JP6253008B2 - 高分子化ホウ素化合物及びその使用 - Google Patents

高分子化ホウ素化合物及びその使用 Download PDF

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Description

本発明は、高分子化ホウ素化合物およびその使用に関し、より具体的には、分子中に複数のホウ素イオンクラスター等の低分子ホウ素化合物を担持したブロック共重合体及びその医療分野での使用に関する。
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:boron neutron capture therapy)10B核と熱中性子線の捕捉反応によって生じるα粒子及びLi粒子によって癌組織を殺傷する放射線療法の一形態である。この療法は化学療法と放射線療法の両方の原理をうまく利用し、細胞選択的に照射を可能にする、いわば次世代放射線療法として注目されている。この療法を効果的に実施するためには、癌組織への集積製が向上し、かつ、毒性の低減したホウ素化合物を提供する必要がある。
このような観点から、低分子化合物のボロカプテイト(BSH:mercaptoundecahydrododecaborate)とボロノフェニルアラニン(BPA)を併用する療法が現在臨床に利用されているが、これらの薬剤は腎臓から速やかに排泄されてしまうため、より癌組織への集積性を上げる工夫が必要である。また、BSH等を封入したリポソーム(非特許文献1、非特許文献2参照)、脂質またはPEG化脂質をかご状のホウ素イオンクラスター(nido型カルボラン等)に共有結合させることで安定なリポソームを形成するというイオン性ホウ素クラスター脂質(非特許文献3、非特許文献4参照)も提案されている。しかし、封入されたホウ素化合物が漏れ出す傾向や毒性の問題があることが示唆されている。一方で、ホウ素リッチの化合物を提供するために適当な官能基で修飾したカルボランをデンドリマーのフレーム構造中に共有結合せしめた化合物や、重合性カルボラン含有モノマーを重合せしめた線状ブロック共重合体や、カルボラン機能化スチレンモノマーの重合、次いで該カルボラン上でデンドリマーを成長せしめたポリマー構築物や、さらには、シリル保護オキソノルボルネンイミドカルボランとBoc保護オキソノルボルネンイミドアミドのコポリマーも提案されている(非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7参照)。しかし、これらの高分子化ホウ素化合物も血流中でカルボランが漏出し、また、これらから形成される高分子ミセルはブロックの解離によりミセルの崩壊が起こる傾向にある。一方で、本発明者等と一部共通する発明者等は、親−疎水性ブロック共重合体であって、疎水性セグメントの末端に重合性基を担持する、共重合体のポリマーミセル中に重合可能な二官能性カルボランまたは単官能性カルボランを封入した後、各重合性基を重合せしめポリマーミセル中にカルボランが共有結合した構造物を提案した(特許文献1もしくは非特許文献8、非特許文献9参照)。これらの構造物は、癌組織へホウ素化合物を高濃度で集積させることが可能であり、かつ、高い生体適合性を有することが知られている。
特開2011−63562
Yanagie H. et al., Br.J.Cancer,63,522−526(1991) Shelly K. et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,9039−9043(1992) Nakamura H. et al., Chem Commun 7:1910−1911(2004) Maruyama K. et al., J.Controlled Release 98:195−207(2004) Matthew C. et al., Macromol.Symp.196,201−211(2003) S.Rahima Benhabbour et al., Macromolecules,published on Web 07/04/2007 PAG EST:10.1 Simon Y. Macromolecules,published on Web.07/06/2007 PAGE EST:2.6 Sumitani S. et al., React Funct Polym 71,684−693(2011) Sumitani S. et al., Biomaterials 33,3568−3577(2012)
