WO2017168666A1 - スナップボタン及び雄体形成方法 - Google Patents

Abstract

生産性を高め、厚さを薄くすることができるスナップボタンを提供する。スナップボタンは、雌体（４０）と、雌体（４０）に係合及び脱係合可能な雄体（１０）とからなる。前記雌体（４０）は、開口（４１）を有する雌側ハトメ部材（４０）からなる。前記雄体（１０）は、開口（１４）を有する雄側ハトメ部材（１１）と、前記雄側ハトメ部材（１１）の開口（１４）に固定した係合部材（２０）とを備える。前記係合部材（２０）は、前記雌側ハトメ部材（４０）の開口（４１）に対し連結及び連結解除可能な連結部（３０）と、前記雄側ハトメ部材（１１）の開口（１４）に嵌める固定部（２１）とを含む。

Description

スナップボタン及び雄体形成方法

　本発明は、スナップボタン及び雄体形成方法に関し、特に、雄体及び雌体の両方にハトメ部材を使用するスナップボタンと、そのようなスナップボタンの雄体を形成する方法に関する。

　Ｇ　９０　０２　２５０．５（特許文献１）には、スナップボタンの雌体としてハトメを使用し、ハトメが規定する開口に対し、雄体の突起部を着脱する技術が開示される。また、ＤＥ　２１１７６１２（特許文献２）には、一のハトメの開口に、表裏一対の係合部材を固定して雄体とし、別のハトメを雌体として、雄体の表側又は雌側の係合部材を雌体の開口に着脱する技術が記載される。

　しかしながら、特許文献１の雄体は、生地への取り付け時に別個の止具を用いるものである。そのため、雌体と雄体とで構成部品が異なり、生産性が低い。また、雄体を生地に取り付ける際、止具（又は雄体の一部）を加締める（塑性変形させる）必要があり、この加締めに耐えられる強度を雄体に与えるために、雄体の厚さ（高さ）をある程度厚くする必要があった。特許文献２の雄体も一のハトメから表裏に膨出するため、厚いという問題がある。

Ｇ　９０　０２　２５０．５ ＤＥ　２１１７６１２

　従って、本発明は、生産性を高め、厚さを薄くすることができるスナップボタンと、そのようなスナップボタンの雄体を形成する方法を提供することを課題とする。

　上記課題を解決するため、本発明の一側面によれば、雌体と、雌体に係合及び脱係合可能な雄体とからなるスナップボタンであって、前記雌体は、開口を有する雌側ハトメ部材からなり、前記雄体は、開口を有する雄側ハトメ部材と、前記雄側ハトメ部材の開口に固定した係合部材とを備え、前記係合部材は、前記雌側ハトメ部材の開口に対し連結及び連結解除可能な連結部と、前記雄側ハトメ部材の開口に嵌める固定部とを含むスナップボタンが提供される。

　本発明に係るスナップボタンでは、雌体が雌側ハトメ部材からなり、雄体が雄側ハトメ部材と、雄側ハトメ部材の開口に固定される係合部材とを備え、雄体の係合部材の連結部を雌体の開口に連結及び連結解除することにより、雄体と雌体が着脱される。本発明では、雌体の雌側ハトメ部材と雄体の雄側ハトメ部材とに共通のハトメ部材を使用することができ、これにより、スナップボタンの部品点数を減らし、スナップボタンの生産性を高めることができる。また、雌体を雌側ハトメ部材として構成することにより、雌体を薄く設計することができる。更に、雄体の生地への取り付けは、雄側ハトメ部材を生地に取り付け、この雄側ハトメ部材の開口に係合部材の固定部を嵌めて固定することにより行われる。そのため、雄体の生地への取り付けに別個の止具を用いる必要がない。そのため、止具の加締めに耐え得る強度を雄体の係合部材に与える必要がなく、その分、雄体を薄く設計することが可能となる。係合部材の固定部は、雄側ハトメ部材の開口に対し例えば圧入等により固定され得るが、この固定を強固にするため、後述するように雄側ハトメ部材側に突起等を設けることができる。本発明において、雄側及び雌側ハトメ部材各々は、例えば、ハトメ本体とワッシャとからなり得るが、ワッシャがないハトメ部材等であってもよい。

　本発明の一実施形態において、前記係合部材の連結部は、外径が前記雌側ハトメ部材の開口の直径よりわずかに大きい頭部と、外径が前記頭部の外径よりも小さい首部とを有する。この場合、雄体の係合部材の連結部を雌体の開口に連結及び連結解除する際、連結部の頭部の外径が雌体の開口よりもわずかに大きいため、連結部が一時的に半径方向内側に弾性変形した後、半径方向外側に復元する。後述するが、連結部は前記弾性変形が可能な樹脂等により形成され得る。本形態では、連結部の首部の外径は雌体の開口の直径とほぼ同じに設定され得る。

　本発明の一実施形態において、前記係合部材の連結部は、前記頭部及び首部を有する、弾性変位可能な円筒部と、円筒部の半径方向内側にあるポストとを含み、前記円筒部と前記ポストとの間に空隙が存在する。この場合、雄体の円筒部の頭部が雌体の開口を通る際、円筒部が一時的に半径方向内側に弾性変位した後、半径方向外側に復元する。本形態では、円筒部とポストとの間に空隙があることにより、円筒部の半径方向内側への弾性変位が助長される。円筒部とポストとの間の空隙は、周方向に連続していても、周方向に飛び飛びに複数存在していてもよい。

　本発明の一実施形態において、前記係合部材の連結部における前記ポストは、半径方向外側に突出する凸部を周方向に複数有する。本形態では、雄体と雌体との着脱時に雄体の円筒部の頭部が雌体の開口を通る時、円筒部が半径方向内側に一時的に弾性変位する。この円筒部の半径方向内側への弾性変位は、ポストから半径方向外側に突出する周方向複数の凸部に対応する円筒部部分では各凸部に突き当たって制限される。その一方、周方向に隣り合う二つの凸部間に対応する円筒部部分では、凸部による制限がなく、円筒部の半径方向内側への弾性変位が比較的大きくなる。このように、ポストの凸部により、円筒部には、半径方向内側への弾性変位が大きくなる部分と小さくなる部分とが周方向に交互に生じる。そのため、連結部のポストに周方向に複数設ける凸部の数や形状等を変えることにより、雄体を雌体に着脱する際に要する力や、雌体との連結時に雄体に働く横引き力に対する強度を所望に調整することが可能となる。ポストに凸部を形成する工程は、係合部材を、生地に取り付けられた雄側ハトメ部材に固定する時に行うことができる他、係合部材を雄側ハトメ部材に固定する前又は後に行うこともできる。

　本発明の一実施形態において、前記雄側ハトメ部材は、前記開口を規定する内周面から半径方向内側に突出する突起を周方向に複数有する。この場合、雄側ハトメ部材の開口に係合部材の固定部を嵌めて固定する際、雄側ハトメ部材の複数の突起が固定部に食い込み、雄側ハトメ部材と係合部材との固定が強固となる。この固定部への突起の食い込みを助長するため、例えば、雄側ハトメ部材の開口に係合部材の固定部を固定する際、固定部の半径方向外側部分が半径方向外側に押されて雄側ハトメ部材の突起に押し付けられるように、固定部を加締めることができる。

　本発明の一実施形態において、前記係合部材の前記固定部は円筒状であり、前記固定部の半径方向内側に、前記連結部とは軸方向反対側に開放する空間が存在する。この場合、雄側ハトメ部材の開口に係合部材の固定部を嵌める際、固定部が円筒状であるため、固定部が半径方向内側に弾性変形し易くなる。そのため、雄側ハトメ部材の開口の直径よりも大きい外径の固定部を前記開口に圧入し易くなる。また、固定部の半径方向内側の空間は、雄側ハトメ部材の開口に係合部材を固定する工程において、ダイ側の凸部を前記空間に合致させるなどして、係合部材の心出しを助長する役割を果たし得る。

　本発明の一実施形態において、前記固定部の半径方向に沿う厚さは、前記円筒部の半径方向に沿う厚さよりも大きい。この場合、固定部の半径方向における弾性変形性能は、円筒部の半径方向における弾性変形性能よりも低くなる。これにより、固定部を雄側ハトメ部材の開口から外れ難くしつつ、円筒部を雌側ハトメ部材の開口に対し連結及び連結解除可能に設計することが容易となる。

　本発明の一実施形態において、前記雌側ハトメ部材は金属製であり、前記係合部材は樹脂製である。この場合、雌体に対し雄体の係合部材を着脱する際、樹脂対樹脂または金属対金属の場合に生じ得る音がほとんど生じず、静音性が高まる。雌側ハトメ部材をなす金属としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、ステンレス、鉄等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。係合部材をなす樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を挙げることができ、特にポリアセタール、耐熱ナイロン（ポリアミド）等のエンジニアリングプラスチックを好ましく挙げることができるが、これらに限定されるものではない。

