WO2016031925A1

WO2016031925A1 - ワイヤハーネス用シート

Info

Publication number: WO2016031925A1
Application number: PCT/JP2015/074260
Authority: WO
Inventors: 翔太望月; 広市川; 竹内　和也
Original assignee: 矢崎総業株式会社
Priority date: 2014-08-28
Filing date: 2015-08-27
Publication date: 2016-03-03
Also published as: US20170148552A1; CN106663508A

Abstract

　シート状に形成されたフォーム（３）と、このフォーム（３）の表裏面のうち一方の面に設けられたフィルム（５）と、フォーム（３）の表裏面のうち他方の面に設けられた粘着層（７）とを備えたワイヤハーネス用シート（１）において、フィルム（５）の硬度を、ショア硬度Ａ６０以上Ａ９２以下に設定した。

Description

ワイヤハーネス用シート

　本発明は、ワイヤハーネス用シートに関する。

　従来、ワイヤハーネス用シートとしては、シート状に形成されたフォームとしてのシート基材と、このシート基材の表裏面のうち一方の面に設けられたフィルムとしての表面材と、シート基材の表裏面のうち他方の面に設けられた粘着層とを備えたものが知られている（特許文献１参照）。

　このワイヤハーネス用シートでは、シート基材がＰＰ（ポリプロピレン）発泡材からなり、表面材がＰＰフィルムやＰＥＴ（ポリエチレンテレフタレート）フィルムなどからなり、粘着層が糊や結束テープなどが不要であり互いの粘着面同士を合わせるだけで貼ることができる自己粘着層からなる。

　このようなワイヤハーネス用シートは、複数の電線の外周を粘着層を内側面とし表面材を外側面として巻き、互いの粘着面同士を合わせて貼り付けることにより、複数の電線を集束して保護する。

特開２０１３－１６８３２２号公報

　ところで、特許文献１のようなワイヤハーネス用シートでは、フィルムとして用いられる表面材が、押出機でダイより出た原反シートを冷却し、その後延伸装置で熱延伸して製造された、いわゆる延伸シートとなっている。この延伸シートは、その硬度がショア硬度Ａ９７となっている。

　しかしながら、このようなフィルムが適用されたワイヤハーネス用シートでは、例えば、車両の走行時における振動などによって、外側面であるフィルムが周辺部材と干渉してしまうと、異音が発生していた。

　そこで、この発明は、周辺部材との干渉による異音の発生を抑制することができるワイヤハーネス用シートの提供を目的としている。

　本発明の一態様に係るワイヤハーネス用シートは、シート状に形成されたフォームと、このフォームの表裏面のうち一方の面に設けられたフィルムと、フォームの表裏面のうち他方の面に設けられた粘着層とを備えている。そしてフィルムの硬度は、ショア硬度Ａ６０以上Ａ９２以下に設定されている。

　このワイヤハーネス用シートでは、フィルムの硬度が、ショア硬度Ａ６０以上Ａ９２以下に設定されているので、フィルムに柔軟性をもたせることができ、フィルムと周辺部材との干渉による衝撃を吸収し、周辺部材との干渉による異音の発生を抑制することができる。

　また、フィルムは、柔軟性を有するので、ワイヤハーネス用シートの屈曲が容易となり、複数の電線に対する組付性を向上することができる。加えて、フォームからのフィルムの剥がれを軽減することができる。

　従って、このようなワイヤハーネス用シートでは、フィルムと周辺部材との干渉による衝撃をフィルムによって軽減することができるので、周辺部材との干渉による異音の発生を抑制することができる。

　本発明によれば、周辺部材との干渉による異音の発生を抑制することができるワイヤハーネス用シートを提供することができるという効果を奏する。

本発明の第１実施の形態に係るワイヤハーネス用シートの分解斜視図である。本発明の第１実施の形態に係るワイヤハーネス用シートの実施例及び比較例における異音の測定の一例を示す図である。本発明の第１実施の形態に係るワイヤハーネス用シートの実施例及び比較例における異音の測定と耐摩耗性の測定との結果を示す表である。第２実施の形態に係る自己粘着性塩化ビニルシート又はテープの層構成を示す図である。第２実施の形態に係るワイヤハーネスの横断面図である。第２実施の形態に係るワイヤハーネスの製造工程を示す図である。

　図１を用いて本発明の第１実施形態に係るワイヤハーネス用シートについて説明する。

　本実施の形態に係るワイヤハーネス用シート１は、シート状に形成されたフォーム３と、このフォーム３の表裏面のうち一方の面に設けられたフィルム５と、フォーム３の表裏面のうち他方の面に設けられた粘着層７とを備えている。

