以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の第1実施形態の排気浄化装置を備えた内燃機関が図1に示されている。図1に示されている内燃機関は、火花点火式の内燃機関(いわゆるガソリンエンジン)である。図1において、11は燃料噴射弁、12は燃焼室、13はピストン、14はコンロッド、15はクランクシャフト、16はクランクポジションセンサ、17は点火栓、18は吸気弁、20は内燃機関の本体、22は排気弁、80はアクセルペダル、81はアクセルペダル踏込量センサをそれぞれ示している。なお、図1には、1つの燃焼室12のみが示されているが、内燃機関10は、複数の燃焼室(たとえば、4つの燃焼室、または、6つの燃焼室、または、8つの燃焼室)とそれに対応する上述した構成要素をそれぞれ具備している。
また、図1において、30は吸気通路、31は吸気ポート、32は吸気マニホルド、33はサージタンク、34は吸気管、35はスロットル弁、36はスロットル弁35を駆動するためのアクチュエータ、37はエアフローメータ、38はエアクリーナ、40は排気通路、41は排気ポート、42は排気マニホルド、43は排気管、44は触媒コンバータ、46は空燃比センサ、47は温度センサ、48は空燃比センサをそれぞれ示している。なお、吸気通路30は、吸気ポート31、吸気マニホルド32、サージタンク33、および、吸気管34から構成されている。一方、排気通路40は、排気ポート41、排気マニホルド42、および、排気管43から構成されている。
電子制御装置90はマイクロコンピュータからなる。また、電子制御装置90はCPU(マイクロプロセッサ)91、ROM(リードオンリメモリ)92、RAM(ランダムアクセスメモリ)93、バックアップRAM94、および、インターフェース95を有する。これらCPU91、ROM92、RAM93、バックアップRAM94、および、インターフェース95は双方向バスによって互いに接続されている。
次に、上述した内燃機関の各構成要素についてさらに詳細に説明する。なお、以下の説明において「目標燃料噴射タイミング」とは「燃料噴射弁から燃料を噴射させるタイミングとして目標とするタイミング」を意味し、「目標燃料噴射量」とは「燃料噴射弁から噴射させる燃料の量として目標とする量」を意味し、「混合気」とは「燃焼室内に形成される空気と燃料とが混合されたガス」を意味し、「目標点火タイミング」とは「点火栓によって混合気中の燃料に点火するタイミングとして目標とするタイミング」を意味し、「機関回転数」とは「内燃機関の回転数」を意味し、「スロットル弁開度」とは「スロットル弁の開度」を意味し、「目標スロットル弁開度」とは「スロットル弁開度として目標とする開度」を意味し、「吸入空気量」とは「燃焼室に吸入される空気の量」を意味し、「アクセルペダル踏込量」とは「アクセルペダルの踏込量」を意味し、「要求機関トルク」とは「内燃機関から出力されるトルクとして要求されるトルク」を意味する。
燃料噴射弁11は、その燃料噴射孔が燃焼室12内に露出するように内燃機関の本体20に取り付けられている。また、燃料噴射弁11は、電子制御装置90のインターフェース95に電気的に接続されている。電子制御装置90は、目標燃料噴射タイミングにおいて目標燃料噴射量の燃料を燃料噴射弁11に噴射させるための指令信号を燃料噴射弁11に供給する。電子制御装置90から燃料噴射弁11に指令信号が供給されると、燃料噴射弁11は、燃焼室12内に燃料を直接噴射する。
点火栓17は、その放電電極が燃焼室12内に露出するように内燃機関の本体20に取り付けられている。また、点火栓17は、電子制御装置90のインターフェース95に電気的に接続されている。電子制御装置90は、目標点火タイミングにおいて点火栓17に火花を発生させるための指令信号を点火栓17に供給する。電子制御装置90から点火栓17に指令信号が供給されると、点火栓17は、燃焼室12内の燃料を点火する。なお、燃焼室12内の燃料が点火栓17によって点火されると、燃焼室12内の燃料が燃焼し、ピストン13およびコンロッド14を介してクランクシャフト15にトルクが出力される。
クランクポジションセンサ16は、内燃機関の出力軸、すなわち、クランクシャフト15近傍に配置されている。また、クランクポジションセンサ16は、電子制御装置90のインターフェース95に電気的に接続されている。クランクポジションセンサ16は、クランクシャフト15の回転位相に対応する出力値を出力する。この出力値は、電子制御装置90に入力される。電子制御装置90は、この出力値に基づいて機関回転数を算出する。
吸気マニホルド32は、その一端で複数の管に分岐しており、これら分岐した管は、それぞれ対応する吸気ポート31に接続されている。また、吸気マニホルド32は、その他端でサージタンク33の一端に接続されている。サージタンク33は、その他端で吸気管34の一端に接続されている。
スロットル弁35は、吸気管34に配置されている。スロットル弁35には、その開度を変更するためのアクチュエータ(以下このアクチュエータを「スロットル弁アクチュエータ」という)36が接続されている。スロットル弁アクチュエータ36は、電子制御装置90のインターフェース95に電気的に接続されている。電子制御装置90は、スロットル弁開度を目標スロットル弁開度に制御するようにスロットル弁アクチュエータ36を駆動するための制御信号をスロットル弁アクチュエータ36に供給する。なお、スロットル弁開度が変更されると、スロットル弁35が配置された領域における吸気管34内の流路面積が変わる。これによってスロットル弁35を通過する空気の量が変わり、ひいては、燃焼室に吸入される空気の量が変わる。
エアフローメータ37は、スロットル弁35よりも上流において吸気管34に配置されている。また、エアフローメータ37は、電子制御装置90のインターフェース95に電気的に接続されている。エアフローメータ37は、そこを通過する空気の量に対応する出力値を出力する。この出力値は、電子制御装置90に入力される。電子制御装置90は、この出力値に基づいてエアフローメータ37を通過する空気の量、ひいては、吸入空気量を算出する。
エアクリーナ38は、エアフローメータ37よりも上流において吸気管34に配置されている。
排気マニホルド42は、その一端で複数の管に分岐しており、これら分岐した管は、それぞれ対応する排気ポート41に接続されている。また、排気マニホルド42は、その他端で排気管43の一端に接続されている。排気管43は、その他端で外気に開放されている。
触媒コンバータ44は、排気通路40(より具体的には、排気管43に配置されている。また、触媒コンバータ44は、その内部に触媒45を収容している。この触媒45は、その温度が特定の温度(いわゆる活性温度)以上であるときに該触媒に流入する排気ガス中の特定の成分を所定の浄化率で浄化することができる。より具体的には、触媒45は、活性元素と担体とを有する。担体は、活性元素を担持する。また、活性元素は、触媒に流入する排気ガス中の上記特定の成分の酸化反応および還元反応の少なくとも一方、または、これら酸化反応および還元反応の両方を活性化する性質を有する元素である。また、活性元素は、触媒の温度(以下、触媒の温度を「触媒温度」という)が或る温度(以下この温度を「所定固溶温度」という)以上であって且つ触媒の内部雰囲気が酸化雰囲気であるときに担体に固溶し、触媒温度が或る温度(以下この温度を「触媒析出温度」という)以上であって且つ触媒の内部雰囲気が還元雰囲気であるときに担体から析出する性質を有する。また、担体は、触媒温度が所定固溶温度であって且つ触媒の内部雰囲気が酸化雰囲気であるときに活性元素を固溶させ、触媒温度が触媒析出温度以上であって且つ触媒の内部雰囲気が還元雰囲気であるときに活性元素を析出させる性質を有する材料からなる担体である。したがって、第1実施形態の触媒では、触媒温度が所定固溶温度以上であるときに触媒に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比であるとき、担体から析出している活性元素が担体に固溶し、触媒温度が所定析出温度以上であるときに触媒に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比であるとき、担体に固溶している活性元素が担体から析出する。
また、触媒45は、そこに流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比であるときに排気ガス中の窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、および、未燃炭化水素(HC)を高い浄化率で同時に浄化することができるいわゆる三元触媒である。なお、排気ガスの空燃比とは、燃焼室12に供給された燃料の量に対する燃焼室12に吸入された空気の量の比を意味する。
なお、活性元素は、上述したように担体に固溶し且つ上述したように担体から析出する性質を有する元素であれば、如何なる元素でもよく、たとえば、ロジウム(Rh)である。また、担体を構成する材料は、上述したように活性元素を固溶させ且つ上述したように活性元素を析出させる性質を有する材料であれば、如何なる材料でもよく、スピネル構造を有するMgAlO4、ペロブスカイト構造を有するMAl2O3(ここで、Mは金属)などの複合酸化物である。
空燃比センサ(以下「上流側空燃比センサ」ともいう)46は、触媒45よりも上流の排気通路40に取り付けられている。また、空燃比センサ46は、電子制御装置90のインターフェース95に電気的に接続されている。空燃比センサ46は、そこに到来する排気ガスの空燃比に対応する出力値を出力する。この出力値は、電子制御装置90に入力される。電子制御装置90は、この出力値に基づいて空燃比センサ46に到来する排気ガスの空燃比を算出する。したがって、空燃比センサ46は、そこに到来する排気ガスの空燃比を検出するセンサであると言える。なお、空燃比センサ46は、そこに到来する排気ガスの空燃比を検出するセンサであれば特定のセンサに制限されず、たとえば、空燃比センサ46として、図2(A)に示されている出力特性を有するいわゆる限界電流式の酸素濃度センサを採用することができる。この酸素濃度センサは、図2(A)に示されているように、そこに到来する排気ガスの空燃比が大きいほど大きい電流値を出力値として出力する。
空燃比センサ(以下「下流側空燃比センサ」ともいう)48は、触媒45よりも下流の排気通路40に取り付けられている。また、空燃比センサ48は、電子制御装置90のインターフェース95に電気的に接続されている。空燃比センサ48は、そこに到来する排気ガスの空燃比に対応する出力値を出力する。この出力値は、電子制御装置90に入力される。電子制御装置90は、この出力値に基づいて空燃比センサ48に到来する排気ガスの空燃比を算出する。したがって、空燃比センサ48は、そこに到来する排気ガスの空燃比を検出するセンサであると言える。なお、空燃比センサ48は、そこに到来する排気ガスの空燃比を検出するセンサであれば特定のセンサに制限されず、たとえば、空燃比センサ48として、図2(B)に示されている出力特性を有するいわゆる起電力式の酸素濃度センサを採用することができる。この酸素濃度センサは、図2(B)に示されているように、そこに到来する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチであるときに比較的大きい一定の電圧値を出力値として出力し、そこに到来する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンであるときに比較的小さい一定の電圧値を出力値として出力する。そして、この酸素濃度センサは、そこに到来する排気ガスの空燃比が理論空燃比であるときに上記比較的大きい一定の電圧値と上記比較的小さい一定の電圧値との中間の電圧値を出力値として出力する。したがって、この酸素濃度センサの出力値は、そこに到来する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比から理論空燃比よりもリーンな空燃比に変化するとき、上記比較的大きい一定の電圧値から上記比較的小さい一定の電圧値まで上記中間の電圧値を経由して一気に小さくなる。一方、この酸素濃度センサの出力値は、そこに到来する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比から理論空燃比よりもリッチな空燃比に変化するとき、上記比較的小さい一定の電圧値から上記比較的大きい一定の電圧値まで上記中間の電圧値を経由して一気に大きくなる。
温度センサ47は、触媒コンバータ44に取り付けられている。また、温度センサ47は、電子制御装置90のインターフェース95に電気的に接続されている。温度センサ47は、触媒45の温度に対応する出力値を出力する。この出力値は、電子制御装置90に入力される。電子制御装置90は、この出力値に基づいて触媒45の温度を算出する。したがって、温度センサ47は、触媒45の温度を検出するセンサであると言える。
アクセルペダル踏込量センサ81は、アクセルペダル80に接続されている。また、アクセルペダル踏込量センサ81は、電子制御装置90のインターフェース95に電気的に接続されている。アクセルペダル踏込量センサ81は、アクセルペダル80の踏込量に対応する出力値を出力する。この出力値は、電子制御装置90に入力される。電子制御装置90は、この出力値に基づいてアクセルペダル80の踏込量、ひいては、要求機関トルクを算出する。
次に、第1実施形態の内燃機関の空燃比の制御について説明する。なお、以下の説明において「活性元素固溶度」とは「触媒の活性元素のうち触媒の担体に固溶している活性元素の割合」を意味し、「目標固溶度」とは「活性元素固溶度として目標とする活性元素固溶度」を意味し、「燃料噴射量」とは「燃料噴射弁から噴射される燃料の量」を意味する。
第1実施形態では、理論空燃比制御とリーン空燃比制御とリッチ空燃比制御とが選択的に実行可能である。ここで、理論空燃比制御とは、燃焼室に形成される混合気の空燃比(以下、燃焼室に形成される混合気の空燃比を単に「混合気の空燃比」という)が理論空燃比になり、したがって、触媒に流入する排気ガスの空燃比(以下、触媒に流入する排気ガスの空燃比を「触媒流入排気空燃比」という)が理論空燃比になるように燃料噴射量を制御する制御である。また、リーン空燃比制御とは、混合気の空燃比が理論空燃比よりも大きい空燃比(すなわち、理論空燃比よりもリーンな空燃比)になり、したがって、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりも大きい空燃比になるように燃料噴射量を減量する制御である。また、リッチ空燃比制御とは、混合気の空燃比が理論空燃比よりも小さい空燃比(すなわち、理論空燃比よりもリッチな空燃比)になり、したがって、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりも小さい空燃比になるように燃料噴射量を増量する制御である。
そして、第1実施形態では、活性元素固溶度が目標固溶度よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度以上であるときには、リーン空燃比制御が実行される。また、活性元素固溶度が目標固溶度よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度以上であるときには、リッチ空燃比制御が実行される。また、活性元素固溶度が目標固溶度に一致しているとき、あるいは、活性元素固溶度が目標固溶度よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度よりも低いとき、あるいは、活性元素固溶度が目標固溶度よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度よりも低いときには、理論空燃比制御が実行される。
次に、第1実施形態の理論空燃比制御について説明する。なお、以下の説明において「機関運転状態」とは「内燃機関の運転状態」を意味し、「燃料噴射量」とは「燃料噴射弁から噴射される燃料の量」を意味し、「目標空燃比」とは「混合気の空燃比として目標とする空燃比」を意味し、「上流側検出空燃比」とは「上流側空燃比センサによって検出される排気ガスの空燃比」を意味し、「下流側検出空燃比」とは「下流側空燃比センサによって検出される排気ガスの空燃比」を意味する。
理論空燃比制御では、機関運転状態に応じて最適なスロットル弁開度が実験等によって予め求められる。そして、これら求められたスロットル弁開度が図3(A)に示されているように機関回転数NEと要求機関トルクTQとの関数のマップの形で基準スロットル弁開度Dthbとして電子制御装置に記憶されている。そして、機関運転中、その時々の機関回転数NEおよび要求機関トルクTQに対応する基準スロットル弁開度Dthbが図3(A)のマップから取得される。そして、斯くして取得された基準スロットル弁開度Dthbが目標スロットル弁開度に設定される。
また、理論空燃比制御では、次式1に従って基準燃料噴射量Qbが算出され、次式2に従って目標燃料噴射量Qtが算出され、斯くして算出される目標燃料噴射量が目標燃料噴射量に設定される。なお、次式1において「Ga」は「吸入空気量」、「NE」は「機関回転数」であり、「AFt」は「目標空燃比」であり、次式2において「Qb」は「式1に従って算出される基準燃料噴射量」であり、「Kf」は「補正係数」である。なお、理論空燃比制御では、目標空燃比は、理論空燃比に設定されている。
Qb=(Ga/NE)×(1/AFt) …(1)
Qt=Qb×Kf …(2)
なお、理論空燃比制御において用いられる上式2の補正係数Kfは、以下のように設定される。すなわち、上流側検出空燃比が理論空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比である間(すなわち、上流側検出空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比であり、したがって、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比である間)は、補正係数Kfは、比較的小さい一定値(以下この値を「一定増大値」という)ずつ徐々に大きくされる。これによれば、目標燃料噴射量が徐々に増量されるので、混合気の空燃比が徐々に小さくなって理論空燃比に近づくことになる。一方、上流側検出空燃比が理論空燃比(=目標空燃比)よりも小さい空燃比である間(すなわち、上流側検出空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比であり、したがって、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比である間)は、補正係数Kfは、比較的小さい一定値(以下この値を「一定減少値」という)ずつ徐々に小さくされる。これによれば、目標燃料噴射量が徐々に減量されるので、混合気の空燃比が徐々に大きくなって理論空燃比に近づくことになる。
また、上流側検出空燃比が理論空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比から理論空燃比よりも小さい空燃比に変化したとき(すなわち、上流側検出空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比から理論空燃比よりもリッチな空燃比に変化し、したがって、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比から理論空燃比よりもリッチな空燃比に変化したとき)には、補正係数Kfは、比較的大きい値(以下この値を「スキップ減少値」という)だけ小さくされる。これによれば、目標燃料噴射量が一気に減量されるので、混合気の空燃比が一気に大きくなって理論空燃比(=目標空燃比)に一気に近づくことになる。一方、上流側検出空燃比が理論空燃比(=目標空燃比)よりも小さい空燃比から理論空燃比よりも大きい空燃比に変化したとき(すなわち、上流側検出空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比から理論空燃比よりもリーンな空燃比に変化し、したがって、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比から理論空燃比よりもリーンな空燃比に変化したとき)には、補正係数Kfは、比較的大きい値(以下この値を「スキップ増大値」という)だけ大きくされる。これによれば、目標燃料噴射量が一気に増量されるので、混合気の空燃比が一気に小さくなって理論空燃比(=目標空燃比)に一気に近づくことになる。
なお、理論空燃比制御において用いられるスキップ減少値およびスキップ増大値は、以下のように設定される。すなわち、下流側検出空燃比が理論空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比である間(すなわち、下流側検出空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比である間)は、スキップ増大値は、比較的小さい一定値(以下この値を「所定補正値」という)ずつ大きくされる。一方、下流側検出空燃比が理論空燃比(=目標空燃比)よりも小さい空燃比である間(すなわち、下流側検出空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比である間)は、スキップ増大値は、上記所定補正値ずつ小さくされる。そして、少なくとも零以上の予め定められた値(以下この値を「参照値」という)から上述したように算出されるスキップ増大値を減算することによってスキップ減少値が算出される。なお、上述したように算出されるスキップ増大値が参照値よりも小さいときには、スキップ増大値は、参照値に設定される(つまり、スキップ増大値が参照値にガードされる)。
なお、第1実施形態の理論空燃比制御では、上流側検出空燃比が理論空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比である間、補正係数が一定増大値ずつ徐々に大きくされるとともに、上流側検出空燃比が理論空燃比よりも小さい空燃比である間、補正係数が一定減少値ずつ徐々に小さくされる。しかしながら、これに代えて、上流側検出空燃比が理論空燃比(=目標空燃比)以上の空燃比である間、補正係数を一定増大値ずつ徐々に大きくするとともに、上流側検出空燃比が理論空燃比よりも小さい空燃比である間、補正係数を一定減少値ずつ徐々に小さくするようにしてもよいし、上流側検出空燃比が理論空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比である間、補正係数を一定増大値ずつ徐々に大きくするとともに、上流側検出空燃比が理論空燃比以下の空燃比である間、補正係数を一定減少値ずつ徐々に小さくするようにしてもよい。
また、第1実施形態の理論空燃比制御では、上流側検出空燃比が理論空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比から理論空燃比よりも小さい空燃比に変化したときに、補正係数がスキップ減少値だけ小さくされるとともに、上流側検出空燃比が理論空燃比よりも小さい空燃比から理論空燃比よりも大きい空燃比に変化したときに、補正係数がスキップ増大値だけ大きくされる。しかしながら、これに代えて、上流側検出空燃比が理論空燃比(=目標空燃比)以上の空燃比から理論空燃比よりも小さい空燃比に変化したときに、補正係数をスキップ減少値だけ小さくするとともに、上流側検出空燃比が理論空燃比よりも小さい空燃比から理論空燃比以上の空燃比に変化したときに、補正係数をスキップ増大値だけ大きくするようにしてもよいし、上流側検出空燃比が理論空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比から理論空燃比以下の空燃比に変化したときに、補正係数をスキップ減少値だけ小さくするとともに、上流側検出空燃比が理論空燃比以下の空燃比から理論空燃比よりも大きい空燃比に変化したときに、補正係数をスキップ増大値だけ大きくするようにしてもよい。
また、第1実施形態の理論空燃比制御では、下流側検出空燃比が理論空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比である間、スキップ増大値が所定補正値ずつ大きくされるとともに、下流側検出空燃比が理論空燃比よりも小さい空燃比である間、スキップ増大値が所定補正値ずつ小さくされる。しかしながら、これに代えて、下流側検出空燃比が理論空燃比(=目標空燃比)以上の空燃比である間、スキップ増大値を所定補正値ずつ大きくするとともに、下流側検出空燃比が理論空燃比よりも小さい空燃比である間、スキップ増大値を所定補正値ずつ小さくするようにしてもよいし、下流側検出空燃比が理論空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比である間、スキップ増大値を所定補正値ずつ大きくするとともに、下流側検出空燃比が理論空燃比以下の空燃比である間、スキップ増大値を所定補正値ずつ小さくするようにしてもよい。
