいて、被験者の動作に応じてエンジン音とともに感嘆音声を出力した。それぞれの運転シミュレーション後に生じる被験者の内分泌変化、すなわちホルモン量の変化を測定した。また、それぞれの運転シミュレーションにおける被験者の感想をアンケートにより取得した。被験者のストレスを示すホルモン（Cortisol）の分泌量は、第１の自動二輪車の運転シミュレーションの時の方が、第２の自動二輪車の運転シミュレーションの時より少なくなるとの結果が得られた。また、被験者の攻撃性や競争心を示すホルモン（Testosterone、および、Testosteroneの前駆物質であるＤＨＥＡ）の分泌量は、第１の自動二輪車の運転シミュレーションの時の方が、第２の自動二輪車の運転シミュレーションの時より少なくなるとの結果が得られた。これらホルモンの測定結果から、第１の自動二輪車の運転シミュレーションでは、第２の自動二輪車の運転シミュレーション時に比べて被験者の生理状態が変化していることがわかった。また、アンケートでは、第１の自動二輪車は、意識を持ち思考すると感じたとする回答、第１の自動二輪車は、人間的であると感じたとする回答、第１の自動二輪車は、感情があるように感じたとする回答があった。これらのアンケート結果から、第１の自動二輪車の運転シミュレーションでは、第２の自動二輪車の運転シミュレーション時に比べて被験者の心理状態が変化していることがわかった。

　（システム構成例）
　上記した実施形態では、車両有生性知覚促進システムの乗員加圧検出部、指示部、駆動部、アクチュエータ、及び、接触部は、車両に設けられる。乗員加圧検出部、指示部、駆動部、アクチュエータ、及び、接触部の少なくとも一部は、乗員の装着具に設けられたてもよい。装着具は、乗員の身体に装着するものである。装着具は、例えば、プロテクタ、ジャケット等の衣服、ヘルメット、クローブ、又は、靴等とすることができる。例えば、装着具に、乗員加圧検出部及び接触部の少なくともいずれかを設けてもよい。また、装着部に、接触部、アクチュエータ及び駆動部を設けてもよい。或いは、装着具に、乗員加圧検出部、指示部、駆動部、アクチュエータ、及び、接触部を設けてもよい。

　図１９は、車両有生性知覚促進システムの変形例を示す図である。図１９に示す変形例では、装着具１０２に、乗員加圧検出部４２、接触部である右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌ、アクチュエータ６、並びに、駆動部５３が設けられる。図１９に示す例では、装着具１０２は、上着である。乗員加圧検出部４２は、例えば、上着の袖の内側に設けられた圧力センサ又は筋力センサである。右押圧部８Ｒ及び左押圧部８Ｌは、例えば、上着の袖の内側に設けられたエアバックとすることができる。この場合、アクチュエータ６は、エアバックに空気を送り込むポンプである。駆動部５３は、ポンプを駆動する回路又はコンピュータである。車両１０１には、指示部５２及び通信部５４が設けられる。通信部５４は、乗員加圧検出部４２及び駆動部５３と通信する。通信部５４は、例えば、乗員加圧検出部４２から検出結果のデータ又は信号を受信する受信部及び、駆動部５３へ指示信号又は指示データを送信する送信部を含むことができる。なお、図１９において、乗員加圧検出部４２は、上着とは別体の手袋に設けてもよい。アクチュエータ６及び駆動部５３は、車両１０１に設けてもよい。また、指示部５２を装着具１０２に設けることもできる。

　また、指示部は、車両及び装着具のいずれからも独立した端末装置に実装することもできる。端末装置は、例えば、コンピュータを内蔵する装置とすることができる。端末装置は、乗員加圧検出部及び駆動部と通信するための通信部を有してもよい。

　図２０は、車両有生性知覚促進システムの変形例を示す図である。図２０に示す変形例では、車両１０３に、乗員加圧検出部４２、接触部８２、アクチュエータ６、及び、駆動部５３が設けられる。車両１０３と別体の端末装置９１に、指示部５２及び通信部５４が設けられる。端末装置９１は、例えば、スマートホン、タブレット、携帯電話、ＰＤＡ等の携帯端末とすることができる。端末装置９１は、メモリに記録されたプログラムを実行することにより、指示部５２の動作を実現できる。端末装置９１を指示部５２として動作させるプログラム及びそのようなプログラムを記録した記録媒体も、本発明の実施形態の一つである。なお、図２０に示す構成において、乗員加圧検出部４２、接触部８２、アクチュエータ６、及び、駆動部５３の少なくとも一部を、装着具に設けることもできる。

