WO2016027310A1

WO2016027310A1 - スライドファスナーの止具

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Publication number: WO2016027310A1
Application number: PCT/JP2014/071645
Authority: WO
Inventors: 雅典萱原; 保彦吉田; 亮三熊
Original assignee: Ykk株式会社
Priority date: 2014-08-19
Filing date: 2014-08-19
Publication date: 2016-02-25
Also published as: TW201615121A; TWI556763B

Abstract

スライダーの出し入れによる密閉性の低下をできる限り防ぐことのできるスライドファスナーの止具を提供すること。一対のテープ（１１，１１）に固定されている弾性変形可能な止具本体（３ａ）を備え、止具本体は、スライダーの一対の翼板（２１，２２）を連結する連結柱（２３）を外周側から囲んで収容する環状の収容体（３１）であって、その内側に形成される柱収容孔（３１ｈ）へ連結柱を出入りさせる開閉可能な入口部（３１ｉ）を含む収容体と、収容体の周方向全周に沿って延長すると共に収容体のうち柱収容孔の貫通方向両面から隆起する一対の隆起壁（３２，３２）であって一対の翼板に対して密接する一対の隆起壁とを備え、各隆起壁はその内外方向の中央部に凹んだ陥没部（３２ｈ）を備えているスライドファスナーの止具。

Description

スライドファスナーの止具

　本発明は、密閉性（防水性や気密性）を備えるスライドファスナーの止具に関する。

　スライドファスナーの止具の一例として、スライダーの連結柱を出入り可能に収容する柱収容孔が内側に形成される環状の収容体と、収容体の周方向全周に延長すると共に収容体のうち柱収容孔の貫通方向両面において隆起する一対の隆起壁とを備えたものが存在する（特許文献１）。

　そして前記した止具へ向かってスライダーを移動させると、止具によってスライダーがその移動を阻止されるまでの間に、次の１）～３）の現象が起きる。
　１）隆起壁と翼板とが衝突し、その衝突によって翼板が隆起壁を弾性変形させて押し潰し、２）隆起壁が押し潰されたままスライダーが移動することによって、翼板と隆起壁との間に摩擦抵抗が発生し、３）最終的には、止具の収容体にスライダーの連結柱が収容され、収容体の一対の隆起壁と一対の翼板とが密接し、その密接状態に応じた密閉性が発生する。

特開２００７－８９８９８号公報

　隆起壁と翼板との密閉性を向上させるには、隆起壁の内外方向の幅を広くして、密接面積を広げることが考えられるが、隆起壁の幅を広くすると、隆起壁が弾性変形しづらくなり、止具とスライダーとの摩擦抵抗が大きくなり、スライダーを移動させ難い。
　また一対の隆起壁と一対の翼板との間に発生する摩擦抵抗は、隆起壁を損傷させることになり、スライダーの開閉を繰り返すにつれて、密閉性が低下し、止具の耐久性を低下させる。

　本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その目的は、柱収容孔にスライダーの連結柱を出し入れすることによる密閉性の低下をできる限り防ぐことのできる止具を提供することである。

　本発明のスライドファスナーの止具は、一対のテープに固定されている弾性変形可能な止具本体を備えるものとする。そして止具本体は、スライダーの一対の翼板を連結する連結柱を外周側から囲んで収容する環状の収容体であって、その内側に形成される柱収容孔へ連結柱を出入りさせる入口部を含む前記収容体と、収容体の周方向全周に延長すると共に収容体のうち柱収容孔の貫通方向両面から隆起する一対の隆起壁であって一対の翼板に対して密接する一対の隆起壁とを備える。そのうえで隆起壁は前記貫通方向に凹んだ陥没部を備えている。

　また本発明の止具は、止具本体だけで構成されているか否かを問わない。ただし翼板と隆起壁との間で発生する摩擦抵抗を小さくするには、次のようにすることが望ましい。
　すなわち止具は、止具本体の他に、一対の翼板に付着可能なグリースを備えるものとし、止具本体は、各隆起壁の陥没部にグリースを収容していることである。

