JP2004233168A - 中性子捕捉療法に用いる中性子遮蔽板、およびヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子捕捉療法、ならびに治療用中性子照射装置 - Google Patents

中性子捕捉療法に用いる中性子遮蔽板、およびヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子捕捉療法、ならびに治療用中性子照射装置 Download PDF

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Abstract

【課題】中性子捕捉療法において、正常組織に与える中性子を最低限に抑えるとともに、体内への中性子の深達性および到達性の減衰を緩和して、照射対象の深部に位置する標的部位に充分な中性子を投与し得る中性子遮蔽板、およびヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子捕捉療法、ならびに治療用中性子照射装置を提供する。
【解決手段】中性子遮蔽板を、中性子捕捉療法を受ける生物の体表面の中性子が照射される中性子照射領域に貼り着けて使用する。ヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子捕捉療法は、照射対象の中性子が照射される中性子照射領域の中心を含む位置に、上記中性子遮蔽板を貼り着ける遮蔽板貼着工程を含む。治療用中性子照射装置は、上記中性子遮蔽板を備える。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中性子捕捉療法に用いる中性子遮蔽板、およびヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子捕捉療法、ならびに治療用中性子照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、放射線による癌の治療法のひとつとして、中性子を患部に照射することにより治療を行なう中性子捕捉療法が利用されている。中性子捕捉療法は、患者に腫瘍集積性を持たせた中性子捕捉元素化合物を事前に投与して、その後に中性子の照射を行なう。中性子捕捉療法は、中性子を照射することによって、中性子と事前に投与した中性子捕捉元素化合物とが反応して、腫瘍細胞内において発生した放射線により患部の治療を行なう方法である。
【0003】
中性子捕捉元素化合物として、ホウ素化合物を用いる中性子捕捉療法は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:boron neutron capture therapy)と呼ばれている。ホウ素中性子捕捉療法では、中性子捕捉断面積の大きいホウ素10Bが用いられる。
【0004】
ホウ素中性子捕捉療法に利用されているホウ素化合物には、p−boronophenylalanine−10B(10BC12NO 、パラボロノフェニルアラニン、以下BPAと称する)と、sodium borocaptate−10B(Na 101211SH 、ナトリウムボロカプテイト、以下BSHと称する)とがある。BPAは、腫瘍細胞に選択的かつ良好に集積するが、細胞分裂が休止期の細胞には集積しないという欠点がある。一方、BSHは、BPAのような腫瘍細胞対しての選択的集積性はない。
【0005】
放射線による癌の治療法では、腫瘍だけではなく正常組織も放射線を受けてしまう。中性子自身には腫瘍選択性はないので、ホウ素中性子捕捉療法においては、正常組織が受ける中性子量を低減するため、腫瘍に集積するホウ素化合物の量、すなわち腫瘍のホウ素濃度を高めることが望まれている。これは、腫瘍のホウ素濃度が高ければ、少量の中性子照射によって腫瘍に十分な量の放射線を投与することが可能になるからである。
【0006】
中性子捕捉療法において、中性子捕捉元素化合物の腫瘍内における分布が不均一である場合、その部分の細胞には治癒に必要な線量(治癒線量)を投与できず、腫瘍制御に失敗することが知られている。特に、中性子捕捉元素化合物の腫瘍集積性の選択性を高めるような化学構造を追求した場合、逆に中性子捕捉元素化合物の腫瘍内における分布が不均一となる危険性がある。
【0007】
そこで、上記のような問題を解決するために、2種類のホウ素化合物BPAとBSHとを併用するホウ素中性子捕捉療法を、下記の非特許文献1および2において、本発明者は以前に提案している。
【0008】
下記の非特許文献1には、BPAとBSHとを併用したホウ素中性子捕捉療法が提案されている。非特許文献1においては、SCCVII腫瘍を下腿の皮下に移植したマウスに、上記のBPAとBSHとを併用したホウ素中性子捕捉療法を適用した結果が記載されている。
【0009】
下記の非特許文献2には、1)熱中性子ビームの代わりに熱外中性子を用いる、2)BPAとBSHとを併用する、3)生体内の中性子分布を計算して分布図を作製する装置(dose−planning machine SERA)を使用する、といった3点を改良したホウ素中性子捕捉療法が提案されている。非特許文献2においては、大脳半球白質の悪性腫瘍をもつ患者に、上記の3点を改良したホウ素中性子捕捉療法を適用した結果が記載されている。
【0010】
非特許文献1および2に提案されたホウ素中性子捕捉療法によれば、腫瘍細胞に選択的かつ良好に集積するが、細胞分裂が休止期の細胞には集積しない性質を持つBPA、および、腫瘍細胞対しての選択的集積性がないという性質を持つBSH、を併用することにより両者の欠点を互いに補うことができる。また、これによって、腫瘍部位のホウ素濃度を高めることもできる。
【0011】
【非特許文献1】
「Int. J. Radiation Oncology Biology Physics 43(2) 431−436 1999」(発行日:1999年)
【0012】
【非特許文献2】
「Proceedings of the 10th International Congress on Neutron Capture Therapy,pp1129−1134」(発行日:2002年9月8日)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のホウ素中性子捕捉療法では、照射対象の深部に標的部位がある場合に、表層の正常な組織に不要な中性子を与えることなく、深部の標的部位に充分な中性子を投与することが困難であるという問題点がある。
【0014】
上述のホウ素中性子捕捉療法では、体内の深部に存在する深在癌を治療する場合には中性子の深達性および到達性が不足している。すなわち、腫瘍制御に必要な量の中性子を体内の深在癌まで到達せしめようとすれば、手前の正常な組織が限界以上の線量を受けてしまう危険性がある。このため、中性子捕捉療法に用いる中性子の量を増したり、中性子のエネルギーを単に高めることはできない。
【0015】
また、上述のホウ素中性子捕捉療法には、照射対象の中性子が照射される領域における中性子照射野の中心軸周囲(中央部)とその辺縁部との中性子強度分布の大きな不均一性がある。
【0016】
中性子は生体内において、水素原子核(陽子)と衝突して散乱した後、次に向かう方向がランダムとなる性質をもつ。したがって、中性子が生体内に入射する時点において、照射対象の中性子が照射される領域の中央部とその辺縁部の中性子強度が等しくても、中央部には中央部に入射する中性子に加えて、辺縁部からも中性子が入り込んでくるために、中央部の中性子強度は辺縁部に比べて必然的に高くなる。逆に、辺縁部の中性子強度は、散乱後の中性子の向かう方向がランダムとなるので中央部に比べて低くなる。
【0017】