　そして、フィルム５の硬度は、ショア硬度Ａ６０以上Ａ９２以下に設定されている。

　なお、本実施の形態に係るワイヤハーネス用シート１は、例えば、ドアなどに配置される室内ワイヤハーネスに適用される。

　図１に示すように、フォーム３は、ＰＰ（ポリプロピレン）樹脂に対して所定量の発泡剤を添加して形成された組成物としてのＰＰ発泡材からなり、四角形のシート状に形成されている。このフォーム３の表裏面のうち一方の面（ここでは図１における表面）には、フィルム５がフォーム３と一体的に設けられている。

　フィルム５は、ＰＰ樹脂からなり、ダイより出た溶融膜を内部に水を循環する冷却ロールに直接触れさせて冷却してフィルム５を得る、いわゆる無延伸シートとなっている。

　この無延伸シートであるフィルム５は、その硬度がショア硬度A60以上A92以下に設定されている。これは、従来の延伸シートであるフィルムの硬度のショア硬度A97より低く設定されている。このため、フィルム５は、従来のフィルムよりも柔軟性を有している。

　このようなフィルム５は、ワイヤハーネス用シート１が複数の電線９（図２参照）の外周に巻き付けられて集束して保護することによってワイヤハーネスを構成する際に、ワイヤハーネス用シート１の外側面となる。このため、フィルム５は、周辺部材と干渉し、異音を発生する恐れがある。

　そこで、フィルム５の硬度をショア硬度A60以上A92以下に設定することにより、従来のフィルムよりも柔軟性をもたせることができ、周辺部材との干渉による衝撃を吸収し、異音の発生を抑制することができる。

　また、このようにフィルム５の硬度を設定することにより、ワイヤハーネス用シート１を複数の電線９の外周に巻き付ける際に、その柔軟性によってワイヤハーネス用シート１を曲げやすくすることができ、組付性を向上することができる。

　加えて、フィルム５の柔軟性により、複数の電線９の外周に巻き付けられるときなどの屈曲によって、フィルム５がフォーム３の表面から剥がれることを抑制することができる。

　一方、フィルム５の厚さは、フィルム５の硬度がショア硬度Ａ８５以上Ａ９２以下であるとき、０．１０ｍｍ以上に設定され、フィルム５の硬度がショア硬度Ａ８０以上であるとき、０．１５ｍｍ以上に設定され、フィルム５の硬度がショア硬度Ａ６５以上Ａ７５以下であるとき、０．３０ｍｍ以上に設定され、フィルム５の硬度がショア硬度Ａ６０以上であるとき、０．３５ｍｍ以上に設定され、上限値がフィルム５の厚さによる柔軟性の低下を防止するために、０．４０ｍｍ以下に設定されている。

　このようにフィルム５の厚さを設定することにより、周辺部材との干渉によるワイヤハーネス用シート１の耐摩耗性を向上しつつ、ワイヤハーネス用シート１の柔軟性の低下を防止することができる。

　このようなフィルム５が設けられたフォーム３の表裏面のうち他方の面（ここでは図１における裏面）には、粘着層７がフォーム３と一体的に設けられている。

　なお、フィルム５やフォーム３に使用される樹脂は、ＰＰに限定されるものではなく、ＰＥ（ポリエチレン）、ＰＥＴ（ポリエチレンテレフタレート）など、種々の樹脂が使用可能である。

　粘着層７は、互いの粘着面同士を合わせるだけで貼ることができる自己粘着層からなる。このため、ワイヤハーネス用シート１を複数の電線９の外周に巻き付ける際には糊や結束テープなどが不要であり、ワイヤハーネス用シート１自体を巻き付けて保管するときや搬送するときには粘着面同士以外に貼り付かないために剥離紙などが不要となる。

　この自己粘着層からなる粘着層７は、ワイヤハーネス用シート１が複数の電線９の外周に巻き付けられた際に、ワイヤハーネス用シート１の内側面となり、例えば、図２に示すように、両端側が複数の電線９の外周から突出され、両端側の粘着層７のそれぞれの粘着面同士が合わされてワイヤハーネスが構成される。

　このようなワイヤハーネス用シート１では、フィルム５の硬度が、ショア硬度Ａ６０以上Ａ９２以下に設定されているので、フィルム５に柔軟性をもたせることができ、フィルムと周辺部材との干渉による衝撃を吸収し、周辺部材との干渉による異音の発生を抑制することができる。

　また、フィルム５は、柔軟性を有するので、ワイヤハーネス用シート１の屈曲が容易となり、複数の電線９に対する組付性を向上することができる。加えて、フォーム３からのフィルム５の剥がれを軽減することができる。

　従って、このようなワイヤハーネス用シート１では、フィルム５と周辺部材との干渉による衝撃をフィルム５によって軽減することができるので、周辺部材との干渉による異音の発生を抑制することができる。

　第１実施形態に係るワイヤハーネス用シートを、以下の実施例を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。