　本発明の別の側面によれば、開口を有する雄側ハトメ部材と、前記雄側ハトメ部材の開口に固定する係合部材とを備える雄体にして、前記係合部材が、雌側ハトメ部材の開口に対し連結及び連結解除可能な連結部と、前記雄側ハトメ部材の開口に嵌める固定部とを含む雄体を形成する方法あって、前記雄側ハトメ部材を生地に取り付ける工程Ａと、前記生地に取り付けた雄側ハトメ部材の開口に前記係合部材の固定部を固定する工程Ｂとを含み、前記工程Ａにおいて、前記雄側ハトメ部材の開口を規定する内周面から半径方向内側に突出する突起を周方向に複数形成することを特徴とする雄体形成方法が提供される。

　本発明では、雄側ハトメ部材を生地に取り付ける際に、雄側ハトメ部材の開口を規定する内周面から半径方向内側に突出する突起を周方向に複数形成することにより、工程Ｂにおいて係合部材の固定部を雄側ハトメ部材の開口に嵌めると、雄側ハトメ部材の突起が固定部に食い込むため、係合部材を雄側ハトメ部材の開口に確実に固定することができる。このような突起を雄側ハトメ部材に形成するために、例えば、ハトメ取付用のダイに突起形成エッジを設けるなどすることができる。

　本発明では、前記工程Ｂにおいて、前記係合部材の固定部の半径方向外側部分を前記突起に押し付けるようにすることができる。この場合、生地に取り付けられた雄側ハトメ部材の開口に係合部材の固定部を固定する際、固定部の半径方向外側部分がハトメ部材の突起に押し付けられ、突起が固定部に確実に食い込む。これにより、雄側ハトメ部材の開口に対する係合部材の固定を一層強固にすることができる。

　本発明の更に別の側面によれば、開口を有する雄側ハトメ部材と、前記雄側ハトメ部材の開口に固定する係合部材とを備える雄体にして、前記係合部材が、雌側ハトメ部材の開口に対し連結及び連結解除可能な連結部と、前記雄側ハトメ部材の開口に嵌める固定部とを含み、前記係合部材の連結部が、弾性変位可能な円筒部と、円筒部の半径方向内側にあるポストとを含み、前記円筒部と前記ポストとの間に空隙が存在する雄体を形成する方法あって、前記雄側ハトメ部材を生地に取り付ける工程Ａと、前記生地に取り付けた雄側ハトメ部材の開口に前記係合部材の固定部を固定する工程Ｂとを含み、前記工程Ｂにおいて、前記ポストに半径方向外側に突出する凸部を周方向に複数形成することを特徴とする雄体形成方法が提供される。

　本発明では、生地に取り付けられた雄側ハトメ部材の開口に係合部材の固定部を固定する時に、係合部材の連結部のポストに、半径方向外側に突出する周方向に複数の凸部を加工する。このように係合部材のハトメ部材への固定と連結部のポストへの凸部の加工とを同時に行うことにより、これらを別に行う場合に比べ雄体の生産性を高めることができる。ポストに対する凸部の加工は、例えば専用のパンチダイ（図１２等参照）を用いて行うことができる。

　本発明に係るスナップボタンでは、雌体の雌側ハトメ部材と雄体の雄側ハトメ部材とに共通のハトメ部材を使用することができ、これにより、スナップボタンの部品点数を減らし、スナップボタンの生産性を高めることができる。また、雌体を雌側ハトメ部材として構成することにより、雌体を薄く設計することができる。更に、雄体の生地への取り付けは、雄側ハトメ部材を生地に取り付け、この雄側ハトメ部材の開口に係合部材の固定部を嵌めて固定することにより行われる。そのため、雄体の生地への取り付けに別個の止具を用いる必要がない。そのため、止具の加締めに耐え得る強度を雄体の係合部材に与える必要がなく、その分、雄体を薄く設計することが可能となる。

　本発明に係る雄体形成方法では、雄側ハトメ部材を生地に取り付ける際に、雄側ハトメ部材の開口を規定する内周面から半径方向内側に突出する突起を周方向に複数形成することにより、係合部材の固定部を雄側ハトメ部材の開口に嵌める際、雄側ハトメ部材の突起が固定部に食い込むため、係合部材を雄側ハトメ部材の開口に確実に固定することができる。この場合　雌体を取り付ける止具とは別の特殊な止具（スパイクダイ）が必要になる。

　本発明に係る別の雄体形成方法では、係合部材のハトメ部材への固定と連結部のポストへの凸部の加工とを同時に行うことにより、これらを別に行う場合に比べ雄体の生産性を高めることができる。このような雄体の構成は、係合部材が樹脂製で、雄側ハトメ部材が金属製の場合は特に、生産性及び生地への取り付け易さの向上に有利となる。

図１は、生地に取り付けられた雄体を示す断面説明図である。 図２は、生地に取り付けられた雌体を示す断面説明図である。 図３は、雄体を雌体に連結した状態を示す断面説明図である。 図４は、生地に取り付けられた状態の雄側ハトメ部材と、雄側ハトメ部材に固定する直前でかつ凸部を加工する前の係合部材（初期係合部材）とを示す断面説明図である。 図５は、図４の雄側ハトメ部材の上面図である。 図６は、生地に取り付ける直前のハトメ本体及びワッシャの配置状態を示す断面説明図である。 図７は、凸部のない初期係合部材を左半部に、凸部が形成された係合部材を右半部にそれぞれ示す係合部材の上面説明図である。 図８は、雄体の雄側ハトメ部材を生地に取り付ける際に使用する上方ダイ及び下方ダイを概略的に示す断面説明図である。 図９は、上方ダイ及び下方ダイ間で雄側ハトメ部材を生地に取り付けると共に上方ダイで雄側ハトメ部材に突起を形成する工程を示す拡大断面説明図である。 図１０は、内周面に突起が形成された雄側ハトメ部材を拡大して示す断面説明図である。 図１１は、生地に取り付けられたハトメ部材に初期係合部材を固定すると共に、初期係合部材に凸部を作り出す工程時に使用する上方ダイ及び下方ダイを概略的に示す断面説明図である。 図１２は、図１１の上方ダイに初期係合部材を保持させ、下方ダイにハトメ部材をセットする直前の状態を概略的に示す断面説明図である。 図１３は、上方ダイが初期係合部材を介して下方ダイのダイ本体を押し下げた状態を示す断面説明図である。 図１４は、図１３の時点から上方ダイのダイ本体が更に降下した状態を示す断面説明図である。 図１５は図１４の部分拡大図である。 図１６は、雄体の係合部材の変形例を示す上面図である。 図１７は、図１６のＡ－Ａ矢視断面図である。 図１８は、図１６の係合部材を用いた雄体を示す断面説明図である。 図１９は、図１６の係合部材を上下に反転させたハトメ部材に固定してなる雄体を示す断面説明図である。 図２０は、図１９の雄体を雌体に連結した状態を示す断面説明図である。 図２１は、係合部材の凸部の良否を判定するための測定具を略示する断面説明図である。

　以下、本発明の好適な実施形態を説明するが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び均等の範囲内で適宜変更等が可能である。図１は、衣服の下前等の生地１に取り付けられた雄体１０を示す断面説明図である。図２は、衣服の上前等の生地２に取り付けられた、雄体１０が連結及び連結解除される雌体４０を示す断面説明図である。図３は、雄体１０を雌体４０に連結した状態を示す断面説明図である。以下の説明において、上下方向は、図１～３等の紙面に基づくものとする。雄体１０は、生地１に直接取り付けられる金属製の雄側ハトメ部材１１（以下、単に「ハトメ部材１１」ともいう。）と、生地１に取り付けられた状態のハトメ部材１１に対し固定される樹脂成形品である係合部材２０とから構成される。本例において、係合部材２０は、ポリアセタール、耐熱ナイロン（ポリアミド）等のエンジニアリングプラスチックからなるが、これらに限定されるものではない。ハトメ部材１１は、円筒部１２ａを含むハトメ本体１２と、円筒部１２ａを通す円形の穴１３ａを有する円環状のワッシャ１３とからなる。