従来の中性子照射装置を用いたホウ素中性子捕捉療法では、照射対象における中性子照射野の中心軸周囲(中央部)の中性子強度分布が辺縁部と比較して高くなるが、これを回避することは困難である。このため、照射対象の辺縁深部にも中性子を投与する必要がある場合、照射対象における中性子照射野の中心軸周囲の表層に存在する正常組織に不要な中性子を照射することになる。
【0018】
本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、中性子捕捉療法において、正常組織に与える中性子を最低限に抑えるとともに、体内への中性子の深達性および到達性の減衰を緩和して、照射対象の深部に位置する標的部位に充分な中性子を投与し得る中性子遮蔽板、およびヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子捕捉療法、ならびに治療用中性子照射装置を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、エネルギーの低い中性子は直進性を充分に有していないが、前方に遮蔽物がある場合には容易にその背後に廻り込むという性質に着目した。
【0020】
さらに、本発明者は、照射対象の中性子が照射される領域の中央部を中性子遮蔽板にて遮蔽した場合の中性子の深達性および到達性の減衰は、中性子遮蔽板を使用しない場合と比較して緩和されることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。
【0021】
本発明の中性子遮蔽板は、上記の課題を解決するために、中性子捕捉療法を受ける生物の体表面の中性子が照射される中性子照射領域に貼り着けて使用することを特徴としている。
【0022】
エネルギーの低い中性子は直進性を充分に有していないが、前方に遮蔽物がある場合には容易にその背後に廻り込むという性質を有する。また、照射対象の中性子が照射される領域の中央部を中性子遮蔽板にて遮蔽した場合の中性子の深達性および到達性の減衰は、中性子遮蔽板を使用しない場合と比較して、緩和される。したがって、上記の構成によれば、中性子遮蔽板を貼り着けた領域に位置する正常組織が受ける中性子によるダメージを軽減できるとともに、体内における中性子の深達性および到達性の減衰を緩和することができる。
【0023】
すなわち、中性子捕捉療法において、正常組織に与える中性子量を最低限に抑えるとともに、体内への中性子の深達性および到達性の減衰を緩和して、照射対象の深部に位置する標的部位に充分な中性子を投与し得る中性子遮蔽系(遮蔽板)を提供することができる。
【0024】
本発明の中性子遮蔽板は、上記の構成において、上記中性子照射領域の中心を遮蔽するとともに、上記中性子照射領域の約1/4〜約1/2を遮蔽することがより好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、上記中性子照射領域の中央部約1/4〜約1/2を遮蔽するため、中性子分布が特に高くなる中央部に位置する正常組織が受ける中性子によるダメージを軽減することができるとともに、体内における中性子の深達性および到達性の減衰を緩和することができる。
【0026】
本発明の中性子遮蔽板は、上記の構成において、フッ化リチウムからなり、厚さ3mm以上7mm以下、面積10cm以上55cm以下の板状であることがより好ましい。
【0027】
上記の構成によれば、フッ化リチウムを用いることにより、中性子捕捉療法を行なう場合に適した形状の中性子遮蔽板をより容易に製造することができる。
【0028】
本発明の中性子遮蔽板は、上記の構成において、フッ化リチウムからなり、厚さ3mm以上7mm以下、直径40mm以上80mm以下の略円形の板状であることがより好ましい。
【0029】
上記の構成によれば、中性子照射野が円形である場合に適切な中性子遮蔽を行なうことができる。
【0030】
本発明のヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子捕捉療法は、上記の課題を解決するために、上記発明のいずれか1つに記載された中性子遮蔽板を用いて、ヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子捕捉療法であって、ヒト以外の哺乳動物である照射対象に照射する中性子の第1の照射条件を設定する第1の条件設定工程と、中性子捕捉元素化合物を上記照射対象に投与する捕捉元素化合物投与工程と、上記照射対象の中性子が照射される中性子照射領域の中心を含む位置に、上記中性子遮蔽板を貼り着ける遮蔽板貼着工程と、上記照射対象に中性子の試験照射を行なう試験照射工程と、上記照射対象に照射する中性子の第2の照射条件を設定する第2の条件設定工程と、上記第1の条件設定工程にて設定された第1の照射条件、および、上記第2の条件設定工程にて設定された第2の照射条件、に基づいて中性子を上記照射対象に照射する中性子照射工程とを含むことを特徴としている。
【0031】
上記の方法によれば、中性子遮蔽板に照射された中性子が、中性子遮蔽板の背後に廻り込み、照射対象に入射するため、体内における中性子の深達性および到達性の減衰を緩和することができる。また、上記照射対象の中性子照射領域の中心を含む位置に中性子遮蔽板を貼り着けるため、照射対象の中性子照射領域における中央部の中性子強度を低減することができる。
【0032】
すなわち、中性子捕捉療法において、正常組織に与える中性子を最低限に抑えるとともに、体内への中性子の深達性および到達性の減衰を緩和して、照射対象の深部に位置する標的部位に充分な中性子を投与し得るヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子照射方法を提供することができる。
【0033】
本発明の中性子照射方法は、上記の方法において、捕捉元素化合物投与工程では、パラボロノフェニルアラニン(BPA)とナトリウムボロカプテイト(BSH)とを併用して上記照射対象に投与することがより好ましい。
【0034】
上記の方法によれば、ホウ素中性子補足療法において、腫瘍部位におけるホウ素濃度の不均一性を解消できる。これに加えて、中性子遮蔽板に照射された中性子が、中性子遮蔽板の背後に廻り込み、照射対象に入射するため、体内における中性子の深達性および到達性の減衰をより緩和することができる。また、上記照射対象の中性子照射領域の中心を含む位置に中性子遮蔽板を貼り着けるため、照射対象の中性子照射領域における中央部の中性子強度を低減することができる。
【0035】
本発明の中性子照射方法は、上記の方法において、上記中性子照射工程は、上記照射対象に照射する中性子の照射強度が6.0×10cm−2−1以上3.0×10cm−2−1以下であることがより好ましい。
【0036】
上記の方法によれば、中性子を照射対象に照射する時間を短縮することができる。
【0037】
本発明の治療用中性子照射装置は、上記の課題を解決するために、照射対象に向けて中性子を出射する中性子出射手段と、中性子の照射条件を入力する条件入力手段と、該条件入力手段にて入力された入力値に応じて中性子の照射を制御する制御手段と、上記中性子出射手段から出射された中性子を上記照射対象まで誘導する中性子輸送手段と、中性子を集束指向する集束指向手段と、上記照射対象を設置する設置台とを備えた治療用中性子照射装置において、上記集束指向手段と上記照射対象との間の、中性子照射野の中心軸が通る位置に、中性子を遮蔽する中性子遮蔽板を備えていることを特徴としている。
【0038】
上記の構成によれば、エネルギーの低い中性子は直進性を充分に有していないが、前方に遮蔽物がある場合には容易にその背後に廻り込むという性質を有するため、中性子遮蔽板に照射された中性子は、中性子遮蔽板の背後に廻り込み、照射対象に入射するため、体内における中性子の深達性および到達性の減衰を緩和することができる。
【0039】