　陥没部は、隆起壁の周方向全周に対してどのように形成されているのかを問わず、例えば隆起壁の周方向全周のうち、一方のテープ側にのみ形成されていても良い。しかしこの場合には、収容体に連結柱が収容された状態ではスライダーは、一方のテープ側においてのみ一対の翼板が陥没部内のグリースを介して隆起壁に密接し、他方のテープ側においてはグリースを介することなく隆起壁に直に密接することになる。そうするとスライダーを移動させ難くなる。従ってスライダーの移動性を向上させるには次のようにすることが望ましい。
　すなわち収容体は、一対のテープの対向する側縁部を柱収容孔の貫通方向両面において連結する連結部と、連結部から一対のテープの対向する側縁部に沿って延長する一対の脚部であって互いの先部を入口部とする一対の脚部とを備えるものとする。そのうえで陥没部は、各隆起壁のうち少なくとも一対の脚部に形成されていることである。

　またスライダーの移動性をより向上させるには次のようにすることが望ましい。
　すなわち陥没部は、各隆起壁のうち連結部と一対の脚部に連続して形成されていることである。

　さらに各隆起壁は収容体の貫通方向両面の内外方向のどの位置に形成されていても良いが、スライダーの移動性の向上を考慮すると、収容体の貫通方向両面の内外方向の全域に形成されるよりも、一対の翼板との接触面積が小さい方がよく、それには次のようにすることが望ましい。
　すなわち各隆起壁は収容体のうち柱収容孔の貫通方向両面において外周縁よりも内側に形成されていることである。

　またスライダーの移動性の向上には次のようにすることが望ましい。
　すなわち一対の脚部は、柱収容孔の貫通方向両面には各隆起壁よりも外側に、一対の翼板に対する非接触面を備えることである。
　また一対の脚部は、柱収容孔の貫通方向両面には各隆起壁よりも内側に、一対の翼板に対する非接触面を備えることである。

　本発明の止具によれば、スライダーの連結柱が柱収容孔に入った状態では、収容体の両面の隆起壁が一対の翼板に密接することにより弾性変形し、それに伴って隆起壁のうち、陥没部より内側及び外側の部分がそれぞれ弾性変形することから、陥没部がない隆起壁に比べれば、隆起壁が弾性変形し易くなり、しかも陥没部の内側及び外側で隆起壁が二重に密接することになり、密閉性の向上を図ることができる。また連結柱が柱収容孔に出入りするようにスライダーを移動させたときに、陥没部よりも内側及び外側において隆起壁が弾性変形し易くなることにより、隆起壁と翼板との摩擦抵抗が小さくなり、止具の耐久性を向上させることができる。

　本発明の止具によれば、連結柱が柱収容孔に出入りするようにスライダーを移動させたときに、収容体の両面の隆起壁が一対の翼板に密接することにより弾性変形し、それに伴って隆起壁の陥没部内のグリースが翼板に接し、翼板と隆起壁との間にグリースが入り込み、隆起壁と翼板との摩擦抵抗が小さくなるので、密閉性が低下するのをできるだけ防ぐことができ、止具の耐久性を向上させることができる。

　また止具の構成を、収容体が一対のテープを連結する連結部と、連結部から一対のテープの対向する側縁部に沿って延長する一対の脚部とを備え、少なくとも一対の脚部に陥没部を形成するものとした構成にした場合は、スライダーの移動性を向上させることができる。

　さらに止具の構成を、陥没部が連結部と一対の脚部に連続して形成されている構成にした場合は、スライダーの移動性をより向上させることができる。

　また止具の構成を、各隆起壁が収容体のうち柱収容孔の貫通方向両面において外周縁よりも内側に形成されている構成にした場合は、各隆起壁が収容体のうち前記貫通方向両面の全域に形成されている構成にした場合に比べて、接触面積が狭いので、スライダーの移動性を向上させることができる。

