WO2014017167A1

WO2014017167A1 - 摩擦攪拌接合構造体

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Publication number: WO2014017167A1
Application number: PCT/JP2013/064976
Authority: WO
Inventors: 畑　恒久; 寿和廣部
Original assignee: 本田技研工業株式会社
Priority date: 2012-07-25
Filing date: 2013-05-30
Publication date: 2014-01-30
Also published as: DE112013003668T5; CA2878913A1; GB2518332B; BR112015001372A2; GB201501249D0; US9260133B2; AU2013294351A1; MX2015001085A; GB2518332A; US20150175207A1; JPWO2014017167A1; BR112015001372B1; CN104487319B; CN104487319A; JP5933005B2; CA2878913C; MX356237B; AU2013294351B2

Abstract

　鋼板から塗膜が剥離した場合に剥離部位の耐食性が確保される摩擦攪拌接合構造体が開示される。サブフレーム(14)は、電着塗装を施した鋼製部材(21)にアルミニウム合金製部材(22)が重ね合わされ、重ね合わされた重合部(38)が内外側の接合部(55,57)で摩擦攪拌接合される。アルミニウム合金製部材(22)は、鋼製部材(21)に重ね合わされることにより鋼製部材(21)とともに重合部(38)を構成するアルミニウム重ね部(61)と、アルミニウム重ね部(61)に設けられたアルミニウム延出部(62)とを有する。アルミニウム延出部(62)は、内外側の接合部(55,57)の延長方向に対して直交させて鋼製部材(21)の外方に張り出されたアルミニウム延出部(62)を有する。

Description

摩擦攪拌接合構造体

　本発明は、鋼製部材にあらかじめ電着塗装が施され、この鋼製部材にアルミニウム合金製部材が重ね合わされ、重ね合わされた重合部が接合部で摩擦攪拌接合された摩擦攪拌接合構造体に関する。

　アルミニウム合金材および鋼板などの異材を接合する方法として摩擦攪拌接合が知られている（例えば、特許文献１参照。）。この摩擦攪拌接合方法でアルミニウム合金材および鋼板を接合する際には、まず、バックアップ治具に鋼板を載せ、鋼板にアルミニウム合金材を重ね合わせる。つぎに、重ね合わせられた接合部に接合ツールを回転させながら押圧することにより接合ツールの接合ピン（突起）を接合部に進入させる。この状態で、接合ツールを接合部に沿って移動することにより接合部（すなわち、アルミニウム合金材および鋼板）を摩擦攪拌接合する。

　ここで、鋼板のなかには、耐食性を確保するために亜鉛めっき膜を形成した後、亜鉛めっき膜に電着塗装で樹脂系の塗膜を形成することがある。樹脂系の塗膜が形成された鋼板がアルミニウム合金材と接合部で摩擦攪拌接合された場合、バックアップ治具に載せられた樹脂系の塗膜が、摩擦攪拌接合の際に生じる熱で剥離することが考えられる。鋼板から樹脂系の塗膜が剥離した場合、剥離部位の耐食性を確保することが難しい。

　この対策として、鋼板をアルミニウム合金材に摩擦攪拌接合した後、鋼板およびアルミニウム合金材に電着塗装で樹脂系の塗膜を形成する方法がある。しかし、アルミニウム合金材には、例えば、ねじ部などが設けられていることがある。このため、鋼板およびアルミニウム合金材に樹脂系の塗膜を電着塗装する場合には、アルミニウム合金材のねじ部などを覆うマスキング処理の費用が発生する。このため、鋼板に樹脂系の塗膜を電着塗装した後、鋼板をアルミニウム合金材に摩擦攪拌接合する場合でも、樹脂系の塗膜が剥離した剥離部位の耐食性を確保できる技術の実用化が望まれていた。

特開２００７－２５３１７２号公報

　本発明は、鋼板から塗膜が剥離した場合に剥離部位の耐食性を確保できる摩擦攪拌接合構造体を提供することを課題とする。

　請求項１に係る発明によれば、あらかじめ電着塗装を施した鋼製部材にアルミニウム合金製部材が重ね合わされ、重ね合わされた重合部が接合部で摩擦攪拌接合された摩擦攪拌接合構造体であって、前記アルミニウム合金製部材は、前記鋼製部材に重ね合わされることにより前記鋼製部材とともに前記重合部を構成するアルミニウム重ね部と、前記アルミニウム重ね部に設けられ、前記接合部の延長方向に対して直交させて前記鋼製部材の外方に張り出されたアルミニウム延出部と、を有する摩擦攪拌接合構造体が提供される。

