WO2013002232A1 - 磁気共鳴イメージング装置及びその傾斜磁場出力波形の測定方法 - Google Patents
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Abstract
精度よく傾斜磁場波形そのものを実測する手段を提供する。また傾斜磁場の磁軸と直交する方向に生じる磁場成分についても実測可能な手段を提供する。そのために、テスト傾斜磁場を用いることなく信号取得するリファレンス計測と、テスト傾斜磁場を用いて信号取得する本計測を実施する。その際、テスト傾斜磁場の磁軸方向のスライスおよびそれと直交する方向のスライスが交差する棒状の領域から信号を取得する。棒状の領域は位置が異なる少なくとも3つ領域とする。リファレンス計測で取得したNMR信号と本計測で取得したNMR信号との演算により、テスト傾斜磁場の実測値と、その磁軸方向と直交する磁場成分を計算する。
Description
本発明は、磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という)に関わり、特に傾斜磁場出力誤差に起因して生じるアーチファクトを低減する技術に関する。
NMR現象を利用して断層像撮影を行なうMRI装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生するNMR信号を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を2次元的に或いは3次元的に画像化する装置である。撮影においては、NMR信号には、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされて、時系列データとして計測される。計測されたNMR信号は、2軸もしくは3軸のエンコード量に応じてk空間における座標位置が一意に決まるため、2次元的もしくは3次元的にk空間座標に配置後、フーリエ変換処理を行うことで画像化がなされる。
k空間座標への配置は、シーケンス設計時に設定した傾斜磁場出力を基にして予め決められているが、設定した傾斜磁場出力と実際の傾斜磁場出力の間に、波形形状や面積の誤差が存在すると、予測したk空間座標と実際の座標との間にずれが生じ、この状態で画像化すると画像歪み等のアーチファクトが生じてしまう問題がある。
傾斜磁場出力誤差の要因としては、静磁場不均一、傾斜磁場オフセット、渦電流、システム応答などがある。これらのうち、静磁場不均一や傾斜磁場オフセットは、シミングやオフセット調整などの本撮像前の短い事前計測を用いて補正されることが多く、それに対し渦電流やシステム応答による傾斜磁場出力誤差は、測定に時間がかかるため事前計測で行うことが困難であり、また被検体に依存しないという成分であることから、MRI装置据付時のハードウェア調整にて実施されることが多い。
渦電流やシステム応答が傾斜磁場出力に与える影響は、基本的には出力を妨げる方向に働くため、誤差を補正するには、出力誤差分を補うような強い(高強度・高スリューレート)補正磁場を出力して元の傾斜磁場出力に重畳する必要があるが、高い精度で補正磁場を加えるには非常にコストがかかるため、補正しきれない誤差が残存してしまい、画質不良が生じることもある。
このような誤差成分の対策としては、誤差を含んだ傾斜磁場出力波形を予め高精度に実測して、その実際の傾斜磁場出力に応じたk空間の座標を使って、画像化するという手段が重要になる。
傾斜磁場出力波形を実測する技術としては、例えば、非特許文献1には、テスト傾斜磁場印加後に、多数の励起パルスを印加して、テスト傾斜磁場印加後の経過時間が異なる多数のFIDを計測することによって、渦電流によって生じる傾斜磁場の歪みを計測する技術が記載されている。また非特許文献2には、所定の薄いスライスを励起後に、テスト傾斜磁場を印加して信号取得するシーケンスと、テスト傾斜磁場を印加せずに信号取得するレファレンスシーケンスとを実施し、これら2つのシーケンスで得られた信号間の演算によってテスト傾斜磁場の傾斜磁場出力波形を実測する手法が記載されている。
また特許文献1には、傾斜磁場出力の誤差成分を、等価回路モデルを用いて近似し、近似式によって推定された結果を用いて、NMR信号のk空間座標を補正する技術が記載されている。
Wysong RE:A simple method of measuring gradient induced eddy currents to set compensation network:Magn Reson Med 29,119-121(1993)
Peter Latta:Simple phase method for measurement of magnetic field gradient waveforms:MAGNETIC RESONAMCE IMAGING 25,1272-1276(2007)
J.I Jackson et.Al.,Selection of a Convolution Function for Fourier Inversion Using Gridding,IEEE Trans.Med Imaging,vol10,pp.473-478,1991
非特許文献1の方法は、テスト傾斜磁場印加後に生じる渦電流の影響だけを測定するものであり、渦電流の影響だけでなく傾斜磁場システム全体としての応答の影響を受けた傾斜磁場出力波形そのものを実測することはできない。
非特許文献2の方法は、傾斜磁場出力波形自体を比較的簡単な手順で得ることができる有効な手法であるが、テスト傾斜磁場と直交する方向に生じる渦電流による磁場成分を測定することはできない。エコープラナー法のようにリードアウト傾斜磁場の極性を反転させながらk空間を充填するシーケンスでは、強いリードアウト傾斜磁場によって直交軸に渦電流が生じ、その渦電流の影響がリードアウトの極性に応じて変化することで、N/2アーチファクトを発生させることがある。このようなアーチファクトは、直交軸に生じる渦電流成分を知ることができれば、有効に低減することができる。
また非特許文献2の方法では、NMR信号の取得を、渦電流等の位置変動による影響をなくすために薄いスライスで行う必要があり、実測される傾斜磁場出力波形は十分なSNRが得られない。