　（その他の変形例）
　上記の実施形態は、いずれも、リーン車両に発明を適用した場合の例である。リーン車両は、旋回時に車体フレームが旋回方向に傾けて旋回する車両である。リーン車両では、乗員が身体の全体を使って車両を操作する。そのため、車両に対する愛着を高めることができる本発明を好適に適用することができる。なお、本発明は、リーン車両以外の鞍乗型車両に適用できる。また、鞍乗型車両以外の車両にも本発明を適用できる。

　（近接動作検出部）
　近接動作検出部は、上記のように、指と掌が近づく動作を検出するものに限られない。近接動作検出部は、その他、身体の互いに離間した部分が近づく動作を検出する形態とすることができる。例えば、近接動作検出部を、鞍乗型車両のニーグリップ部分に設けられた圧力センサで構成してもよい。この場合、右膝及び左膝が互いに近づく動作を検出することができる。

　近接動作検出部に用いられるセンサも、特定のものに限られない。近接動作検出部は、例えば、乗員の身体が車体に作用する圧力を測る圧力センサ、乗員を被写体とする画像を撮影する撮影装置、乗員の身体の部位の位置を検出する位置センサ、又は、乗員の筋肉の動き（筋電）を検出する筋電センサ等を含むことができる。すなわち、近接動作検出部は、乗員が車体に作用する圧力、乗員を被写体とする画像、乗員の身体の部位の位置、又は、乗員の筋肉の動き等を検出することにより、乗員の身体の互いに離間した部分が近づく動作を検出することができる。

　乗員は、運転者及び同乗者（運転しない者）を含む。上記例では、近接動作検出部は、運転者の動きを検出し、接触部は運転者の身体に接触する。これに対して、近接動作検出部の対象とする乗員、及び、接触部が接触する乗員の少なくとも一方は、運転者でない乗員であってもよい。

　（触覚刺激提示部）
　触覚刺激提示部の接触部は、例えば、シートベルト、シート、タンク、ハンドルカバー、パームレスト、アームレスト、フットレスト、ステップ、シフト／アクセルレバー、アクセル／ブレーキペダル等、車体の一部であって乗員と接する部分を含む。触覚刺激提示部による乗員の接触部への力の付与の採り得る形態には、振動の付与も含まれる。

　２つの接触部は、乗員の胴体の他、足、脛、膝、腿、腰、尻、胸、肩、首、頭、顔、上腕、肘、前腕、又は、手のいずれか又はこれらの組み合わせに対して接触する形態とすることができる。

　触覚刺激提示部は、近接動作検出部で検出された動作の量（変位又は力の大きさ）に応じた力、車体に接する乗員の身体の部分に付与することができる。

　触覚刺激提示部の制御部が、近接動作検出部で検出された動作に基づいてアクチュエータが付与する力を制御する形態としては、例えば、近接動作検出部で検出された動作に応じて、前記力の付与の有無（要否）、前記力の大きさ、又は、前記力を付与するタイミングの少なくとも１つを決定する処理を含むことができる。すなわち、制御部は、近接動作検出部で検出された動作に応じて、前記アクチュエータによる前記力の付与の有無（要否）、前記力の大きさ、又は、前記力の付与のタイミングの少なくとも１つを制御することができる。

　（制御部）
　制御部は、アクチュエータを直接制御する形態の他、アクチュエータにより付与される力を間接的に調整する形態であってもよい。

　制御部は、近接動作検出部で検出された動作に加えて、車両の状態を示す情報に基づいて、前記アクチュエータが付与する力を制御してもよい。車両の状態を示す情報は、車両において検出される物理量とすることができる。この物理量は、乗員の動作に起因する車両の状態を示す物理量であってもよい。物理量として、例えば、車速、車体フレームの左右方向の傾斜量又は傾斜速度、スロットル開度、ブレーキ操作量、又は、スリップ率等が挙げられる。