また、上記の構成によれば、中性子の中心軸の通る位置に中性子遮蔽板が備えられているため、照射対象の中性子照射領域における中央部の中性子強度を低減することができる。
【0040】
すなわち、中性子捕捉療法において、正常組織に与える中性子を最低限に抑えるとともに、体内への中性子の深達性および到達性の減衰を緩和して、照射対象の深部に位置する標的部位に充分な中性子を投与し得る治療用中性子照射装置を提供することができる。
【0041】
本発明の治療用中性子照射装置は、上記の構成において、上記中性子遮蔽手段が、フッ化リチウムからなり厚さ3mm以上7mm以下、面積10cm以上55cm以下の板状であることがより好ましい。
【0042】
本発明の治療用中性子照射装置は、上記の構成において、上記中性子遮蔽板が、フッ化リチウムからなり、厚さ3mm以上7mm以下、直径40mm以上80mm以下の略円形の板状であることがより好ましい。
【0043】
上記の構成によれば、フッ化リチウムを用いることにより、所望の形状の中性子遮蔽板をより容易に製造することができるとともに、照射対象の中性子照射領域における中央部の中性子強度をより確実に低減することができる。中性子照射野が円形
【0044】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について図1ないし図3に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
本発明者は、エネルギーの低い中性子は直進性を充分に有していないが、前方に遮蔽物がある場合には容易にその背後に廻り込むという性質に着目した。さらに、本発明者は、照射対象の中性子が照射される領域の中央部を中性子遮蔽板にて遮蔽した場合の中性子の深達性および到達性の減衰は、中性子遮蔽板を使用しない場合と比較して緩和されることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。
【0046】
(中性子照射装置)
本実施の形態の治療用中性子照射装置10は、図1に示すように、照射対象7に向けて中性子を出射する中性子出射装置(中性子出射手段)1と、中性子の照射条件を入力する入力装置(条件入力手段)2と、該入力装置2にて入力された入力値に応じて中性子の照射を制御する制御装置(制御手段)3と、中性子出射装置1から出射された中性子を照射対象7まで誘導する真空導管(中性子輸送手段)4と、中性子を集束指向するコリメータ(集束指向手段)5と、照射対象7を設置する治療台(設置台)6とを備えた中性子照射装置において、コリメータ5と照射対象7との間の、中性子照射野の中心軸が通る位置に、中性子を遮蔽する遮蔽板(中性子遮蔽板)8を備えている。
【0047】
中性子出射装置1は、図示しない中性子源から中性子を得て、中性子を出射するものである。中性子出射装置1は、中性子源から中性子を得て、中性子を出射することができればよく、従来公知の中性子出射装置の中性子出射装置を適用することができる。
【0048】
本実施の形態の治療用中性子照射装置10が使用する中性子は、例えば、熱中性子、熱外中性子、または速中性子などの中性子である。また、中性子として熱中性子または熱外中性子を使用する場合は、中性子捕捉療法などに利用される一般的な原子炉を中性子源として適用することができる。中性子として速中性子を使用する場合は、中性子捕捉療法などに利用される一般的なサイクロトロンなどの加速器を中性子源として適用することができる。
【0049】
本実施の形態の治療用中性子照射装置10が中性子として速中性子を使用する場合は、従来公知の中性子フィルタなどの減速材を用いて、速中性子を治療に適したエネルギーレベルの熱中性子または熱外中性子に減速すればよい。この場合は、上記の治療用中性子照射装置10に従来公知の中性子フィルタなどの減速材をさらに備えた構成にすればよい。
【0050】
入力装置2は、中性子の照射条件を入力するものである。入力装置2は、中性子の照射条件として、例えば、中性子の照射対象への入射方向、中性子の照射範囲、照射する中性子強度、および中性子の照射時間などの条件を入力するものである。
【0051】
制御装置3は、上記入力装置2にて入力された入力値に応じて中性子の照射を制御するものである。制御装置3は、入力された値に応じて中性子の照射を制御できればよく、一般的に使用される制御装置を適用することができる。
【0052】
真空導管4は、中性子出射装置1から出射された中性子を照射対象7まで誘導するものである。真空導管4は、中性子を照射対象7まで誘導することができればよく、従来の中性子照射装置に一般的に使用される真空導管を適用すればよい。
【0053】
コリメータ5は、照射対象7に照射する中性子を集束指向するものである。コリメータ5は、中性子を集束指向できればよく、従来の中性子照射装置に一般的に使用されるコリメータを適用することができる。
【0054】
治療台6は、照射対象7を設置するための設置台である。治療台6は、照射対象7を載せて設置することができればよく、一般的に用いられる治療台を適用することができる。治療台6は、自動的に照射対象7を目的とする位置に移動可能とするために、自動送り装置を備えた治療台であることが好ましい。自動送り装置は、一般的に使用されるものを適用することができる。
【0055】
この場合、中性子の照射対象7への入射方向および中性子の照射範囲などの条件を上記入力装置2に入力することにより、照射対象7を載せた治療台6が上記入力装置2に入力された条件に応じた位置に自動的に移動されるように、上記制御装置3が治療台6を制御できることが好ましい。このため、入力装置2に入力された条件に応じて、上記治療台6の位置が、上記制御装置3によって制御されるように設定することが好ましい。
【0056】
遮蔽板8は、中性子を遮蔽するものであり、上記コリメータ5と照射対象7との間の、中性子照射野の中心軸が通る位置に備えるものである。すなわち、上記コリメータ5と照射対象7との間における、中性子が照射される領域の中心を遮蔽するように遮蔽板8が備えられていればよい。遮蔽板8は、中性子を遮蔽する機能を有していればよく、従来公知の中性子を遮蔽する物質を適用することができる。遮蔽板8は、コリメータ5と照射対象7との間に備えられていればよいが、遮蔽板8を照射対象7に貼着して使用することが好ましい。そのため、遮蔽板8は、中性子の照射により発熱しない性質の材料によって製造されたものが好ましい。
【0057】
遮蔽板8は、中性子照射野の中心軸が通る位置を遮蔽するとともに、上記中性子照射領域の約1/4〜約1/2を遮蔽するようにして、コリメータ5と照射対象7との間に備えることが好ましい。
【0058】
ここで、中性子と中性子を遮蔽する遮蔽板との関係について、図2に基づいて説明する。図において中性子は矢印で示される。また、中性子は図中の中性子照射領域15の左側から照射されるものとする。
【0059】
中性子は生体内(図中の中性子照射領域15の右側)において、水素原子核(陽子)と衝突して散乱した後、次に向かう方向がランダムとなる性質をもつ。この性質によって、中性子が生体内に入射する時点において、照射対象7の中性子を照射する領域における中央部11とその辺縁部12の中性子強度が等しくても、中央部11の中性子強度は辺縁部12よりも高くなる。なお、上記中央部11は、中性子照射野の中心軸が通る位置とする。
【0060】
これは、中央部11には中央部11に入射する中性子に加えて、その辺縁部12から中性子が入り込んでくるためであって、中央部11の中性子強度は必然的に辺縁部12よりも高くなる。逆に、辺縁部12の中性子強度は、散乱後の中性子の向かう方向がランダムとなるので中央部11と比較して低くなる。
【0061】