　ここで、鋼製部材およびアルミニウム合金製部材を重ね合わせた重合部の接合部を摩擦攪拌接合する際に、バックアップ治具に載せられた鋼製部材の塗膜が、摩擦攪拌接合の際に生じる熱で剥離することが考えられる。そこで、請求項１において、アルミニウム重ね部にアルミニウム延出部を設け、アルミニウム延出部を鋼製部材の外方に張り出した。

　請求項２に係る発明では、好ましくは、前記アルミニウム延出部は、前記鋼製部材側へ膨出されたアルミニウム膨出部を有し、前記アルミニウム膨出部の端縁が前記鋼製部材の前記アルミニウム重ね部と反対側の面より突出している。

　請求項３に係る発明では、好ましくは、前記鋼製部材は、亜鉛めっき膜が形成された鋼板である。

　請求項４に係る発明では、好ましくは、前記鋼製部材は、所定間隔をおいて配置された両側の鋼側部と、前記両側の鋼側部を連結する鋼連結部と、を備え、前記両側の鋼側部および前記鋼連結部で平面視略Ｕ字状に形成され、前記アルミニウム合金製部材は、所定間隔をおいて配置された両側のアルミニウム側部と、前記両側のアルミニウム側部を連結するアルミニウム連結部と、を備え、前記両側のアルミニウム側部および前記アルミニウム連結部で平面視略Ｕ字状に形成され、前記両側の鋼側部に前記両側のアルミニウム側部が重ね合わされることにより、前記鋼製部材および前記アルミニウム合金製部材で平面視略矩形状の摩擦攪拌接合構造体が形成され、前記両側の鋼側部に前記両側のアルミニウム側部が重ね合わされることにより前記重合部が両側に形成され、前記重合部は、閉断面に形成された閉断面部と、前記閉断面部から外側に張り出された一対のフランジ部と、を備え、前記フランジ部は、前記アルミニウム重ね部に重ね合わされる鋼フランジと、前記アルミニウム重ね部および前記アルミニウム延出部で形成されるアルミニウムフランジと、を備え、一対の前記フランジ部のうち、少なくとも一方のフランジ部が前記接合部で摩擦攪拌接合される。

　請求項５に係る発明では、好ましくは、前記平面視略矩形状の摩擦攪拌接合構造体は、車両用の左右のサスペンションを支持する車両用サブフレームである。

　請求項１に係る発明では、アルミニウム重ね部にアルミ延出部を設け、アルミニウム延出部を鋼製部材の外方に張り出した。ここで、アルミニウム合金製部材のアルミニウム（Ａｌ）は、鋼製部材の鉄（Ｆｅ）よりイオン化傾向が大きい、すなわちＦｅより卑（poor）である。よって、アルミニウム延出部を鋼製部材の外方に張り出すことにより、鋼製部材の塗膜が剥離された剥離部位にアルミニウム延出部（Ａｌ）の電子が供給され、剥離部位（Ｆｅ）の電子放出を防ぐことができる。これにより、剥離部位に犠牲防食効果が得られ、剥離部位の耐食性を確保することにより剥離部位を保護できる。

　さらに、鋼製部材にあらかじめ電着塗装を施した後、鋼製部材をアルミニウム合金製部材に摩擦攪拌接合することができる。これにより、アルミニウム合金製部材のねじ部などを覆うマスキング処理の費用が発生することがなく、コストを抑えることができる。

　請求項２に係る発明では、アルミニウム延出部のアルミニウム膨出部を鋼製部材側へ膨出させ、アルミニウム膨出部の端縁を鋼製部材より突出させた。よって、アルミニウム膨出部の端縁を剥離部位より突出させることができる。これにより、剥離部位にアルミニウム膨出部の端縁（Ａｌ）の電子が効率よく供給され、剥離部位（Ｆｅ）の電子放出をより好適に防ぐことができるので、犠牲防食効果が一層良好に得られる。

　請求項３に係る発明では、鋼製部材に亜鉛めっき膜を形成することにより、亜鉛めっき膜に電着塗装で塗膜を塗布することができる。このように、鋼製部材に亜鉛めっき膜および塗膜を二層に施すことにより鋼製部材の耐食性を高めることができる。

