以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置Sの全体構成を示す正面図である。錠剤印刷装置Sは、印刷対象となる錠剤を搬送する搬送装置Cと、この搬送装置Cによって搬送される錠剤に対して印刷を行う印刷部Pとを備えている。
図1に示すように、錠剤印刷装置Sは、錠剤の両面に印刷を行うために、搬送装置Cを構成する第1の搬送装置1及び第2の搬送装置2が上下に配置されて構成されている。印刷部Pは、第1の印刷部3及び第2の印刷部4により構成されている。第1の印刷部3が第1の搬送装置1に対向して配置されており、第2の印刷部4が第2の搬送装置2に対向して配置されている。すなわち、第1の搬送装置1の上側に第1の印刷部3が設けられ、第2の搬送装置2の上側に第2の印刷部4が設けられ、全体として錠剤印刷装置Sが構成されている。
なお、第1の実施形態においては、第1の搬送装置1と第2の搬送装置2、或いは、第1の印刷部3と第2の印刷部4とは、それぞれ基本的な構成をともに同じくする。そこで、以下において搬送装置C及び印刷部Pの説明を行うに際しては、第1の搬送装置1及び第1の印刷部3を例に挙げて説明する。
第1の搬送装置1は、第1のプーリ11と、第2のプーリ12と、無端状の搬送ベルト13と、吸引チャンバ14とを備えている。
第1のプーリ11は、図1中の第1の搬送装置1に円形状に示される2つのプーリのうち、左側のプーリである。この第1のプーリ11には、特に駆動源が接続されておらず、第1のプーリ11は、搬送ベルト13を介して第2のプーリ12が回転するのに合わせて回転する従動プーリである。
第2のプーリ12は、図1中の前述の2つのプーリのうちの右側のプーリである。第1の実施形態においては、この第2のプーリ12が駆動源に接続され、駆動プーリとしての役割を果たす。
搬送ベルト13は、第1のプーリ11と第2のプーリ12とに掛け渡され、端部が設けられていない無端状である。この搬送ベルト13は、第1のプーリ11と第2のプーリ12とが回転することで回転する。
第1の実施形態においては、第1のプーリ11及び第2のプーリ12は、ともに右回転を行うことになる。従って、第1の搬送装置1では、搬送ベルト13は、上側の水平領域において実線で示す矢印の方向、すなわち、第1のプーリ11から第2のプーリ12に向けて右向きに進むことになる。
この搬送ベルト13の構成について、図2及び図3を利用してさらに具体的に説明する。図2は、第1の実施形態に係る第1の搬送装置1の全体構成を示す斜視図である。図3は、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置Sについて、図1に示す錠剤印刷装置をA-A線において切断して示す断面図である。
なお、図3における左側が図1に示す第1の搬送装置1の正面となる。また、図3では、第2のプーリ12は切断されずに示されている。この図3において、第2のプーリ12の回転軸を挟んで上側は、錠剤Tが第1の印刷部3において印刷がなされ、印刷状態確認装置33の下を通過した後に、搬送ベルト13が第2のプーリ12に接触する位置、すなわち、図1に示す符号bで示す部分を示している。
図2に示すように、搬送ベルト13の表面には、印刷対象となる錠剤Tを吸着するための吸着部130が、無端状の搬送ベルト13の全周にわたって複数、等間隔で形成されている。なお、図2においては、この吸着部130により錠剤Tが吸着されている状態が一部に示されている。
図3に示すように、吸着部130は、錠剤Tを収納するためのポケット等の凹部131と、その凹部131の底面につながる吸引孔132とから構成されている。吸引孔132は、搬送ベルト13の凹部131の底面から搬送ベルト13の裏面側に向けて、その凹部131の底部に形成されている。つまり、搬送ベルト13には、貫通孔が形成されていることになる。後述の吸引チャンバ14による空気の吸引が、吸引孔132を介して凹部131に収容されている錠剤Tに作用し、錠剤Tを搬送ベルト13上に吸引して保持する。
図2に示すように、吸引チャンバ14は、搬送ベルト13の全周に亘ってその搬送ベルト13の内側に配置され、搬送ベルト13の吸着部130に吸引力を付与することができるように構成されている(詳しくは、後述する)。
図1に戻り、第1の印刷部3は、第1のプーリ11から第2のプーリ12に向けて進む搬送ベルト13の表面に対向する位置に設けられている。すなわち、この第1の印刷部3は、第1のプーリ11から第2のプーリ12へと搬送ベルト13が進む領域(図1中に符号a、b間に位置する、搬送ベルト13における上側の水平部分)に対向して配置されている。
この第1の印刷部3は、錠剤Tに印刷を行うインクジェット方式の印刷ヘッドHと、錠剤Tの位置を検出する位置検出装置32と、錠剤Tに対して行われた印刷の状態を確認する印刷状態確認装置33とから構成されている。
位置検出装置32は、印刷ヘッドHよりも搬送ベルト13の進行方向(錠剤Tの搬送方向)上流側に設けられている。この位置検出装置32は、搬送ベルト13の表面に形成された凹部131内に適切に錠剤Tが収納されているか、その位置や向き、表裏を検出する装置である。位置検出装置32は、錠剤Tを撮影する撮影装置321と、撮影の対象となる錠剤Tを照らすための照明322とから構成されている。撮影装置321は錠剤Tを撮影し、その撮影画像を取り込んで制御部5に送信する。
すなわち、制御部5は、一例として、第1の印刷部3(位置検出装置32)の構成の一部を担う。制御部5は、撮影装置321から受信した撮影画像より錠剤Tの位置や向き、表裏などの姿勢情報を算出して検出する。そして、制御部5は、その検出結果に基づいて適切な印刷(位置ずれが生じていたら、そのずれを補正あるいは向きを調整して印刷)を行うべく、印刷ヘッドHを駆動する。また、位置ずれ量が許容値を超える場合などには、印刷を行わないといった判断も行う。
印刷状態確認装置33は、印刷ヘッドHよりも搬送ベルト13の進行方向下流側に設けられおり、印刷ヘッドHによって錠剤Tの上面にされた印刷の状態を確認する装置である。印刷状態確認装置33は、錠剤Tにおける印刷状態を撮影する撮影装置331と、撮影の対象となる錠剤Tを照らすための照明332とから構成されている。撮影装置331は錠剤Tを撮影し、その撮影画像を取り込んで制御部5に送信する。
従って、ここでも制御部5は、一例として、第1の印刷部3(印刷状態確認装置33)の構成の一部を担う。制御部5は、撮影された画像を基に印刷状態を検出し、印刷の良否を判断する。印刷不良と判断した錠剤Tについては、後述するように、不良品回収ボックスへと移す処理を行う。
前述の第1の搬送装置1の第1のプーリ11の左側には、錠剤供給装置15が設けられている。この錠剤供給装置15内には多数の錠剤Tが収容されており、搬送ベルト13の凹部131に錠剤Tを1つずつ供給可能に構成されている。
また、第1の搬送装置1の下側には、印刷が終了した錠剤Tのインクを乾燥させるための乾燥装置16が設けられている。この乾燥装置16は、第2のプーリ12から第1のプーリ11へと搬送ベルト13が進む領域(図1中に符号c、d間に位置する、第1の搬送装置1における下側の水平部分)に対向して設けられている。すなわち、乾燥装置16は、搬送ベルト13と対向する位置に設けられており、例えば、錠剤Tに熱風を吹き付けることで、錠剤Tに印刷されたインクを乾燥させる。
なお、乾燥装置16は、錠剤印刷装置Sを構成する他の機構に干渉せず、錠剤Tに印刷されたインクを乾燥させることができるのであれば、いずれの位置に配置されても良い。本実施形態では、乾燥装置16は、搬送ベルト13が第2のプーリ12の回転に伴って反転し、第2のプーリ12から離間する位置cから第1のプーリ11に向けて、第2の搬送装置2における第1のプーリ21の動きを妨げない位置までの間に設けられている。
図1に示すように、錠剤印刷装置Sの上側部分に第1の搬送装置1が配置されており、錠剤印刷装置Sの下側部分に第2の搬送装置2が配置されている。第2の搬送装置2は、第1の印刷部3により錠剤Tの一方の面(表面)に印刷された錠剤Tに対し、第2の印刷部4により錠剤Tの他方の面(裏面)に印刷を行うために錠剤Tを搬送する装置である。
第2の搬送装置2は、上述した通り、第1の搬送装置1と基本的に同様である。すなわち、第2の搬送装置2は、従動プーリとしての第1のプーリ21と、駆動源である第2のプーリ22と、無端状の搬送ベルト23と、吸引チャンバ24とを備えている。