エネルギーの低い中性子は直進性を充分に有していないが、前方に遮蔽物がある場合には容易にその背後に廻り込むという性質がある。そのため、中性子の出射口(図示しない)と照射対象7との間に遮蔽板8を備えることによって、遮蔽板8の背後に廻り込んだ中性子の一部が中央部11に向かうことになる。したがって、遮蔽板8を備えることによって、必然的に辺縁部12よりも高くなっていた中央部11の中性子強度は低減される。
【0062】
上記中性子の中心軸とは、治療用中性子照射装置10の中性子の出射口(図示しない)の中心と、照射対象7の標的部位の中心とを結んだ直線を指すものとする。中性子は水素原子核(陽子)と衝突して散乱した後、次に向かう方向がランダムとなる性質があるため、中性子の中心軸に沿って一様に照射対象の標的部位に中性子が照射されることはない。このため、照射対象の標的部位に中性子を照射するためには、中性子の方向性を定めることが必要となる。
【0063】
中性子照射野の中心軸が通る位置に遮蔽板8を備えることによれば、中性子は遮蔽板8の背後に廻り込んで進むことになり、遮蔽板8を使用しない場合に比べて中性子の方向性が定まる。これによって、照射対象7の標的部位に中性子が到達する割合を高めることができる。
【0064】
すなわち、中性子捕捉療法において、正常組織に与える中性子を最低限に抑えるとともに、体内への中性子の深達性および到達性の減衰を緩和して、照射対象の深部に位置する標的部位に充分な中性子を投与し得る治療用中性子照射装置10を提供することができる。
【0065】
上記遮蔽板8は、フッ化リチウムを厚さ3mm以上7mm以下、面積10cm以上55cm以下の板状に形成したものが好ましい。遮蔽板8は、フッ化リチウムを厚さ3mm以上7mm以下、直径40mm以上80mm以下の略円形の板状に形成したものがより好ましい。遮蔽板8は、フッ化リチウムを直径約60mm、厚さ約5mmの略円形の板状に形成したものがさらに好ましい。
【0066】
なお、本実施の形態の治療用中性子照射装置10は、癌治療などに使用する治療用の中性子照射装置であることが好ましく、中性子捕捉療法において中性子を照射する場合に使用することがより好ましい。照射対象7としては、例えば、ヒト、サル、イヌ、ネコなどの哺乳動物を含むものとする。本実施の形態の治療用中性子照射装置10は、ヒトの中性子捕捉療法に使用することがより好ましい。
【0067】
(中性子遮蔽板)
本実施の形態の遮蔽板(中性子遮蔽板)8は、図2に示すように、中性子捕捉療法を受ける生物の体表面の中性子が照射される中性子照射領域15に貼り着けて使用するものである。上記生物とは、例えば、ヒト、サル、イヌ、ネコなどの哺乳動物を含むものとする。本実施の形態の遮蔽板8は、ヒトの中性子捕捉療法に使用することがより好ましい。
【0068】
遮蔽板8は、中性子を遮蔽する機能を有していればよく、従来公知の中性子を遮蔽する物質を適用することができる。遮蔽板8は、照射対象7に貼着して使用するため、遮蔽板8は、中性子の照射により発熱しない性質の材料によって製造されたものが好ましい。
【0069】
本実施の形態の遮蔽板8は、上記中性子照射領域15内に貼り着けて使用することが好ましく、上記中性子照射領域15の中心を遮蔽するとともに、上記中性子照射領域15の約1/4〜約1/2を遮蔽することがより好ましい。すなわち、遮蔽板8は、中性子捕捉療法の中性子照射時に、中性子捕捉療法を受ける生物である照射対象における中性子照射領域の中央部11を遮蔽するものであって、中性子照射領域15全体の約1/4〜約1/2の領域を遮蔽することが好ましい。
【0070】
遮蔽板8は、中性子照射領域15全体の約1/4〜約1/2の領域を遮蔽することができればよく、遮蔽板8の形状は特に限定されるものではない。遮蔽板8の形状は、照射対象7に形成される中性子照射野の形状に応じて、適宜設計すればよい。すなわち、照射対象7に形成される中性子照射野が円形の場合、遮蔽板8は、略円形の形状であることが好ましい。
【0071】
本実施の形態の遮蔽板8は、フッ化リチウムからなり、厚さ3mm以上7mm以下、面積10cm以上55cm以下の板状であることが好ましい。遮蔽板8は、フッ化リチウムからなり、厚さ3mm以上7mm以下、直径40mm以上80mm以下の略円形の板状であることがより好ましい。遮蔽板8は、フッ化リチウムからなり、厚さ約5mm、直径約60mmの略円形の板状であることがさらに好ましい。
【0072】
(中性子照射方法)
本実施の形態のヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子捕捉療法は、本発明に係る遮蔽板(中性子遮蔽板)8を用いた中性子照射方法であって、図3に示すように、少なくとも、照射対象7に照射する中性子の第1の照射条件を設定する第1の条件設定工程(ステップ1、以下ステップをSと略す)と、中性子捕捉元素化合物を照射対象7に投与する捕捉元素化合物投与工程(S2)と、照射対象7の中性子が照射される中性子照射領域15の中心を含む位置に、中性子を遮蔽する遮蔽板8を貼り着ける遮蔽板貼着工程(S3)と、上記照射対象に中性子の試験照射を行なう試験照射工程(S4)と、照射対象7に照射する中性子の第2の照射条件を設定する第2の条件設定工程(S5)と、上記第1の条件設定工程にて設定された第1の照射条件、および、上記第2の条件設定工程にて設定された第2の照射条件、に基づいて中性子を上記照射対象に照射する中性子照射工程(S6)とを含んでいる。なお、本発明にかかる中性子照射方法はこれに限定されるものではなく、他の工程が含まれていてもよい。
【0073】
上記ヒト以外の哺乳動物とは、例えば、サル、イヌ、ネコなどの哺乳動物である。
【0074】
S1の第1の条件設定工程は、照射対象7に照射する中性子の第1の照射条件として、例えば、中性子の照射対象への入射方向、および中性子の照射範囲、などの中性子の照射条件を設定する工程である。
【0075】
ここで、第1の条件設定工程(S1)は、図3に示すように、プロセス1(以下、プロセスをPと略す)として、中性子の照射条件を設定する照射条件設定工程を、P2として、P1にて設定した条件を基に生体内における中性子分布図を作製する中性子分布図作製工程を、P3として、P2にて作製した中性子分布図を中性子ホウ素線量分布図に変換する線量分布変換工程を、P4として、遮蔽板8の使用の適否を調べるための遮蔽板適否検査工程を、含んでいることが好ましい。なお、本発明にかかる中性子照射方法はこれに限定されるものではなく、他の工程が含まれていてもよい。
【0076】
以下、上記第1の条件設定工程(S1)の各段階P1〜P4について詳細に説明する。P1の照射条件設定工程は、中性子の照射対象への入射方向、および中性子の照射範囲などの中性子の照射条件を設定できればよく、照射対象7の体内における標的部位(腫瘍部位)の位置を事前に測定した結果を基にして中性子の照射条件を設定すればよい。
【0077】
P1の照射条件設定工程は、例えば、照射対象7の体内における腫瘍部位の位置を事前にCT(computerized tomography:コンピュータ断層撮影法)またはMRI(magnetic resonance imaging:磁気共鳴映像法)にて測定した結果を基に中性子の照射条件を設定すればよい。
【0078】
P2の中性子分布図作製工程は、P1において設定した中性子の照射条件にて照射対象7に中性子を照射した場合の、照射対象7の生体内における中性子分布をコンピュータにて計算して中性子分布図を作製する工程であり、その具体的な計算手法等については特に限定されるものではない。P2の中性子分布図作製工程は、一般的には従来公知の手法を利用して、中性子分布図を作製すればよい。
【0079】
P3の線量分布変換工程は、照射対象7の腫瘍部位および正常組織における捕捉元素化合物濃度の推定値に基づいて、P2にて作製した中性子分布図を中性子ホウ素線量分布図に変換する工程であり、その具体的な計算手法等については特に限定されるものではない。P3の線量分布変換工程は、一般的には従来公知の手法を利用して、中性子分布図を中性子ホウ素線量分布図に変換すればよい。P3の線量分布変換工程は、PET(positron emission tomography:陽電子放出断層撮影)検査に基づいて照射対象7の腫瘍部位および正常組織における捕捉元素化合物濃度の推定値を求めることが好ましい。