次に、第1実施形態のリーン空燃比制御について説明する。なお、以下の説明において「リーン空燃比」とは「理論空燃比よりもリーンな空燃比」を意味する。
リーン空燃比制御では、理論空燃比制御と同様にして目標スロットル弁開度が設定されるとともに、上式1および上式2に従って目標燃料噴射量が設定される。なお、リーン空燃比制御では、上式1の目標空燃比AFtは、予め定められたリーン空燃比(以下この空燃比を「所定リーン空燃比」という)に設定される。そして、リーン空燃比制御では、理論空燃比制御とは異なり、上式2の補正係数Kfは、以下のように設定される。すなわち、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比である間(すなわち、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比よりもリーンな空燃比であり、したがって、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比である間)は、補正係数Kfは、比較的小さい一定値(以下この値を「一定増大値」という)ずつ徐々に大きくされる。これによれば、目標燃料噴射量が徐々に増量されるので、混合気の空燃比が徐々に小さくなって所定リーン空燃比に近づくことになる。一方、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比(=目標空燃比)よりも小さい空燃比である間(すなわち、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比よりもリッチな空燃比であり、したがって、混合気の空燃比が所定リーン空燃比よりもリッチな空燃比である間)は、補正係数Kfは、比較的小さい一定値(以下この値を「一定減少値」という)ずつ徐々に小さくされる。これによれば、目標燃料噴射量が徐々に減量されるので、混合気の空燃比が徐々に大きくなって所定リーン空燃比に近づくことになる。
また、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比から所定リーン空燃比よりも小さい空燃比に変化したとき(すなわち、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比よりもリーンな空燃比から所定リーン空燃比よりもリッチな空燃比に変化し、したがって、混合気の空燃比が所定リーン空燃比よりもリーンな空燃比から所定リーン空燃比よりもリッチな空燃比に変化したとき)には、補正係数Kfは、比較的大きい値(以下この値を「スキップ減少値」という)だけ小さくされる。これによれば、目標燃料噴射量が一気に減量されるので、混合気の空燃比が一気に大きくなって所定リーン空燃比(=目標空燃比)に一気に近づくことになる。一方、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比(=目標空燃比)よりも小さい空燃比から所定リーン空燃比よりも大きい空燃比に変化したとき(すなわち、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比よりもリッチな空燃比から所定リーン空燃比よりもリーンな空燃比に変化し、したがって、混合気の空燃比が所定リーン空燃比よりもリッチな空燃比から所定リーン空燃比よりもリーンな空燃比に変化したとき)には、補正係数Kfは、比較的大きい値(以下この値を「スキップ増大値」という)だけ大きくされる。これによれば、目標燃料噴射量が一気に増量されるので、混合気の空燃比が一気に小さくなって所定リーン空燃比(=目標空燃比)に一気に近づくことになる。
なお、リーン空燃比制御において用いられるスキップ減少値およびスキップ増大値は、以下のように設定される。すなわち、下流側検出空燃比が所定リーン空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比である間(すなわち、下流側検出空燃比が所定リーン空燃比よりもリーンな空燃比である間)は、スキップ増大値は、比較的小さい一定値(以下この値を「所定補正値」という)ずつ大きくされる。一方、下流側検出空燃比が所定リーン空燃比(=目標空燃比)よりも小さい空燃比である間(すなわち、下流側検出空燃比が所定リーン空燃比よりもリッチな空燃比である間)は、スキップ増大値は、上記所定補正値ずつ小さくされる。そして、少なくとも零以上の予め定められた値(以下この値を「参照スキップ値」という)から上述したように算出されるスキップ増大値を減算することによってスキップ減少値が算出される。なお、上述したように算出されるスキップ増大値が参照スキップ値よりも小さいときには、スキップ増大値は、参照スキップ値に設定される(つまり、スキップ増大値が参照スキップ値にガードされる)。
なお、第1実施形態のリーン空燃比制御では、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比である間、補正係数が一定増大値ずつ徐々に大きくされるとともに、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比よりも小さい空燃比である間、補正係数が一定減少値ずつ徐々に小さくされる。しかしながら、これに代えて、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比(=目標空燃比)以上の空燃比である間、補正係数を一定増大値ずつ徐々に大きくするとともに、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比よりも小さい空燃比である間、補正係数を一定減少値ずつ徐々に小さくするようにしてもよいし、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比である間、補正係数を一定増大値ずつ徐々に大きくするとともに、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比以下の空燃比である間、補正係数を一定減少値ずつ徐々に小さくするようにしてもよい。
また、第1実施形態のリーン空燃比制御では、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比から所定リーン空燃比よりも小さい空燃比に変化したときに、補正係数がスキップ減少値だけ小さくされるとともに、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比よりも小さい空燃比から所定リーン空燃比よりも大きい空燃比に変化したときに、補正係数がスキップ増大値だけ大きくされる。しかしながら、これに代えて、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比(=目標空燃比)以上の空燃比から所定リーン空燃比よりも小さい空燃比に変化したときに、補正係数をスキップ減少値だけ小さくするとともに、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比よりも小さい空燃比から所定リーン空燃比以上の空燃比に変化したときに、補正係数をスキップ増大値だけ大きくするようにしてもよいし、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比から所定リーン空燃比以下の空燃比に変化したときに、補正係数をスキップ減少値だけ小さくするとともに、上流側検出空燃比が所定リーン空燃比以下の空燃比から所定リーン空燃比よりも大きい空燃比に変化したときに、補正係数をスキップ増大値だけ大きくするようにしてもよい。
また、第1実施形態のリーン空燃比制御では、下流側検出空燃比が所定リーン空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比である間、スキップ増大値が所定補正値ずつ大きくされるとともに、下流側検出空燃比が所定リーン空燃比よりも小さい空燃比である間、スキップ増大値が所定補正値ずつ小さくされる。しかしながら、これに代えて、下流側検出空燃比が所定リーン空燃比(=目標空燃比)以上の空燃比である間、スキップ増大値を所定補正値ずつ大きくするとともに、下流側検出空燃比が所定リーン空燃比よりも小さい空燃比である間、スキップ増大値を所定補正値ずつ小さくするようにしてもよいし、下流側検出空燃比が所定リーン空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比である間、スキップ増大値を所定補正値ずつ大きくするとともに、下流側検出空燃比が所定リーン空燃比以下の空燃比である間、スキップ増大値を所定補正値ずつ小さくするようにしてもよい。
なお、リーン空燃比制御において用いられる一定減少値は、理論空燃比制御において用いられる一定減少値と同じ値であっても異なる値であってもよい。また、リーン空燃比制御において用いられる一定増大値は、理論空燃比制御において用いられる一定増大値と同じ値であっても異なる値であってもよい。また、リーン空燃比制御において用いられる所定補正値は、理論空燃比制御において用いられる所定補正値と同じ値であっても異なる値であってもよい。また、リーン空燃比制御において用いられる参照スキップ値は、理論空燃比制御において用いられる参照スキップ値と同じ値であっても異なる値であってもよい。
次に、第1実施形態のリッチ空燃比制御について説明する。なお、以下の説明において「リッチ空燃比」とは「理論空燃比よりもリッチな空燃比」を意味する。
リッチ空燃比制御では、理論空燃比制御と同様にして目標スロットル弁開度が設定されるとともに、上式1および上式2に従って目標燃料噴射量が設定される。なお、リッチ空燃比制御では、上式1の目標空燃比AFtは、予め定められたリッチ空燃比(以下この空燃比を「所定リッチ空燃比」という)に設定される。そして、リッチ空燃比制御では、理論空燃比制御とは異なり、上式2の補正係数Kfは、以下のように設定される。すなわち、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比である間(すなわち、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比よりもリーンな空燃比であり、したがって、混合気の空燃比が所定リッチ空燃比よりもリーンな空燃比である間)は、補正係数Kfは、比較的小さい一定値(以下この値を「一定増大値」という)ずつ徐々に大きくされる。これによれば、目標燃料噴射量が徐々に増量されるので、混合気の空燃比が徐々に小さくなって所定リッチ空燃比に近づくことになる。一方、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比(=目標空燃比)よりも小さい空燃比である間(すなわち、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比よりもリッチな空燃比であり、したがって、混合気の空燃比が所定リッチ空燃比よりもリッチな空燃比である間)は、補正係数Kfは、比較的小さい一定値(以下この値を「一定減少値」という)ずつ徐々に小さくされる。これによれば、目標燃料噴射量が徐々に減量されるので、混合気の空燃比が徐々に大きくなって所定リッチ空燃比に近づくことになる。
また、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比から所定リッチ空燃比よりも小さい空燃比に変化したとき(すなわち、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比よりもリーンな空燃比から所定リッチ空燃比よりもリッチな空燃比に変化し、したがって、混合気の空燃比が所定リッチ空燃比よりもリーンな空燃比から所定リッチ空燃比よりもリッチな空燃比に変化したとき)には、補正係数Kfは、比較的大きい値(以下この値を「スキップ減少値」という)だけ小さくされる。これによれば、目標燃料噴射量が一気に減量されるので、混合気の空燃比が一気に大きくなって所定リッチ空燃比(=目標空燃比)に一気に近づくことになる。一方、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比(=目標空燃比)よりも小さい空燃比から所定リッチ空燃比よりも大きい空燃比に変化したとき(すなわち、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比よりもリッチな空燃比から所定リッチ空燃比よりもリーンな空燃比に変化し、したがって、混合気の空燃比が所定リッチ空燃比よりもリッチな空燃比から所定リッチ空燃比よりもリーンな空燃比に変化したとき)には、補正係数Kfは、比較的大きい値(以下この値を「スキップ増大値」という)だけ大きくされる。これによれば、目標燃料噴射量が一気に増量されるので、混合気の空燃比が一気に小さくなって所定リッチ空燃比(=目標空燃比)に一気に近づくことになる。
なお、リッチ空燃比制御において用いられるスキップ減少値およびスキップ増大値は、以下のように設定される。すなわち、下流側検出空燃比が所定リッチ空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比である間(すなわち、下流側検出空燃比が所定リッチ空燃比よりもリーンな空燃比である間)は、スキップ増大値は、比較的小さい一定値(以下この値を「所定補正値」という)ずつ大きくされる。一方、下流側検出空燃比が所定リッチ空燃比(=目標空燃比)よりも小さい空燃比である間(すなわち、下流側検出空燃比が所定リッチ空燃比よりもリッチな空燃比である間)は、スキップ増大値は、上記所定補正値ずつ小さくされる。そして、少なくとも零以上の予め定められた値(以下この値を「参照スキップ値」という)から上述したように算出されるスキップ増大値を減算することによってスキップ減少値が算出される。なお、上述したように算出されるスキップ増大値が参照スキップ値よりも小さいときには、スキップ増大値は、参照スキップ値に設定される(つまり、スキップ増大値が参照スキップ値にガードされる)。
なお、第1実施形態のリッチ空燃比制御では、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比である間、補正係数が一定増大値ずつ徐々に大きくされるとともに、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比よりも小さい空燃比である間、補正係数が一定減少値ずつ徐々に小さくされる。しかしながら、これに代えて、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比(=目標空燃比)以上の空燃比である間、補正係数を一定増大値ずつ徐々に大きくするとともに、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比よりも小さい空燃比である間、補正係数を一定減少値ずつ徐々に小さくするようにしてもよいし、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比である間、補正係数を一定増大値ずつ徐々に大きくするとともに、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比以下の空燃比である間、補正係数を一定減少値ずつ徐々に小さくするようにしてもよい。
また、第1実施形態のリッチ空燃比制御では、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比から所定リッチ空燃比よりも小さい空燃比に変化したときに、補正係数がスキップ減少値だけ小さくされるとともに、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比よりも小さい空燃比から所定リッチ空燃比よりも大きい空燃比に変化したときに、補正係数がスキップ増大値だけ大きくされる。しかしながら、これに代えて、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比(=目標空燃比)以上の空燃比から所定リッチ空燃比よりも小さい空燃比に変化したときに、補正係数をスキップ減少値だけ小さくするとともに、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比よりも小さい空燃比から所定リッチ空燃比以上の空燃比に変化したときに、補正係数をスキップ増大値だけ大きくするようにしてもよいし、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比から所定リッチ空燃比以下の空燃比に変化したときに、補正係数をスキップ減少値だけ小さくするとともに、上流側検出空燃比が所定リッチ空燃比以下の空燃比から所定リッチ空燃比よりも大きい空燃比に変化したときに、補正係数をスキップ増大値だけ大きくするようにしてもよい。
また、第1実施形態のリッチ空燃比制御では、下流側検出空燃比が所定リッチ空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比である間、スキップ増大値が所定補正値ずつ大きくされるとともに、下流側検出空燃比が所定リッチ空燃比よりも小さい空燃比である間、スキップ増大値が所定補正値ずつ小さくされる。しかしながら、これに代えて、下流側検出空燃比が所定リッチ空燃比(=目標空燃比)以上の空燃比である間、スキップ増大値を所定補正値ずつ大きくするとともに、下流側検出空燃比が所定リッチ空燃比よりも小さい空燃比である間、スキップ増大値を所定補正値ずつ小さくするようにしてもよいし、下流側検出空燃比が所定リッチ空燃比(=目標空燃比)よりも大きい空燃比である間、スキップ増大値を所定補正値ずつ大きくするとともに、下流側検出空燃比が所定リッチ空燃比以下の空燃比である間、スキップ増大値を所定補正値ずつ小さくするようにしてもよい。
なお、リッチ空燃比制御において用いられる一定減少値は、理論空燃比制御において用いられる一定減少値またはリーン空燃比制御において用いられる一定減少値と同じ値であっても異なる値であってもよい。また、リッチ空燃比制御において用いられる一定増大値は、理論空燃比制御において用いられる一定増大値またはリーン空燃比制御において用いられる一定増大値と同じ値であっても異なる値であってもよい。また、リッチ空燃比制御において用いられる所定補正値は、理論空燃比制御において用いられる所定補正値またはリーン空燃比制御において用いられる所定補正値と同じ値であっても異なる値であってもよい。また、リッチ空燃比制御において用いられる参照スキップ値は、理論空燃比制御において用いられる参照スキップ値またはリーン空燃比制御において用いられる参照スキップ値と同じ値であっても異なる値であってもよい。
次に、第1実施形態のスロットル弁の制御について説明する。なお、以下で説明するスロットル弁の制御は、理論空燃比制御、リーン空燃比制御、および、リッチ空燃比制御の全てに共通の制御である。第1実施形態では、機関運転中、上述したように設定された目標スロットル弁開度だけスロットル弁を開弁させるためにスロットル弁アクチュエータに供給されるべき制御信号が算出される。そして、斯くして算出された制御信号がスロットル弁アクチュエータに供給される。これにより、スロットル弁が目標スロットル弁開度だけ開弁せしめられる。
次に、第1実施形態の燃料噴射弁の制御について説明する。なお、以下で説明する燃料噴射弁の制御は、理論空燃比制御、リーン空燃比制御、および、リッチ空燃比制御の全てに共通の制御である。第1実施形態では、機関運転中、上述したように設定された目標燃料噴射量の燃料を燃料噴射弁から噴射させるために燃料噴射弁に供給されるべき指令信号が算出されるとともに、目標燃料噴射タイミングが設定される(この目標燃料噴射タイミングの設定については後述する)。そして、斯くして算出された指令信号が上記設定された目標燃料噴射タイミングにおいて燃料噴射弁に供給される。これにより、目標燃料噴射量の燃料が目標燃料噴射タイミングにおいて燃料噴射弁から噴射される。
次に、第1実施形態の目標燃料噴射タイミングの設定について説明する。なお、以下で説明する目標燃料噴射タイミングの設定方法は、理論空燃比制御、リーン空燃比制御、および、リッチ空燃比制御の全てに共通の方法である。第1実施形態では、機関運転状態に応じて最適な燃料噴射タイミングが実験等によって予め求められる。そして、これら求められた燃料噴射タイミングが図3(B)に示されているように機関回転数NEと要求機関トルクTQとの関数のマップの形で基準燃料噴射タイミングTinjbとして電子制御装置に記憶されている。そして、機関運転中、その時々の機関回転数NEおよび要求機関トルクTQに対応する基準燃料噴射タイミングTinjbが図3(B)のマップから取得される。そして、斯くして取得された基準燃料噴射タイミングTinjbが目標燃料噴射タイミングに設定される。
次に、第1実施形態の点火栓の制御について説明する。なお、以下で説明する点火栓の制御は、理論空燃比制御、リーン空燃比制御、および、リッチ空燃比制御の全てに共通の制御である。第1実施形態では、機関運転中、目標点火タイミングが設定される(この目標点火タイミングの設定については後述する)。そして、点火栓を作動させるための指令信号が上記設定された目標点火タイミングにおいて点火栓に供給される。これにより、燃焼室内の燃料が目標点火タイミングにおいて点火される。
次に、第1実施形態の目標点火タイミングの設定について説明する。なお、以下で説明する目標点火タイミングの設定方法は、理論空燃比制御、リーン空燃比制御、および、リッチ空燃比制御の全てに共通の設定方法である。第1実施形態では、機関運転状態に応じて最適な点火タイミングが実験等によって予め求められる。そして、これら求められた点火タイミングが図3(C)に示されているように機関回転数NEと要求機関トルクTQrとの関数のマップの形で基準点火タイミングTignbとして電子制御装置に記憶されている。そして、機関運転中、その時々の機関回転数NEおよび要求機関トルクTQrに対応する基準点火タイミングTignbが図2(C)のマップから取得される。そして、斯くして取得された基準点火タイミングTignbが目標点火タイミングに設定される。
なお、第1実施形態では、活性元素固溶度が目標固溶度よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度以上であるときに、リーン空燃比制御が実行される。しかしながら、これに代えて、活性元素固溶度として目標とする活性元素固溶度の範囲を目標固溶度範囲として設定しておき、活性元素固溶度が目標固溶度範囲の下限値よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度以上であるときに、リーン空燃比制御を実行するようにしてもよい。なお、この場合、活性元素固溶度が目標固溶度範囲内にあるとき、あるいは、活性元素固溶度が目標固溶度範囲の下限値よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度よりも低いときに、理論空燃比制御が実行される。また、第1実施形態では、活性元素固溶度が目標固溶度よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度以上であるときに、リッチ空燃比制御が実行される。しかしながら、これに代えて、活性元素固溶度として目標とする活性元素固溶度の範囲を目標固溶度範囲として設定しておき、活性元素固溶度が目標固溶度範囲の上限値よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度以上であるときに、リッチ空燃比制御を実行するようにしてもよい。なお、この場合、活性元素固溶度が目標固溶度範囲内にあるとき、あるいは、活性元素固溶度が目標固溶度範囲の上限値よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度よりも低いときに、理論空燃比制御が実行される。
第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、機関運転中、触媒温度は、所定固溶温度以上になったり、所定析出温度以上になったりするし、触媒流入排気空燃比(すなわち、触媒に流入する排気ガスの空燃比)は、理論空燃比よりもリーンな空燃比になったり、理論空燃比よりもリッチな空燃比になったりし、その結果、触媒の内部雰囲気は、酸化雰囲気になったり、還元雰囲気になったりする。ここで、第1実施形態の触媒は、その温度が所定固溶温度以上であり且つその内部雰囲気が酸化雰囲気であるときに活性元素が担体に固溶し、その温度が所定析出温度以上であり且つその内部雰囲気が還元雰囲気であるときに活性元素が担体から析出するという性質を有する。したがって、機関運転中、触媒では、担体への活性元素の固溶と担体からの活性元素の析出とが繰り返し行われる可能性がある。つまり、機関運転中の触媒温度および触媒流入排気空燃比の変化に起因して析出活性元素(すなわち、担体から析出している活性元素)の量が変化し、ひいては、触媒の浄化能力(すなわち、触媒が排気ガス中の成分を浄化する能力)が変化する。さらに、活性元素使用程度(すなわち、活性元素が排気ガス中の成分の活性化に使用された程度)が増大すると、活性元素が劣化することがあり、その結果、活性元素の活性能力(すなわち、排気ガス中の成分の酸化反応活性または還元反応活性を高める活性元素の能力)が低下することがある。言い方を変えれば、触媒使用程度(すなわち、触媒が排気ガス中の成分の浄化に使用された程度)が増大すると、触媒の浄化能力が低下することがある。つまり、機関運転中の活性元素の活性能力の変化に起因して触媒の浄化能力が変化する。
