WO2014045393A1

WO2014045393A1 - シリンジ用ガスケット

Info

Publication number: WO2014045393A1
Application number: PCT/JP2012/074193
Authority: WO
Inventors: 学有延; 正臣今井; 滋晃冨家
Original assignee: テルモ株式会社
Priority date: 2012-09-21
Filing date: 2012-09-21
Publication date: 2014-03-27

Abstract

　シリンジ用ガスケットは、押し子に対して空転不能に装着され、シリンジの外筒の内周面に付着された潤滑剤に接触する潤滑剤係合部を有し、シリンジの外筒に対して外筒の中心軸の回りに押し子を回転させることで、潤滑剤係合部が押し子と共に周方向に回転し、外筒の内周面に付着された潤滑剤を引き伸ばして、潤滑剤により外筒の内周面に固定された状態を解除する。

Description

シリンジ用ガスケット

　この発明は、シリンジ用ガスケットに係り、特に、押し子に装着されてシリンジの外筒内を摺動することにより薬剤の注入を行うガスケットに関する。

　一般に、薬剤を体内に投与するために使用されるシリンジは、薬剤が収容される筒状体の前端部に注射針を配置し、筒状体の後端部から筒状体の内部に挿入された押し子を前方へ押し込むことで、注射針から薬剤を注出するように構成されている。押し子の前端部には、ガスケットが装着され、押し子の押し込み操作に伴って、ガスケットの外周面が筒状体の内周面に対して摺動し、これにより圧力が加えられた筒状体内の薬剤が注射針を通して押し出される。

　従来、ガスケットとして、筒状体の内周面との間に良好なシール性が得られることから、ゴム、エラストマー等の弾性体から形成されたものが多く使用されていたが、これらの弾性体は、筒状体の内周面に対する摺動抵抗が大きいため、筒状体の内周面にシリコーンオイル等の潤滑剤を塗布することにより、摺動抵抗を低減させていた。これにより、押し子を円滑に移動させることが可能となる。

　例えば、特許文献１には、筒状体の内周面に対する摺動抵抗を低減させる摺動フィルムにより外周面を被覆したガスケットが開示されている。
　このようなガスケットを使用することによっても、摺動抵抗を低減させて、押し子の移動を円滑にすることができる。

特開２００８－１５４６４４号公報

　しかしながら、予め薬剤が充填された、いわゆるプレフィルドシリンジ等においては、薬剤を充填する際に筒状体の内周面とガスケットとの間に潤滑剤が溜まって潤滑剤だまが形成されたり、シリンジの保管中に潤滑剤が筒状体の内周面に固着することがある。このような潤滑剤だまの形成あるいは潤滑剤の固着が生じると、筒状体の内周面にガスケットが固定されてしまい、押し子を初めて移動させるときに、大きな初期摺動抵抗が発生するため、シリンジの操作性が低下するという問題があった。

　また、特許文献１に開示されたような摺動フィルムで被覆されたガスケットを使用しても、初期摺動抵抗は依然として十分に低減されているとは言えず、シリンジの操作性低下を免れることはできなかった。

　この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、潤滑剤だまの形成あるいは潤滑剤の固着が生じても、押し子を円滑に移動させることができるシリンジ用ガスケットを提供することを目的とする。

　この発明に係るシリンジ用ガスケットは、シリンジの外筒内に挿入される押し子の前端部に装着されたシリンジ用ガスケットであって、押し子に対して空転不能に装着され、外筒の内周面に付着された潤滑剤に接触する潤滑剤係合部を有し、外筒に対して外筒の中心軸の回りに押し子を回転させることで、潤滑剤係合部が押し子と共に周方向に回転し、外筒の内周面に付着された潤滑剤を引き伸ばして、潤滑剤により外筒の内周面に固定された状態を解除するものである。

　潤滑剤係合部は、外筒の中心軸に垂直な面に対して傾斜する少なくとも１つの傾斜部を有することが好ましい。
　シリンジ用ガスケットが、外筒の内周面に対向する外周面を有し、潤滑剤係合部は、この外周面に近接したリング状の１つの傾斜部からなる、あるいは、外周面に近接し且つ周方向に沿って配列形成された複数の傾斜部を有するように構成することができる。

　この発明によれば、外筒に対して外筒の中心軸の回りに押し子を回転させることで、潤滑剤係合部が押し子と共に周方向に回転し、外筒の内周面に付着された潤滑剤を引き伸ばして、潤滑剤により外筒の内周面に固定された状態を解除するので、潤滑剤だまの形成あるいは潤滑剤の固着が生じても、押し子を円滑に移動させることが可能となる。

