WO2017175827A1 - 合成アミノ酸の癌細胞内取り込みを保持する修飾法と正常細胞を保護する中性子捕捉療法 - Google Patents

合成アミノ酸の癌細胞内取り込みを保持する修飾法と正常細胞を保護する中性子捕捉療法 Download PDF

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Abstract

本発明は、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させることを可能とする手段を提供すること目的とする。本発明は、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を向上させるために用いられる、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤の利用に関する。

Description

合成アミノ酸の癌細胞内取り込みを保持する修飾法と正常細胞を保護する中性子捕捉療法
 本発明は、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させる手段、並びにそれを用いた中性子捕捉療法による癌治療法及びポジトロン断層法もしくは核磁気共鳴画像法による癌診断法に関する。
 中性子捕捉療法(以下、「BNCT」と記載する)とは、4-ボロノフェニルアラニン(4-Boronophenylalanine:以下、「BPA」と記載する)やメルカプトウンデカハイドロドデカボレート(Mercaptoundecahydrododecaborate:以下、「BSH」と記載する)等の含ホウ素化合物(ホウ素の非放射性同位元素で自然界に約2割存在するホウ素10を少なくとも90%以上含有する化合物)を癌患者に予め投与して癌細胞内に蓄積させた後、安全な熱中性子又は熱外中性子あるいは混合ビームを照射して、ホウ素10(B-10)に起因する核反応の結果生じる粒子線(アルファ線)とリチウム原子(Li)により癌細胞を殺傷し癌を治療する方法である。アルファ線の飛程距離は7~10マイクロメートルであり、リチウム原子の飛程距離は4~5マイクロメートルと共に非常に短いため、含ホウ素化合物を取り込んだ癌細胞を限定的に殺傷することができる。
 BPAは通常のアミノ酸輸送系によって細胞内へと取り込まれる。このため、アミノ酸輸送系を多く発現している増殖速度の速い癌細胞に取り込まれやすく、その結果、癌細胞において選択的に蓄積量が増大する。このためBPAを利用するBNCTは、正常細胞への副作用が少ない治療法であるといわれている。
 しかしながら、実際にはBNCT後に、正常組織において放射線障害が起こることがある。そのため、BNCTの実施に際しては、あらかじめポジトロン断層法(以下、「PET」と記載する)で、癌組織に取り込まれる含ホウ素化合物量と正常組織に取り込まれる含ホウ素化合物量との比率(T/N比)を求め、当該比率に基づいて正常組織に障害が発生しない程度の熱中性子又は熱外中性子あるいは混合ビーム照射量を設定する。この比率が大きい場合には、癌細胞における含ホウ素化合物のホウ素10の含有量が多いために、BNCTにより充分な治療効果が得られることが期待される。
 一方、この比率が小さい場合には、癌組織における含ホウ素化合物の含有量が少なく、BNCTによる充分な治療効果が得られない、及び/又は正常組織への影響が懸念される。このため、このような癌や癌患者に対してはBNCTの適用は困難となる場合がある。
 また、癌細胞内に取り込まれた含ホウ素化合物の量は、時間の経過と共に徐々に低下していくことが確認されている(非特許文献1)。このため、熱中性子又は熱外中性子あるいは混合ビームの照射開始のタイミングを誤れば、癌組織内の含ホウ素化合物含有量の不足を生じ、BNCTによる充分な治療効果が得られない場合がある。
 PETとは、陽電子検出を利用したコンピュータ断層撮影であり、生体の機能を観察することに特化した検査法であり、癌の診断や、上記のとおりBNCTの実施前検査に利用することができる。本検査法では陽電子β崩壊する核種(例えば18F)で標識された化合物を放射性トレーサーとして用いることができる。具体的には、18Fで標識したフルオロデオキシグルコース(FDG)又は2-フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン(2-Fluoro-4-boronophenylalanine:FBPA)が利用される。18Fで標識したFBPAは、実験動物やヒトの生体内でBPAと等価な挙動を示すことが明らかとなっており、18Fで標識したFBPAを用いたPET検査から、癌組織内に取り込まれたBPA濃度を予測・判定することができ、その結果はBNCTに利用することができる。
 癌細胞の培養において、BPAをL-チロシン又はL-フェニルアラニン等と共に添加すると、BPAの取り込みが増加することが報告されている(非特許文献2及び3)。L-チロシンを添加して培養し、ウォッシュアウトした後に、BPAを添加して培養すると2時間後のBPAの取り込み量は変動していないが、4時間後にBPAの取り込み量が増加することが報告されている。この方法では非常に時間を要し、治療方法としては好ましくない。いずれにおいてもこれらの方法で正常組織への取り込み量が減少することについては報告されていない。
 癌細胞におけるBPAの取り込み機構はアミノ酸輸送系として知られているLAT(L型アミノ酸トランスポーター、L-type amino acid transporter)ファミリーに基づくものである。癌細胞においては、アミノ酸輸送系であるLAT-1の発現の亢進が認められる。LAT-1によるアミノ酸輸送は交換輸送であり、細胞外からのアミノ酸の取り込みは、癌細胞内のアミノ酸との1対1の交換で行われ、厳格に制御されている。一方、正常細胞、すなわち分裂・増殖状態にない細胞においては、LAT-1との相同性が比較的高いLAT-2が発現しており、これがBPAの取り込みに寄与している。癌細胞におけるLAT-1の発現量は、正常細胞におけるLAT-2の発現量と比べて顕著に大きく、このため癌細胞におけるBPAの取り込み量は正常細胞におけるBPAの取り込み量と比べて大きくなり、上記T/N比を増大させる。LAT-1の機能阻害の試みは臨床段階を視野に入れて取り組まれており、LAT-1の機能を阻害して、癌細胞のアミノ酸の取り込みを阻害して枯渇させ、癌細胞及び癌組織の死滅を誘導する試みがなされている。
Y.Imahori et al.,Positron emission tomography-based boron neutron capture therapy using boronophenylalanine for high-grade gliomas:part II.,Clin Cancer Res. 1998 Aug;4(8):1833-41. Manfred papaspyrouet al.,Preloading with L-Tyrosin Increases the Uptake of Boronophenylalanine in Mouse Melanoma Cells,Cancer Research 54,6311-6314(1994) S.Capuani et al.,Boronophenyalanine uptake in C6 glioma model is dramatically increased by L-DOPA preloading,Applied Radiation and Isotopes,67,S34-S36,2009
 上述したとおり、BNCTによる充分な治療効果を得るためには、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させることが求められている。
 そこで、本発明は、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させることを可能とする手段の提供を目的とする。
 また、本発明は、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させ、充分な効力を発揮することが可能であると共に、正常組織における障害を回避することを可能とするBNCTによる新たな癌療法を提供することを目的とする。
 さらに、本発明は、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させ、癌の検出を高い精度で実施することができるPET又は核磁気共鳴画像法(以下、「MRI」と記載する)による新たな癌診断法を提供することを目的とする。