　制御部は、プロセッサとメモリを含むコンピュータで構成されてもよい。制御部は、専用回路で構成されてもよい。制御部は、コンピュータ及び専用回路で構成されてもよい。制御部は、指示部と駆動部を含んでもよい。指示部及び駆動部は、コンピュータ及び回路の少なくとも１つにより構成されてもよい。例えば、指示部の動作は、プロセッサがメモリに記録されたプログラムを実行することで実現されてもよい。指示部の動作は、プロセッサ及び専用回路の少なくとも１つによって実現されてもよい。駆動部の動作は、プロセッサ及び専用回路の少なくとも１つによって実現されてもよい。駆動部は、指示部からの供給される情報に基づいてアクチュエータに制御信号を出力する。駆動部は、アクチュエータに制御情報を供給し、アクチュエータからアクチュエータの状態を示す情報を取得する。駆動部は、アクチュエータと、信号又はデータを送受信するインタフェースを備える。

　（感嘆音声）
　聴覚刺激提示部が出力する感嘆音声は、言語によらず人間の感情を表す音声である。感嘆音声は、例えば、吐息音の高さ又は大きさの抑揚によって人間の感情を表す音声である。感嘆音声により表される人間の感情は、いかなる言語を母国語とする人に理解可能である。感嘆音声は、有意な言語（文）を含まない人の声である。感嘆音声は、例えば、叫び声、鳴き声、喘ぎ声、ため息、又は、口笛等を含む。

　また、聴覚刺激提示部が出力する音声は、感嘆音声に限られない。録音又は合成された人の音声が聴覚刺激提示部で出力されてもよい。また、聴覚刺激提示部が出力する音声は、人の声を模した疑似音声であってもよい。このように、聴覚刺激提示部は、乗員加圧検出部で検出された乗員が車両に対して圧力を加える動作に基づいて、人の音声の特徴量を含む音を出力することができる。例えば、聴覚刺激提示部は、乗員加圧検出部で検出された乗員が車両に対して圧力を加える動作を契機として、音声の特徴量を含む音を出力することができる。これにより、乗員の動作に応答するように、音声の特徴量を含む音を出力することができる。また、聴覚刺激提示部は、乗員加圧検出部で検出された乗員が車両に対して圧力を加える動作の時間変化に応じて、音声の特徴量を決定してもよい。これにより、乗員の動作に応じた音声の特徴量を含む音を出力することができる。聴覚刺激提示部は、例えば、エンジン又モータなどの車両の動力原が動作している間に音声の特徴量を含む音を出力してもよい。これにより、車両の動力現が出す音と重ねて、音声の特徴量を含む音を出力することができる。

　（車両）
　本発明の対象となる車両は、２輪車、３輪車、４輪車又は、その他の車輪を有し、人を運搬する輸送マシンとすることができる。また、車輪を有するマシンの他、例えば、スノーモービル、船舶、航空機等のような、乗員を乗せて移動する輸送マシンも、本発明の車両に含まれる。なお、本発明の対象となる車両は、エンジンやモータ等の動力源により推進力を生み出すものに加えて、自転車、車いす等の人力で推進力を生み出すものも含まれる。また、例えば、電動立ち乗り二輪車のように乗員が立った状態で乗る車両や、ベビーカーのように乗員が寝た状態で乗る車両等、着座シートを有しない車両も、本発明の対象となり得る。

　（乗員加圧検出部）
　乗員加圧検出部は、車両に乗っている乗員が、乗員の筋力で車両に対して圧力を加える動作を検出する。乗員加圧検出部は、乗員の身体の一部から車両の構成部材に対して加わる圧力を検出する構成としてもよい。乗員加圧検出部は、圧力を直接検出してもよいし、圧力に関する他の物理量を検出してもよい。例えば、車両に乗っている乗員の身体の動作を示す物理量を検出してもよい。この場合、乗員加圧検出部は、例えば、上記の乗員の身体の互いに離間した部分が近づく動作を検出する近接動作検出部と同じとすることができる。また、乗員加圧検出部は、車両に乗っている乗員の動作による車両の構成部材の状態変化に関する物理用を検出してもよい。例えば、車両に設けられたレバー、ハンドル、ペダル、スイッチ、グリップ等の車両の可動部品の動きに関する物理量を検出することで、乗員が車両に対して圧力を加える動作を検出することができる。例えば、乗員加圧検出部は、ブレーキレバー、クラッチレバー、又は、サムスロットルの動きを検出することで、乗員が手又は指でレバー又はスロットルに対して圧力を加える動作を検出することができる。