　（実施例）
　フィルムの硬度を、各実施例ではショア硬度Ａ９２～Ａ６０とし、各比較例ではショア硬度Ａ９７～Ａ９４とした。

　各実施例及び各比較例において、図２に示すように、複数の電線９の外周に適当な長さの試験片としてのワイヤハーネス用シート１を巻き付け、両端側の粘着層７同士を貼り付けた。

　この貼り合わされた端部を、アルミ棒１１などで弾いたときの音をマイクなどの測定器具１３を用いて測定した。なお、測定器具１３は、貼り合わされた端部より４０ｍｍの高さで固定し、２３℃、０℃、－４０℃の条件で測定を行った。

　この測定による判定は、６５ｄｂ未満を○とし、６５ｄｂ以上を×とした。なお、６５ｄｂは、従来のフィルムであるビニルシートを適用したときの音であり、これを基準としたものである。

　また、各実施例及び各比較例において、フィルムの厚さを０．０５ｍｍ～０．４０ｍｍとし、フォームの厚さを２．００ｍｍとし、フィルムの厚さにおける耐摩耗性の測定を行った。

　この耐摩耗性の測定は、適当な長さの試験片としてのワイヤハーネス用シートをφ１０ｍｍのアルミパイプに貼り付け、ＪＡＳＯ　Ｄ　６０８に規定する耐摩耗試験器にセットした。そして、試験片に４．４Ｎの荷重を加え、１５００ｍｍ／ｍｉｎ．の速さで摩耗テープを移動させ、アルミパイプとテープとが接触するまでのテープ長さを読み取った。

　この測定による判定は、上記の操作を行い、８個のデータの平均値を求め、平均値以下のデータについて再平均したものを最小摩耗抵抗値としている。この測定では最小摩耗抵抗値が１０００ｍｍであったため、１０００ｍｍ以上を○とし、１０００ｍｍ未満を×とした。これらの結果を図３の表に示す。

　図３の表から明らかなように、第１実施形態に従う各実施例は、測定した各温度において、６５ｄｂ未満となり、異音の判定基準を満たしていた。

　これに対して、各比較例では、測定した各温度において、６５ｄｂ以上となり、異音の判定基準を満たしていなかった。

　このことから、フィルムの硬度をショア硬度Ａ９２以下とすることにより、フィルムに柔軟性をもたせることができ、フィルムと周辺部材との干渉による異音の発生を抑制することができるということがわかる。

　一方、第１実施形態に従う各実施例では、フィルムの硬度がショア硬度Ａ８５以上Ａ９２以下であるとき、フィルムの厚さを０．１０ｍｍ以上、フィルムの硬度がショア硬度Ａ８０以上であるとき、フィルムの厚さを０．１５ｍｍ以上、フィルムの硬度がショア硬度Ａ６５以上Ａ７５以下であるとき、フィルムの厚さを０．３０ｍｍ以上、フィルム５の硬度がショア硬度Ａ６０以上であるとき、フィルムの厚さを０．３５ｍｍ以上とすることにより、耐摩耗性の判定基準を満たしていた。

　なお、耐摩耗性は、フィルムの厚さを厚くすればするほど、判定基準を満たすことになるが、フィルムの厚さが厚くなればフィルムの柔軟性の低下やフィルムをワイヤハーネスに取り付けたときの大径化などを引き起こすので、フィルムの厚さの上限は０．４０ｍｍ以下に設定することが好ましい。

　以上の結果から、本発明（実施例）の場合、周辺部材との干渉による異音の発生を抑制することができるワイヤハーネス用シートを得ることができる。一方、本発明を満たさない（比較例）場合、あまり魅力的でないワイヤハーネス用シートが得られる。

　なお、本発明の第１実施形態に係るワイヤハーネス用シートでは、粘着層が自己粘着層となっているが、これに限らず、糊や結束テープなどを用いる粘着層であってもよい。

　また、本発明のワイヤハーネス用シートでは、フィルムの硬度の下限としてショア硬度Ａ６０以上と規定しているが、例えば、フィルムを成形できる範囲であれば下限をショア硬度Ａ６０以上とする必要はなく、上限のみをショア硬度Ａ９２以下とすればよい。

　（第２実施形態）
　次に第２実施形態を図面に基づいて説明する。フォームとフィルムである基材１１１と粘着層である自己粘着層１１２に第２実施形態に係るワイヤハーネス用シートが適用されている。以下、説明する。

　以下、図面を参照して第２実施形態の自己粘着性塩化ビニルシート又はテープを具体的に説明する。

　［自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ］
　図４は、自己粘着性塩化ビニルシート又はテープの層構成を示す図である。図４に示すように、本実施形態に係る自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０は、基材１１１と、この基材１１１の片面に設けられた自己粘着層１１２と、を備える。