　さらに止具の構成を、一対の脚部がその柱収容孔の貫通方向両面には各隆起壁よりも外側又は内側に、一対の翼板に対する非接触面を備える構成にした場合は、各隆起壁が一対の脚部の前記貫通方向両面の全域に形成されている構成にした場合に比べて、スライダーの移動性を向上させることができる。

本発明の第一実施形態の止具を含むスライドファスナーを示す平面図である。本発明の第一実施形態の止具を示す平面図である。本発明の第一実施形態の止具を示す下面図である。図２の止具をIV－IV線で切断したときに形成される面を示す端面図である。図４のV部を拡大して示す断面図である。本発明の第一実施形態の止具にスライダーが衝突している状態を示す平面図である。図６のVII－VII線断面図である。図７のVIII部を拡大して示す断面図である。本発明の第二実施形態の止具を示す平面図である。本発明の第三実施形態の止具を示す平面図である。

　本発明を適用するスライドファスナーＦは、図１に示すように、平行に延長する一対のファスナーストリンガー１，１と、一対のファスナーストリンガー１，１の対向する側縁部に沿って移動可能なスライダー２と、一対のファスナーストリンガー１，１が延長する長手方向の両端部においてスライダー２の移動範囲を定める第１及び第２の止具３，４と、第１の止具３及び第２の止具４に対して前記長手方向の両外側において一対のファスナーストリンガー１，１を接合する一対の接合具５，５とを備える。

　そしてスライダー２を前記長手方向のうち一方向へ移動させることによって、一対のファスナーストリンガー１，１を開くことができ、移動範囲の一方の限界位置に達すると、第１の止具３に衝突する。またスライダー２を前記長手方向のうち他方向へ移動させることによって、一対のファスナーストリンガー１，１を閉じることができ、移動範囲の他方の限界位置に達すると、第２の止具４に衝突する。

　以後の方向性を説明するに際して、長手方向のことを前後方向とも言い、前側とは、図１の上側であって、スライダー２が一対のファスナーストリンガー１，１を閉じる方向であって、後側とは、図１の下側であって、スライダー２が一対のファスナーストリンガー１，１を開く方向である。また左右方向とは、長手方向（前後方向）と直交し且つ一対のファスナーストリンガー１，１を並べる方向のことである。左側とは、図１の左側であって、右側とは、図１の右側である。さらに前後方向及び左右方向に直交する方向を上下方向（厚み方向）と言う。上側とは、図１の紙面に対して直交する方向、すなわち前後方向及び左右方向に直交する方向のうち手前側であって、下側とは、図１の紙面に対して直交する方向のうち奥側である。

　一対のファスナーストリンガー１，１は、前後に延長すると共に左右に並べる一対のテープ１１，１１と、一対のテープ１１，１１における対向する左右の側縁部に沿って固定された一対のエレメント列１２，１２とを備えている。

　各テープ１１は、前後に長い帯状であって、その厚み方向は上下方向である。また各テープ１１は、防水性を有するもので、弾性を有する合成樹脂、例えば塩化ビニルや熱可塑性エラストマー（ポリエチレンや合成ゴムなど）からなる防水材でテープ本体の上下両面及び左右側面を被覆したものである。

　各エレメント列１２は、テープ１１の対向する側縁部に沿って前後に間隔をあけて固定された多数のエレメント１３によって形成される。より具体的には、エレメント１３は、テープ１１よりも硬質の合成樹脂製であって、テープ１１に対して射出成形を行うことによって形成される。一対のファスナーストリンガー１，１が閉じた状態では、一対のエレメント列１２，１２のエレメント１３同士が噛合し、一対のファスナーストリンガー１，１が開いた状態では、一対のエレメント列１２，１２のエレメント１３同士が左右に分離する。