したがって、内燃機関に所期の性能を発揮させるためには、機関運転中の触媒の浄化能力の変化を考慮したうえで内燃機関に所期の性能を発揮させることができるように、機関制御(すなわち、内燃機関に関する制御)に用いられる制御ロジックを構築するとともに、機関制御を行う必要がある。しかしながら、機関運転中の触媒の浄化能力の変化は、機関運転の形態および触媒使用程度によって様々であるから、上述したように制御ロジックを構築したり、機関制御を行ったりすることは、非常に煩雑であると言える。一方、機関運転の形態および触媒使用程度にかかわらず、触媒の浄化能力の変化が想定されたものであれば、制御ロジックを比較的容易に構築することができ、機関制御を比較的簡便に行うことができる。
ここで、第1実施形態では、活性元素固溶度が目標固溶度よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度以上であるときに、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比に制御される。これによれば、触媒温度が所定固溶温度以上であるときに触媒の内部雰囲気が酸化雰囲気になることから、析出活性元素が担体に固溶し、その結果、活性元素固溶度が大きくなる。一方、第1実施形態では、活性元素固溶度が目標固溶度よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度以上であるときに、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比に制御される。これによれば、触媒温度が所定析出温度以上であるときに触媒の内部雰囲気が還元雰囲気になることから、固溶活性元素(すなわち、担体に固溶している活性元素)が担体から析出し、その結果、活性元素固溶度が小さくなる。斯くして、活性元素固溶度が目標固溶度に制御される。そして、これにより、析出活性元素の量が一定に維持されるのであるから、機関運転中の触媒の浄化能力を想定しやすくなる。このため、第1実施形態によれば、機関制御に用いられる制御ロジックを比較的容易に構築することができ、また、機関制御を比較的簡便に行うことができるという効果が得られる。
また、析出活性元素の量が一定に維持されることによって、機関運転中の触媒の浄化能力も一定に維持されることから、下流側検出空燃比に基づく空燃比制御に関するゲインを大きくとること、より具体的には、下流側検出空燃比に基づいて制御されるスキップ減少値およびスキップ増大値を大きくすることができるため、空燃比制御に関するロバスト性が向上するという効果も得られる。
次に、第1実施形態の空燃比制御を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図4に示されている。なお、図4のルーチンは、所定時間が経過する毎に開始されるルーチンである。
図4のルーチンが開始されると、始めに、ステップ100において、その時の活性元素固溶度Ds、その時の触媒温度Tcat、その時の要求機関トルクTQ、および、その時の機関回転数NEが取得される。次いで、ステップ101において、ステップ100で取得された活性元素固溶度Dsが目標固溶度Dstよりも小さい(Ds<Dst)か否かが判別される。ここで、Ds<Dstであると判別されたときには、ルーチンはステップ106に進む。一方、Ds<Dstではないと判別されたときには、ルーチンはステップ102に進む。
ステップ101において、Ds<Dstであると判別され、ルーチンがステップ106に進むと、ステップ100で取得された触媒温度Tcatが所定固溶温度Ts以上である(Tcat≧Ts)か否かが判別される。ここで、Tcat≧Tsであると判別されたときには、ルーチンがステップ107に進み、リーン空燃比制御が実行され、ルーチンが終了する。一方、Tcat≧Tsではないと判別されたときには、ルーチンがステップ103に進み、理論空燃比制御が実行され、ルーチンが終了する。
ステップ101においてDs<Dstではないと判別され、ルーチンがステップ102に進むと、ステップ100で取得された活性元素固溶度Dsが目標固溶度Dstよりも大きい(Ds>Dst)か否かが判別される。ここで、Ds>Dstであると判別されたときには、ルーチンはステップ104に進む。一方、Ds>Dstではないと判別されたときには、ルーチンがステップ103に進み、理論空燃比制御が実行され、ルーチンが終了する。
ステップ102においてDs>Dstであると判別され、ルーチンがステップ104に進むと、ステップ100で取得された触媒温度Tcatが所定析出温度Td以上である(Tcat≧Td)か否かが判別される。ここで、Tcat≧Tdであると判別されたときには、ルーチンがステップ105に進み、リッチ空燃比制御が実行され、ルーチンが終了する。一方、Tcat≧Tdではないと判別されたときには、ルーチンがステップ103に進み、理論空燃比制御が実行され、ルーチンが終了する。
次に、第1実施形態の理論空燃比制御、リーン空燃比制御、および、リッチ空燃比制御を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図5および図6に示されている。なお、図5および図6のルーチンは、活性元素固溶度が目標固溶度よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度以上であるか否かの判定が完了したとき、あるいは、活性元素固溶度が目標固溶度よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度以上であるか否かの判定が完了したときに実行されるルーチンであり、たとえば、図4のステップ103、または、ステップ105、または、ステップ107で実行されるルーチンである。
図5および図6のルーチンが開始されると、始めに、ステップ200において、その時の上流側検出空燃比AFu、その時の吸入空気量Ga、その時の要求機関トルクTQ、その時の機関回転数NE、および、その時の目標空燃比AFtが取得される。なお、ここで取得される目標空燃比AFtは、理論空燃比制御が実行されるとき(すなわち、活性元素固溶度が目標固溶度に一致しているとき、あるいは、活性元素固溶度が目標固溶度よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度よりも低いとき、あるいは、活性元素固溶度が目標固溶度よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度よりも低いとき)には、理論空燃比であり、リーン空燃比制御が実行されるとき(すなわち、活性元素固溶度が目標固溶度よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度以上であるとき)には、所定リーン空燃比であり、リッチ空燃比制御が実行されるとき(すなわち、活性元素固溶度が目標固溶度よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度以上であるとき)には、所定リッチ空燃比である。
次いで、ステップ201において、ステップ200で取得された上流側検出空燃比AFuがステップ200で取得された目標空燃比AFt以上である(AFu≧AFt)か否かが判別される。ここで、AFu≧AFtであると判別されたときには、ルーチンはステップ202に進む。一方、AFu≧AFtではないと判別されたときには、ルーチンはステップ205に進む。
ステップ201においてAFu≧AFtであると判別され、ルーチンがステップ202に進むと、上流側検出空燃比が反転した直後であるか否か(すなわち、今回実行されるステップ202の処理が上流側検出空燃比が目標空燃比よりも小さい空燃比から目標空燃比以上の空燃比に変化してから初めて実行される処理であるか否か)が判別される。ここで、上流側検出空燃比が反転した直後であると判別されたときには、ルーチンがステップ203に進み、現在の補正係数Kfにステップ増大値Ksrを加算することによって新たな補正係数Kfが算出され、ルーチンがステップ208に進む。一方、上流側検出空燃比が反転した直後ではないと判別されたときには、ルーチンがステップ204に進み、現在の補正係数Kfに一定増大値Kcrを加算することによって新たな補正係数Kfが算出され、ルーチンがステップ208に進む。
ステップ201においてAFu≧AFtではないと判別され、ルーチンがステップ205に進むと、上流側検出空燃比が反転した直後であるか否か(すなわち、今回実行されるステップ208の処理が上流側検出空燃比が目標空燃比以上の空燃比から目標空燃比よりも小さい空燃比に変化してから初めて実行される処理であるか否か)が判別される。ここで、上流側検出空燃比が反転した直後であると判別されたときには、ルーチンがステップ206に進み、現在の補正係数Kfからステップ減少値Kslを減算することによって新たな補正係数Kfが算出され、ルーチンがステップ208に進む。一方、上流側検出空燃比が反転した直後ではないと判別されたときには、ルーチンがステップ207に進み、現在の補正係数Kfから一定減少値Kclを減算することによって新たな補正係数Kfが算出され、ルーチンがステップ208に進む。
ステップ208では、ステップ200で取得された吸入空気量Ga、機関回転数NE、および、目標空燃比AFtを上式1に適用することによって基準燃料噴射量Qbが算出される。次いで、ステップ209において、ルーチンがステップ203を経由してステップ209に進んだ場合には、ステップ203で算出された新たな補正係数Kfおよびステップ208で算出された基準燃料噴射量Qbを上式2に適用することによって目標燃料噴射量Qtが算出され、ルーチンがステップ204を経由してステップ209に進んだ場合には、ステップ204で算出された新たな補正係数Kfおよびステップ208で算出された基準燃料噴射量Qbを上式2に適用することによって目標燃料噴射量Qtが算出され、ルーチンがステップ206を経由してステップ209に進んだ場合には、ステップ206で算出された新たな補正係数Kfおよびステップ208で算出された基準燃料噴射量Qbを上式2に適用することによって目標燃料噴射Qtが算出され、ルーチンがステップ207を経由してステップ209に進んだ場合には、ステップ207で算出された新たな補正係数Kfおよびステップ208で算出された基準燃料噴射量Qbを上式2に適用することによって目標燃料噴射量Qtが算出される。
次いで、ステップ210において、ステップ209で算出された目標燃料噴射量Qtが目標燃料噴射量Qtに設定される。次いで、ステップ211において、ステップ200で取得された要求機関トルクTQおよび機関回転数NEを用いて図3(A)のマップから基準スロットル弁開度Dthbが取得される。次いで、ステップ212において、ステップ211で取得された基準スロットル弁開度Dthbが目標スロットル弁開度Dthtに設定され、ルーチンが終了する。
次に、第1実施形態のスキップ増大値およびスキップ減少値の設定を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図7に示されている。なお、図7のルーチンは、所定時間が経過する毎に開始されるルーチンである。
図7のルーチンが開始されると、始めに、ステップ300において、その時の下流側検出空燃比AFd、その時の目標空燃比AFt、その時の所定補正値ΔKs、および、その時の参照ステップ値Ksrが取得される。なお、ここで取得される目標空燃比AFtは、理論空燃比制御が実行されるとき(すなわち、活性元素固溶度が目標固溶度に一致しているとき、あるいは、活性元素固溶度が目標固溶度よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度よりも低いとき、あるいは、活性元素固溶度が目標固溶度よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度よりも低いとき)には、理論空燃比であり、リーン空燃比制御が実行されるとき(すなわち、活性元素固溶度が目標固溶度よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度以上であるとき)には、所定リーン空燃比であり、リッチ空燃比制御が実行されるとき(すなわち、活性元素固溶度が目標固溶度よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度以上であるとき)には、所定リッチ空燃比である。また、ステップ300で取得される所定補正値ΔKsは、理論空燃比制御が実行されるときには、理論空燃比制御において用いられるべき所定補正値であり、リーン空燃比制御が実行されるときには、リーン空燃比制御において用いられるべき所定補正値であり、リッチ空燃比制御が実行されるときには、リッチ空燃比制御において用いられるべき所定補正値である。また、ステップ300で取得される参照スキップ値Ksrは、理論空燃比制御が実行されるときには、理論空燃比制御において用いられるべき参照スキップ値であり、リーン空燃比制御が実行されるときには、リーン空燃比制御において用いられるべき参照スキップ値であり、リッチ空燃比制御が実行されるときには、リッチ空燃比制御において用いられるべき参照スキップ値である。
次いで、ステップ301において、ステップ300で取得された下流側検出空燃比AFdが目標空燃比AFt以上である(AFd≧AFt)か否かが判別される。ここで、AFd≧AFtであると判別されたときには、ルーチンがステップ302に進み、現在のスキップ増大値Ksrに所定補正値ΔKsを加算することによって新たなスキップ増大値Ksrが算出され、ルーチンがステップ303に進む。一方、AFd≧AFtではないと判別されたときには、ルーチンがステップ307に進み、現在のスキップ増大値Ksrから所定補正値ΔKsを減算することによって新たなスキップ増大値Ksrが算出され、ルーチンがステップ303に進む。
ステップ303では、ルーチンがステップ302からステップ303に進んだ場合には、ステップ302で算出された新たなスキップ増大値Ksrがステップ300で取得された参照スキップ値Ksrthよりも大きい(Ksr>Ksrth)か否かが判別され、ルーチンがステップ307からステップ303に進んだ場合には、ステップ307で算出された新たなスキップ増大値Ksrがステップ300で取得された参照スキップ値Ksrthよりも大きい(Ksr>Ksrth)か否かが判別される。ここで、Ksr>Ksrthであると判別されたときには、ルーチンがステップ304に進み、参照スキップ値Ksrthがスキップ増大値Ksrに設定され、ルーチンがステップ305に進む。一方、Ksr>Ksrthではないと判別されたときには、ルーチンがステップ308に進み、ルーチンがステップ302を経由してステップ308に進んだ場合、ステップ302で算出されたスキップ増大値Ksrがそのままスキップ増大値Ksrに設定され、ルーチンがステップ307を経由してステップ308に進んだ場合、ステップ307で算出されたスキップ増大値Ksrがそのままスキップ増大値Ksrに設定され、ルーチンがステップ305に進む。
ステップ305では、ルーチンがステップ304からステップ305に進んだ場合には、ステップ300で取得された参照スキップ値Ksrthからステップ304で設定されたスキップ増大値Ksrを減算することによってスキップ減少値Kslが算出され、ルーチンがステップ308からステップ305に進んだ場合には、ステップ300で取得された参照スキップ値Ksrthからステップ308で設定されたスキップ増大値Ksrを減算することによってスキップ減少値Kslが算出される。次いで、スキップF06において、ステップ305で算出されたスキップ減少値Kslがそのままスキップ減少値Kslに設定される。
次に、第1実施形態の燃料噴射弁の制御を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図8に示されている。なお、図8のルーチンは、所定時間が経過する毎に開始されるルーチンである。
図8のルーチンが開始されると、始めに、ステップ10において、その時の要求機関トルクTQ、その時の機関回転数NE、および、その時の目標燃料噴射量Qtが取得される。なお、ここで取得される目標燃料噴射量Qtは、たとえば、図6のステップ210で設定される目標燃料噴射量である。次いで、ステップ11において、ステップ10で取得された目標燃料噴射量Qtの燃料を燃料噴射弁に噴射させるために燃料噴射弁に供給されるべき制御信号Sinjが算出される。次いで、ステップ12において、ステップ10で取得された要求機関トルクTQおよび機関回転数NEに基づいて図3(B)のマップから基準燃料噴射タイミングTinjbが取得される。次いで、ステップ13において、ステップ12で取得された基準燃料噴射タイミングTinjbが目標燃料噴射タイミングTinjに設定される。
次いで、ステップ14において、現在のタイミングTcrkがステップ13で設定された目標燃料噴射タイミングTinjである(Tcrk=Tinj)か否かが判別される。ここで、Tcrk=Tinjであると判別されたときには、ルーチンがステップ15に進み、ステップ11で算出された制御信号Sinjが燃料噴射弁に供給され、ルーチンが終了する。一方、ステップ14においてTcrk=Tinjではないと判別されたときには、ステップ14の処理が再度実行される。すなわち、本ルーチンでは、ステップ14においてTcrk=Tinjであると判別されるまで、ステップ14の処理が繰り返し実行される。
次に、第1実施形態のスロットル弁の制御を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図9に示されている。なお、図9のルーチンは、所定時間が経過する毎に開始されるルーチンである。
図9のルーチンが開始されると、始めに、ステップ20において、その時の目標スロットル弁開度Dthtが取得される。なお、ここで取得される目標スロットル弁開度Dthtは、タイミング、図6のステップ212で設定される目標スロットル弁開度である。次いで、ステップ21において、ステップ20で取得された目標スロットル弁開度を達成するためにスロットル弁アクチュエータに供給されるべき制御信号Sthが算出される。次いで、ステップ22において、ステップ21で算出された制御信号Sthがスロットル弁アクチュエータに供給され、ルーチンが終了する。
次に、第1実施形態の点火栓の制御を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図10に示されている。なお、図10のルーチンは、所定時間が経過する毎に開始されるルーチンである。
図10のルーチンが開始されると、始めに、ステップ30において、その時の要求機関トルクTQ、および、その時の機関回転数NEが取得される。次いで、ステップ31において、ステップ30で取得された要求機関トルクTQおよび機関回転数NEに基づいて図3(C)のマップから基準点火タイミングTignbが取得される。次いで、ステップ32において、ステップ31で取得された基準点火タイミングTignbが目標点火タイミングTignに設定される。
次いで、ステップ33において、現在のタイミングTcrkがステップ32で設定された目標点火タイミングTignである(Tcrk=Tign)か否かが判別される。ここで、Tcrk=Tignであると判別されたときには、ルーチンがステップ34に進み、点火栓を作動させるための指令信号Signが点火栓に供給され、ルーチンが終了する。一方、ステップ33においてTcrk=Tignではないと判別されたときには、ステップ33の処理が再度実行される。すなわち、本ルーチンでは、ステップ33においてTcrk=Tignであると判別されるまで、ステップ33の処理が繰り返し実行される。
次に、第2実施形態について説明する。なお、以下で説明されない第2実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第2実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第2実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。
第2実施形態では、理論空燃比制御とフューエルカット制御とが選択的に実行可能である。ここで、理論空燃比制御とは、第1実施形態の理論空燃比制御と同じ制御である。また、フューエルカット制御とは、機関運転状態が特定の機関運転状態の範囲(以下この範囲を「フューエルカット許可範囲」という)内にあるときに燃料噴射量が零になるように目標燃料噴射量を零に設定する制御である。
そして、第2実施形態では、活性元素固溶度が目標固溶度に一致しているとき、あるいは、活性元素固溶度が目標固溶度よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度よりも低いとき、あるいは、活性元素固溶度が目標固溶度よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度よりも低いときには、フューエルカット許可範囲が基準となる機関運転状態の範囲(以下この範囲を「基準フューエルカット許可範囲」という)に設定される。また、活性元素固溶度が目標固溶度よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度以上であるときには、フューエルカット許可範囲が基準フューエルカット許可範囲よりも広い機関運転状態の範囲(以下この範囲を「拡大フューエルカット許可範囲」という)に設定される。また、活性元素固溶度が目標固溶度よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度以上であるときには、フューエルカット許可範囲が基準フューエルカット許可範囲よりも狭い機関運転状態の範囲(以下この範囲を「縮小フューエルカット許可範囲」という)に設定される。
そして、機関運転中、機関運転状態が上述したように設定されたフューエルカット許可範囲内の機関運転状態ではないときには、理論空燃比制御が実行される。一方、機関運転中、機関運転状態が上述したように設定されたフューエルカット許可範囲内の機関運転状態になると、フューエルカット制御が実行される。
なお、第2実施形態において、活性元素固溶度が目標固溶度よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度以上であるときには、フューエルカット許可範囲が設定されなくてもよい。この場合、フューエルカット制御の実行が禁止されることになる。
また、第2実施形態のフューエルカット許可範囲を規定する機関運転状態は、たとえば、要求機関トルクと機関回転数との組合せによって規定される。この場合、要求機関トルクが比較的小さく且つ機関回転数が比較的小さく、したがって、燃焼室に燃料を供給する必要性に乏しいものと考えられる機関運転状態の集合が基準フューエルカット許可範囲に設定される。
第2実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、第2実施形態では、活性元素固溶度が目標固溶度よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度以上であるときに、フューエルカット許可範囲が基準フューエルカット許可範囲よりも広い拡大フューエルカット許可範囲に設定される。これによれば、フューエルカット許可範囲が基準フューエルカット許可範囲に設定されている場合に比べて、フューエルカット制御が行われる頻度が増大する。そして、フューエルカット制御では、目標燃料噴射量が零に設定され、その結果、燃料噴射量が零になることから、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比になる。これによれば、触媒の内部雰囲気が酸化雰囲気になることから、このときに触媒温度が所定固溶温度以上になれば、析出活性元素が担体に固溶し、その結果、活性元素固溶度が大きくなる。つまり、フューエルカット許可範囲が基準フューエルカット許可範囲よりも広い拡大フューエルカット許可範囲に設定されることによって、析出活性元素が担体に固溶する機会が増大し、その結果、活性元素固溶度が大きくなる機会が増大する。したがって、全体的に見れば、活性元素固溶度が目標固溶度よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度以上であるときに、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比に制御され、活性元素固溶度が大きくされると言える。