 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、少なくとも1種のアミノ酸を、含ホウ素化合物と組み合わせて投与することにより、反応性細胞や免疫細胞などの正常細胞における含ホウ素化合物の取り込み量を大幅に低下させ、それに伴い癌細胞の取り込み量が相対的に上昇することによって、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上できることを見出した。
 また、本発明者らは、少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を、含ホウ素化合物を取り込んだ後の癌細胞に作用させそのアミノ酸輸送を阻害することによって、癌細胞からの含ホウ素化合物の流出を抑制し、含ホウ素化合物の癌細胞内の量を保持し、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上できることを見出した。
 そして癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させることによって、BNCTの実施により効率よく、高い精度で癌細胞を殺傷できること、またPET又はMRIにより癌の検出を高い精度で実施できることを見出し、本発明を完成するに至った。
 すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1] 癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させるために用いられる、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を含む組成物又はキット。
[2] 含ホウ素化合物が、含ホウ素置換基を含む芳香族アミノ酸、又は標識された含ホウ素置換基を含む芳香族アミノ酸である、[1]の組成物又はキット。
[3] 少なくとも1種のアミノ酸が芳香族アミノ酸を含む、[1]又は[2]の組成物又はキット。
[4] 少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤がL型アミノ酸トランスポーター-1(LAT-1)阻害剤を含む、[1]~[3]のいずれかの組成物又はキット。
[5] 含ホウ素化合物と、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤とを含む、癌を中性子捕捉療法(BNCT)により治療するための治療剤又はキット。
[6] 含ホウ素化合物が含ホウ素置換基を含む芳香族アミノ酸である、[5]の治療剤又はキット。
[7] さらに、メルカプトウンデカハイドロドデカボレート(BSH)、ホウ素10を含むリポソーム、ガドリニウム、又はポルフィリン化合物を含む、[5]又は[6]の治療剤又はキット。
[8] 標識された含ホウ素化合物と、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を含む、ポジトロン断層法(PET)又は核磁気共鳴画像法(MRI)により癌を診断するための診断剤又はキット。
[9] 標識された含ホウ素化合物が標識された含ホウ素置換基を含む芳香族アミノ酸である、[8]の診断剤又はキット。
[10] 含ホウ素化合物、並びに、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させる有効量で投与し、癌細胞における該含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させた後、該癌細胞に熱中性子又は熱外中性子あるいは混合ビームを照射して該癌細胞を殺傷する工程を含む、中性子捕捉療法(BNCT)により癌を治療するための方法。
[11] 少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤が、L型アミノ酸トランスポーター-1(LAT-1)阻害剤であり、有効量の含ホウ素化合物を投与した後で、有効量の少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を投与する、[10]の方法。
[12] 標識された含ホウ素化合物、並びに、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を癌細胞における標識された含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させる有効量で投与し、癌細胞における該標識された含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させた後、該標識された含ホウ素化合物を検出する工程を含む、ポジトロン断層法(PET)又は核磁気共鳴画像法(MRI)により癌を診断するための方法。
[13] 少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤が、L型アミノ酸トランスポーター-1(LAT-1)阻害剤であり、有効量の標識された含ホウ素化合物を投与した後で、有効量の少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を投与する、[12]の方法。
 本発明は、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させることを可能とする手段を提供することができる。これにより、BNCTにおいて正常組織における障害を回避して癌細胞を殺傷することができ、安全かつ効率的に癌を治療することができる。また、PET又はMRIにより癌の検出を明確に行うことができ、精度の高い癌診断を行うことができる。
 本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願第2016-078453号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。
標識された含ホウ素化合物(18Fで標識された2-フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン)をアミノ酸の存在下及び非存在下に投与したときの脳腫瘍組織及びその周辺部におけるPET画像を示す。 4-ボロノフェニルアラニン(10BPA)及び2-アミノビシクロ-(2,2,1)-ヘプタン-2-カルボン酸(BCH)を添加したヒトバーキットリンパ腫細胞(Ramos(RA1))細胞を灰化処理した試料に含まれる10Bの定量結果を示す。 10BPA及びBCHを添加したヒト唾液腺細胞(HSG)を灰化処理した試料に含まれる10Bの定量結果を示す。 様々な進行癌の患者に18Fで標識された2-フルオロ-4-ボロノフェニルアラニンを投与して、PETにより検査を行った場合における腫瘍/血液の放射能比の経時変化を示す。
<1.組成物又はキット>
 本発明は、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を含み、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させるために用いられる、組成物又はキットに関する。
 本発明において「含ホウ素化合物」には、BNCTにおいて使用可能な、ホウ素10を少なくとも90%以上含有する含ホウ素化合物、及びPETもしくはMRIにおいて使用可能な、ホウ素10を少なくとも90%以上含有する標識された含ホウ素化合物が含まれる。
 このような含ホウ素化合物としては、含ホウ素置換基を有する化合物、特に含ホウ素置換基を有するアミノ酸であり、好ましくは、ホウ素置換基を有する芳香族アミノ酸である。芳香族アミノ酸としては、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、フェニルグリシン等が挙げられ、フェニルアラニン、チロシンが好ましく、フェニルアラニンが特に好ましい。含ホウ素置換基としては、-B(OH)又はその塩、-BR(R及びRは同一又は異なってメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルなどのC1~C4の直鎖又は分岐を有するアルキル基、フェニル等のアリール基、ベンジル、フェネチル等のアラルキル基を表す)が挙げられる。このような含ホウ素化合物としては、BPAが挙げられ、本発明において好適に用いることができる。標識された含ホウ素化合物とは、上記の含ホウ素化合物がポジトロン核種で標識された化合物である。ポジトロン核種としては、PETにおいて一般的に使用されるものを利用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、11C、13N、15O、18F等を用いることができる。例えば含フッ素化合物がBPAである場合、標識された含ホウ素化合物としては、18Fで標識されてなる、2-フルオロ-4-ボロノフェニルアラニン(以下、「FBPA」と記載する)、2-トリフルオロメチル-4-ボロノフェニルアラニン、2-トリフルオロメトキシ-4-ボロノフェニルアラニン等が挙げられる。