　さらに、摩擦攪拌接合の際に塗膜が剥離されても、剥離部位に亜鉛めっき膜を残すことができる。ここで、亜鉛めっき膜の亜鉛（Ｚｎ）は、アルミニウム合金製部材のアルミニウム（Ａｌ）よりイオン化傾向が大きい、すなわちＡｌより卑である。よって、アルミニウム延出部（Ａｌ）に剥離部位の亜鉛めっき膜（Ｚｎ）の電子が供給され、アルミニウム延出部（Ａｌ）に犠牲防食効果が得られる。剥離部位から亜鉛めっき膜が除去された後、剥離部位にアルミニウム延出部（Ａｌ）の電子が供給され、剥離部位（Ｆｅ）の電子放出を防ぐことができる。これにより、剥離部位に犠牲防食効果が得られ、剥離部位の耐食性を確保することにより剥離部位を保護できる。

　請求項４に係る発明では、重合部に一対のフランジ部を備え、フランジ部を、鋼製部材の鋼フランジと、アルミニウム合金製部材のアルミニウムフランジとで構成した。さらに、一対のフランジ部のうち、少なくとも一方のフランジ部を摩擦攪拌接合するようにした。アルミニウムフランジ（Ａｌ）の電子が鋼フランジの剥離部位に供給され、剥離部位（Ｆｅ）の電子放出を防ぐことができる。よって、鋼フランジの剥離部位に犠牲防食効果が得られ、剥離部位の耐食性を確保することができる。

　鋼フランジ（剥離部位）の耐食性を確保することにより、鋼製部材およびアルミニウム合金製部材で平面視略矩形状の摩擦攪拌接合構造体を接合する前に鋼製部材のみに電着塗装を施すことができる。これにより、鋼製部材およびアルミニウム合金製部材で平面視略矩形状の摩擦攪拌接合構造体を接合し、接合後に摩擦攪拌接合構造体の全体に電着塗装を施す必要がないので、電着塗装が容易になり摩擦攪拌接合構造体の生産性を高めることができる。

　請求項５に係る発明では、平面視略矩形状の摩擦攪拌接合構造体を車両用サブフレームとして用いるようにした。車両用サブフレームは左右のサスペンションなどを支持する部材であり、摩擦攪拌接合構造体の強度・剛性を十分に確保する必要がある。そこで、摩擦攪拌接合構造体の重合部を閉断面部と一対のフランジ部とで形成し、一対のフランジ部を閉断面部から外側に張り出した。さらに、閉断面部から張り出したフランジ部（鋼フランジおよびアルミニウムフランジ）の接合部を摩擦攪拌接合した。よって、アルミニウムフランジのアルミニウム延出部（Ａｌ）から電子を放電して剥離部位を犠牲防食させても、重合部の強度・剛性を閉断面部で十分に確保できる。これにより、摩擦攪拌接合構造体の強度・剛性を重合部の閉断面部で十分に確保することができる。

本発明に係る摩擦攪拌接合構造体（サブフレーム）を備えた車両を示す斜視図である。図１のサブフレームを示す斜視図である。図２のサブフレームを分解した状態を示す分解斜視図である。（ａ）は図２の４ａ－４ａ線断面図、（ｂ）は図４（ａ）の４ｂ部拡大図である。図４（ａ）の５部拡大図である。本発明に係るサブフレームの外側鋼フランジおよび外側アルミニウムフランジを摩擦攪拌接合する例を説明する図である。本発明に係るサブフレームの外側鋼フランジ（剥離部位）を犠牲防食効果で保護する例を説明する図である。

　以下、本発明の好ましい実施例について、添付した図面に基づいて詳細に説明する。なお、「前（Ｆｒ）」、「後（Ｒｒ）」、「左（Ｌ）」および「右（Ｒ）」は運転者から見た方向にしたがう。

　実施例では摩擦攪拌接合構造体１４の代表例としてサブフレーム（車両用サブフレーム）を例示するが、摩擦攪拌接合構造体１４はサブフレームに限定するものではない。

　図１に示すように、車両１０は、車両１０の左右側に設けられて車両前後方向に延出された左右のフロントサイドフレーム（骨格材）１１，１２と、左右のフロントサイドフレーム１１，１２の下方に設けられたサブフレーム１４と、サブフレーム１４に支持された動力源（図示せず）および左右のフロントサスペンション（サスペンション）１５（右フロントサスペンションは図示せず）と、サブフレーム１４の上部に設けられたステアリングギアボックス１９とを備えている。

