以下、図面を参照しながら、本開示に係る実施形態について詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本開示の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態、または変形例などが含まれる場合、複数の実施形態または変形例における各構成要素を適宜または任意に組み合わせて実施することができる。以下ではすべての図面において実質的に同様の要素には同一の符号を付して説明する場合がある。
図1は、実施形態における電池モジュール20を示す斜視図である。図2は図1の貫通孔分散部54を上方から見た図である。図3は図1のA-A断面図である。電池モジュール20は、車両または建物内の電気機器用の蓄電装置として用いられる。電池モジュール20は、図示しない太陽電池等の発電装置で得られた電力を充電し、必要に応じて取り出して電気機器に供給するために用いられてもよい。
図1から図3、及び後述する図面の一部では、互いに直交する3軸方向として、高さ方向H、長さ方向L、幅方向Wが示されている。高さ方向Hは、電池モジュール20が水平面上に設置された場合の上下方向または鉛直方向である。長さ方向L及び幅方向Wは水平面で互いに直交する方向である。ここでは電池モジュール20の寸法が長い方を長さ方向Lとし、短い方を幅方向Wとした。
電池モジュール20は直方体状に形成される。電池モジュール20の長さ方向Lの両端部には端子部22が突出形成される。2つの端子部22のうち、一方側の端子部22が正極端子であり、他方側の端子部22が負極端子である。端子部22は、電池モジュール20に含まれる最少単位の電池セル2の電極に電気的に接続されて、電池セル2に対し充放電を行う場合の入出力端子となる。2つの端子部22は、電池モジュール20の長さ方向Lの一方側端部に設けられた1つの端子ユニットに集中的に設けられてもよい。
電池モジュール20は、千鳥配置された複数の電池セル2と、複数の電池セル2を収容するモジュールケース30とを含む。電池モジュール20は、複数の電池セル2を並列接続して所定の電池容量が得られるように構成される。
図3に示すように、電池モジュール20は複数の電池セル2について各正極側を一方側に揃え、各負極側を他方側に揃えて所定の配置関係で整列配置される。モジュールケース30は、電池セルケース32、上側ホルダ34、下側ホルダ36、カバー部材38、及びダクト部材40を含んで構成される。電池セルケース32は複数の電池セル2を所定の配置関係で収納して保持し、正極側に正極側集電部4が配置され、負極側に負極側集電部5が配置される。電池セルケース32の正極側、負極側にそれぞれ正極側集電部4及び負極側集電部5が配置される。電池セルケース32は、2つのホルダである上側ホルダ34及び下側ホルダ36の間に配置され、その両側に正極側集電部4及び負極側集電部5を配置した状態で適当な締結部材で結合されている。例えば上側ホルダ34及び下側ホルダ36は長さ方向Lの両端部で結合される。下側ホルダ36は各電池セル2の下端部を上側に支持する。
電池セル2は、電池モジュール20を構成する電池の最小単位となる充放電可能な二次電池である。二次電池としては、リチウムイオン電池が用いられる。これ以外に、ニッケル水素電池、アルカリ電池等を用いてもよい。電池モジュール20に含まれる複数の電池セル2は、隣接する電池セル2の間の隙間を最小にする千鳥型の配置関係とされ、幅方向Wに5列の電池列が配置され、それぞれの電池列は、長さ方向Lに沿って、例えば7個、6個、7個、6個、7個のように交互に数が異なる電池セル2を含む。複数の電池セル2は、千鳥配置される構成に限定せず、幅方向W及び長さ方向Lのそれぞれに沿って複数並んで配置されてもよい。
電池セル2は、円筒形の外形を有する外装缶に渦巻状の電極体が収納され、封口板で封止されることにより形成される。円筒形の両端部のうち一方端が正極電極11、他方端が負極電極12として用いられる。実施形態では、図3に示す電池セル2の上端に正極電極11が設けられ、下端に負極電極12が設けられる。電池セル2は円筒形の外形を有する電池に限らず、他の外形を有する電池、例えば角形電池であってもよい。
電池セル2は、正極電極11側に図示しない安全弁を有する。安全弁は、電池セル2の内部で行われる電気化学反応によって発生するガスの圧力が予め定めた閾値圧力を超えたときに、電池内部からセル外部に排ガスとして放出する機能を有する。安全弁は、ガス圧が閾値圧力を超えた時に破断される金属シート、または閾値圧力を超えたときに弁座から離れる弁体を含む構成としてもよい。