この発明の実施の形態１に係るシリンジ用ガスケットを斜め下方から見た斜視図である。実施の形態１に係るシリンジ用ガスケットを示す側面図である。実施の形態１に係るシリンジ用ガスケットをを斜め上方から見た斜視図である。実施の形態１に係るシリンジ用ガスケットを示す平面図である。実施の形態１に係るシリンジ用ガスケットを示す断面図である。実施の形態１のシリンジ用ガスケットが用いられたシリンジの構成を示す断面図である。シリンジの外筒を示す側面図である。シリンジの外筒を示す断面図である。シリンジの押し子を示す斜視図である。シリンジの押し子を示す断面図である。実施の形態２に係るシリンジ用ガスケットを示す斜視図である。実施の形態２に係るシリンジ用ガスケットを示す側面図である。実施の形態２に係るシリンジ用ガスケットを示す平面図である。実施の形態２に係るシリンジ用ガスケットを示す断面図である。実施の形態２の変形例に係るシリンジ用ガスケットを示す部分側面図である。

　以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態１
　図１に、実施の形態１に係るシリンジ用ガスケット１を示す。シリンジ用ガスケット１は、ゴム、エラストマー等の弾性体から形成され、厚みのある円盤形状を有している。シリンジ用ガスケット１の底部には、軸方向下方に突出する円錐面１１が形成されている。また、シリンジ用ガスケット１の外側部に、軸方向に間隔を隔てて２つの円筒状の外周面１２が形成されている。これらの外周面１２は、シリンジ用ガスケット１がシリンジの外筒内に挿入されたときに、外筒の内周面に対して摺動する摺動面となるものである。

　さらに、それぞれの外周面１２の下側に近接して周方向に沿ったリング状の傾斜部１３が形成されている。これらの傾斜部１３は、図２に示されるように、シリンジ用ガスケット１の中心軸Ｃに垂直な面Ｐに対して傾斜角度Ａだけ傾斜している。すなわち、傾斜部１３上の各点は。周方向の位置に応じて互いに中心軸Ｃ方向に異なる位置を占めている。傾斜部１３は、シリンジ用ガスケット１がシリンジの外筒内に挿入されて外筒の中心軸の回りに回転したときに、外筒の内周面に付着された潤滑剤に接触して潤滑剤を引き伸ばすための潤滑剤係合部を形成している。

　図３に示されるように、シリンジ用ガスケット１の円形の上端面１４の中央部に凹状の押し子装着部１５が形成されている。押し子装着部１５は、図４および５に示されるように、上端面１４に開口する平面形状が円形の凹部１６と、凹部１６の下部に凹部１５に連通して形成された、凹部１６よりも径の大きな円板状の空間部１７と、この空間部１７の底部に形成された十字形の溝部１８を有している。

　図６に、シリンジ用ガスケット１が用いられたシリンジの構成を示す。シリンジは、外筒２と、外筒２の内部に摺動可能に挿入される押し子３を備えており、押し子３の前端部にシリンジ用ガスケット１が装着されている。
　図７に示されるように、外筒２の前端部には、他の部分よりも細い形状に縮径された筒先部２１が形成され、この筒先部２１に図示しない注射針が取り付けられる。一方、外筒２の後端部には、押し子３を押し込む際に指をかけるための外筒フランジ２２が形成されている。
　外筒２の内部には、図８に示されるように、薬剤を収容するための収容空間２３が形成され、収容空間２３の前端部に、シリンジ用ガスケット１の円錐面１１に対応する円錐面２４が形成されている。また、収容空間２３の内面には、シリコーンオイル等の潤滑剤が塗布されている。

　図９および１０に示されるように、押し子３は、十字形の断面形状を有するロッド部３１を有し、ロッド部３１の前端部に、シリンジ用ガスケット１を装着するためのガスケット装着部３２が形成され、ロッド部３１の後端部に、押し子３を操作するための押し子フランジ３３が形成されている。
　ガスケット装着部３２は、ロッド部３１の前端に連結されたネック部３４と、ネック部３４の前部に連結された円板部３５と、円板部３５の前面中央部に突出形成された十字形の突出部３６から構成されている。これらネック部３４、円板部３５および突出部３６は、それぞれシリンジ用ガスケット１の押し子装着部１５の凹部１６、空間部１７および溝部１８に対応し、特に、円板部３５および突出部３６は、それぞれシリンジ用ガスケット１の空間部１７および溝部１８とほぼ同等の大きさを有している。