　図４は、生地１に取り付けられた状態のハトメ部材１１と、ハトメ部材１１に固定する直前でかつ後述する凸部３５（図１）を加工する前の係合部材２０である初期係合部材２０Ａとを示す断面説明図である。図５は、図４のハトメ部材１１の上面図であり、生地１を省略している。ハトメ部材１１を生地１に取り付ける工程については後述するが、この工程時に、ハトメ本体１２の円筒部１２ａは、生地１を貫通し、次いでワッシャ１３の穴１３ａを通った後、後述するダイ（図９の下方ダイ６０参照；なお、図９では、ハトメ本体１２とワッシャ１３の上下の配置が図６等とは逆になっている。）により半径方向外側へとＣ字状に湾曲するように加締められる。これにより、ハトメ部材１１が生地１に固定され、ハトメ本体１２の湾曲した円筒部１２ａが、生地１を上下に貫通する円形の開口１４を規定する。ハトメ部材１１は、円筒部１２ａの内周面に、一例として八つの突起１５を周方向等間隔に有する。図５等から分かるように、各突起１５は上面視矩形状であり、開口１４を規定する湾曲した円筒部１２ａの内周面から半径方向内側に突出し、半径方向内側へと上下厚さが薄く、鋭利となる。詳しくは後述するが、突起１５は、ハトメ１１を生地１に取り付ける際に上方ダイ５０（図８、図９詳細図等参照）によって形成される。また、これも後述するが、係合部材２０（初期係合部材２０Ａ）は、ハトメ部材１１の開口１４に対し離脱不能に固定される。

　図６は、生地１に取り付ける直前のハトメ本体１２及びワッシャ１３の配置状態を示す断面説明図である。ハトメ本体１２は、上述した円筒部１２ａと、円筒部１２ａの下端から半径方向外側に延びるフランジ部１２ｂとを有する。フランジ部１２ｂの半径方向外側端部は半径方向外側かつ上方へと斜めに曲げられる。ワッシャ１３は、穴１３ａを規定する内側部１３ｂと、内側部１３ｂの半径方向外側端から上方に段状にわずかに高くなった後、半径方向外側に延びる外側部１３ｃとを有する。外側部１３ｃの半径方向外側端部は上方にわずかに凸となるように湾曲する。図４を参照して、生地１に取り付けられた状態のハトメ部材１１は、ハトメ本体１２のフランジ部１２ｂの上面と、ワッシャ１３の下面との間で生地１を挟む。この生地１に接触するフランジ部１２ｂの上面とワッシャ１３の下面とにクッション性のある塗料を事前に施しておくことができる。このようなクッション性のある塗料により、生地１がフランジ部１２ｂやワッシャ１３の縁端によって切断されたり、生地１が引っ張られて生地１がハトメ部材１１から離脱するような事態を防ぐことができる。クッション性のある塗料としては、ウレタン主剤の塗料が望ましいが、その限りではない。

　図２を参照して、雌体４０は、突起１５が無い点を除き雄体１０の雄側ハトメ部材１１と、同じハトメ部材である雌側ハトメ部材４０（以下、単に「ハトメ部材４０」ともいう。）からなる。なお、説明の便宜のため、雌体と雌側ハトメ部材とに同じ参照番号４０を付している。雌体４０は、雄側ハトメ部材１１のハトメ本体１２と同じハトメ本体４２と、ワッシャ１３と同じワッシャ４３とから構成され、雄側ハトメ部材１１のハトメ本体１２には突起１５が形成されるが、雌側ハトメ部材４０のハトメ本体４２には突起１５が形成されない点のみが異なる。雌側ハトメ部材４０は、生地２を貫通する円形の開口４１を規定する。

　図１を参照して、雄体１０の係合部材２０は、雌体４０の開口４１に対し連結及び連結解除が可能な上方の連結部３０と、ハトメ部材１１の開口１４に対し固定する下方の固定部２１と、連結部３０と固定部２１との間において半径方向外側に延びるフランジ部２２と、連結部３０と固定部２１との間でかつフランジ部２２の半径方向内側に存在する基部２３とを備える。連結部３０は、基部２３から上方に延びる円筒部３１と、円筒部３１の半径方向内側において基部２３から上方に隆起するポスト３４とを含む。円筒部３１とポスト３４との間には、上方に開放する環状の空隙３９が存在する。円筒部３１は、雄体１０が雌体４０と連結及び連結解除する際に半径方向内側に弾性変形可能である。ポスト３４の上面３４ａは、円筒部３１の上端よりもわずかに上方に位置し、また、上方にわずかに凸となる湾曲面である。円筒部３１は、外径が比較的大きい上端部である頭部３２と、外径が頭部３２よりもわずかに小さい首部３３とを含む。円筒部３１の内径はほぼ一定である。図１に示す雄体１０の初期状態において、円筒部３１の頭部３２の外径は雌体４０の開口４１の直径よりもわずかに大きく、首部３３の外径は、雌体４０の開口４１の直径と実質的に等しく、またはわずかに小さくなるように設定される。これにより、雄体１０が雌体４０と着脱する際に、雌体１０の円筒部３１の頭部３２が雌体４０の開口４１を通る時、円筒部３１が一時的に半径方向内側に撓み、その直後に半径方向外側に復元する。

　雄体１０の連結部３０のポスト３４は、半径方向外側に突出する一例として六つの凸部３５を周方向等間隔に有する。なお、凸部３５の数は、０～２４、あるいはそれ以上形成することができ、生地１の種類や使用対象（鞄、財布、テント、衣類など）に対応するよう、変更可能である。凸部３５（及び後述する凹部３６）は、初期係合部材２０Ａ（図４参照）に対し、後述する特殊なダイ（図１１の上方ダイ７０参照）によって形成される。初期係合部材２０Ａに凸部３５を作り出す工程は、本実施形態では、後述するように生地１に取り付けられたハトメ部材１１に初期係合部材２０Ａを固定する工程と同時に行われる。しかしながら、初期係合部材２０Ａに対する凸部３５の加工は、初期係合部材２０Ａをハトメ部材１に固定する前又は後で行うこともできる。円筒部３１とポスト３４との間の空隙３９は、連結部３０の弾性変形可能な円筒部３１の成型時に金型を抜くためのスペースとして必要である。ポスト３４に凸部３５を設けることなく空隙３９をそのままに用いる場合、円筒部３１が弾性変形し易いため、雄体１０と雌体４０が連結状態にある際に生地１を介して雄体１０に働く（又は生地２を介して雌体４０に働く）横引き力に対して雄体１０と雌体４０の連結強度が比較的弱いと言える。この連結強度を向上させるため、ポスト３４に凸部３５を形成して空隙３９の一部を凸部３５が占めるようにすることにより、円筒部３１の弾性変形量を調節し、横引きに対する連結強度を高めることができる。

　図７は、凸部３５のない初期係合部材２０Ａを左半部に、凸部３５が形成された係合部材２０を右半部にそれぞれ示す上面説明図である。なお、初期係合部材２０Ａと係合部材２０は、凸部３５及び後述する凹部３６以外、「実質的に共通」するため、凸部３５及び凹部３６以外の部位について同じ参照番号を用いる。換言すれば、凸部３５を加工する前の係合部材２０が初期係合部材２０Ａである。図１において、ハトメ部材１１に固定された状態の係合部材２０の固定部２１の下面には、後述する加締め痕２１ａが存在するが、仮に初期係合部材２０Ａをハトメ部材１１に先に固定した後、連結部３０のポスト３４に凸部３５を加工する場合、初期係合部材２０Ａの固定部２１に加締め痕２１ａが生じることとなる。各凸部３５は、ポスト３４の外周面３４ｂから半径方向外側に上面視ほぼ半円形状に突出する。各凸部３５の半径方向外側端は、円筒部３１の内周面に近接するが、接してもよい。各凸部３５の上面はほぼ水平であり、上下方向において、ポスト３４の上面３４ａとポスト３４の上下方向中間とのほぼ中間に位置する。各凸部３５の上下方向の厚さは、ポスト３４の外周面３４ｂに沿う半径方向内側端から半径方向外側端へと薄くなる。ポスト３４における、各凸部３５に周方向において対応する、各凸部３５から上方の部分は、ポスト３４の上面３４ａ及び外周面３４ｂから陥没する凹部３６となる。各凹部３６は、ポスト３４の外周面３４ｂから半径方向内側に上面視ほぼ半円形状に窪む。各凹部３６の下面はほぼ水平であり、各凸部３５の上面と面一となる。