上記のとおり、従来技術では、それぞれ所期の目的を達成可能な各種修飾ホウ素化合物が提供されているが、未だ、血中滞留性、腫瘍集積性、及び/または各構築物もしくはポリマーミセル中に装填できるホウ素化合物の含有量の点で、必ずしも満足できるものでない。したがって、本発明では、前記特性のより優れた高分子化ホウ素化合物を提供することを目的とする。
本発明者等は、ポリエチレングリコール−b−ポリクロロメチレンスチレン(PEG−b−PCMA)ブロック共重合体のクロロメチレン基を介してホウ素イオンクラスターを共有結合せしめた高分子ホウ素化合物が、それ自体水性媒体中でポリマーミセルを形成するか、或は適当なポリカチオン荷電性化合物と組み合わさってポリイオン複合体(PIC)ミセルを形成すること、並びにこうして形成したポリマーミセルは血中滞留性及び腫瘍集積性に優れ、かつ、高含有量のホウ素化合物を装填し得ることを見出した。さらに、PICを形成する際に、ポリカチオン荷電性化合物として特定のブロック共重合体を選択すると、BNCTにおいて、通常、中性子照射により活性酸素が発生し、炎症を引き起こすため正常組織にも悪影響を与えてしまうことがあるが、このような悪影響を低減または無くすることができる。
したがって、本発明は、上記の課題を解決するための手段として、下記式Iで表される高分子化ホウ素化合物を提供する。
式中、Aは、非置換または置換C−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基または式RCH−の基を表し、ここで、R及びRは独立して、C−CアルコキシまたはRとRは一緒になって−OCHCHO−、−O(CHO−もしくは−O(CHO−を表し、
は、結合または連結基を表し、
は、結合または連結基を表し、
Xは、Xの総数であるnの少なくとも3%が次の式(a)、(b)及び3種の(c):
からなる群より選ばれるホウ素化合物の残基であり、Xが前記残基以外である場合には、当該Xは水素原子、ハロゲン(例えば、クロロ、ブロモ)原子またはヒドロキシル基であり、
該式中、
mは、15〜10,000の整数を表し、そして
nは、3〜3,000の整数を表す。
また、前記ホウ素化合物残基が、アニオン荷電性である場合、式Iの化合物とポリカチオン荷電性化合物、特に、下記式IIで表されるポリカチオンを含んでなる複合体も提供する。
式中、Aは、非置換または置換C−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基または式RCH−の基を表し、ここで、R及びRは独立して、C−CアルコキシまたはRとRは一緒になって−OCHCHO−、−O(CHO−もしくは−O(CHO−を表し、
は、結合または連結基を表し、
は、−CH−NH−または−CH−NH−CH−を表し、
Yは、Yの総数であるnの少なくとも50%は2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル及び2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、Yが前記残基以外である場合には、−L−Yがメチル、ハロゲン化メチルまたはヒドロキシメチル基であり、
mは、15〜10,000の整数を表し、そして
nは、3〜3,000の整数を表す。
本発明の式Iで表されるポリエチレングリコール-ポリ(ホウ素イオンクラスターを担持するスチレン)ブロック共重合体、特に、ポリエチレングリコール−ポリ(ボロカプテイト担持スチレン)共重合体と式IIで表されるカチオン荷電性化合物のポリイオン複合体(PIC)は、水性媒体中で安定なミセルを形成し、優れた血中滞留性を示し、血中に投与すると高効率に腫瘍に集まる特性を有する。こうして腫瘍に集積したPICは中性子線照射を行うことで効果的に癌細胞を殺傷することができる。また、前記PICでは、式IIで表されるポリカチオン荷電性化合物が通常有する機能である、活性酸素種や反応性ラジカル種(ROS)の消去能が保持されるため、通常、中性子照射により発生するROSによる炎症等が抑制され得、BNCTによる予後が良く、高い治療効果が期待できる。特定の態様の本発明の構成及び作用を発揮するための概念図を図1に示す。
<発明の詳細な記述>