第1のプーリ21及び第2のプーリ22は、左回りに回転する。従って、これらのプーリ21、22に掛け渡されている搬送ベルト23は、左向きに回転する。すなわち、図1において、搬送ベルト23は、第2の搬送装置2の上側の水平領域において示されている矢印の向きである左向きに移動する。
搬送ベルト23は、第1のプーリ21と第2のプーリ22とが回転することで、錠剤Tを搬送する。また、搬送ベルト23の表面には、搬送ベルト13と同様、凹部に錠剤Tを収納して、ベルト面に錠剤Tを吸着する吸着部(図2及び図3中の吸着部130参照)が形成されている。
この搬送ベルト23は、第1の搬送装置1の乾燥装置16の下流側において、第1の搬送装置1の搬送ベルト13と対向する。このため、第1の搬送装置1の搬送ベルト13が第2の搬送装置2の搬送ベルト23と出会う領域においては、両者ともに同じ方向、すなわち、図1において左向きに進んでいることになる。
ここで、第1の搬送装置1の搬送ベルト13と第2の搬送装置2の搬送ベルト23との搬送速度が同じであれば、両者の相対的な速度はゼロとなる。従って、搬送ベルト13と搬送ベルト23との搬送速度を同期させて両者の凹部の位置を合わせることによって、第1の搬送装置1から第2の搬送装置2に対してスムーズに錠剤Tの受け渡しを行うことができる。
なお、第1の実施形態においては、第1の搬送装置1の第1のプーリ11と第2の搬送装置2の第1のプーリ21とは、互いにその軸線が鉛直方向で一致するように位置合わせがなされている。従って、第1の搬送装置1の第1のプーリ11に搬送ベルト13が接触する位置(図1に示す符号dの位置)であって、第2の搬送装置2の第1のプーリ21から搬送ベルト23が離間する位置(図1に示す符号dの位置)において錠剤Tの受け渡しが行われる。
但し、第1の搬送装置1の第1のプーリ11と第2の搬送装置2の第1のプーリ21との位置関係は、第1の実施形態におけるような位置関係に固定されるわけではなく、両者の位置がずれていても良い。つまり、第2の搬送装置2の第1のプーリ21が第1の搬送装置1の第1のプーリ11より図1の右側にずれて、搬送装置1の搬送ベルト13と搬送装置2の搬送ベルト23がそれぞれ水平に対向するようにしても良い。これらの搬送ベルト13、23が重なった部分で錠剤Tの受け渡しが行われる。
第1の搬送装置1から第2の搬送装置2へと受け渡された錠剤Tは、搬送ベルト23を上方から見た場合、第1の印刷部3により印刷された面が搬送ベルト23の凹部131の底部を向き(図3参照)、その反対側の面が見える状態で凹部131に収納される。
吸引チャンバ24は、前述の吸引チャンバ14と同じように、搬送ベルト23の全周に亘って内側に配置され、搬送ベルト23の吸着部(図示せず)に吸引力を付与することができるように構成されている。
第2の搬送装置2は、上述したような構成を採用しているが、図1に示すように、第2の搬送装置2の上部には、第2の印刷部4が対向して配置されている。すなわち、この第2の印刷部4は、第1のプーリ21から第2のプーリ22へと搬送ベルト23が進む領域(図1中に符号e、f間に位置する、搬送ベルト23における上側の水平部分)に対向して配置されている。
第2の印刷部4は、第1の印刷部3と同様、錠剤Tに印刷を行う印刷ヘッドHと、印刷ヘッドHよりも搬送ベルト23の進行方向上流側に設けられた位置検出装置42と、印刷ヘッドHよりも搬送ベルト23の進行方向下流側に設けられた印刷状態確認装置43とから構成されている。
位置検出装置42は、錠剤Tを撮影する撮影装置421と、撮影の対象となる錠剤Tを照らすための照明422とから構成されている。一方、印刷状態確認装置43は、錠剤Tにおける印刷状態を撮影する撮影装置431と、撮影の対象となる錠剤Tを照らすための照明432とから構成されている。これらの撮影装置431及び照明432も、第1の印刷部3と同様に、制御部5により制御される。
また、第2の搬送装置2の下側には、印刷が終了した錠剤Tのインクを乾燥させるための乾燥装置25が設けられている。すなわち、乾燥装置25は、搬送ベルト23が第2のプーリ22から第1のプーリ21へと進む領域(図1中における符号g、h間の領域)に対向して設けられている。
なお、乾燥装置25は、上述した乾燥装置16の配置位置と同様、錠剤印刷装置Sを構成する他の機構に干渉せず、錠剤Tに印刷されたインクを乾燥させることができるのであれば、いずれの位置に配置されても良い。
第2の搬送装置2の乾燥装置25の下流側の位置には、上下両面の表面に対する印刷が終了した錠剤Tを、印刷の良否に応じて回収するボックス26、27が設けられている。印刷状態確認装置33及び印刷状態確認装置43からの確認結果に基づいて、制御部5が錠剤ごとに印刷の良否を判断する。
例えば、印刷状態が適切であると判断された場合には、錠剤Tは良品として搬送ベルト23から良品回収ボックス26へと送られる。一方、印刷状態が不適切であると判断された場合には、錠剤は不良品として搬送ベルト23から不良品回収ボックス27へと送られる。この不良品回収手段の一例としては、搬送ベルト23から良品回収ボックス26へと落下する途中でその錠剤Tに対して空気を吹き付けることによって、不良品の錠剤を不良品回収ボックス27に収納することが可能である。
制御部5は、錠剤印刷装置Sを構成する各部を制御する。図1において図示していないが、制御部5には、例えば、各種印刷情報等を入力するための入力部や入力結果や印刷結果等を表示させるための表示部が接続されていても良い。また、図1においては、制御部5と印刷部Pの各部のみが電気的に接続されているが、上述したように制御部5は錠剤印刷装置Sの各部を制御することから、その他各部とも当然電気的に接続されている。
(印刷処理)
次に、図1を用いて、錠剤印刷装置Sを利用した錠剤Tへの印刷処理について順を追って説明する。
まず、錠剤供給装置15に収納されている錠剤Tが、右向きに回転する第1の搬送装置1の第1のプーリ11に向けて順次供給される。錠剤供給装置15から順次供給された錠剤Tは、搬送ベルト13の各凹部131内に1つずつ順次収納される。
図1に示す位置で錠剤供給装置15から錠剤Tが供給されるが、吸引チャンバ14から吸着部130に対して吸引力が付与されており、凹部131に収納された錠剤Tは落下することなく、凹部131に吸引保持される。なお、吸引保持とは、吸引によって保持されることである。
錠剤Tは、吸引チャンバ14によって搬送ベルト13の凹部131内に収納されたまま順次搬送され、第1の搬送装置1の上側に設けられている第1の印刷部3によって、その上面に文字や図形等が印刷される。文字や図面等は予め設定されている。
具体的には、まず、位置検出装置32によって、搬送ベルト13の凹部131内に収納された錠剤Tの位置が確認される。撮影装置321によって撮影された凹部131や錠剤Tの位置は、制御部5に送信され、印刷の可否が判断される。
なお、ここで印刷の対象となる錠剤Tに割線が設けられていたり、外形が三角形や四角形であったりして、印刷に先立って向きを判別する必要がある場合には、位置に加えて、錠剤Tの向きを検出するようにしても良い。
もし錠剤が印刷不可能な位置に収納されており、印刷が不可であると判断された場合には、錠剤Tに対して印刷を行わず、そのまま第1の印刷部3の下を通過させる等の処理が行われる。一方、錠剤Tの位置が印刷可能な位置に収納されており、印刷が可であると判断された場合には、錠剤Tは、そのまま搬送ベルト13によって、印刷ヘッドHの下へと搬送される。
印刷ヘッドHは、搬送されてきた錠剤Tの上面に印刷を行う。印刷が終了すると、そのまま錠剤Tは搬送されて、次に印刷状態確認装置33の下へと移動する。
印刷状態確認装置33は、搬送されてきた錠剤Tを撮影し、その撮影画像を制御部5へと送信する。制御部5は、印刷状態確認装置33より送られてきた情報を基に、印刷状態の良否を判断する。
この後、錠剤Tは搬送ベルト13の凹部131内に収納された状態のまま、第2のプーリ12によって反転されて、第1の搬送装置1の上側から下側へと移動する。
反転された錠剤Tの片面に付着しているインクは、搬送ベルト13が第2のプーリ12から第1のプーリ11へと図1において左向きに移動する間(図1に示すc-d間)に配置された乾燥装置16によって、乾燥される。インクが乾燥した錠剤は、第1の搬送装置1から第2の搬送装置2に受け渡される。
第2の搬送装置2においては、錠剤Tの未印刷の片面に印刷が行われる。印刷の流れはこれまで説明したのと同様であり、位置検出装置42において錠剤の位置が確認され、印刷ヘッドHで印刷が行われた後、印刷状態確認装置43からの情報に基づいて印刷状態の確認が行われる。