　雄体１０の係合部材２０の固定部２１は、基部２３から下方に円筒状に突出する。固定部２１の半径方向内側には下方に開放する空間２４が存在する。固定部２１の半径方向に沿う厚さは、連結部３０の円筒部３１の半径方向に沿う厚さの約２倍である。固定部２１の外径ｗ（図４参照）は、ハトメ部材１１の開口１４の直径ｗ１（図５参照）と同じか、それよりもわずかに大きくなるように設定されることが好ましい。固定部２１の外径ｗが開口１４の直径ｗ１よりもわずかに大きい場合、係合部材２０の固定部２１はハトメ部材１１の開口１４に圧入される。固定部２１の半径方向に沿う厚さは、円筒部３１に比べて厚く形成される。そのため、固定部２１は、円筒部３１に比べて弾性変形性能が低い。これにより、ハトメ部材１１の開口１４に対する圧入による連結強度を高めることができる。ハトメ部材１１の直径方向に沿う二つの突起１５間の間隔ｗ２（図５参照）は、開口１４の直径ｗ１よりもわずかに小さい。すなわち、ｗ２＜ｗ１≦ｗの関係となる。そのため、固定部２１の外径ｗが開口１４の直径ｗ１と同じであっても、固定部２１は、少なくとも開口１４の突起１５間に圧入される。この圧入時に突起１５が半径方向外側に弾性変位しつつ半径方向内側へと弾性復帰しようとして固定部２１の外周面に食い込む。このように、ハトメ部材１１の突起１５が固定部２１の外周面に食い込むことにより、係合部材２０の固定部２１がハトメ部材１１の開口１４に強固に連結される。更にこれに加えて、係合部材２０のハトメ部材１１への固定時において、後述する下方ダイ８０のセンターガイドピン８１の突出部８５（図１２参照）を固定部２１の下面に食い込ませて、固定部２１の半径方向外側部分が半径方向外側にずれるように固定部２１を加締める（塑性変形させる）。これにより、固定部２１の内周面がハトメ部材１１の突起１５に押し付けられ、突起１５が固定部２１に一層食い込み、係合部材２０の固定部２１がハトメ部材１１の開口１４に一層強固に連結される。固定部２１の下面には、上記センターガイドピン８１の突出部８５が食い込んで生じた上方に凹となる環状若しくは放射状の加締め痕２１ａが残る。係合部材２０のフランジ部２２は、下面に上方に凹となる窪み２２ａを有する。フランジ部分２２は、係合部材２０がハトメ部材１１に固定された状態で、ハトメ本体１２の円筒部１２ａを窪み２２ａに受け入れる。なお、図４に示す初期係合部材２０Ａの一例において、固定部２１の外径ｗは一定であるが、これに限らず、固定部２１の外径は上方から下方へと漸減するように形成することができる。なお、固定部２１の外径ｗが、ハトメ部材１１の開口１４の直径ｗ１に比べて小さく設定された場合においても、ｗ２＜ｗ≦ｗ１の関係であればよい。この場合も、固定部２１は、少なくとも開口１４の突起１５間に圧入され、ハトメ部材１１の突起１５が固定部２１の外周面に食い込むため、係合部材２０の固定部２１がハトメ部材１１の開口１４に連結される。

　図８は、雄体１０のハトメ部材１１を生地１に取り付ける際に使用する上方ダイ５０及び下方ダイ６０を概略的に示す断面説明図である。ハトメ部材１１を生地１に取り付けるに当たり、上方ダイ５０にはハトメ本体１２が保持され、下方ダイ６０にはワッシャ１３が載置される。このハトメ本体１２とワッシャ１３の上下配置は、図６に示す上下配置と逆になっている。なお、ここでの上下のダイは単なる一例であり、上下が逆に配置されたり、二つのダイが水平方向に配置される場合もある。また、以下では、上方ダイ５０が静止状態の下方ダイ６０に対し昇降する例を挙げるが、下方のダイが上昇したり、上下両方のダイが動く場合もある。以上の点は、後述する上方ダイ７０及び下方ダイ８０についても同様である。上方ダイ５０は、内腔を有する円筒状のダイ本体５１と、ダイ本体５１の下方部分の周囲に配置されるスリーブ５２と、ダイ本体５１の内腔の下方部分（小径部５１ａ）に収容される円柱状の生地押さえ部材５３とを備える。スリーブ５２はばね５４によってダイ本体５１に対し下方に付勢される。また、生地押さえ部材５３はばね５５によってダイ本体５１に対し下方に付勢される。ばね５５は、ダイ本体５１の内腔の上方部分（大径部５１ｂ）に収容される。スリーブ５２は、その内周面から半径方向外側に矩形状に窪む凹部５２ａを有する。ダイ本体５１は、その外周面から半径方向外側に突出し、スリーブ５２の凹部５２ａに受け入れられる凸状のストッパー５１ｄを有する。ばね５４によって下方に付勢されるスリーブ５２は、凹部５２ａの上面がストッパー５１ｄに突き当たることにより、ダイ本体５１に対するそれ以上下方への変位が制限される。ばね５４の上端は、ダイ本体５１の外周面から半径方向外側に突出するばね受け５６によって受けられる。ダイ本体５１の内腔は、ダイ本体５１の上下端に開口し、下方の小径部５１ａと、小径部５１ａから上方で、小径部５１ａよりも直径が若干大きい大径部５１ｂとに区分される。小径部５１ａと大径部５１ｂとの境界には段部５１ｃが存在する。生地押さえ部材５３は、小径部５１ａに収容される円柱状の生地押さえ体５３ａと、生地押さえ体５３ａの上端に連結し、大径部５１ｂに収容される円板状の基端部５３ｂとを有する。基端部５３ｂの外径は小径部５１ａの直径よりも大きい。ばね５５の上端は、大径部５１ｂの上端部に固定されたばね受け５５ａで受けられる。ばね５５でダイ本体５１に対し下方に付勢される生地押さえ部材５３は、基端部５３ｂが段部５１ｃに突き当たることにより、それ以上下方への変位が制限される。

　図８に示す上方ダイ５０は初期状態にある。この初期状態において、スリーブ５２は、ダイ本体５１に対する下方への変位がストッパー５１ａによって制限された、ダイ本体５１に対する最下方位置にある。スリーブ５２は、最下方位置においてダイ本体５１の下端よりも下方に突出する。また、初期状態において、生地押さえ部材５３は、基端部５３ｂがダイ本体５１の段部５１ｃに接することにより、ダイ本体５１に対する下方への変位が制限された、ダイ本体５１に対する最下方位置にある。この最下方位置において生地押さえ体５３ａは、ダイ本体５１の下端よりも下方に突出する。スリーブ５２の下端は、最下方位置において後述するハトメ保持部５７に保持したハトメ本体１２の円筒部１２ａの下端とほぼ同じ上下方向位置にある。生地押さえ部材５３の下端は、最下方位置において、スリーブ５２の下端よりもわずかに上方にある。

　上方ダイ５０は、ダイ本体５１の下端と、最下方位置のスリーブ５２のダイ本体５１の下端よりも下方に突出する部分の内周面とにより規定される、ハトメ本体１２を保持するためのハトメ保持部５７を有する。ダイ本体５１の下端には、ハトメ本体１２のフランジ部１２ｂにほぼ合致する上方にわずかに環状に窪むフランジ受け部５７ａと、フランジ受け部５７ａの半径方向内側端に、円筒部１２ａの内周面に突起１５を形成するための周方向に八つの突起形成エッジ（スパイク）５８とが設けられる。なお、上方ダイ５０及び下方ダイ６０は、雌体（雌側ハトメ部材）４０を生地２に取り付ける際に使用することもできる。この場合は、突起形成エッジ（スパイク）５８の無い上方ダイを用いる。ダイ本体５１の下端は、フランジ受け部５７ａの半径方向内側端（突起形成エッジ５８）から半径方向内側へと上方に傾斜する。突起形成エッジ５８の無いノーマルダイは滑らかな隆起部から半径方向内側へと上方に６６ｂの如く傾斜する。ハトメ本体１２のフランジ部１２ｂの直径は、スリーブ５２の内径よりもわずかに大きい。これにより、ハトメ本体１２は、フランジ部１２の半径方向外側端とスリーブ５２の内周面との間の摩擦により、フランジ保持部５７に保持される。この時、フランジ部１２ｂはフランジ受け部５７ａに受けられる。

　下方ダイ６０は、ほぼ円柱状のダイ本体６１と、ダイ本体６１の上半部の周囲に配置されるスリーブ６２とを備える。スリーブ６２の下端は、ダイ本体６１の外周面から半径方向外側に突出するスリーブ受け６３に受けられる。スリーブ６２の上面の半径方向内側部分には、ワッシャ１３の外側部１３ｃが置かれる下方に凹となる環状のワッシャ載せ部６４が設けられる。ダイ本体６１の上端には、ハトメ本体１２の円筒部１２ａを半径方向外側にＣ字状に湾曲させるための環状の凹部６５と、凹部６５の半径方向内側において上方に隆起する生地支持部６６とが設けられる。生地支持部６６は、凹部６５から連続して半径方向内側かつ上方に傾斜する傾斜面６６ａと、傾斜面６６ａの上端の半径方向内側にある円形の水平面６６ｂとを有する。水平面６６ｂは、図８の初期状態のスリーブ６２の上端よりもわずかに上方に位置する。