　シリンジ用ガスケット１の押し子装着部１５に押し子３のガスケット装着部３２を押し込むことにより、弾性体からなるシリンジ用ガスケット１が弾性変形して、押し子３のネック部３４、円板部３５および突出部３６が、それぞれシリンジ用ガスケット１の凹部１６、空間部１７および溝部１８に嵌め込まれる。ここで、共に十字形に形成された押し子３の突出部３６とシリンジ用ガスケット１の溝部１８が互いに嵌合されるので、シリンジ用ガスケット１は、円錐面１１を前方へ向けて、押し子３に対して空転することなく押し子３と共に進退するように装着されることとなる。

　次に、実施の形態１に係るシリンジ用ガスケット１を用いたシリンジの作用について説明する。
　予め、外筒２の筒先部２１に図示しない注射針が取り付けられると共に収容空間２３に薬剤が収容され、さらに、シリンジ用ガスケット１が装着された押し子３の前端部が外筒２内に挿入されているものとする。
　ここで、患者の皮膚に注射針を穿刺し、外筒２に対して押し子３を押し込めば、薬剤が注射針を介して注入されることとなるが、薬剤の注入に先立ち、まず、外筒２に対して外筒２の中心軸の回りに押し子３を回転させる。これにより、押し子３の前端部に装着されているシリンジ用ガスケット１が押し子３と共に外筒２に対して回転する。シリンジ用ガスケット１には、摺動面となる外周面１２に近接してリング状の傾斜部１３が形成されているため、この傾斜部１３が中心軸の回りに回転することで、外筒２の内周面に付着していた潤滑剤がシリンジ用ガスケット１の傾斜部１３から応力を受けて引き伸ばされる。

　その結果、外筒２の内周面とシリンジ用ガスケット１との間に形成される潤滑剤だま、あるいは、外筒２の内周面に固着する潤滑剤に起因して、シリンジ用ガスケット１が外筒２の内周面に対して固定された状態にあったとしても、潤滑剤だまが潰されたり、固着していた潤滑剤が引き伸ばされ、シリンジ用ガスケット１の固定状態が解除される。このため、外筒２に対して押し子３を進退させる際の初期摺動抵抗が低減される。
　その後、押し子３を押し込んで、シリンジ用ガスケット１を外筒２の内周面に対して摺動させることにより、外筒２の収容空間２３に収容されていた薬剤が注射針を介して患者の薬剤投与部位に注入される。シリンジ用ガスケット１の円錐面１１が外筒２の円錐面２４に接触するまで押し子３が押し込まれることで、薬剤は外筒２の収容空間２３内に残留することなく、注射針から注出される。

　このとき、外筒２に対する押し子３およびシリンジ用ガスケット１の回転により、外筒２の内周面に対するシリンジ用ガスケット１の固定状態が既に解除され、初期摺動抵抗が低減されているため、押し子３を円滑に前進させることができる。すなわち、シリンジの操作性が向上し、薬剤投与初期の段階から薬剤の投与速度を細かく制御することが可能となり、薬剤投与初期に感じる痛みを低減することができる。
　なお、シリンジ用ガスケット１の傾斜部１３の傾斜角度Ａは、特に限定されるものではない。極小さな傾斜角度Ａであっても、外筒２の内周面上の潤滑剤を引き伸ばす効果があり、シリンジ用ガスケット１の固定状態の解除および初期摺動抵抗の低減に寄与することができる。

　上記の実施の形態１では、押し子３のガスケット装着部３２に形成された十字形の突出部３６をシリンジ用ガスケット１の押し子装着部１５に形成された十字形の溝部１８に嵌め込むことで、シリンジ用ガスケット１を押し子３に空転不能に装着したが、ガスケット装着部３２の突出部３６と押し子装着部１５の溝部１８を共に、「－」形に形成したり、三角形、四角形等の多角形に形成しても、シリンジ用ガスケット１を空転しないように押し子３に装着することができる。さらに、ガスケット装着部と押し子装着部にそれぞれ雄ねじと雌ねじを形成して、シリンジ用ガスケットを空転しないように押し子にねじ込み式に装着することもできる。