印刷が終了した錠剤Tは、搬送ベルト23における下側の水平領域において、乾燥装置25によるインクの乾燥が行われる。この場合、第2の印刷部4において印刷された錠剤Tの片面は乾燥装置25と対向する向きになっており、第2のプーリ22から第1のプーリ21に向けて搬送ベルト23が移動する間にインクの乾燥処理が行われる。
乾燥が終了した錠剤Tは、回収ボックス26,27に収納されて回収される。ここで、印刷状態確認装置33、および、印刷状態確認装置43からの確認結果に基づいて適切に印刷がなされたと制御部5によって判断された錠剤Tは、良品回収ボックス26により収納される。一方、印刷が不適切であると制御部5によって判断された錠剤Tは、不良品回収ボックス27により回収される。
以上で錠剤Tに対する印刷処理が終了する。
(吸引チャンバ)
次に、搬送装置Cの構成、特に吸引チャンバ14,24の構成について図3及び図4を用いて詳細に説明する。吸引チャンバ14,24の構成はいずれも同じであることから、以下では、第1の搬送装置1に設けられている吸引チャンバ14を例に挙げて説明する。
なお、第1の実施形態では、以下に説明する吸引に係る各部や吸引方法等によって、吸引力調整装置および吸引力調整方法が構成されている。
図4は、第1の実施形態に係る吸引チャンバ14の全体構成を示す斜視図である。この図4に示す吸引チャンバ14は、図2に示す第1の搬送装置1の全体構成を示す斜視図と略同じ向きに示されている。すなわち、図4では図示を省略しているが、図4中の左奥側に第1のプーリ11が、右手前側に第2のプーリ12が設けられる。
吸引チャンバ14は、図4に示すように、チャンバ本体141と、図示しないポンプに接続され吸引を行う吸引経路142とから構成されている。チャンバ本体141は、吸引経路142を介してポンプに接続されている。
チャンバ本体141には、図3及び図4に示すように、空気を吸引する吸引部である吸引溝143がチャンバ本体141の外周全周にわたって設けられている。この吸引溝143は、搬送ベルト13が第1のプーリ11及び第2のプーリ12に掛け渡された際に、搬送ベルト13の吸引孔132の直下に位置することになる。このため、チャンバ本体141から吸引経路142を介して空気が吸引されると、吸引溝143、搬送ベルト13の吸引孔132及び凹部131から空気が吸引されることになる。これにより、凹部131に接触する錠剤Tに吸引力が与えられる(影響が及ぶ)、すなわち作用することになる。
このように、吸引チャンバ14は、搬送ベルト13の吸引孔132を介して搬送ベルト13の凹部131に収納される錠剤Tに対して吸引力を作用させて、錠剤Tを吸引保持する。従って、吸引チャンバ14は、搬送ベルト13の全周に渡って吸着部130に吸引力を付与できるように構成されている。
なお、吸引チャンバ14により搬送ベルト13の全周に渡って吸着部130に吸引力を付与することができるが、必ずしも全周に付与しなくても良い。すなわち、吸引力を部分的に付与しない部分があっても、また、吸引力を付与する部分を選択的に設定することができるような構成にしても良く、或いは、全周のうち領域ごとに吸引力を変化させても良い。
また、前述のポンプは1つである必要はなく、例えば、吸引チャンバ14が複数のポンプに吸引経路142を介して接続されるように構成することも可能である。このようにポンプを分けると、搬送ベルト13の全周に亘って形成されている吸引孔132に対して、後述するように領域を分けて複数の吸引力を付与し、搬送ベルト13上で吸引保持されて搬送される錠剤Tに対して、その搬送位置に応じて所望する吸引力で錠剤Tを吸引保持することが可能となる。
図5は、第1の実施形態における、図4に示す吸引チャンバ14をB-B線において切断して示す切断断面図である。図5における切断断面図において示されているように、吸引チャンバ14のチャンバ本体141の内部には、2カ所に隔壁144,144が形成され、チャンバ本体141の内部が2つの区画に分けられている。
図5に示すように、隔壁144は、図1に示す符号aの位置及び符号bの位置に形成されている。すなわち、チャンバ本体141内は、隔壁144,144によって区画されて図1における符号aの位置と符号bの位置との間に形成される第1の区画145と、その他の区画である第2の区画146とに分けられている。第1の区画145には、吸引経路1421,1422が接続されている。また、第2の区画146には、吸引経路1423,1424が接続されている。
このように、これら2つの区画145,146は隔壁144,144によって区画されており、吸引経路142(1421~1424)もそれぞれ個別に設けられていることから、相互に空気が行き来することはない。これにより、区画ごとに吸引力(吸引する圧力や吸引空気量、吸引空気速度)を変えて空気を吸引することが可能となる。
従って、搬送ベルト13の凹部131に収納されて搬送される錠剤Tは、吸引チャンバ14が吸引孔132を介して空気を吸引することによって、凹部131に吸引保持される。すなわち、吸引チャンバ14の吸引力によって搬送ベルト13の吸着部130に錠剤Tが吸引保持される。
このとき、吸引保持される錠剤Tによって吸引孔132が塞がれる場合と塞がれない場合とがある。吸引保持される錠剤Tの大きさ、形状、或いは、凹部131内における姿勢等によっては、錠剤Tが吸引孔132を完全に塞がない場合がある。錠剤Tが吸引孔132を塞ぐことができないと、吸引孔132と錠剤Tとの接触位置近傍において、吸引孔132から吸引チャンバ14に向けて空気が吸引される空間が作り出されることになる。このような場合、吸引孔132を介して錠剤Tを吸引保持するのに合わせて、錠剤Tの近傍に存在する空気が錠剤Tの上方や側面、吸引孔132を通って吸引される。
特に、吸引チャンバ14による吸引力が強い場合には、吸引される空気の量が多くなったり、吸引される空気の流速が速くなったりすることから、錠剤T近傍で生じる気流が強くなったり、気流の到達範囲が大きくなったり、気流に乱れが発生したりする可能性がある。
ここで、錠剤印刷装置Sにおける印刷部Pは、インクジェット方式の印刷ヘッドHを備えている。インクジェット方式の場合、印刷ヘッドHから印刷対象となる錠剤Tに向けてインクが吐出され、錠剤Tの表面に着弾することによって印刷が行われる。印刷ヘッドHからインクが吐出されて、錠剤Tの表面に着弾するまでの間は、印刷ヘッドHと錠剤Tとの間をインクが飛翔している状態にある。
このとき、印刷ヘッドHと錠剤Tとの間の空間において気流が発生すると、印刷ヘッドHから吐出されたインクの飛翔中の形状が気流によって崩れたり、飛翔方向が気流に影響されて着弾位置がずれたりして、印刷不良が生じ、印刷品質の低下を招く。その気流が印刷品質に影響しない程度の場合は良いが、その気流が強い場合、気流の到達範囲が大きい場合、気流が乱れている場合などでは、印刷品質の低下は大きい。また、気流の影響が印刷ヘッドHのインクを吐出するノズル近傍にまで達すると、ノズル付近のインクが乾燥することで、吐出不良が発生し、同じく印刷品質の低下を招く。或いは、錠剤Tに着弾しなかったインクがミスト状に舞い散ることも考えられる。インクがミスト状に舞い散ってしまうと、例えば、吸引チャンバ14によって空気が吸引される際に併せて吸引され、搬送されている錠剤Tの側面への付着等が生じる。
そこで、第1の実施形態における錠剤印刷装置Sでは、印刷が行われる際に錠剤Tに対して与えられる吸引力を弱めることで、吸引される空気の量や流速を減らして、気流やミストによる印刷不良が発生することを可能な限り低くすることとしている。すなわち、少なくとも錠剤Tが印刷処理を行うために印刷ヘッドHの下を通過する際には、この錠剤Tに対して与えられる吸引力を、搬送ベルト13上のその他の位置にある錠剤Tに対して与えられる吸引力よりも低下させる。