　エレメント１３は図２に示すように、テープ１１に固定されると共に左右方向に延長する胴部１４と、対向するテープ１１へ向かって胴部１４から突出する首部１５と、対向するテープ１１へ向かって首部１５から突出する頭部１６と、首部１５の前後両側から突出する一対の肩部１７と、対向するテープ１１とは反対側へ向かって胴部１４から突出するヒレ部１８とを備える。ちなみにヒレ部１８は図示の例では前後に間隔をあけて二つ設けられている。一対のヒレ部１８，１８と胴部１４と一対の肩部１７，１７と首部１５は、その厚み方向中間部にテープ１１の対向する側縁部を埋設しており、それゆえテープ１１を上下から挟むような形態でエレメント１３は固定されている。

　またヒレ部１８は、肩部１７よりもテープ１１の厚み方向への突出長を短くしている。そしてヒレ部１８の上下両面と、胴部１４の左右側面のうちヒレ部１８側の面とは、スライダー２の上下のフランジ２４，２４が移動する際に接する面である。
　また頭部１６は対向するテープ側の先端面に係止溝１６ａを備えている。そして係止溝１６ａは、対向するテープ１１側及び前後方向へ向かって開口し、エレメント１３同士が噛合する状態では、係止溝１６ａの内側には、対向するテープ１１側の一対の肩部１７，１７に嵌合する。

　スライダー２は図１、図７に示すように、一対のエレメント列１２，１２に係合すると共に前後に移動可能なスライダー胴体２ａと、スライダー胴体２ａに対して連結される引手（図示略）とを備える。

　スライダー胴体２ａは、上下方向に間隔をおいて対向する上下一対の翼板２１，２２と、上下の翼板２１，２２の前部同士の対向する間を互いの左右方向中間部において連結する連結柱２３であって一対のエレメント列１２，１２の間に挟まれる連結柱２３と、上下の翼板２１，２２の少なくとも一方（図示の例では両方）の左右端部から上下の翼板２１，２２の対向する間隔を狭める方向に突出するフランジ２４，２４と、上側の翼板２１の上面側に突出する引手取付部２５とを備えている。また引手取付部２５は、引手を取り付けるための貫通穴２５ａが形成されている。

　このような構成のスライダー胴体２ａはその内部空間として、前後方向に貫通するエレメント通路２ｂであって前側が二又に分岐したエレメント通路２ｂと、エレメント通路２ｂに連通すると共に左右に開口するテープ溝２ｃが形成される。エレメント通路２ｂには一対のエレメント列１２，１２が通され、各テープ溝２ｃには対応する側のテープ１１が通される。

　一対の接合具５，５は、一対のテープ１１，１１の上面及び下面において、これらの対向する側縁部に架け渡されると共に一対のテープ１１，１１の対向する隙間に充填されている。また各接合具５は、防水性を有するもので、弾性を有する合成樹脂、例えば塩化ビニルや熱可塑性エラストマー（ポリエチレンや合成ゴムなど）からなる防水材である。

　第２の止具４は、スライダー２の移動範囲を形成する一対のエレメント列１２，１２に対して後方において一対のテープ１１，１１を接合する状態で固定されている。また第２の止具４は、エレメント１３よりも上下方向に厚みが厚いもので、スライダー２の後面に衝突するようになっている。また各接合具５は、防水性を有するもので、弾性を有する合成樹脂、例えば塩化ビニルや熱可塑性エラストマー（ポリエチレンや合成ゴムなど）からなる防水材である。また第２の止具４は、エレメント１３よりも厚みが厚いもので、スライダー２の後面に衝突するようになっている。

　第１の止具３は、本発明の第一実施形態の止具であって、一対のテープ１１，１１の長手方向における端部（すなわち前端部）を接合する状態で固定されており、より詳しくはエレメント列１２の前方に隙間をあけて固定されている。第一実施形態の止具３は、図１～図５に示すように、スライドファスナーＦが衝突する止具本体３ａと、止具本体３ａの厚み方向両面に収容されたグリース３ｂとからなる。