実施の形態２
　上述した実施の形態１のシリンジ用ガスケット１は、潤滑剤係合部として、外周面１２に近接して周方向に形成されたリング状の傾斜部１３を有していたが、周方向に沿って複数の傾斜部を有することもできる。
　図１１および１２に、実施の形態２に係るシリンジ用ガスケット４を示す。このシリンジ用ガスケット４は、実施の形態１のシリンジ用ガスケット１と同様に、ゴム、エラストマー等の弾性体から形成され、厚みのある円盤形状を有し、底部に、軸方向下方に突出する円錐面４１が形成されている。また、シリンジ用ガスケット４の外側部に、軸方向に間隔を隔てて、それぞれ摺動面となる、２つの円筒状の外周面４２が形成されている。

　さらに、２つの外周面４２のうち、底部側に位置する外周面４２に近接して、周方向に沿って複数の傾斜部４３が形成されている。これら複数の傾斜部４３により、潤滑剤係合部が構成され、それぞれの傾斜部４３は、三角形状の歯によって形成されている。
　また、図１３および１４に示されるように、シリンジ用ガスケット４の円形の上端面４４の中央部に、実施の形態１のシリンジ用ガスケット１に形成されたものと同様の凹状の押し子装着部１５が形成されている。このため、押し子装着部１５に図９および１０に示した押し子３のガスケット装着部３２を嵌合させることにより、シリンジ用ガスケット４は、押し子３に対して空転することなく押し子３と共に進退するように装着される。

　このように複数の傾斜部４３が形成されたシリンジ用ガスケット４を用いても、押し子３と共にシリンジ用ガスケット４をシリンジの外筒２に対して中心軸の周りに回転させたときに、外筒２の内周面とシリンジ用ガスケット４との間に形成されている潤滑剤だま、あるいは、外筒２の内周面に固着している潤滑剤が、シリンジ用ガスケット４の複数の傾斜部４３からそれぞれ応力を受けて引き伸ばされ、効果的に、外筒２の内周面に対するシリンジ用ガスケット４の固定状態を解除すると共に初期摺動抵抗を低減することが可能となる。
　なお、複数の傾斜部４３の個数および配列ピッチは、自由に選択することができ、いずれの個数および配列ピッチに設定しても、効果的に、シリンジ用ガスケット４の固定状態の解除および初期摺動抵抗の低減を実現することができる。

　また、潤滑剤係合部は、傾斜部に限るものでもなく、例えば図１５に示されるように、それぞれシリンジ用ガスケットの中心軸Ｃの方向に沿った複数の係合面４５を有する凹凸形状とすることもできる。このような凹凸形状の潤滑剤係合部をシリンジ用ガスケットに形成しても、同様にして、外筒２に対する回転により、潤滑剤だまを潰したり、固着していた潤滑剤を引き伸ばして、効果的に、シリンジ用ガスケットの固定状態を解除し、期摺動抵抗を低減することが可能となる。

　１，４　シリンジ用ガスケット、２　外筒、３　押し子、１１，４１　円錐面、１２，４２　外周面、１３，４３　傾斜部、１４，４４　上端面、１５　押し子装着部、１６　凹部、１７　空間部、１８　溝部、２１　筒先部、２２　外筒フランジ、２３　収容空間、２４　円錐面、３１　ロッド部、３２　ガスケット装着部、３３　押し子フランジ、３４　ネック部、３５　円板部、３６　突出部、４５　係合面、Ｃ　中心軸、Ａ　傾斜角度、Ｐ　中心軸に垂直な面。

Claims

　シリンジの外筒内に挿入される押し子の前端部に装着されたシリンジ用ガスケットであって、
　前記押し子に対して空転不能に装着され、
　前記外筒の内周面に付着された潤滑剤に接触する潤滑剤係合部を有し、
　前記外筒に対して前記外筒の中心軸の回りに前記押し子を回転させることで、前記潤滑剤係合部が前記押し子と共に周方向に回転し、前記外筒の内周面に付着された潤滑剤を引き伸ばして、潤滑剤により前記外筒の内周面に固定された状態を解除することを特徴とするシリンジ用ガスケット。
　前記潤滑剤係合部は、前記外筒の中心軸に垂直な面に対して傾斜する少なくとも１つの傾斜部を有する請求項１に記載のシリンジ用ガスケット。
　前記外筒の内周面に対向する外周面を有し、
　前記潤滑剤係合部は、前記外周面に近接したリング状の１つの傾斜部からなる請求項２に記載のシリンジ用ガスケット。
　前記外筒の内周面に対向する外周面を有し、
　前記潤滑剤係合部は、前記外周面に近接し且つ周方向に沿って配列形成された複数の傾斜部を有する請求項２に記載のシリンジ用ガスケット。