電池セルケース32は、電池セル2の高さと同じ高さを有し、高さ方向Hの両端側にそれぞれ電池セル2と同数個が開口する貫通孔形状の電池収納部が設けられる枠体で、それぞれの電池セル2は、電池収納部の1つに収納配置される。
電池収納部の配置は、電池セル2の配置関係に対応して、千鳥型の配置関係とされる。かかる電池セルケース32としては、例えば樹脂または金属を所定の形状としたものが用いられてもよい。
正極側集電部4は、電池セルケース32の一方側に配置されて、整列配置された電池セル2の正極側をそれぞれ電気的に接続する接続部材である。正極側集電部4は、図示しない正極側絶縁板及び正極板と、正極リード板6とで構成される。
正極側絶縁板は、電池セルケース32と正極板、正極リード板6との間に配置され、これらの間を電気的に絶縁する板材である。正極側絶縁板には、電池セル2の正極電極11を突き出させる開口であって、電池セル2と同数個の円形等の開口が設けられる。かかる正極側絶縁板としては、所定の耐熱性と電気絶縁性とを有する樹脂成型品または樹脂シートを所定の形状に加工したものが用いられる。
正極板は、電池セル2の正極電極11にそれぞれ個別に接触する位置関係で配置され、電池セル2と同数個の電極接触部を有する薄板である。かかる正極板としては、電気的導電性を有する金属薄板について、エッチングまたはプレス加工等によって、周囲に略C字状の切欠部が形成された所定形状の電極接触部を形成したものを用いることができる。
正極リード板6は、正極板と電気的に接続され、電池セル2と同数個の電極接触部を相互接続して少なくとも1つの正極側出力端子とする電極板である。かかる正極リード板6としては、電気的導電性を有し、適当な厚さと強度を有する金属薄板が用いられてもよい。正極リード板6としては、金属薄板についてエッチングまたはプレス加工等で、円形等の開口が形成された所定形状の電極接触部を形成したものを用いることができる。正極リード板6は、一方側の端子部22に接続される。
負極側集電部5は、電池セルケース32の他方側の開口に配置され、整列配置された電池セル2の負極側をそれぞれ電気的に接続する接続部材である。負極側集電部5は、図示しない負極側絶縁板及び負極板と、負極リード板8とで構成される。
負極側絶縁板は、電池セルケース32と負極板、負極リード板8との間に配置され、これらの間を電気的に絶縁する板材である。負極側絶縁板には、電池セル2の負極電極12を露出させる電池セル2と同数個の円形等の開口が設けられる。かかる負極側絶縁板としては、所定の耐熱性と電気絶縁性とを有する樹脂成型品または樹脂シートを所定の形状に加工したものが用いられる。
負極板は、電池セル2の負極電極にそれぞれ個別に接触する位置関係で配置され、電池セル2と同数個の電極接触部を有する電極部材である。かかる負極板としては、電気的導電性を有する金属薄板について、エッチングまたはプレス加工等によって、略C字状の切欠部を形成することにより区画された電極接触部を形成したものが用いられてもよい。また、負極板の電極接触部には、電池セル2に過電流が流れることで予め定めた閾値温度を超えるときに溶断する電流遮断素子を設けてもよい。
負極リード板8は、負極板と電気的に接続され、電池セル2と同数個の電極接触部のそれぞれを相互接続して少なくとも1つの負極側出力端子とする電極板である。かかる負極リード板8としては、電気的導電性を有し、適当な厚さと強度とを有する金属薄板に、エッチングまたはプレス加工等で、負極板の電極接触部に対応して円形等の開口が形成されたものが用いられてもよい。負極リード板8は、他方側の端子部22に接続される。
各ホルダ34,36は、カバー部材38の内側に配置される。カバー部材38は、例えば上下に分かれる2つのカバー要素を長さ方向Lの両端で締結部材により結合することにより形成される。この状態で、正極側集電部4は上側ホルダ34と上側カバー要素との間に配置され、負極側集電部5は下側ホルダ36と下側カバー要素との間に配置される。これによって、電池セルケース32、正極側集電部4、負極側集電部5、ホルダ34,36、カバー部材38が、全体として一体化される。この状態で、電池セルケース32の電池収容部と各集電部4,5の各電極接触部との位置関係が所定関係に規制される。カバー部材38、ホルダ34,36はそれぞれ絶縁材料、例えば樹脂で構成される。