　乗員加圧検出部は、乗員の身体の少なくとも１箇所の部分が、車両を押す圧力を検出する。例えば、乗員加圧検出部は、乗員の身体の２箇所において車両に接する部分が、互いに近づく方向の圧力を検出してもよいし、乗員の身体の１箇所の部分が車両を押す動作を検出してもよい。例えば、乗員加圧検出部は、乗員のニーグリップにおいて、右膝が車両の表面から離れた状態で、左膝でタンクを押す動作を、乗員が車両に対して圧力を加える動作として検出してもよい。

　（指示部）
　指示部は、前記乗員加圧検出部で検出された乗員の動作に基づいて、乗員が車両の有生性を知覚することを促進するように、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に付与する力を決定する。

　指示部は、決定した力をアクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に付与することを、駆動部に対して指示する。指示部は、駆動部に、アクチュエータによる力の付与の仕方を示す情報を駆動部に出力してもよい。例えば、指示部は、アクチュエータによる力の付与を指示する指示信号又は指示データを駆動部に送信することができる。駆動部は、指示部からの指示に従ってアクチュエータを駆動する。

　これにより、乗員が車両に圧力を加える動作に反応して、アクチュエータが２つの接触部を動かすことができる。その結果、乗員の車両に圧力を加える動作に対して、車両から２つの接触部を介して乗員に圧力を返すことができる。２つの接触部は、乗員の身体部分を挟み込んでこの身体部分に圧力を加える。これにより、乗員が車両の有生性を知覚することを促進する。

　決定処理の例として、指示部は、乗員加圧検出部で乗員の動作が検出されたことを契機として、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に付与する力を決定してもよい。これにより、検出された乗員の動作への応答として、アクチュエータに力を付与させることができる。乗員は、自らの動作に対する車両の反応を感じる。その結果、乗員が車両の有生性を知覚することを促進する。

　指示部は、検出された乗員の動作に対する応答として、アクチュエータの駆動により２つの接触部が挟み込んだ乗員の身体部分に加える力を決定することになる。ここで指示部が決定する力には、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に付与する力の時間変化が含まれてもよい。例えば、指示部は、力を付与するタイミング又は付与する力の時間変化パターンを決定してもよい。このように、指示部が、付与する力の時間変化を決定することで、乗員の動作に応答として乗員の身体に付与する力の態様を多様にすることができる。その結果、乗員の車両に対する有生性の知覚をより促進することができる。

　指示部は、検出された乗員の動作の時間変化に基づいて、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に付与する力を決定してもよい。すなわち、指示部は、乗員が車両に対して圧力を加える動作の時間変化を示す情報を用いて、付与する力を決定してもよい。指示部は、動作の時間変化の時間変化に対応する力を、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に付与する力として決定してもよい。指示部は、例えば、乗員の動作の時間変化と付与する力との対応関係を定めたデータ又はプログラムを参照して、検出された乗員の動作の時間変化に対応する力を決定することができる。乗員の動作の時間変化を示す情報としては、乗員が車両に圧力を加える動作に関連する物理量の時間変化を示す情報、例えば、そのような物理量の時系列データ、又はそのような物理量を示す信号の波形を用いて、付与する力を決定してもよい。また、指示部は、乗員の動作の時間変化を示す情報として、例えば、乗員が車両に圧力を加える動作の継続時間、乗員の動作の時間変化パターン等を用いてもよい。

　このように、指示部が、検出された乗員の動作の時間変化に基づいて、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に付与する力を決定することで、乗員のより多様な動作を考慮して、付与する力を決定することができる。そのため、乗員の車両に対する有生性の知覚をより促進することができる。

　決定処理の例として、指示部は、乗員加圧検出部で検出された乗員の動作に基づいて、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に力を付与するタイミング、付与する力の大きさ、及び付与する力の時間変化パターンの少なくとも１つを決定することができる。すなわち、乗員の車両に圧力を加える動作に対して、接触部が力を乗員に返すタイミングと、返す力の大きさと、付与する力の時間変化パターンの少なくとも１つを、指示部が制御することができる。これにより、乗員が車両の有生性を知覚することを促進する効果を高めることができる。

　指示部が、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に付与する力のタイミングを決定する場合、指示部は、決定したタイミングに応じて駆動部に指示するタイミングを制御してもよいし、駆動部に決定したタイミングを示す情報を送信してもよい。

