WO2013021789A1 - 内燃機関のピストン構造 - Google Patents

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孝 近藤
西川 智博
寿行 大林
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本田技研工業株式会社
本田金属技術株式会社
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    • F16J1/16Connection to driving members with connecting-rods, i.e. pivotal connections with gudgeon-pin; Gudgeon-pins
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F02COMBUSTION ENGINES; HOT-GAS OR COMBUSTION-PRODUCT ENGINE PLANTS
    • F02FCYLINDERS, PISTONS OR CASINGS, FOR COMBUSTION ENGINES; ARRANGEMENTS OF SEALINGS IN COMBUSTION ENGINES
    • F02F3/00Pistons 

Abstract

ピン孔の内周面とピストンピンとの間に油膜を保持して、ピン孔の内周面とピストンピンとの打音を抑制することが可能な内燃機関のピストン構造を提供する。ピストン(4)に形成したピン孔(44)にピストンピン(7)を挿通してなる内燃機関(1)のピストン構造であって、ピン孔(44)の内周面(44a)にはピストン(4)の内外を連通する連通溝(46)が設けられ、連通溝(46)は、ピン孔(44)の内周面(44a)のうち、ピストン(4)の燃焼室(32)側且つスラスト側の範囲のみに設けられている。

Description

内燃機関のピストン構造
 本発明は、内燃機関のピストン構造に関する。
 一般に、内燃機関のシリンダ内に配置されるピストンは、ピン孔を有しており、このピン孔に装着されたピストンピンを介してコンロッドに接続されている。ピストンピンは、ピストンの上下動に伴ってピン孔の内周面と摺動する。ピストンピンとピン孔の間には微小な隙間が設けられており、両者の焼き付きを防止するためのオイルがこの隙間に供給されている。
 特許文献1には、ピン孔の内周面の上半部の2箇所に、ピストンピンの軸方向に沿ってピストンの内周側と外周側とを連通する2つの連通溝を形成することが開示されている。この2つの連通溝は、ピン孔の上部から45°の角度位置で左右対称の位置に形成されている。特許文献1では、2つの連通溝をこの位置に形成することにより、ピストンピンに対するオイル供給が十分になる、としている。
実開平1-152146号公報(第1図)
 近年、内燃機関の静穏化の要請が高まっている。内燃機関の騒音の原因の一つに、ピン孔の内周面にピストンピンが当接して打音が発生する現象がある。この現象を研究した結果、ピン孔の内周面とピストンピンとの間の油膜が少なくなると打音が大きくなることが分かってきた。そのため、ピン孔の内周面とピストンピンとの間に油膜を保持して打音を低減することが求められている。
 本発明は、これらの問題に鑑みて成されたものであり、ピン孔の内周面とピストンピンとの間に油膜を保持して、ピン孔の内周面とピストンピンとの打音を抑制することが可能な内燃機関のピストン構造を提供することを目的とする。
 本発明者らの鋭意研究により、ピン孔の内部におけるピストンピンとオイルの移動を観察・解析した結果、特許文献1に記載のように、ピン孔の上方に左右対称に連通溝を設けた場合、ピン孔の内周面に沿ってピストンピンが旋回するのに伴って、反スラスト側の連通溝からオイルが必要以上に排出され、ピン孔の内周面とピストンピンとが当接してしまうことが判明した。そこで、本発明者らは、オイルの必要以上の排出を抑制するために、反スラスト側の連通溝をなくすことに想到した。
 本発明は、ピストンに形成したピン孔にピストンピンを挿通してなる内燃機関のピストン構造であって、前記ピン孔の内周面には前記ピストンの内外を連通する連通溝が設けられ、前記連通溝は、前記ピン孔の内周面のうち、前記ピストンの燃焼室側且つスラスト側の範囲のみに設けられていることを特徴とする。