また、錠剤Tが印刷ヘッドHの下を通過する際にのみ吸引力を低下させるだけではなく、例えば、印刷ヘッドHの上流において、錠剤Tが搬送ベルト13へと供給された後から、錠剤Tが印刷ヘッドHの下を通過するまで、吸引力を低下させても良い。さらに、錠剤Tが搬送ベルト13へと供給された後、吸着部130に吸着される錠剤Tの状態を確認する位置検出装置32を通過する前(その位置検出装置32を通過する前の所定の搬送位置)から吸引力を低下させても良い。これは、上述したように位置検出装置32によって、これから印刷処理に入る錠剤Tの位置や姿勢等を検出することから、印刷処理中と同じ状態、すなわち、吸引力が低下した状態で吸引されている錠剤Tの位置を検出する必要があるためである。後述のように、錠剤Tの搬送途中で吸引力の変化が起き、この変化が大きいと、錠剤Tがずれたり、揺れたりして、その位置や姿勢が変わってしまうことがある。このような大きな吸引力の変化によって、位置検出装置32によって錠剤Tの位置や姿勢を検出した後で印刷処理が終わるまでの間に錠剤Tの位置や姿勢が変化してしまうと、適正な印刷がされない場合がある。したがって、位置検出装置32で錠剤Tの位置や姿勢等を検出してから印刷処理が終わるまでの間では、吸引力の大きな変化が無いようにし、検出した錠剤Tの位置や姿勢状態が印刷処理までに変化しないようにすると良い。そこで、錠剤Tに与えられる吸引力が、印刷処理中と同じに低下した状態で錠剤Tの位置や姿勢を検出するようにする。
ここで、搬送ベルト13によって錠剤Tが搬送される領域のうち、低下させた吸引力で錠剤Tが搬送ベルト13に吸引保持される領域を便宜上「第1の領域」と表わす。従って、上述した例に基づけば、印刷ヘッドHの上流において錠剤Tが搬送ベルト13へと供給された後、吸着部130に吸着される錠剤Tの状態を確認する位置検出装置32を通過する前から錠剤Tが印刷ヘッドHの下を通過するまでの領域が第1の領域に該当する。つまり、図1における符号aから符号bの間に第1の領域が含まれることになる。したがって、第1の実施形態における印刷ヘッドHと対向する位置という表現は、印刷ヘッドHの直下と、印刷ヘッドHの直下だけでなく印刷ヘッドHの直下の周辺も含むものとなっている。
なお、搬送ベルト13の全周に亘って吸引チャンバ14によって吸着部130に吸引力が付与されているが、この第1の領域以外の領域については、印刷の際に飛翔するインクへの影響を考慮する必要がないことから、特に吸引力を低下させなくてもよく、後述のように搬送中に発生する遠心力や自重に抗する以上の吸引力とすればよい。このように、搬送ベルト13の全周のうち、第1の領域以外の領域を便宜上「第2の領域」と表わす。つまり、この第2の領域に、印刷ヘッドHと対向する位置の前後の位置が含まれることになる。第1の実施形態における印刷ヘッドHと対向する位置の前後の位置という表現は、印刷ヘッドHと対向する位置に対して錠剤Tの搬送方向における上流側の位置(前の位置)と下流側の位置(後の位置)を示すものとなっている。
第1の領域は、吸引チャンバ14内における第1の区画145に該当する。一方、第2の領域は、吸引チャンバ14内における第2の区画146に該当する。また、それぞれの区画には独立して吸引経路142が設けられていることから、第1の区画145において錠剤Tに対して与えられる吸引力は、第2の区画146において錠剤Tに対して与えられる吸引力よりも弱く設定することが可能とされている。
以上説明した通り、第1の実施形態によれば、吸引チャンバ14において第1の領域に該当する第1の区画145における吸引力を、第2の領域に該当する第2の区画146における吸引力よりも弱く設定することが可能とされていることから、印刷処理のために印刷ヘッドHの下を通過する錠剤Tに対する吸引力を低下させることができる。吸引チャンバ14をこのように制御することによって、錠剤印刷装置Sにおいて行われる各処理ごとに必要な吸引力を錠剤Tに対して与えることができる。
特に、印刷ヘッドHの下を通過する錠剤Tに対して、搬送ベルト13上を搬送されるその他の領域(第2の領域)における錠剤Tに対するよりも低下させた吸引力を与えることによって、錠剤Tの近傍、或いは、錠剤Tと印刷ヘッドHとの間の空間において、印刷品質を低下させるような気流が発生することを防止することができる。これにより、印刷ヘッドHから吐出されたインクの飛翔中の形状が気流によって崩れたり、飛翔方向が気流に影響されて着弾位置がずれたりして、印刷不良が生じ、印刷品質の低下を招くことを防止できる。また、その気流の影響が印刷ヘッドHのインクを吐出するノズル近傍にまで達し、ノズル付近のインクが乾燥することで、吐出不良が発生し、同じく印刷品質の低下を招くことを防止できる。或いは、錠剤Tに着弾しなかったインクがミスト状に舞い散って、搬送されている錠剤Tの側面への付着等が生じることを防止できる。
なお、第2の領域では、錠剤Tの搬送ベルト13からの逸脱を防止するだけの吸引が必要となり、これは錠剤Tがずれない程度の吸引に比べて格段に強い吸引が要求される。従って、錠剤の吸引保持のために用いられる空気の吸引を適切に制御することによって、インクの安定的な吐出を確保し、印刷品質の維持を実現することができる錠剤印刷装置Sおよび錠剤印刷方法を提供することができる。
(変形例)
以上の説明においては、吸引チャンバ14内を2つの区画145,146に分けて2種の吸引力を付与することを前提に説明を行った。但し、錠剤Tに対して与えられる吸引力は、2種類に限られず、錠剤印刷装置Sにおいて行われる各処理ごとに制御されるようにしても良い。従って、この場合には2種類以上の吸引力が適宜錠剤Tに対して与えられることになる。
例えば、前述のように搬送ベルト13上に吸引保持された錠剤Tには、第1の搬送装置1の第1のプーリ11と第2のプーリ12との間で、印刷処理が行われる上側の領域(図1に示す符号aから符号b)と、第2の搬送装置2に向かう下側の領域(図1に示す符号cから符号d)と、その間の第2のプーリ12で円周方向に回転する領域(図1に示す符号bから符号c)とで、いずれの領域においても確実に錠剤Tを保持するための吸引力が与えられている必要がある。すなわち、上側の領域では搬送に伴って錠剤Tがずれたり、揺れたりしない吸引力、下側の領域では錠剤Tが落下しない吸引力、第2のプーリ12で円周方向に回転される領域ではさらに遠心力に抗する吸引力が必要とされる。しかも、上側の領域で印刷処理を行う近傍では、さらに印刷処理に影響を与えないような吸引力とすることになる。
したがって、例えば、チャンバ本体141の内部を複数の区画に分け、それぞれ異なる吸引力を付与するようにしても良い。すなわち、吸引チャンバ14の下側の区画では錠剤Tが落下しない吸引力、第2のプーリ12で円周方向に錠剤Tが移動する区画ではさらに遠心力に抗する吸引力をそれぞれ与えるように構成することで、錠剤Tをより適切に第1の搬送装置1に吸引保持することができる。このような下側や第2のプーリ12部分では、上側の区画における錠剤Tが搬送に伴ってずれたり揺れたりせず、かつ印刷処理に影響を与えない吸引力よりも格段に大きな吸引力が必要となるが、各処理(錠剤Tの搬送される位置)において最適な吸引力を適切に錠剤Tに与えることができる。これは第2の搬送装置2も同じである。
換言すれば、上記のように吸引チャンバ14の上側の吸引力を弱めた領域が第1の領域であり、その他の吸引チャンバ14の下側や第2のプーリ12の部分が第2の領域となる。吸引チャンバ14の下側や第2のプーリ12の部分では、それぞれ吸引力を変えることもできるが、上側の吸引力より強くする。
上述のように、搬送ベルト13上の錠剤Tの周囲に吸引による気流が発生するような状態でも、錠剤Tが搬送ベルト13上のいかなる場所でも確実に吸引保持される吸引力に対して、印刷処理のときには印刷不良が生じない程度に気流がない吸引力となるように吸引力を低下させる。印刷処理は、第1の搬送装置1の第1のプーリ11と第2のプーリ12との間で、上側の領域で行われるので、錠剤Tは搬送ベルト13に支えられており、吸引力をその他の位置に比べ低下させても搬送には影響しない。
また、例えば、図6に示すように、吸引チャンバ14の上側部分内にさらに区画を設けて、例えば印刷処理が行われる部分にさらに区画14Aを設け、その区画14Aの吸引力を印刷処理に影響を与えないものとし、その周りに位置する上側部分の区画14Bの吸引力を搬送に影響ない吸引力とし、前述したように第2のプーリ12部分の区画14Cと吸引チャンバ14の下側部分の区画14Dとを設けても良い。
また、錠剤供給装置15から第1の搬送装置1、第1の搬送装置1から第2の搬送装置2への錠剤の受け渡しにおいて、受け渡された後の錠剤Tは揺動する。このような揺動すなわち錠剤Tの揺れがあると正確な位置の検出や印刷ができなくなってしまう。そこで、受け渡される側の受け渡される位置近傍の吸引力は大きい方が良い。吸引力が大きい方が錠剤Tの揺動を早く収束させることができる。つまり、第2の搬送装置2の吸引チャンバ24の上側部分内に、受け渡し処理が行われる部分にさらに区画を設け、錠剤Tの揺れを早く収束させる吸引力とするようにしても良い。