　止具本体３ａは、ゴム弾性を有する樹脂、例えば熱可塑性エラストマー（ポリウレタン等）であって、ゴム弾性によって弾性変形可能である。止具本体３ａは、スライダー２の連結柱２３を出入り可能に収容する収容体３１と、スライダー２の上下の翼板２１，２２に密接する為に収容体３１の上下両面から隆起する一対の隆起壁３２，３２と、スライダー２の前面に対向する高さまで収容体３１の上下両面の前側から突出する一対のストッパー３３とを備える。ちなみに図では、一対のうち上側のストッパーのみが示されている。

　収容体３１は、連結柱２３をその外周側から囲む開閉可能な環状であって、その内側には連結柱２３を収容する柱収容孔３１ｈが上下方向に貫通して形成されると共に、柱収容孔３１ｈに連結柱２３を出入りさせる開閉可能な入口部３１ｉを備える。そして収容体３１は止具本体３ａのゴム弾性によって開閉可能となり、入口部３１ｉが開いた状態においては柱収容孔３１ｈに通じる通路３１ｊが形成され、入口部３１ｉが閉じた状態においては左右方向に密接する。より詳しく言えば、収容体３１は、一対のテープ１１，１１の対向する側縁部を互いの厚み方向両面（柱収容孔３１ｈの貫通方向両面）において連結する連結部３１ａと、連結部３１ａから一対のテープ１１，１１の対向する側縁部に沿って延長する一対の脚部３１ｂ，３１ｃとから構成される。そして連結部３１ａと一対の脚部３１ｂ，３１ｃの内側には、柱収容孔３１ｈが形成され、一対の脚部３１ｂ，３１ｃの先部（後部）が入口部３１ｉを構成する。

　各脚部３１ｂ，３１ｃは、断面コ字状であって、対応する側のテープ１１の上下両面、及び柱収容孔３１ｈ側の側面を覆う形でテープ１１に固定されている。また一対の脚部３１ｂ，３１ｃの後端は、一対のエレメント列１２，１２の前端よりも前側に位置しており、それ故、一対の脚部３１ｂ，３１ｃと一対のエレメント列１２，１２とは前後方向に隙間のある状態になっている。

　一対の隆起壁３２，３２は、収容体３１の周方向全周に沿って延長すると共に、収容体３１の上下両面において内外方向の中央部に突出して形成されている。従って収容体３１の上下両面には、各隆起壁３２よりも内側と外側に、上下の翼板２１，２２に対して接触不能な二つの非接触面３１ｓ，３１ｓがそれぞれ形成される。より詳しくは、内外方向に関して各隆起壁３２は、一対の脚部３１ｂ，３１ｃの先部を除いて、内周縁よりも外側で且つ外周縁よりも内側の位置に形成されており、一対の脚部３１ｂ，３１ｃの先部では内周縁と外周縁の全範囲に亘って形成されている。

　各隆起壁３２は、収容体３１の内外方向に離れている複数（図示の例では２つ）の隔壁部３２ａ，３２ｂと、隣り合う隔壁部３２ａ，３２ｂの延長方向の両端部を接続する一対の端壁部３２ｃ，３２ｃとから構成される。
　各隔壁部３２ａ，３２ｂは、収容体３１の上面又は下面から突出すると共に、収容体３１の周方向全周に延長する。また内外方向に隣り合う一対の隔壁部３２ａ，３２ｂは、互いの突出高さを同じ高さに揃えてある。
　各端壁部３２ｃは、収容体３１の上面又は下面から突出している。また各端壁部３２ｃと各脚部３１ｂ、３１ｃは、左右側面のうち通路３１ｊ側の面を上下に連続する鉛直面としている。そして左右の鉛直面は、入口部３１ｉが閉じた状態では、密接することになる。

　また隣り合う隔壁部３２ａ，３２ｂの間には収容体３１側へ向かって凹む陥没部３２ｈが形成され、陥没部３２ｈの延長方向の両端は、端壁部３２ｃによって閉鎖されている。従って二つの隔壁部３２ａ，３２ｂ及び二つの端壁部３２ｃ，３２ｃの内側には陥没部３２ｈが形成され、陥没部３２ｈは隆起壁３２の内外方向の中央部に形成されている。そして陥没部３２ｈにはグリース３ｂが収容されている。グリース３ｂの収容量は、陥没部３２ｈの容量よりも少なくし、より具体的言えば上側の陥没部３２ｈは、上側の隆起壁３２の上面よりも低い位置までしかグリース３ｂを収容しない。なおグリース３ｂは、陥没部３２ｈの延長方向全長に収容することが望ましいが、その延長方向全長の一部に収容しても良い。