 このような構成によれば、ピストンの内外を連通する連通溝が、ピン孔の内周面のうち、ピストンの燃焼室側且つスラスト側の範囲のみに設けられているので、その他の範囲(特に、ピストンの燃焼室側且つ反スラスト側の範囲)に連通溝が設けられている場合に比較してオイルの排出が抑制され、ピン孔の内周面とピストンピンとの隙間にオイルが好適に保持される。そのため、ピン孔の内周面とピストンピンとの打音を抑制することができる。
 また、前記連通溝は、シリンダ軸線に対するクランク軸回動中心のオフセット量が増えるほど、燃焼室側に偏倚して設けられる構成とするのがよい。
 このような構成によれば、シリンダ軸線に対するクランク軸回動中心のオフセット量が増えるほど、連通溝を燃焼室側に偏倚して設けることによって、ピン孔の内周面とピストンピンとの隙間内で移動するオイルの流速を低下させることができる。そのため、ピン孔の内周面とピストンピンとの隙間から排出されるオイルの総量を少なくして、隙間内にオイルを多く保持することができる。
 また、前記連通溝は、前記ピン孔の軸心と前記連通溝の周方向の中心位置とを結ぶ直線と、前記ピン孔の軸心を通りピストン軸線に直交する直線との成す角度が、20°以上23°以下となるように設けられているのが好ましい。
 このような構成によれば、ピン孔の内周面とピストンピンとの間にオイルを好適に保持することができる。
 また、前記ピストンは、外周面にリング溝が形成されたピストン本体部と、前記ピストン本体部の下面から下方に延出すると共に前記ピン孔が形成された一対のピンボス部と、を有し、前記ピストン本体部の下面と前記ピン孔の内周面の上部とは、段差なく連続している構成とするのがよい。
 このような構成によれば、ピストン本体部の下面とピン孔の内周面の上部とが、段差なく滑らかに連続しているので、ピストン本体部の下面に付着したオイルが、ピン孔の内周面に流れ込みやすくなる。そのため、ピストン本体部の下面に付着したオイルを、ピン孔の内周面とピストンピンとの隙間に好適に導いて潤滑性を保持することができる。
 また、前記ピン孔の内周面には周方向に凹溝が形成され、前記凹溝は、前記連通溝につながり、かつ、前記連通溝よりもクランク室側の範囲のみに形成されている構成とするのがよい。
 かかる構成によれば、連通溝よりも燃焼室側の範囲に周方向の凹溝が形成されていないので、ピストンにクランク室方向の荷重が加わった際に凹溝を介して燃焼室側からオイルが排出されることを抑制して油膜を保持でき、且つ、連通溝よりもクランク室側には凹溝を介してオイルを回すことができる。
 本発明によれば、ピン孔の内周面とピストンピンとの間に油膜を保持して、ピン孔の内周面とピストンピンとの打音を抑制することが可能な内燃機関のピストン構造を提供することができる。
本実施形態に係る内燃機関のピストン構造の断面図である。 ピストンの正面図である。 図2のI-I矢視断面図である。 (a)はピン孔の拡大正面図であり、(b)は図3のII-II矢視断面図である。 図2におけるピストン本体部の下面付近の拡大断面図である。 実施例1におけるピン孔内のピストンピン及びオイルの状態を説明する模式図であり、(a)はピストンピンがクランク室側にある状態、(b)はピストンピンが燃焼室側にある状態、をそれぞれ示している。 比較例1におけるピン孔内のピストンピン及びオイルの状態を説明する模式図であり、(a)はピストンピンがクランク室側にある状態、(b)はピストンピンが燃焼室側にある状態、をそれぞれ示している。 比較例2におけるピン孔内のピストンピン及びオイルの状態を説明する模式図であり、(a)はピストンピンがクランク室側にある状態、(b)はピストンピンが燃焼室側にある状態、をそれぞれ示している。 クランク角度とピン孔内のオイルの流体速度との相関関係を示すグラフである。 連通溝中心角度と流体速度との相関関係を示すグラフである。
 本発明の実施形態について、図1乃至図5を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の番号を付し、重複する説明は省略する。なお、シリンダ軸線方向を「上下方向」とし、シリンダ軸線に直交する方向を「左右方向」として説明する。