このように、必要な部分に必要なだけ区画を設けることができる。すなわち、吸引チャンバ14を第1の領域や第2の領域に区画化すること、さらに、その領域内を区画化することも可能である。そして、それぞれの区画毎に適宜吸引力を設定することができる。
また、それぞれ相異する吸引力の区画のつなぎ目では、吸引力の変化が起きる。このような変化が大きいと、錠剤Tがずれたり、揺れたり、あるいはベルトから脱落したりしてしまう。したがって、必要な吸引力とする区画の前後に吸引力の変化を緩やかにするための区画を設けることもできる。こうすることで区画に渡って吸引力の変化のしかたを緩やかにすることが可能となり、錠剤Tのずれ、揺れ、ベルトからの脱落等を防止することができる。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について図7から図14を用いて説明する。なお、第2の実施形態において、上述の第1の実施形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
前述の第1の実施形態においては、印刷処理を行う第1の領域で錠剤Tに対して与えられる吸引力を、その他の第2の領域で錠剤Tに対して与えられる吸引力よりも低下させることによって、吸着部130における空気の吸引に基づく気流による印刷不良、ミストの発生を回避している。
一方、第2の実施形態においては、吸引チャンバ14が発生させる吸引力を変化させることなく、第1の領域における錠剤Tに対する吸引力を低下させるために以下の方法を採用する。この方法について図7及び図8を用いて順次説明する。
なお、吸引チャンバ14が発生させる吸引力とは、吸引チャンバ14内の空気を排出することで、例えば、吸引チャンバ14に設けられた吸引溝143に発生する吸引力であって、空気の排出の速度や量で決定される。吸引溝143に生じる吸引力が搬送ベルト133を介して錠剤Tに作用して、搬送ベルト133上に錠剤Tを引き寄せる。この引き寄せる力が錠剤Tに対する吸引力となる。したがって、この第2の実施形態は、吸引チャンバ14内の空気の排出速度や量は変えずに、搬送ベルト133上の錠剤Tに作用する吸引力を低下させる。
図7は、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置Sについて、図1に示す錠剤印刷装置SをA-A線において切断して示す断面図である。なお、図7における左側が図1に示す第1の搬送装置1の正面となる。また、図7では、第2のプーリ12は切断されずに示されている。
この図7において、第2のプーリ12の回転軸を挟んで上側は、搬送ベルト133上の錠剤Tが第1の印刷部3において印刷がなされ、印刷状態確認装置33の下を通過した後に、搬送ベルト133が第2のプーリ12に接触する位置、すなわち、図1に示す符号bで示す部分を示している。一方、第2のプーリ12の回転軸を挟んで下側は、搬送ベルト133上の錠剤Tが第2のプーリ12の回転に伴って反転した後、搬送ベルト133が第2のプーリ12から離間し、搬送ベルト133に対向する位置に設けられている乾燥装置16による乾燥処理が開始される位置、すなわち、図1に符号cで示す部分を示している。
図7に示すように、搬送ベルト133は、吸引チャンバ14に形成された吸引溝143に相対する領域に溝1331を有しており、第1の実施形態の搬送ベルト13のような凹部131は存在していない。溝1331は、部分的に左右(図7中)がつながれて、はしご状になっている。この溝1331を搬送ベルト133に周状に形成した場合には、前述の第1の実施形態の搬送ベルト13のような凹部131を形成した場合に比べ、吸引による気流が生じやすくなる。これは、錠剤Tが吸引保持されていない溝1331の部分から、錠剤Tの周囲に常に吸引の気流が存在するためである。
この吸引溝143部分には、吸引力低下部材61が設けられている。この吸引力低下部材61は、吸引による気流を低下させるための吸引力調整装置である。吸引力低下部材61は、例えば、鍔状部材により構成されており、吸引チャンバ14の吸引溝143とチャンバ本体141との境界位置で吸引溝143の一部領域を塞ぐように設けられている。この吸引力低下部材61は、搬送ベルト133に対峙する位置に設けられ、吸引溝143の両側から張り出すように形成されている。
図8は、第2の実施形態に係る第1の領域に設けられる吸引力低下部材61を拡大して示す平面図である。この図8では、吸引チャンバ14の全体を示す図4の点線円部分を拡大して示している。
図8に示す拡大図において、その中央に吸引溝143が示されている。併せて、この吸引溝143の一部領域を塞ぐように、吸引力低下部材61が設けられている。すなわち、第1の領域に該当する範囲に、吸引溝143の両側から張り出すように吸引力低下部材61が形成されている。この吸引力低下部材61は、例えば、吸引溝143の両側から同じ幅をもって形成されている。このように吸引力低下部材61が形成されることによって、あくまでも吸引溝143の中央部から空気が吸引されることになり、錠剤Tに対する吸引力は低下するものの、錠剤Tを吸引保持するに当たって、錠剤Tの姿勢等を乱すことがなくなる。
以上説明した通り、第2の実施形態によれば、吸引チャンバ14の吸引溝143部分に吸引力低下部材61を設けることによって、吸引溝143の溝幅(開口幅)が狭められている。したがって、吸引チャンバ14の吸引力により、吸引溝143を通過できる空気の量が制限される。これにより、錠剤Tを引き寄せる空気量が減るので、錠剤Tにかかる吸引力が低下する。
特に、吸引力低下部材61が第1の領域に該当する位置に設けられることによって、その部分の吸引力が低下し、錠剤Tに対し必要な吸引力として、第2の領域において与えられる吸引力よりも弱い(低下した)吸引力を与えることができる。従って、吸引される空気が印刷処理に影響するような錠剤T近傍における気流の発生を防止することができる。これにより、印刷ヘッドHから吐出されたインクの飛翔中の形状が気流によって崩れたり、飛翔方向が気流に影響されて着弾位置がずれたりして、印刷不良が生じ、印刷品質の低下を招くことを防止できる。また、その気流の影響が印刷ヘッドHのインクを吐出するノズル近傍にまで達し、ノズル付近のインクが乾燥することで、吐出不良が発生し、同じく印刷品質の低下を招くことを防止できる。或いは、錠剤Tに着弾しなかったインクがミスト状に舞い散って、搬送されている錠剤Tの側面への付着等が生じることを防止できる。
なお、吸引力低下部材61は、吸引溝143であって搬送ベルト133と接触することを避けることができる位置であれば、いずれの位置に設けられていても良い。吸引溝143自体で無くても、搬送ベルト133を介して錠剤Tに作用する吸引力を低下させるように通過できる空気の量を制限できるのであれば、どこに吸引力低下部材61を設けても良いし、別な部材を設けても良い。
上述のように、吸引力低下部材61における吸引溝143の両側からの張り出し量によって、吸引チャンバ14による吸引力を制御することができる。従って、第1の領域における錠剤Tに対してどのような吸引力を与えるかによって、吸引力低下部材61の大きさが決定されることになる。
一方、第2のプーリ12の回転軸を挟んで下側は、いわゆる第2の領域、すなわち吸引チャンバ14内の第2の区画146に該当する位置であり、付与される吸引力を低下させる必要はない。従って、第2の区画146に対応する、吸引溝143とチャンバ本体141との境界には、吸引溝143の一部領域を塞ぐ吸引力低下部材61が設けられていない。なお、錠剤Tの搬送中の保持を確実とする吸引力が錠剤Tに与えられるよう、吸引チャンバ14内の吸引力と、吸引溝143の溝幅等が適宜決定されている。
(変形例)
以上、図7及び図8を用いて吸引溝143とチャンバ本体141との境界に設けられる吸引力低下部材61の説明を行った。この吸引力低下部材61は鍔状部材であるが、この吸引力低下部材61と同じような効果を発生させることのできる他の部材を用いることも可能である。錠剤Tに対してどのような吸引力を与えるかについては、吸引力低下部材61である板状部材に形成される開口部の大きさ、形状、個数等によって自由に設定することが可能である。
例えば、吸引力調整装置の変形例として、図9に示すように、中空の角柱状(四角枠状)の吸引力低下部材61Aを用いることも有効である。このように枠状の吸引力低下部材61Aを構成することにより、その吸引力低下部材61Aにおける錠剤Tの搬送方向上流及び下流から回り込んでくる気流の影響(上流や下流の吸い込み気流の影響)をなくすことができ、より確実に気流の影響を抑えることが可能となる。つまり、吸引力低下部材61Aを通過できる空気の量をより確実に調整でき、錠剤Tに作用する吸引力を調整することが可能となる。