本明細書で用いる各種用語は、特記しない限り、当該技術分野で通常に使用されている意味を有する。本発明に関して、例えば、ホウ素イオンクラスターを担持するスチレンまたはボロカプテイト担持スチレン等における、「担持する」もしくは「担持」、または「結合」という場合には、該当する基または化合物部分が共有結合によって結合していることを意味する。
カチオンまたはアニオン荷電性基にいう,「荷電性」は、式Iまたは式IIの化合物を水性媒体に溶解または分散させた場合に、それぞれ相当するイオンの電化を有し得る基ま
たは部分を意味する。
式IのL及びLについて定義された「連結基」は、上述した本発明の効果を損なわないものである限りいかなる二価の基であることもできるが、Lについては、(CHS、(CHS(CH、(CHNH、(CHNH(CH、(CHNHCO、(CHNHCO(CH、−(CHNHC(=S)NH、(CHNHC(=S)NH(CH−、(CHNHC(=O)NH、(CHNHC(=O)NH(CH、(CHOCO、(CHOCO(CH、(CHO、(CHO(CH、(CHからなる群より選ばれ、ここでc及びdは独立して整数1〜5、好ましくは2〜4であり、より好ましくは2である。これらは、主として、ポリエチレングリコールセグメントとポリ(ホウ素イオンクラスターを担持するスチレン)セグメントの連結方法に依存して変動する。一方、Lについては、CH、CONH、NHCO、NHCO(CH2(CHCHO)(CH)NHCO(CNO)等を挙げることができる。ここでeは1〜12の整数である。
Xは、Xの総数であるnの少なくとも,3%、好ましくは10%、より好ましくは20%、最も好ましくは30%以上であることができる。また、Xが式(a)または(b)で表される場合、当該残基はアニオン荷電性を示し、上述したとおりカチオン荷電性化合物とPICを形成することができる。本明細書において残基という場合、式(a)及び(b)等を例に挙げれば、相当するホウ素イオンクラスターの分子から、水素原子等の小部分が脱離した残りの部分を意味する。式(a)で表される残基がより強いアニオン荷電性を示すので、PICを形成する上ではより好ましい。
式Iのmは、一般に、整数15〜10,000であり、好ましくは20〜1000であり、より好ましくは40〜500であり、最も好ましくは100〜300である。nは、一般に、整数3〜3,000であり、好ましくは5〜40であり、より好ましくは6〜30であり,最も好ましくは7〜20である。
前記カチオン荷電性化合物は、当該技術分野で例えば、核酸とPICを形成できることが知られている化合物であって、場合によりPEG化されていてもよい、ポリ(L−リシン)、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等であることができる。PEG化されている場合のPEGの分子量は、上記式Iまたは式IIのmで表される反復単位数であるものの換算値であることができ、カチオン荷電性基の数は式IIのホウ素化合物残基の数に相当するものであることができる。
本発明者等の一部によって提供された、式IIで表されるブロック共重合体は、式Iのブロック共重合体とポリマー主鎖においてほぼ共通する構造を有し、式Iで表される高分子化ホウ素化合物と水性媒体中で安定なPICを形成し、各共重合体における、ポリエチレングリコールセグメントを外殻またはシェルとし、イオン結合部分またはホウ素イオンクラスターもしくは環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を担持するポリマー鎖セグメントをコアとするミセルをもたらすものと理解されている。水性媒体中でポリエチレングリコールセグメントは易可溶性であり,かつ超可動性である一方で、後者のポリマーセグメントは難溶性もしくは不溶性であるため,前記ミセルは水性媒体中で安定である。かような安定なミセルを形成するためには、式IのYのホウ素化合物残基と式IIのLのイミノ基の比は、2:1〜1:8、好ましくは1.5:1〜1:6,より好ましくは1:1〜1:4であることができる。本発明のミセルに関して、「ナノ粒子」という場合、水性媒体中の該当するミセルを動的光散乱法により粒経を測定したとき、粒経がナノメーターオーダー内にあることを意味する。
上記または本発明に関していう「水性媒体」は、水、特に脱イオン水もしくは純水、生理食塩水、適当な緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液)で緩衝化された水溶液、さらには、水混和性の有機溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等)の混和溶液であることができる。