 内燃機関1は、図1に示すように、シリンダ21及びクランク室22を有するシリンダブロック2と、シリンダ21の上部を閉塞するシリンダヘッド3と、シリンダ21内に設置されたピストン4と、クランク室22に配置されたクランクシャフト5と、ピストン4とクランクシャフト5とを連結するコンロッド6と、コンロッド6とピストン4とを連結するピストンピン7と、を主に備えている。
 シリンダブロック2は、クランク室22の上部に、オイル噴射装置23を有している。オイル噴射装置23は、ノズル23aを有しており、ノズル23aから噴射されたオイルはピストン4に吹き付けられる。ピストン4に吹き付けられたオイルが飛散すること等により、シリンダ21の内壁にオイルが付着する。オイル噴射装置23は、シリンダブロック2内に設けられたオイル供給通路24からオイルの供給を受けている。
 なお、シリンダ21へのオイル供給手法はこれに限定されるものではなく、例えば、回転するクランクシャフト5から飛散するオイルによって、シリンダ21の内壁やピストン4の下面等を潤滑するように構成してもよい。
 シリンダヘッド3は、シリンダ21に対応する位置に凹設された上壁部31を有している。この上壁部31とシリンダ21の内壁とピストン4の上面とで囲まれた空間が燃焼室32となる。上壁部31には、吸気ポート33と排気ポート34とが連通している。吸気ポート33及び排気ポート34は、吸気バルブ35及び排気バルブ36によって所定タイミングで開閉されている。
 本実施形態では、クランクシャフト5は、図1における時計回り方向(矢印y参照)に回転している。シリンダ21の軸線CLは、クランクシャフト5の回動中心である軸心5aに対して、クランクシャフト5が上支点から下支点に向かう側に、所定距離Lだけオフセットしている。ちなみに、このようなオフセット状態を正オフセットといい、軸線CLに対して逆側にオフセットすることを逆オフセットという。
 コンロッド6は、燃焼室32での燃料ガスの膨張によるピストン4の押下力をクランクシャフト5に伝達する部材である。コンロッド6の下端部6aは、クランクシャフト5のクランクピン5bに回転自在に連結されている。コンロッド6の上端部6bは、ピストンピン7を介してピストン4に連結されている。
 ピストン4は、シリンダ21内に摺動可能に嵌装された略円筒形状の部材である。ピストン4は、燃焼室32での燃料ガスの膨張による押下力とクランクシャフト5の回転による押上力によって、シリンダ21内を往復動している。このとき、ピストン4は、コンロッド6から受ける横力によって、シリンダ21の内壁に押し付けられる。より詳しくは、クランクシャフト5が図1における時計回り(矢印y参照)に回転する場合、圧縮行程から膨張行程(主に膨張行程)では、シリンダ21の軸線CL方向に作用する押下力の分力として、コンロッド6の延在方向への分力と、ピストン4を図1の左側に押し付ける横力(スラスト力)とがピストン4に作用する。
 ここで、ピストン4のうち、スラスト力が作用する方向(図1の左側)をスラスト側と称し、その反対方向(図1の右側)を反スラスト側と称する。
 ピストン4は、図2、図3に示すように、平面視円形状のピストン本体部41と、ピストン本体部41の下面から壁状に延出する一対のピンボス部42,42と、同じくピストン本体部41から下方に延出し、一対のピンボス部42,42の端部同士を連結する一対のスカート部43,43と、を主に有している。各ピンボス部42の略中央には、ピストンピン7を挿通するためのピン孔44がそれぞれ形成されている。ピストン4の中央下部には、一対のピンボス部42,42と、一対のスカート部43,43に囲まれて下向きに開口する中空部45が形成されている。この中空部45に、コンロッド6の上端部6bが配置される。
 ピストン本体部41は、その外周面に3つのリング溝41a,41b,41cを有している。上側の2つのリング溝41a,41bには、燃焼ガスの漏れを防ぐためのピストンリング(図示省略)が嵌装されている。下側のリング溝41cは、シリンダ21の内壁とピストン4との間を潤滑するオイルの量を調整するためのオイルリング(図示省略)が嵌装されている。下側のリング溝41cは、上側の2つのリング溝41a,41bよりも幅広に形成されており、その底面には、ピストン4の内外を連通する潤滑油通路となるオイル孔45aが設けられている。ピストン本体部41の上面には窪み部41eが形成されている。ピストン本体部41の下面41dには、後記するピン孔44に対応する位置に円弧状の凹部41d1が形成されている。なお、ピストン本体部41の下面41dは、下側のオイル溝41cの下方に位置している。また、凹部41d1は、後記するピン孔44の円弧形状に沿って形成されている。