また、図10に示すように、枠状の吸引力低下部材61Bで形成された開口に多孔質部材63を配置して吸引力を低下させるようにしても良い。このように多孔質部材63を用いた場合には、均一な圧力損失(圧力抵抗)が得られるので、吸引力のバラツキを少なくすることができる。また、フィルタ的作用により吸引チャンバ14内に粉塵等が侵入することを防ぐこともできる。また、後述のように錠剤Tの搬送方向に沿って徐々に吸引力を変化させたい場合には、孔の開口率を徐々に変えることで容易に実現することができる。
また、図11に示すように、楔状の鍔部61Cを吸引力低下部材として用いることにより、吸引溝143の開口部分、すなわち吸引口を徐々に狭くすることができる。このため、錠剤Tの搬送方向における吸引力の変化が緩やかとなり、気流による影響を少なく抑えることができる。
また、図12に示すように、開口部62が形成された板状部材であるパンチングボード61Dを吸引力低下部材として用いても良い。この開口部62によって吸引される空気の流量が制限されるので、パンチングボード61Dを設置しない場合に比べて、吸引力は低下することになる。この開口部62を備えるパンチングボード61Dを吸引溝143内に設けることで、搬送ベルト133との接触による搬送ベルト133の破損、或いは、パンチングボード61D自体の破損等を回避することができる。
また、図12に点線で示したような他のパンチングボード61Eを前述のパンチングボード61Dに対してずらして重ね合わせることにより、その開口サイズや開口率を変化させることができるので、吸引力の微調整が可能となる。
また、図13に示すように、吸引溝143が吸引孔の連続のように形成されており、その上を覆うように平板の板状部材61Fを設け、吸引力低下部材として用いても良い。この板状部材61Fは、前述のパンチングボード61Dや多孔質部材63でも良いし、後述の網状部材であっても良い。
この平板の板状部材61Fは、連続する吸引孔で形成される吸引溝143の幅(吸引孔の直径)より狭い幅で形成されており、その吸引溝143の開口部分を遮蔽する。この板状部材61Fにより塞がれていない開口部分からの吸引力によって錠剤Tが吸引される。したがって、その開口部分の遮蔽幅を適宜決定することで、吸引力を調整することができる。
また、図14に示すように、板状部材61Gにより吸引溝143の開口部分を遮蔽する面積を徐々に変化させることも可能である。こうすることで、前述のように吸引力の場所による変化を緩やかにすることができる。板状部材61Gがあるところとないところなど、吸引力が急激に変化して、錠剤Tがずれたり、揺れたり、あるいはベルトから脱落したりしてしまうことを防止することができる。もちろん、遮蔽する面積を変化させる場合、板状部材61Gの形状は三角形状に限られるものではなく、適宜決定されれば良い。
さらに、別の変形例としては、例えば、吸引力調整装置である吸引力低下部材として網状部材を採用することも可能である。この場合には、例えば、網目の広狭を調整することで、搬送ベルト133の溝1331を通過する空気の量、すなわち、吸引力を制御することができる。つまり、第1の領域に該当する吸引溝143とチャンバ本体141との境界に網状部材を設けることによって、第1の領域を通過する錠剤Tに対して与える吸引力を低下させることができる。
また、前述の板状部材や網状部材を重ねて、相対的にずらすことで、板状部材に設けられた細孔等の開口のサイズや開口率、また、網の網目のサイズや開口率を変更して、第1の領域を通過する錠剤Tに対して与える吸引力を調整することができる。
さらに、上述の吸引力低下部材61Aにおいて、錠剤Tの搬送方向における開口の塞ぎ範囲(囲い)を搬送方向下流側のみとする(四角枠の搬送方向上流側の枠だけを無くす)こともできる。こうすると搬送方向下流側の開口の近傍では、気流の影響による吸引力の低下が弱まるので、搬送方向上流側から徐々に吸引力を弱めることができ、急激な吸引力の低下による錠剤Tの位置ずれなどを抑制することができる。
このような吸引力の緩やかな変更は、上述の吸引溝143の両側からの張り出し量による開口の隙間量を徐々に狭めるようにすることの他にも、網目や細孔のサイズを徐々に細くすること、間隔を徐々に広げることや配置分布を徐々にまばらにすること等によっても実現できる。
なお、搬送ベルトの一例として、溝1331を有する平面視はしご状の搬送ベルト133で説明したが、第1の実施形態で説明した凹部131がある搬送ベルト13であっても良い。後述するさまざまな吸着部を有するものも適用可能である。
以上説明した通り、吸引力調整装置である吸引力低下部材(例えば、61、61A~61G)を利用して錠剤Tの吸引保持のために用いられる空気の吸引を適切に制御することによって、インクの安定的な吐出を確保し、印刷品質の維持を実現することができる錠剤印刷装置Sおよび錠剤印刷方法を提供することができる。
また、吸引力低下部材(例えば、61、61A~61G)を用いることで、吸引チャンバ14内を複数の区画に分ける構造としなくても、所望な場所の錠剤Tに与える吸引力を適切化することができ、吸引チャンバ14の構造を簡素化することができる。また、吸引源を複数設けることなく複数の吸引力を錠剤Tに与えることができる。さらには、強い吸引力を錠剤Tに与えることは、同時に吸引チャンバ14に搬送ベルト13が強く吸引されることになる。したがって、搬送ベルト13は、吸引チャンバ14との接触力が強くなり摩耗しやすくなる。吸引力を部分的に弱めることで、搬送ベルト13全体に強い吸引力がかからなくなり、搬送ベルト13の摩耗も低減でき、搬送ベルト13の長寿命化が実現される。
なお、以上説明した吸引力低下部材(例えば、61、61A~61G)を、吸引チャンバ14に対し着脱可能に設けることにより、吸引力の調整あるいは吸引力を低下させる位置の調整、吸引力低下部材を取り外して洗浄する等のメンテナンスが容易になる。
また、吸引力低下部材(例えば、61、61A~61G)を、吸引チャンバ14に設けられた吸引溝143に配置する説明をしたが、これに限られず、例えばチャンバ14の搬送ベルト13に接する部分全部を、吸引溝143を設けることなく吸引力低下部材としてもよい。
また、例えば、第1の搬送装置1の上側あるいは下側に位置するベルトに対応して、図5に示すように、それぞれチャンバ部分が形成されていても良く、図6に示すように、一つとなったチャンバが用いられても良い。これらの場合でも、吸引力低下部材(例えば、61、61A~61G)により必要な部位に必要な吸引力を設定することができる。
ところで、吸引力低下部材(例えば、61、61A~61G)や区画のいずれを用いる場合であっても、印刷後に吸引力の急激な変化を伴うと、その変化で錠剤Tがずれたりして、印刷検査のカメラ視野から外れたり、印刷検査時間が長くなったり(錠剤Tの姿勢が変わらない前提で画像処理を進めると早く終わる)するので、搬送方向上流側だけでなく下流側も吸引力の変化は徐々である方が望ましい。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について図15から図17を用いて説明する。なお、第3の実施形態において、上述の第1または第2の実施形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
前述の第1、或いは、第2の実施形態においては、吸引チャンバ14を区画化して所望の部分の吸引力を低下させる、あるいは、吸引力低下部材を用いて所望の部分の気流量の制限を行う等により吸引チャンバ14が錠剤Tに対して与える吸引力を低下させるものである。一方、第3の実施形態においては、遮蔽体を設けることによって吸引チャンバ14が空気を吸引した際に錠剤Tの近傍で発生する気流の影響を減少させている。
図15及び図16は、第3の実施形態に係る遮蔽体の一例を拡大して示し、錠剤印刷装置Sを正面から見た断面図である。図15及び図16においては、それぞれ中央に印刷ヘッドHが示されており、その下部に搬送ベルト134が示されている。また、搬送ベルト134上には破線で示す錠剤Tが示されており、錠剤Tは矢印の向きに搬送される。なお、図15及び図16においては、錠剤印刷装置Sのその他の構成についてはその図示を省略している。また、印刷ヘッドHは、多数の吐出口が一列あるいは複数列並んで配置されていて、その配置方向を長手とする直方体形状に形成されている。