【0080】
P4の遮蔽板適否検査工程は、遮蔽板8の使用の適否を調べるための工程である。P4の遮蔽板適否検査工程は、中性子の照射範囲の中央部を遮蔽板8により遮蔽した場合について、照射対象7の生体内における中性子分布、および、照射対象7の生体内における中性子量分布、のシミュレーション行なうことにより遮蔽板8の使用の適否を調べることが好ましい。
【0081】
P4の遮蔽板適否検査工程における照射対象7の生体内における中性子分布のシミュレーションは、中性子の照射範囲の中央部を遮蔽板8により遮蔽するという条件を加えて、上記P2の中性子分布図作製工程と同様にして、照射対象7の生体内における中性子分布図を作製することによって行なうことが好ましい。
【0082】
P4の遮蔽板適否検査工程における照射対象7の生体内における中性子量分布のシミュレーションは、中性子の照射範囲の中央部を遮蔽板8により遮蔽するという条件を加えた場合の上記のシミュレーション結果の中性子分布図を、P3の線量分布変換工程と同様にして、中性子ホウ素線量分布図に変換することによって行なうことが好ましい。
【0083】
上記第1の条件設定工程(S1)の各段階P1〜P4によって、中性子の照射対象7への入射方向、および中性子の照射範囲、などの中性子の照射条件が決定される。すなわち、S1の第1の条件設定工程によって、上記照射対象7の中性子照射野の中心軸が通る位置が決定される。また、S1の第1の条件設定工程によって、中性子照射時の照射対象7の位置、および遮蔽板8の使用の適否が決定される。
【0084】
次に、上記S2の捕捉元素化合物投与工程について説明する。S2の捕捉元素化合物投与工程は、中性子捕捉元素化合物を照射対象7に投与する工程である。照射対象7に投与する中性子捕捉元素化合物は、特に限定されるものではなく、従来公知の中性子捕捉療法に使用される中性子捕捉元素化合物を適用することができる。
【0085】
例えば、ホウ素中性子捕捉療法を行なう場合においては、中性子捕捉元素化合物として一般的に利用されるホウ素化合物であるBPAを用いればよい。また、例えば、ガドリニウム(Gd)化合物を中性子捕捉元素化合物として用いてもよい。
【0086】
また、照射対象7に投与する中性子捕捉元素化合物の量についても、特に限定されるものではなく、従来公知の中性子捕捉療法における中性子捕捉元素化合物の投与量の範囲内において適宜設定すればよい。中性子照射を行なう前に中性子捕捉元素化合物を照射対象7に投与するが、中性子捕捉元素化合物の投与後どの程度の間隔を置いて中性子を照射するかについても、特に限定されるものではなく、従来公知の中性子捕捉療法で行なわれる間隔を基に適宜設定すればよい。
【0087】
中性子捕捉元素化合物の投与後、即発ガンマ線分析を行なう。すなわち、中性子捕捉元素化合物の投与後、照射対象7から血液を経時的に採取して、血液中の中性子捕捉元素化合物の濃度を測定する。腫瘍部位および正常組織における中性子捕捉元素化合物の濃度は、即発ガンマ線分析による測定値、および上記PET検査の結果に基づいて推定する。
【0088】
上記S2の捕捉元素化合物投与工程では、BPAとBSHとを併用して照射対象7に投与することがより好ましい。ホウ素化合物としてBPAとBSHとを併用して投与する場合、BPAを200〜300mg/kg(体重)、BSHを50〜150mg/kg(体重)、の割合で投与することがより好ましい。ホウ素化合物としてBPAとBSHとを併用して投与する場合、BPAを225〜275mg/kg(体重)、BSHを75〜125mg/kg(体重)、の割合で投与することがさらに好ましい。
【0089】
上記S3の遮蔽板貼着工程について説明する。S3の遮蔽板貼着工程は、上記S1の第1の条件設定工程によって決定された、照射対象7の中性子照射野の中心軸が通る位置に、中性子を遮蔽する遮蔽板8を貼り着ける工程である。遮蔽板8は、照射対象7の中性子が照射される中性子照射領域15の中心を含む位置に、貼り着けることがより好ましい。
【0090】
遮蔽板8は、例えば、市販の包帯または治療用の紙テープを使用して、照射対象7に貼り着けるが、遮蔽板8を照射対象7に貼り着ける方法についても特に限定されるものではなく、照射対象7の中性子照射野の中心軸が通る位置に遮蔽板8を貼り着けることができればよい。また、遮蔽板8は、必ずしも照射対象7に貼り着ける必要はなく、少なくとも照射対象7の中性子が照射される中性子照射領域15の中心を含む位置に遮蔽板8を備えていればよい。
【0091】
なお、上記S1の第1の条件設定工程において遮蔽板8を使用しないと判断されたときは、S3の遮蔽手段貼着工程を行なわずに次の試験照射工程(S4)に進む。
【0092】
上記S4の試験照射工程は、S1の第1の条件設定にて決定された条件にしたがって、中性子の照射条件を決定するために照射対象7に対して試験的に中性子の照射を行なう工程である。S4の試験照射工程は、照射対象7に対して中性子の照射を行なった時の実際の放射化量を測定することができればよく、その具体的な手法等については特に限定されるものではない。
【0093】
例えば、S4の試験照射工程は、以下1)〜3)の手順で行なえばよい。1)照射対象7の標的部位の表面および深部に、市販の中性子測定用の金線を装着して、S1の第1の条件設定にて決定された条件にしたがって、照射対象7を所定の位置に配置する。2)中性子の照射強度を6.0×10cm−2−1に設定して、照射対象7に対する中性子の試験照射を10〜20分間行なう。3)試験照射後、照射対象7に装着していた中性子測定用の金線を引き抜いて、この中性子測定用の金線の放射化量を測定する。
【0094】
なお、試験照射工程は、中性子の照射強度を6.0×10cm−2−1以上3.0×10cm−2−1以下に設定して中性子照射を行なうことが好ましい。試験照射工程は、中性子の照射強度を3.0×10cm−2−1以上3.0×10cm−2−1以下に設定して中性子照射を行なうことがより好ましい。
【0095】
上記S4の試験照射工程の中性子強度(中性子の照射強度)の適切な範囲は、本照射が長時間になりすぎず、また、高すぎて本照射において目的としている線量のレベルに試験照射によって既に達してしまうことがない程度であることが好ましい。
【0096】
遮蔽板8は、試験照射であっても、本照射であっても用いる目的は同じである。すなわち、遮蔽板8を用いることによれば、照射野の中心軸上における中性子量の深部方向の減衰を緩和できること、および、深さに関係なく中心部と同じ深さでの辺縁部での中性子量の著しい不均一(中心部で多く、辺縁部で少ない)を緩和できる。
【0097】
上記S4の試験照射工程は、上記シミュレーションに近い中性子強度が得られているかを確認し、本照射において目的とするレベルの放射線量にするには何時間(分)照射する必要があるかを決定するために行なう。したがって、試験照射と本照射との中性子強度(cm−2−1)は、同じにする必要がある。中性子強度が大きければ、本照射は短時間で終了することができる。試験照射は、本照射の中性子強度および照射時間を設定するために行なう短時間(通常10〜15分)の照射である。
【0098】
次に、上記S5の第2の条件設定工程について説明する。S5の第2の条件設定工程は、照射対象7に照射する中性子の第2の照射条件として、例えば、中性子の照射強度、および中性子の照射時間、などの中性子の照射条件を設定する工程である。
【0099】