式IIで表されるポリカチオン荷電性化合物は、WO 2009/133647A1または特開2012−111700公報に記載されており、それ自体公知である。これらの特許文献はここに引用することによりそれらの内容が本明細書の内容となる。
式IIにおける、A、L、m及びnは、式Iについて定義したのと同義であり、Lは−CH−NH−または−CH−NH−CH−であり、Yは好ましくは、次式
で表され、ここで、R’はメチル基を表す。
式Iで表される高分子化ホウ素化合物は、例えば、対応する、PEG−b−ポリ(クロロメチルスチレン)共重合体のクロロメチル基を介して、必要により適当な官能基を担持させたホウ素イオンクラスター(Nakamura H. et al., Org.Biochem.,10,1374−1380(2010), Mier,W. et al., Z.Anorg.Allg.Chem.630,1258−1262,(2004))をそれ自体公知の縮合または置換反応を用いて結合させることにより製造できる。かような反応条件を変えることによりn個の反復単位中のXにおけるホウ素化合物残基の含有量を調整できる。出発原料の共重合体は、上記WO 2009/133647A1に記載の方法により取得できる。また別法としては、前記共重合体の製造に際して用いるポリ(クロロメチルスチレン)部分へのホウ素化合物の導入の代わりに、クロロメチルスチレンモノマーのクロロメチル基を介して予めホウ素化合物残基を導入した修飾モノマー使用する重合反応をおこなうことにより式Iの高分子化ホウ素化合物を製造することができる。
こうして製造できる式Iの高分子化ホウ素化合物の中のアニオン荷電性化合物と式IIのカチオン荷電性化合物のポリイオン複合体(PIC)は、水性媒体中で静電相互作用によりポリイオンコンプレックスを形成することにより調製できる。かようなPICの製造に際し、これらの化合物は会合して分子集合体たるミセルを形成し得る。かようなミセル形成の可否は、動的光散乱法による粒径測定装置等を用いて、その粒径を測定することにより、確認できる。
式Iの高分子化ホウ素化合物は、それ単独で、またはそれと式IIのカチオン荷電性化合物とのPICとの組み合わせで、当該技術分野で通常使用されている生理的に許容され得る賦形剤または希釈剤とともに製薬学的製剤を調製することができる。
かような賦形剤または希釈剤は、限定されるものでないが、上述した緩衝化生理食塩水等の水性媒体であることができ、また、前記ミセルは、例えば、凍結乾燥した状態で、賦形剤、例えば、単糖(スクロース、グルコース等)、二糖(ラクトース等)、還元糖、多
糖(デンプン等)、糖アルコール(ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、)等との混合物の状態で適当な製薬学的製剤を調製するのに使用できる。これらは、非経口剤として調製するのが好ましい。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下もしくは筋肉内への投与、または局所への包埋することにより実施できる。
本発明の特定の態様の構成及び作用を示す概念図 製造実施例1で得られたPEG−b−PMBSHの1H NMRのスペクラムである。 試験1によるPICミセルの血中滞留性および腫瘍集積性評価の結果を示すグラフである。 試験2による中性子線照射後の癌組織のサイズの推移(左図)及びマウスの体重の変化(右図)を示すグラフである。図中、(-◆-)が本発明による処置を表し、(-△-)が従来の技術を用いた処置を表す。
以下、本発明について具体例を参照しながらより詳細に説明するが、本発明をこれに限定することを意味するものでない。
製造参考例1:ポリエチレングリコール-b-ポリクロロメチルスチレン(PEG−b−PCMS)ブロック共重合体の合成
片末端にチオール基を有している4gポリエチレングリコール(MeO−PEG−SH、Mn:5000)及び66mgアゾビスイソブチロニトリルを反応容器に加えた。次に、反応容器中を真空にした後、窒素ガスを吹き込む操作を3回繰り返すことにより、反応容器内を窒素で満たした。反応容器に20mlトルエンと2mlクロロメチルスチレン(CMS)を加え、60℃まで加熱し、24時間攪拌した。反応混合物をポリクロロエチルスチレン(PCMS)に対して良溶媒であるジエチルエーテルを用いて3回洗浄操作を行った後、ベンゼン凍結乾燥を行い、4.274g目的の化合物を得た。