後述する別例を説明するための図8を参照して、下側ホルダ36は、各電池セル2を上側に保持する複数の円筒状の保持部42を含む。各保持部42には、各電池セル2の下端部が例えば圧入で嵌合支持される。下側ホルダ36の各保持部42の内側に下側開口44が形成される。負極板に設けられる各電極接触部は、下側開口44を通じて電池セル2の負極電極12に接触する。
なお、ホルダは別々に構成されていなくてもよく、例えば、電池セルケース32の側面を覆う側部と、正極側を覆う上部と、負極側を覆う下部とが一体に構成されてもよい。
図1に戻って、電池モジュール20の上部には、内部にガス拡散室46を有し、下側が開口する断面U字形のダクト部材40が設けられる。ダクト部材40は、上端の板部48と、板部48の外周部の下側に全周にわたって連結される周壁部50とを含む。板部48は、電池モジュール20の外面を形成する上側壁部である。
ダクト部材40は、上側ホルダ34の上側に被せるように設けられ、カバー部材38の上端部に設けられた第1枠部52の開口周縁部の上側に固定される。電池モジュール20において、ダクト部材40、カバー部材38、上側ホルダ34、下側ホルダ36、及び電池セルケース32の外部に露出する側面により、電池モジュール20の外面が形成される。電池セルケース32は、電池モジュール20の幅方向Wの両端で、上側ホルダ34及び下側ホルダ36により形成される第2枠部49の内側から外部に露出される。
図3に示すように、ガス拡散室46は、電池セル2の正極電極11に開口部または切欠部と安全弁とを介して臨んでいる。ダクト部材40は、板部48に形成された貫通孔分散部54を含んでいる。
貫通孔分散部54は、図1、図2に二点鎖線αで囲んだ矩形部分に長さ方向L及び幅方向Wのそれぞれに沿って整列するように配置された複数の貫通孔である円形の微細孔56を含んでいる。各微細孔56は、板部48を上下に貫通する。ガス拡散室46は、板部48の電池セル2側に設けられ、微細孔56を通じて外部空間と連通する。
複数の微細孔56は、板部の長さ方向L及び幅方向Wのそれぞれに沿って均等に配置されるのが好ましい。例えば、長さ方向Lに沿って隣り合う微細孔56の間隔をL1とした場合に、幅方向Wに沿って隣り合う微細孔56の間隔もL1とする。複数の微細孔56は均等配置される構成に限定せず、複数の微細孔56の間隔は長さ方向L及び幅方向Wのそれぞれで不均等としてもよい。
複数の微細孔56は、複数の電池セル2の少なくとも1つの電池セル2から噴出されたガスを複数の微細孔56に分散して電池モジュール20の外部に排気する。これによって、電池セル2の安全弁から噴出したガスは、ガス拡散室46から微細孔56を介して外部に排出可能である。ダクト部材40は、熱伝導性のよい材料であればよい。例えばアルミニウムを主材料とする金属板により形成される。
なお、上記では電池モジュール20として、各電池セル2が並列接続される場合を説明したが、それぞれで並列接続された複数組の電池セルを直列接続することにより複数の電池セルが形成されてもよい。
また、電池セル2の1つ当たりの電圧を4.2Vとする場合に、複数の微細孔56の外部空間と対向する各開口面積の総和は、160mm2以上とするのが好ましい。各開口面積の総和をこのように規制することにより、ガス拡散室46の圧力上昇を顕著に抑制できる。さらに、各微細孔56の直径dを2mm以下、より好ましくは1.2mm以下であって、微細孔56の間隔L1を5mm以上とするのが好ましい。微細孔56の直径d及び間隔L1をこのように規制することにより、電池セル2から噴出され微細孔56を介して排出されるガスの温度抑制の効果が顕著になる。
上記の電池モジュール20によれば、少なくとも1つの電池セル2の正極側から図3の矢印β方向に噴出された高温のガスは、ガス拡散室46で拡散されて、複数の微細孔56に分散されて電池モジュール20の外部に排出される。このため、各微細孔56から出るそれぞれ少量のガスに多くの空気が接触しやすいので、ガスを効率よく冷却できる。また、微細孔56をガスが通過することで生じる断熱膨張効果によってもガスは冷却される。このため、複数の電池セル2を収容するモジュールケース30が備えられる構成において、電池セル2からモジュールケース30の外側に排出されるガスの温度を低下できる。したがって、電池モジュール20の外部に排出されたガスが電池モジュール20を搭載する車両または電気機器に不都合を与えることを防止できる。