　（基材）
　基材１１１は、ポリ塩化ビニルフィルムからなる。ポリ塩化ビニルフィルムとしては、公知のものを用いることができ、例えば、公知の粘着テープやシートの基材用のポリ塩化ビニルフィルムを用いることができる。これらの粘着テープやシートの基材用のポリ塩化ビニルフィルムは、通常、可塑剤を含有し、安価で成形性、加工性に優れ、柔軟性及び強度のバランスがよいため好ましい。ここで、可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、ポリエステル系可塑剤、トリメリット酸エステル等のトリメリット系可塑剤が用いられる。

　一般的に、これらの可塑剤が、自己粘着層を構成する粘着剤組成物中に移動すると、粘着剤組成物が軟化して自己粘着層の自己粘着性が低下する。これに対し、本実施形態に係る自己粘着性塩化ビニルシート又はテープでは、自己粘着層を構成するグラフト重合物自体が耐可塑剤性に優れているため、可塑剤が侵入しても高い自己粘着性を維持する。

　基材の厚さは、特に限定されないが、通常５０～６００μｍ、好ましくは２００～４００μｍである。基材の厚さがこの範囲内にあると、ポリ塩化ビニルフィルムの柔軟性及び強度のバランスがよい。

　（自己粘着層）
　自己粘着層１１２は、グラフト重合物からなり、ポリ塩化ビニルフィルムからなる基材の片面に設けられる。自己粘着層を構成するグラフト重合物は、天然ゴムとメタクリル酸メチルとがグラフト共重合した重合物である。ここで、天然ゴムとしては、例えば、公知の天然ゴム、トランス型のポリイソプレン等が用いられる。

　自己粘着層を構成するグラフト重合物は、（天然ゴムに結合したメタクリル酸メチルの質量／グラフト化に用いられた天然ゴムの質量）×１００で定義されるメタクリル酸メチルのグラフト率が、３０％以上、好ましくは３０～５０％、より好ましくは３５～４５％である。なお、グラフト率は、通常は、グラフト重合物の製造時の原料である天然ゴムとＭＭＡとの質量比から算出される。

　グラフト重合物のグラフト率が上記範囲内にあると、耐可塑剤性、特に４０～１００℃程度の高温時における耐可塑剤性が優れるため好ましい。ここで、耐可塑剤性とは、基材中に存在する可塑剤が自己粘着層を構成するグラフト重合物に侵入しても、自己粘着層の自己粘着性がほぼ維持される特性をいう。また、自己粘着性とは、自己粘着性塩化ビニルシート又はテープの自己粘着層同士を接触させて粘着させたときに、この粘着状態が維持される特性をいう。なお、自己粘着性塩化ビニルシート又はテープの基材と自己粘着層とを接触させて粘着させたときに、この粘着状態が維持される特性を背面粘着性という。

　一方、グラフト重合物のグラフト率が３０％未満であると、耐可塑剤性が低下し、基材中の可塑剤によりグラフト重合物が軟化して自己粘着層の自己粘着性が低下するおそれがある。また、グラフト重合物のグラフト率が５０％を超えると、自己粘着層を構成するグラフト重合物が硬くなり自己粘着性が十分でなくなるおそれがある。

　なお、一般的に、基材から自己粘着層への可塑剤の移動が高温になるほど容易になるため、高温では耐可塑剤性が低下し易い。これに対し、本実施形態の自己粘着層は、４０～１００℃程度の高温における耐可塑剤性が高いため、このような高温下でも自己粘着性の低下が極めて少なく十分な自己粘着性が発現される。

　グラフト重合物を作製するグラフト共重合方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、天然ゴムのラテックスにメチルメタクリレートを加え、ラジカル重合開始剤の存在下でグラフト共重合させる方法（ラテックスグラフト法）、天然ゴムとメチルメタクリレートとラジカル開始剤とを、天然ゴムを溶融した状態にした状態で混練してグラフト共重合させる方法（溶融グラフト法）等が用いられる。

　グラフト重合物からなる自己粘着層の厚さは、特に限定されないが、通常１～５０μｍ、好ましくは１５～４０μｍである。自己粘着層の厚さがこの範囲内にあると、ポリ塩化ビニルフィルムが、十分な柔軟性を有したままで自己粘着性が十分に発現する。

　自己粘着層の厚さが１μｍ未満であると、十分な自己粘着性を得られないおそれがある。自己粘着層の厚さが５０μｍを超えると、粘着剤であるグラフト重合物を乾燥させる時間を多く要しまた自己粘着層が発泡し易くなることから生産性が低下するため、得られる自己粘着性塩化ビニルシート又はテープの価格が著しく上昇するおそれがある。

　自己粘着層を構成するグラフト重合物には、必要により、添加剤を配合してもよい。配合される添加剤としては、例えば、酸化防止剤、増粘剤が挙げられる。ここで、酸化防止剤とは、グラフト重合物の酸化を防止又は抑制する成分である。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等の酸化防止剤が用いられる。