 含ホウ素化合物は従来公知のものを利用することができ、従来公知の手法に従って合成したものを用いてもよいし、市販されているものを用いてもよい。例えば、BPAはInterpharma Praha,A.S.又はステラケミファ株式会社より販売されており、本発明においてはこれらを利用することができる。
 本発明において「アミノ酸」とは、含ホウ素化合物の正常細胞への取り込みを抑制することができ、及び/又は、癌細胞への取り込みを促進させ、結果として、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量が、正常細胞における含ホウ素化合物の蓄積量と比べて、選択的に向上している又は増大している状態を生じる得るものであればよく、特に限定されないが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンを挙げることができ、好ましくは、フェニルアラニン、チロシンを挙げることができる。これらのアミノ酸は、L-アミノ酸、D-アミノ酸、DL-アミノ酸のいずれでもよいがL-アミノ酸が好ましく使用できる。上記含ホウ素化合物がホウ素置換基を有するアミノ酸である場合、含ホウ素化合物はホウ素置換基を有するL-アミノ酸が好ましい。上記含ホウ素化合物が疎水性アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)にホウ素置換基を有する化合物である場合、使用するアミノ酸も少なくとも1種の疎水性アミノ酸を含むものが好ましい。同様に含ホウ素化合物が各々酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、含硫アミノ酸(システイン、メチオニン、シスチン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)、イミノ酸(プロリン、ヒドロキシプロリン)、アミド型アミノ酸(アスパラギン、グルタミン)、ヒドロキシアミノ酸(チロシン、セリン)、脂肪族アミノ酸にホウ素置換基を有する化合物である場合、使用するアミノ酸は、同じタイプの少なくとも1つのアミノ酸を使用するのが好ましい。例えば、上記含ホウ素化合物がBPAである場合、使用するアミノ酸には、フェニルアラニン及び/又はチロシンを含めることが好ましい。
 使用するアミノ酸は1種類であっても、2種類以上の混合物でもよい。混合物中に含まれる、分岐アミノ酸の比率は特に限定はされないが、総アミノ酸に対して、好ましくは10%~50%であり、より好ましくは15%~40%である。また、混合物中に含まれる、必須アミノ酸と非必須アミノ酸の比(E/N比)は特に限定はされないが、好ましくは5:1~1:2であり、より好ましくは4:1~1:1.5である。混合物のFischer比は特に限定はされないが、好ましくは1~50であり、より好ましくは3~40である。なお、ここでFischer比とは、バリン、ロイシン及びイソロイシンからなる分岐鎖アミノ酸(BCAA)とチロシン及びフェニルアラニンからなる芳香族アミノ酸(AAA)の比であり、BCAA/AAA×100で算出されるものを意味する。
 本発明に使用することができるアミノ酸は従来公知のアミノ酸であり、従来公知の手法に従って合成したものを用いてもよいし、市販されているものを用いてもよい。例えば、複数のアミノ酸を含有する輸液が株式会社大塚製薬工場、味の素株式会社、テルモ株式会社等から販売されており、本発明においてはこれらを利用することができる。
 本発明において「アミノ酸輸送系阻害剤」とは、癌細胞又は正常細胞にて発現するアミノ酸トランスポーターの機能を阻害してアミノ酸輸送を抑制又は阻害して、癌細胞中に取り込まれた含ホウ素化合物の流出を抑制するか、又は含ホウ素化合物の正常細胞への取り込みを抑制することができ、結果として、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量が、正常細胞における含ホウ素化合物の蓄積量と比べて、選択的に向上している又は増大している状態を生じ得るものであればよい。このようなアミノ酸輸送系阻害剤としては、癌細胞において発現の亢進が認められるアミノ酸トランスポーター、例えば、LAT-1、LAT-3、ASCT2、ATB0,+、xCT等の阻害剤、並びに正常細胞において発現が認められるアミノ酸トランスポーター、例えば、LAT-2の阻害剤が挙げられるが、これらに限定はされない。LAT-1は多くの癌において発現の亢進が認められ、Na非依存的に中性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、ヒスチジン等)の交換輸送を行う。LAT-3は肝臓、骨格筋、膵臓、胎盤、腎糸球体足細胞等の正常細胞においても発現が認められるが、前立腺癌において発現の顕著な亢進が認められる。LAT-3はNa非依存的に中性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン)を細胞内に輸送する。ASCT2は肺、骨格筋、大腸、腎臓、精巣、脂肪組織等の正常細胞においても発現が認められるが、癌細胞において発現の顕著な亢進が認められる。ASCT2はNa依存的にアラニン、セリン、システイン、トレオニン、グルタミンを細胞内に輸送する。ATB0,+は肺、気管、唾液腺、乳腺、胃、小腸、大腸、子宮、精巣等の正常細胞においても発現が認められるが、大腸癌、子宮頚癌、乳癌、膵臓癌等において発現の顕著な亢進が認められる。ATB0,+はNa依存的に中性及び塩基性アミノ酸(リシン、アルギニン、アラニン、セリン、システイン、トレオニン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、バリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)を細胞内に輸送する。xCTは、脳、マクロファージ等の正常細胞においても発現が認められるが、癌幹細胞における発現が認められ、Na非依存的にシスチンとグルタミン酸の交換輸送を行う。LAT-2は正常細胞において発現が認められ、Na非依存的に中性アミノ酸(グリシン、アラニン、セリン、システイン、スレオニン、グルタミン、アスパラギン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン)を細胞内に輸送する。
 アミノ酸輸送系阻害剤は、上記アミノ酸トランスポーターの機能を阻害してそのアミノ酸輸送を抑制又は阻害できるものであればよく、例えば、上記アミノ酸トランスポーターと結合可能な化合物や抗体(モノクローナル抗体、もしくはポリクローナル抗体)等を利用することができる。例えば、LAT-1に対するアミノ酸輸送系阻害剤としては、JPH203(Yun,D-W.ら、J Phamacol.Sci.,124,208-217(2014))、BCH(2-アミノビシクロ-(2,2,1)-ヘプタン-2-カルボン酸)、甲状腺ホルモンのトリヨードチロニン(T3)(Uchino,H.ら、Mol.Pharmacol.,61,729-737(2002))、KYT-0353(Oda,Kら、Cancer Sci.,101,173-179.(2010))、LAT-1を認識するモノクローナル抗体(Ohkawa,M.ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.,406,649-655(2011))等が挙げられ、好ましくはJPH203及び/又はBCHを利用することができる。
 アミノ酸輸送系阻害剤は、従来公知の手法に従って合成・生成したものを用いてもよいし、市販されているものを用いてもよい。
 本発明に係る組成物には、上記少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤に加えて、医薬品の製造において通常用いられている少なくとも1種の添加剤(例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤等)を、組成物の形態・剤型に応じて適宜配合することができる。この場合、本発明に係る組成物は、上記少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤、並びに少なくとも1種の上記添加剤を含む医薬組成物に関する。本明細書において言及される「本発明に係る組成物」は、いずれの場合も上記医薬組成物の態様を包含する。組成物の剤型は特に限定されないが、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、輸液剤等とすることができる。