　指示部が、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に力を付与するタイミングを決定する形態としては、例えば、下記の形態が挙げられる。

　指示部は、乗員加圧検出部で乗員の車両に圧力を加える動作が検出されるとほぼ同時にアクチュエータによる２つの接触部の少なくとも一方に対する力の付与を指示することができる。この場合、指示部は、乗員加圧検出部で乗員の動作が検出されると、待機せずに、駆動部に指示を出す。これにより、乗員が車両へ圧力を加える動作と、接触部から乗員に力が付与される動作とがほぼ同時にすることができる。

　指示部は、乗員加圧検出部で乗員の車両に圧力を加える動作が検出されてからアクチュエータによる２つの接触部の少なくとも一方に対する力の付与までの時間を制御することができる。例えば、指示部は、乗員加圧検出部で乗員の動作が検出されると、ある時間だけ待機してから、駆動部に指示を出す。これにより、乗員が車両へ圧力を加える動作と、接触部から乗員に力が付与される動作との間にタイムラグを生じさせることができる。また、指示部は、このタイムラグの長さを、待機時間を決定することにより制御できる。指示部は、例えば、乗員加圧検出部で検出された乗員の動作に基づいて、タイムラグの長さを制御してもよい。ここで、検出された乗員の動作としては、例えば、乗員が車両に加えた圧力に関する物理量（例えば、圧力の大きさ又は圧力の時間変化等）が挙げられる。また、指示部は、検出された車両の状態に基づいて、タイムラグの長さを制御してもよい。ここで、検出車両の状態は、例えば、車両の走行状態に関する物理量（例えば、車速等）とすることができる。なお、指示部は、常にタイムラグが一定になるよう制御してもよい。

　指示部が、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に付与する力の大きさを決定する形態としては、例えば、下記の形態が挙げられる。

　指示部は、乗員が車両に加えた圧力の大きさによって、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に力を付与するか否かを決定してもよい。また、指示部は、乗員が車両に加えた圧力の大きさに応じて、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に付与する力の大きさを決定してもよい。この場合、指示部は、乗員が加えた圧力と同じ程度の圧力を２つの接触部から乗員へ付与するように決定してもよい。或いは、指示部は、乗員が加えた圧力より大きな圧力を２つの接触部から乗員へ付与するように決定してもよい。或いは、指示部は、乗員が加えた圧力より小さな圧力を２つの接触部から乗員へ付与するように決定してもよい。また、指示部は、乗員が車両に圧力を加えた動作の量に応じて、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に付与する力の大きさを決定してもよい。

　指示部が、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に付与する力の時間変化パターンを決定する形態としては、例えば、下記の形態が挙げられる。

　指示部は、乗員加圧検出部で検出された乗員の動作に応じて、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に力を付与する時間の長さを決定してもよい。アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に力を付与する時間の長さは、例えば、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方を動かす速度によって制御することができる。指示部は、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方を動かす速度を決定してもよい。指示部は、例えば、乗員加圧検出部で検出された乗員が車両に圧力を加える動作の量、動作の時間変化率（速度）、動作の時間変化パターン、圧力の大きさ、又は、圧力の時間変化率、圧力の時間変化パターンの少なくともいずれか１つに応じて、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に力を付与する時間の長さを決定することができる。

　また、指示部は、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に力を付与する回数を決定してもよい。例えば、指示部は、断続的に力を付与する回数を決定してもよい。これにより、アクチュエータは、２つの接触部の少なくとも一方に対して、指示部が指示した回数にわたって断続的に力を付与することになる。

　また、指示部は、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に付与する力の波形を決定してもよい。例えば、指示部は、予め記録された複数の波形パターンの中から、検出された乗員の動作に対応するものを選択してもよい。又は、指示部は、検出された乗員の動作に基づいて、波形を示すパラメータ、例えば、周期、振幅、傾き、最大値、等を決定してもよい。これにより、指示部は、付与する力の時間変化パターンを多様に決定できる。

　指示部は、検出された乗員の動作の時間変化パターンに対応する、アクチュエータが２つの接触部の少なくとも一方に付与する力の時間変化パターンを決定してもよい。この場合、指示部は、乗員加圧検出部で検出された乗員の動作の時間変化パターンを判定する処理、及び判定した乗員の動作の時間変化パターンに対応する付与する力の時間変化パターンを決定する処理を実行することができる。この場合、指示部は、乗員の動作の時間変化パターンと、対応する付与する力の時間変化パターンとの対応関係を定めたデータ又はプログラムを用いて、検出された乗員の動作の時間変化パターンに対応する、付与する力の時間変化パターンを決定することができる。