　ステアリングギアボックス１９は、ステアリングギア（図示せず）などを収容する円筒状のケースである。ステアリングギアボックス１９から延出されたステアリングシャフトにステアリングホイールが取り付けられている。ステアリングホイールを操作することにより車両１０の走行方向を変えることができる。

　左フロントサスペンション１５は、左ロアアーム１７を介してサブフレーム１４の左サイドメンバ２３に支持されている。右フロントサスペンションは、左フロントサスペンション１５と同様に、右ロアアームを介してサブフレーム１４の右サイドメンバ２６に支持されている。

　図１、図２に示すように、サブフレーム１４は、車両１０の左側に設けられて車両前後方向に延びる左サイドメンバ２３と、車両１０の右側に設けられて車両前後方向に延びる右サイドメンバ２６と、左右のサイドメンバ２３，２６の前端部２３ａ，２６ａを連結するフロントクロスメンバ（鋼連結部）３１と、左右のサイドメンバ２３，２６の後端部２３ｂ，２６ｂを連結するリアクロスメンバ（アルミニウム連結部）３２とで矩形状に形成されている。

　図２、図３に示すように、左サイドメンバ２３は、鋼材で形成された左側の鋼側部２４と、アルミニウム合金材で形成された左側のアルミニウム側部２５とで形成されている。右サイドメンバ２６は、鋼材で形成された右側の鋼側部２７と、アルミニウム合金材で形成された右側のアルミニウム側部２８とで形成されている。

　左側の鋼側部２４および右側の鋼側部２７（すなわち、両側の鋼側部２４，２７）が所定間隔をおいて配置されている。左側の鋼側部２４および右側の鋼側部２７と、左右側の鋼側部２４，２７を連結する鋼製のフロントクロスメンバ３１とで鋼製部材２１が形成されている。

　鋼製部材２１は、左右側の鋼側部２４，２７およびフロントクロスメンバ３１で平面視略Ｕ字状に形成された鋼板である。この鋼製部材２１は、表面２１ａに亜鉛めっき膜３５が形成され、亜鉛めっき膜３５の表面に電着塗装（カチオン電着塗装）により樹脂系の塗膜３６が形成されている（図４（ｂ）も参照）。このように、鋼製部材２１に亜鉛めっき膜３５および塗膜３６を二層に施すことにより鋼製部材２１の耐食性を高めることができる。

　また、左側のアルミニウム側部２５および右側のアルミニウム側部２８（すなわち、両側のアルミニウム側部２５，２８）が所定間隔をおいて配置されている。左側のアルミニウム側部２５および右側のアルミニウム側部２８（すなわち、両側のアルミニウム側部２５，２８）と、左右側のアルミニウム側部２５，２８を連結するアルミニウム合金製のリアクロスメンバ３２とでアルミニウム合金製部材２２が形成されている。

　アルミニウム合金製部材２２は、左右側のアルミニウム側部２５，２８およびリアクロスメンバ３２で平面視略Ｕ字状（より具体的には、平面視略Ｉ字状）にアルミニウム合金で成形された鋳物部材である。鋼製部材２１にアルミニウム合金製部材２２が重ね合わされた状態で摩擦攪拌接合されることにより、鋼製部材２１およびアルミニウム合金製部材２２で平面視略矩形状のサブフレーム１４が形成される。

　図４に示すように、左側の鋼側部２４に左側のアルミニウム側部２５が重ね合わされることにより重合部３８（左側の重合部）が形成されている。重合部３８は、閉断面に形成された閉断面部４１と、閉断面部４１から外側に張り出された内外のフランジ部（一対のフランジ部）４２，４３とを備えている。すなわち、内フランジ部４２が内側接合部（接合部）５５で摩擦攪拌接合され、外フランジ部４３が外側接合部（接合部）５７で摩擦攪拌接合されることにより、左側の鋼側部２４および左側のアルミニウム側部２５で重合部３８が構成されている。

　左側の鋼側部２４は、下方に向けて膨出された断面略Ｕ字状の鋼側部本体４５と、鋼側部本体４５の内側部４５ａに設けられた内側鋼フランジ（鋼フランジ）４６と、鋼側部本体４５の外側部４５ｂに設けられた外側鋼フランジ（鋼フランジ）４７とを有する。内側鋼フランジ４６は、鋼側部本体４５の内側部４５ａから車幅方向内側に張り出されている。外側鋼フランジ４７は、鋼側部本体４５の外側部４５ｂから車幅方向外側に張り出されている。