 一対のピンボス部42,42は、ピストン本体部41の下面41dから下方に延出する壁状の部位である。各ピンボス部42は、図3に示すように、ピストン本体部41の表面よりも中心寄りの位置(奥まった位置)に配置されている。
 一対のスカート部43,43は、ピストン本体部41の下面41dから下方に延出するとともに、一対のピンボス部42,42の両端部を連結する壁状の部位である。各スカート部43の表面は、ピストン本体部41の表面と面一に設けられている。
 一対のピン孔44,44は、ピストンピン7を挿通するための貫通孔であり、ピンボス部42の略中央に形成されている。ピン孔44は、上面視でピストン4の径方向に形成されている。ピン孔44の軸線方向は、クランクシャフト5の軸心方向と一致している。ピン孔44の内周面44aには、ピストン4の表面側と中空部45とを連通する連通溝46と、周方向に凹設された凹溝47と、が形成されている。
 連通溝46は、シリンダ21の内壁からピストン4の表面を伝ってきたオイルを、ピン孔44の内部に誘導するための溝である。連通溝46は、断面視円弧形状に形成されている。連通溝46は、ピン孔44の軸線方向と平行に延設されている。
 ここで、図4(a)に示すように、ピン孔44を軸方向に見て、内周面44aをピストン4の軸線PL方向とこの軸線PLに垂直な方向とで4等分したときに、連通溝46は、内周面44aのうち燃焼室32側且つスラスト側の範囲に形成されている。そして、内周面44aのうち、他の3つの範囲には、ピン孔44の軸線方向の溝は形成されておらず、滑らかな真円の円弧形状となっている。
 なお、ピストン4の軸線PLは、シリンダ21の軸線CL(図1参照)と基本的に一致するが、シリンダ21内でピストン4が傾くことによって両者がずれることもある。
 連通溝46は、ピン孔44の軸心と連通溝46の周方向の中心位置とを結ぶ直線L1と、ピン孔44の軸心を通りピストン4の軸線PLに直交する直線L2との成す角度θ(以下、「連通溝中心角度θ」という)が、20~23°の範囲となるように設けられるのが好ましい。これについては図10を参照して後に詳しく説明する。
 凹溝47は、ピン孔44の内部に入り込んだオイルを周方向に移動し易くするための溝である。凹溝47は、図4(b)に示すように、内周面44aのうち、連通溝46よりも(より詳しくは、連通溝46の下側の端部を含み軸線PLに直交する平面P1よりも)クランク室22側の範囲のみに形成されている。凹溝47の両端部は、連通溝46につながっている。これにより、連通溝46と凹溝47の間のオイルの移動がスムーズになる。
 ピン孔44の内周面44aの上部44a1は、図5に示すように、ピストン本体部41の下面41dに設けられた円弧状の凹部41d1と、段差なく滑らかに連続している。つまり、ピン孔44の開口部周縁には、ピン孔44の軸線に対して約45°傾いたテーパ面44bが設けられているが、ピン孔44の内周面の上部44a1付近だけは、このテーパ面44bが削られて(省略されて)なだらかに形成されている。これにより、リング溝41cに装着されたオイルリング(図示省略)で掻き落とされたオイルが、凹部41d1を伝ってピン孔44や連通溝46の内部に入り込み易くなる。
 なお、ピストン本体部41の下面41d及び凹部41d1は、ピン孔44に向かってオイルが流れ易いように、ピンボス部42に近づくほど下方に位置するように傾斜している。
 ちなみに、ピン孔44の内周面44aの上部44a1は、図5の方向視で直線状に形成されている。また、円弧状の凹部41d1も、図5の方向視で直線状に形成されている。内周面44aの上部44a1と円弧状の凹部41d1とは、ピン孔44の開口部(テーパ面44bの真上)で屈曲して連なっている。
 ピストンピン7は、図1、図4に示すように、ピン孔44の内部に挿入されて、コンロッド6とピストン4とを連結する部材である。ピストンピン7は、ピン孔44よりも若干小径に形成されており、ピン孔44の内周面44aとピストンピン7との間にはオイルを溜めるための隙間Sが設けられている。ピストンピン7は、クランクシャフト5の回転に伴って、ピン孔44の内周面44aに沿って時計回り(クランクシャフト5の回転方向と同一方向)に旋回(図4の矢印x参照)する。