図15に示すように、印刷ヘッドHは、錠剤Tの搬送方向(図15に示す矢印の向き)にその長辺が水平面内で直交する向きに位置する。換言すれば、印刷ヘッドHの長辺方向は、搬送ベルト134の幅方向と平行である。
遮蔽体71は、錠剤Tが印刷ヘッドHの下に入る位置の上方、印刷ヘッドHの下から出る位置の上方の両者、すなわち、印刷ヘッドHにおける錠剤Tの搬送方向上流側と下流側の両側面にそれぞれ設けられている。この遮蔽体71は、例えば、長方形の板形状に形成されており、その長手方向が前述の印刷ヘッドHの長辺方向に沿って、その下端面が印刷ヘッドHの下端面(ノズル面)よりも低くなるように設けられている。さらに、遮蔽体71の下端と搬送ベルト134との距離は、印刷処理の際に印刷対象となる錠剤Tが接触することなく通過可能とされる距離に設定されている。また、遮蔽体71を構成する材料としては、たとえ錠剤Tが遮蔽体71に接触したとしても、錠剤Tが損傷することがない材料を利用することができる。
以上説明した通り、第3の実施形態によれば、遮蔽体71は、前述のように固定されている。これにより、吸引チャンバ14が錠剤Tを吸引保持するために空気の吸引を行ったとしても、錠剤Tの上方、すなわち、印刷ヘッドHから吸着部130(図2又は図3参照)に向けて流れる気流を整流することが可能になるため、効果的に気流の影響を防止することができる。これにより、印刷ヘッドHから吐出されたインクの飛翔中の形状が気流によって崩れたり、飛翔方向が気流に影響されて着弾位置がずれたりして、印刷不良が生じ、印刷品質の低下を招くことを防止できる。また、その気流の影響が印刷ヘッドHのインクを吐出するノズル近傍にまで達し、ノズル付近のインクが乾燥することで、吐出不良が発生し、同じく印刷品質の低下を招くことを防止できる。或いは、錠剤Tに着弾しなかったインクがミスト状に舞い散って、搬送されている錠剤Tの側面への付着等が生じることを防止できる。
さらに、印刷ヘッドHに遮蔽体71が設けられていることによって、仮に搬送される錠剤Tの姿勢が適切な状態にない場合であっても、印刷ヘッドHの下に侵入する前に遮蔽体71に接触することでその姿勢は適切な状態へと修正され、少なくとも印刷ヘッドHの吐出口に接触することを防止することができる。吐出口への錠剤Tの接触があると、吐出が正常にされなくなる恐れがある。
図16は、上述した遮蔽体71の変形例を示している。搬送ベルト134上に破線で示される錠剤Tが載置されており、印刷ヘッドHに向けて矢印の向きに搬送されることは、図15に示した断面図と同様である。
図16に示すように、遮蔽体72は、図15に示す遮蔽体71と同様、風防としての役割を果たす。錠剤Tが通過可能な高さまでではあるが、印刷ヘッドHのノズル面よりも下の位置まで遮蔽体72が設けられていることで、吸引チャンバ14による空気の吸引に基づく気流の影響を少なくすることが可能である。
この遮蔽体72は、インクが吐出されるノズルを除いて印刷ヘッドHの搬送ベルト134と対向する面、すなわち、吐出口を除く吐出口面を覆うように設けられている。これは、各吐出口を塞ぐことなく、錠剤Tが吐出口に接触することを防止するためである。従って、図16に示す遮蔽体72の構成であれば、風防としての役割のみならず、より確実に吐出口を保護することができる。
また、いずれの遮蔽体71、72であっても、吸引による気流が吐出口に当たりにくくなるので、印刷ヘッドHの吐出が行われない時の吸引による気流での乾燥を防ぐことができる。
ここで、前述の遮蔽体71,72と異なる変形例も存在する。これまでは、1つの搬送ベルト134における印刷ヘッドH近傍から吸着部130に向けて流れる気流を制御するために遮蔽体71,72を設ける例を説明した。一方、以下の遮蔽体の変形例は、錠剤Tを搬送する搬送ベルトが複数並行に設けられ、複数のレーンを構成するように設けられていることを前提として説明する。
図17は、第3の実施形態に係る遮蔽体73の変形例を拡大して示し、錠剤印刷装置Sを右側面から見た断面図である。なお、錠剤印刷装置Sのうち、以下の説明において不要な構成についてはその図示を省略している。
図17に示すように、第3の実施形態に係る第1の搬送装置10においては、錠剤Tを搬送するレーンが2つ設けられている。すなわち、第1の搬送装置10は、2つの搬送装置101,102から構成されている。いずれの搬送装置101,102もその構成要素として、少なくとも、第1のプーリ、第2のプーリ、搬送ベルト及び吸引チャンバを備えている。
搬送装置101は、図17では右側、すなわち、図1の錠剤印刷装置Sの正面図を例に挙げれば奥に位置している。一方、搬送装置102は、図17では左側、すなわち、図1の錠剤印刷装置Sの正面図で言えば、手前に位置している。
錠剤Tは、これら2つのレーンを構成する搬送装置101,102上に載置されて印刷ヘッドH下まで搬送され、印刷処理が行われる。図17においては、図面の奥から手前に向けて錠剤Tが搬送されることになる。印刷ヘッドHは、各搬送装置101,102にまたがっており、それぞれの搬送装置101,102に載置された錠剤Tに印刷処理を行う。
印刷ヘッドHの直下に、搬送装置101と搬送装置102との間に鉛直方向に伸びる遮蔽体73が錠剤Tの搬送方向に沿うように設けられている。この遮蔽体73は、各吸引チャンバ147,148による空気の吸引が行われた際に、互いに隣接する搬送装置101と搬送装置102との間で空気が移動し、気流の影響を生じさせないように設けられている。
図17では、各搬送装置101,102において、印刷ヘッドHの直下に錠剤Tが存在するように示しているが、必ずしも錠剤Tが存在するとは限らない。例えば、上流の搬送状態によって搬送装置101には錠剤Tが存在せず、搬送装置102のみに錠剤Tが存在するような場合がある。この場合、搬送装置101では、吸引チャンバ147による錠剤Tに妨げられない吸引が行われることになる。このとき、その吸引による気流の範囲や流量は錠剤Tが存在している時よりも大きくなる。したがって、併設される隣の搬送装置102での印刷処理に影響を与えることになる。
ところが、搬送装置101と搬送装置102の間には遮蔽体73が存在しているので、搬送装置101での吸引による気流は遮蔽体73により遮蔽され、搬送装置102側には気流の影響が生じない。
遮蔽体73における印刷ヘッドHの直下から鉛直方向への長さは、隣接する搬送装置101と搬送装置102との距離、それぞれの吸引チャンバ147,148により錠剤Tを吸引保持するために空気の吸引が行われる際の吸引力等の条件が勘案されて任意に設定される。
なお、遮蔽体73は、印刷ヘッドHに設けられ、その表面から鉛直方向に延ばされてもよい。また、例えば、隣接する搬送装置101と搬送装置102との間に遮蔽体73を固定するための固定部材が設けられるのであれば、遮蔽体73をこの固定部材に固定し、印刷ヘッドHに向けて垂直方向に延ばすことも可能である。
以上説明した通り、印刷ヘッドHの表面近傍に気流の影響を防止するための遮蔽体73を設けることで、錠剤Tの吸引保持のために用いられる空気の吸引を適切に制御することができる。このため、インクの安定的な吐出を確保し、印刷品質の維持を実現することができる錠剤印刷装置Sおよび錠剤印刷方法を提供することができる。
なお、ここでは、錠剤Tの搬送レーンが2つ、すなわち搬送装置が2つ設けられている場合を例に挙げて説明したが、3つ以上の搬送装置をもって錠剤Tの搬送を行う場合等、いずれの場合にも遮蔽体73を設けることが可能である。
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について図18を参照して説明する。なお、第4の実施形態において、上述の第1ないし第3の実施形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
図18は、第4の実施形態に係る、第1の領域に設けられて吸引力による気流を整流するための空気供給口部81を、印刷ヘッドH及び搬送ベルト137とともに示す断面図である。また、図18では、説明の便宜上、搬送ベルト137のうち第1の領域を含むように切断して示している。なお、印刷ヘッドHは、搬送ベルト137の搬送方向とその長辺が水平面内で直交するように位置している。
搬送ベルト137には、短辺方向略中央に溝状の凹部1371が形成されている。そして、この凹部1371を跨ぐように錠剤Tが載置される。また、凹部1371の底面には、搬送ベルト137の裏面に貫通する孔である吸引孔1372が形成されている。この凹部1371と吸引孔1372とで、錠剤Tの吸着部が構成されている。