そこで、本発明は、精度よく傾斜磁場波形そのものを実測する手段を備えたMRI装置を提供すること、特に、磁軸と直交する成分についても実測可能なMRI装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明のMRI装置は、テスト傾斜磁場を用いることなく被検体の複数の領域から核磁気共鳴信号を取得し、テスト傾斜磁場を用いて被検体の複数の領域から核磁気共鳴信号を取得する。そして、これらの核磁気共鳴信号を用いて、テスト傾斜磁場の実測値を計算し、計算した実測値を用いて、テスト傾斜磁場の磁軸方向の磁場成分と、磁軸方向と直交する少なくとも一つの方向の磁場成分を計算する。
計算した各磁場成分は、例えば、撮像シーケンスで得られた核磁気共鳴信号が配置されるk空間座標の補正に用いることができる。
本発明によれば、簡便かつ正確に傾斜磁場出力波形を測定することができる。また本発明によれば、傾斜磁場の磁軸の磁場成分のみならず、磁軸と直交する方向の渦電流による磁場成分についても同時に測定することができる。測定した傾斜磁場出力波形及び直交する磁場成分を用いることにより、画像再構成において精度の高い座標補正を行うことができ、歪みやアーチファクトの抑制された画像を得ることができる。
以下、添付図面に従って本発明のMRI装置の好ましい実施形態について詳説する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
まず、本発明が適用されるMRI装置の概要を図1に基づいて説明する。図1は、本発明に係るMRI装置の一実施形態の全体構成を示すブロック図である。
このMRI装置は、NMR現象を利用して被検体101の断層画像を得るもので、静磁場発生磁石102と、傾斜磁場コイル103及び傾斜磁場電源109と、RF送信コイル104及びRF送信部110と、RF受信コイル105及び信号検出部106と、信号処理部107と、計測制御部111と、全体制御部108と、表示・操作部113と、被検体101を搭載する天板を静磁場発生磁石102の内部に出し入れするベッド112と、を備えている。
静磁場発生磁石102は、永久磁石、常電導磁石あるいは超電導磁石を備えた静磁場発生源からなり、被検体101の周りに均一な静磁場を発生させる。静磁場の方向によって、垂直磁場方式や水平磁場方式があり、垂直磁場方式であれば被検体101の体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば体軸方向に、それぞれ、静磁場を発生させる。
傾斜磁場コイル103は、MRI装置の実空間座標系(静止座標系)であるX、Y、Zの3軸方向に巻かれたコイルから成り、それぞれの傾斜磁場コイルは、それを駆動する傾斜磁場電源109に接続され電流が供給される。具体的には、各傾斜磁場コイルの傾斜磁場電源109は、それぞれ後述の計測制御部111からの命令に従って駆動されて、それぞれの傾斜磁場コイルに電流を供給する。これにより、X、Y、Zの3軸方向に傾斜磁場Gx、Gy、Gzが発生する。3軸方向の傾斜磁場を組み合わせることにより、任意方向の断面(スライス面)を選択して撮像することができる。
2次元スライス面の撮像時には、スライス面(撮像断面)に直交する方向にスライス傾斜磁場パルス(Gs)が印加されて被検体101に対するスライス面が設定され、そのスライス面に直交して且つ互いに直交する残りの2つの方向に位相エンコード傾斜磁場パルス(Gp)と読み出し(リードアウト)傾斜磁場パルス(Gf)が印加されて、NMR信号(エコー信号)にそれぞれの方向の位置情報がエンコードされる。ただし撮像方法により、位相エンコード傾斜磁場と読出し傾斜磁場とが区別されない場合もある。
RF送信コイル104は、被検体101にRFパルスを照射するコイルであり、RF送信部110に接続され高周波パルス電流が供給される。これにより、被検体101の生体組織を構成する原子のスピンにNMR現象が誘起される。具体的には、RF送信部110が、計測制御部111からの命令に従って駆動されて、高周波パルスが振幅変調され、増幅された後に被検体101に近接して配置されたRF送信コイル104に供給されることにより、RFパルスが被検体101に照射される。
RF受信コイル105は、被検体101の生体組織を構成するスピンのNMR現象により放出されるエコー信号を受信するコイルであり、信号検出部106に接続されて受信したエコー信号が信号検出部106に送られる。
信号検出部106は、RF受信コイル105で受信されたエコー信号の検出処理を行う。具体的には、計測制御部111からの命令に従って、信号検出部106が、受信されたエコー信号を増幅し、直交位相検波により直交する二系統の信号に分割し、それぞれを所定数(例えば128、256、512等)サンプリングし、各サンプリング信号をA/D変換してディジタル量に変換し、信号処理部107に送る。従って、エコー信号は所定数のサンプリングデータからなる時系列のデジタルデータ(以下、エコーデータという)として得られる。
信号処理部107は、エコーデータに対して各種処理を行い、処理したエコーデータを計測制御部111に送る。
計測制御部111は、被検体101の断層画像の再構成に必要なエコーデータ収集のための種々の命令を、主に、傾斜磁場電源109と、RF送信部110と、信号検出部106に送信してこれらを制御する制御部である。具体的には、計測制御部111は、後述する全体制御部108の制御で動作し、所定のパルスシーケンスに基づいて、傾斜磁場電源109、RF送信部110及び信号検出部106を制御して、被検体101へのRFパルスの照射及び傾斜磁場パルスの印加と、被検体101からのエコー信号の検出と、を繰り返し実行し、被検体101の撮像領域についての画像の再構成に必要なエコーデータの収集を制御する。
繰り返しの際には、2次元撮像の場合には位相エンコード傾斜磁場の印加量を、3次元撮像の場合には更にスライスエンコード傾斜磁場の印加量も、変えて行なう。位相エンコードの数は通常1枚の画像あたり128、256、512等の値が選ばれ、スライスエンコードの数は、通常16、32、64等の値が選ばれる。これらの制御により信号処理部107からのエコーデータを全体制御部108に出力する。