　各ストッパー３３は、収容体３１から上下方向へ突出する長さを隆起壁３２のそれよりも長くし、スライダー２の前面に対向するようになっている。また各ストッパー３３は、柱収容孔３１ｈに連結柱２３を収容した状態でスライダー２の前面に衝突又は近接する位置になるように、収容体３１の前端部に形成されている。なお各ストッパー３３の内外方向の幅は、隆起壁３２のそれよりも広くしてある。

　グリース３ｂは、例えばシリコーングリースを用い、その稠度を２８０～３２０とするものである。この稠度は、米国グリース協会（National Lubricating Grease Institute）の稠度番号では１号～２号の範囲に属する。

　上述した本発明の第一実施形態の止具３は、図１、図２に示すように、スライダー２が一対のエレメント列１２，１２を完全に閉じていない場合に、入口部３１ｉが開いている状態となる。

　一方、本発明の第一実施形態の止具３は、図６に示すように、一対のエレメント列１２，１２を完全に閉じた場合には、スライダー２の連結柱２３と収容体３１の内面との間にはその周方向全周に連続する隙間が形成され、ストッパー３３にスライダー２（一対の翼板２１，２２）の前面が衝突している。また本発明の第一実施形態の止具３は、隆起壁３２の一対の端壁部３２ｃ，３２ｃ及び一対の脚部３１ｂ，３１ｃが密接することにより、入口部３１ｉが閉じている。しかも本発明の第一実施形態の止具３は図７、図８に示すように、上下の翼板２１，２２の間に止具本体３ａが挟まれ、上下の翼板２１，２２によって挟まれた上側及び下側の隆起壁３２，３２が、止具本体３ａのゴム弾性によって弾性変形する。より詳しく言えば各隆起壁３２の隣り合う隔壁部３２ａ，３２ｂ及び一対の端壁部３２ｃ，３２ｃがそれぞれ弾性変形し、上下の翼板２１，２２に密接する。さらに詳しく言えば、陥没部３２ｈのない構造の隆起壁を備える止具に比べて、本発明の第一実施形態の止具３は、陥没部３２ｈを備えるため、内外方向に関しては一対の隔壁部３２ａ，３２ｂが弾性変形し易くなり、密閉性を向上することができる。

　また弾性変形によって、隣り合う隔壁部３２ａ，３２ｂの間の陥没部３２ｈはグリース３ｂの容量（収容空間）が小さくなり、グリース３ｂが上下の翼板２１，２２に付着したり、隔壁部３２ａ，３２ｂと上下の翼板２１，２２の間に入り込んだりすることになり、スライダー２を移動させる際の摩擦抵抗を小さくし、耐久性を向上させる。なお本発明の第一実施形態の止具３を含むスライドファスナーＦが例えば防水服に用いられ、水中で使用された場合、一対のエレメント列１２，１２が完全に閉じられて状態で水圧に変化が生じたときに、それに伴って各隆起壁３２が動くことがある。しかし各隆起壁３２は、一対の隔壁部３２ａ，３２ｂによって二重に密閉性を確保していると共に、上下の各翼板２１，２２と一対の隔壁部３２ａ，３２ｂとの間に入り込んでいるグリース３ｂもが、密閉性の向上に寄与する。
　なおグリース３ｂは、一対のエレメント列１２，１２を開く為にスライダー２を移動させると、上下の翼板２１，２２や隔壁部３２ａ，３２ｂの上下面に塗り拡げられる。しかも陥没部３２ｈの内外方向両側において隔壁部３２ａ、３２ｂがそれぞれ弾性変形することから、スライダー２の移動性が向上する。
　ちなみに各陥没部３２ｈの周方向の両端を開口していると、開口部分からグリース３ｂが漏れ出るおそれがあり、グリース３ｂの収容量が減り易い。グリース３ｂがある一定量よりも減ると、一対の翼板２１，２２と各隆起壁３２との間にグリースが入り込まなくなり、スライダーを移動させ難くなる。しかしながら各陥没部３２ｈの延長方向（周方向）の両端は、端壁部３２ｃにより塞がれているので、グリース３ｂを長期間に亘って保有することができる。