製造参考例2:ニトロキシラジカルを有するブロック重合体(PEG−b−PMNT)の合成
反応容器中で、2.67gPEG−b−PCMSを102.64mlジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、2.716g(4−amino−TEMPO)を溶解させたDMSO30.86mlを加え、室温で10時間攪拌を行った。反応終了後、反応混合物は2-プロパノールを用いて3回洗浄操作を行った後、ベンゼン凍結乾燥を行い、2.74g目的の化合物を得た。
製造実施例1:ボロンを含有するブロック重合体(PEG−b−PMBSH)の合成
反応容器に、2gBSH(メルカプトウンデカヒドロドデカボレート)及び228.58mg水素化ナトリウム(NaH)を加えた。次に、300ml反応容器中を真空にした後、窒素ガスを吹き込む操作を3回繰り返すことにより、反応容器内を窒素で満たした。25mlの1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)を反応容器に加え、室温で5時間攪拌を行った。次に1.604gPEG−b−PCMSを溶解したDMI55mlを反応容器に加え、さらに室温で12時間攪拌を行った。反応終了後、反応物は限外ろ過5階繰り返すことより精製し、凍結乾燥を行い、精製された目的の化合物1.632gを得た。目的化合物が得られているかについては、核磁気共鳴や高速液体クロマトグラフィーにて評価した。核磁気共鳴の結果をしめすNMRスペクトラムと各部分のアサイメントを図2に示す。
1NMR 測定条件:
磁場:400MHz
溶媒:D
温度:室温
スキャン:64
製造実施例2:PICミセルの作製
2.7gPEG−b−PMNTを1M HCl水溶液5mlに溶解し、PMNT鎖のアミノ基を完全にプロトン化させ、その後凍結乾燥を行い回収した。次に、プロトン化したPEG−b−PMNTブロック共重合体の1.039mgとPEG−b−PMBSHの0.251mgをそれぞれリン酸緩衝液(10mM、pH6)の0.5mlに溶解し、ホウ素の濃度を20μg/mLでそれぞれのポリカチオンとポリアニオンを混合し(BSH/PMNT鎖のアミノ基=1対4)、PICミセルを調製した。動的光散乱によるPICミセルが形成したことが確認できた。
試験1:血中滞留性及び腫瘍中集積性評価
尾静脈注射により担癌マウスへ上記PICミセル含有溶液200μlを投与し、1〜72時間経過後、動物を麻酔下に殺し、解剖して血液、腫瘍などの各臓器を取りだし、硝酸と過酸化水素に溶解させた。その後ICP−MSを用いて組織中のホウ素量を評価した。結果を図3に示す。ここでは、PICミセルが担癌マウスへ1.8mg/kg B10の投与量で尾静脈投与されている。
図3から、PICミセルの体内動態を確認したところ、高い血中滞留性を示し、また、粒子は時間経過と共に徐々に腫瘍に集積し、48時間後以降はホウ素濃度が最大(2.03μg/g 組織)に達し、72時間後で5.51ID%/g集積することが確認できる。腫瘍と血中のボロン化合物の比(T/B比)は72時間後には2以上に達した。このことから、本発明によれば、ホウ素化合物を高効率に癌組織に集積することが可能である。
試験2:PICミセルを用いたBNCTの評価
本発明材料(上記PICミセル)を用いた中性子線捕捉療法による治療効果を確認するため、尾静脈注射により担癌マウスへPICミセルを投与し、1.8×1012neutrons/cmの中性子線照射を40分間行った。腫瘍のサイズの推移を約2週間にわたって計測し、治療効果の評価を行った。効果を比較するため、参照実験を含めた5群を用いて評価を行っている。サンプル群は以下のとおりである。結果を図4に示す。
・PICミセル(照射あり)
・PICミセル(照射なし)
・BSH(照射あり、従来の技術である)
・生理食塩水(照射あり)
・生理食塩水(照射なし)
照射してから13日間にわたり癌組織のサイズの推移を調べたところ、本発明であるPICミセル(照射あり)のグループの癌組織の成長は効果的に抑制された。一方で照射を行わないグループでは癌組織は13日間で大きく成長した。このことから、癌組織の成長抑制は中性子線照射による効果であることがわかる。薬剤を投与せず生理食塩水のみの投与で照射を行った場合にも幾分か癌組織の成長が抑えられているものの、不十分である。従来の技術であるBSH(照射あり)のグループについても癌組織の成長は抑えられているが、本発明による材料を用いた場合の方が圧倒的に優位であることがわかる(図4参照)。これは本発明によるボロン化合物が効率よく癌組織に集積したことや、活性酸素種を除去することにより炎症が抑えられ、癌組織の成長を抑制したためであると考えられる。