計測制御部111を制御するパルスシーケンスは、撮像方法によって種々のパルスシーケンスが予め用意されており、プログラムとして記憶部115に格納されている。本実施形態のMRI装置では、被検体101を対象とする一般的な撮像パルスシーケンスの他に、傾斜磁場出力波形を計測するためのパルスシーケンスが備えられている。傾斜磁場波形測定用パルスシーケンスは、事前計測として或いは装置据え付け時の計測として実施される。傾斜磁場波形測定用パルスシーケンスの詳細は後述する。
全体制御部108は、計測制御部111の制御、及び、各種データ処理と処理結果の表示及び保存等の制御を行うものであって、CPU及びメモリを内部に有する演算処理部114と、光ディスク、磁気ディスク等の記憶部115とを有して成る。具体的には、計測制御部111を制御してエコーデータの収集を実行させ、計測制御部111からのエコーデータが入力されると、演算処理部114がそのエコーデータに印加されたエンコード情報に基づいて、メモリ内のk空間に相当する領域に記憶させる。以下、エコーデータをk空間に配置する旨の記載は、エコーデータをメモリ内のk空間に相当する領域に記憶させることを意味する。
また、メモリ内のk空間に相当する領域に記憶されたエコーデータ群をk空間データともいう。そして演算処理部114は、このk空間データに対して信号処理やフーリエ変換による画像再構成等の処理を実行し、その結果である被検体101の画像を、後述の表示・操作部113に表示させると共に記憶部115に記録させる。
表示・操作部113は、再構成された被検体101の画像を表示する表示部と、MRI装置の各種制御情報や上記全体制御部108で行う処理の制御情報を入力するトラックボール又はマウス及びキーボード等の操作部と、から成る。この操作部は表示部に近接して配置され、操作者が表示部を見ながら操作部を介してインタラクティブにMRI装置の各種処理を制御する。
演算処理部114は、上述した画像再構成の他に、傾斜磁場波形測定用パルスシーケンスの実行によって得られた結果を演算し、傾斜磁場出力波形を算出する機能を有している。
図2に演算処理部114の機能ブロック図を示す。
図2に演算処理部114の機能ブロック図を示す。
図示するように、演算処理部114は、撮像シーケンスの実行により得られたNMR信号を用いて画像を再構成する画像再構成部1141、表示・操作部113により指定された撮像条件に従いパルスシーケンスを計算するシーケンス計算部1142、NMR信号を用いてフーリエ変換等の演算を行うために、k空間の格子点上のデータ値を算出するためのグリッディング部1143を備えるとともに、傾斜磁場波形測定用シーケンスの実行によって得られた信号を用いて傾斜磁場の出力波形を算出する傾斜磁場計算部1144を備えている。傾斜磁場計算部1144が算出した傾斜磁場出力波形の実測データは、記憶部115に保存され、グリッディング部において、NMR信号のk空間座標を補正するのに使用される。つまり、グリッディング部1143は、NMR信号のk空間座標を補正する補正部を内部に有する。
上記MRI装置の構成を踏まえ、以下、MRI装置の動作、特に傾斜磁場波形測定の動作を中心に説明する。
<第一実施形態>
まず傾斜磁場波形の測定に先だって、オフセット磁場調整や残留磁場調整(永久磁石装置の場合)等、傾斜磁場システム以外の誤差磁場成分は予め調整しておく。これら調整後に傾斜磁場出力波形測定を実施する。図3に、傾斜磁場出力波形測定の手順を示す。
まず傾斜磁場波形の測定に先だって、オフセット磁場調整や残留磁場調整(永久磁石装置の場合)等、傾斜磁場システム以外の誤差磁場成分は予め調整しておく。これら調整後に傾斜磁場出力波形測定を実施する。図3に、傾斜磁場出力波形測定の手順を示す。
図示するように、傾斜磁場波形測定は、大きく分けて、測定の対象となる傾斜磁場(以下、テスト傾斜磁場という)を用いずに信号取得するリファレンス計測301-1と、テスト傾斜磁場を用いて信号取得する本計測301-2とからなる計測ステップ301と、計測ステップ301で取得したNMR信号を用いて演算を行い傾斜磁場波形と傾斜磁場によってその磁軸と直交方向に生じる渦電流成分(以下、直交成分ともいう)とを算出する演算ステップ304とからなる。計測ステップ301は、複数の励起位置について実行される。またSNR向上のために必要な回数分、同一の計測が繰り返される。これが繰り返し回数ループ302である。同一計測の結果に対し、積算処理303が行われる。計測ステップ301~演算ステップ304は、傾斜磁場の磁軸を異ならせて、複数回実行される。これが、X,Y、Z軸ループ305である。以下、各ステップの詳細を説明する。
<<計測ステップ301>>
本計測301-2では、読出し傾斜磁場としてテスト傾斜磁場を用いて信号を計測する。この信号は、テスト傾斜磁場の印加量に応じた位相回転(位相の時系列的変化)を伴うので、理論的には信号の位相の時間変化を計算することにより、傾斜磁場波形が得られることになる。しかし、信号が受ける位相回転には、テスト傾斜磁場だけでなく、スライス傾斜磁場によって生じる渦電流の影響も含まれる。リファレンス計測301-1は、スライス傾斜磁場による渦電流成分を除去するために行われる。
本計測301-2では、読出し傾斜磁場としてテスト傾斜磁場を用いて信号を計測する。この信号は、テスト傾斜磁場の印加量に応じた位相回転(位相の時系列的変化)を伴うので、理論的には信号の位相の時間変化を計算することにより、傾斜磁場波形が得られることになる。しかし、信号が受ける位相回転には、テスト傾斜磁場だけでなく、スライス傾斜磁場によって生じる渦電流の影響も含まれる。リファレンス計測301-1は、スライス傾斜磁場による渦電流成分を除去するために行われる。
リファレンス計測301-1及び本計測301-2で用いられる計測シーケンスの一例を図4に示す。ここでは一例として、磁軸がX軸であり、直交成分としてY軸成分を測定する場合を示している。
リファレンス計測及び本計測ともに、図5(a)に示すような球ファントムを磁場中心に置き、磁場中心から距離Dx、Dyの位置に非常に薄い励起厚のスライスを設定する。
1回目の励起では、まずX軸のスライス選択傾斜磁場と90度RFパルスと、Y軸のスライス選択傾斜磁場と180度RFパルスを印加し、90度RFパルスで選択されたスライスと180度RFパルスで選択されたスライスの交点の領域(棒状の領域)を励起する。