　左側のアルミニウム側部２５は、上方に向けて膨出された断面略台形状のアルミニウム側部本体５１と、アルミニウム側部本体５１の内側部５１ａに設けられた内側アルミニウムフランジ（アルミニウムフランジ）５２と、アルミニウム側部本体５１の外側部５１ｂに設けられた外側アルミニウムフランジ（アルミニウムフランジ）５３とを有する。内側アルミニウムフランジ５２は、アルミニウム側部本体５１の内側部５１ａから車幅方向内側に張り出されている。外側アルミニウムフランジ５３は、アルミニウム側部本体５１の外側部５１ｂから車幅方向外側に張り出されている。

　内側鋼フランジ４６に内側アルミニウムフランジ５２が重ね合わされた状態で内側接合部５５が摩擦攪拌接合されることにより内フランジ部４２が形成されている。内側鋼フランジ４６および内側アルミニウムフランジ５２間にシール剤５６が介在されている。

　外側鋼フランジ４７に外側アルミニウムフランジ５３が重ね合わされた状態で外側接合部５７が摩擦攪拌接合されることにより外フランジ部４３が形成されている。外側鋼フランジ４７および外側アルミニウムフランジ５３間にシール５６が介在されている。このシール５６は、外フランジ部４３が摩擦攪拌接合される前に、外側鋼フランジ４７および外側アルミニウムフランジ５３間に介在される。

　内側鋼フランジ４６および内側アルミニウムフランジ５２が内側接合部５５で接合され、外側鋼フランジ４７および外側アルミニウムフランジ５３が外側接合部５７で接合されることにより、鋼側部本体４５およびアルミニウム側部本体５１が閉断面状に重ね合わされる。鋼側部本体４５およびアルミニウム側部本体５１が閉断面状に重ね合わされることにより、鋼側部本体４５およびアルミニウム側部本体５１で閉断面部４１が形成される。

　図５に示すように、外側鋼フランジ４７は、表面４７ａ（すなわち、鋼製部材２１の表面２１ａ（図４（ｂ）参照））に亜鉛めっき膜３５が形成され、亜鉛めっき膜３５の表面に塗膜３６が形成されている。外側鋼フランジ４７は、外側アルミニウムフランジ５３のアルミニウム重ね部６１に重ね合わされる部位である。

　外側アルミフニウムランジ５３は、アルミニウム側部本体５１の外側部５１ｂから車幅方向外側に張り出されたアルミニウム重ね部６１と、アルミニウム重ね部６１の外端部６１ａから車幅方向外側に張り出されたアルミニウム延出部６２とを有する。

　アルミニウム重ね部６１は、外側鋼フランジ４７に重ね合わされる部位であり、外側鋼フランジ４７に重ね合わされた状態において外側接合部５７で摩擦攪拌接合されている。アルミニウム延出部６２は、アルミニウム重ね部６１の外端部６１ａに設けられている。アルミニウム延出部６２は、重合部３８の延長方向（紙面に直交する方向）に対して直交させて外側鋼フランジ４７の車幅方向外方に張り出されている。換言すれば、アルミニウム延出部６２は、接合ツール８２（図６（ａ）参照）の移動方向（紙面に直交する方向）に対して直交させて外側鋼フランジ４７の車幅方向外方に張り出されている。

　このアルミニウム延出部６２は、アルミニウム膨出部６３を有する。アルミニウム膨出部６３は、外側鋼フランジ４７のうちアルミニウム重ね部６１の反対側の表面（面）４７ａ側に向けて膨出されている。よって、アルミニウム膨出部６３の端縁６３ａが反対側の表面４７ａより突出寸法Ｓだけ突出されている。アルミニウム膨出部６３の端縁６３ａを反対側の表面４７ａより突出させた理由については後で詳しく説明する。

　外フランジ部４３が外側接合部５７で接合された状態で、外側鋼フランジ４７（具体的には、反対側の表面４７ａ）の剥離部位６６から塗膜３６および亜鉛めっき膜３５が除去（剥離）されている。ここで、アルミニウム膨出部６３（端縁６３ａ）のアルミニウム（Ａｌ）は、剥離部位６６の鉄（Ｆｅ）よりイオン化傾向が大きい、すなわちＦｅより卑である。

　よって、アルミニウム延出部６２が外側鋼フランジ４７の外方に張り出されることにより、アルミニウム膨出部６３の端縁６３ａからＡｌの電子が剥離部位６６に供給され、剥離部位６６の電子放出が阻止される。これにより、剥離部位６６に犠牲防食効果が得られ、剥離部位６６の耐食性が確保されることにより剥離部位６６が保護されている。