さらに、微細孔56は、モジュールケース30の外面を形成する壁部である板部48に形成されるので、電池モジュール20において、電池セル2から噴出されるガスの温度を低下させるために、モジュールケース30とは別部材である長いダクトを結合する必要がない。このため、電池モジュール20に排出ガスの冷却手段が設けられる構造の大型化を防止できる。なお、微細孔56はそれぞれ円形としたが、これに限定せず、例えば楕円形、または矩形としてもよい。
図4は、実施形態における電池モジュール20の別例の第1例を示している図3に対応する図である。本例の電池モジュール20は、ダクト部材40の内側のガス拡散室46に設けられたガス遮断部材58を含んでいる。ガス遮断部材58は、図5に示すように、平板状のガス遮断板60の下側に複数本、例えば4本の柱状の脚部62が連結されてテーブル状に形成される。ガス遮断部材58は、金属等の耐熱性を有する材料により形成される。
図4に戻って、各脚部62の下端は、電池セルケース32またはカバー部材38の上端部に固定される。この状態で、ガス遮断板60は、複数の電池セル2の正極電極11と複数の微細孔56との間に配置され、各電池セル2の正極電極11の上方に安全弁を介してガス遮断板60が対向する。ガス拡散室46は、ガス遮断板60によって電池セル側空間S1と微細孔側空間S2とに仕切られ、電池セル側空間S1と微細孔側空間S2とはガス遮断板60の外周付近で、隣り合う脚部62の間を通じて連通する。
上記構成によれば、電池セル2の正極側から図4の矢印β方向に噴出された高温のガスは、ガス遮断板60に衝突した後、ガス遮断板60と正極リード板6との隙間である電池セル側空間S1から、矢印γ方向にガス遮断板60の外周付近を流れ、微細孔側空間S2を通って、微細孔56から電池モジュール20外に排出される。このため、電池セル2から電池モジュール20の外部に排出されるまでのガス排出経路が長くなるので、ガスの温度をより効率よく低下できる。その他の構成及び作用は、図1から図3の構成と同様である。
なお、ガス遮断部材58の脚部62の数は4本に限定するものではなく、6本、8本等適宜の数とすることができる。また、図6に示しているガス遮断部材58の別例のように、ガス遮断板60の長さ方向Lまたは幅方向Wの両端部下側に第2板部64を直角に結合し、第2板部64の間を通じてガスが電池セル側空間S1から微細孔側空間S2に送られるようにしてもよい。
図7は、実施形態における電池モジュール20の別例の第2例を示している図3に対応する図である。本例の電池モジュール20は、電池セル2の正極側ではなく負極側から、電池セル2から噴出されたガスを電池モジュール20の外部に排出可能とする。
具体的には、モジュールケース30の上部にダクト部材を設けず、モジュールケース30は、電池モジュール20の上端を塞ぐカバー部材38、電池セルケース32、上側ホルダ34、下側ホルダ36、及び下側ダクト部材66を含んで構成される。カバー部材38は、下端部において電池モジュール20の外周部付近に枠部を含んでいる。下側ダクト部材66は、枠部の開口端の下側を塞ぐように結合される。下側ダクト部材66は、下側壁部である下側板部70と、下側板部70の外周部に全周にわたって結合される下側周壁部72とを含む。このようなモジュールケース30は、図1から図3の構成でモジュールケース30の上下を逆にした構成と同様である。下側ホルダ36は、各保持部42の内側において、各電池セル2の負極電極12と対向する部分に電池セル2と同数個の円形の下側開口44を有する。
図8は、図7のB部拡大図において、電池セル2を形成する外装缶13を断面にして示している図である。図9は、図8の下方から見た図である。図8、図9に示すように、外装缶13の下端面には、C字形の刻印部14が形成されることで各電池セル2の下部にC字形の薄肉部15が形成される。
下側ホルダ36の下側開口44の上端周縁部は、電池セル2の下端面において刻印部14より外径側であって、電池セル2の下端外周縁部の角部P(断面円弧形の曲面部Rと下面との境界)と、その内径側部分とに当接する。図9、及び後述の図11、図12では斜格子部によって、電池セル2を下方から見た場合に、電池セル2の下端面と下側ホルダ36とが上下方向に重畳する部分を示している。