 本発明に係る組成物は、選択されたアミノ酸及び選択されたアミノ酸輸送系阻害剤、並びに場合により少なくとも1種の添加剤を一緒にして一つの組成物中に配合した形態であってもよいし、あるいは選択したアミノ酸及び選択したアミノ酸輸送系阻害剤、並びに場合により少なくとも1種の添加剤をそれぞれ別個の組成物とし、各組成物を別個に収容して組み合わせたキット又は組み合わせ(例えば医薬組み合わせ)の形態であってもよい。この場合、本発明に係るキット又は組み合わせは、上記成分を収容した2個以上の組成物を含む。本明細書において言及される「本発明に係るキット」は、いずれの場合も上記組み合わせ(例えば医薬組み合わせ)の態様を包含する。
 本発明の組成物又はキットは、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させるために用いることができる。「癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させる」とは、癌細胞に取り込まれた含ホウ素化合物量が、正常細胞に取り込まれた含ホウ素化合物量と比べて高い状態とすることを意味し、例えば、癌細胞及び正常細胞、あるいは癌組織及び正常組織における取り込まれた含ホウ素化合物の濃度比、あるいはPETにより検出される放射能比(以下、「T/N比」と記載する)が、2又はそれ以上、3又はそれ以上、4又はそれ以上、5又はそれ以上、6又はそれ以上、8又はそれ以上、あるいは、10又はそれ以上とし得る。放射能比のときは、一般的に、癌組織の関心領域はボクセルの値から算出し、正常領域の関心領域は49~256ピクセルの平均値を用いて算出することができる(Fluorine-18-labeled fluoroboronophenylalanine PET in patients with glioma.,Imahori Y,Ueda S,Ohmori Y,Kusuki T,Ono K,Fujii R,Ido T.,J Nucl Med.1998 Feb;39(2):325-33.)。
 癌細胞は一般的に、その細胞増殖や代謝を維持するために、正常細胞よりも多くの栄養成分(糖やアミノ酸等)を必要とする。癌細胞においては、より多くの栄養成分を供給するために、それらの輸送系の高い発現が認められる。当該輸送系の発現量の違いに基づいて、癌細胞は投与された含ホウ素化合物を、正常細胞よりも多く取り込むことができる。本発明の組成物における少なくとも1種のアミノ酸は、癌細胞及び正常細胞への取り込みに関し、含ホウ素化合物と競合するものであるが、少なくとも1種のアミノ酸の存在下、輸送系の発現量の違い及び分布容積(distribution volume)の違いに基づいて、正常細胞においては取り込まれ得る含ホウ素化合物の量が顕著に低下する(Y.Imahori et al.,1998,上掲)。これによってT/N比を増大させることができ、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させることができる。
 また、本発明の組成物における少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤は、癌細胞及び/又は正常細胞におけるアミノ酸輸送系を阻害することができる。アミノ酸輸送系阻害剤がL型アミノ酸トランスポーターー1(LAT-1)等の癌細胞にて発現が認められるアミノ酸輸送系に対する阻害剤である場合、癌細胞に投与された含ホウ素化合物が十分に取り込まれた状態において当該阻害剤を作用させることによって、当該アミノ酸輸送系の活性・機能を阻害し、癌細胞内からの含ホウ素化合物の流出を抑制し、癌細胞内の含ホウ素化合物の量を保持することができる。例えば、LAT-1はNa非依存的な交換輸送活性を示し、対向輸送(アンチポート)、すなわち細胞内と細胞外に存在するアミノ酸分子を互に交換する活性を示す。このためLAT-1が阻害された場合には、細胞内への輸送(取り込み)が阻害されるのと同時に、細胞外への輸送(流出)も阻害される。これによって取り込まれた含ホウ素化合物の癌細胞内からの流出を抑制することができ、癌細胞内の含ホウ素化合物の量を保持することができる。
 例えば、本発明の組成物又はキットにおける少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤が、癌細胞において発現の亢進が認められるアミノ酸トランスポーター(例えば、LAT-1、LAT-3、ASCT2、ATB0,+、xCT等)の阻害剤である場合、含ホウ素化合物を癌細胞に投与した後で、少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を投与することが好ましい。この場合、含ホウ素化合物と少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤との投与間隔は、癌細胞に取り込まれた含ホウ素化合物の量が最大又はその付近となる段階で阻害剤の効果が得られるように、対象となる癌細胞における含ホウ素化合物の流出特性に基づき、適宜設定することができる。例えば、対象となる癌細胞が、含ホウ素化合物の投与直後から癌細胞内の含ホウ素化合物の量が上昇して、投与から所定の時間(例えば投与後180分間)までに一定の値に到達する特性を有するタイプである(以下、「タイプI」とも記載する)場合、含ホウ素化合物と少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤との投与間隔は、癌細胞内の含ホウ素化合物の量が一定の値に到達するまでの時間の範囲内で適宜設定することができる。或いは、対象となる癌細胞が、含ホウ素化合物の投与直後から癌細胞内の含ホウ素化合物の量が上昇するものの、一定時間の経過後に低下する特性を有するタイプである(以下、「タイプII」とも記載する)場合、含ホウ素化合物と少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤との投与間隔は、癌細胞内の含ホウ素化合物の量が最大値に到達する時間から最小値に到達するまでの時間の範囲内で適宜設定することができる。この場合、投与間隔は、20~180分間の範囲であることが好ましく、20~90分間の範囲であることがより好ましい。このような手順で本発明の組成物又はキットを使用することにより、癌細胞内からの含ホウ素化合物の流出を抑制し、癌細胞内の含ホウ素化合物の量を保持することができる。
 前記手順で本発明の組成物又はキットを使用する場合、含ホウ素化合物を癌細胞内に保持し得ることから、BNCTにおける熱中性子又は熱外中性子あるいは混合ビームの照射開始時期を遅延させることができる。一般的に、血清中の含ホウ素化合物の濃度は癌患者に投与してから一定時間経過後にピークとなり、投与終了後、急激に低下する(非特許文献1)。このため、前記手順で本発明の組成物又はキットを使用する場合、熱中性子又は熱外中性子あるいは混合ビームの照射開始時期を遅延させることにより、BNCTによる血管内皮への障害の発生を実質的に減少させ、癌に対する治療効果を実質的に向上させることができる。さらに、腫瘍の大きさ及び/又は局在等の要因により、熱中性子又は熱外中性子あるいは混合ビームの照射時間を長くする必要がある癌患者に対してBNCTを適用する場合、前記手順で本発明の組成物又はキットを使用することにより、含ホウ素化合物を追加投与することなく、単回投与によって所定の治療効果を得ることができる。
 対象となる癌細胞における含ホウ素化合物の流出特性は、限定するものではないが、例えば、癌細胞に標識された含ホウ素化合物(例えば18FBPA)を投与して、PETにより、癌細胞に取り込まれた標識された含ホウ素化合物量の経時変化を調査することにより、LAT-1阻害剤の投与時間及び中性子照射計画を決定することができる(図4)。
 また、アミノ酸輸送系阻害剤がLAT-2等の正常細胞にて発現が認められるアミノ酸輸送系に対する阻害剤である場合、当該阻害剤の存在下にて含ホウ素化合物の投与を行うことによって、正常細胞への含ホウ素化合物の取り込みを抑制することができる。
 このように、アミノ酸輸送系阻害剤を利用して、癌細胞及び/又は正常細胞におけるアミノ酸輸送系を阻害することによって、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させることができ、T/N比を増大させることができる。