　また、増粘剤とは、グラフト重合物の粘度を増加させる成分である。増粘剤としては、例えば、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製のプライマルシリーズ、ビー・エフ・グッドリッチ株式会社製のカーボポールシリーズ及びペムレンシリーズの増粘剤が用いられる。プライマルシリーズの増粘剤としては、例えば、プライマルＲＭ－４、プライマルＲＭ－５、プライマルＴＴ－６１５、プライマルＴＴ－９３５、及びプライマルＴＴ－９５０が用いられる。カーボポールシリーズの増粘剤としては、例えば、カーボポール９８１、カーボポール９３４、カーボポールＥＴＤ２０２０、カーボポールＥＺ－１、及びカーボポールＵｌｔｒｅｚ１０が用いられる。ペムレンシリーズの増粘剤としては、例えば、ペムレンＴＲ－１、及びペムレンＴＲ－２が用いられる。上記の増粘剤は、１種で又は２種以上を組み合わせて用いることができる。

　さらに、増粘剤としては、上記プライマルシリーズ等の増粘剤の増粘作用を阻害しない範囲内で、他の増粘剤を含んでいてもよい。このように組み合わせて用いられる増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、及びキサンタンガム等の多糖類が挙げられる。これらポリビニルアルコール等の増粘剤は、１種で又は２種以上を組み合わせて用いることができる。

　酸化防止剤は、グラフト重合物の１００質量部に対して、例えば０．５～５質量部含まれる。増粘剤は、グラフト重合物の１００質量部に対して、例えば０．５～２質量部含まれる。

　（プライマー層）
　基材の表面に自己粘着層を形成する場合、基材と自己粘着層との密着性を高めるために、必要により、基材と自己粘着層との間にプライマー層を形成することが好ましい。この場合、自己粘着性塩化ビニルシート又はテープは、基材、プライマー層及び自己粘着層の順番で積層されたものとなる。プライマー層は、例えば、基材の表面にプライマーを塗布し、プライマーを乾燥させることにより形成される。プライマーとしては、例えば、天然ゴムにメチルメタクリレートをグラフト重合させて得られるグラフト重合体にアクリロニトリルブタジエンラバーを添加した変性ＮＢＲ系プライマーが用いられる。

　プライマー層の厚さは、特に限定されないが、通常０．０１～１０μｍ、好ましくは０．１～０．５μｍである。プライマー層の厚さが０．０１μｍ未満であると、基材と自己粘着層との密着力を十分に得られないおそれがある。プライマー層の厚さが１０μｍを超えると、プライマー層の表面への自己粘着層の形成や自己粘着層の粘着性に悪影響が生じるために、自己粘着層の表面が平坦でなくなったり自己粘着性が低下したりするおそれがある。

　（作用）
　第２実施形態に係る自己粘着性塩化ビニルシート又はテープは、耐可塑剤性に優れた自己粘着層を有するため、塩化ビニルシート基材中の可塑剤により自己粘着層の自己粘着性が低下し難い。このため、自己粘着性塩化ビニルシート又はテープの自己粘着層同士を粘着させた場合の自己粘着性、及び自己粘着層と塩化ビニルシート基材とを粘着させたりした場合の背面粘着性が長期間良好に発現する。また、自己粘着性塩化ビニルシート又はテープの自己粘着層は、４０～１００℃程度の高温下での耐可塑剤性が優れる。このため、自己粘着性塩化ビニルシート又はテープを高温下で保存又は使用する場合でも、自己粘着性及び背面粘着性が長期間良好に発現する。

　自己粘着性塩化ビニルシート又はテープは、例えば、自動車用のワイヤハーネスの構成部品として使用される。次に本実施形態に係るワイヤハーネスについて説明する。

　［ワイヤハーネス］
　図５は、ワイヤハーネスの横断面図である。図６は、ワイヤハーネスの製造工程を示す図である。図５に示すように、本実施形態に係るワイヤハーネス１０１は、電線１２０を、本実施形態に係る自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０で集束したものである。集束される電線１２０は、通常、複数本あり、電線１２０の端部にはコネクタが取り付けられる。

　ワイヤハーネス１０１において、複数本の電線１２０は、例えば、電線１２０の表面に自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０の自己粘着層１１２が接触するように巻きつけられ、電線１２０の表面に接触しない自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０の余剰部分１１５にある２つの自己粘着層１１２同士が自己粘着することにより、集束されている。なお、複数本の電線１２０同士の間、及び電線１２０の表面と自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０の自己粘着層１１２との間には、空隙１２５が形成されている。

　ワイヤハーネス１０１の製造は以下のとおりである。はじめに、図６に示すように、自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０の自己粘着層１１２に複数本の電線１２０を配置する。次に、自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０の両端部を、図６の符号Ｘに示す方向に引き上げて、複数本の電線１２０を自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０の自己粘着層１１２で巻き込む。さらに、図５に示すように、自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０の両端部の余剰部分１１５にある２つの自己粘着層１１２、１１２同士を接触させて自己粘着させると、ワイヤハーネス１０１が得られる。