　次に、上方ダイ５０及び下方ダイ６０を使用してハトメ部材１１を生地１に取り付ける工程について説明する。上方ダイ５０のハトメ保持部５７にハトメ本体１２を保持させ、下方ダイ６０のワッシャ載せ部６４にワッシャ１３をセットし、更にワッシャ１３上に生地１を配置した状態（図８において生地１は省略される。）から、図示しないハトメ取付装置の昇降部を駆動して上方ダイ５０を降下させる。これにより、まず、上方ダイ５０のスリーブ５２の下端及び生地押さえ体５３ａの下面が、下方ダイ６０のスリーブ６２の上端及びダイ本体６１の生地支持部６６の水平面６６ｂのそれぞれに対し、生地１を介して突き当たり、それ以上下方への変位が制限される。他方、上方ダイ５０のダイ本体５１は図９に示す位置まで更に降下し続ける。これにより、ハトメ本体１２の円筒部１２ａが生地１を下方に貫通し、次いでワッシャ１３の穴１３ａを通った後、図９に拡大して示すように下方ダイ６０の凹部６５によって半径方向外側へとＣ字状に湾曲するように加締められる。これにより、円筒部１２の先端がワッシャ１３の内側部１３ｂの下面（上下方向は図８及び９の紙面に基づく。）に受け止められる。これにより、生地１がフランジ部１２ｂとワッシャ１３との間に挟まれた形でハトメ部材１１が生地１に固定される。ハトメ本体１２の円筒部１２ａが生地１を下方に貫通する時、円筒部１２ａの先端は、下方ダイ６０のダイ本体６１の生地支持部６６の傾斜面６６ａに対し生地１を押し付けながら生地１を切断する。また、雄側ハトメ本体１２の加締め時において、上方ダイ５０のダイ本体５１の下端に設けられた八つの突起形成エッジ５８が湾曲させられている円筒部１２の内周面のフランジ部１２ｂ側に食い込み（図９参照）、この内周面に八つの突起１５を作り出す（図１０の拡大図参照）。雌側のハトメ本体４２を加締める時には、八つの突起形状エッジは無く、内周面の八つの突起形状は存在しない。ダイ本体５１が図９に示す最下方位置まで降下する際、ばね５４、５５がばね受け５６、５５ａによって圧縮され、これにより、上方ダイ５０のスリーブ５２及び生地押さえ部材５３が下方に押される。これにより、生地１がスリーブ５２の下端及び生地押さえ体５３の下端面と下方ダイ６０のスリーブ６２の上端及びダイ本体６１の生地支持部６６の水平面６６ｂとの間でしっかりと押さえ付けられる。これにより、ハトメ本体１２の円筒部１２ａが生地１を貫通する時に生地１が円筒部１２ａの先端に引っ張れてずれるようなことがなく、円筒部１２ａによる生地１の切断が円滑に行われる。

　雌体４０は、突起１５を形成しない雄体１０のハトメ部材１１と同じものである。そのため、雌体４０の生地２への取り付けに使用する上方ダイは、上述した上方ダイ５０と比べ、突起形成エッジ５８を有しない。なお、下方ダイ６０は、上述した下方ダイ６０と同じ構成である。

　次に、生地１に取り付けられた雄側ハトメ部材１１に対し初期係合部材２０Ａを固定すると共に、初期係合部材２０Ａに凸部３５を作り出す工程を説明する。図１１は、その工程時において初期係合部材２０Ａを保持させる上方ダイ７０と、生地１に取り付けられた状態のハトメ部材１１をセットする下方ダイ８０とを概略的に示す断面説明図である。図１２は、図１１に示す上方ダイ７０に初期係合部材２０Ａを保持させると共に、下方ダイ８０に生地１に取り付けられたハトメ部材１１をセットした（便宜的にセット直前を示す）状態を示す断面説明図である。上方ダイ７０は、円柱状のダイ本体７１と、ダイ本体７１の下方部分を覆う、初期係合部材２０Ａを保持させるホルダ７４と、ダイ本体７１の周囲でホルダ７４の上方に配置する弾性部材７５とを備える。弾性部材７５は、円筒状に形成しても良い。ダイ本体７１は鋼等からなる。ホルダ７４は合成樹脂又は金属からなる。弾性部材７５は、ウレタン、エラストマー等の弾性材料からなる。実施例のダイ本体７１は、その下端面から下方に突出する、周方向に六本のパンチダイ７２を有する。各パンチダイ７２は、初期係合部材２０Ａに各凸部３５を形成するためのものであり、水平断面が円形である。ダイ本体７１の上下方向ほぼ中間部には、半径方向外側に突出する、弾性部材７５の上端面を受ける受け部７３が設けられる。弾性部材７５の内周面の上端部には、わずかに内径が拡大する拡径部７５ａが形成される。ダイ本体７１の外周面における受け部７３の直ぐ下には、弾性部材７５の拡径部７５ａと嵌合する、わずかに外径が縮小する環状の窪み７１ａが設けられる。この拡径部７５ａと窪み７１ａの嵌合により、弾性部材７５はダイ本体７１に装着される。

　ホルダ７４は、ダイ本体７１の下方部分の周囲に配置される円筒状の周側部７４ａと、周側部７４ａの下方を、後述するパンチ孔７４ｃを除いて閉じる底部７４ｂとを含む。ホルダ７４の底部７４ｂの下面には、上方に窪む、初期係合部材２０Ａを保持するための保持部７６が設けられている。保持部７６は、初期係合部材２０Ａの連結部３０に合致する形状を有する。ホルダ７４の底部７４ｂには、六本のパンチダイ７２を通すための六つのパンチ孔７４ｃが形成される。各パンチ孔７４ｃの下端は保持部７６に開口する。ホルダ７４の周側部７４ａの上端部は、弾性部材７５によって支持される。周側部７４ａは、その上端面の半径方向内側部分から上方に更に延びる環状の凸キー７４ｄを有する。凸キー７４ｄの外径は上方へとわずかに拡大する。弾性部材７５は、その下端面の半径方向内側部分から上方に窪み、凸キー７４ｄと嵌合する凹キー７５ａを有する。凹キー７５ａの内径は上方へとわずかに拡大する。ホルダ７４の周側部７４ａと弾性部材７５とは凸キー７４ｄと凹キー７５ａとの嵌合を介して連結する。

　図１１及び図１２において、上方ダイ７０は、ホルダ７４及び弾性部材７５に力が働いていない初期状態にある。この初期状態において、ダイ本体７１の下端面とホルダ７４の底部７４ｂの上面との間にはクリアランスＣが存在する。このクリアランスＣの上下間隔は、初期状態で最も大きく、以下に述べる初期係合部材２０Ａの固定及び初期係合部材２０Ａに対する凸部３５の加工時において狭まる。また、初期状態において、各パンチダイ７２の下端は、ホルダ７４の底部７４ｂのパンチ孔７４ｃ内においてパンチ孔７４ｃの下端よりも上方にあり、保持部７６内には突出していない。

　初期係合部材２０Ａを後述するように加締めるためのダイ本体８１と、ダイ本体８１の周囲に配置され、生地１に取り付けられた状態のハトメ部材１１が載置される弾性部材８２と、ダイ本体８１をコイル状のばね８４を介して支持すると共に、弾性部材８２を支持する支持部材８３とを備える。ダイ本体８１は鋼等からなる。弾性部材８２は、ウレタン、エラストマー等の弾性材料からなる。支持部材８３は金属からなる。ダイ本体８１は、上半部８１ａと、上半部８１ａよりもわずかに外径が小さい下半部８１ｂと、上半部８１ａと下半部８１ｂとの間において、半径方向外側に突出するばね受け部８１ｃとを含む。支持部材８３は、ばね８４を収容する円柱状の空間であるばね収容部８３ａを有する。ばね収容部８３ａは、支持部材８３の上端面に開口する。ダイ本体８１や弾性部材８２に力が働いていない下方ダイ８０の初期状態において（図１１及び１２参照）、ばね収容部８３ａに収容されたばね８４は、支持部材８３の上端面よりも上方に突出し、ダイ本体８１の下半部８１ｂを内側に受け入れ、ばね８４の上端がダイ本体８１のばね受け部８１ｃに接触している。この初期状態において、支持部材８３の上端面とばね受け部８１ｃとの間には間隔Ｄが存在する。この間隔Ｄの上下間隔は、初期状態で最も大きく、以下に述べる初期係合部材２０Ａの固定及び初期係合部材２０Ａに対する凸部３５の加工時において狭まる。また、ダイ本体８１の下半部８１ｂの下端とばね収容部８３ａの底面との間には、上記間隔Ｄよりも大きい間隔が存在する。