1回目の励起では、まずX軸のスライス選択傾斜磁場と90度RFパルスと、Y軸のスライス選択傾斜磁場と180度RFパルスを印加し、90度RFパルスで選択されたスライスと180度RFパルスで選択されたスライスの交点の領域(棒状の領域)を励起する。
例えば、1回目の励起では、図5(a)に示すように、励起位置1(-Dx,Dy)が励起される。励起後、リファレンス計測301-1では、テスト傾斜磁場を印加することなく、FID信号をサンプリングする。本計測301-2では、テスト傾斜磁場として、スライス傾斜磁場の磁軸(X軸)と同軸の読出し傾斜磁場を印加しながら、FID信号をサンプリングする。このFID信号には、テスト傾斜磁場成分と、それによって直交軸に発生する渦電流成分との影響が含まれている。
2回目の励起では、スライス傾斜磁場は変更せずにRFパルスの周波数を変更することにより、選択するスライス位置を異ならせて、1回目と同様の励起とFID信号のサンプリングを行う。例えば、2回目の励起では、励起位置2(Dx,Dy)から信号が取得される。同様に、3回目、4回目についても、異なる位置(Dx,-Dy)、(-Dx,-Dy)で信号を取得する。なお、図4及び図5では、4つの励起位置から信号を取得する場合を示したが、後述する傾斜磁場波形の算出には、3つの励起位置からの信号があればよく、一つの励起位置からの信号取得は省略することも可能である。
これら4回の信号取得ステップは、リファレンス計測及び本計測ともに、繰り返し時間TR内に入れ子状に配置されており、これにより、全体の計測時間を延長することなく、4つの領域から信号を取得することができる。
本実施形態の計測ステップでは、棒状の励起を行うため、一度の計測では信号強度が不十分となる。そのため、繰り返し回数を増やすことによって十分な信号強度を得られるようにする(繰り返し回数ループ302)。
計測ステップ301の繰り返しによって、取得した信号(サンプリングデータ)は、積算処理ステップ303で積算された後、演算ステップ304の演算に用いられる。
<<演算ステップ304>>
計測ステップ301で取得した信号間の演算により、傾斜磁場出力波形と直交成分の演算を行う。この処理は、演算処理部114の傾斜磁場計算部1144が行う。
まず、本計測で得られる励起位置1の信号Sgrad1は、次式(1)で表わすことができる。
計測ステップ301で取得した信号間の演算により、傾斜磁場出力波形と直交成分の演算を行う。この処理は、演算処理部114の傾斜磁場計算部1144が行う。
まず、本計測で得られる励起位置1の信号Sgrad1は、次式(1)で表わすことができる。
ここで、Kは複素定数、Dxは、前述の通り、磁場中心からスライス励起位置までの距離、Δrはスライス厚、Gx(t)は、実測する傾斜磁場(テスト磁場)強度の時間変化、つまり、傾斜磁場波形を意味する。また、I(t)はスライス傾斜磁場による渦電流成分、φ0は位相の初期値である。ここでk(t)は、次式(2)で表わすことができるので、それを使って、式(1)は式(3)となる。
リファレンス計測で得られる信号Srefは、式(2)において、Gx=0とすることにより与えられ、本計測の信号Sgrad1とリファレンス計測の信号Srefとの位相差分は、式(4)で与えられる。
式(4)中、B0(t)を含む項は、傾斜磁場印加に伴う静磁場B0の渦電流成分である。
式(4)中、B0(t)を含む項は、傾斜磁場印加に伴う静磁場B0の渦電流成分である。
上述した式(4)~(7)のいずれか3式を使って、連立方程式を解くことにより、各位置の位相値とkx、kyの関係が算出することが可能となる。次式(8)、(9)は、式(4)~(6)を用いて算出した例であるが、B0を含む項を消去し且つDx・kx又はDy・kyのいずれかが求められる組合せであれば、式(4)~(7)の組み合わせは任意である。
本計測とリファレンス計測の位相差分の単位時間Δtにおける変化は、次式(10)に示すように、テスト傾斜磁場の単位時間の印加量と等価になる。同様に、テスト傾斜磁場と直交する渦電流成分についても次式(11)に示すようになる。
よって、単位時間の印加量Gx(t)及び同軸成分Gy(t)は、式(8)及び式(10)から導き出される式(12)、また式(9)及び式(11)から導き出される式(13)により、それぞれ求められる。このように、Gx(t)、Gy(t)は、NMR信号の位相変化からわかることになる。
また式(8)及び(9)で消去したB0を含む項(渦電流のB0成分)についても、式(4)と式(6)の組合せ或いは式(5)と式(7)の組合せで連立方程式を解くことにより、次式(14)、(15)のようにして求めることができる。
こうして、テスト傾斜磁場Gxを印加した場合の出力波形Gx(t)、直交成分Gy(t)、B0成分が算出される。
こうして、テスト傾斜磁場Gxを印加した場合の出力波形Gx(t)、直交成分Gy(t)、B0成分が算出される。
<<繰り返しステップ305>>
上述した演算ステップ304を、テスト磁場の磁軸及び直交軸の組合せを異ならせて、繰り返す。具体的には、次の六通りの組み合わせを実行する。
上述した演算ステップ304を、テスト磁場の磁軸及び直交軸の組合せを異ならせて、繰り返す。具体的には、次の六通りの組み合わせを実行する。
磁軸:X軸、直交軸:Y軸
磁軸:X軸、直交軸:Z軸
磁軸:Y軸、直交軸:X軸
磁軸:Y軸、直交軸:Z軸
磁軸:Z軸、直交軸:X軸
磁軸:Z軸、直交軸:Y軸
図5の(b)は、磁軸をX軸(又はZ軸)として、直交軸をZ軸(又はX軸)とした場合、(c)は、磁軸をY軸(又はZ軸)として、直交軸をZ軸(又はY軸)とした場合をそれぞれ示している。図示するように、これら六通りの組み合わせにおいて、傾斜磁場中心から所定間隔外れた2つの直交するスライスが交差する位置を励起すること、3つ以上の励起位置について信号を取得することは、計測ステップ301及び演算ステップ304で説明した手順と同様である。
磁軸:X軸、直交軸:Z軸
磁軸:Y軸、直交軸:X軸
磁軸:Y軸、直交軸:Z軸
磁軸:Z軸、直交軸:X軸
磁軸:Z軸、直交軸:Y軸
図5の(b)は、磁軸をX軸(又はZ軸)として、直交軸をZ軸(又はX軸)とした場合、(c)は、磁軸をY軸(又はZ軸)として、直交軸をZ軸(又はY軸)とした場合をそれぞれ示している。図示するように、これら六通りの組み合わせにおいて、傾斜磁場中心から所定間隔外れた2つの直交するスライスが交差する位置を励起すること、3つ以上の励起位置について信号を取得することは、計測ステップ301及び演算ステップ304で説明した手順と同様である。