図7に示すように、下側ダクト部材66の下側板部70には、下側貫通孔分散部74が形成される。下側貫通孔分散部74は、図1の構成でダクト部材40に形成された貫通孔分散部54と同様に、複数の貫通孔である微細孔75を含んでいる。各微細孔75は、下側板部70に上下に貫通するように形成される。下側板部70と負極リード板8との間には下側ガス拡散室76が形成される。下側ガス拡散室76は、複数の電池セル2の下端と対向する。下側ダクト部材66の下面で幅方向Wの両端部には、長さ方向Lに長い下側脚部78が結合される。電池モジュール20は、固定部材80の水平面上に下側脚部78を介して設置される。
上記の構成によれば、電池セル2の内部の圧力が上昇した場合に、電池セル2の下端部の薄肉部15が破断されることによって薄肉部15の内側部分が下方に押し下げられ、電池セル2の負極側からガスが噴出され、下側ホルダ36の下側開口44を通じて下側ガス拡散室76にガスが拡散する。下側ガス拡散室76で拡散したガスは複数の微細孔75で分散されて下方に排出される。電池モジュール20の下方に排出されたガスは、固定部材80の上面と下側ダクト部材66の下面との間から、長さ方向Lの両端部で2つの下側脚部78の間を通じて外部に排出される。この構成でも図1から図3の構成と同様に、電池セル2からモジュールケース30の外側に排出されるガスの温度を低下できる。その他の構成及び作用は、図1から図3の構成と同様である。
なお、下側脚部78は、下側ダクト部材66の下面に結合された複数本、例えば4本の柱状の下側脚部としてもよい。下側ダクト部材66の下面に下側脚部を結合するのではなく、固定部材80にガスを逃がすための孔部を形成してもよい。また、図7の構成において、図4から図6の構成と同様に下側ガス拡散室76にガス遮断部材58を設けてもよい。なお、下側ガス拡散室76にガス遮断部材58を設ける場合、脚部62または第2板部64に加えて、高さ方向Hの負極側集電部5側に向かって、ガス遮断部材58の外周を囲むようにガス遮断壁部を設けてもよい(図示せず)。ガス遮断壁部の高さ方向Hの長さは、脚部62または第2板部64の高さ方向Hの長さよりも低くなるように形成される。そのため、電池セル側空間S1と微細孔側空間S2とは、隣り合う脚部62もしくは隣り合う第2板部64及びガス遮断壁部と負極リード板8とで形成される隙間または通路を通じて連通する。ガス遮断壁部を設けることによって、電池セル2から電解液が漏れた際にガス遮断部材58が受け皿となり、電池モジュール20の外に電解液が漏れることを防止することができる。
図10は、実施形態における電池モジュール20の別例の第3例を示している図3に対応する図である。図11(a)は図10の構成において、1つの電池セル2と下側ホルダ36とを拡大して示している図であり、図11(b)は図11(a)の下方から見た図である。
本例の構成では、下側ホルダ36に設けられた下側開口44の上端周縁部は、電池セル2の下端面において、電池セル2の角部Pでのみ電池セル2の下端外周縁部に当接する。この場合、図9の場合と比べて、電池セル2の下端面と下側ホルダ36とが上下方向に重畳する部分(図11(b)の斜格子部)の面積が小さくなるので、電池セル2の刻印部14及び薄肉部の直径を大きくできる。このため、電池セル2の負極側からのガスの排出性を高くできる。その他の構成及び作用は、図7から図9の構成と同様である。
図12は、下側ホルダ36の別例を示しており、図12(a)は図11(a)に対応する図であり、図12(b)は図12(a)の下方から見た図である。本例の構成では、下側ホルダ36の下側開口44の内周面において周方向複数個所、例えば4個所から、下側開口44の径方向内側に突出する突部82が形成される。各突部82は、電池セル2の角部Pでのみ電池セル2の下端外周縁部に当接する。
上記の構成によれば、図10、図11の構成の場合に比べて電池セル2の負極側からのガスの排出性を高くできる。その他の構成及び作用は、図10、図11の構成と同様である。
また、図7から図12の各例において、電池セル2の下端部を上下方向に見た場合の投影面積に対して、下側ホルダ36の下側開口44の周縁部と電池セル2の下端部とが上下方向に重畳する部分の面積である図9、図11(b)、図12(b)それぞれの斜格子部の面積の比率を10~35%の範囲に規制することが好ましい。電池セル2の下端部を上下方向に見た場合の投影面積は、電池セル2が円筒形である場合に電池セル2の円筒状外周面の外周円における内側面積である。
各面積の比率がこの範囲に規制されることによって、電池セル2の負極側からのガスの排出性がより顕著に向上し、しかも下側ホルダ36によって電池セル2の保持強度を高くできる。