　支持部材８３は、上下方向におけるばね収容部８３ａの底面よりも若干上に、半径方向外側に突出する、弾性部材８２の下端面を受ける受け部８３ｂを有する。弾性部材８２は、ダイ本体８１のばね受け部８１ｃから上方の上方部８２ａと、上方部８２ａより下方の下方部８２ｂとに区分される。上方部８２ａは、下方部８２ｂよりも内径が小さく、この内径は、ダイ本体８１の上半部８１ａの外径とほぼ同じである。ダイ本体８１のばね受け部８１ｃは、初期状態において弾性部材８２の上半部８１ａの下端と接する。弾性部材８２の下方部８２ｂの内径は、支持部材８３の受け部８３ｂより上方部分８３ｃの外径とほぼ同じである。この上方部分８３ｃには、半径方向外側に断面三角形状に突出する凸部８３ｄが設けられる。弾性部材８２の下方部８２ｂには、凸部８３ｄと嵌合する凹部８２ｃが形成される。

　ダイ本体８１は、上半部８１ａの上端面の半径方向外側に上方に鋭利に環状に突出する突出部８５と、突出部８５の半径方向内側において、上半部８１ａの上端面から上方に、突出部８５よりも高く隆起する隆起部８６とを有する。隆起部８６は、初期係合部材２０Ａの固定部２１の半径方向内側にある空間２４に嵌まる形状を有する（図１４参照）。弾性部材８２は、その上端面に、生地１に取り付けられたハトメ部材１１をセットするための環状の窪みであるハトメ載せ部（受け部）８７を有する。図１１及び１２に示す下方ダイ８０の初期状態において、ダイ本体８１は、ばね８４に支持されたばね受け部８１ｃが弾性部材８２の上方部８２ａの下端面に接する最上方位置にある。この時、ダイ本体８１の上半部８１ａは、弾性部材８２の上端よりも上方に部分的に突出し、突出部８５及び隆起部８６がハトメ載せ部８７よりも上方にある。

　初期係合部材２０Ａに凸部３５を加工すると共に、初期係合部材２０Ａを係合部材２０としてハトメ部材１１に固定するに当たり、図１２に示すように上方ダイ７０の保持部７６に初期係合部材２０Ａの連結部３０を保持させる。また、生地１に取り付けられた状態のハトメ部材１１を、下方ダイ８０のハトメ載せ部８７にセットする。この時、ハトメ部材１１の開口１４にダイ本体８１の上半部８１ａを通す。次いで、上方ダイ７０を図１２の初期状態から降下させる。これにより、初期係合部材２０Ａを、支持部材８３に支えられた弾性部材８２のハトメ載せ部８７に支えられたハトメ部材１１の開口１４に押し込む。さらに上方ダイ７０を降下させると、図１３及び図１４に示すように、上方ダイ７０が初期係合部材２０Ａを介して下方ダイ８０のダイ本体８１を最上方位置から、ばね受け部８１ｃが支持部材８３の上端面に突き当たる最下方位置まで押し下げる。これにより、ばね８４がばね受け部８１ｃにより圧縮される。図１３は、ダイ本体８１が最下方位置に達する直前を示し、ばね受け部８１ｃと支持部材８３との間の間隔Ｄが残っている。図１４は、ばね受け部８１ｃが支持部材８３の上端面に突き当たった最下方位置を示し、この時点で、ばね受け部８１ｃと支持部材８３との間にあった間隔Ｄがなくなる。また、この時、ダイ本体８１の下端はばね収容部８３ａの底面には達しない。さらに、図１３の時点で、下方ダイ８０のダイ本体８１の隆起部８６が固定部２１の半径方向内側にある空間２４に入り込んでいる。また、図１３の時点で、初期係合部材２０Ａの固定部２１は、ハトメ部材１１の開口１４に対し部分的に入り込んでいるが、固定部２１の開口１４への圧入は完了していない。

　上方ダイ７０が図１４に示す位置まで更にわずかに降下することにより、以下に詳述するように初期係合部材２０Ａがハトメ部材１１に固定されると共に、初期係合部材２０Ａに凸部３５が形成される。上方ダイ７０が図１３の時点から図１４の時点へと下方に変位する際、まず、初期係合部材２０Ａの固定部２１がハトメ部材１１の開口１４に圧入され、次いで、初期係合部材２０Ａの固定部２１がハトメ部材１１の開口１４に対し加締められ、次いで、初期係合部材２０Ａのポスト３４に凸部３５が形成される。これらはほぼ同時に行われるとも言えるが、厳密には上記の順で行われる。固定部２１のハトメ部材１１の開口１４への圧入時において、固定部２１をハトメ部材１１の開口１４に押し込む力は、下方ダイ８０の弾性部材８２が弾性変形して受ける。また、初期係合部材２０Ａの固定部２１を加締める力は、下方ダイ８０の弾性部材８２の弾性変形に加えて上方ダイ７０の弾性部材７５が弾性変形して受ける。さらに、初期係合部材２０Ａに凸部３５を加工する力は、上述した上下の弾性部材８２、７５の弾性変形に加えて、弾性部材７５がさらに弾性変形して受ける。以上の点を以下にさらに詳述する。

　上方ダイ７０が図１３の時点から図１４の時点へと下方に変位する際、上方ダイ７０が初期係合部材２０Ａを介して下方ダイ８０のダイ本体８１を押し下げる。この時、初期係合部材２０Ａの固定部２１が、下方ダイ８０の弾性部材８２のハトメ載せ部８７にセットされたハトメ部材１１の開口１４に押し込まれる。これに伴い、初期係合部材２０Ａのフランジ部２２がハトメ部材１１の円筒部１２ａを覆うようにしハトメ部材１１を下方に押す。これにより、下方ダイ８０の弾性部材８２が上下方向（軸方向）に短縮しつつその上下方向中間部が半径方向外側に膨らむように弾性変形する（図１４参照）。このように弾性変形した弾性部材８２の圧縮反力は、下方に変位する初期係合部材２０Ａに対しハトメ部材１１を相対的に持ち上げるように作用する。これにより、初期係合部材２０Ａの固定部２１がハトメ部材１１の開口１４に圧入される。この固定部２１の開口１４への圧入する力は、弾性部材８２が弾性変形して受ける。

　初期係合部材２０Ａの固定部２１のハトメ部材１１の開口１４への圧入が完了するとほぼ同時に、下方ダイ８０のダイ本体８１は、ばね受け部８１ｃが支持部材８３の上端面に突き当たる最下方位置となり、それ以上下方への変位が制限される。このように更なる下方への変位が制限されたダイ本体８１により、初期係合部材２０Ａを介して上方ダイ７０におけるホルダ７２の更なる下方への変位が制限される。しかしながら、上方ダイ７０のダイ本体７１は図１４の最下方位置までその後もわずかに降下する。そのため、上方ダイ７０の弾性部材７５がダイ本体７１の受け部７３とホルダ７４の周側部７４ａとの間で軸方向（上下方向）に圧縮され、弾性部材７５は軸方向にわずかに短縮しつつその上下方向中間部が半径方向外側に膨らむように弾性変形する（図１４参照）。このように弾性変形した弾性部材７５の圧縮反力は、ホルダ７４を介して初期係合部材２０Ａを下方ダイ８０のダイ本体８１に押し付けるように作用する。これにより、初期係合部材２０Ａは、ダイ本体８１の突出部８５によって固定部２１が次のように加締められる。すなわち、図１５に拡大して示すように、ダイ本体８１の突出部８５が初期係合部材２０Ａの固定部２１にその下面から食い込む。これにより、固定部２１の半径方向外側部分の材料が半径方向外側に押しやられ、ハトメ部材１１の突起１５に押し付けられる。これにより、初期係合部材２０Ａの固定部２１がハトメ部材１１に対し、開口１４から離脱不可能に固定される。このようにして初期係合部材２０Ａの固定部２１のハトメ部材１１の開口１４に対する加締めが完了する。以上の初期係合部材２０Ａの固定部２１を加締める力は、下方ダイ８０の弾性部材８２と上方ダイ７０の弾性部材７５とがそれぞれ弾性変形して受けられる。雄体１０の係合部材２０の固定部２１の下面には、突出部８５が食い込んだ痕が加締め痕２１ａとして残る。以上の初期係合部材２０Ａの固定部２１をハトメ部材１１に固定する工程において、下方ダイ８０の隆起部８６が初期係合部材２０Ａの空間２４に嵌まることにより、初期係合部材２０Ａの心出し（位置合わせ）が正確に行われる。また、上方ダイ７０の弾性部材７５と下方ダイ８０の弾性部材８２が弾性変形しつつ初期係合部材２０Ａのフランジ部２２及びハトメ部材１１を挟み付けて保持するため、初期係合部材２０Ａの固定部２１のハトメ部材１１に対する加締め加工が安定的に行われる。