一方、第2実施形態では、活性元素固溶度が目標固溶度よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度以上であるときに、フューエルカット許可範囲が基準フューエルカット許可範囲よりも狭い縮小フューエルカット許可範囲に設定される。これによれば、フューエルカット許可範囲が基準フューエルカット許可範囲に設定されている場合に比べて、フューエルカット制御が行われる頻度が減少し、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比になる機会が減少する。見方を変えれば、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比になる機会が増大する。触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比になれば、触媒の内部雰囲気が還元雰囲気になることから、このときに触媒温度が所定析出温度以上になれば、固溶活性元素が担体から析出し、その結果、活性元素固溶度が小さくなる。つまり、フューエルカット許可範囲が基準フューエルカット許可範囲よりも狭い縮小フューエルカット許可範囲に設定されることによって、固溶活性元素が担体から析出する機会が増大し、その結果、活性元素固溶度が小さくなる機会が増大する。したがって、全体的に見れば、活性元素固溶度が目標固溶度よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度以上であるときに、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比に制御され、活性元素固溶度が小さくされると言える。
斯くして、第2実施形態では、活性元素固溶度が目標固溶度に制御される。そして、これにより、析出活性元素の量が一定に維持されるのであるから、機関運転中の触媒の浄化能力を想定しやすくなる。このため、第2実施形態によれば、機関制御に用いられる制御ロジックを比較的容易に構築することができ、また、機関制御を比較的簡便に行うことができるという効果が得られる。
さらに、第2実施形態の活性元素固溶度の制御に利用されるフューエルカット許可範囲の拡大や縮小は、比較的簡便な制御である。したがって、第2実施形態によれば、比較的簡便に活性元素固溶度を目標固溶度に制御することができるという効果も得られる。
次に、第2実施形態の空燃比制御を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図11および図12に示されている。なお、図11および図12のルーチンは、所定時間が経過する毎に開始されるルーチンである。
図11および図12のルーチンが開始されると、始めに、ステップ400において、その時の活性元素固溶度Ds、その時の触媒温度Tcat、その時の要求機関トルクTQ、および、その時の機関回転数NEが取得される。次いで、ステップ401において、ステップ400で取得された活性元素固溶度Dsが目標固溶度Dstよりも小さい(Ds<Dst)か否かが判別される。ここで、Ds<Dstであると判別されたときには、ルーチンはステップ406に進む。一方、Ds<Dstではないと判別されたときには、ルーチンはステップ402に進む。
ステップ401において、Ds<Dstであると判別され、ルーチンがステップ406に進むと、ステップ400で取得された触媒温度Tcatが所定固溶温度Ts以上である(Tcat≧Ts)か否かが判別される。ここで、Tcat≧Tsであると判別されたときには、ルーチンがステップ407に進み、拡大フューエルカット許可範囲Rfclがフューエルカット許可範囲Rfcに設定され(Rfc←Rfcl)、ルーチンがステップ408に進む。一方、Tcat≧Tsではないと判別されたときには、ルーチンがステップ403に進み、基準フューエルカット許可範囲Rfcbがフューエルカット許可範囲Rfcに設定され(Rfc←Rfcb)、ルーチンがステップ408に進む。
ステップ401においてDs<Dstではないと判別され、ルーチンがステップ402に進むと、ステップ400で取得された活性元素固溶度Dsが目標固溶度Dstよりも大きい(Ds>Dst)か否かが判別される。ここで、Ds>Dstであると判別されたときには、ルーチンはステップ404に進む。一方、Ds>Dstではないと判別されたときには、ルーチンがステップ403に進み、基準フューエルカット許可範囲Rfcbがフューエルカット許可範囲Rfcに設定され(Rfc←Rfcb)、ルーチンがステップ408に進む。
ステップ402においてDs>Dstであると判別され、ルーチンがステップ404に進むと、ステップ400で取得された触媒温度Tcatが所定析出温度Td以上である(Tcat≧Td)か否かが判別される。ここで、Tcat≧Tdであると判別されたときには、ルーチンがステップ405に進み、縮小フューエルカット許可範囲Rfcrがフューエルカット許可範囲Rfcに設定され(Rfc←Rfcr)、ルーチンがステップ408に進む。一方、Tcat≧Tdではないと判別されたときには、ルーチンがステップ403に進み、基準フューエルカット許可範囲Rfcbがフューエルカット許可範囲Rfcに設定され(Rfc←Rfcb)、ルーチンがステップ408に進む。
ステップ408では、ステップ400で取得された要求機関トルクTQおよび機関回転数NEによって規定される機関運転状態Cengがフューエルカット許可範囲Rfc内の機関運転状態である(Ceng∈Rfc)か否かが判別される。ここで用いられるフューエルカット許可範囲Rfcは、ルーチンがステップ403からステップ408に進んだ場合には、基準フューエルカット許可範囲Rfcbであり、ルーチンがステップ405からステップ408に進んだ場合には、縮小フューエルカット許可範囲Rfcrであり、ルーチンがステップ407からステップ408に進んだ場合には、拡大フューエルカット許可範囲Rfclである。ステップ408において、Ceng∈Rfcであると判別されたときには、ルーチンがステップ410に進み、フューエルカット制御が実行され(すなわち、目標燃料噴射量が零に設定され)、ルーチンが終了する。一方、ステップ408において、Ceng∈Rfcではないと判別されたときには、ルーチンがステップ409に進み、理論空燃比制御が実行され、ルーチンが終了する。
なお、第2実施形態の理論空燃比制御であって、図12のステップ409で実行される理論空燃比制御を実行するルーチンの一例として、図5および図6のルーチンを採用することができる。なお、この場合、ステップ200で取得される目標空燃比AFtが活性元素固溶度および触媒温度とは無関係に理論空燃比のみであり、したがって、ステップ201で用いられる目標空燃比AFtが理論空燃比のみである。また、第2実施形態のスキップ増大値およびスキップ減少値の設定を実行するルーチンの一例として、図7のルーチンを採用することができる。なお、この場合、ステップ300で取得される目標空燃比AFtが活性元素固溶度および触媒温度とは無関係に理論空燃比のみであり、したがって、ステップ301で用いられる目標空燃比AFtが理論空燃比のみである。
次に、第3実施形態について説明する。なお、以下で説明されない第3実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第3実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第3実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。
第3実施形態では、理論空燃比制御と燃料増量制御とが選択的に実行可能である。ここで、理論空燃比制御とは、第1実施形態の理論空燃比制御と同じ制御である。また、燃料増量制御とは、機関運転状態が特定の機関運転状態の範囲(以下この範囲を「燃料増量許可範囲」という)内にあるときに燃料噴射量が増量されて混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比になるように目標燃料噴射量を設定する制御である。
そして、第3実施形態では、活性元素固溶度が目標固溶度に一致しているとき、あるいは、活性元素固溶度が目標固溶度よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度よりも低いとき、あるいは、活性元素固溶度が目標固溶度よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度よりも低いときには、燃料増量許可範囲が基準となる機関運転状態の範囲(以下この範囲を「基準燃料増量許可範囲」という)に設定される。また、活性元素固溶度が目標固溶度よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度以上であるときには、燃料増量許可範囲が基準燃料増量許可範囲よりも狭い機関運転状態の範囲(以下この範囲を「縮小燃料増量許可範囲」という)に設定される。また、活性元素固溶度が目標固溶度よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度以上であるときには、燃料増量許可範囲が基準燃料増量許可範囲よりも広い機関運転状態の範囲(以下この範囲を「拡大燃料増量許可範囲」という)に設定される。
そして、機関運転中、機関運転状態が上述したように設定された燃料噴射量許可範囲内の機関運転状態ではないときには、理論空燃比制御が実行される。一方、機関運転中、機関運転状態が上述したように設定された燃料増量許可範囲内の機関運転状態になると、燃料増量制御が実行される。
なお、第3実施形態において、活性元素固溶度が目標固溶度よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度以上であるときには、燃料増量許可範囲が設定されなくてもよい。この場合、燃料増量制御の実行が禁止されることになる。
また、触媒の温度が過剰に高くなると触媒が熱劣化する可能性がある。ここで、比較的多量の未燃の燃料を含む排気ガスが触媒に流入すると、触媒に流入した燃料が触媒において気化することによって触媒から熱を奪う。このため、触媒の熱劣化が抑制される。そこで、第3実施形態の燃料増量許可範囲を規定する機関運転状態として、触媒温度を採用することができる。この場合、触媒温度が過剰に高く、したがって、触媒の熱劣化を誘発する可能性があるものと考えられる触媒温度の集合が基準燃料増量許可範囲に設定される。なお、燃料噴射弁が燃焼室内に燃料を直接噴射するように内燃機関に配置されている場合、より多量の未燃の燃料を含む排気ガスを触媒に流入させるためには、燃料増量制御において、燃焼室に空気を吸入する吸気行程または燃焼室内の空気を圧縮する圧縮行程において通常の燃料噴射量の燃料を燃料噴射弁から燃焼室内に噴射させ、その後、燃焼ガスを燃焼室から排出する排気行程において所定量の燃料を燃料噴射弁から燃焼室内に噴射させることが好ましい。
また、内燃機関から出力される動力として要求される動力(以下この動力を「要求機関動力」という)が非常に大きいときに要求機関動力を内燃機関に出力させるためには、空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比になるほどの量の燃料を燃焼室に供給する必要がある場合がある。そこで、第3実施形態の燃料増量許可範囲を規定する機関運転状態として、要求機関動力を採用することができる。この場合、要求機関動力が非常に大きく、したがって、空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比になるほどの量の燃料を燃焼室に供給する必要があるものと考えられる要求機関動力の集合が基準燃料増量許可範囲に設定される。なお、要求機関動力は、たとえば、要求機関トルクと機関回転数との組合せによって規定される。つまり、要求機関トルクが比較的大きく且つ機関回転数が比較的大きいときに、要求機関動力が非常に大きいと言える。
第3実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、第3実施形態では、活性元素固溶度が目標固溶度よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度以上であるときに、燃料増量許可範囲が基準燃料増量許可範囲よりも広い拡大燃料増量許可範囲に設定される。これによれば、燃料増量許可範囲が基準燃料増量許可範囲に設定されている場合に比べて、燃料増量制御が行われる頻度が増大する。そして、燃料増量制御では、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比になるように目標燃料噴射量が設定されることから、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比になる。これによれば、触媒の内部雰囲気が還元雰囲気になることから、このときに触媒温度が所定析出温度以上になれば、固溶活性元素が担体から析出し、その結果、活性元素固溶度が小さくなる。つまり、燃料増量許可範囲が基準燃料増量許可範囲よりも広い拡大燃料増量許可範囲に設定されることによって、固溶活性元素が担体から析出する機会が増大し、その結果、活性元素固溶度が小さくなる機会が増大する。したがって、全体的に見れば、活性元素固溶度が目標固溶度よりも大きく且つ触媒温度が所定析出温度以上であるときに、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比に制御され、活性元素固溶度が小さくされると言える。
一方、第3実施形態では、活性元素固溶度が目標固溶度よりも小さく且つ触媒温度が所定固溶温度以上であるときに、燃料増量許可範囲が基準燃料増量許可範囲よりも狭い縮小燃料増量許可範囲に設定される。これによれば、燃料増量許可範囲が基準燃料増量許可範囲に設定されている場合に比べて、燃料増量制御が行われる頻度が減少し、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比になる機会が減少する。見方を変えれば、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比になる機会が増大する。触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比になれば、触媒の内部雰囲気が酸化雰囲気になることから、このときに触媒温度が所定固溶温度以上になれば、析出活性元素が担体に固溶し、その結果、活性元素固溶度が大きくなる。つまり、燃料増量許可範囲が基準燃料増量許可範囲よりも広い拡大燃料増量許可範囲に設定されることによって、析出活性元素が担体に固溶する機会が増大し、その結果、活性元素固溶度が大きくなる機会が増大する。したがって、全体的に見れば、活性元素固溶度が目標固溶度よりも小さく且つ触媒温度が所定析出温度以上であるときに、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比に制御され、活性元素固溶度が大きくされると言える。
斯くして、第3実施形態では、活性元素固溶度が目標固溶度に制御される。そして、これにより、析出活性元素の量が一定に維持されるのであるから、機関運転中の触媒の浄化能力を想定しやすくなる。このため、第3実施形態によれば、機関制御に用いられる制御ロジックを比較的容易に構築することができ、また、機関制御を比較的簡便に行うことができるという効果が得られる。
さらに、第3実施形態の活性元素固溶度の制御に利用される燃料増量許可範囲の拡大や縮小は、比較的簡便な制御である。したがって、第3実施形態によれば、比較的簡便に活性元素固溶度を目標固溶度に制御することができるという効果も得られる。
次に、第3実施形態の空燃比制御を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図13および図14に示されている。なお、図13および図14のルーチンは、所定時間が経過する毎に開始されるルーチンである。
図13および図14のルーチンが開始されると、始めに、ステップ500において、その時の活性元素固溶度Ds、その時の触媒温度Tcat、その時の要求機関トルクTQ、および、その時の機関回転数NEが取得される。次いで、ステップ501において、ステップ500で取得された活性元素固溶度Dsが目標固溶度Dstよりも小さい(Ds<Dst)か否かが判別される。ここで、Ds<Dstであると判別されたときには、ルーチンはステップ506に進む。一方、Ds<Dstではないと判別されたときには、ルーチンはステップ502に進む。
ステップ501において、Ds<Dstであると判別され、ルーチンがステップ506に進むと、ステップ500で取得された触媒温度Tcatが所定固溶温度Ts以上である(Tcat≧Ts)か否かが判別される。ここで、Tcat≧Tsであると判別されたときには、ルーチンがステップ507に進み、縮小燃料増量許可範囲Rfilが燃料増量許可範囲Rfiに設定され(Rfi←Rfil)、ルーチンがステップ508に進む。一方、Tcat≧Tsではないと判別されたときには、ルーチンがステップ503に進み、基準燃料増量許可範囲Rfibが燃料増量許可範囲Rfiに設定され(Rfi←Rfib)、ルーチンがステップ508に進む。
ステップ501においてDs<Dstではないと判別され、ルーチンがステップ502に進むと、ステップ500で取得された活性元素固溶度Dsが目標固溶度Dstよりも大きい(Ds>Dst)か否かが判別される。ここで、Ds>Dstであると判別されたときには、ルーチンはステップ504に進む。一方、Ds>Dstではないと判別されたときには、ルーチンがステップ503に進み、基準燃料増量許可範囲Rfibが燃料増量許可範囲Rfiに設定され(Rfi←Rfib)、ルーチンがステップ508に進む。
ステップ502においてDs>Dstであると判別され、ルーチンがステップ504に進むと、ステップ500で取得された触媒温度Tcatが所定析出温度Td以上である(Tcat≧Td)か否かが判別される。ここで、Tcat≧Tdであると判別されたときには、ルーチンがステップ505に進み、拡大燃料増量許可範囲Rfirが燃料増量許可範囲Rfiに設定され(Rfi←Rfir)、ルーチンがステップ508に進む。一方、Tcat≧Tdではないと判別されたときには、ルーチンがステップ503に進み、基準燃料増量許可範囲Rfibが燃料増量許可範囲Rfiに設定され(Rfi←Rfib)、ルーチンがステップ508に進む。
ステップ508では、ステップ500で取得された要求機関トルクTQおよび機関回転数NEによって規定される機関運転状態Cengが燃料増量許可範囲Rfi内の機関運転状態である(Ceng∈Rfi)か否かが判別される。ここで用いられる燃料増量許可範囲Rfiは、ルーチンがステップ503からステップ508に進んだ場合には、基準燃料増量許可範囲Rfibであり、ルーチンがステップ505からステップ508に進んだ場合には、拡大燃料増量許可範囲Rfirであり、ルーチンがステップ507からステップ508に進んだ場合には、縮小燃料増量許可範囲Rfilである。ステップ508において、Ceng∈Rfiであると判別されたときには、ルーチンがステップ510に進み、燃料増量制御が実行され(すなわち、燃料噴射量が増量されて混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比になるように目標燃料噴射量が設定され)、ルーチンが終了する。一方、ステップ508において、Ceng∈Rfiではないと判別されたときには、ルーチンがステップ509に進み、理論空燃比制御が実行され、ルーチンが終了する。
なお、第3実施形態の理論空燃比制御であって、図14のステップ509で実行される理論空燃比制御を実行するルーチンの一例として、図5および図6のルーチンを採用することができる。なお、この場合、ステップ200で取得される目標空燃比AFtが活性元素固溶度および触媒温度とは無関係に理論空燃比のみであり、したがって、ステップ201で用いられる目標空燃比AFtが理論空燃比のみである。また、第3実施形態のスキップ増大値およびスキップ減少値の設定を実行するルーチンの一例として、図7のルーチンを採用することができる。なお、この場合、ステップ300で取得される目標空燃比AFtが活性元素固溶度および触媒温度とは無関係に理論空燃比のみであり、したがって、ステップ301で用いられる目標空燃比AFtが理論空燃比のみである。
なお、上述した実施形態の目標固溶度は、特定の条件に応じて変更される値であってもよいし、条件にかかわらず一定の値であってもよい。次に、目標固溶度が特定の条件に応じて変更される場合の実施形態(以下「第4実施形態」という)について説明する。なお、以下で説明されない第4実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第4実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第4実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。
第4実施形態では、触媒が排気ガス中の特定の成分の浄化に使用された程度(以下この程度を「触媒使用程度」という)が取得される。そして、触媒使用程度が大きいほど小さい目標固溶度が設定される。
なお、第4実施形態において、触媒使用程度の取得方法は、特定の方法に制限されず、たとえば、触媒使用程度の取得方法として、触媒が排気ガス中の特定の成分の浄化に使用された時間の積算値(別の言い方をすれば、担体から析出している活性元素が排気ガス中の特定の成分の浄化に使用された時間の積算値)に基づいて触媒使用程度を取得する方法を採用することができ、あるいは、内燃機関が車両に搭載されている場合、車両の走行距離の積算値に基づいて触媒使用程度を取得する方法を採用することができる。ここで、触媒使用程度の取得方法として、触媒が排気ガス中の特定の成分の浄化に使用された時間の積算値(以下この積算値を「触媒使用時間積算値」という)に基づいて触媒使用程度を取得する方法を採用した場合、触媒使用時間積算値が大きくなるほど取得される触媒使用程度が大きい。また、触媒使用程度の取得方法として、車両の走行距離の積算値(以下この積算値を「走行距離積算値」という)に基づいて触媒使用程度を取得する方法を採用した場合、走行距離積算値が大きいほど取得される触媒使用程度が大きい。
第4実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、活性元素の活性能力は、活性元素使用程度、言い方を変えれば、触媒使用程度が大きくなるほど劣化して低下する。このため、活性元素固溶度に変化がなく、したがって、析出活性元素の量に変化がない場合、触媒使用程度が大きくなるほど、触媒の浄化能力が低下することになる。
一方、第4実施形態では、触媒使用程度が大きくなるほど、目標固溶度が小さくされ、その結果、析出活性元素の量が多くなる。したがって、触媒使用程度が大きくなることに起因して既に析出していた活性元素の活性能力が低下したとしても、担体から活性元素が新たに析出せしめられるので、触媒の浄化能力が初期の能力に維持されるか、あるいは、少なくとも、触媒の浄化能力が初期の能力に近い能力に維持される。したがって、第4実施形態によれば、触媒使用程度にかかわらず、触媒の浄化能力を初期の能力に維持し、あるいは、少なくとも、触媒の浄化能力を初期の能力に近い能力に維持することができ、機関運転中の触媒の浄化能力をさらに容易に想定することができるという効果が得られる。
なお、上述した実施形態において、空燃比制御に用いられる活性元素固溶度(以下この活性元素固溶度を「空燃比制御用の活性元素固溶度」という)を取得する方法は、特定の方法に制限されず、たとえば、活性元素固溶度を検出するセンサによって検出される活性元素固溶度を空燃比制御用の活性元素固溶度として取得する方法を採用することができ、あるいは、内燃機関に関する各種のパラメータに基づいて算出される活性元素固溶度を空燃比制御用の活性元素固溶度を取得する方法を採用することができる。
次に、内燃機関に関する各種のパラメータに基づいて算出される活性元素固溶度を空燃比制御用の活性元素固溶度として取得する方法を採用した実施形態の1つ(以下「第5実施形態」という)について説明する。なお、以下で説明されない第5実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第5実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第5実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。
第5実施形態では、活性元素固溶度を表す値である活性元素固溶度値として固溶度カウンタが用意される。この固溶度カウンタは、その初期値として、触媒が最初に使用されるときの活性元素固溶度に対応する値に設定される。そして、機関運転中、触媒温度が所定固溶温度以上であって且つ触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比である(すなわち、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比である)間は、固溶度カウンタが徐々に増大せしめられる。一方、機関運転中、触媒温度が所定析出温度以上であって且つ触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比である(すなわち、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比である)間は、固溶度カウンタが徐々に減少せしめられる。そして、斯くして増大せしめられ或いは減少せしめられた固溶度カウンタから活性元素固溶度が算出され、斯くして算出された活性元素固溶度が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。