図13は、実施形態における電池モジュール20の別例の第4例を示している斜視図である。本例の電池モジュール20では、ダクト部材40の板部48に貫通孔分散部84が設けられる。貫通孔分散部84は、板部48の複数個所に上下方向に貫通するように形成された貫通孔である複数の直線状のスリット86を含む。各スリット86は、板部48の長さ方向L及び幅方向Wのそれぞれに対し傾斜して互いに平行に配置される。各スリット86は板部48に等間隔で配置されることが好ましい。複数のスリット86は、板部48の長さ方向Lまたは幅方向Wに沿って間隔をあけて互いに平行に配置されてもよい。
また、電池セル2の1つ当たりの電圧を4.2Vとする場合に、複数のスリット86の外部空間と対向する各開口面積の総和は、160mm2以上とするのが好ましい。各開口面積の総和をこのように規制することにより、ガス拡散室46の圧力上昇を顕著に抑制できる。さらに、各スリット86の幅Bを1.0mm以下であって、スリット86の間隔L2を5mm以上とするのが好ましい。幅B及び間隔L2をこのように規制することにより、電池セル2から噴出されスリット86を介して排出されるガスの温度抑制の効果が顕著になる。
上記の構成によっても、図1から図3の構成と同様に、電池セル2からモジュールケース30の外側に排出されるガスの温度を低下できる。その他の構成及び作用は、図1から図3の構成と同様である。
図14は、実施形態における電池モジュール20の別例の第5例を示している図3に対応する図である。本例の電池モジュール20は、図1から図3の構成において、ダクト部材88が断面L字形に形成される。具体的には、ダクト部材88は、上端部に設けられる上側要素90と、上側要素90の幅方向Wの一方側端部(図14の右端部)に連結され下側に延びる下側要素92とを含んで構成される。上側要素90は、上側板部94と、上側板部94の外周部のうち、下側要素92との連結部を除いて周囲に下方に設けられた上側周壁部96とを含む。下側要素92は、上側板部94に対し直角に連結された下側板部98と、下側板部98の外周部のうち、上側要素90との連結部を除いて周囲に電池セル2側に設けられた下側周壁部100とを含む。上側要素90及び下側要素92の内部にはガス拡散室102が設けられる。
上側要素90は、上側ホルダ34の上側に被せるように設けられ、カバー部材38において、枠状となる上端開口周縁部の上側に固定される。下側要素92は、電池モジュール20の幅方向Wの一方側端部の外側に被せるように設けられ、上側ホルダ34及び下側ホルダ36に固定され、下側に延伸する。下側板部98は、電池モジュール20の幅方向W一方側端部の外面を形成する横側壁部である。下側要素92は、ダクト部材88を除いた状態で電池モジュール20の幅方向Wの一方側端面のほぼすべての部分を覆うように取り付けられる。
上側板部94には貫通孔分散部が形成されず、その代わりに、下側板部98に複数の貫通孔である微細孔56を含む第2下側貫通孔分散部54aが形成される。第2下側貫通孔分散部54aは、図1から図3の構成で板部48に設けられる貫通孔分散部54と同様である。
上記の構成によれば、少なくとも1つの電池セル2の正極側から矢印β方向に噴出された高温のガスは、ガス拡散室102を上側要素部分から下側要素部分に拡散されながら流れる。このガスは、複数の微細孔56に分散されて電池モジュール20の外部に排出される。上記の構成によっても、電池セル2からモジュールケース30の外側に排出されるガスの温度を低下できる。その他の構成及び作用は、図1から図3の構成と同様である。本例の構成において、第2下側貫通孔分散部54aは複数のスリットにより形成されてもよい。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。例えば、電池モジュールは、電池セル2の出力または入力を制御する等の機能を有する回路基板を含む構成としてもよい。また、電池モジュールを構成するケースは、上記の各例の構成に限定するものではなく、例えば上下方向の一端が開口する箱状のケース本体の上部または下部に、複数の貫通孔を有するダクト部材が結合されることによりケースが形成されてもよい。
また、上記の各例では各電池セル2の正極を上側に、負極を下側に揃えて配置する場合を説明したが、各電池セル2の正極を下側に、負極を上側に揃えてケース内に配置してもよい。また、上記では、電池モジュールに各電池セル2の正極側または負極側からガスを排出する機能を持たせているが、正極及び負極のそれぞれの側から複数の貫通孔を介してガスが排出可能とされてもよい。