　上述したように上方ダイ７０が初期係合部材２０Ａを介して下方ダイ８０のダイ本体８１を最下方位置まで押し下げ、ホルダ７４が下方への変位を制限された後、上方ダイ７０のダイ本体７１は更に下方にわずかに降下する。これにより、弾性部材８２が、初期係合部材２０Ａの固定部２１の加締め時点からさらに弾性変形し、また、ダイ本体７１の下端面がホルダ７４の底部７４ｂの上面に近接し、この間にあったクリアランスＣの上下間隔が減少する（図１４参照）。これに伴い、六本のパンチダイ７２がホルダ７４のパンチ孔７４ｃの下端から下方に突出し、保持部７６に保持されている初期係合部材２０Ａの連結部３０のポスト３４を上方から部分的に押し潰す。これにより、ポスト３４の上面３４ａから下方に陥没する凹部３６が周方向に六つ形成されると共に、凹部３６に対応する部分の材料が周方向外側に膨出して周方向に六つの凸部３５が形成される。以上の初期係合部材２０Ａに凸部３５を加工する力は、弾性変形した下方ダイ８０の弾性部材８２と、固定部２１の加締め時を上回る弾性変形をした上方ダイ７０の弾性部材７５とにより受けられる。また、初期係合部材２０Ａに対する凸部３５の加工の程度、すなわち、凹部３６のポスト３４の上面３４ａからの深さや凸部３５の半径方向外側への突出程度は、パンチダイ７２の初期位置からの降下量、すなわち、ダイ本体７１のストロークを変更することにより所望に調整することができる。以上のようにして、初期係合部材２０Ａが係合部材２０に成形されつつ生地１上のハトメ部材１１に固定される。なお、パンチダイ７２による凸部３５の加工時に初期係合部材２０Ａの固定部２１が下方ダイ８０のダイ本体８１に押し付けられ、これが、突出部８５による固定部２１の加締めを助長する。また、生地１の厚さにより、ハトメ部材１１の開口１４を規定する円筒部１２ａの内周面の湾曲具合が異なるが、パンチダイ７２で連結部３０のポスト３４に凸部３５を形成しつつ固定部２１を開口１４に固定することにより、湾曲具合が異なる種々のハトメ部材１１の開口１４に対し確実に固定部２１を固定することが可能となる。

　以上の初期係合部材２０Ａをハトメ部材１１の開口１４に固定すると共に、初期係合部材２０Ａに凸部３５を形成する工程においては、次の三つの力を管理することが重要である。すなわち、１）ハトメ部材１１の開口１４に初期係合部材２０Ａの固定部２１を押し込む力（この力を下方ダイ８０の弾性体８２が一定のたわみを持って受ける。）と、２）初期係合部材２０Ａの固定部２１を加締める力（この力を、上方ダイ７０の弾性部材７５が一定のたわみを持って受ける。そのため、上方ダイ７０の弾性部材７５は上記１）と２）の力の合計を一定のたわみを持って受ける。）と、３）初期係合部材２０Ａに凸部３５を加工する力（降下が制限されたホルダ７４に対するダイ本体７１の降下により弾性部材７５が上記２）からさらにたわみ、ダイパンチ７２により初期係合部材２０Ａに凸部３５が形成される。この３）の力は、上記１）の力と上記２）の力の合計を上回る。）である。上方ダイ７０のホルダ７４が初期係合部材２０Ａを下方ダイ８０の、最下方位置まで降下したダイ本体８１に押し付けると、弾性部材８２が弾性変形する。この弾性部材８２の弾性変形による軸方向の圧縮反力が上記１）の力を上回ると、初期係合部材２０Ａの固定部２１がハトメ部材１１の開口１４に十分に押し込まれた状態となる。次いで、固定部２１の加締めが十分に行われるまで、上方ダイ７０は初期係合部材２０Ａを下方ダイ８０のダイ本体８１に対して圧縮する。この時、下方ダイ８０の弾性部材８２の弾性変形に加えて、上方ダイ７０の弾性部材７５も下方ダイ８０からの反力を受けて弾性変形しており、この弾性部材７５の弾性変形は、ダイパンチ７２によって初期係合部材２０Ａに凸部３５を形成し終わるまで継続する。つまり、弾性部材７５が弾性的に圧縮された時の力は、上記１）の力よりも大きく、更に、上記１）の力と上記２）の力の合計を上回る必要がある。また初期係合部材２０Ａは、最も弾性的に圧縮した弾性部材７５から受ける力に耐え得る強度すなわち圧縮耐力を有する必要がある。ここで、上記１）及び２）の力をそれぞれＸｋｇ、上記３）の力をＹｋｇとすると、初期係合部材２０Ａは合計（２Ｘ＋Ｙ）ｋｇの力で圧縮される。この時の弾性部材７５、８２の弾性変形による軸方向において短縮する長さ（たわみ量）をそれぞれＬｍｍ、Ｎｍｍとすると、弾性部材７５のばね定数は、２ｘ＋ｙ／Ｌ（ｋｇ／ｍｍ）以上、弾性部材８２のばね定数は、２ｘ＋ｙ／Ｎ（ｋｇ／ｍｍ）以上に設定する必要がある。

　図３を参照して、雄体１を雌体２に連結する場合、雄体１の係合部材２０の連結部３０を雌体４０の開口４１に連結する。この連結の際、連結部３０の円筒部３１の頭部３２が開口４１を通る時、円筒部３１が一時的に半径方向内側に弾性変位し、その直後に半径方向外側に復元する。この円筒部３１の半径方向内側への弾性変位は、ポスト３４から突出する六つの凸部３５に対応する円筒部３１の部分では各凸部３５に突き当たって制限される。その一方、周方向に隣り合う二つの凸部３５間に対応する円筒部３１の部分では、凸部３５による制限がなく、円筒部３１の半径方向内側への弾性変位が比較的大きくなる。このように、ポスト３４の凸部３５により、円筒部３１には、半径方向内側への弾性変位が大きくなる部分と小さくなる部分とが周方向に交互に生じる。そのため、連結部３０のポスト３４に設ける凸部の数や形状等を変えることにより、雄体１０を雌体４０に着脱する際に要する力や、雌体４０との連結時に雄体１０に働く横引き力に対する強度（雌体４０に対する離脱抵抗）を所望に調整することが可能となる。

　図１６は、雄体１０の係合部材の変形例である係合部材１２０を示す上面図であり、図１７は、図１６のＡ－Ａ矢視断面図である。係合部材１２０は、雌体４０の開口４１に対し連結及び連結解除が可能な連結部１３０と、雄側ハトメ部材１１の開口１４に対し固定する固定部１２１と、連結部１３０と固定部１２１との間において半径方向外側に若干突出するフランジ部１２２と、連結部１３０と固定部１２１との間でかつフランジ部１２２の半径方向内側に存在する基部１２３とを備える。連結部１３０は、基部１２３から上方に延びる円筒部１３１と、円筒部１３１の半径方向内側において基部１２３から上方に隆起するポスト１３４とを含む。円筒部１３１とポスト１３４との間には、上方に開放する環状の空隙１３９が存在する。連結部１３０及びポスト１３４は、上述した初期係合部材２０Ａの連結部３０及びポスト３４それぞれと実質的に同じ形態である。連結部１３１の半径方向内側には下方に開放する空間１２４が存在する。係合部材１２０は、既述した係合部材２０と同様にポスト１３４に凸部及び凹部が加工される。そのため、係合部材１２０は、凸部等の加工前の初期係合部材１２０Ａに対応すると言える。また、係合部材１２０の固定部１２１は、係合部材２０の固定部２１と同様に、ハトメ部材１１の開口１４への固定時に突起１５に対し押し付けられるように加締められる。係合部材１２０の円筒部１３１は、外径が比較的大きい上端部である頭部１３２と、外径が頭部１３２よりもわずかに小さい首部１３３とを含む。円筒部１３１には、周方向に一例として１２０度間隔で三つのスリット１３１ａが設けられている。各スリット１３１ａは、円筒部１３１の半径方向に沿う厚さを貫通し、円筒部１３１の上端から円筒部１３１の全高さにわたって形成される。このようなスリット１３１ａは、係合部材１２０を含む雄体１０が雌体４０と着脱する際の円筒部１３１の弾性変形を助長する。なお、スリット１３１ａの数は、０～３０、あるいはそれ以上形成することができる。係合部材１２０のフランジ部１２２は、既述した係合部材２０のフランジ部２２に比べて半径方向外側への長さが短い。その分、係合部材１２０の材料費を低減することができる。