 本実施形態に係る内燃機関1のピストン構造は、以上のように構成されるものであり、次に、図6乃至図10を参照してその動作及び作用効果について説明する。なお、図6乃至図8においては、オイルの軌跡をドット状のハッチングで示している。
 図6は、実施例1におけるピン孔内のピストンピン及びオイルの状態を説明する模式図であり、(a)はピストンピンがクランク室側にある状態、(b)はピストンピンが燃焼室側にある状態、をそれぞれ示している。
 図6(a)に示すように、実施例1のピン孔44は、内周面44aのうち燃焼室32側且つスラスト側の範囲のみに、連通溝46を有している。
 図6(a)に示すように、ピン孔44内において、ピストンピン7がクランク室22側にある場合、ピストンピン7の上側に隙間Sが形成される。また、シリンダ21の内壁に付着したオイルが、リング溝41cに装着されたオイルリング(図示省略)によって掻き落とされ、ピストン本体部41の下面41dを伝って、隙間S及び連通溝46に流入する。隙間Sのうち連通溝46が設けられた部分は、他の部分に比較して隙間Sの幅寸法が大きいので、オイルがピン孔44の軸方向に拡散しやすい。これにより、連通溝46に流入したオイルをピン孔44の軸方向に(中空部45側に)十分に供給することができる。
 図6(b)に示すように、ピストンピン7が、クランクシャフト5及びコンロッド6の動作により、ピン孔44のスラスト側の内周面44aに沿って時計回りに旋回及び上昇すると、ピストンピン7の上側の隙間Sの幅寸法が徐々に狭くなり、オイルが反スラスト側に押し出される。このとき、ピン孔44の内周面44aのうち、燃焼室32側且つ反スラスト側の部分には連通溝46が形成されていないので、オイルがピン孔44から排出され難い。そのため、ピン孔44の内周面44aとピストンピン7との間の隙間Sにオイルが好適に保持され、両者の衝突音が抑制される。また、ピン孔44の内周面44aとピストンピン7との衝突が抑制されることにより、シリンダ21内におけるピストン4の挙動が安定し、シリンダ21の内壁とピストン4との衝突も抑制される。
 つまり、実施例1のピン孔44によれば、ピン孔44の内周面44aとピストンピン7との間に保持されるオイルの量が増加する(排出されるオイルの量が減少する)ので、このオイルによって形成される油膜によりピン孔44の内周面44aとピストンピン7との打音が抑制されるのである。
 また、ピストンピン7によって反スラスト側に押し出されたオイルは、ピン孔44の内周面44aのうち連通溝46よりもクランク室22側の部分に周方向に形成された凹溝47に沿って、ピン孔44の下方に移動する。これにより、ピン孔44のクランク室22側にもオイルを十分に供給することができる。なお、ピン孔44の内周面44aのうち、連通溝46よりも燃焼室32側の部分には、周方向の凹溝47が設けられていないので、オイルが周方向に流れ難くなり、オイルの流速を低下させて潤滑性を保持することができる。
 図7は、比較例1におけるピン孔内のピストンピン及びオイルの状態を説明する模式図であり、(a)はピストンピンがクランク室側にある状態、(b)はピストンピンが燃焼室側にある状態、をそれぞれ示している。
 図7(a)に示すように、比較例1のピン孔44’は、内周面44a’のうち燃焼室32側且つスラスト側の範囲と、燃焼室32側且つ反スラスト側の範囲に、一対の連通溝46’,46’を有している。
 比較例1のピン孔44’では、図7(b)に示すように、ピストンピン7が時計回りに旋回及び上昇すると、隙間S内のオイルが反スラスト側に移動し、燃焼室32側且つ反スラスト側に設けられた連通溝46’からオイルが排出されてしまう。そのため、隙間Sに保持されるオイルの量が少なくなり、前記した実施例1に比較して、ピン孔44’とピストンピン7との衝突音の抑制効果が低下する。
 図8は、比較例2におけるピン孔内のピストンピン及びオイルの状態を説明する模式図であり、(a)はピストンピンがクランク室側にある状態、(b)はピストンピンが燃焼室側にある状態、をそれぞれ示している。
 図8(a)に示すように、比較例2のピン孔44”は、内周面44a”のうち燃焼室32側且つ反スラスト側の範囲のみに、連通溝46”を有している。比較例2のピン孔44”は、燃焼室32側且つスラスト側に連通溝46”を有していないので、前記した実施例1に比較して、ピン孔44”の軸方向へのオイル供給能力が低下する。