　図２に示すように、右側の鋼側部２７は、左側の鋼側部２４と左右対称の部材であり、以下、右側の鋼側部２７の各構成部材に左側の鋼側部２４と同じ符号を付して詳しい説明を省略する。さらに、右側のアルミニウム側部２８は、左側のアルミニウム側部２５と左右対称の部材であり、以下、右側のアルミニウム側部２８の各構成部材に左側のアルミニウム側部２５と同じ符号を付して詳しい説明を省略する。さらにまた、右側の鋼側部２７および右側のアルミニウム側部２８で形成された右側の重合部３８に、左側の重合部３８と同じ符号を付して詳しい説明を省略する。

　図４に示すように、重合部３８に内外のフランジ部４２，４３を備えた。また、外フランジ部４３を、外側鋼フランジ４７および外側アルミニウムフランジ５３で構成し、外側接合部５７で摩擦攪拌接合するようにした。さらに、内フランジ部４２を、内側鋼フランジ４６および内側アルミニウムフランジ５２で構成し、内側接合部５５で摩擦攪拌接合するようにした。

　外側アルミニウムフランジ５３、具体的にはアルミニウム膨出部６３（端縁６３ａ）のＡｌの電子が内側鋼フランジ４７の剥離部位６６に供給され、剥離部位６６からＦｅの電子が放出することを防ぐことができる。同様に、内側アルミニウムフランジ５２、具体的にはアルミニウム膨出部６３（端縁６３ａ）のＡｌの電子が内側鋼フランジ４６の剥離部位６６に供給され、剥離部位６６からＦｅの電子が放出することを防ぐことができる。よって、内外側の鋼フランジ４６，４７の剥離部位６６に犠牲防食効果が得られ、剥離部位６６の耐食性を確保することができる。

　剥離部位６６の耐食性を確保することにより、鋼製部材２１およびアルミニウム合金製部材２２で平面視略矩形状のサブフレーム１４を接合する前に鋼製部材２１のみに電着塗装を施すことができる。これにより、図２に示すように、鋼製部材２１およびアルミニウム合金製部材２２でサブフレーム１４を接合し、接合後にサブフレーム１４の全体に電着塗装を施す必要がないので、電着塗装が容易になりサブフレーム１４の生産性を高めることができる。

　また、平面視略矩形状の摩擦攪拌接合構造体を車両用サブフレーム（サブフレーム）１４として用いるようにした。サブフレーム１４は左右のサスペンション１５（図１参照）などを支持する部材であり、強度・剛性を十分に確保する必要がある。そこで、図２、図４に示すように、サブフレーム１４の左右の重合部（両側の重合部）３８を閉断面部４１と内外のフランジ部４２，４３とで形成し、内外のフランジ部４２，４３を閉断面部４１から外側に張り出した。

　さらに、閉断面部４１から張り出した内フランジ部４２（内側鋼フランジ４６および内側アルミニウムフランジ５２）を内側接合部５５で摩擦攪拌接合した。加えて、閉断面部４１から張り出した外フランジ部４３（外側鋼フランジ４７および外側アルミニウムフランジ５３）を外側接合部５７で摩擦攪拌接合した。

　よって、内外側のアルミニウムフランジ５２，５３（具体的には、アルミニウム延出部６３）からＡｌの電子を放電して剥離部位６６を犠牲防食させても、重合部３８の強度・剛性を閉断面部４１で十分に確保できる。これにより、サブフレーム１４の強度・剛性を重合部の閉断面部４１で十分に確保することができる。

　つぎに、左側の鋼側部２４の外側鋼フランジ４７および左側のアルミニウム側部２５の外側アルミニウムフランジ５３を摩擦攪拌接合する例を図６に基づいて説明する。

　図６（ａ）に示すように、鋼製部材２１の表面２１ａに亜鉛めっき膜３５を形成し、亜鉛めっき膜３５の表面に電着塗装で塗膜３６を形成する。よって、外側鋼フランジ４７の表面（面）４７ａに亜鉛めっき膜３５および塗膜３６があらかじめ形成される。

　亜鉛めっき膜３５および塗膜３６が形成された外側鋼フランジ４７をバックアップ治具８１に載せる。この状態で、外側鋼フランジ４７に外側アルミニウムフランジ５３のアルミニウム重ね部６１を上方から重ね合わせる。重ね合わせたアルミニウム重ね部６１の上方から接合ツール８２を回転させた状態で押圧して、アルミニウム重ね部６１に接合ツール８２の接合ピン８３を進入させる。この状態で、接合ツール８２を外側アルミニウムフランジ５３に沿って移動することにより、アルミニウム重ね部６１および外側鋼フランジ４７を外側接合部５７で摩擦攪拌接合する。