S5の第2の条件設定工程は、照射対象7に照射する中性子の強度、および中性子の照射時間、などの中性子の照射条件を設定する工程であって、S4の試験照射工程の結果に基づいて上記の中性子の照射条件を決定すればよい。S5の第2の条件設定工程は、S4の試験照射工程の結果である放射化量に基づいて、一般的な中性子の強度と放射化量との関係から、照射対象7に照射する中性子の強度、および中性子の照射時間を、通常の中性子捕捉療法において使用される範囲内で適宜設定すればよい。
【0100】
S5の第2の条件設定工程は、上記第1の条件設定工程(S1)のシミュレーション結果から推定した標的患部の中性子ホウ素線量が治癒線量になるように、照射対象7に照射する中性子の強度、および中性子の照射時間を、適宜設定すればよい。
【0101】
上記S5の第2の条件設定工程によって、照射対象7に照射する中性子の強度、および中性子の照射時間、などの中性子の照射条件が決定される。
【0102】
なお、S5の第2の条件設定工程では、次のS6の中性子照射工程にて照射対象7に中性子の本照射を行なう時の中性子の照射強度を6.0×10cm−2−1以上3.0×10cm−2−1以下に設定することが好ましい。S5の第2の条件設定工程では、中性子の照射強度を6.0×10cm−2−1以上3.0×10cm−2−1以下に設定することがより好ましい。
【0103】
次に、上記S6の中性子照射工程について説明する。S6の中性子照射工程は、照射対象7に中性子を照射する工程であって、S1の第1の条件設定工程およびS5の第2の条件設定工程によって設定された中性子の照射条件の下、照射対象7に中性子の照射を行なう。
【0104】
上記S6の中性子照射工程は、上記照射対象に照射する中性子の照射強度が6.0×10cm−2−1以上3.0×10cm−2−1以下であることがより好ましい。これによって、中性子を照射対象に照射する時間を短縮することができることができる。
【0105】
なお、本実施の形態のヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子捕捉療法は、ヒトに対する中性子捕捉療法にも適用可能である。
【0106】
なお、本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても、本発明の技術的範囲に含まれることはいうまでもない。
【0107】
【実施例】
以下、実施例および図4ないし図6に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0108】
(中央遮蔽の効果)
中性子照射野の中央遮蔽を行なった場合、すなわち照射対象の中性子を照射される領域の中央に中性子を遮蔽する遮蔽板を設置した場合における、照射対象(ファントム)の内部の中性子分布を調べるため、以下に示す実験を行なった。この実験について、図4に基づいて説明する。
【0109】
図4は中性子照射野(中性子照射領域)Aの中央遮蔽を行なった場合のファントム中の熱中性子分布を調べるために行なった実験の概要を説明するための模式図である。この実験では水をファントム22とした。中性子は熱外中性子を使用した。奥行き200mmの市販の中性子計測器21を使用して、中性子照射野Aの中央遮蔽を行なった場合と、行なわない場合とについて、ファントム22の各内部(深さ)位置における熱中性子束(Thermal Neutron Flux)を測定した。照射時の中性子強度は7.0×10cm−2−1として、照射時間は60分間とした。中性子照射野Aの中央遮蔽を行なった場合についての測定時には、中性子計測器21の中性子の照射される側に、遮蔽板18を固定した。中性子照射野Aは直系120mmであり、この中性子照射野Aの中央に遮蔽板18を固定した。
【0110】
遮蔽板18は、市販の濃縮したフッ化リチウムを、厚さ5mm、直径60mmの円形の板状に、大阪のスターライト工業によって成形されたものを使用した。
【0111】
中性子照射野の中央遮蔽を行なった場合の測定結果のグラフを図5に示す。図5の縦軸は熱中性子束(cm−2−1)を、横軸はファントム22内の深さ位置(cm)を示す。黒丸、白抜きの丸、白抜きの三角は、それぞれ、中性子照射野の中心(Flux 0cm)、中性子照射野の中心から3cm離れた位置(Flux 3cm)、中性子照射野の中心から4.5cm離れた位置(Flux 4.5cm)、における測定結果を示す。
【0112】
中性子照射野の中央遮蔽を行なっていない場合の測定結果のグラフを図6に示す。図5と同じく、図6の縦軸は熱中性子束(cm−2−1)を、横軸はファントム22内の深さ位置(cm)を示す。黒丸、白抜きの丸は、それぞれ、中性子照射野の中心(Flux 0cm)、中性子照射野の中心から4.8cm離れた位置(Flux4.8cm)、における測定結果を示す。
【0113】
図6のグラフによれば、中性子照射野の中央遮蔽を行なっていない場合のファントム22中の熱中性子分布は、熱中性子強度が中央部(黒丸で示す)と辺縁部(白抜きの丸で示す)とにおいて大きく異なることがわかる。
【0114】
具体的には、中性子照射野の中央遮蔽を行なっていない場合は、深さ位置2cmにおける、照射対象の中性子照射野の中心(黒丸で示す)と、中性子照射野の中心から4.8cm離れた位置(白抜きの丸で示す)と、の熱中性子束の差は約4.4×10cm−2−1となった。
【0115】
すなわち、図6のグラフによれば、中性子照射野の中央遮蔽を行なっていない場合、中央部と辺縁部とにおいて、中性子強度分布は不均一となることが示される。
【0116】
これに対して、図5にグラフによれば、中性子照射野の中央遮蔽を行なった場合のファントム22中の熱中性子分布は、中央部(黒丸で示す)の熱中性子強度が低下し、辺縁部(白抜きの丸、および白抜きの三角で示す)の熱中性子強度との差が小さくなることが示される。
【0117】
具体的には、中性子照射野の中央遮蔽を行なった場合は、深さ位置2cmにおける、照射対象の中性子照射野の中心(黒丸で示す)と、中性子照射野の中心から3cm離れた位置(白抜きの丸で示す)および中性子照射野の中心から4.5cm離れた位置(白抜きの三角で示す)と、の熱中性子束の差は約1.0×10cm−2−1となった。
【0118】
すなわち、図5のグラフによれば、中性子照射野の中央遮蔽を行なうことによって、中央部と辺縁部とにおける、中性子強度分布の不均一が改善されることが示される。
【0119】
また、図6のグラフによれば、中性子照射野の中心(黒丸で示す)、中性子照射野の中心から4.8cm離れた位置(白抜きの丸で示す)、における熱中性子束の最大値は、それぞれ、約11.9×10cm−2−1、約7.4×10cm−2−1となり、ファントム22内の深さ位置6cmにおける、中性子照射野の中心(黒丸で示す)、中性子照射野の中心から4.8cm離れた位置(白抜きの丸で示す)、の熱中性子束は、それぞれ、約4.2×10cm−2−1、約2.7×10cm−2−1となった。
【0120】
したがって、図6のグラフによれば、ファントム22内の深さ位置6cmにおける各熱中性子束の最大値に対しての減衰率は、中性子照射野中性子照射野の中心(黒丸で示す)では64.7%、中性子照射野の中心から4.8cm離れた位置(白抜きの丸で示す)では63.5%となる。また、中性子照射野中性子照射野の中心(黒丸で示す)ではFlux max/Flux 6cm=2.80、中性子照射野の中心から4.8cm離れた位置(白抜きの丸で示す)ではFlux max/Flux 6cm=2.64となる。
【0121】
これに対して、図5のグラフによれば、中性子照射野の中心(黒丸で示す)、中性子照射野の中心から3cm離れた位置(白抜きの丸で示す)、中性子照射野の中心から4.5cm離れた位置(白抜きの三角で示す)、における熱中性子束の最大値は、それぞれ、約6.3×10cm−2−1、約7.4×10cm−2−1、約7.3×10cm−2−1となり、ファントム22内の深さ位置6cmにおける、中性子照射野の中心(黒丸で示す)、中性子照射野の中心から3cm離れた位置(白抜きの丸で示す)、中性子照射野の中心から4.5cm離れた位置(白抜きの三角で示す)、の熱中性子束はともに約3.0×10cm−2−1となった。