 また、比較例2のピン孔44”では、図8(b)に示すように、ピストンピン7が時計回りに旋回及び上昇すると、隙間S内のオイルが反スラスト側に移動し、燃焼室32側且つ反スラスト側に設けられた連通溝46”からオイルが排出されてしまう。そのため、隙間Sに保持されるオイルの量がさらに少なくなり、前記した実施例1及び比較例1に比較して、ピン孔44”とピストンピン7との衝突音の抑制効果がさらに低下する。
 図9は、クランク角度とピン孔内のオイルの流体速度との相関関係を示すグラフである。なお、オイルの流体速度とは、隙間S内におけるオイルの移動速度を示す数値であり、公知の解析プログラムによって算出した値である。流体速度が小さいほど、隙間S内でのオイルの移動速度が遅くなり、隙間S内にオイルが好適に保持されることを示す。
 図9に示すように、各グラフのピーク値を比較すると、従来構造である比較例1(破線参照)に対して、実施例1(太実線参照)では、オイルの流体速度が1/2以下に低下している。これにより、実施例1では、比較例1に比較してピン孔44とピストンピン7の隙間Sにオイルを好適に保持できることが分かる。その結果、実施例1では、ピン孔44の内周面44aとピストンピン7の隙間Sに保持されたオイルによって、両者の衝突による打音の発生を抑制することができる。
 一方、比較例2(細実線参照)では、比較例1に対してオイルの流体速度がほぼ2倍に上昇している。そのため、反スラスト側のみに連通溝46を設けた場合には、隙間Sにオイルを好適に保持できず、ピン孔44とピストンピン7とが衝突し易くなる。このことから、連通溝46を形成する位置は、ピストン4に作用するスラスト力の方向やピストンピン7の旋回方向を考慮して適切に設定する必要があることが分かる。
 図10は、連通溝中心角度θと流体速度との相関関係を示すグラフである。実施例1(太破線参照)は、オフセット距離L(図1参照)を14mmとした場合である。実施例2(太実線参照)は、オフセット距離L(図1参照)を0mmとした場合である。
 図10に示すように、オフセット距離Lを14mmとした実施例1では、連通溝中心角度θを約15°~30°の範囲で変化させると、θ=約23°のときに、流体速度が最も小さくなることが分かった。また、オフセット距離Lを0mmとした実施例2では、θ=約20°のときに、流体速度が最も小さくなることが分かった。このことから、オフセット距離Lが大きいほど、連通溝46を燃焼室32側に設けるようにすれば、オイルの流速を低下させて、ピン孔44の内周面44aとピストンピン7との打音を抑制することができることが分かる。
 以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
 例えば、本実施形態では、シリンダ21の軸線CLを、クランクシャフト5の軸心5aから反スラスト側に所定距離Lだけオフセット(いわゆる正オフセット)した場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、オフセット距離Lを0としてもよいし、スラスト側に所定距離Lだけオフセット(いわゆる逆オフセット)してもよい。
 ちなみに、実験の結果、オフセット距離Lを0とした場合及び逆オフセットにした場合のいずれでも、クランクシャフト5を図1に示す時計回り方向(矢印y参照)に回転させれば、ピストンピン7は、ピン孔44の内部で図4(a)に示す時計回り方向(矢印x参照)に旋回することが判明した。よって、連通溝46は本実施形態と同様に、燃焼室32側且つスラスト側に設ければよい。
 また、本実施形態では、ピストン本体部41の下面41dのうちピン孔44に対応する部分に、凹部41d1を形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、凹部41d1を省略して、ピン孔44の内周面44aの上部44a1とピストン本体部41の下面41dとが直接滑らかに連続する構成としてもよい。
 また、本実施形態では、ピストンピン7の固定構造について、いわゆるセミフローティング方式を採用した場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ピストンピン7の両端にクリップ(Cリング)を取り付けて、ピン孔44に対してピストンピン7を浮かした状態に保持するいわゆるフルフローティング方式のピストン構造などに採用してもよい。