　図１８は、上述した係合部材１２０とハトメ部材１１（雄体１０のハトメ部材１１と実質的に同じものなので同じ参照番号を付す。）とからなる雄体１１０を示す断面説明図である。係合部材１２０のハトメ部材１１への固定は、上述した上方ダイ７０及び下方ダイ８０を用いて係合部材２０についてと同様に行うことができる。なお、図１８～２０において、上方ダイ７０により形成可能な係合部材１２０の凸部については図示を省略している。図１９は、係合部材１２０を、上下に反転させたハトメ部材１１に対し固定してなる雄体１１０ａを示す断面説明図である。このような雄体１１０ａは、下方ダイ８０のハトメ載せ部８７にハトメ部材１１を上下反転させてセットした後、係合部材１２０を保持させた上方ダイ７０を降下させることにより得ることができる。図示はしないが、係合部材２０も上下反転したハトメ部材１１に固定することができる。雄体１１０ａでは、ハトメ部材１１の突起１５が、係合部材１２０の固定部１２１の外周面において、雄体１２０（図１８）に比べより基端側に食い込む。図２０は、雄体１１０ａを、既述した生地２に取り付けられている雌体４０に連結した状態を示す断面説明図である。

　図２１は、雄体１０の係合部材２０に加工した凸部３５の良否を凹部３６の深さから検知するための測定具１４０である。測定具１４０は、ボックス状の本体１４１と、本体１４１から下方に六本突出する円柱バー状の測定子１４２とを備える。各測定子１４２は、係合部材２０の各凹部３６の深さを測定可能なセンサーである。本体１４１は、図示はしないが、各測定子１４２からの入力すなわち各凹部３６の深さが所定の範囲内か否かを判定するコントローラと、ある測定子１４２からの入力が所定の範囲外の場合にコントローラが不良有りと判定してアラームを出力するモニタやブザーとを有する。各測定子１４２の直径は、係合部材２０の凹部３６に円滑に挿入できる寸法であればよい。係合部材２０の凸部３５の良否判定に際し、測定部１４０は、雄体１０の係合部材２０に対し、各測定子１４２が各凹部３６と上下方向に整列するように配置される。次いで、測定具１４０が図示しない上下動機構によりすべての測定子１４２が凸部３５の上面等に接するまで降下される。例えば、係合部材２０の凹部３６が浅すぎたりあるいは凹部３６が全く形成されていない場合、その凹部３６に対応する測定子１４２からの入力をコントローラは不良と判定し、アラームを出力する。そのような凹部３６はパンチダイ７２による打ち付け量が不足していると考えられる。他方、ある凹部３６が深すぎても、その凹部３６に対応する測定子１４２からの入力に基づきコントローラは不良判定を行う。そのような凹部３６は、パンチダイ７２による取り付けが強すぎて、係合部材２０自体の破壊危険性が高まると考えられる。

　１、２　生地
　１０、１１０、１１０ａ　雄体
　１１　雄側ハトメ部材
　１２　ハトメ本体
　１２ａ　円筒部
　１２ｂ　フランジ部
　１３　ワッシャ
　１４　開口
　１５　突起
　２０、１２０　係合部材
　２０Ａ　初期係合部材
　２１、１２１　固定部
　２２、１２２　フランジ部
　２４、１２４　空間
　３０、１３０　連結部材
　３１、１３１　円筒部
　３２、１３２　頭部
　３３、１３３　首部
　３４、１３４　ポスト
　３５　凸部
　３６　凹部
　３９、１３９　空隙
　４０　雌体（雌側ハトメ部材）
　４１　開口
　５０　上方ダイ
　５８　突起形成エッジ
　６０　下方ダイ
　７０　上方ダイ
　７１　ダイ本体
　７２　パンチダイ
　７４　ホルダ
　７５　弾性部材
　７６　保持部
　８０　下方ダイ
　８１　ダイ本体
　８２　弾性部材
　８３　支持部材
　８４　ばね
　８５　突出部
　８６　隆起部
　８７　ハトメ載せ部
　１４０　測定具
　１４２　測定子

Claims (11)

1. 　雌体（４０）と、雌体（４０）に係合及び脱係合可能な雄体（１０、１１０、１１０ａ）とからなるスナップボタンであって、
   　前記雌体（４０）は、開口（４１）を有する雌側ハトメ部材（４０）からなり、
   　前記雄体（１０、１１０、１１０ａ）は、開口（１４）を有する雄側ハトメ部材（１１）と、前記雄側ハトメ部材（１１）の開口（１４）に固定した係合部材（２０、１２０）とを備え、
   　前記係合部材（２０、１２０）は、前記雌側ハトメ部材（４０）の開口（４１）に対し連結及び連結解除可能な連結部（３０、１３０）と、前記雄側ハトメ部材（１１）の開口（１４）に嵌める固定部（２１、１２１）とを含むスナップボタン。
2. 　前記係合部材（２０、１２０）の連結部（３０、１３０）は、外径が前記雌側ハトメ部材（４０）の開口（４１）の直径よりわずかに大きい頭部（３２、１３２）と、外径が前記頭部（３２、１３２）の外径よりも小さい首部（３３、１３３）とを有する請求項１に記載のスナップボタン。
3. 　前記係合部材（２０、１２０）の連結部（３０、１３０）は、前記頭部（３２、１３２）及び首部（３３、１３３）を有する、弾性変位可能な円筒部（３１、１３１）と、円筒部（３１、１３１）の半径方向内側にあるポスト（３４、１３４）とを含み、前記円筒部（３１、１３１）と前記ポスト（３４、１３４）との間に空隙（３９、１３９）が存在する請求項１又は２に記載のスナップボタン。
4. 　前記係合部材（２０、１２０）の連結部（３０、１３０）における前記ポスト（３４、１３４）は、半径方向外側に突出する凸部（３５）を周方向に複数有する請求項３に記載のスナップボタン。
5. 　前記雄側ハトメ部材（１１）は、前記開口（１４）を規定する内周面から半径方向内側に突出する突起（１５）を周方向に複数有する請求項１～４のいずれか１項に記載のスナップボタン。
6. 　前記係合部材（２０、１２０）の前記固定部（２１、１２１）は円筒状であり、前記固定部（２１、１２１）の半径方向内側に、前記連結部（３０、１３０）とは軸方向反対側に開放する空間（２４、１２４）が存在する請求項１～５のいずれか１項に記載のスナップボタン。
7. 　前記固定部（２１、１２１）の半径方向に沿う厚さは、前記円筒部（３１、１３１）の半径方向に沿う厚さよりも大きい請求項６に記載のスナップボタン。
8. 　前記雌側ハトメ部材（４０）は金属製であり、前記係合部材（２０）は樹脂製である請求項１～７のいずれか１項に記載のスナップボタン。
9. 　開口（１４）を有する雄側ハトメ部材（１１）と、前記雄側ハトメ部材（１１）の開口（１４）に固定する係合部材（２０、１２０）とを備える雄体（１０、１１０、１１０ａ）にして、前記係合部材（２０、１２０）が、雌側ハトメ部材（４０）の開口（４１）に対し連結及び連結解除可能な連結部（３０、１３０）と、前記雄側ハトメ部材（１１）の開口（１４）に嵌める固定部（２１，１２１）とを含む雄体（１０、１１０、１１０ａ）を形成する方法あって、
   　前記雄側ハトメ部材（１１）を生地（１）に取り付ける工程Ａと、
   　前記生地（１）に取り付けた雄側ハトメ部材（１１）の開口（１４）に前記係合部材（２０、１２０）の固定部（２１、１２１）を固定する工程Ｂとを含み、
   　前記工程Ａにおいて、前記雄側ハトメ部材（１１）の開口（１４）を規定する内周面から半径方向内側に突出する突起（１５）を周方向に複数形成することを特徴とする雄体形成方法。
10. 　前記工程Ｂにおいて、前記係合部材（２０、１２０）の固定部（２１、１２１）の半径方向外側部分を前記突起（１５）に押し付けることを特徴とする請求項９に記載の雄体形成方法。
11. 　開口（１４）を有する雄側ハトメ部材（１１）と、前記雄側ハトメ部材（１１）の開口（１４）に固定する係合部材（２０、１２０）とを備える雄体（１０、１１０、１１０ａ）にして、前記係合部材（２０、１２０）が、雌側ハトメ部材（４０）の開口（４１）に対し連結及び連結解除可能な連結部（３０、１３０）と、前記雄側ハトメ部材（１１）の開口（１４）に嵌める固定部（２１、１２１）とを含み、前記係合部材（２０、１２０）の連結部（３０）が、弾性変位可能な円筒部（３１、１３１）と、円筒部（３１、１３１）の半径方向内側にあるポスト（３４、１３４）とを含み、前記円筒部（３１、１３１）と前記ポスト（３４、１３４）との間に空隙（３９、１３９）が存在する雄体（１０、１１０、１１０ａ）を形成する方法であって、
    　前記雄側ハトメ部材（１１）を生地（１）に取り付ける工程Ａと、
    　前記生地（１）に取り付けた雄側ハトメ部材（１１）の開口（１４）に前記係合部材（２０、１２０）の固定部（２１、１２１）を固定する工程Ｂとを含み、
    　前記工程Ｂにおいて、前記ポスト（３４、１３４）に半径方向外側に突出する凸部（３５）を周方向に複数形成する雄体形成方法。

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