以上のように各軸について求めた出力波形Gx(t)、直交成分Gy(t)は、記憶部115に保存され、撮像パルスシーケンスの実行時にNMR信号を配置するk空間座標の補正計算に使用される。またB0渦電流成分は、NMR信号のサンプリング(A/D)の位相を補正するのに用いることができる。
なお実測波形データは、離散的な実測波形データとして記憶部115に保存することも可能であるが、近似波形を作成し、近似波形データとして保存してもよい。近似波形の算出は、傾斜磁場計算部1144において、単純な関数フィッティング、線形補間処理などにより行うことができる。さらに、傾斜磁場システムの応答をモデル化することによっても近似波形を算出することができる。応答関数は、RLC回路等のモデル式を用いて作成し、それを実測値と一致するように最適化することにより求めることができる。
本実施形態による傾斜磁場波形測定は、上述したように、比較的簡単な手続きで短時間に行うことができる。また傾斜磁場波形測定を撮像とは別に装置据え付け時の手続きとして行う場合、大きさの異なる複数種類の傾斜磁場について測定しておき、結果を記憶部15に保存し、撮像やその他の演算に際して必要なデータを読出し、使用することも可能である。
<<k空間座標補正>>
次に、上述の手順により求めた傾斜磁場出力波形Gx(t)及び直交成分Gy(t)を用いたk空間座標の補正について説明する。
次に、上述の手順により求めた傾斜磁場出力波形Gx(t)及び直交成分Gy(t)を用いたk空間座標の補正について説明する。
まず、傾斜磁場波形の歪みにより生じるk空間座標のずれについて、図6を参照して説明する。図6(a)は、ソフトウェア設計時に作成した理想的な台形状の読み出し傾斜磁場波形601と、様々な影響受けて傾斜磁場波形の立ち上がり・下がりが鈍った波形602を示している。読み出し傾斜磁場の印加中は、撮像条件の周波数帯域BWによって決まるサンプリング時間によってデータサンプリングが行われる。取得された各サンプリングデータは、読み出し傾斜磁場の強度・時間積から、次式(16)を使って計算されるk空間上の読み出し軸の座標上に配置される。
図6(b)は、k空間座標に配置されたデータを示し、上側は読出し傾斜磁場が理想波形601の場合、下側は実際の波形602の場合である。図からわかるように、実際の波形では鈍りがある分だけ、立ち上がり・下がりにおける座標間の位置に誤差が生じている。
k空間座標の位置ズレが単純な全体的なシフトの場合は、フーリエ変換後の画像上で1次の位相傾斜が生じるだけであり、大きな問題にはならない。しかし、座標間の粗密に違いが生じる場合には、画像歪みとなって大きな問題になる。そこで、実測値から算出したGx成分(式(12))とGy成分(式(13))を使い、k空間のKx、Ky座標を次式(17)、(18)から求めてグリッディング処理を行う。
グリッディング処理は、k空間の格子上に存在しないデータを、格子点から距離に応じて重み付けした周囲のデータから補間して求める処理であり、公知の手法(例えば、非特許文献3記載の技術)を用いることができる。
グリッディング処理は、k空間の格子上に存在しないデータを、格子点から距離に応じて重み付けした周囲のデータから補間して求める処理であり、公知の手法(例えば、非特許文献3記載の技術)を用いることができる。
EPIシーケンスにおいて傾斜磁場誤差をk空間座標上で補正した例を図7に示す。図7(a)は、Y方向の渦電流成分(直交成分)が生じない場合であり、式(17)によりkx方向の補正のみを行えばよい。図7(b)は、読出し傾斜磁場(X軸)の立ち上り・立下り時にY方向の渦電流成分が生じる場合であり、その場合には、式(17)及び式(18)により、kx方向及びky方向について座標の補正を行う。
球ファントムを用いて撮像した結果に対し、上述した補正の効果を確認した結果を図8に示す。図8(a)は補正前の画像、(b)は補正後の画像で、それぞれ、上側が標準のウィンドウ幅/ウィンドウレベル(WW/WL)の画像、下側が標準とは異なるWW/WLの画像を示している。補正前の画像では、傾斜磁場出力誤差の影響で、画像の端部に歪みを生じたり、画像の上下にゴーストアーチファクトが現れたりしているのに対し、k空間座標を補正した後の画像では、歪みやゴーストアーチファクトがほぼ消失していることがわかる。
なお、以上の説明では、一つの軸の傾斜磁場(Gx)印加中には、直交する軸(Gy)には何も印加していない前提で説明をしたが、読み出し軸と位相軸の区別がなく、同時に2軸に傾斜磁場を印加するラディアル計測やスパイラル計測については、2軸の傾斜磁場波形を実測し、それぞれについて、次式(19)、(20)により補正する。
式中、Gx1は、磁軸をX軸として、式(12)より求めた傾斜磁場成分、Gx2は、磁軸をY軸として、式(13)より求めた直交成分である。またGy1は、磁軸をY軸として、式(12)より求めた傾斜磁場成分、Gy2は、磁軸をX軸として、式(13)より求めた直交成分である。
式中、Gx1は、磁軸をX軸として、式(12)より求めた傾斜磁場成分、Gx2は、磁軸をY軸として、式(13)より求めた直交成分である。またGy1は、磁軸をY軸として、式(12)より求めた傾斜磁場成分、Gy2は、磁軸をX軸として、式(13)より求めた直交成分である。
<<A/D位相の補正>>
式(15)により求めたB0渦電流成分については、NMR信号をサンプリングする際の位相の補正に用いることができる。ADの位相は、RFパルスの中心からサンプリングウィンドウの中心までの時間における静磁場起因の位相回転の影響を受ける。静磁場起因の位相回転は、式(15)で求めたB0渦電流により生じ、下式(21)で表わされる位相オフセットΔθ(t)[rad]となる。
ここで、γは磁気回転比、ΔB0(t)は時間的に変動するB0渦電流成分である。
式(15)により求めたB0渦電流成分については、NMR信号をサンプリングする際の位相の補正に用いることができる。ADの位相は、RFパルスの中心からサンプリングウィンドウの中心までの時間における静磁場起因の位相回転の影響を受ける。静磁場起因の位相回転は、式(15)で求めたB0渦電流により生じ、下式(21)で表わされる位相オフセットΔθ(t)[rad]となる。