 本発明によれば、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させることができ、これによってBNCTにおいて癌細胞の選択的な破壊・除去を可能とすると共に、癌細胞以外の細胞(正常細胞、免疫細胞等)を放射線障害から予防することができる。すなわち、本発明の組成物又はキットは、癌細胞以外の細胞を放射線障害から予防するために用いることができる。また、本発明によれば、癌細胞における標識された含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させることができ、PET又はMRIによる癌細胞の検出を明確にし、その精度を高めることができ、また、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を高い精度で評価することができBNCTの良好な治療計画を得ることができる。
<2.BNCTに用いられる治療剤又はキット>
 本発明は、含ホウ素化合物と、癌細胞における当該含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させるために用いられる、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を含む、癌をBNCTにより治療するための治療剤又は治療キットに関する。
 本発明において「含ホウ素化合物」とは、BNCTにおいて利用可能なものであればよく、例えば、含ホウ素置換基を有するアミノ酸、好ましくは、ホウ素置換基を有する芳香族等が挙げられる。含ホウ素化合物としては、上記「1.組成物又はキット」に記載したものを利用することができ、好ましくはBPAである。
 本発明において「少なくとも1種のアミノ酸」としては、上記「1.組成物又はキット」に記載したものを利用することができる。例えば、上記含ホウ素化合物がBPAである場合、使用するアミノ酸には、フェニルアラニン及び/又はチロシンを含めることが好ましい。
 本発明において「少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤」としては、上記「1.組成物又はキット」に記載したものを利用することができる。例えば、L型アミノ酸トランスポーターー1(LAT-1)に対するアミノ酸輸送系阻害剤を利用することができ、好ましくはJPH203及び/又はBCHを利用することができる。
 本発明に係る治療剤には、上記含ホウ素化合物、並びに、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤に加えて、癌治療に用いられるさらなる化合物を含めることができる。このような化合物としては、BNCTにおいて利用可能なBSHやホウ素10を含むリポソーム、ガドリニウムや、光線力学的治療法(PDT)において利用可能なポルフィリン化合物等を含めることができる。
 本発明に係る治療剤には、上記含ホウ素化合物、並びに、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤に加えて、医薬品の製造において通常用いられている少なくとも1種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、上記「1.組成物又はキット」に記載したものを利用することができ治療剤の形態・剤型に応じて適宜選択することができる。
 本発明に係る治療剤は、含ホウ素化合物、選択したアミノ酸及び/又は選択したアミノ酸輸送系阻害剤、並びに場合により少なくとも1種の添加剤を一緒にして一つの組成物中に配合した形態であってもよいし、あるいは、含ホウ素化合物、選択したアミノ酸及び/又は選択したアミノ酸輸送系阻害剤、並びに場合により少なくとも1種の添加剤をそれぞれ別個の組成物とし、各組成物を別個に収容して組み合わせた治療キット又は組み合わせ(例えば医薬組み合わせ)の形態であってもよい。
 治療剤の剤型は特に限定されないが、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、輸液等とすることができる。含ホウ素化合物、並びに、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤がそれぞれ別個の組成物である場合には、各組成物は同一の形態であってもよいし、それぞれ異なる形態であってもよい。例えば、含ホウ素化合物は注射剤又は輸液剤とし、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤は輸液剤又は注射剤とすることができる。
 本発明の治療剤又はキットは、BNCTにより癌を治療するための方法において利用することができる。本方法は、含ホウ素化合物、並びに少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を投与して、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させた後、当該癌細胞に熱中性子又は熱外中性子あるいは混合ビームを照射して当該癌細胞を殺傷する工程を含む。
 本方法において治療可能な癌としては、固形癌、浸潤癌、放射線治療再発癌等が挙げられ、具体的には、中皮腫、乳癌、脳腫瘍、黒色腫、頭頚部腫瘍、神経膠腫、胃癌、肺癌、肝臓癌、炎症性乳癌、膵臓癌、胆管癌、大腸癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌、卵管癌、膣癌、外陰癌、絨毛癌、転移性癌、リンパ節転移癌、悪性黒色腫等が挙げられるが、これらに限定はされない。
 本方法は実施するに際して予め、標識された含ホウ素化合物を用いたPETでT/N比を確認して、含ホウ素化合物の投与量を決定することが望ましい。
 本方法において、含ホウ素化合物の投与量は、癌の種類、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量、T/N比等の要因に応じて適宜変更されるが、例えばBPAである場合、成人1回、体重1kgあたり1mg~2000mg、好ましくは10mg~1000mg、より好ましくは150mg~500mgの範囲より適宜選択することができる。
 含ホウ素化合物の投与方法は、標的部位である癌細胞に効率よく蓄積させる方法であれば特に限定されず、例えば、注射剤や輸液剤の形態にて行うことができる。含ホウ素化合物を注射剤として用いる場合には、生理食塩水に溶解又は懸濁させて使用することができる。このときに、pH調整剤、界面活性剤、溶解促進剤等のさらなる添加剤を加えてもよい。含ホウ素化合物を輸液剤として用いる場合には、グルコースやアミノ酸等の各種成分を含む輸液に混合させて使用することができる。
 本方法において、アミノ酸の投与量は、癌の種類、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量、T/N比等の要因に応じて適宜変更されるが、成人1回体重1kgあたり1mg~5000mg、好ましくは10mg~1000mgの範囲より適宜選択することができる。含ホウ素化合物とアミノ酸の投与量の比率は特に限定されないが、含ホウ素化合物1重量部に対し、アミノ酸を0.1~1000重量部、好ましくは1~100重量部程度とすることができる。
 アミノ酸の投与方法は、含ホウ素化合物が細胞内に取り込まれる段階でアミノ酸が血液中に併存するように投与することが好ましい。アミノ酸は、含ホウ素化合物を投与する前に投与してもよいし、含ホウ素化合物を投与した後に投与してもよいし、あるいは含ホウ素化合物と一緒に投与してもよい。例えば、含ホウ素化合物を投与する0(同時投与)~1時間前から投与を開始することができる。
 本方法において、アミノ酸輸送系阻害剤の投与量は、癌の種類、癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量、用いるアミノ酸輸送系阻害剤の種類、T/N比等の要因に応じて適宜変更されるが、10μg/m~1000mg/mの範囲より適宜選択することができる。例えば、アミノ酸輸送系阻害剤がJPH203である場合には、5mg/m~500mg/m、好ましくは10mg/m~200mg/mの範囲より適宜選択される量にて用いることができる。