第5実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、触媒温度が所定固溶温度以上であり且つ触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリーンであるとき(以下これを「高温リーン時」という)には、活性元素が担体に固溶する。このとき、触媒温度が高いほど単位時間当たりに担体に固溶する活性元素の量が多い。つまり、単位時間当たりに担体に固溶する活性元素の量は、触媒温度と触媒流入排気空燃比とによって決まる。ここで、第5実施形態では、高温リーン時において、触媒温度と触媒流入排気空燃比とに基づいて活性元素固溶度が算出される。したがって、第5実施形態によれば、高温リーン時に、より正確に活性元素固溶度を算出することができるという効果が得られる。一方、触媒温度が所定析出温度以上であり且つ触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比であるとき(以下これを「高温リッチ時」という)には、活性元素が担体から析出する。このとき、触媒温度が高いほど単位時間当たりに担体から析出する活性元素の量が多く、触媒流入排気空燃比がリッチであるほど単位時間当たりに担体から析出する活性元素の量が多い。つまり、単位時間当たりに担体から析出する活性元素の量は、触媒温度と触媒流入排気空燃比とによって決まる。ここで、第5実施形態では、高温リッチ時において、触媒温度と触媒流入排気空燃比とに基づいて活性元素固溶度が算出される。したがって、第5実施形態によれば、高温リッチ時に、より正確に活性元素固溶度を算出することができるという効果が得られる。
なお、第5実施形態は、広く表現すれば、触媒流入排気空燃比と触媒温度とに基づいて空燃比制御用の活性元素固溶度を取得する方法を採用した実施形態の一例である。したがって、第5実施形態に関連して説明された方法以外の触媒流入排気空燃比と触媒温度とに基づく空燃比制御用の活性元素固溶度の取得方法が採用されてもよい。
また、第5実施形態において、固溶度カウンタが最大固溶度を表す値(すなわち、100%の活性元素固溶度に対応する値)よりも大きくなったときには、固溶度カウンタが最大固溶度を表す値に制限され、固溶度カウンタに基づいて算出される活性元素固溶度が最大固溶度よりも大きくならないようにすることが好ましい。また、第5実施形態において、固溶度カウンタが最小固溶度(すなわち、全ての活性元素が担体から析出しているときの活性元素固溶度)を表す値(すなわち、0%の活性元素固溶度に対応する値)よりも小さくなったときには、固溶度カウンタが最小固溶度を表す値に制限され、固溶度カウンタに基づいて算出される活性元素固溶度が最小固溶度よりも小さくならないようにすることが好ましい。
また、第5実施形態において、触媒温度が所定固溶温度以上であって且つ触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比である間に固溶度カウンタを単位時間当たりに増大させる量(以下この量を「カウンタ増大量」という)は、たとえば、触媒温度とも触媒流入排気空燃比とも無関係に一定の量であってもよいし、触媒流入排気空燃比とは無関係であるが触媒温度に応じて異なる量であってもよいし、触媒温度とは無関係であるが触媒流入排気空燃比に応じて異なる量であってもよいし、触媒温度および触媒流入排気空燃比に応じて異なる量であってもよい。
なお、カウンタ増大量が触媒温度に応じて異なる量である場合、カウンタ増大量は、触媒温度が高いほど大きい量であってもよいし、触媒温度が或る温度よりも高いときのカウンタ増大量が触媒温度が前記或る温度以下であるときのカウンタ増大量よりも大きいような量であってもよい。つまり、この場合、触媒温度が高いほど単位時間当たりに担体に固溶する活性元素の量が多い(すなわち、担体への活性元素の固溶速度が速い)ことが考慮されたカウンタ増大量が採用されることになる。
また、カウンタ増大量が触媒流入排気空燃比に応じて異なる量である場合、カウンタ増大量は、触媒流入排気空燃比が大きいほど(すなわち、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリーンであるほど)大きい量であってもよいし、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりも大きい或る空燃比よりも大きいときのカウンタ増大量が触媒流入排気空燃比が前記或る空燃比以下であるときのカウンタ増大量よりも大きいような量であってもよい。つまり、この場合、触媒流入排気空燃比が大きいほど単位時間当たりに担体に固溶する活性元素の量が多い(すなわち、担体への活性元素の固溶速度が速い)ことが考慮されたカウンタ増大量が採用されることになる。
また、第5実施形態において、触媒温度が所定析出温度以上であって且つ触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比である間に固溶度カウンタを単位時間当たりに減少させる量(以下この量を「カウンタ減少量」という)は、たとえば、触媒温度とも触媒流入排気空燃比とも無関係に一定の量であってもよいし、触媒流入排気空燃比とは無関係であるが触媒温度に応じて異なる量であってもよいし、触媒温度とは無関係であるが触媒流入排気空燃比に応じて異なる量であってもよいし、触媒温度および触媒流入排気空燃比に応じて異なる量であってもよい。
なお、カウンタ減少量が触媒温度に応じて異なる量である場合、カウンタ減少量は、触媒温度が高いほど大きい量であってもよいし、触媒温度が或る温度よりも高いときのカウンタ減少量が触媒温度が前記或る温度以下であるときのカウンタ減少量よりも大きいような量であってもよい。つまり、この場合、触媒温度が高いほど単位時間当たりに担体から析出する活性元素の量が多い(すなわち、担体からの活性元素の析出速度が速い)ことが考慮されたカウンタ減少量が採用されることになる。
また、カウンタ減少量が触媒流入排気空燃比に応じて異なる量である場合、カウンタ減少量は、触媒流入排気空燃比が小さいほど(すなわち、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリッチであるほど)大きい量であってもよいし、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりも小さい或る空燃比よりも小さいときのカウンタ減少量が触媒流入排気空燃比が前記或る空燃比以上であるときのカウンタ減少量よりも大きいような量であってもよい。つまり、この場合、触媒流入排気空燃比が小さいほど単位時間当たりに担体から析出する活性元素の量が多い(すなわち、担体からの活性元素の析出速度が速い)ことが考慮されたカウンタ減少量が採用されることになる。
次に、第5実施形態の固溶度カウンタの算出を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図15に示されている。なお、このルーチンは、所定時間が経過する毎に実行されるルーチンである。
図15のルーチンが開始されると、始めに、ステップ600において、その時の触媒温度Tcat、および、その時の上流側検出空燃比AFuが取得される。次いで、ステップ601において、ステップ600で取得された上流側検出空燃比AFuが理論空燃比よりも大きい(AFu>AFst)か否か(すなわち、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリーンであるか否か)が判別される。ここで、AFu>AFstであると判別されたときには、ルーチンはステップ602に進む。一方、AFu>AFstではないと判別されたときには、ルーチンはステップ605に進む。
ステップ601においてAFu>AFstであると判別され、ルーチンがステップ602に進むと、ステップ600で取得された触媒温度Tcatが所定固溶温度Ts以上である(Tcat≧Ts)か否かが判別される。ここで、Tcat≧Tsであると判別されたときには、ルーチンはステップ603に進む。一方、Tcat≧Tsではないと判別されたときには、ルーチンはそのまま終了する。
ステップ602においてTcat≧Tsであると判別され、ルーチンがステップ603に進むと、固溶度カウンタCsが所定値ΔCsだけ大きくされる(Cs←Cs+ΔCs)。次いで、ステップ604において、ステップ603で更新された固溶度カウンタCsに基づいて活性元素固溶度Dsが算出されるとともに算出された活性元素固溶度Dsが電子制御装置に記憶され、ルーチンが終了する。
ステップ601においてAFu>AFstではないと判別され、ルーチンがステップ605に進むと、ステップ600で取得された上流側検出空燃比AFuが理論空燃比AFstよりも小さい(AFu<AFst)か否か(すなわち、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリッチであるか否か)が判別される。ここで、AFu<AFstであると判別されたときには、ルーチンはステップ606に進む。一方、AFu<AFstではないと判別されたときには、ルーチンはそのまま終了する。
ステップ605においてAFu<AFstであると判別され、ルーチンがステップ606に進むと、ステップ600で取得された触媒温度Tcatが所定析出温度Td以上である(Tcat≧Td)か否かが判別される。ここで、Tcat≧Tdであると判別されたときには、ルーチンはステップ607に進む。一方、Tcat≧Tdではないと判別されたときには、ルーチンはそのまま終了する。
ステップ606においてTcat≧Tdであると判別され、ルーチンがステップ607に進むと、固溶度カウンタCsが所定値ΔCsだけ小さくされる(Cs←Cs-ΔCs)。次いで、ステップ608において、ステップ607で更新された固溶度カウンタCsに基づいて活性元素固溶度Dsが算出されるとともに算出された活性元素固溶度Dsが電子制御装置に記憶され、ルーチンが終了する。
次に、内燃機関に関する各種のパラメータに基づいて活性元素固溶度を算出することによって活性元素固溶度を取得する方法を採用した別の実施形態(以下「第6実施形態」という)について説明する。なお、以下で説明されない第6実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第6実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第6実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。
第6実施形態では、活性元素固溶度が予め定められた固溶度であるときに理論空燃比制御が実行されたときの触媒温度が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた触媒温度が基準触媒温度として電子制御装置に記憶されるとともに、上記予め定められた固溶度が基準固溶度として電子制御装置に記憶される。また、触媒温度の変化量に対する活性元素固溶度の変化量の比、つまり、単位触媒温度変化量当たりの活性元素固溶度の変化量(以下この変化量を「固溶度変化率」という)が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた固溶度変化率が電子制御装置に記憶される。そして、機関運転中の理論空燃比制御中に実際の触媒温度(以下、実際の触媒温度を「機関運転時触媒温度」という)が取得され、基準触媒温度に対する機関運転時触媒温度の差(以下この差を「触媒温度差」という)が算出される。そして、斯くして算出された触媒温度差を上記固溶度変化率に乗算して得られる値を基準固溶度に加算して得られる値が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。つまり、第6実施形態では、次式3に従って空燃比制御用の活性元素固溶度Dsが取得される。なお、次式3において「Dsb」は「基準固溶度」であり、「Rds」は「固溶度変化率」であり、「Tcatb」は「基準触媒温度」であり、「Tcat」は「機関運転時触媒温度」である。
Ds=Dsb+Rds×(Tcatb-Tcat) …(3)
第6実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、析出活性元素の量が多いほど、活性元素による排気成分(すなわち、排気ガス中の成分)の活性化が活発に行われ、このため、触媒による排気成分の浄化が活発に行われる。一方、触媒による排気成分の浄化に起因して熱が発生する。したがって、析出活性元素の量が多いほど、触媒による排気成分の浄化に起因して発生する熱量が多く、このため、触媒温度が高くなる。つまり、析出活性元素の量は、触媒温度に反映され、析出活性元素の量が多いほど、触媒温度が高くなる傾向にある。したがって、触媒温度に基づいて析出活性元素の量を推定することができ、ひいては、固溶活性元素の量、すなわち、活性元素固溶度を推定することができる。ここで、第6実施形態では、機関運転中の触媒温度に基づいて活性元素固溶度が算出される。つまり、活性元素固溶度に応じて変化するパラメータである触媒温度を用いて活性元素固溶度が算出される。したがって、第6実施形態によれば、正確に活性元素固溶度を算出することができるという効果が得られる。
また、第6実施形態では、上式3を用いて活性元素固溶度が算出される。そして、上式3を見れば明らかなように、上式3は、極めて単純な式であり、上式3を用いて活性元素固溶度の算出に要する演算負荷は、非常に小さいと言える。このため、第6実施形態によれば、非常に小さい演算負荷でもって活性元素固溶度を算出することができるという効果も得られる。
次に、内燃機関に関する各種のパラメータに基づいて算出される活性元素固溶度を空燃比制御用の活性元素固溶度として取得する方法を採用したさらに別の実施形態(以下「第7実施形態」という)について説明する。なお、以下で説明されない第7実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第7実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第7実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。
第7実施形態では、活性元素固溶度が予め定められた固溶度であるときに理論空燃比制御が実行されたときの触媒温度が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた触媒温度が基準触媒温度として電子制御装置に記憶される。また、全ての活性元素が担体に固溶しているときの活性元素固溶度(以下この活性元素固溶度を「最大固溶度」という)が予め決められる。ここでは、最大固溶度は、たとえば、「100」に決められる。そして、機関運転中の理論空燃比制御中に実際の触媒温度(すなわち、機関運転時触媒温度)が取得され、基準触媒温度に対する機関運転時触媒温度の差(すなわち、触媒温度差)が算出される。そして、斯くして算出された触媒温度差を基準触媒温度によって除算して得られる値を最大固溶度である「100」から減算して得られる値が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。つまり、第7実施形態では、次式4に従って空燃比制御用の活性元素固溶度Dsが算出される。なお、次式4において「Tcatb」は「基準触媒温度」であり、「Tcat」は「機関運転時触媒温度」である。
Ds=(100-(Tcatb-Tcat)/Tcatb) …(4)
第7実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、第7実施形態でも、第6実施形態と同様に、活性元素固溶度に応じて変化するパラメータである触媒温度を用いて活性元素固溶度が算出される。したがって、第7実施形態によれば、正確に活性元素固溶度を算出することができるという効果が得られる。
また、第7実施形態では、上式4を用いて活性元素固溶度が算出される。そして、上式4を見れば明らかなように、上式4は、極めて単純な式であるから、上式4を用いた活性元素固溶度の算出に要する演算負荷が非常に小さい。しかも、第6実施形態とは異なり、固溶度変化率を必要としないから、活性元素固溶度を算出するために固溶度変化率を予め用意する必要がない。さらに、固溶度変化率が一定の値ではない場合もあり、この場合、固溶度変化率を用いて活性元素固溶度を算出すると、算出された活性元素固溶度が正確な値ではないことになる。しかしながら、第7実施形態では、固溶度変化率を用いることなく、活性元素固溶度が算出される。このため、第7実施形態によれば、固溶度変化率を事前に求める労力を省くことができるとともに、非常に小さい演算負荷でもって活性元素固溶度を正確に算出することができるという効果も得られる。
次に、内燃機関に関する各種のパラメータに基づいて算出される活性元素固溶度を空燃比制御用の活性元素固溶度として取得する方法を採用したさらに別の実施形態(以下「第8実施形態」という)について説明する。なお、以下で説明されない第8実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第8実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第8実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。
第8実施形態では、理論空燃比制御が実行されたときの活性元素固溶度と触媒温度との関係が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた関係が温度固溶度関係として電子制御装置に記憶される。そして、機関運転中の理論空燃比制御中に実際の触媒温度(すなわち、機関運転時触媒温度)が取得され、この機関運転時触媒温度に基づいて温度固溶度関係から活性元素固溶度が算出される。そして、斯くして算出された活性元素固溶度が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。
なお、第8実施形態において、理論空燃比制御が実行されたときの活性元素固溶度毎の触媒温度が実験等によって予め求められ、これら求められた触媒温度とそれに対応する活性元素固溶度との関係に基づいて活性元素固溶度が触媒温度の関数のマップの形で電子制御装置に記憶され、機関運転中の理論空燃比制御中に触媒温度(すなわち、機関運転時触媒温度)が取得され、この機関運転時触媒温度に対応する活性元素固溶度が上記マップから取得され、斯くして取得された活性元素固溶度が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得されてもよく、この場合、上記温度固溶度関係は、上記マップであることになる。
第8実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、触媒温度と活性元素固溶度との間には一定の関係があるものの、こうした関係を1つの関係式でもって完全に表現することは容易ではないし、こうした関係を概して表現した関係式を用いて活性元素固溶度が算出されると、算出された活性元素固溶度が必ずしも正確な値ではない可能性もある。一方、第8実施形態では、実験等によって予め求められた触媒温度と活性元素固溶度との関係が電子制御装置に記憶され、機関運転中、この記憶された関係と触媒温度とから活性元素固溶度が取得される。このため、第8実施形態によれば、正確な活性元素固溶度を算出することができるという効果が得られる。
なお、第6実施形態~第8実施形態は、広く表現すれば、それぞれ、触媒温度に基づいて空燃比制御用の活性元素固溶度を取得する方法を採用した実施形態の一例である。したがって、第6実施形態~第8実施形態に関連して説明された方法以外の触媒温度に基づく空燃比制御用の活性元素固溶度の取得方法が採用されてもよい。
次に、内燃機関に関する各種のパラメータに基づいて算出される活性元素固溶度を空燃比制御用の活性元素固溶度として取得する方法を採用したさらに別の実施形態(以下「第9実施形態」という)について説明する。なお、以下で説明されない第9実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第9実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第9実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。また、以下の説明において「触媒温度積算値」とは「予め定められた期間に亘る触媒温度の積算値」を意味する。
第9実施形態では、活性元素固溶度が予め定められた固溶度であるときに理論空燃比制御が実行されたときの触媒温度積算値が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた触媒温度積算値が基準触媒温度積算値として電子制御装置に記憶されるとともに、上記予め定められた固溶度が基準固溶度として電子制御装置に記憶される。また、触媒温度積算値の変化量に対する活性元素固溶度の変化量の比、つまり、単位触媒温度積算値変化量に対する活性元素固溶度の変化量(以下この変化量を「固溶度変化率」という)が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた固溶度変化率が電子制御装置に記憶される。そして、機関運転中の理論空燃比制御中に実際の触媒温度積算値(以下、実際の触媒温度積算値を「機関運転時触媒温度積算値」という)が算出される。そして、基準触媒温度積算値に対する機関運転時触媒温度積算値の差(以下この差を「触媒温度積算値差」という)が算出される。そして、斯くして算出された触媒温度積算値差を上記固溶度変化率に乗算して得られる値を基準固溶度に加算して得られる値が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。つまり、第9実施形態では、次式5に従って空燃比制御用の活性元素固溶度Dsが取得される。なお、次式5において「Dsb」は「基準固溶度」であり、「Rds」は「固溶度変化率」であり、「ΣTcatb」は「基準触媒温度積算値」であり、「ΣTcat」は「機関運転時触媒温度積算値」である。
Ds=Dsb+Rds×(ΣTcatb-ΣTcat) …(5)
第9実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、上述したように、析出活性元素の量は、触媒温度に反映され、析出活性元素の量が多いほど、触媒温度が高くなる傾向にある。ここで、第9実施形態では、機関運転中の予め定められた期間における触媒温度の積算値に基づいて活性元素固溶度が算出される。つまり、活性元素固溶度に応じて変化するパラメータである触媒温度の積算値を用いて活性元素固溶度が算出される。しかも、析出活性元素の量の違いに起因する触媒温度の積算値の違いは、析出活性元素の量の違いに起因する触媒温度の違いよりも大きい。したがって、第9実施形態によれば、より正確に活性元素固溶度を算出することができるという効果が得られる。
また、第9実施形態では、上式5を用いて活性元素固溶度が算出される。そして、上式5を見れば明らかなように、上式5は、極めて単純な式であり、上式5を用いた活性元素固溶度の算出に要する演算負荷は、非常に小さいと言える。このため、第9実施形態によれば、非常に小さい演算負荷でもって活性元素固溶度を算出することができるという効果も得られる。
次に、内燃機関に関する各種のパラメータに基づいて算出される活性元素固溶度を空燃比制御用の活性元素固溶度として取得する方法を採用したさらに別の実施形態(以下「第10実施形態」という)について説明する。なお、以下で説明されない第10実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第10実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第10実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。
第10実施形態では、活性元素固溶度が予め定められた固溶度であるときに理論空燃比制御が実行されたときの触媒温度積算値が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた触媒温度積算値が基準触媒温度積算値として電子制御装置に記憶される。また、全ての活性元素が担体に固溶しているときの活性元素固溶度(以下この活性元素固溶度を「最大固溶度」という)が予め決められる。ここでは、最大固溶度は、たとえば、「100」に決められる。そして、機関運転中の理論空燃比制御中に実際の触媒温度積算値(すなわち、機関運転時触媒温度積算値)が算出される。そして、基準触媒温度積算値に対する機関運転時触媒温度積算値の差(すなわち、触媒温度積算値差)が算出される。そして、斯くして算出された触媒温度積算値差を基準触媒温度積算値によって除算して得られる値を最大固溶度である「100」から減算して得られる値が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。つまり、第10実施形態では、次式6に従って空燃比制御用の活性元素固溶度Dsが算出される。なお、次式6において「ΣTcatb」は「基準触媒温度積算値」であり、「ΣTcat」は「機関運転時触媒温度積算値」である。