本発明に従うPICミセルを用いることにより、BNCTに必要な癌組織への薬剤集積量は従来の技術と比べ、おおよそ20〜25%にまで低減することができた。これは従来の手法では薬剤が癌組織から速やかに排出されてしまうため、高い薬剤集積量でないと思うような効果が得られなかったためである。薬剤投与量を減らすことは、治療を行う上でも大変望ましい。この試験の結果からも、本発明が従来の手法よりも大変優れていることが理解できる。

Claims (9)

  1. 下記式Iで表される高分子化ホウ素化合物。
    式中、Aは、非置換または置換C1−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基または式R12CH−の基を表し、ここで、R1及びR2は独立して、C1−C4アルコキシまたはR1とR2は一緒になって−OCH2CH2O−、−O(CH23O−もしくは−O(CH24O−を表し、
    1は、結合または連結基を表し、
    2は、結合または連結基を表し、
    Xは、Xの総数であるnの少なくとも3%が次の式(a):
    で表されるホウ素化合物の残基であり、Xが前記残基以外である場合には、当該Xは水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシル基であり、
    該式中、
    mは、15〜10,000の整数を表し、そして
    nは、3〜3,000の整数を表す。
  2. 1の連結基が(CH2cS、(CH2cS(CH2d、(CH2cNH、−(CH2cNH(CH2d、(CH2cNHCO、(CH2cNHCO(CH2d、(CH2cNHC(=S)NH、(CH2cNHC(=S)NH(CH2d、(CH2cNHC(=O)NH、(CH2cNHC(=O)NH(CH2d、(CH2cOCO、(CH2cOCO(CH2d、(CH2cO、(CH2cO(CH2d、(CH2cからなる群より選ばれ、ここでc及びdは独立して1〜5の整数であり、L2の連結基がCH2、CONH、NHCO、NHCO(CH22(CH
    2CH2O)e(CH2)NHCO(C42NO2)からなる群より選ばれ、ここでeは1〜12の整数である、請求項1に記載の化合物。
  3. Xが式(a)で表される請求項1に記載の化合物とポリカチオン荷電性化合物を含んでなる複合体。
  4. ポリカチオン荷電性化合物が、下記式IIで表される請求項に記載の複合体。
    式中、Aは、非置換または置換C1−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基または式R12CH−の基を表し、ここで、R1及びR2は独立して、C1−C4アルコキシまたはR1とR2は一緒になって−OCH2CH2O−、−O(CH23O−もしくは−O(CH24O−を表し、
    1は、結合または連結基を表し、
    3は、−CH2−NH−または−CH2−NH−CH2−を表し、
    Yは、Yの総数であるnの少なくとも50%が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル及び2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、Yが前記残基以外である場合には、−L3−Yがメチル、ハロゲン化メチルまたはヒドロキシメチル基であり、
    mは、15〜10,000の整数を表し、そして
    nは、3〜3,000の整数を表す。
  5. Yが、次式
    で表され、R’がメチル基を表す、請求項に記載の複合体。
  6. 複合体が水性媒体中でポリイオン複合体の形態及び高分子ミセルの形態のいずれかまたは両者にある、ナノ粒子である請求項4または5に記載の複合体。
  7. 請求項1または2に記載の化合物と生理的に許容され得る賦形剤を含む製薬学的製剤。
  8. 請求項のいずれかに記載の複合体と生理的に許容され得る賦形剤を含む製薬学的製剤。
  9. 請求項またはに記載の製薬学的製剤であって、ホウ素中性子捕捉療法のために用いられる、製剤。
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