 アミノ酸輸送系阻害剤の投与方法は、標的部位である癌細胞に含ホウ素化合物を効率よく蓄積させる方法であれば特に限定されず、用いるアミノ酸輸送系阻害剤の標的や種類に応じて適宜決定することができる。用いるアミノ酸輸送系阻害剤が癌細胞におけるアミノ酸輸送系を阻害することを目的とするものであれば(例えば、LAT-1に対するアミノ酸輸送系阻害剤)、癌細胞に取り込まれた含ホウ素化合物の量が最大又はその付近となる段階で阻害剤の効果が得られるように投与することが好ましい。例えば、含ホウ素化合物を癌細胞に投与した後で、少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を投与することが好ましい。この段階は標識された含ホウ素化合物を用いたPETを事前に行い、癌細胞における標識された含ホウ素化合物の蓄積量の経時的変化を調べることによって決定することができる。例えば、対象となる癌細胞が、含ホウ素化合物の投与直後から癌細胞内の含ホウ素化合物の量が上昇して、投与から所定の時間(例えば投与後180分間)までに一定の値に到達する特性を有するタイプ(タイプI)である場合、含ホウ素化合物と少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤との投与間隔は、癌細胞内の含ホウ素化合物の量が一定の値に到達するまでの時間の範囲内で適宜設定することができる。或いは、対象となる癌細胞が、含ホウ素化合物の投与直後から癌細胞内の含ホウ素化合物の量が上昇するものの、一定時間の経過後に低下する特性を有するタイプ(タイプII)である場合、含ホウ素化合物と少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤との投与間隔は、癌細胞内の含ホウ素化合物の量が最大値に到達する時間から最小値に到達するまでの時間の範囲内で適宜設定することができる。この場合、投与間隔は、20~180分間の範囲であることが好ましく、20~90分間の範囲であることがより好ましい。また、用いるアミノ酸輸送系阻害剤が正常細胞におけるアミノ酸輸送系を阻害することを目的とするものであれば(例えば、LAT-2に対するアミノ酸輸送系阻害剤)、含ホウ素化合物が細胞内に取り込まれる段階で阻害剤の効果が得られるように投与することが好ましい。例えば、アミノ酸輸送系阻害剤が血液中に併存するように含ホウ素化合物を投与する0(同時投与)~1時間前から投与を開始することができる。また、いずれのタイプのアミノ酸輸送系阻害剤であっても、必要であれば含ホウ素化合物の投与終了後及び/又は熱中性子又は熱外中性子あるいは混合ビーム照射の最中に、さらにアミノ酸輸送系阻害剤を投与してもよい。
 熱中性子又は熱外中性子あるいは混合ビームの照射は、BNCTにおいて一般的に実施される手法を用いて行うことができる。熱中性子線の中性子源として原子炉を用いて行うことができる。原子炉としては、例えば、京都大学付属原子炉実験所及び日本原子力研究開発機構の原子炉を中性子捕捉療法(BNCT)のために利用することができる。また、病院内にて設置・利用が可能な中性子源用小型加速器を利用してもよい。
 熱中性子又は熱外中性子あるいは混合ビームの照射は、正常組織に障害が発生しないように、血清中の含ホウ素化合物の濃度が低く、かつ高いT/N比を有する段階にて行うことができる。
 一般的に、血清中の含ホウ素化合物の濃度は癌患者に投与してから一定時間経過後にピークとなり、投与終了後、急激に低下する。癌組織に取り込まれる含ホウ素化合物の量は投与から20~40分の間に最大又はその付近となり、その後徐々に低下する。正常組織に取り込まれる含ホウ素化合物の量は投与後から徐々に増加する(Y.Imahori et al.,1998,上掲)。含ホウ素化合物の挙動は、18Fで標識したFBPAを用いたPET検査により評価することができ、この検査により、例えば、血清中の含ホウ素化合物の濃度(18F(cps/mL))が癌組織に取り込まれた含ホウ素化合物の量(18F(cps/mL))の80%以下、70以下、60%以下、50%以下、又は40%以下であって、かつT/N比が2又はそれ以上、3又はそれ以上、4又はそれ以上、5又はそれ以上、6又はそれ以上、8又はそれ以上、あるいは、10又はそれ以上となるタイミングにて前記照射を行うことができる。
 以下、本方法において特に好ましい実施形態の一例を説明する。
 本方法において、含ホウ素化合物としてBPAを使用し、BPAを投与する0~30分前からフェニルアラニン及び/又はチロシンを含むアミノ酸輸液の静脈内投与を開始する。BPA投与後20分~1時間安静にし、BPAを癌細胞に取り込ませる。アミノ酸輸液の静脈内投与に加えて、又は代えて、癌細胞又は癌組織に取り込まれた含ホウ素化合物の量が最大又はその付近となる段階に(例えば、BPA投与終了後から0~90分後、好ましくは0~60分後、より好ましくは20~40分後)、LAT-1に対するアミノ酸輸送系阻害剤の静脈内投与を開始する。その後(例えば、アミノ酸輸送系阻害剤を投与してから10~20分後)、熱中性子又は熱外中性子あるいは混合ビームを照射する。熱中性子線を照射するときは、前記アミノ酸輸液及び/又は前記アミノ酸輸送系阻害剤の投与を継続していてもよいし、中止してもよい。
 従来、BNCTは、同一の癌患者に対して通常1回しか行われていない。一般的に、BNCTの実施によって破壊された癌細胞周辺には、含ホウ素化合物の取り込み能が高いマクロファージ等の貪食細胞が滲出する。この状態で2度目のBNCTを実施した場合、貪食細胞に対する放射線障害を生じ得る。このため、複数回のBNCTの実施は実質的に不可能とされていた。
 一方、本方法によれば、癌細胞の含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させることができ、癌細胞以外の細胞(正常細胞、マクロファージ等の貪食細胞等)における含ホウ素化合物の取り込み及び蓄積を抑制することができ、これらの細胞を放射線障害から予防することができる。これによって、同一の癌患者に対して複数回のBNCTの実施が可能となり、より効果的な治療の実施を可能とする。
 また、本方法によれば、含ホウ素化合物を癌細胞内に保持し得ることから、BNCTにおける熱中性子又は熱外中性子あるいは混合ビームの照射開始時期を遅延させることができる。上記のように、一般的に、血清中の含ホウ素化合物の濃度は癌患者に投与してから一定時間経過後にピークとなり、投与終了後、急激に低下する。このため、本方法において、熱中性子又は熱外中性子あるいは混合ビームの照射開始時期を遅延させることにより、BNCTによる血管内皮への障害の発生を実質的に減少させ、癌に対する治療効果を実質的に向上させることができる。さらに、腫瘍の大きさ及び/又は局在等の要因により、熱中性子又は熱外中性子あるいは混合ビームの照射時間を長くする必要がある癌患者に対してBNCTを適用する場合、本方法により、含ホウ素化合物を追加投与することなく、単回投与によって所定の治療効果を得ることができる。
<3.PET又はMRIに用いられる診断剤又はキット>
 本発明は、標識された含ホウ素化合物と、癌細胞における当該標識された含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させるために用いられる、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を含む、PET又はMRIにより癌を診断するための診断剤又は診断キットに関する。
 本発明において「癌を診断する」とは、癌細胞及び癌組織を検出すること、並びに/あるいは癌細胞及び癌組織における含ホウ素化合物の蓄積量を評価することを意味する。
 本発明において「標識された含ホウ素化合物」とは、PET又はMRIにおいて検出可能なものであればよく、例えば、上記「1.組成物又はキット」に記載したホウ素置換基を有する芳香族アミノ酸がさらにポジトロン核種で標識された化合物を利用することができ、好ましくは18Fで標識されてなるBPA(例えば、FBPA)である。あるいは、本発明において「標識された含ホウ素化合物」として、CTにおいて検出可能なものも同様に利用することができる。
 本発明において「少なくとも1種のアミノ酸」としては、上記「1.組成物又はキット」に記載したものを利用することができる。例えば、上記標識された含ホウ素化合物が標識されたBPAである場合、使用するアミノ酸には、フェニルアラニン及び/又はチロシンを含めることが好ましい。
 本発明において「少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤」としては、上記「1.組成物又はキット」に記載したものを利用することができる。例えば、L型アミノ酸トランスポーターー1(LAT-1)に対するアミノ酸輸送系阻害剤を利用することができ、好ましくはJPH203及び/又はBCHを利用することができる。