Ds=(100-(ΣTcatb-ΣTcat)/ΣTcatb) …(6)
第10実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、第10実施形態でも、第9実施形態と同様に、活性元素固溶度に応じて変化するパラメータである触媒温度の積算値を用いて活性元素固溶度が算出される。しかも、上述したように、析出活性元素の量の違いに起因する触媒温度の積算値の違いは、析出活性元素の量の違いに起因する触媒温度の違いよりも大きい。したがって、第10実施形態によれば、より正確に活性元素固溶度を算出することができるという効果が得られる。
また、第10実施形態では、上式6を用いて活性元素固溶度が算出される。そして、上式6を見れば明らかなように、上式6は、極めて単純な式であるから、上式6を用いた活性元素固溶度の算出に要する演算負荷が非常に小さい。しかも、第9実施形態とは異なり、固溶度変化率を必要としないから、活性元素固溶度を算出するために固溶度変化率を予め用意する必要がない。さらに、固溶度変化率が一定の値ではない場合もあり、この場合、固溶度変化率を用いて活性元素固溶度を算出すると、算出された活性元素固溶度が正確な値ではないことになる。しかしながら、第10実施形態では、固溶度変化率を用いることなく、活性元素固溶度が算出される。このため、第10実施形態によれば、固溶度変化率を事前に求める労力を省くことができるとともに、非常に小さい演算負荷でもって活性元素固溶度を正確に算出することができるという効果も得られる。
次に、内燃機関に関する各種のパラメータに基づいて算出される活性元素固溶度を空燃比制御用の活性元素固溶度として取得する方法を採用したさらに別の実施形態(以下「第11実施形態」という)について説明する。なお、以下で説明されない第11実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第11実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第11実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。
第11実施形態では、理論空燃比制御が実行されたときの活性元素固溶度と触媒温度積算値との関係が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた関係が温度積算値固溶度関係として電子制御装置に記憶される。そして、機関運転中の理論空燃比制御中に実際の触媒温度積算値(すなわち、機関運転時触媒温度積算値)が算出される。そして、この機関運転時触媒温度積算値に基づいて温度積算値固溶度関係から活性元素固溶度が算出される。そして、斯くして算出された活性元素固溶度が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。
なお、第11実施形態において、理論空燃比制御が実行されたときの活性元素固溶度毎の触媒温度積算値が実験等によって予め求められ、これら求められた触媒温度積算値とそれに対応する活性元素固溶度との関係に基づいて活性元素固溶度が触媒温度積算値の関数のマップの形で電子制御装置に記憶され、機関運転中の理論空燃比制御中に触媒温度積算値(すなわち、機関運転時触媒温度積算値)が算出され、この算出された機関運転時触媒温度積算値に対応する活性元素固溶度が上記マップから取得され、斯くして取得された活性元素固溶度が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得されてもよく、この場合、上記温度積算値固溶度関係は、上記マップであることになる。
第11実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、触媒温度積算値と活性元素固溶度との間には一定の関係があるものの、こうした関係を1つの関係式でもって完全に表現することは容易ではないし、こうした関係を概して表現した関係式を用いて活性元素固溶度が算出されると、算出された活性元素固溶度が必ずしも正確な値ではない可能性もある。一方、第11実施形態では、実験等によって予め求められた触媒温度積算値と活性元素固溶度との間の関係が電子制御装置に記憶され、機関運転中、この記憶された関係と触媒温度積算値とから活性元素固溶度が取得される。このため、第11実施形態によれば、正確な活性元素固溶度を算出することができるという効果が得られる。
なお、第9実施形態~第11実施形態において、触媒温度積算値を取得するために触媒温度を積算する期間である上記予め定められた期間は、活性元素固溶度の違いが触媒温度積算値の違いとして現れる期間であれば、如何なる期間でもよく、上記予め定められた期間として、たとえば、触媒温度が予め定められた温度上昇率以上の温度上昇率で上昇している期間を採用することができる。なお、触媒温度が予め定められた温度上昇率以上の温度上昇率で上昇している期間としては、たとえば、機関運転が比較的長期間に亘って停止された後に機関運転が開始されてからの一定期間、すなわち、いわゆる内燃機関の冷間始動期間がある。
また、第9実施形態~第11実施形態は、広く表現すれば、それぞれ、触媒温度積算値に基づいて空燃比制御用の活性元素固溶度を取得する方法を採用した実施形態の一例である。したがって、第9実施形態~第11実施形態に関連して説明された方法以外の触媒温度積算値に基づく空燃比制御用の活性元素固溶度の取得方法が採用されてもよい。
次に、内燃機関に関する各種のパラメータに基づいて活性元素固溶度を算出することによって活性元素固溶度を取得する方法を採用したさらに別の実施形態(以下「第12実施形態」という)について説明する。なお、以下で説明されない第12実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第12実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第12実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。また、以下の説明において「出力値軌跡長」とは「予め定められた期間における下流側空燃比センサの出力値の軌跡の長さ」、別の言い方をすれば「予め定められた期間に下流側空燃比センサから出力される複数の出力値を時系列に結んだ線の長さ」を意味する。
第12実施形態では、活性元素固溶度が予め定められた固溶度であるときに理論空燃比制御が実行されたときの出力値軌跡長が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた出力値軌跡長が基準出力値軌跡長として電子制御装置に記憶される。また、出力値軌跡長の変化量に対する活性元素固溶度の変化量の比、つまり、単位出力値軌跡長変化量に対する活性元素固溶度の変化量(以下この変化量を「固溶度変化率」という)が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた固溶度変化率が電子制御装置に記憶される。そして、機関運転中の理論空燃比制御中に実際の出力値軌跡長(以下この出力値軌跡長を「機関運転時出力値軌跡長」という)が取得され、基準出力値軌跡長に対する機関運転時出力値軌跡長の差(以下この差を「軌跡長差」という)が算出される。そして、斯くして算出された軌跡長差を上記固溶度変化率に乗算して得られる値を基準固溶度に加算して得られる値が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。つまり、第12実施形態では、次式7に従って空燃比制御用の活性元素固溶度Dsが取得される。なお、次式7において「Dsb」は「基準固溶度」であり、「Rds」は「固溶度変化率」であり、「Lb」は「基準出力値軌跡長」であり、「L」は「機関運転時出力値軌跡長」である。
Ds=Dsb+Rds×(Lb-L) …(7)
第12実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、図16に示されているように、本願の発明者の研究によって、析出活性元素の量が少ないほど、すなわち、活性元素固溶度Dsが大きいほど、出力値軌跡長Lが長くなることが判明した。ここで、第12実施形態では、機関運転時出力値軌跡長に基づいて活性元素固溶度が算出される。つまり、活性元素固溶度に応じて変化するパラメータである出力値軌跡長を用いて活性元素固溶度が算出される。したがって、第12実施形態によれば、正確に活性元素固溶度を算出することができるという効果が得られる。また、第12実施形態によれば、触媒温度を用いることなく、正確に活性元素固溶度を算出することができるという効果も得られる。
さらに、第12実施形態では、上式7を用いて活性元素固溶度が算出される。そして、上式7を見れば明らかなように、上式7は、極めて単純な式であり、上式7を用いた活性元素固溶度の算出に要する演算負荷は、非常に小さいと言える。このため、第12実施形態によれば、非常に小さい演算負荷でもって活性元素固溶度を算出することができるという効果も得られる。
次に、内燃機関に関する各種のパラメータに基づいて算出される活性元素固溶度を空燃比制御用の活性元素固溶度として取得する方法を採用した別の実施形態(以下「第13実施形態」という)について説明する。なお、以下で説明されない第13実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第13実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第13実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。
第13実施形態では、活性元素固溶度が予め定められた固溶度であるときに理論空燃比制御が実行されたときの出力値軌跡長が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた出力値軌跡長が基準出力値軌跡長として電子制御装置に記憶される。また、最大固溶度が予め決められる。ここでは、最大固溶度は、たとえば、「100」に決められる。そして、機関運転中の理論空燃比制御中に実際の出力値軌跡長(すなわち、機関運転時出力値軌跡長)が取得され、基準出力値軌跡長に対する機関運転時出力値軌跡長の差(すなわち、出力値軌跡長差)が算出される。そして、斯くして算出された出力値軌跡長差を基準出力値軌跡長によって除算して得られる値を最大固溶度である「100」から減算して得られる値が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。つまり、第13実施形態では、次式8に従って空燃比制御用の活性元素固溶度Dsが算出される。なお、次式8において「Lb」は「基準出力値軌跡長」であり、「L」は「機関運転時出力値軌跡長」である。
Ds=(100-(Lb-L)/Lb) …(8)
第13実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、第13実施形態でも、第12実施形態と同様に、活性元素固溶度に応じて変化するパラメータである出力値軌跡長を用いて活性元素固溶度が算出される。したがって、第13実施形態によれば、正確に活性元素固溶度を算出することができるという効果が得られる。
また、第13実施形態では、上式8を用いて活性元素固溶度が算出される。そして、上式8を見れば明らかなように、上式8は、極めて単純な式であるから、上式8を用いた活性元素固溶度の算出に要する演算負荷が非常に小さい。しかも、第12実施形態とは異なり、固溶度変化率を必要としないから、活性元素固溶度を算出するために固溶度変化率を予め用意する必要がない。さらに、固溶度変化率が一定の値ではない場合もあり、この場合、固溶度変化率を用いて活性元素固溶度を算出すると、算出された活性元素固溶度が正確な値ではないことになる。しかしながら、第13実施形態では、固溶度変化率を用いることなく、活性元素固溶度が算出される。このため、第13実施形態によれば、固溶度変化率を事前に求める労力を省くことができるとともに、非常に小さい演算負荷でもって活性元素固溶度を正確に算出することができるという効果も得られる。
次に、内燃機関に関する各種のパラメータに基づいて算出される活性元素固溶度を空燃比制御用の活性元素固溶度として取得する方法を採用したさらに別の実施形態(以下「第14実施形態」という)について説明する。なお、以下で説明されない第14実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第14実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第14実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。
第14実施形態では、理論空燃比制御が実行されたときの活性元素固溶度と出力値軌跡長との関係が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた関係が軌跡長固溶度関係として電子制御装置に記憶される。そして、機関運転中の理論空燃比制御中に実際の出力値軌跡長(すなわち、機関運転時出力値軌跡長)が取得され、この機関運転時出力値軌跡長に基づいて軌跡長固溶度関係から活性元素固溶度が算出される。そして、斯くして算出された活性元素固溶度が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。
なお、第14実施形態において、理論空燃比制御が実行されたときの活性元素固溶度毎の出力値軌跡長が実験等によって予め求められ、これら求められた出力値軌跡長とそれに対応する活性元素固溶度との関係に基づいて活性元素固溶度が出力値軌跡長の関数のマップの形で電子制御装置に記憶され、機関運転中の理論空燃比制御中に機関運転時出力値軌跡長が取得され、この機関運転時出力値軌跡長に対応する活性元素固溶度が上記マップから取得され、斯くして取得された活性元素固溶度が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得されてもよく、この場合、上記軌跡長固溶度関係は、上記マップであることになる。
第14実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、出力値軌跡長と活性元素固溶度との間には一定の関係があるものの、こうした関係を1つの関係式でもって完全に表現することは容易ではないし、こうした関係を概して表現した関係式を用いて活性元素固溶度が算出されると、算出された活性元素固溶度が必ずしも正確な値ではない可能性もある。一方、第14実施形態では、実験等によって予め求められた出力値軌跡長と活性元素固溶度との間の関係が電子制御装置に記憶され、機関運転中、この記憶された関係と機関運転時出力値軌跡長とから活性元素固溶度が取得される。このため、第14実施形態によれば、正確な活性元素固溶度を算出することができるという効果が得られる。
なお、第12実施形態~第14実施形態は、広く表現すれば、それぞれ、出力値軌跡長に基づいて空燃比制御用の活性元素固溶度を取得する方法を採用した実施形態の一例である。したがって、第12実施形態~第14実施形態に関連して説明された方法以外の出力値軌跡長に基づく空燃比制御用の活性元素固溶度の取得方法が採用されてもよい。
また、第12実施形態~第14実施形態において、出力値軌跡長を取得する期間である上記予め定められた期間は、活性元素固溶度の違いが出力値軌跡長の違いとして現れる期間であれば、如何なる期間でもよく、上記予め定められた期間として、たとえば、理論空燃比制御中の期間であって下流側空燃比センサが理論空燃比よりもリッチな空燃比に対応する出力値を出力している期間、または、理論空燃比制御中の期間であって下流側空燃比センサが理論空燃比よりもリーンな空燃比に対応する出力値を出力している期間を採用することができる。
あるいは、触媒温度が所定固溶温度よりも低く且つ所定析出温度よりも低いときに理論空燃比よりもリッチな空燃比の排気ガスと理論空燃比よりもリーンな空燃比の排気ガスとが交互に触媒に流入するように排気ガスの空燃比を制御する空燃比アクティブ制御を内燃機関に実行させ、当該空燃比アクティブ制御中の期間であって下流側空燃比センサが理論空燃比よりもリッチな空燃比に対応する出力値を出力している期間、または、当該空燃比アクティブ制御中の期間であって下流側空燃比センサが理論空燃比よりもリーンな空燃比に対応する出力値を出力している期間、または、下流側空燃比センサが理論空燃比よりもリッチな空燃比に対応する出力値を出力しているか理論空燃比よりもリーンな空燃比に対応する出力値を出力しているかとは無関係に選択される当該空燃比アクティブ制御中の期間を上記予め定められた期間として採用することもできる。
なお、出力値軌跡長を取得するために空燃比アクティブ制御を触媒温度とは無関係に実行する場合、理論空燃比よりも大きくリッチな空燃比の排気ガスと理論空燃比よりも大きくリーンな空燃比の排気ガスとが交互に触媒に供給されると、空燃比アクティブ制御中に活性元素が担体に固溶したり、活性元素が担体から析出したりし、出力値軌跡長を正確に取得することができない可能性がある。したがって、空燃比アクティブ制御中において担体への活性元素の固溶および担体からの活性元素の析出を抑制するという観点では、理論空燃比よりもリッチな空燃比であるが理論空燃比に近い空燃比の排気ガスと理論空燃比よりもリーンな空燃比であるが理論空燃比に近い空燃比の排気ガスとが交互に触媒に供給されることが好ましい。
次に、内燃機関に関する各種のパラメータに基づいて算出される活性元素固溶度を空燃比制御用の活性元素固溶度として取得する方法を採用したさらに別の実施形態(以下「第15実施形態」という)について説明する。なお、以下で説明されない第15実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第15実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第15実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。また、以下の説明において「正方向反転回数」とは「予め定められた期間に下流側空燃比センサの出力値の変化率が負の値から正の値に反転した回数」を意味し、「負方向反転回数」とは「予め定められた期間に下流側空燃比センサの出力値の変化率が正の値から負の値に反転した回数」を意味し、「合計反転回数」とは「正方向反転回数と負方向反転回数との合計の回数」を意味する。
第15実施形態では、活性元素固溶度が予め定められた固溶度であるときに理論空燃比制御が実行されたときの正方向反転回数が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた正方向反転回数が基準正方向反転回数として電子制御装置に記憶されるとともに、上記予め定められた固溶度が基準固溶度として電子制御装置に記憶される。また、正方向反転回数の変化量に対する活性元素固溶度の変化量の比、つまり、単位正方向反転回数変化量に対する活性元素固溶度の変化量(以下この変化量を「固溶度変化率」という)が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた固溶度変化率が電子制御装置に記憶される。そして、機関運転中の理論空燃比制御中に実際の正方向反転回数(以下この正方向反転回数を「機関運転時正方向反転回数」という)が取得され、基準正方向反転回数に対する機関運転時正方向反転回数の差(以下この差を「正方向反転回数差」という)が算出される。そして、斯くして算出された正方向反転回数差を上記固溶度変化率に乗算して得られる値を基準固溶度に加算して得られる値が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。つまり、この場合、次式9に従って空燃比制御用の活性元素固溶度Dsが取得される。なお、次式9において「Dsb」は「基準固溶度」であり、「Rds」は「固溶度変化率」であり、「Npb」は「基準正方向反転回数」であり、「Np」は「機関運転時正方向反転回数」である。
Ds=Dsb+Rds×(Npb-Np) …(9)
あるいは、第15実施形態では、活性元素固溶度が予め定められた固溶度であるときに理論空燃比制御が実行されたときの負方向反転回数が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた負方向反転回数が基準負方向反転回数として電子制御装置に記憶されるとともに、上記予め定められた固溶度が基準固溶度として電子制御装置に記憶される。また、負方向反転回数の変化量に対する活性元素固溶度の変化量の比、つまり、単位負方向反転回数変化量に対する活性元素固溶度の変化量(以下この変化量を「固溶度変化率」という)が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた固溶度変化率が電子制御装置に記憶される。そして、機関運転中の理論空燃比制御中に実際の負方向反転回数(以下この負方向反転回数を「機関運転時負方向反転回数」という)が取得され、基準負方向反転回数に対する機関運転時負方向反転回数の差(以下この差を「負方向反転回数差」という)が算出される。そして、斯くして算出された負方向反転回数差を上記固溶度変化率に乗算して得られる値を基準固溶度に加算して得られる値が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。つまり、この場合、次式10に従って空燃比制御用の活性元素固溶度Dsが取得される。なお、次式10において「Dsb」は「基準固溶度」であり、「Rds」は「固溶度変化率」であり、「Nnb」は「基準負方向反転回数」であり、「Nn」は「機関運転時負方向反転回数」である。
Ds=Dsb+Rds×(Nnb-Nn) …(10
あるいは、第15実施形態では、活性元素固溶度が予め定められた固溶度であるときに理論空燃比制御が実行されたときの合計反転回数が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた合計反転回数が基準合計反転回数として電子制御装置に記憶されるとともに、上記予め定められた固溶度が基準固溶度として電子制御装置に記憶される。また、合計反転回数の変化量に対する活性元素固溶度の変化量の比、つまり、単位合計反転回数変化量に対する活性元素固溶度の変化量(以下この変化量を「固溶度変化率」という)が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた固溶度変化率が電子制御装置に記憶される。そして、機関運転中の理論空燃比制御中に実際の合計反転回数(以下この合計反転回数を「機関運転時合計反転回数」という)が取得され、基準合計反転回数に対する機関運転時合計反転回数の差(以下この差を「合計反転回数差」という)が算出される。そして、斯くして算出された合計反転回数差を上記固溶度変化率に乗算して得られる値を基準固溶度に加算して得られる値が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。つまり、この場合、次式11に従って空燃比制御用の活性元素固溶度Dsが取得される。なお、次式10において「Dsb」は「基準固溶度」であり、「Rds」は「固溶度変化率」であり、「Nsb」は「基準合計反転回数」であり、「Ns」は「機関運転時合計反転回数」である。
Ds=Dsb+Rds×(Nsb-Ns) …(11)
第15実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、図17に示されているように、本願の発明者の研究によって、析出活性元素の量が少ないほど、すなわち、活性元素固溶度Dsが大きいほど、正方向反転回数、および、負方向反転回数、および、合計反転回数(以下、正方向反転回数と負方向反転回数と合計反転回数とをまとめて「反転回数」という)Nsが多くなることが判明した。ここで、第15実施形態では、機関運転時反転回数に基づいて活性元素固溶度が算出される。つまり、活性元素固溶度に応じて変化するパラメータである反転回数を用いて活性元素固溶度が算出される。したがって、第15実施形態によれば、正確に活性元素固溶度を算出することができるという効果が得られる。また、第15実施形態によれば、触媒温度を用いることなく、正確に活性元素固溶度を算出することができるという効果も得られる。
さらに、第15実施形態では、上式9~上式11を用いて活性元素固溶度が算出される。そして、上式9~上式11を見れば明らかなように、これら式は、極めて単純な式であり、これら式を用いた活性元素固溶度の算出に要する演算負荷は、非常に小さいと言える。このため、第15実施形態によれば、非常に小さい演算負荷でもって活性元素固溶度を算出することができるという効果も得られる。