ここで、γは磁気回転比、ΔB0(t)は時間的に変動するB0渦電流成分である。
画像再構成時に、ADの位相を上記オフセットΔθで補正することにより、B0渦電流成分による画質への影響をなくすことができる。
なお、上述したk空間座標の補正等において、実測した傾斜磁場出力波形と、実際に撮像パルスシーケンスで用いる読出し傾斜磁場とは、軸及び振幅が同一であることが前提となる。傾斜磁場出力波形の実測を本撮像の事前計測として行う場合には、事前計測のテスト傾斜磁場として本撮像の読出し傾斜磁場と同じ傾斜磁場を用い、その結果を本撮像の画像再構成時のk空間座標補正に適用すればよい。
或いは、種々の撮像パルスシーケンスを想定した複数種類の傾斜磁場について傾斜磁場出力波形及び直交成分を求めてテーブルとして保存しておき、実際の撮像に際し、撮像パルスシーケンスの読出し傾斜磁場と一致する傾斜磁場出力波形及び直交成分をテーブルから選択して、上記k空間座標補正を行うことができる。また読出し傾斜磁場と一致するデータがない場合には、軸が同じで振幅が近い複数の傾斜磁場出力波形から補間し、補間後のデータを用いてk空間座標補正を行うことも可能である。また傾斜磁場波形データが近似波形データとして保存されている場合には、近似波形データを用いることができる。
以上説明したように、本実施形態のMRI装置と傾斜磁場の出力波形を測定する方法は、静磁場発生部、傾斜磁場発生部、高周波磁場発生部および高周波磁場検出部を備えた撮像部と、撮像シーケンスに基き前記撮像部の動作を制御する制御部と、高周波磁場検出部が検出した核磁気共鳴信号を用いて、画像再構成を含む演算を行う演算部と、を備え、制御部は、傾斜磁場発生部が発生する傾斜磁場を計測する傾斜磁場計測部を有し、当該傾斜磁場計測部は、テスト傾斜磁場を用いることなく被検体から核磁気共鳴信号を取得する第1の計測と、前記テスト傾斜磁場を用いて被検体から核磁気共鳴信号を取得する第2の計測と、を制御し、演算部は、第1の計測で取得した核磁気共鳴信号と第2の計測で取得した核磁気共鳴信号とを用いて、テスト傾斜磁場の実測値を計算する傾斜磁場計算部を有し、当該傾斜磁場計算部は、テスト傾斜磁場の磁軸方向の磁場成分を計算する第1の計算と、磁軸方向と直交する少なくとも一つの方向の磁場成分を計算する第2の計算と、行うことを特徴とする。
本実施形態によれば、実測した傾斜磁場出力波形と直交軸方向の渦電流成分を用いて、撮像時のNMR信号を配置するk空間座標を補正するので、傾斜磁場誤差に起因する歪みやアーチファクトを低減した画像を得ることができる。
<第二の実施形態>
第一の実施形態では、直交する二つのスライスの交点である棒状の領域を励起位置とし、複数の励起位置からNMR信号を取得して、テスト傾斜磁場の傾斜磁場出力波形及び直交方向の渦電流成分を測定する場合を説明したが、本実施形態では、複数の平行なスライスを励起位置とすることが特徴である。以下、本実施形態のMRI装置による傾斜磁場出力波形測定動作を、第一の実施形態と相違する点を中心に説明する。
第一の実施形態では、直交する二つのスライスの交点である棒状の領域を励起位置とし、複数の励起位置からNMR信号を取得して、テスト傾斜磁場の傾斜磁場出力波形及び直交方向の渦電流成分を測定する場合を説明したが、本実施形態では、複数の平行なスライスを励起位置とすることが特徴である。以下、本実施形態のMRI装置による傾斜磁場出力波形測定動作を、第一の実施形態と相違する点を中心に説明する。
傾斜磁場出力波形測定の手順を図9に示す。本実施形態の測定は、計測ステップ901、積算ステップ903、演算ステップ904、波形加算ステップ906からなる。計測ステップ901が繰り返しループ902内に含まれること、全体がX、Y、Z軸ループ905内に含まれることは、図3に示した手順と同様である。
計測ステップ901で実行される計測パルスシーケンスの一例を図10に示す。ここでも一例として、テスト傾斜磁場としてX軸のテスト傾斜磁場を測定する場合を示している。
図10の計測パルスシーケンスも、テスト傾斜磁場を用いないで信号取得するリファレンス計測901-1と、テスト傾斜磁場を用いて信号取得する本計測901-2とを備える点は、図4の計測パルスシーケンスと同様である。
図10の計測パルスシーケンスも、テスト傾斜磁場を用いないで信号取得するリファレンス計測901-1と、テスト傾斜磁場を用いて信号取得する本計測901-2とを備える点は、図4の計測パルスシーケンスと同様である。
しかし、図10の計測パルスシーケンスでは、180度RFパルスは用いられない。従って、90度RFパルスとX軸のスライス選択傾斜磁場によって選択された領域が励起される。そして、スライス選択傾斜磁場を変更せずにRFパルスの周波数を変更することによって、スライス位置の異なる複数のスライスを励起する。励起位置は、傾斜磁場中心から対称に離れた位置で、複数組の非常に薄い励起厚のスライスを励起する。図11に、球ファントムにおける励起位置を示す。図示する例では左右3組のスライスを励起しているが、スライス数は3組(6スライス)に限定されず任意である。
本計測901-2では、スライス傾斜磁場と同軸の読出し傾斜磁場を印加しながら、NMR信号を計測する。ここでも必要に応じて、リファレンス計測と本計測とを繰り返し、結果を積算する(繰り返しループ902、積算903)。この際、一つのTR内に入れ子状に各信号計測ステップを配置することにより、繰り返し回数による時間延長を抑制することができる。
次に計測したNMR信号を用いた傾斜磁場出力波形の演算(ステップ904)を説明する。傾斜磁場中心から距離Dx離れたスライスからNMR信号は、式(22)、(23)で表わすことができる。
ここで、Kは複素定数、Dxは磁場中心からスライス励起位置までの距離、Δrはスライス厚、Gx(t)は実測する傾斜磁場強度の時間変化(つまり、傾斜磁場波形)を意味する。リファレンス計測で得られたNMR信号は、式(22)においてGx=0と置くことにより求められ、本計測のNMR信号との位相差は、次式(24)で表わされる。
B0を含む項は、静磁場B0の渦電流成分である。