　本発明の第二実施形態の止具３は、図９に示すように、陥没部３２ｈが複数の凹部３２ｊにより構成され、その複数の凹部３２ｊが収容体３１に対してその周方向に間隔をあけて配列されている点、及び止具本体３ａの一対の脚部３１ｂ，３１ｃの先端（後端）が、対応する側のエレメント列１２のうち最前のエレメント１３に繋がっている点において、第一実施形態の止具３と相違し、その他の点において一致する。

　より詳しく言えば各凹部３２ｊは、収容体３１を構成する連結部３１ａと一対の脚部３１ｂ，３１ｃに対して、収容体３１の周方向に延長する長穴形状で形成されている。そして各凹部３２ｊにグリース３ｂが収容されている。この場合も隆起壁３２は、陥没部３２ｈに対して内側及び外側で別々に弾性変形可能となり、しかもこの内側及び外側で翼板２１，２２に密接する。

　本発明の第三実施形態の止具３は、図１０に示すように、各隆起壁３２が複数の隔壁部３２ａ，３２ｂにより構成され、隣り合う隔壁部３２ａ，３２ｂの延長方向の両端部が接続されておらず、陥没部３２ｈの両端が閉鎖されることなく一対のエレメント列１２、１２側（後側）に開口している点において第一実施形態の止具３と相違し、その他の点において一致する。つまり第三実施形態の止具３は、第一実施形態の止具３の端壁部３２ｃが無い構成となっている。

　本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば本発明の止具は、前記実施形態では止具本体とグリースとで構成され、止具本体の陥没部にはグリースが収容されていたが、これに限らず、止具本体のみで構成され、陥没部にグリースが収容されていないものであっても良い。

　また前記した第一実施形態では、陥没部は、２つの隔壁を主として構成していたので、例えば上側の陥没部の底面は、テープの上面に一致するものになっていたが、これに限らず、上側の没部の底面は、テープの上面よりも高いものであっても良い。つまり陥没部３２ｈの深さは問わない。

　さらに隆起壁３２の上下の各面に対して形成される陥没部３２ｈの本数は、第一実施形態の止具では１本であったが、これに限らず複数本形成しても良く、この場合、隆起壁３２の上下の各面に対して隔壁部が同心状に３本以上形成されることになる。

　また前記した各実施形態では、収容体３１の上下両面には各隆起壁３２よりも内側と外側に、上下の翼板２１，２２に対して接触不能な二つの非接触面３１ｓ，３１ｓがそれぞれ形成されているものであったが、これに限らず本発明は、収容体３１の上下両面には各隆起壁３２よりも内側のみに、非接触面３１ｓがそれぞれ形成されているものでも良く、この場合、一対の隆起壁３２，３２は、収容体３１の上下両面において内周縁よりも外側から外周縁まで形成されている。同様に本発明は、収容体３１の上下両面には各隆起壁３２よりも外側のみに、非接触面３１ｓがそれぞれ形成されていても良い。あるいは本発明は、各隆起壁３２の内側及び外側に非接触面が存在しないものであっても良く、この場合、一対の隆起壁３２，３２は、収容体３１の上下両面において内周縁から外周縁まで形成されている。