 本発明に係る診断剤には、上記標識された含ホウ素化合物、並びに、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤に加えて、医薬品の製造において通常用いられている少なくとも1種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、上記「1.組成物又はキット」に記載したものを利用することができ診断剤の形態・剤型に応じて適宜選択することができる。
 本発明に係る診断剤は、標識された含ホウ素化合物、選択されたアミノ酸及び/又は選択されたアミノ酸輸送系阻害剤、並びに場合により少なくとも1種の添加剤を一緒にして一つの組成物中に配合した形態であってもよいし、あるいは、標識された含ホウ素化合物、選択されたアミノ酸及び/又は選択されたアミノ酸輸送系阻害剤、並びに場合により少なくとも1種の添加剤をそれぞれ別個の組成物とし、各組成物を別個に収容して組み合わせた診断キット又は組み合わせ(例えば医薬組み合わせ)の形態であってもよい。
 診断剤の剤型は特に限定されないが、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、輸液等とすることができる。標識された含ホウ素化合物、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤、並びに場合により少なくとも1種の添加剤がそれぞれ別個の組成物である場合には、各組成物は同一の形態であってもよいし、それぞれ異なる形態であってもよい。例えば、標識された含ホウ素化合物は注射剤又は輸液剤とし、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤は輸液剤又は注射剤とすることができる。
 本発明の診断剤又はキットは、PET又はMRIにより癌を診断するための方法において利用することができる。あるいは、本発明の診断剤又はキットは、CTにより癌を診断するための方法においても同様に利用することができる。本方法は、標識された含ホウ素化合物、並びに少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を投与して、癌細胞における標識された含ホウ素化合物の蓄積量を向上させた後、当該標識された含ホウ素化合物を検出する工程を含む。
 本方法において診断可能な癌としては、固形癌、浸潤癌、放射線治療再発癌等が挙げられ、具体的には、中皮腫、乳癌、脳腫瘍、黒色腫、頭頚部腫瘍、神経膠腫、胃癌、肺癌、肝臓癌、炎症性乳癌、膵臓癌、胆管癌、大腸癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌、卵管癌、膣癌、外陰癌、絨毛癌、転移性癌、リンパ節転移癌、悪性黒色腫等が挙げられるが、これらに限定はされない。
 本方法において、標識された含ホウ素化合物の投与量は、「院内製造されたFDGを用いてPET検査を行うためのガイドライン」(日本核医学界、核医学,38,131-137,2001)に準じて、適宜選択することができる。
 標識された含ホウ素化合物の投与方法は、上記「2.治療剤又はキット」に記載した含ホウ素化合物と同様に投与することができる。
 本方法において、アミノ酸の投与量は、癌の種類、癌細胞における標識された含ホウ素化合物の蓄積量、T/N比等の要因に応じて適宜変更されるが、成人1回体重1kgあたり1mg~5000mg、好ましくは10mg~1000mgの範囲より適宜選択することができる。標識された含ホウ素化合物とアミノ酸の投与量の比率は特に限定されないが、含ホウ素化合物1重量部に対し、アミノ酸を0.1~1000重量部、好ましくは1~100重量部程度とすることができる。
 アミノ酸の投与方法は、標識された含ホウ素化合物が細胞内に取り込まれる段階でアミノ酸が血液中に併存するように投与することが好ましい。アミノ酸は、標識された含ホウ素化合物を投与する前に投与してもよいし、標識された含ホウ素化合物を投与した後に投与してもよいし、あるいは標識された含ホウ素化合物と一緒に投与してもよい。例えば、標識された含ホウ素化合物を投与する0(同時投与)~30分前から投与を開始することができる。
 本方法において、アミノ酸輸送系阻害剤の投与量は、癌の種類、癌細胞における標識された含ホウ素化合物の蓄積量、T/N比等の要因に応じて適宜変更されるが、10μg/m~1000mg/mの範囲より適宜選択することができる。例えば、アミノ酸輸送系阻害剤がJPH203である場合には、5mg/m~500mg/m、好ましくは10mg/m~200mg/mの範囲より適宜選択される量にて用いることができる。
 アミノ酸輸送系阻害剤の投与方法は、標的部位である癌細胞に標識された含ホウ素化合物を効率よく蓄積させる方法であれば特に限定されず、用いるアミノ酸輸送系阻害剤に応じて適宜決定することができ、上記「2.治療剤又はキット」に記載されるアミノ酸輸送系阻害剤と同様に投与することができる。必要であれば標識された含ホウ素化合物の投与終了後にさらにアミノ酸輸送系阻害剤を投与してもよい。
 標識された含ホウ素化合物の検出は、用いた標識に応じて、PET又はMRIにおいて一般的に実施される手法を用いて行うことができる。NMR核種であるホウ素原子は、MRIによりその集積又は蓄積を検出することができる。あるいは、CTにおいて検出可能な標識の場合も、標識された含ホウ素化合物の検出は、CTにおいて一般的に実施される手法を用いて行うことができる。
 以下、本方法において特に好ましい実施形態の例を説明する。
 本方法において、標識された含ホウ素化合物としてFBPAを使用し、FBPAを投与する0~30分前からフェニルアラニン及び/又はチロシンを含むアミノ酸輸液の静脈内投与を開始する。FBPA投与後20分~1時間安静にし、FBPAを癌細胞に取り込ませる。アミノ酸輸液の静脈内投与に加えて、又は代えて、癌細胞又は癌組織に取り込まれたFBPAの量が最大又はその付近となる段階に(例えば、FBPA投与終了後から0~90分後、好ましくは0~60分後、より好ましくは20~40分後)、LAT-1に対するアミノ酸輸送系阻害剤の静脈内投与を開始する。その後、FBPAの検出を行い、当該FBPAの集積の有無を指標にして癌の検出を行い、あるいは/並びに、当該FBPAの蓄積量を評価する。FBPAの検出に際しては、前記アミノ酸輸液及び/又は前記アミノ酸輸送系阻害剤の投与を継続していてもよいし、中止してもよい。
 本方法によれば、癌細胞における標識された含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させることができ、正常細胞やマクロファージ等の貪食細胞における標識された含ホウ素化合物の取り込み及び蓄積を抑制することができる。これによって、PET又はMRIによる癌の検出を容易にし、より精度の高い癌の診断を行うことを可能とする。また、本方法は、CTによる癌の検出においても同様に適用でき、CTによる癌の検出を容易にし、より精度の高い癌の診断を行うことを可能とする。
 また、本方法にて利用される標識された含ホウ素化合物は、標識されていない含ホウ素化合物の類似体であり、両者は同じ体内動態を示す。したがって、本方法によれば、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤との併用における含ホウ素化合物の体内動態(例えば、T/N比等)を推定することができる。これにより、上記「2.BNCTに用いられる治療剤又はキット」に記載されるBNCTを行う際に必要とされる含ホウ素化合物の薬物動態を調べることができ、個々の症例に適したBNCT治療計画を得ることができる。
 以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことは言うまでもない。
 BNCTの有効成分であるBPAは癌細胞及び正常細胞に対し同様な割合で少なくとも500mg/kgまで取り込まれることが知られている(Advances in the control of human cutaneousprimary and metastatic melanoma by thermal neutron capture therapy,Y.Mishima et al.,KURRI Technical Report,Vol.357,1-6,1991)。
(実施例1)
 悪性黒色腫の転移性脳腫瘍(脳下垂体及び側脳室壁)を発症した24歳の男性に対して、表2に示した組成の総合アミノ酸製剤注射液(200ml)の点滴投与(約4ml/min)を開始した。点滴開始から5分後にFBPA 5ml(158MBq)を静脈注射し、30分間暗室にて安静にした。その後、PETを実施した。なお、アミノ酸輸液の点滴はPETが終了するまで行い、160ml投与した。