　指示部による上記の決定処理は、例えば、乗員加圧検出部の検出結果を示すデータを入力し、アクチュエータに対する指示を示す情報を出力する処理とすることができる。例えば、指示部は、乗員加圧検出部の検出結果とアクチュエータに対する指示との対応関係を示すデータ又はプログラムを用いて、入力された検出結果に対応するアクチュエータに対する指示を決定することができる。又は、指示部は、乗員加圧検出部の検出結果を示すデータを入力し、アクチュエータに対する指示のデータを出力する論理回路を含んでもよい。

　（接触部）
　車両有生性知覚促進システムにおいて、接触部は、２つ以上設けられてもよい。接触部は、３つ以上設けられている場合、アクチュエータは、３つ以上の接触部のうち２つの接触部を近づける成分を含む力を、当該２つの接触部の少なくとも一方に付与する構成とすることができる。また、接触部は、例えば、乗員の身体の一部の周囲を全体的に覆うドーナツ状のエアバッグであってもよい。この場合、接触部は２つ以上であり、無数に存在する形態となる。

　（２つの接触部が同じ方向に乗員を押す場合）
　図１４～図１７に示す例は、２つの接触部がアクチュエータにより動かされて、乗員に対して同じ一方向に押し付けられる。また、２つの接触部の間の空間は、アクチュエータの力の付与により２つの接触部が乗員に押し付けられる方向において、乗員から離れるに従って狭くなる。このように構成することで、アクチュエータが２つの接触部に、一方向に動かす力を付与すると、２つの接触部の乗員に接する部分同士を互いに近づける成分を含む力を発生することになる。これにより、２つの接触部は、２つの接触部の間に位置する乗員の身体部分を挟み込んだ状態でこの身体部分に圧力を加える。