　Ｆ　スライドファスナー
　１　ファスナーストリンガー
　１１　テープ
　１２　エレメント列
　１３　エレメント
　１４　胴部
　１５　首部
　１６　頭部
　１６ａ　係止溝
　１７　肩部
　１８　ヒレ部
　２　スライダー
　２ａ　スライダー胴体
　２ｂ　エレメント通路
　２ｃ　テープ溝
　２１　上側の翼板
　２２　下側の翼板
　２３　連結柱
　２４　フランジ
　２５　引手取付部
　２５ａ　貫通穴
　３　第１の止具
　３ａ　止具本体
　３１　収容体
　３１ａ　連結部
　３１ｂ　脚部
　３１ｃ　脚部
　３１ｈ　柱収容孔
　３１ｉ　入口部
　３１ｊ　通路
　３１ｓ　非接触面
　３２　隆起壁
　３２ａ　隔壁部
　３２ｂ　隔壁部
　３２ｃ　端壁部
　３２ｈ　陥没部
　３２ｊ　凹部
　３３　ストッパー
　３ｂ　グリース
　４　第２の止具
　５　接合具

Claims

　一対のテープ（１１，１１）に固定されている弾性変形可能な止具本体（３ａ）を備え、
　前記止具本体（３ａ）は、スライダー（２）の一対の翼板（２１，２２）を連結する連結柱（２３）を外周側から囲んで収容する環状の収容体（３１）であって、その内側に形成される柱収容孔（３１ｈ）へ前記連結柱（２３）を出入りさせる入口部（３１ｉ）を含む前記収容体（３１）と、
　前記収容体（３１）の周方向全周に延長すると共に前記収容体（３１）のうち前記柱収容孔（３１ｈ）の貫通方向両面から隆起する一対の隆起壁（３２，３２）であって一対の前記翼板（２１，２２）に対して密接する一対の前記隆起壁（３２，３２）とを備え、
　各前記隆起壁（３２）は前記貫通方向に凹んだ陥没部（３２ｈ）を備えていることを特徴とするスライドファスナーの止具。
　前記止具本体（３ａ）は、各前記隆起壁（３２）の陥没部（３２ｈ）にグリース（３ｂ）を収容していることを特徴とする請求項１に記載のスライドファスナーの止具。
　前記収容体（３１）は、一対の前記テープ（１１，１１）の対向する側縁部を前記柱収容孔（３１ｈ）の貫通方向両面において連結する連結部（３１ａ）と、前記連結部（３１ａ）から一対の前記テープ（１１，１１）の対向する側縁部に沿って延長する一対の脚部（３１ｂ，３１ｃ）であって互いの先部を前記入口部（３１ｉ）とする一対の前記脚部（３１ｂ，３１ｃ）とを備え、
　前記陥没部（３２ｈ）は、各前記隆起壁（３２）のうち少なくとも一対の前記脚部（３１ｂ，３１ｃ）に形成されていることを特徴とする請求項１又は２に記載のスライドファスナーの止具。
　前記陥没部（３２ｈ）は、各前記隆起壁（３２）のうち前記連結部（３１ａ）と一対の前記脚部（３１ｂ，３１ｃ）に連続して形成されていることを特徴とする請求項３に記載のスライドファスナーの止具。
　各前記隆起壁（３２）は、前記収容体（３１）のうち前記柱収容孔（３１ｈ）の貫通方向両面において外周縁よりも内側に形成されていることを特徴とする請求項１、２、３又は４記載のスライドファスナーの止具。
　一対の前記脚部（３１ｂ，３１ｃ）は、前記柱収容孔（３１ｈ）の貫通方向両面には各前記隆起壁（３２）よりも外側に、一対の前記翼板（２１，２２）に対する非接触面（３１ｓ、３１ｓ）を備えることを特徴とする請求項３又は４記載のスライドファスナーの止具。
　一対の前記脚部（３１ｂ，３１ｃ）は、前記柱収容孔（３１ｈ）の貫通方向両面には各前記隆起壁（３２）よりも内側に、一対の前記翼板（２１，２２）に対する非接触面（３１ｓ、３１ｓ）を備えることを特徴とする請求項３、４又は６記載のスライドファスナーの止具。