(比較例1)
 アミノ酸輸液の点滴投与を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてFBPA(155MBq)を投与し、PETを実施した。18Fで標識されたFBPAをアミノ酸の存在下(実施例1)及び非存在下(比較例1)に投与したときの脳腫瘍組織及びその周辺部におけるPET画像を図1に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 表1及び図1の結果からわかるように、比較例1と比較して、実施例1ではPET値が腫瘍組織で高く、正常組織では低いことがわかる。また、T/N比も約1.5倍上昇した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
(実施例2)
 癌細胞実験系における集積された10BPAのLAT-1阻害剤による細胞外流出阻害効果の検討
 ヒトバーキットリンパ腫細胞(JCRB9119、Ramos(RA1))を、1×10個の細胞数となるように細胞培養フラスコに播種した。10BPAを含む溶液を細胞に添加し、1.5時間インキュベートした。次いで、LAT-1阻害剤であるBCHを含むPBS溶液を上記の細胞に添加し、全体の溶液の最終濃度が5mMとなるように調整して、20分間インキュベートした。対照群では、BCHを含むPBS溶液に代えて、同量のPBSを細胞に添加し、同条件でインキュベートした。細胞をPBSで洗浄した。洗浄した細胞を、過酸化水素及び過塩素酸を用いて灰化処理した。灰化処理した試料に含まれる10Bを、ICP-AESを用いて定量した。Ramos(RA1)細胞を灰化処理した試料に含まれる10Bの定量結果を図2に示す。
 細胞を灰化処理した試料に含まれる10Bの量は、10BPAの添加によって細胞に取り込まれた10Bの量を表すと考えられる。図2に示すように、Ramos(RA1)細胞の場合、10BPAの添加後にBCHを添加することにより、BCH非添加の対照群と比較して、細胞に取り込まれた10Bの量が顕著に増大した。前記結果より、LAT-1阻害剤であるBCHは、癌細胞に集積された10BPAの細胞外への流出阻害効果を有することが示された。
 使用する細胞をヒト唾液腺細胞(HSG)に代えた他は前記と同様の手順で、HSG細胞に集積された10BPAのLAT-1阻害剤による細胞外への流出阻害効果を調査した。HSG細胞を灰化処理した試料に含まれる10Bの定量結果を図3に示す。
 図3に示すように、HSG細胞の場合も、10BPAの添加後にBCHを添加することにより、BCH非添加の対照群と比較して、細胞に取り込まれた10Bの量が顕著に増大した。
 BCHによる10BPAの細胞外への流出阻害効果は、対象となる細胞の種類によって様々であった。例えば、HSG細胞の場合、Ramos(RA1)細胞の場合と比較して、BCHによる10BPAの細胞外への流出阻害効果がより顕著に発現した(図2及び3)。HSG細胞は、LAT-1の発現量が多い一方で、BPAに対する親和性が低いことが知られている。このため、HSG細胞の場合、対照群では、高発現したLAT-1の作用により細胞に取り込まれた10Bの量が低くなるのに対し、BCH添加群では、LAT-1の作用が阻害されることにより、対照群と比較して細胞に取り込まれた10Bの量が高くなったと考えられる。
 様々な進行癌の患者に18FBPAを投与して、PETにより検査を行った場合における腫瘍/血液の放射活性比の経時変化を図4に示す。図4に示すように、通常の癌患者の場合、18FBPAの投与後、腫瘍/血液の放射活性比は上昇して、投与から180分間までに一定の値に到達した(タイプI)。これに対し、ある種の癌患者の場合、18FBPAの投与後、腫瘍/血液の放射活性比は上昇するものの、一定時間の経過後に低下した(タイプII)。タイプIIの癌患者は、進行癌の患者群全体の2~3割で観察された。
 進行癌の患者にBNCTを適用する場合、タイプIIの患者では、投与した10BPAが癌細胞内に蓄積されず、細胞外に流出する可能性がある。このような患者に対し、本実施例で示された10BPA及びLAT-1阻害剤の併用投与を適用する場合、LAT-1阻害剤による10BPAの細胞外への流出阻害効果によって、10BPAを癌細胞内に保持し得ると考えられる。
 本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。

Claims (13)

  1.  癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させるために用いられる、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を含む組成物又はキット。
  2.  含ホウ素化合物が、含ホウ素置換基を含む芳香族アミノ酸、又は標識された含ホウ素置換基を含む芳香族アミノ酸である、請求項1に記載の組成物又はキット。
  3.  少なくとも1種のアミノ酸が芳香族アミノ酸を含む、請求項1又は2に記載の組成物又はキット。
  4.  少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤がL型アミノ酸トランスポーター-1(LAT-1)阻害剤を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
  5.  含ホウ素化合物と、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤とを含む、癌を中性子捕捉療法(BNCT)により治療するための治療剤又はキット。
  6.  含ホウ素化合物が含ホウ素置換基を含む芳香族アミノ酸である、請求項5に記載の治療剤又はキット。
  7.  さらに、メルカプトウンデカハイドロドデカボレート(BSH)、ホウ素10を含むリポソーム、ガドリニウム、又はポルフィリン化合物を含む、請求項5又は6に記載の治療剤又はキット。
  8.  標識された含ホウ素化合物と、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を含む、ポジトロン断層法(PET)又は核磁気共鳴画像法(MRI)により癌を診断するための診断剤又はキット。
  9.  標識された含ホウ素化合物が標識された含ホウ素置換基を含む芳香族アミノ酸である、請求項8に記載の診断剤又はキット。
  10.  含ホウ素化合物、並びに、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を癌細胞における含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させる有効量で投与し、癌細胞における該含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させた後、該癌細胞に熱中性子又は熱外中性子あるいは混合ビームを照射して該癌細胞を殺傷する工程を含む、中性子捕捉療法(BNCT)により癌を治療するための方法。
  11.  少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤が、L型アミノ酸トランスポーター-1(LAT-1)阻害剤であり、有効量の含ホウ素化合物を投与した後で、有効量の少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を投与する、請求項10に記載の方法。
  12.  標識された含ホウ素化合物、並びに、少なくとも1種のアミノ酸及び/又は少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を癌細胞における標識された含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させる有効量で投与し、癌細胞における該標識された含ホウ素化合物の蓄積量を選択的に向上させた後、該標識された含ホウ素化合物を検出する工程を含む、ポジトロン断層法(PET)又は核磁気共鳴画像法(MRI)により癌を診断するための方法。
  13.  少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤が、L型アミノ酸トランスポーター-1(LAT-1)阻害剤であり、有効量の標識された含ホウ素化合物を投与した後で、有効量の少なくとも1種のアミノ酸輸送系阻害剤を投与する、請求項12に記載の方法。
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