　（作用）
　第２実施形態に係るワイヤハーネスは、耐可塑剤性に優れ長期間良好に自己粘着性及び背面粘着性を発現する自己粘着性塩化ビニルシート又はテープを用いて電線を集束するため、電線を集束が長期間良好に行われる。また、第２実施形態に係るワイヤハーネスは、自己粘着性塩化ビニルシート又はテープが４０～１００℃程度の高温下での耐可塑剤性に優れるため、高温下で使用する場合でも長期間良好に電線を集束することができる。

　（実施例）
　以下、第２実施形態に従う実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。

　［実施例５］
　（自己粘着層形成用のエマルション粘着剤混合物の作製）　天然ゴム（ＮＲ、株式会社レジテックス製ＵＬＡＣＯＬ）１００質量部と、メタクリル酸メチル（ＭＭＡ、クラレ株式会社製メタクリル酸メチルモノマー）３０質量部とを用い、ラジカル重合開始剤の存在下でグラフト共重合させることにより、グラフト率が３０％のエマルション粘着剤（グラフト重合物）を作製した。表１に、エマルション粘着剤の製造条件及び性状を示す。

　次に、エマルション粘着剤１００質量部に対し、酸化防止剤（中京油脂株式会社製セロゾールＫ－３１９）１質量部と、増粘剤（ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製ＴＴ６１５）１質量部とを添加し、攪拌機を用いて攪拌した。これにより、グラフト率が３０％のエマルション粘着剤を含む、自己粘着層形成用のエマルション粘着剤混合物が得られた。

　（自己粘着性塩化ビニルシートの作製）
　はじめに、基材としての塩化ビニルシート（厚さ４００μｍ）の表面に、変性ＮＢＲ系のプライマーを塗布し、乾燥させることにより、塩化ビニルシートの表面に厚さ０．３μｍのプライマー層を形成した。

　なお、上記塩化ビニルシートは、重合度１１００のポリ塩化ビニル１００質量部に対して、可塑剤５０質量部、Ｃａ－Ｚｎ系塩化ビニル用複合安定剤４質量部、ＣａＣＯ３系充填剤２０質量部、着色剤、紫外線吸収剤、及び滑剤をバンバリーミキサーを用いて各成分が均一に分散するように混合した後、Ｔダイ成形機を用いて厚さ４００μｍに成形したものである。また、上記変性ＮＢＲ系のプライマーは、天然ゴムにメチルメタクリレートをグラフト重合させて得られるグラフト重合体にアクリロニトリルブタジエンラバーを添加して得られたものである。

　次に、プライマー層の表面にエマルション粘着剤混合物を塗布し、オーブンを用いて１２０℃で３分間乾燥させたところ、厚さ０．４ｍｍの塩化ビニルシート／厚さ０．３μｍのプライマー層／厚さ３０μｍの自己粘着層、の３層構造を有する自己粘着性塩化ビニルシートが得られた。この自己粘着性塩化ビニルシートから試験片を切り出した。

　（評価）
　試験片を用いて、自己粘着力、背面粘着力及び耐可塑剤性を評価した。

　　＜自己粘着力＞
　はじめに、試験片を２枚用意し、試験片の自己粘着層同士を貼り合わせ、３０分放置した。次に、２５℃下で２枚の試験片を３００ｍｍ／ｍｉｎの速度で引き剥がすために必要な力を測定した。試験片の引き剥がし方向は、引き剥がした後の２枚の試験片のなす角度が１８０°になるようにした。

　自己粘着力は大きいことが好ましい。このため、引き剥がすために必要な力が１０Ｎ／２０ｍｍ以上の場合を◎（非常に良好）と評価し、１Ｎ／２０ｍｍ以上１０Ｎ／２０ｍｍ未満の場合を○（良好）と評価し、１Ｎ／２０ｍｍ未満の場合を×（不良）と評価した。

　　＜背面粘着力＞
　ＪＩＳ　Ｃ　２１０７　１１項の試験法Ａ－２に準拠して、背面粘着力を測定した。具体的には、はじめに、２５℃下で、第１の試験片を所定の圧力で標準試験板に貼り付けた後、第１の試験片の背面（基材）側に第２の試験片を貼り付けた。次に、２５℃下で第２の試験片を特定の速さで第１の試験片の背面から１８０°の角度で引き剥がすために必要な力を測定した。

　背面粘着力は小さいことが好ましい。このため、引き剥がすために必要な力が１Ｎ／２０ｍｍ未満の場合を◎（非常に良好）と評価し、１Ｎ／２０ｍｍ以上の場合を×（不良）と評価した。