次に、内燃機関に関する各種のパラメータに基づいて算出される活性元素固溶度を空燃比制御用の活性元素固溶度として取得する方法を採用した別の実施形態(以下「第16実施形態」という)について説明する。なお、以下で説明されない第16実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第16実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第16実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。
第16実施形態では、活性元素固溶度が予め定められた固溶度であるときに理論空燃比制御が実行されたときの正方向反転回数が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた正方向反転回数が基準正方向反転回数として電子制御装置に記憶される。また、最大固溶度が予め決められる。ここでは、最大固溶度は、たとえば、「100」に決められる。そして、機関運転中の理論空燃比制御中に実際の正方向反転回数(すなわち、機関運転時正方向反転回数)が取得され、基準正方向反転回数に対する機関運転時正方向反転回数の差(すなわち、正方向反転回数差)が算出される。そして、斯くして算出された正方向反転回数差を基準正方向反転回数によって除算して得られる値を最大固溶度である「100」から減算して得られる値が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。つまり、この場合、次式12に従って空燃比制御用の活性元素固溶度Dsが算出される。なお、次式12において「Npb」は「基準正方向反転回数」であり、「Np」は「機関運転時正方向反転回数」である。
Ds=(100-(Npb-Np)/Npb) …(12)
あるいは、第16実施形態では、活性元素固溶度が予め定められた固溶度であるときに理論空燃比制御が実行されたときの負方向反転回数が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた負方向反転回数が基準負方向反転回数として電子制御装置に記憶される。また、最大固溶度が予め決められる。ここでは、最大固溶度は、たとえば、「100」に決められる。そして、機関運転中の理論空燃比制御中に実際の負方向反転回数(すなわち、機関運転時負方向反転回数)が取得され、基準負方向反転回数に対する機関運転時負方向反転回数の差(すなわち、負方向反転回数差)が算出される。そして、斯くして算出された負方向反転回数差を基準負方向反転回数によって除算して得られる値を最大固溶度である「100」から減算して得られる値が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。つまり、この場合、次式13に従って空燃比制御用の活性元素固溶度Dsが算出される。なお、次式13において「Nnb」は「基準負方向反転回数」であり、「Nn」は「機関運転時負方向反転回数」である。
Ds=(100-(Nnb-Nn)/Nnb) …(13)
あるいは、第16実施形態では、活性元素固溶度が予め定められた固溶度であるときに理論空燃比制御が実行されたときの合計反転回数が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた合計反転回数が基準合計反転回数として電子制御装置に記憶される。また、最大固溶度が予め決められる。ここでは、最大固溶度は、たとえば、「100」に決められる。そして、機関運転中、実際の合計反転回数(すなわち、機関運転時合計反転回数)が取得され、基準合計反転回数に対する機関運転時合計反転回数の差(すなわち、合計反転回数差)が算出される。そして、斯くして算出された合計反転回数差を基準合計反転回数によって除算して得られる値を最大固溶度である「100」から減算して得られる値が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。つまり、この場合、次式14に従って空燃比制御用の活性元素固溶度Dsが算出される。なお、次式14において「Nsb」は「基準合計反転回数」であり、「Ns」は「機関運転時合計反転回数」である。
Ds=(100-(Nsb-Ns)/Nsb) …(14)
第16実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、第16実施形態でも、第15実施形態と同様に、活性元素固溶度に応じて変化するパラメータである反転回数(すなわち、正方向反転回数、または、負方向反転回数、または、合計反転回数)を用いて活性元素固溶度が算出される。したがって、第16実施形態によれば、正確に活性元素固溶度を算出することができるという効果が得られる。
また、第16実施形態では、上式12~上式14を用いて活性元素固溶度が算出される。そして、上式12~上式14を見れば明らかなように、これら式は、極めて単純な式であるから、これら式を用いた活性元素固溶度の算出に要する演算負荷が非常に小さい。しかも、第15実施形態とは異なり、固溶度変化率を必要としないから、活性元素固溶度を算出するために固溶度変化率を予め用意する必要がない。さらに、固溶度変化率が一定の値ではない場合もあり、この場合、固溶度変化率を用いて活性元素固溶度を算出すると、算出された活性元素固溶度が正確な値ではないことになる。しかしながら、第16実施形態では、固溶度変化率を用いることなく、活性元素固溶度が算出される。このため、第16実施形態によれば、固溶度変化率を事前に求める労力を省くことができるとともに、非常に小さい演算負荷でもって活性元素固溶度を正確に算出することができるという効果も得られる。
次に、内燃機関に関する各種のパラメータに基づいて算出される活性元素固溶度を空燃比制御用の活性元素固溶度として取得する方法を採用したさらに別の実施形態(以下「第17実施形態」という)について説明する。なお、以下で説明されない第17実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第17実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第17実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。
第17実施形態では、理論空燃比制御が実行されたときの活性元素固溶度と正方向反転回数との関係が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた関係が正方向反転回数固溶度関係として電子制御装置に記憶される。そして、機関運転中の理論空燃比制御中に実際の正方向反転回数(すなわち、機関運転時正方向反転回数)が取得され、この機関運転時正方向反転回数に基づいて正方向反転回数固溶度関係から活性元素固溶度が算出される。そして、斯くして算出された活性元素固溶度が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。なお、この場合において、理論空燃比制御が実行されたときの活性元素固溶度毎の正方向反転回数が実験等によって予め求められ、これら求められた正方向反転回数とそれに対応する活性元素固溶度との関係に基づいて活性元素固溶度が正方向反転回数の関数のマップの形で電子制御装置に記憶され、機関運転中の理論空燃比制御中に正方向反転回数(すなわち、機関運転時正方向反転回数)が取得され、この機関運転時正方向反転回数に対応する活性元素固溶度が上記マップから取得され、斯くして取得された活性元素固溶度が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得されてもよく、この場合、上記正方向反転回数固溶度関係は、上記マップであることになる。
あるいは、第17実施形態では、理論空燃比制御が実行されたときの活性元素固溶度と負方向反転回数との関係が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた関係が負方向反転回数固溶度関係として電子制御装置に記憶される。そして、機関運転中の理論空燃比制御中に実際の負方向反転回数(すなわち、機関運転時負方向反転回数)が取得され、この機関運転時負方向反転回数に基づいて負方向反転回数固溶度関係から活性元素固溶度が算出される。そして、斯くして算出された活性元素固溶度が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。なお、この場合において、理論空燃比制御が実行されたときの活性元素固溶度毎の負方向反転回数が実験等によって予め求められ、これら求められた負方向反転回数とそれに対応する活性元素固溶度との関係に基づいて活性元素固溶度が負方向反転回数の関数のマップの形で電子制御装置に記憶され、機関運転中の理論空燃比制御中に負方向反転回数(すなわち、機関運転時負方向反転回数)が取得され、この機関運転時負方向反転回数に対応する活性元素固溶度が上記マップから取得され、斯くして取得された活性元素固溶度が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得されてもよく、この場合、上記負方向反転回数固溶度関係は、上記マップであることになる。
あるいは、第17実施形態では、理論空燃比制御が実行されたときの活性元素固溶度と合計反転回数との関係が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた関係が合計反転回数固溶度関係として電子制御装置に記憶される。そして、機関運転中の理論空燃比制御中に実際の合計反転回数(すなわち、機関運転時合計反転回数)が取得され、この機関運転時合計反転回数に基づいて合計反転回数固溶度関係から活性元素固溶度が算出される。そして、斯くして算出された活性元素固溶度が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。なお、この場合において、理論空燃比制御が実行されたときの活性元素固溶度毎の合計反転回数が実験等によって予め求められ、これら求められた合計反転回数とそれに対応する活性元素固溶度との関係に基づいて活性元素固溶度が合計反転回数の関数のマップの形で電子制御装置に記憶され、機関運転中の理論空燃比制御中に合計反転回数(すなわち、機関運転時合計反転回数)が取得され、この機関運転時合計反転回数に対応する活性元素固溶度が上記マップから取得され、斯くして取得された活性元素固溶度が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得されてもよく、この場合、上記合計反転回数固溶度関係は、上記マップであることになる。
第17実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、反転回数と活性元素固溶度との間には一定の関係があるものの、こうした関係を1つの関係式でもって完全に表現することは容易ではないし、こうした関係を概して表現した関係式を用いて活性元素固溶度が算出されると、算出された活性元素固溶度が必ずしも正確な値ではない可能性もある。一方、第17実施形態では、実験等によって予め求められた反転回数と活性元素固溶度との間の関係が電子制御装置に記憶され、機関運転中、この記憶された関係と機関運転時反転回数とから活性元素固溶度が取得される。このため、第17実施形態によれば、正確な活性元素固溶度を算出することができるという効果が得られる。
なお、第15実施形態~第17実施形態は、広く表現すれば、それぞれ、反転回数(すなわち、正方向反転回数、または、負方向反転回数、または、合計反転回数)に基づいて空燃比制御用の活性元素固溶度を取得する方法を採用した実施形態の一例である。したがって、第15実施形態~第17実施形態に関連して説明された方法以外の反転回数に基づいて空燃比制御用の活性元素固溶度の取得方法が採用されてもよい。
また、第15実施形態~第17実施形態において、反転回数を取得する期間である上記予め定められた期間は、活性元素固溶度の違いが反転回数の違いとして現れる期間であれば、如何なる期間でもよく、上記予め定められた期間として、たとえば、理論空燃比制御中の期間であって下流側空燃比センサが理論空燃比よりもリッチな空燃比に対応する出力値を出力している期間、または、理論空燃比制御中の期間であって下流側空燃比センサが理論空燃比よりもリーンな空燃比に対応する出力値を出力している期間を採用することができる。あるいは、触媒温度が所定固溶温度よりも低く且つ所定析出温度よりも低いときに理論空燃比よりもリッチな空燃比の排気ガスと理論空燃比よりもリーンな空燃比の排気ガスとが交互に触媒に流入するように排気ガスの空燃比を制御する空燃比アクティブ制御を内燃機関に実行させ、当該空燃比アクティブ制御中の期間であって下流側空燃比センサが理論空燃比よりもリッチな空燃比に対応する出力値を出力している期間、または、当該空燃比アクティブ制御中の期間であって下流側空燃比センサが理論空燃比よりもリーンな空燃比に対応する出力値を出力している期間、または、下流側空燃比センサが理論空燃比よりもリッチな空燃比に対応する出力値を出力しているか理論空燃比よりもリーンな空燃比に対応する出力値を出力しているかとは無関係に選択される当該空燃比アクティブ制御中の期間を上記予め定められた期間として採用することもできる。
なお、反転回数を取得するために空燃比アクティブ制御を触媒温度とは無関係に実行する場合、理論空燃比よりも大きくリッチな空燃比の排気ガスと理論空燃比よりも大きくリーンな空燃比の排気ガスとが交互に触媒に供給されると、空燃比アクティブ制御中に活性元素が担体に固溶したり、活性元素が担体から析出したりし、反転回数を正確に取得することができない可能性がある。したがって、空燃比アクティブ制御中において担体への活性元素の固溶および担体からの活性元素の析出を抑制するという観点では、理論空燃比よりもリッチな空燃比であるが理論空燃比に近い空燃比の排気ガスと理論空燃比よりもリーンな空燃比であるが理論空燃比に近い空燃比の排気ガスとが交互に触媒に供給されることが好ましい。
また、第15実施形態~第17実施形態において、合計反転回数は、予め定められた期間に下流側空燃比センサの出力値の変化率が負の値から正の値に反転した回数(すなわち、正方向反転回数)と予め定められた期間に下流側空燃比センサの出力値の変化率が正の値から負の値に反転した回数(すなわち、負方向反転回数)との合計の回数である。ここで、合計反転回数を構成する正方向反転回数に関する上記予め定められた期間の長さと合計反転回数を構成する負方向反転回数に関する上記予め定められた期間の長さとは、互いに等しい長さであってもよいし互いに異なる長さであってもよい。また、合計反転回数を構成する正方向反転回数に関する上記予め定められた期間の長さと合計反転回数を構成する負方向反転回数に関する上記予め定められた期間の長さとが互いに等しい長さである場合において、これら予め定められた期間が互いに同じ期間であってもよいし互いに異なる期間であってもよい。
次に、内燃機関に関する各種のパラメータに基づいて算出される活性元素固溶度を空燃比制御用の活性元素固溶度として取得する方法を採用したさらに別の実施形態(以下「第18実施形態」という)について説明する。なお、以下で説明されない第18実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第18実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第18実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。なお、以下の説明において「酸素放出量」とは「触媒に捕捉されている触媒から放出される酸素の量」を意味する。
第18実施形態では、理論空燃比制御とフューエルカット制御とフューエルカット制御後燃料増量制御とが選択的に実行可能である。ここで、理論空燃比制御とは、第1実施形態の理論空燃比制御と同じ制御である。また、フューエルカット制御とは、第2実施形態のフューエルカット制御と同じ制御である。また、フューエルカット制御後燃料増量制御とは、フューエルカット制御が終了したときに一定期間に亘って実行される制御であって、燃料噴射量が増量されて混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比になるように目標燃料噴射量を設定する制御である。
また、触媒は、そこに流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比であるときには排気ガス中の酸素を吸収または吸蔵することによって捕捉し、そこに流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比であるときには捕捉している酸素を放出する酸素捕捉放出能力を有する。
そして、第18実施形態では、活性元素固溶度が予め定められた固溶度であるときにフューエルカット制御後燃料増量制御が実行されたときの酸素放出量(すなわち、触媒の酸素捕捉放出能力によって触媒から放出される酸素の量)が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた酸素放出量が基準酸素放出量として電子制御装置に記憶される。また、酸素放出量の変化量に対する活性元素固溶度の変化量の比、つまり、単位酸素放出量変化量当たりの活性元素固溶度の変化量(以下この変化量を「固溶度変化率」という)が実験等によって求められる。そして、斯くして求められた固溶度変化率が電子制御装置に記憶される。そして、機関運転中のフューエルカット制御後燃料増量制御中に実際の酸素放出量(以下、実際の酸素放出量を「機関運転時酸素放出量」という)が取得され、基準酸素放出量に対する機関運転時酸素放出量の差(以下この差を「酸素放出量差」という)が算出される。そして、斯くして算出された酸素放出量差を上記固溶度変化率に乗算して得られる値を基準固溶度に加算して得られる値が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。つまり、第18実施形態では、次式15に従って空燃比制御用の活性元素固溶度Dsが取得される。なお、次式15において「Dsb」は「基準固溶度」であり、「Rds」は「固溶度変化率」であり、「Aob」は「基準酸素放出量」であり、「Ao」は「機関運転時酸素放出量」である。
Ds=Dsb+Rds×(Aob-Ao) …(15)
第18実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、図18に示されているように、本願の発明者の研究によって、析出活性元素の量が少ないほど、すなわち、活性元素固溶度が大きいほど、フューエルカット制御後燃料増量制御が実行されたときの酸素放出量が少なくなることが判明した。ここで、第18実施形態では、フューエルカット制御後燃料増量制御が実行されたときの機関運転時酸素放出量に基づいて活性元素固溶度が算出される。つまり、活性元素固溶度に応じて変化するパラメータである酸素放出量を用いて活性元素固溶度が算出される。したがって、第18実施形態によれば、正確に活性元素固溶度を算出することができるという効果が得られる。また、第18実施形態によれば、触媒温度を用いることなく、正確に活性元素固溶度を算出することができるという効果も得られる。
さらに、第18実施形態では、上式15を用いて活性元素固溶度が算出される。そして、上式15を見れば明らかなように、上式15は、極めて単純な式であり、上式15を用いた活性元素固溶度の算出に要する演算負荷は、非常に小さいと言える。このため、第18実施形態によれば、非常に小さい演算負荷でもって活性元素固溶度を算出することができるという効果も得られる。
なお、フューエルカット制御後燃料増量制御は、たとえば、フューエルカット制御中に触媒に過剰に捕捉された酸素を触媒から放出させることを目的とした制御である。つまり、フューエルカット制御中は、理論空燃比よりも大きくリーンな空燃比が継続的に触媒に流入し、したがって、多量の酸素が継続的に触媒に流入することから、触媒捕捉酸素量(すなわち、触媒が捕捉している酸素の量)がその上限値(すなわち、触媒の酸素捕捉放出能力によって捕捉可能な酸素の量の上限値)に達してしまう可能性がある。一方、理論空燃比制御中は、理論空燃比よりもリーンな空燃比の排気ガスが触媒に流入することがある。したがって、触媒捕捉酸素量がその上限値に達している場合に、フューエルカット制御後に直ちに理論空燃比制御が実行されると、理論空燃比よりもリーンな空燃比の排気ガスが流入したときに触媒がそこに流入する排気ガス中の酸素を捕捉することができず、触媒の内部雰囲気の空燃比を理論空燃比に維持することができず、その結果、触媒に十分な浄化能力を発揮させることができない。そこで、理論空燃比制御中に理論空燃比よりもリーンな空燃比の排気ガスが触媒に流入したとしても触媒の内部雰囲気の空燃比が理論空燃比に維持されるように、フューエルカット制御中に触媒に過剰に捕捉された酸素を触媒から放出させることを目的として、フューエルカット制御後燃料増量制御を利用することができるのである。
なお、フューエルカット制御後燃料増量制御がフューエルカット制御中に触媒に過剰に捕捉された酸素を触媒から放出させることを目的として利用される場合、フューエルカット制御後燃料増量制御が実行される期間は、フューエルカット制御の終了時点から触媒流出排気空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比になる時点までの期間に設定されることが好ましい。
また、第18実施形態において、酸素放出量の具体的な取得方法は、酸素放出量を取得することができるのであれば、如何なる方法でもよく、この方法として、たとえば、酸素放出量を検出するセンサを触媒に設け、該センサによって酸素放出量を取得する方法を採用することもできるし、内燃機関に関する種々のパラメータに基づく演算によって酸素放出量を取得する方法を採用することもできる。内燃機関に関する種々のパラメータに基づく演算による酸素放出量の取得方法の一例として、フューエルカット制御後燃料増量制御中の触媒流入排気空燃比から理論空燃比を減算して得られる値に吸入空気量を乗算して得られる値を積算して得られる値を酸素放出量として取得する方法、つまり、次式16に従って算出される値Aoを酸素放出量として取得する方法を挙げることができる。なお、次式16において「AFr」は「フューエルカット制御後燃料増量制御中の触媒流入排気空燃比」であり、「AFst」は「理論空燃比」であり、「Ga」は「吸入空気量」である。
Ao=Σ((AFr-AFst)×Ga) …(16)
次に、内燃機関に関する各種のパラメータに基づいて算出される活性元素固溶度を空燃比制御用の活性元素固溶度として取得する方法を採用した別の実施形態(以下「第19実施形態」という)について説明する。なお、以下で説明されない第19実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第19実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第19実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。
第19実施形態では、第18実施形態と同様に、理論空燃比制御とフューエルカット制御とフューエルカット制御後燃料増量制御とが選択的に実行可能である。そして、第19実施形態では、活性元素固溶度が予め定められた固溶度であるときにフューエルカット制御後燃料増量制御が実行されたときの酸素放出量が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた酸素放出量が基準酸素放出量として電子制御装置に記憶される。また、全ての活性元素が担体に固溶しているときの活性元素固溶度(以下この活性元素固溶度を「最大固溶度」という)が予め決められる。ここでは、最大固溶度は、たとえば、「100」に決められる。そして、機関運転中のフューエルカット制御後燃料増量制御中に実際の酸素放出量(すなわち、機関運転時酸素放出量)が取得され、基準酸素放出量に対する機関運転時酸素放出量の差(すなわち、酸素放出量差)が算出される。そして、斯くして算出された酸素放出量差を基準酸素放出量によって除算して得られる値を最大固溶度である「100」から減算して得られる値が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。つまり、第19実施形態では、次式17に従って空燃比制御用の活性元素固溶度Dsが算出される。なお、次式17において「Aob」は「基準酸素放出量」であり、「Ao」は「機関運転時酸素放出量」である。
Ds=(100-(Aob-Ao)/Aob) …(17)
第19実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、第19実施形態でも、第18実施形態と同様に、活性元素固溶度に応じて変化するパラメータである酸素放出量を用いて活性元素固溶度が算出される。したがって、第19実施形態によれば、正確に活性元素固溶度を算出することができるという効果が得られる。