　ここで、アルミニウム重ね部６１および外側鋼フランジ４７を摩擦攪拌接合する際に、外側鋼フランジ４７がバックアップ治具８１に載せられている。このため、アルミニウム重ね部６１および外側鋼フランジ４７の摩擦攪拌接合中に、外側鋼フランジ４７の塗膜３６のうちバックアップ治具８１に載せられた部位３６ａが、摩擦攪拌接合の際に生じる熱で剥離することが考えられる。

　図６（ｂ）に示すように、外側鋼フランジ４７の塗膜３６（具体的には、バックアップ治具８１に載せられた部位３６ａ（図６（ａ）参照））が剥離することにより、亜鉛めっき膜３５の剥離部位３５ａが外部に露出する。

　ついで、外側鋼フランジ４７のうち塗膜３６ａが剥離された剥離部位６６を犠牲防食効果で保護する例を図７に基づいて説明する。なお、外側鋼フランジ４７および外側アルミニウムフランジ５３間にはシール５６が介在されているが、このシール５６は犠牲防食効果を確保するための回路形成を妨げない。

　図７（ａ）に示すように、亜鉛めっき膜３５の剥離部位３５ａは、空気中の水分や地面からの飛水を受ける。ここで、亜鉛めっき膜３５の亜鉛（Ｚｎ）は、アルミニウム膨出部６３（端縁６３ａ）のアルミニウム（Ａｌ）よりイオン化傾向が大きい、すなわちＡｌより卑である。よって、端縁６３ａに剥離部位３５ａからＺｎの電子が供給され、端縁６３ａに犠牲防食効果が得られる。

　図７（ｂ）に示すように、剥離部位３５ａ（図７（ａ）参照）が除去されることにより、外側鋼フランジ４７の剥離部位６６は、空気中の水分や地面からの飛水を受ける。ここで、アルミニウム膨出部６３（端縁６３ａ）のアルミニウム（Ａｌ）は、外側鋼フランジ４７の鉄（Ｆｅ）よりイオン化傾向が大きい、すなわちＦｅより卑である。

　よって、アルミニウム延出部６２（図５参照）をアルミニウム重ね部６１から外側鋼フランジ４７の外方に張り出すことにより、剥離部位６６にアルミニウム延出部６２からＡｌの電子が供給され、剥離部位６６からＦｅの電子が放出することを防ぐことができる。これにより、剥離部位６６に犠牲防食効果が得られ、剥離部位６６の耐食性を確保することにより剥離部位６６を保護できる。

　さらに、アルミニウム膨出部６３の端縁６３ａを剥離部位６６より突出寸法Ｓだけ突出させた。これにより、剥離部位６６にアルミ膨出部６３（端縁６３ａ）からＡｌの電子が効率よく供給され、剥離部位６６からＦｅの電子が放出することをより好適に防ぐことができるので、犠牲防食効果が一層良好に得られる。

　本発明に係るサブフレーム１４によれば、鋼製部材２１にあらかじめ電着塗装で塗膜３６を施した後、鋼製部材２１をアルミニウム合金製部材２２に摩擦攪拌接合することができる。これにより、アルミニウム合金製部材２２のねじ部などを覆うマスキング処理の費用が発生することがなく、コストを抑えることができる。

　なお、本発明に係る摩擦攪拌接合構造体は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。例えば、実施例では、本発明を適用する摩擦攪拌接合構造体として車両用のサブフレーム１４を例示するが、これに限定するものではなく、アルミニウム合金製部材および鋼製部材を摩擦攪拌接合する他の構造体に本発明を適用することも可能である。

　また、実施例では、内フランジ部４２および外フランジ部４３の両方を摩擦攪拌接合する例について説明したが、これに限らないで、内フランジ部４２および外フランジ部４３の一方のみを摩擦攪拌接合することも可能である。

　さらに、実施例では、内側鋼フランジ４６および内側アルミニウムフランジ５２間にシール５６を設け、外側鋼フランジ４７および外側アルミニウムフランジ５３間にシール５６を設けた例について説明したが、これに限らないで、シール５６を設けないように構成することも可能である。