【0122】
したがって、図5のグラフによれば、ファントム22内の深さ位置6cmにおける各熱中性子束の最大値に対しての減衰率は、中性子照射野の中心(黒丸で示す)では52.4%、中性子照射野の中心から3cm離れた位置(白抜きの丸で示す)では59.5%、中性子照射野の中心から4.5cm離れた位置(白抜きの三角で示す)では58.9%となる。また、Flux max/Flux 6cm=2.11となる。
【0123】
すなわち、中性子照射野の中央遮蔽を行なうことによって、ファントムの深部方向に対する熱中性子分布の減衰が緩和されて、深部により多くの線量の中性子を投与できることになる。
【0124】
(中性子捕捉療法)
京都大学原子炉実験所附属原子炉医療基礎研究施設において、以下のようにして、頭部に腫瘍を有する患者(ヒト)に対して、ホウ素中性子捕捉療法を行なった。すなわち、中性子源として当施設の原子炉を使用して中性子照射を行なった。
【0125】
事前に行なったMRIおよびCTの結果の画像に基づいて、中性子の入射方向と中性子の照射範囲との条件を決定する。この条件にて生体内の中性子分布をシュミレーションソフト(ソフト名:「SERA」、オハイオ州立大学で開発され、開発元の研究者より提供)を用いて計算し、中性子分布図を作製した(シミュレーション1)。
【0126】
ホウ素化合物としてBPAとBSHとの二剤を併用するホウ素中性子捕捉療法を行なった。患者にBPAを250mg/kg(体重)、BSHを100mg/kg(体重)投与した。ホウ素化合物の投与は、先にBSHを点滴常注により投与し、12時間後にBPAを同じく点滴常注により投与した。投与時間はBSH、BPAともに1時間とした。
【0127】
ホウ素化合物を投与した後、患者から血液を1〜3時間毎に採取し、即発ガンマ分析よって血液中のホウ素濃度を測定した。腫瘍部位および正常組織の推定ホウ素濃度値は、この測定値と事前に行なったPET検査の結果とに基づいて推定した。この推定ホウ素濃度値に基づいて、上記シミュレーションソフトを用いて、上記中性子分布図を中性子ホウ素線量分布図に変換した(シミュレーション2)。
【0128】
次に、中性子照射野の中央部を遮蔽板によって遮蔽した場合、すなわち中央遮蔽を行なった場合について、上記シミュレーション1および2を行い、症例毎に遮蔽板の使用の適否を調べた(シミュレーション3)結果、中央遮蔽を行なうと判断された。遮蔽板は、治療用紙テープを用いて患者に貼着した。遮蔽板を貼り着ける位置は、シミュレーション1〜3によって決定された。
【0129】
遮蔽板は、市販の濃縮したフッ化リチウムを、厚さ5mm、直径60mmの円形の板状に、大阪のスターライト工業によって成形されたものを使用した。
【0130】
患者の患部の表面および深部に、市販の中性子測定用の金線を装着した。中性子測定用の金線の一部は、途中で引き抜くことができるように緩めて固定した。次に、照射室の扉を開き、治療台に寝かせた患者を、自動送り装置によって照射室の照射位置に移動した。照射位置は、シミュレーション1〜3によって決定された。照射位置に配置した患者を、中性子ビームコリメータに固定した。
【0131】
照射室の扉を閉じた後、中性子照射装置のシャッターを開いて、中性子照射を開始した。中性子照射は、患者にホウ素化合物を投与した30分後に開始した。照射開始15分後に、遠隔操作用の装置を使用して、中性子測定用の金線の一部を引き抜いて、金線の放射化量を測定した。
【0132】
この放射化量に基づいて、頭部表面の熱中性子強度を2.7×10cm−2−1と設定し、シミュレーション結果から推定した標的患部の中性子ホウ素線量が治癒線量になるように、照射時間を90分と設定した。中性子照射中は遠隔操作カメラで患者をモニターした。その後、設定した時間で、中性子照射装置のシャッターを閉じて、中性子の照射を終了した。照射終了後、極短半減期のRIが減衰するまで、約20分間待って、患者を照射室から出し、ホウ素中性子捕捉療法を終了した。
【0133】
【発明の効果】
本発明の中性子遮蔽板は、以上のように、中性子捕捉療法を受ける生物の体表面の中性子が照射される中性子照射領域に貼り着けて使用するものである。
【0134】
それゆえ、上記の構成によれば、中性子遮蔽板を貼り着けた領域に位置する正常組織が受ける中性子によるダメージを軽減できるとともに、体内における中性子の深達性および到達性の減衰を緩和することができる。
【0135】
すなわち、中性子捕捉療法において、正常組織に与える中性子を最低限に抑えるとともに、体内への中性子の深達性および到達性の減衰を緩和して、照射対象の深部に位置する標的部位に充分な中性子を投与し得る中性子遮蔽板を提供することができるという効果を奏する。
【0136】
本発明の中性子遮蔽板は、上記の構成において、上記中性子照射領域の中心を遮蔽するとともに、上記中性子照射領域の約1/4〜約1/2を遮蔽することがより好ましい。
【0137】
それゆえ、上記の構成によれば、中性子分布が特に高くなる中央部に位置する正常組織が受ける中性子によるダメージを軽減することができるという効果を加えて奏する。
【0138】
本発明の中性子遮蔽板は、上記の構成において、フッ化リチウムからなり、厚さ3mm以上7mm以下、面積10cm以上55cm以下の板状であることがより好ましい。
【0139】
それゆえ、上記の構成によれば、フッ化リチウムを用いることにより、中性子捕捉療法を行なう場合に適した形状の中性子遮蔽板をより容易に製造することができるという効果を加えて奏する。
【0140】
本発明の中性子遮蔽板は、上記の構成において、フッ化リチウムからなり、厚さ3mm以上7mm以下、直径40mm以上80mm以下の略円形の板状であることがより好ましい。
【0141】
それゆえ、上記の構成によれば、中性子照射野が円形である場合に適切な中性子遮蔽を行なうことができるという効果を加えて奏する。
【0142】
本発明のヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子捕捉療法は、以上のように、上記発明のいずれか1つに記載された中性子遮蔽板を用いて、ヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子捕捉療法であって、ヒト以外の哺乳動物である照射対象に照射する中性子の第1の照射条件を設定する第1の条件設定工程と、中性子捕捉元素化合物を上記照射対象に投与する捕捉元素化合物投与工程と、上記照射対象の中性子が照射される中性子照射領域の中心を含む位置に、上記中性子遮蔽板を貼り着ける遮蔽板貼着工程と、上記照射対象に中性子の試験照射を行なう試験照射工程と、上記照射対象に照射する中性子の第2の照射条件を設定する第2の条件設定工程と、上記第1の条件設定工程にて設定された第1の照射条件、および、上記第2の条件設定工程にて設定された第2の照射条件、に基づいて中性子を上記照射対象に照射する中性子照射工程とを含む方法である。
【0143】
それゆえ、上記の方法によれば、中性子遮蔽板に照射された中性子が、中性子遮蔽板の背後に廻り込み、照射対象に入射するため、体内における中性子の深達性および到達性の減衰を緩和することができる。また、上記照射対象の中性子照射領域の中心を含む位置に中性子遮蔽板を貼り着けるため、照射対象の中性子照射領域における中央部の中性子強度を低減することができる。
【0144】
すなわち、中性子捕捉療法において、正常組織に与える中性子を最低限に抑えるとともに、体内への中性子の深達性および到達性の減衰を緩和して、照射対象の深部に位置する標的部位に充分な中性子を投与し得る中性子照射方法を提供することができるという効果を奏する。
【0145】