また、第19実施形態では、上式17を用いて活性元素固溶度が算出される。そして、上式17を見れば明らかなように、上式17は、極めて単純な式であるから、上式17を用いた活性元素固溶度の算出に要する演算負荷が非常に小さい。しかも、第28実施形態とは異なり、固溶度変化率を必要としないから、活性元素固溶度を算出するために固溶度変化率を予め用意する必要がない。さらに、固溶度変化率が一定の値ではない場合もあり、この場合、固溶度変化率を用いて活性元素固溶度を算出すると、算出された活性元素固溶度が正確な値ではないことになる。しかしながら、第19実施形態では、固溶度変化率を用いることなく、活性元素固溶度が算出される。このため、第19実施形態では、固溶度変化率を事前に求める労力を省くことができるとともに、非常に小さい演算負荷でもって活性元素固溶度を正確に算出することができるという効果も得られる。
次に、内燃機関に関する各種のパラメータに基づいて算出される活性元素固溶度を空燃比制御用の活性元素固溶度として取得する方法を採用したさらに別の実施形態(以下「第20実施形態」という)について説明する。なお、以下で説明されない第20実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第20実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第20実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。
第20実施形態では、第18実施形態と同様に、理論空燃比制御とフューエルカット制御とフューエルカット制御後燃料増量制御とが選択的に実行可能である。そして、第20実施形態では、フューエルカット制御後燃料増量制御が実行されたときの活性元素固溶度と酸素放出量との関係が実験等によって予め求められる。そして、斯くして求められた関係が酸素放出量固溶度関係として電子制御装置に記憶される。そして、機関運転中のフューエルカット制御後燃料増量制御中に実際の酸素放出量(すなわち、機関運転時酸素放出量)が取得され、この機関運転時酸素放出量に基づいて酸素放出量固溶度関係から活性元素固溶度が算出される。そして、斯くして算出された活性元素固溶度が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得される。
なお、第20実施形態において、フューエルカット制御後燃料増量制御が実行されたときの活性元素固溶度毎の酸素放出量が実験等によって予め求められ、これら求められた酸素放出量とそれに対応する活性元素固溶度との関係に基づいて活性元素固溶度が酸素放出量の関数のマップの形で電子制御装置に記憶され、機関運転中のフューエルカット制御後燃料増量制御中に機関運転時酸素放出量が取得され、この機関運転時酸素放出量に対応する活性元素固溶度が上記マップから取得され、斯くして取得された活性元素固溶度が空燃比制御用の活性元素固溶度として取得されてもよく、この場合、上記酸素放出量固溶度関係は、上記マップであることになる。
第20実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、酸素放出量と活性元素固溶度との間には一定の関係があるものの、こうした関係を1つの関係式でもって完全に表現することは容易ではないし、こうした関係を概して表現した関係式を用いて活性元素固溶度が算出されると、算出された活性元素固溶度が必ずしも正確な値ではない可能性もある。一方、第20実施形態では、実験等によって予め求められた酸素放出量と活性元素固溶度との間の関係が電子制御装置に記憶され、機関運転中、この記憶された関係と機関運転時酸素放出量とから活性元素固溶度が取得される。このため、第20実施形態によれば、正確な活性元素固溶度を算出することができるという効果が得られる。
なお、酸素放出量の取得方法は、特定の方法に制限されず、この方法として、たとえば、フューエルカット制御後燃料増量制御中の触媒流出排気空燃比(すなわち、触媒から流出する排気ガスの空燃比)と吸入空気量とに基づいて酸素放出量を算出するという方法を採用することができる。この場合、触媒流出排気空燃比が大きいほど(すなわち、触媒流出排気空燃比がリーンな空燃比であるほど)取得される酸素放出量が多い傾向にあり、吸入空気量が少ないほど算出される酸素放出量が多い傾向にある。
次に、第21実施形態について説明する。なお、以下で説明されない第21実施形態の構成および制御は、上述した実施形態の構成および制御と同じであるか、第21実施形態に具現化された本発明の技術思想に鑑みたときに当然に導き出される構成および制御である。また、以下で説明する第21実施形態の制御に上述した実施形態の制御を不整合が生じない範囲で組み合わせることもできる。
第21実施形態では、機関運転の停止が行われた後に機関運転の始動が開始されてから一定期間(以下この期間を「機関始動期間」という)中は、上述した第6実施形態~第11実施形態のいずれか1つの触媒温度に基づく活性元素固溶度の取得が行われる。一方、機関始動期間の経過時点から機関運転の停止時点までの期間(以下この期間を「通常運転期間」という)中は、上述した第5実施形態の固溶度カウンタに基づく活性元素固溶度の取得、または、第12実施形態~第14実施形態のいずれか1つの出力値軌跡長に基づく活性元素固溶度の取得、または、上述した第15実施形態~第17実施形態のいずれか1つの反転回数に基づく活性元素固溶度の取得、または、第18実施形態~第20実施形態のいずれか1つの酸素放出量に基づく活性元素固溶度の取得が行われる。そして、機関始動期間の最後に取得された活性元素固溶度が当該機関始動期間の直前の通常運転期間の最後に取得された活性元素固溶度以上であるときには、機関始動期間が経過した時点の活性元素固溶度として、当該機関始動期間の最後に取得された活性元素固溶度が採用される。一方、機関始動期間の最後に取得された活性元素固溶度が当該機関始動期間の直前の通常運転期間の最後に取得された活性元素固溶度よりも小さいときには、機関始動期間が経過した時点の活性元素固溶度として、当該機関始動期間の直前の通常運転期間の最後に取得された活性元素固溶度が採用される。
第21実施形態によれば、以下の効果が得られる。すなわち、活性元素固溶度の違いに起因する触媒温度の違いは、触媒温度が一定または略一定であるときよりも、触媒温度が上昇しているときのほうが顕著に現れる。したがって、活性元素固溶度を正確に取得する観点では、触媒温度が上昇している機関始動期間中に触媒温度に基づいて活性元素固溶度を取得することは有利であるが、触媒温度が一定または略一定である通常運転期間中に触媒温度に基づいて活性元素固溶度を取得することは不利であると言える。
また、固溶度カウンタは、少なくとも、触媒温度が所定固溶温度以上であるときか或いは触媒温度が所定析出温度以上であるときにしか増減されない。したがって、活性元素固溶度を正確に取得する観点では、触媒温度が所定固溶温度以上にならない可能性が高い或いは触媒温度が所定析出温度以上にならない可能性が高い機関始動期間中に固溶度カウンタに基づいて活性元素固溶度を取得することは不利であるが、触媒温度が所定固溶温度以上になる可能性が高い或いは触媒温度が所定析出温度以上になる可能性が高い通常運転期間中に固溶度カウンタに基づいて活性元素固溶度を取得することは有利であると言える。
また、出力値軌跡長および反転回数は、触媒流出排気空燃比に対応する下流側空燃比センサの出力値に基づいて取得される。このため、触媒温度が触媒の活性温度以上であり、したがって、触媒の浄化能力が十分に発揮されているときに、活性元素固溶度の違いに対応した違いが出力値軌跡長および反転回数に生じる。したがって、活性元素固溶度を正確に取得する観点では、触媒温度が触媒の活性温度以上にならない可能性が高い機関始動期間中に出力値軌跡長または反転回数に基づいて活性元素固溶度を取得することは不利であるが、触媒温度が触媒の活性温度以上になる可能性が高い通常運転期間中に出力値軌跡長または反転回数に基づいて活性元素固溶度を取得することは有利であると言える。
また、酸素放出量は、触媒の活性度合の影響を受ける。このため、触媒温度が触媒の活性温度以上であり、したがって、触媒の浄化能力が十分に発揮されているときに、活性元素固溶度の違いに対応する違いが酸素放出量に生じる。したがって、活性元素固溶度を正確に取得する観点では、触媒温度が触媒の活性温度以上にならない可能性が高い機関始動期間中に酸素放出量に基づいて活性元素固溶度を取得することは不利であるが、触媒温度が触媒の活性温度以上になる可能性が高い通常運転期間中に酸素放出量に基づいて活性元素固溶度を取得することは有利であると言える。
第21実施形態では、基本的には、機関始動期間中は、触媒温度に基づいて活性元素固溶度が取得され、通常運転期間中は、固溶度カウンタ、または、出力値軌跡長、または、反転回数、または、酸素放出量に基づいて活性元素固溶度が取得される。したがって、第21実施形態によれば、機関始動期間中も通常運転期間中も、活性元素固溶度を正確に取得することができるという効果が得られる。
また、第21実施形態によれば、以下の効果も得られる。すなわち、互いに異なる2つの方法によって取得された活性元素固溶度が互いに異なる場合、より大きい値の活性元素固溶度を内燃機関の制御等に用いる活性元素固溶度として採用することが好ましい。なぜなら、より小さい値の活性元素固溶度を内燃機関の制御等に用いる活性元素固溶度として採用すると、結果的に、析出活性元素の量がより多く、したがって、触媒の浄化能力が高いことを前提に内燃機関の制御等が行われ、触媒から流出する排気ガスに関する排気エミッション性能が低下してしまう可能性があるからである。
ここで、第21実施形態では、機関始動期間中に最後に取得された活性元素固溶度が当該機関始動期間の直前(ここで「直前」とは「時間的に直前」という意味ではなく、「順序として直前」という意味である)の通常運転期間中に最後に取得された活性元素固溶度以上であれば、機関始動期間中に最後に取得された活性元素固溶度がそのまま機関始動期間中の最終的な活性元素固溶度として採用されるが、機関始動期間中に最後に取得された活性元素固溶度が当該機関始動期間の直前の通常運転期間中に最後に取得された活性元素固溶度よりも小さければ、通常運転期間中に最後に取得された活性元素固溶度が当該機関始動期間中の最終的な活性元素固溶度として採用される。つまり、より大きい値の活性元素固溶度が機関始動期間中の最終的な活性元素固溶度として採用される。したがって、第21実施形態によれば、機関始動期間の直後から高い排気エミッション性能を確保することができるという効果が得られる。
なお、第21実施形態において、機関始動期間は、機関運転の停止が行われた後に機関運転の始動が開始されてから一定期間であれば如何なる期間であってもよく、たとえば、機関始動期間として、機関運転が比較的長期に亘って停止された後に機関運転が開始されてから一定期間、すなわち、いわゆる内燃機関の冷間始動期間を採用することができる。また、機関始動期間の長さは、特に制限されず、たとえば、機関始動期間として、機関運転が開始されてから機関回転数が一定の回転数に達するまでの期間を採用することができる。
次に、第21実施形態の活性元素固溶度の取得を実行するルーチンの一例について説明する。このルーチンの一例が図19および図20に示されている。なお、このルーチンは、内燃機関の運転が始動されたときに開始され、機関運転中、継続的に実行され、内燃機関の運転が停止されたときに停止されるルーチンである。
図19および図20のルーチンが開始されると、始めに、ステップ700において、機関始動完了フラグFengがセットされている(Feng=1)か否かが判別される。この機関始動完了フラグFengは、内燃機関の始動が完了したとき(すなわち、機関始動期間が終了したとき)にセットされ、機関運転が停止されたとき(すなわち、通常運転期間が終了したとき)にリセットされるフラグである。ステップ700において、Feng=1であると判別されたときには、ルーチンはステップ712に進む。一方、Feng=1ではないと判別されたときには、ルーチンはステップ701に進む。
ステップ700においてFeng=1ではないと判別され、ルーチンがステップ701に進むと、その時の触媒温度Tcatが取得される。次いで、ステップ702において、ステップ701で取得された触媒温度Tcatを前回のステップ702で記憶された触媒温度積算値に加算することによって新たな触媒温度積算値ΣTcatが算出されるとともに算出された触媒温度積算値ΣTcatが電子制御装置に記憶される。次いで、ステップ703において、機関運転が停止したか否かが判別される。ここで、機関運転が停止したと判別されたときには、ルーチンは停止される。一方、機関運転が停止していないと判別されたときには、ルーチンはステップ704に進む。
ステップ703において機関運転が停止していないと判別され、ルーチンがステップ704に進むと、内燃機関の始動が完了したか否かが判別される。始動判定は、たとえば、内燃機関の始動が開始された後、所定時間が経過したか否かによって行われ、より具体的には、上記所定時間が経過するまでの間は、内燃機関の始動が完了していないと判別され、上記所定時間が経過したときに、内燃機関の始動が完了したと判別される。あるいは、始動判定は、たとえば、機関回転数が所定の回転数以上になったか否かによって行われ、より具体的には、機関回転数が所定の回転数以上になったときに内燃機関の始動が完了したと判別され、機関回転数が上記所定の回転数よりも小さいときに内燃機関の始動が完了していないと判別される。ステップ704において内燃機関の始動が完了したと判別されたときには、ルーチンはステップ705に進む。一方、ステップ704において内燃機関の始動が完了していないと判別されたときには、ルーチンはステップ701に戻る。すなわち、本ルーチンでは、機関運転が停止されていない間において内燃機関の始動が完了していないときには、ステップ701~ステップ704が繰り返し実行される。
ステップ704において内燃機関の始動が完了したと判別され、ルーチンがステップ705に進むと、ステップ702で電子制御装置に記憶された触媒温度積算値ΣTcatに基づいて活性元素固溶度(以下この活性元素固溶度を「始動時活性元素固溶度」という)Dslが算出される。次いで、ステップ706において、電子制御装置に記憶されているΣTcatがクリアされる。次いで、ステップ707において、ステップ705で算出された始動時活性元素固溶度Dslが通常運転時活性元素固溶度(すなわち、先の本ルーチンの実行時にステップ722で設定されて電子制御装置に記憶された活性元素固溶度)Dsm以上である(Dsl≧Dsm)か否かが判別される。ここで、Dsl≧Dsmであると判別されたときには、ルーチンがステップ708に進み、始動時活性元素固溶度Dslが活性元素固溶度Dsとして設定され、ルーチンがステップ709に進む。一方、ステップ707において、Dsl≧Dsmではないと判別されたときには、ルーチンがステップ710に進み、通常運転時活性元素固溶度Dsmが活性元素固溶度Dsとして設定され、ルーチンがステップ709に進む。
ステップ709では、ルーチンがステップ708からステップ709に進んだときにはステップ708で設定された活性元素固溶度Dsに対応する固溶度カウンタCsが設定され、ルーチンがステップ710からステップ709に進んだときにはステップ710で設定された活性元素固溶度Dsに対応する固溶度カウンタCsが設定される。次いで、ステップ711において、機関始動完了フラグFengがセットされ(Feng←1)、ルーチンがステップ712に進む。
ステップ712では、その時の触媒温度Tcat、および、その時の上流側検出空燃比AFuが取得される。次いで、ステップ713において、ステップ712で取得された上流側検出空燃比AFuが理論空燃比よりも大きい(AFu>AFst)か否か(すなわち、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリーンであるか否か)が判別される。ここで、AFu>AFstであると判別されたときには、ルーチンはステップ714に進む。一方、AFu>AFstではないと判別されたときには、ルーチンはステップ718に進む。
ステップ713においてAFu>AFstであると判別され、ルーチンがステップ714に進むと、ステップ712で取得された触媒温度Tcatが所定固溶温度Ts以上である(Tcat≧Ts)か否かが判別される。ここで、Tcat≧Tsであると判別されたときには、ルーチンはステップ715に進む。一方、Tcat≧Tsではないと判別されたときには、ルーチンはステップ717に進む。
ステップ714においてTcat≧Tsであると判別され、ルーチンがステップ715に進むと、固溶度カウンタCsが所定値ΔCsだけ大きくされ、新たな固溶度カウンタCsに設定される(Cs←Cs+ΔCs)。なお、ここで、内燃機関の始動が完了してから初めてルーチンがステップ715に進んだときには、ステップ709で設定された固溶度カウンタCsが所定値ΔCsだけ大きくされ、新たな固溶度カウンタCsに設定され、内燃機関の始動が完了してから初めてルーチンがステップ715に進んだのではないときには、先の本ルーチンの実行時にステップ715またはステップ720で設定された固溶度カウンタCsが所定値ΔCsだけ大きくされ、新たな固溶度カウンタCsに設定される。
次いで、ステップ716において、ステップ715で設定された固溶度カウンタCsに基づいて活性元素固溶度Dsが算出されるとともに算出された活性元素固溶度Dsが電子制御装置に記憶され、ルーチンがステップ717に進む。
ステップ613においてAFu>AFstではないと判別され、ルーチンがステップ718に進むと、ステップ712で取得された上流側検出空燃比AFuが理論空燃比AFstよりも小さい(AFu<AFst)か否か(すなわち、触媒流入排気空燃比が理論空燃比よりもリッチであるか否か)が判別される。ここで、AFu<AFstであると判別されたときには、ルーチンはステップ719に進む。一方、AFu<AFstではないと判別されたときには、ルーチンはステップ717に進む。
ステップ718においてAFu<AFstであると判別され、ルーチンがステップ719に進むと、ステップ712で取得された触媒温度Tcatが所定析出温度Td以上である(Tcat≧Td)か否かが判別される。ここで、Tcat≧Tdであると判別されたときには、ルーチンはステップ720に進む。一方、Tcat≧Tdではないと判別されたときには、ルーチンはステップ717に進む。
ステップ719においてTcat≧Tdであると判別され、ルーチンがステップ720に進むと、固溶度カウンタCsが所定値ΔCsだけ小さくされ、新たな固溶度カウンタCsに設定される(Cs←Cs-ΔCs)。なお、ここで、内燃機関の始動が完了してから初めてルーチンがステップ720に進んだときには、ステップ709で設定された固溶度カウンタCsが所定値ΔCsだけ小さくされ、新たな固溶度カウンタCsに設定され、内燃機関の始動が完了してから初めてルーチンがステップ720に進んだのではないときには、先の本ルーチンの実行時にステップ715またはステップ720で設定された固溶度カウンタCsが所定値ΔCsだけ小さくされ、新たな固溶度カウンタCsに設定される。
次いで、ステップ721において、ステップ720で更新された固溶度カウンタCsに基づいて活性元素固溶度Dsが算出されるとともに算出された活性元素固溶度Dsが電子制御装置に記憶され、ルーチンがステップ717に進む。
ステップ717では、機関運転が停止したか否かが判別される。ここで、機関運転が停止していないと判別されたときには、ルーチンはステップ700に戻る。一方、機関運転が停止したと判別されたときには、ルーチンがステップ722に進む。
ステップ717において機関運転が停止したと判別され、ルーチンがステップ722に進むと、電子制御装置に現在記憶されている最新の活性元素固溶度Dsが通常運転時活性元素固溶度Dsmとして設定されて電子制御装置に記憶される(Dsm←Ds)。次いで、ステップ723において、機関始動完了フラグFengがリセットされ(Feng←0)、ルーチンが停止される。
なお、上述したように、活性元素固溶度が大きいと、出力値軌跡長が長くなり、反転回数が多くなる。つまり、活性元素固溶度が大きいと、下流側空燃比センサの出力値が短い周期で上下動する。したがって、上述した実施形態において、特に、活性元素固溶度が比較的大きいとき(より具体的には、活性元素固溶度が予め定められた値よりも大きいとき)には、下流側空燃比センサの出力値をなますことによって得られる値を空燃比制御に用いることが好ましい。
また、上述した実施形態は、火花点火式の内燃機関(いわゆるガソリンエンジン)に本発明を適用した場合の実施形態であるが、本発明は、火花点火式の内燃機関以外の内燃機関、たとえば、圧縮自着火式の内燃機関(いわゆるディーゼルエンジン)でも適用可能である。また、上述した実施形態は、三元触媒に本発明を適用した実施形態であるが、本発明は、流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比であるときであっても排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を高い浄化率で浄化することができるいわゆるNOx触媒にも適用可能である。
また、上述した実施形態において、活性元素固溶度の取得に基準触媒温度が利用される場合、触媒に流入する排気ガスが有する熱量(以下この熱量を「排気熱量」という)に応じて異なる基準触媒温度が利用されてもよい。この場合、活性元素固溶度が同じであるとき、排気熱量が大きいほど触媒の温度が高くなることから、排気熱量が大きいほど高い基準触媒温度が活性元素固溶度の取得に利用されてもよいし、排気熱量が或る値よりも大きいときに活性元素固溶度の取得に利用される基準触媒温度が排気熱量が上記或る値以下であるときに活性元素固溶度の取得に利用される基準触媒温度よりも高いような基準触媒温度が活性元素固溶度の取得に利用されてもよい。
同様に、上述した実施形態において、活性元素固溶度の取得に温度固溶度関係が利用される場合、排気熱量に応じて異なる温度固溶度関係が利用されてもよい。この場合、排気熱量が大きいほど機関運転中の触媒温度に基づいて温度固溶度関係から求まる活性元素固溶度が小さいような温度固溶度関係が利用されてもよいし、排気熱量が或る値よりも大きいときに機関運転中の触媒温度に基づいて温度固溶度関係から求まる活性元素固溶度が排気熱量が上記或る値以下であるときに機関運転中の触媒温度に基づいて温度固溶度関係から求まる活性元素固溶度よりも小さいような温度固溶度関係が利用されてもよい。
同様に、上述した実施形態において、活性元素固溶度の取得に温度積算値固溶度関係が利用される場合、排気熱量に応じて異なる温度積算値固溶度関係が利用されてもよい。この場合、排気熱量が大きいほど機関運転時触媒温度積算値に基づいて温度積算値固溶度関係から求まる活性元素固溶度が小さいような温度積算値固溶度関係が利用されてもよいし、排気熱量が或る値よりも大きいときに機関運転時触媒温度積算値に基づいて温度積算値固溶度関係から求まる活性元素固溶度が排気熱量が上記或る値以下であるときに機関運転時触媒温度積算値に基づいて温度積算値固溶度関係から求まる活性元素固溶度よりも小さいような温度積算値固溶度関係が利用されてもよい。
また、上述した実施形態において、活性元素固溶度の取得に排気熱量が利用される場合、排気熱量の取得方法は、特定の方法に制限されず、たとえば、排気熱量を検出するセンサを触媒よりも上流の排気通路に設け、このセンサによって検出される排気熱量を活性元素固溶度の取得に利用される排気熱量として取得するという方法を採用することもできるし、機関運転状態から演算によって算出される排気熱量を活性元素固溶度の取得に利用される排気熱量として取得するという方法を採用することもできる。なお、排気熱量の算出に利用される機関運転状態は、特定の運転状態に制限されず、たとえば、機関回転数、吸入空気量、および、燃料噴射量の1つ、あるいは、2つ、あるいは、全てを排気熱量の算出に利用される機関運転状態として採用することができる。
また、上述した実施形態のリーン空燃比制御において、所定リーン空燃比が理論空燃比よりも大きくリーンな空燃比に設定されると、混合気の空燃比が理論空燃比よりも大きくリーンな空燃比に制御され、その結果、排気ガスに関するエミッション性能が低下する可能性がある。したがって、排気ガスに関するエミッション性能の低下を抑制するという観点では、上述した実施形態のリーン空燃比制御において、所定リーン空燃比は、理論空燃比よりもリーンな空燃比であるが理論空燃比に近い空燃比に設定されることが好ましい。また、上述した実施形態のリッチ空燃比制御において、所定リッチ空燃比が理論空燃比よりも大きくリッチな空燃比に設定されると、混合気の空燃比が理論空燃比よりも大きくリッチな空燃比に制御され、その結果、排気ガスに関するエミッション性能が低下する可能性があるし、燃費も低下する。したがって、排気ガスに関するエミッション性能の低下および燃費の低下を抑制するという観点では、上述した実施形態のリッチ空燃比制御において、所定リッチ空燃比は、理論空燃比よりもリッチな空燃比であるが理論空燃比に近い空燃比に設定されることが好ましい。