ここで、Kは複素定数、Dxは磁場中心からスライス励起位置までの距離、Δrはスライス厚、Gx(t)は実測する傾斜磁場強度の時間変化(つまり、傾斜磁場波形)を意味する。リファレンス計測で得られたNMR信号は、式(22)においてGx=0と置くことにより求められ、本計測のNMR信号との位相差は、次式(24)で表わされる。
B0を含む項は、静磁場B0の渦電流成分である。
次式(26)により、式(24)と式(25)の静磁場B0の渦電流成分を消去することができるので、k(t)が求められる。これを用いて、式(27)により、傾斜磁場出力波形が算出される。つまり、NMR信号の位相変化からテスト傾斜磁場の単位時間の印加量Gx(t)が式(27)により求められる。
複数組、ここでは3組のスライスについて、それぞれ上述の計算を行い、波形加算ステップ906で得られた傾斜磁場出力波形を加算する。
複数組、ここでは3組のスライスについて、それぞれ上述の計算を行い、波形加算ステップ906で得られた傾斜磁場出力波形を加算する。
以上のステップ901~906を、テスト傾斜磁場の軸を変えて、繰り返し(ステップ905)、最終的にX軸、Y軸、Z軸全てについて傾斜磁場波形を得る。図11(b)、(c)に、それぞれ、Y軸の励起位置、Z軸の励起位置を示す。得られた傾斜磁場波形を用いて、撮像時のk空間座標を補正することは第一実施形態と同様である。但し、本実施形態では、直交成分については測定していないので、直交成分を含む補正は行われない。
以上説明したように、本実施形態のMRI装置と傾斜磁場の出力波形を測定する方法は、磁場計測部は、被検体の複数の平行なスライスについて、それぞれ、核磁気共鳴信号を発生させるものであり、傾斜磁場計算部は、複数のスライスについて、それぞれ、取得した核磁気共鳴信号を用いて前記テスト傾斜磁場の実測値を計算した後、各実測値を加算することを特徴とする。
本実施形態によれば、マルチスライス計測を行うことにより、TR内で複数のスライスの信号測定を行うことができるので、加算による測定時間の延長を抑制することができる。また複数のスライスで得られた結果である傾斜磁場出力波形を加算することができるので、測定精度を向上することができる。
本実施形態では、テスト傾斜磁場と直交する方向の渦電流成分について測定していないが、第一実施形態と組み合わせることによって、即ち、90度RFパルス励起後に180度RFパルスによる選択を組み合わせることによって、直交成分の測定も可能である。
最後に、傾斜磁場出力波形測定を実行するための測定ツールの実施形態を説明する。
測定ツールはMRI装置の表示・操作部113(図1)にUIとして搭載することができる。その一例である表示画面を図12に示す。表示画面は、測定の開始・停止を指示するためのボタン1201、1202と、測定条件を指示するためのチェックボックス1203と、入力波形及び結果である波形を表示する波形表示部1204とからなる。
本実施形態の測定ツールでは、startボタン1201を押下することによって、図3または図9に示すような動作が開始し、計測シーケンスが実行され、その結果を用いた演算処理が行われる。stopボタン1202の押下で、動作は停止する。演算は演算可能なデータが収集した時点で、計測シーケンスの実行と平行して行ってもよいし、全ての計測が終了後に行ってもよい。
計測シーケンスで用いるテスト傾斜磁場は、所定の入力波形(台形の波形)がデフォルトとして設定されており、それをそのまま計測シーケンスで用いてもよいし、操作者が任意に変更することも可能である。例えば、波形表示部105に表示された入力波形に対し、ポインティングデバイス等を用いて、振幅や立ち上り・立下りの傾斜を変更することも可能である。入力波形が決まると、設定された入力波形をテスト傾斜磁場の入力波形として計測シーケンスが実行される。また図12には示していないが、繰り返しループ302、902の繰り返し回数を予め操作者が任意に設定するようにしてもよい。
演算結果として、図13に示すように、X、Y、Zの各軸について傾斜磁場出力波形が得られる。傾斜磁場出力波形とともに渦電流の直交軸成分およびB0成分を測定した場合には、図14に示すような渦電流の直交軸成分および図示しないB0成分が得られる。操作者は、X、Y、Zのチェックボックス1203をチェックすることでいずれかの磁場成分を指定することができ、またB0及びCrossのチェックボックスをチェックすることで渦電流の直交軸成分やB0成分を波形表示画面に表示させることができる。図12に示す例では、波形表示画面1204には、入力波形である台形波形1211と、傾斜磁場波形の実測値(点線)1212及び渦電流の直交軸成分の実測値1213(点線)と、各実測値をフィッティングした近似波形(実線)が表示されている。
本発明によれば、MRI装置の傾斜磁場出力波形を簡便かつ精度よく実測する手段が提供される。この手段により実測された傾斜磁場出力波形を利用して、入力波形に対する傾斜磁場誤差によって生じるMRI装置における様々な問題、特に画像の歪みやアーチファクトの発生を解消することができる。
102 静磁場発生系、103 高周波磁場発生系、104 傾斜磁場発生系、105 受信系、108 全体制御部、111 計測制御部、113 表示・操作部、114 演算処理部、115 記憶部、1141 画像再構成部、1144 傾斜磁場計算部
Claims (18)
- 静磁場発生部、傾斜磁場発生部、高周波磁場発生部および高周波磁場検出部を備えた撮像部と、
撮像シーケンスに基き前記撮像部の動作を制御する制御部と、
前記高周波磁場検出部が検出した核磁気共鳴信号を用いて、画像再構成を含む演算を行う演算部と、
を備えた磁気共鳴イメージング装置において、
前記制御部は、前記傾斜磁場発生部が発生する傾斜磁場を計測する傾斜磁場計測部を有し、当該傾斜磁場計測部は、テスト傾斜磁場を用いることなく被検体から核磁気共鳴信号を取得する第1の計測と、前記テスト傾斜磁場を用いて被検体から核磁気共鳴信号を取得する第2の計測と、を制御し、