 また、本実施形態では、ピン孔44の内周面44aに、周方向に沿って凹溝47を設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、凹溝47を省略してもよい。
 また、本実施形態では、直列形式の内燃機関1に本発明を適用した場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、V型エンジンなど、他の形式の内燃機関に本発明を適用してもよい。
 1   内燃機関
 2   シリンダブロック
 21  シリンダ
 22  クランク室
 3   シリンダヘッド
 32  燃焼室
 4   ピストン
 41  ピストン本体部
 41c リング溝
 41d 下面
 42  ピンボス部
 43  スカート部
 44  ピン孔
 44a 内周面
 46  連通溝
 47  凹溝
 5   クランクシャフト
 6   コンロッド
 7   ピストンピン
 S   隙間

Claims (9)

  1.  ピストンに形成したピン孔にピストンピンを挿通してなる内燃機関のピストン構造であって、
     前記ピン孔の内周面には前記ピストンの内外を連通する連通溝が設けられ、
     前記連通溝は、前記ピン孔の内周面のうち、前記ピストンの燃焼室側且つスラスト側の範囲のみに設けられていることを特徴とする内燃機関のピストン構造。
  2.  前記連通溝は、シリンダ軸線に対するクランク軸回動中心のオフセット量が増えるほど、燃焼室側に偏倚して設けられることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の内燃機関のピストン構造。
  3.  前記連通溝は、前記ピン孔の軸心と前記連通溝の周方向の中心位置とを結ぶ直線と、前記ピン孔の軸心を通りピストン軸線に直交する直線との成す角度が20°以上23°以下となるように設けられていることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の内燃機関のピストン構造。
  4.  前記連通溝は、前記ピン孔の軸心と前記連通溝の周方向の中心位置とを結ぶ直線と、前記ピン孔の軸心を通りピストン軸線に直交する直線との成す角度が20°以上23°以下となるように設けられていることを特徴とする請求の範囲第2項に記載の内燃機関のピストン構造。
  5.  前記ピストンは、外周面にリング溝が形成されたピストン本体部と、前記ピストン本体部の下面から下方に延出すると共に前記ピン孔が形成された一対のピンボス部と、を有し、
     前記ピストン本体部の下面と前記ピン孔の内周面の上部とは、段差なく連続していることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の内燃機関のピストン構造。
  6.  前記ピストンは、外周面にリング溝が形成されたピストン本体部と、前記ピストン本体部の下面から下方に延出すると共に前記ピン孔が形成された一対のピンボス部と、を有し、
     前記ピストン本体部の下面と前記ピン孔の内周面の上部とは、段差なく連続していることを特徴とする請求の範囲第2項に記載の内燃機関のピストン構造。
  7.  前記ピストンは、外周面にリング溝が形成されたピストン本体部と、前記ピストン本体部の下面から下方に延出すると共に前記ピン孔が形成された一対のピンボス部と、を有し、
     前記ピストン本体部の下面と前記ピン孔の内周面の上部とは、段差なく連続していることを特徴とする請求の範囲第3項に記載の内燃機関のピストン構造。
  8.  前記ピストンは、外周面にリング溝が形成されたピストン本体部と、前記ピストン本体部の下面から下方に延出すると共に前記ピン孔が形成された一対のピンボス部と、を有し、
     前記ピストン本体部の下面と前記ピン孔の内周面の上部とは、段差なく連続していることを特徴とする請求の範囲第4項に記載の内燃機関のピストン構造。
  9.  前記ピン孔の内周面には周方向に凹溝が形成され、
     前記凹溝は、前記連通溝につながり、かつ、前記連通溝よりもクランク室側の範囲のみに形成されていることを特徴とする請求の範囲第1項から第8項のいずれか1項に記載の内燃機関のピストン構造。
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