　　＜耐可塑剤性＞
　試験片を２枚用意し、試験片の自己粘着層同士を貼り合わせ、１００℃のオーブン中に１６８時間放置した後、２５℃下で２枚の試験片をゆっくりと引き剥がした。試験片の引き剥がし方向は、引き剥がした後の２枚の試験片のなす角度が１８０°になるようにした。引き剥がした試験片の自己粘着層を観察し、貼り合わせる前と引き剥がした後とで、自己粘着層が液状に軟化せず同じ性状を保っているものを◎（非常に良好）と評価した。また、引き剥がした試験片の自己粘着層が液状に軟化しているものを、可塑剤の影響と判断し、×（不良）と評価した。

　表１に、自己粘着力、背面粘着力、及び耐可塑剤性の結果を示す。

　［実施例６～９、比較例９～１１］
　エマルション粘着剤の製造条件及び性状を表１に示すように変えた以外は実施例５と同様にして、エマルション粘着剤を作製した。そして、このエマルション粘着剤を用いた以外は実施例５と同様にして、自己粘着性塩化ビニルシート及び試験片を作製した。なお、比較例９で作製されたエマルション粘着剤は、ＭＭＡを用いない、天然ゴムからなるものである。試験片を用い、実施例５と同様にして、自己粘着力、背面粘着力及び耐可塑剤性を評価した。表１に測定結果を示す。

　なお、実施例６については、乾燥終了後、オーブンから出した直後の自己粘着性塩化ビニルシートについて、自己粘着層の外観である自己粘着層外観も評価した。自己粘着層外観の評価方法を以下に示す。

　　＜自己粘着層外観＞
　オーブンを用いて１２０℃で３分間乾燥させて得られた３層構造を有する自己粘着性塩化ビニルシートを、オーブンから取り出した直後に、自己粘着層の表面の外観を観察した。自己粘着層の表面に凹凸が少なく表面が平滑であるものを◎（非常に良好）と評価し、自己粘着層の表面にひび割れや発泡が発生しているものを×（不良）と評価した。

　実施例６の自己粘着層外観の評価結果を、表１に、自己粘着力、背面粘着力、及び耐可塑剤性の結果とともに示す。

　［比較例１２］
　実施例５で用いた塩化ビニルシート（厚さ４００μｍ）の表面に、両面粘着テープ（株式会社寺岡製作所製Ｎｏ．７７７０、不織布製支持体、アクリル系粘着剤、総厚０．１６ｍｍ）を貼付して両面粘着テープ付塩化ビニルシートを作製した。この両面粘着テープ付塩化ビニルシートについて、実施例５と同様にして試験片を作製した。試験片を用い、実施例５と同様にして、自己粘着力、背面粘着力及び耐可塑剤性を評価した。表１に測定結果を示す。

　表１より、自己粘着層を構成するグラフト重合物のグラフト率が３０％、４０％及び５０％であると、自己粘着力、背面粘着力及び耐可塑剤性がすべて◎（非常に良好）であることが分かる。

　［実施例１０～１３］
　自己粘着層の厚さが表１に示す数値になるようにエマルション粘着剤混合物の塗布量を変えた以外は、実施例６と同様にして、塩化ビニルシート／プライマー層／自己粘着層、の３層構造を有する自己粘着性塩化ビニルシートを得た。この自己粘着性塩化ビニルシートから試験片を切り出し、実施例５と同様にして、自己粘着力、背面粘着力、及び耐可塑剤性を測定した。

　また、オーブンから出した直後の自己粘着性塩化ビニルシートについて、実施例６と同様にして、自己粘着層外観を評価した。

　表１に、自己粘着力、背面粘着力、耐可塑剤性、及び自己粘着層外観の結果を示す。

　表１より、自己粘着層の厚さが１０～４０μｍであると、自己粘着層外観が◎（非常に良好）であることが分かる。

　以上、本発明を実施形態によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。

　以上のように第２実施形態の自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０は、ポリ塩化ビニルフィルムからなる基材１１１と、この基材１１１の片面に設けられた自己粘着層１１２と、を備え、自己粘着層１１２は、天然ゴムとメタクリル酸メチルとがグラフト共重合したグラフト重合物からなり、このグラフト重合物は、（天然ゴムに結合したメタクリル酸メチルの質量／グラフト化に用いられた天然ゴムの質量）×１００で定義されるメタクリル酸メチルのグラフト率が、３０％以上である。

　第２実施形態の自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０は、自己粘着層１１２を構成するグラフト重合物のグラフト率が、３０～５０％であってもよい。

　第２実施形態のワイヤハーネス１０１は、電線１２０を第２実施形態の自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０で集束したものである。