前記演算部は、前記第1の計測で取得した核磁気共鳴信号と第2の計測で取得した核磁気共鳴信号とを用いて、前記テスト傾斜磁場の実測値を計算する傾斜磁場計算部を有し、当該傾斜磁場計算部は、前記テスト傾斜磁場の磁軸方向の磁場成分を計算する第1の計算と、前記磁軸方向と直交する少なくとも一つの方向の磁場成分を計算する第2の計算と、行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記核磁気共鳴信号を取得する領域は、前記テスト傾斜磁場の磁軸方向のスライスおよびそれと直交する方向のスライスが交差する領域であることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記傾斜磁場計算部が計算した実測値を用いて、前記撮像シーケンスで得られた核磁気共鳴信号が配置されるk空間座標を補正する補正部を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記補正部は、前記傾斜磁場計算部が計算した前記テスト傾斜磁場の磁軸方向の実測値およびそれと直交する方向の実測値を用いて、前記画像再構成における画像の座標を少なくとも2方向について、それぞれ補正する座標補正部を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記磁場計測部は、前記被検体の複数の平行なスライスについて、それぞれ、核磁気共鳴信号を発生させるものであり、
前記傾斜磁場計算部は、複数のスライスについて、それぞれ、取得した核磁気共鳴信号を用いて前記テスト傾斜磁場の実測値を計算した後、各実測値を加算することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記傾斜磁場計測部が用いるテスト傾斜磁場は、前記撮像シーケンスに設定された傾斜磁場と同一の傾斜磁場であることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記傾斜磁場計算部は、前記テスト傾斜磁場によって、静磁場成分として重畳される渦電流成分を算出する第3の計算を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記演算部は、前記渦電流成分に基づく位相オフセットを補正して前記画像再構成を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記傾斜磁場計算部は、計算により求めた前記テスト傾斜磁場の実測値の近似波形を算出する第4の計算を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 請求項9に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記第4の計算は、フィッティング関数を用いた前記実測値のフィッティングを含み、
前記補正部は、前記フィッティング関数を用いて、前記撮像シーケンスで得られた核磁気共鳴信号が配置されるk空間座標を補正することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 請求項9に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記第4の計算は、前記実測値を線形補間する処理を含み、
前記補正部は、線形補間された実測値を用いて、前記撮像シーケンスで得られた核磁気共鳴信号が配置されるk空間座標を補正することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記傾斜磁場計測部は、テスト傾斜磁場として複数の磁軸のテスト傾斜磁場を用い、各軸について傾斜磁場計測を行うものであり、
前記傾斜磁場計算部は、複数の磁軸のテスト傾斜磁場のそれぞれについて実測値を計算することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記傾斜磁場計測部は、テスト傾斜磁場として複数種のテスト傾斜磁場を用い、テスト傾斜磁場毎に傾斜磁場計測を行うものであり、
前記傾斜磁場計算部は、複数種のテスト傾斜磁場のそれぞれについて実測値を計算するものであり、
前記補正部は、前記複数種のテスト傾斜磁場の実測値のうち、前記撮像パルスシーケンスに設定された傾斜磁場と同一の傾斜磁場の実測値を用いて、前記補正を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記傾斜磁場計算部が算出した結果を表示する表示部を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 磁気共鳴イメージング装置における傾斜磁場の出力波形を測定する方法であって、
ファントムを用いて、傾斜磁場中心から一定の距離にある2つの直交するスライスの交点である棒状の領域を励起し、読出し傾斜磁場を印加することなく核磁気共鳴信号を取得する信号取得ステップを繰り返して、位置が異なる少なくとも3つの前記棒状領域から核磁気共鳴信号を取得する第1の計測ステップと、
前記ファントムを用いて、前記位置が異なる少なくとも3つの棒状領域を励起し、テスト傾斜磁場として読出し傾斜磁場を印加して核磁気共鳴信号を取得する第2の計測ステップと、
前記第1及び第2の計測ステップで取得した核磁気共鳴信号を用いて、前記テスト傾斜磁場の傾斜磁場出力波形を算出する第1の計算ステップと、
前記第1及び第2の計測ステップで取得した核磁気共鳴信号を用いて、前記テスト傾斜磁場の磁軸と直交する方向に発生する磁場成分を算出する第2の計算ステップと
を含むことを特徴とする傾斜磁場波形の測定方法。 - 請求項15に記載の傾斜磁場波形の測定方法であって、
前記第1の計測ステップと第2の計測ステップとを繰り返す第1の繰り返しステップと、
前記繰り返し後に、前記第1及び第2の計測ステップで取得した核磁気共鳴信号をそれぞれ積算する積算ステップと、を含むことを特徴とする傾斜磁場波形の測定方法。 - 請求項15に記載の傾斜磁場波形の測定方法であって、
前記第1の計測ステップと第2の計測ステップと第1の計算ステップと第2の計算ステップとを、前記テスト傾斜磁場の軸を変えて、繰り返す第2の繰り返しステップを含むことを特徴とする傾斜磁場波形の測定方法。 - 請求項15に記載の傾斜磁場波形の測定方法であって、
前記第1の計算ステップで算出した傾斜磁場出力波形の近似波形を算出する第3の計算ステップを含むことを特徴とする傾斜磁場波形の測定方法。
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