　さらにまた、実施例で示した車両１０、サブフレーム１４、左右のフロントサスペンション１５、鋼製部材２１、アルミニウム合金製部材２２、左右側の鋼側部２４，２７、左右側のアルミニウム側部２５，２８、フロントクロスメンバ３１、リアクロスメンバ３２、左右側の重合部３８、閉断面部４１、内外のフランジ部４２，４３、内外側の鋼フランジ４６，４７、内外側のアルミニウムフランジ５２，５３、アルミニウム重ね部６１、アルミニウム延出部６２およびアルミニウム膨出部６３などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。

　本発明は、電着塗装が施された鋼製部材にアルミ合金製部材が重ね合わされ、重ね合わされた重合部が摩擦攪拌接合された構造体を備えた自動車への適用に好適である。

　１０…車両、１４…サブフレーム（摩擦攪拌接合構造体）、１５…左右のフロントサスペンション（サスペンション）、２１…鋼製部材、２２…アルミニウム合金製部材、２４，２７…左右側の鋼側部（両側の鋼側部）、２５，２８…左右側のアルミニウム側部（両側のアルミ側部）、３１…フロントクロスメンバ（鋼連結部）、３２…リアクロスメンバ（アルミニウム連結部）、３５…亜鉛めっき膜、３６…塗膜、３８…左右側の重合部（重合部、両側の重合部）、４１…閉断面部、４２，４３…内外のフランジ部（一対のフランジ部）、４６，４７…内外側の鋼フランジ（鋼フランジ）、４７ａ…反対側の表面（面）、５２，５３…内外側のアルミニウムフランジ（アルミニウムフランジ）、５５，５７…内外側の接合部（接合部）、６１…アルミニウム重ね部、６２…アルミニウム延出部、６３…アルミニウム膨出部、６３ａ…アルミニウム膨出部の端縁。

Claims

　予め電着塗装を施した鋼製部材にアルミニウム合金製部材が重ね合わされ、重ね合わされた重合部が接合部で摩擦攪拌接合された摩擦攪拌接合構造体であって、
　前記アルミニウム合金製部材は、
　前記鋼製部材に重ね合わされることにより前記鋼製部材とともに前記重合部を構成するアルミニウム重ね部と、
　前記アルミニウム重ね部に設けられ、前記接合部の延長方向に対して直交させて前記鋼製部材の外方に張り出されたアルミニウム延出部と、
　を有することを特徴とする摩擦攪拌接合構造体。
　前記アルミニウム延出部は、
　前記鋼製部材側へ膨出されたアルミニウム膨出部を有し、
　前記アルミニウム膨出部の端縁が前記鋼製部材の前記アルミニウム重ね部と反対側の面より突出している、請求項１記載の摩擦攪拌接合構造体。
　前記鋼製部材は、
　亜鉛めっき膜が形成された鋼板である、請求項１または請求項２記載の摩擦攪拌接合構造体。
　前記鋼製部材は、
　所定間隔をおいて配置された両側の鋼側部と、
　前記両側の鋼側部を連結する鋼連結部と、を備え、
　前記両側の鋼側部および前記鋼連結部で平面視略Ｕ字状に形成され、
　前記アルミニウム合金製部材は、
　所定間隔をおいて配置された両側のアルミニウム側部と、
　前記両側のアルミニウム側部を連結するアルミニウム連結部と、を備え、
　前記両側のアルミニウム側部および前記アルミニウム連結部で平面視略Ｕ字状に形成され、
　前記両側の鋼側部に前記両側のアルミニウム側部が重ね合わされることにより、前記鋼製部材および前記アルミニウム合金製部材で平面視略矩形状の摩擦攪拌接合構造体が形成され、
　前記両側の鋼側部に前記両側のアルミニウム側部が重ね合わされることにより前記重合部が両側に形成され、
　前記重合部は、
　閉断面に形成された閉断面部と、
　前記閉断面部から外側に張り出された一対のフランジ部と、を備え、
　前記フランジ部は、
　前記アルミニウム重ね部に重ね合わされる鋼フランジと、
　前記アルミニウム重ね部および前記アルミニウム延出部で形成されるアルミニウムフランジと、を備え、
　一対の前記フランジ部のうち、少なくとも一方のフランジ部が前記接合部で摩擦攪拌接合される、請求項１記載の摩擦攪拌接合構造体。
　前記平面視略矩形状の摩擦攪拌接合構造体は、
　車両用の左右のサスペンションを支持する車両用サブフレームである、請求項４記載の摩擦攪拌接合構造体。