　そして第２実施形態のワイヤハーネス１０１は、複数本の電線が集束手段で集束されたものである。

　従来、この電線の集束手段としては、両面接着テープ、接着剤や粘着剤が用いられてきた。このうち、両面接着テープに関する従来技術としては、特開２０１１－１０４８４０号公報に、多層抄き原紙からなる支持体の両面又は片面に、非晶質合成シリカと天然ゴム系感圧接着剤とを含有し、接着後に剥離可能である感圧接着層を形成した再剥離性圧着葉書用記録紙、が記載されている。特開２０１１－１０４８４０号公報に開示された再剥離性圧着葉書用記録紙が両面接着テープとして用いられる場合、感圧接着層の表面に剥離紙が貼付される。

　しかしながら、特開２０１１－１０４８４０号公報に記載された再剥離性圧着葉書用記録紙では、感圧接着層から剥離紙を剥離する作業が発生して作業効率が悪く、また、剥離した後の剥離紙が廃棄物になるという問題がある。なお、両面接着テープにおいて剥離紙を用いない場合は、剥き出しの感圧接着層がジグや製品に粘着したり、感圧接着層の表面状態が剥離紙を用いた場合に比較して劣化したりするため好ましくない。また、特開２０１１－１０４８４０号公報に記載された再剥離性圧着葉書用記録紙は、支持体が多層抄き原紙であるため、強度や耐水性が低いという問題もある。

　これに対し、剥離紙を用いない集束手段として、塩化ビニルシート等の基材に自己粘着性を有する粘着剤からなる自己粘着層を設けた技術が提案されている。特開２００１－３４８５４７号公報には、自己粘着層を構成する粘着剤として、天然ゴム及び／又はＳＢＲ（スチレンブタジエンラバー）９０～５０重量部、天然ゴムとＭＭＡ（メチルメタアクリレート）がグラフト共重合されたグラフト重合物１０～５０重量部を配合した粘着剤組成物が開示されている。この粘着剤組成物において、グラフト重合物は、天然ゴム８０～６０重量％とＭＭＡ（メチルメタアクリレート）２０～４０重量％がグラフト共重合されたものであり、ムーニー粘度が６０～９０Ｍｓ１＋４（１００℃）になっている。特開２００１－３４８５４７号公報の粘着剤組成物によれば、高い巻戻力を得ることができる。

　しかし、特開２００１－３４８５４７号公報の粘着剤組成物は、高い巻戻力を得るために、粘着剤組成物中のＭＭＡ（メチルメタクリレート）の含有量を２～２０重量％と低くしている。このため、基材である塩化ビニルシート中に含まれる可塑剤が自己粘着層を構成する粘着剤組成物中に移動すると、粘着剤組成物が軟化して自己粘着層の自己粘着性が低下するという問題がある。なお、可塑剤の自己粘着層への侵入は、通常、高温になるほど容易になるため、塩化ビニルシートと自己粘着層との積層体が高温下に置かれると自己粘着層の自己粘着性が低下しやすい。

　このため、集束手段として、強度や耐水性が高い塩化ビニルシート基材を用いる場合は、剥離紙を有する両面接着テープを用いる必要があり、自己粘着層から剥離紙を剥離する作業が発生して作業効率が悪く、また、剥離した後の剥離紙が廃棄物になるという問題があった。

　第２実施形態の自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０によれば、剥離紙を用いないため、作業効率が向上し、廃棄物の削減が可能である。また、第２実施形態の自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０によれば、粘着面同士以外では粘着性が発現しないため、自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０が他の部品に貼り付くことが実質的にない。さらに、第２実施形態の自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０によれば、塩化ビニルシート中に含まれる可塑剤が自己粘着層１１２を構成する粘着剤組成物中に移動しても、自己粘着層１１２の自己粘着性を維持することができる。

　第２実施形態のワイヤハーネス１０１によれば、剥離紙を用いないため、作業効率が向上し、廃棄物の削減が可能である。また、第２実施形態のワイヤハーネス１０１によれば、自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０の粘着面同士以外では粘着性が発現しないため、自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０が他の部品に貼り付くことが実質的にない。さらに、第２実施形態のワイヤハーネス１０１によれば、自己粘着性塩化ビニルシート又はテープ１１０の塩化ビニルシート中に含まれる可塑剤が自己粘着層１１２を構成する粘着剤組成物中に移動しても、自己粘着層１１２の自己粘着性を維持することができる。

　以上、本発明の第１実施形態および第２実施形態にかかるワイヤハーネス用シート１，１１０について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。

　本出願は、２０１４年８月２８日に出願された日本国特許出願第２０１４－１７３５１９号および２０１４年９月９日に出願された日本国特許出願第２０１４－１８３１３１号に基づく優先権を主張しており、この出願の全内容が参照により本願明細書に組み込まれる。

Claims

　シート状に形成されたフォームと、
　このフォームの表裏面のうち一方の面に設けられたフィルムと、
　前記フォームの表裏面のうち他方の面に設けられた粘着層と
　を備えたワイヤハーネス用シートであって、
　前記フィルムの硬度は、ショア硬度Ａ６０以上Ａ９２以下に設定されていることを特徴とするワイヤハーネス用シート。