本発明のヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子捕捉療法は、上記の方法において、捕捉元素化合物投与工程では、パラボロノフェニルアラニン(BPA)とナトリウムボロカプテイト(BSH)とを併用して上記照射対象に投与することがより好ましい。
【0146】
それゆえ、上記の方法によれば、体内における中性子の深達性および到達性の減衰をより緩和することができるとともに、腫瘍部位におけるホウ素濃度の不均一性を解消できるという効果を加えて奏する。
【0147】
本発明の中性子照射方法は、上記の方法において、上記中性子照射工程は、上記照射対象に照射する中性子の照射強度が6.0×10cm−2−1以上3.0×10cm−2−1以下であることがより好ましい。
【0148】
それゆえ、上記の方法によれば、中性子を照射対象に照射する時間を短縮することができるという効果を加えて奏する。
【0149】
本発明の治療用中性子照射装置は、以上のように、照射対象に向けて中性子を出射する中性子出射手段と、中性子の照射条件を入力する条件入力手段と、該条件入力手段にて入力された入力値に応じて中性子の照射を制御する制御手段と、上記中性子出射手段から出射された中性子を上記照射対象まで誘導する中性子輸送手段と、中性子を集束指向する集束指向手段と、上記照射対象を設置する設置台とを備えた治療用中性子照射装置において、上記集束指向手段と上記照射対象との間の、中性子照射野の中心軸が通る位置に、中性子を遮蔽する中性子遮蔽板を備えている構成である。
【0150】
それゆえ、上記の構成によれば、エネルギーの低い中性子は直進性を充分に有していないが、前方に遮蔽物がある場合には容易にその背後に廻り込むという性質を有するため、中性子遮蔽板に照射された中性子は、中性子遮蔽板の背後に廻り込み、照射対象に入射するため、体内における中性子の深達性および到達性の減衰を緩和することができる。
【0151】
また、上記の構成によれば、中性子の中心軸の通る位置に中性子遮蔽板が備えられているため、照射対象の中性子照射領域における中央部の中性子強度を低減することができる。
【0152】
すなわち、中性子捕捉療法において、正常組織に与える中性子を最低限に抑えるとともに、体内への中性子の深達性および到達性の減衰を緩和して、照射対象の深部に位置する標的部位に充分な中性子を投与し得る中性子照射装置を提供することができるという効果を奏する。
【0153】
本発明の治療用中性子照射装置は、上記の構成において、上記中性子遮蔽手段が、フッ化リチウムからなり厚さ3mm以上7mm以下、面積10cm以上55cm以下の板状であることがより好ましい。
【0154】
本発明の治療用中性子照射装置は、上記の構成において、上記中性子遮蔽板が、フッ化リチウムからなり、厚さ3mm以上7mm以下、直径40mm以上80mm以下の略円形の板状であることがより好ましい。
【0155】
上記の構成によれば、フッ化リチウムを用いることにより、所望の形状の中性子遮蔽板をより容易に製造することができるという効果を加えて奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の治療用中性子照射装置の実施の一形態を示す模式図である。
【図2】中性子照射野の中央遮蔽を行なった場合の中性子の性質を模式的に示す模式図である。
【図3】本発明のヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子捕捉療法の一例を示す概略工程図である。
【図4】中性子照射野の中央遮蔽を行なった場合のファントム中の熱中性子分布を調べるために行なった実験の概要を示す模式図である。
【図5】中性子照射野の中央遮蔽を行なった場合のファントム中の熱中性子分布を示すグラフである。
【図6】中性子照射野の中央遮蔽を行なわなかった場合のファントム中の熱中性子分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1 中性子出射装置(中性子出射手段)
2 入力装置(条件入力手段)
3 制御装置(制御手段)
4 真空導管(中性子輸送手段)
5 コリメータ(集束指向手段)
6 治療台(設置台)
7 照射対象
8 遮蔽板(中性子遮蔽板)
10 治療用中性子照射装置
11 中央部
12 辺縁部
15 中性子照射野

Claims (10)

  1. 中性子捕捉療法を受ける生物の体表面の中性子が照射される中性子照射領域に貼り着けて使用する中性子遮蔽板。
  2. 上記中性子照射領域の中心を遮蔽するとともに、上記中性子照射領域の約1/4〜約1/2を遮蔽することを特徴とする請求項1に記載の中性子遮蔽板。
  3. フッ化リチウムからなり、厚さ3mm以上7mm以下、面積10cm以上55cm以下の板状であることを特徴とする請求項1または2に記載の中性子遮蔽板。
  4. フッ化リチウムからなり、厚さ3mm以上7mm以下、直径40mm以上80mm以下の略円形の板状であることを特徴とする請求項1または2に記載の中性子遮蔽板。
  5. 請求項1ないし4に記載の中性子遮蔽板を用いて、ヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子捕捉療法であって、
    ヒト以外の哺乳動物である照射対象に照射する中性子の第1の照射条件を設定する第1の条件設定工程と、
    中性子捕捉元素化合物を上記照射対象に投与する捕捉元素化合物投与工程と、
    上記照射対象の中性子が照射される中性子照射領域の中心を含む位置に、上記中性子遮蔽板を貼り着ける遮蔽板貼着工程と、
    上記照射対象に中性子の試験照射を行なう試験照射工程と、
    上記照射対象に照射する中性子の第2の照射条件を設定する第2の条件設定工程と、
    上記第1の条件設定工程にて設定された第1の照射条件、および、上記第2の条件設定工程にて設定された第2の照射条件、に基づいて中性子を上記照射対象に照射する中性子照射工程とを含むことを特徴とするヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子捕捉療法。
  6. 上記捕捉元素化合物投与工程では、パラボロノフェニルアラニンとナトリウムボロカプテイトとを併用して上記照射対象に投与することを特徴とする請求項5に記載のヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子捕捉療法。
  7. 上記中性子照射工程は、上記照射対象に照射する中性子の照射強度が6.0×10cm−2−1以上3.0×10cm−2−1以下であることを特徴とする請求項5または6に記載のヒト以外の哺乳動物に対して行なう中性子捕捉療法。
  8. 照射対象に向けて中性子を出射する中性子出射手段と、
    中性子の照射条件を入力する条件入力手段と、該条件入力手段にて入力された入力値に応じて中性子の照射を制御する制御手段と、
    上記中性子出射手段から出射された中性子を上記照射対象まで誘導する中性子輸送手段と、中性子を集束指向する集束指向手段と、上記照射対象を設置する設置台とを備えた治療用中性子照射装置において、
    上記集束指向手段と上記照射対象との間の、中性子照射野の中心軸が通る位置に、中性子を遮蔽する中性子遮蔽板を備えていることを特徴とする治療用中性子照射装置。
  9. 上記中性子遮蔽板は、フッ化リチウムからなり、厚さ3mm以上7mm以下、面積10cm以上55cm以下の板状であることを特徴とする請求項8に記載の治療用中性子照射装置。
  10. 上記中性子遮蔽板は、フッ化リチウムからなり、厚さ3mm以上7mm以下、直径40mm以上80mm以下の略円形の板状であることを特徴とする請求項8に記載の治療用中性子照射装置。
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