Claims

　車両に乗っている乗員が、前記乗員の筋力で前記車両に対して圧力を加える動作を検出する乗員加圧検出部と、
　前記乗員の身体の異なる部分にそれぞれ接する２つの接触部と、
　前記２つの接触部が、前記２つの接触部の間に位置する前記乗員の身体部分を挟み込んで前記身体部分に対して圧力を加えるように、前記２つの接触部の前記身体部分に接する部分を結ぶ方向において前記２つの接触部を近づける成分を含む力を、前記２つの接触部の少なくとも一方に付与するアクチュエータと、
　前記乗員加圧検出部で検出された前記動作に基づいて、前記乗員が前記車両の有生性を知覚することを促進するように、前記アクチュエータが前記２つの接触部の少なくとも一方に付与する力を決定する指示部と、
　前記指示部から前記指示部が決定した前記力を示す指示を受けて前記アクチュエータを駆動する駆動部と、
を備える車両有生性知覚促進システム。
　請求項１に記載の車両有生性知覚促進システムであって、
　前記乗員加圧検出部で検出された前記乗員が前記車両に対して圧力を加える動作に基づいて、音声の特徴量を含む音を出力する聴覚刺激提示部をさらに備える、車両有生性知覚促進システム。
　請求項１又は２に記載の車両有生性知覚促進システムであって、
　指示部は、前記乗員加圧検出部で検出された前記乗員が前記車両に対して圧力を加える動作の量に基づいて、前記乗員が前記車両の有生性を知覚することを促進するように、前記アクチュエータが前記２つの接触部の少なくとも一方に付与する前記力を決定する、車両有生性知覚促進システム。
　請求項１～３のいずれか１項に記載の車両有生性知覚促進システムであって、
　前記指示部は、前記アクチュエータが前記２つの接触部の少なくとも一方に付与する前記力を、車速に応じて調整する、車両有生性知覚促進システム。
　前記乗員の身体の異なる部分にそれぞれ接する２つの接触部と、
　前記２つの接触部が、前記２つの接触部の間に位置する前記乗員の身体部分を挟み込んで前記身体部分に対して圧力を加えるように、前記２つの接触部の前記身体部分に接する部分を結ぶ方向において前記２つの接触部を近づける成分を含む力を、前記２つの接触部の少なくとも一方に付与するアクチュエータと、
　車両に乗っている乗員が前記乗員の筋力で前記車両に対して圧力を加える動作を検出する乗員加圧検出部で検出された前記動作に基づいて、前記乗員が前記車両の有生性を知覚することを促進するように、前記アクチュエータが前記２つの接触部の少なくとも一方に付与する力を決定する指示部から前記指示部が決定した前記力を示す指示を受けて前記アクチュエータを駆動する駆動部と、備える車両。
　請求項５に記載の車両であって、
　前記接触部は、前記車両の左右方向に並んで配置され、前記車両に乗っている乗員の胴部又は右足に接する右押圧部、及び、前記乗員の胴部又は左足に接する左押圧部を含み、
　前記アクチュエータは、前記右押圧部が前記乗員に接する部分及び前記左押圧部が前記乗員に接する部分を互いに近づける力を前記右押圧部及び前記左押圧部の少なくとも一方に付与し、
　前記駆動部は、前記乗員加圧検出部で検出された前記動作に基づいて、前記アクチュエータが、前記乗員が前記車両の有生性を知覚することを促進するように、前記右押圧部及び前記左押圧部の少なくとも一方に付与する力を決定する前記指示部から前記指示部が決定した前記力を示す指示を受けて前記アクチュエータを駆動する、車両。
　請求項６に記載の車両であって、
　車体フレームと、
　前記車体フレームの前記車両の前後方向の前部に回転可能に支持されたハンドルと、
　前記車体フレームに支持され、前記乗員が跨がるためのシートを備え、
　前記右押圧部及び前記左押圧部は、前記ハンドルと前記シートの間に配置される、車両。
　請求項６に記載の車両であって、
　前記車体フレームと、
　前記車体フレームの前記車両の前後方向の前部に回転可能に支持されたハンドルと、
　前記ハンドルに対して前記車両の前後方向において後方に設けられ、前記乗員が跨がるためのシートを備え、
　前記右押圧部及び前記左押圧部は、前記シートに跨がる乗員に対して前記車両の前後方向における後方から接触する位置に設けられる、車両。
　アクチュエータを制御する車両有生性知覚促進プログラムであって、
　前記アクチュエータは、車両に乗っている乗員の身体の異なる部分にそれぞれ接する２つの接触部が、前記２つの接触部の間に位置する前記乗員の身体部分を挟み込んで前記身体部分に対して圧力を加えるように、前記２つの接触部の前記身体部分に接する部分を結ぶ方向において前記２つの接触部を近づける成分を含む力を、前記２つの接触部の少なくとも一方に付与するアクチュエータであり、
　前記車両有生性知覚促進プログラムは、
　　車両に乗っている乗員が、前記乗員の筋力で前記車両に対して圧力を加える動作を検出する乗員加圧検出部から検出結果と取得する処理と、
　前記乗員加圧検出部で検出された前記動作に基づいて、前記乗員が前記車両の有生性を知覚することを促進するように、前記アクチュエータが前記２つの接触部の少なくとも一方に付与する力を決定する処理と、
　前記決定した前記力を示す指示を、前記アクチュエータを駆動する駆動部に指示する処理と、
をコンピュータに実行させる、車両有生性知覚促進プログラム。
　アクチュエータを制御して車両有生性知覚を促進する制御方法であって、
　前記アクチュエータは、車両に乗っている乗員の身体の異なる部分にそれぞれ接する２つの接触部が、前記２つの接触部の間に位置する前記乗員の身体部分を挟み込んで前記身体部分に対して圧力を加えるように、前記２つの接触部の前記身体部分に接する部分を結ぶ方向において前記２つの接触部を近づける成分を含む力を、前記２つの接触部の少なくとも一方に付与するアクチュエータであり、
　前記制御方法は、
　車両に乗っている乗員が、前記乗員の筋力で前記車両に対して圧力を加える動作を乗員加圧検出部が検出するステップと、
　前記乗員加圧検出部で検出された前記動作に基づいて、前記乗員が前記車両の有生性を知覚することを促進するように、前記アクチュエータが前記２つの接触部の少なくとも一方に付与する力を決定するステップと、
　前記決定した前記力を示す指示を受けた前記アクチュエータの駆動部が、前記アクチュエータを駆動することにより、前記アクチュエータが前記２つの接触部の少なくとも一方に力を付与するステップと、
を有する制御方法。