さらに、吸引孔1372の直下には、吸引チャンバ140の吸引溝143が位置している。これにより、吸引溝143を介して凹部1371上に載置されている錠剤Tに対して吸引力が与えられる。そして、搬送ベルト137の凹部1371の近傍、図18では、凹部1371の両側に空気供給口部81が設けられている。これらの空気供給口部81は、搬送ベルト137の搬送方向と水平に直交する方向に並べられている。
上述したように、吸引チャンバ140が空気を吸引することで、例えば印刷ヘッドH付近から凹部1371に向けて空気が流れる。吸引チャンバ140による吸引力が強ければ強いほど気流が生じ、それに伴って印刷ヘッドHから吐出されるインクの飛翔方向が気流の影響を受けて曲がり、着弾位置が乱されることになる。すなわち、印刷が正しく行われない。
そこで、吸引溝143の上部で、印刷ヘッドHと搬送ベルト137との間の空間から吸引される空気の量を減少させることによって、気流の影響を抑制するようにしている。具体的には、吸引溝143の上部で、印刷ヘッドH近傍から吸引される空気の量を減らすべく、凹部1371には空気供給口部81から空気を供給できるようにしている。
この空気供給口部81から、凹部1371に吸引される空気を供給することで、凹部1371に吸引される空気の流れは空気供給口部81から凹部1371へと搬送ベルト137の表面に沿った流れが主流となる。つまり、吸引力による気流が整流される。これにより、印刷ヘッドH近傍から錠剤Tの側面を通過して凹部1371に吸引される空気の量を減少させることが可能となる。従って、空気供給口部81は吸引力調整装置として機能する。
このように、印刷面から遠い印刷ヘッドH近傍から錠剤Tの側面を通過する空気の量が減るので、印刷処理時に印刷ヘッドHから吐出されたインクの飛翔に与える影響を抑制することができる。この結果、印刷ヘッドHから吐出されたインクの飛翔中の形状が気流によって崩れたり、飛翔方向が気流に影響されて着弾位置がずれたりして、印刷処理における印刷不良が生ずることを少なくすることができる。また、その気流の影響が印刷ヘッドHのインクを吐出するノズル近傍にまで達し、ノズル付近のインクが乾燥することで、吐出不良が発生し、同じく印刷品質の低下を招くことを防止できる。或いは、錠剤Tに着弾しなかったインクがミスト状に舞い散って、搬送されている錠剤Tの側面への付着等が生じることを防止できる。
以上説明した通り、第4の実施形態によれば、吸着部近傍に空気供給口部81である開口を設けることで、吸着部に吸引される空気は主に吸着部近傍の開口から供給されるので、印刷ヘッドH近傍から吸着部に向けて流れる空気の量を減らすことができる。したがって、錠剤Tの吸引保持のために必要な吸引力を保ちつつ、吸引による気流の印刷への影響を少なくすることができるので、高い印刷品質の錠剤印刷装置Sおよび錠剤印刷方法を提供することができる。
なお、吸着部近傍に設ける開口は、上述のように孔であっても良いし、吸着部の周囲に断続的な貫通溝を設けるようにしても良い。もちろん、吸着部が溝であっても孔であってもよい。以上の説明と同様の効果を得ることができる。
<他の実施形態>
以上説明した実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
例えば、図2に示す第1の搬送装置1においては、搬送ベルト13の吸着部130は、搬送ベルト13の幅方向中央に1つ(1列)設けられているが、複数(複数列)設けられていても良い。つまり、一つの搬送ベルト13において錠剤Tを搬送する搬送列が複数であっても良い。また、図17に示すように、一つの搬送装置101又は102における搬送ベルト135又は136が複数であっても良く、さらに、各搬送ベルト135又は136での錠剤Tを搬送する搬送列が複数であっても良い。
また、搬送ベルト(例えば、13、133~137)に設けられる吸着部の大きさ、形状、個数等は限定されない。例えば、図19に示すベルトの吸着部断面のように、ポケットや溝などの凹部131の中に錠剤Tが収容されるもの、図20に示すように、凹部131の上に錠剤Tが載置されるものでも良い。また、図21に示すように、凸部によりポケットや溝等の凹部131を形成し、その凹部131の上に錠剤Tが載置されるもの、あるいは、図22に示すように、前述の凹部131が形成されておらず、搬送ベルト13に吸引孔132だけ形成されているものなど、上記説明したものも含め、錠剤Tを吸引保持することが可能であればよい。
また、搬送ベルト(例えば、13、133~137)に微細な吸着部が多数存在してもよく、多孔質な材質のベルトとしても良い。あるいは、網目状の孔であっても良い。このようなベルトの場合には、搬送される錠剤Tが列状ではなく、ベルト上でランダムに吸引保持されていても良い。また、二本のベルトの間を吸着部とし、二本のベルトで錠剤Tを保持するようにしても良い。二本のベルトが連結されてはしご状となっていても良い。さらには、このような錠剤Tの周囲に、より大きな開孔があって吸引される時、印刷への影響はより大きくなるため、印刷時の吸引による気流を少なくすることは、より大きな効果となる。したがって、さまざまな搬送手段への対応が可能である。
また、吸引チャンバ(例えば、14、24、140、147、148)による錠剤Tの吸引は必ずしも全周を吸引する必要はない。例えば、錠剤Tの一面にしか印刷を行わない場合には、搬送装置は一つで良く、この場合には、錠剤Tを反転して搬送する部分の周辺で錠剤Tは排出されることになり、錠剤Tを排出した後から受け取り(供給)部分までは、錠剤Tが搬送ベルト13上に存在しないので吸着の必要が無い。また、例えば、図1の錠剤印刷装置1のように、錠剤Tの上下両面に印刷を行う場合には、第1の搬送装置1で、第1の搬送装置1から第2の搬送装置2へ錠剤Tを受け渡した後、あるいは、第2の搬送装置2で錠剤Tを排出した後において、あらためて錠剤Tが供給される場所までは、錠剤Tが搬送ベルト13、23上に存在しないので吸着は必要ない。したがって、これらのような錠剤Tを吸着する必要のない場所では、吸引チャンバ(例えば、14、24、140、147、148)を設ける必要はない。例えば、第1の搬送装置1から第2の搬送装置2へ錠剤Tを受け渡した後で、従動側プーリ周辺にチャンバ14の一部を設けないこともできる。
また、吸引力の大きさは、吸引する圧力や吸引空気量、吸引空気速度(風速)を調整することで調整される。すなわち、吸引力とは、風速や圧力を含む概念である。
また、第1の実施形態のおける吸引チャンバ14による吸引力の場所による調整と、その他の実施形態とを組み合わせても良い。錠剤Tに与えられる吸引力を搬送位置によってさらにきめ細かく設定し、調整することができる。
また、第1および第2の実施形態においては、印刷処理のときには印刷不良が生じない程度に気流がない吸引力となるようにしたが、これに限られず、少なくとも印刷ヘッドHと対向する搬送位置、その前後の位置で錠剤Tに与えられる吸引力を完全になくしても良い。
また、インクジェット方式の印刷ヘッドHの駆動素子については、圧電素子、発熱素子や磁歪素子等を適用することができる。
なお、「錠剤」としては、例えば、裸錠(素錠)、糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠等を挙げることができる。さらには、硬カプセル、軟カプセルいずれで構成されているかを問わず、カプセル錠についても「錠剤」に含めることができる。また、これら「錠剤」は、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用、芳香用として使用されるものも含んでも良い。
印刷対象とされる錠剤が医薬用、飲食用である場合には、使用するインクは、可食性インクが好適である。具体的には、可食性色素としてアマランス、エリスロシン、ニューコクシン(以上、赤色)、タートラジン、サンセットイエローFCF、β-カロチン、クロシン(以上、黄色)、ブリリアントブルーFCF、インジゴカルミン(以上、青色)等を用い、これらをビヒクルに分散または溶解し、必要に応じて色素分散剤(界面活性剤)を配合したものを使用することができる。また、可食性インクであれば、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
以上説明した実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。