本発明の一実施形態に係る電気化学デバイスは、図1(A)、図1(B)及び図2に示すように、略直方体状の剛性パッケージ10、剛性パッケージ10の内部空間に封入された蓄電素子20及び電解液(図示省略)、並びに、剛性パッケージ10の平坦な下面に設けられた負極端子30及び正極端子40を備えている。
剛性パッケージ10は、上面開口の凹部CPを有する剛性ケース11、及び、凹部CPの開口を水密及び気密に閉塞した導電リッド12を有している。剛性ケース11には、蓄電素子20の負極プレート21を導電リッド12を介して負極端子30に電気的に接続するための第1配線31、及び、蓄電素子20の正極プレート22を正極端子40に電気的に接続するための第2配線41が設けられている。
以下に、剛性ケース11の構造及びその作製方法を説明する。剛性ケース11は、図2に示すように、略矩形板状の第1層11aと、その上に位置する略矩形板状の第2層11bと、その上に位置する略矩形枠状の第3層11cと、その上に位置する略矩形枠状の被溶接枠部11dとを、一体に有している。
この剛性ケース11を作製するために、先ず、第1シートS11aと、第2シートS11bと、第3シートS11cと、を用意する。
図3には、第1シートS11aの上面図を示す。第1シートS11aは、Al2O3を主成分とする略矩形状グリーンシートに、未焼成のW(タングステン)膜WIa1~WIa10をスクリーン印刷等の手法により形成することによって製作される。図示の通り、グリーンシートの四隅には切り欠きCRa1がそれぞれ形成されている。また、グリーンシートの一組の短辺には切り欠きCRa2がそれぞれ形成されており、この切り欠きCRa2の一方の内面にはW膜WIa2が形成され、他方の内面にはW膜WIa7が形成される。本明細書において、切り欠きの「内面」という場合には、グリーンシートの下面と上面とを接続し、その切り欠きを画定する面をいう。例えば、切り欠きCRa2の内面は、その切り欠きが形成されたグリーンシートの下面と上面とを接続し、切り欠きCRa2を画定する面をいう。
グリーンシート下面には、略矩形状のW膜WIa1が、グリーンシートの左辺に接するように形成される。このW膜WIa1は、W膜WIa2を介して、グリーンシート上面に形成された略矩形状のW膜WIa3に連続している。グリーンシート上面において、グリーンシート左辺の両端に位置する一組の切り欠きCRa1に臨む縁部(切り欠きCRa1の内縁)には、弧状のW膜WIa5がそれぞれ形成される。このW膜WIa5は、グリーンシート上面に形成された一対の帯状のW膜WIa4を介して、W膜WIa3と接続される。
グリーンシート下面にはさらに、略矩形状のW膜WIa6がグリーンシートの右辺に接するように形成される。このW膜WIa6は、グリーンシートの右辺側の切り欠きCRa2の内面に形成されたW膜WIa7を介して、グリーンシート上面に形成された略矩形状のW膜WIa8に連続している。また、グリーンシート上面の中央付近には、円形のW膜WIa10が形成されており、このW膜WIa10は、帯状のW膜WIa9を介してW膜WIa8に連続している。
図4は、第2シートS11bの上面図を示す。第2シートS11bは、Al2O3を主成分とする略矩形状グリーンシートに、未焼成のW(タングステン)膜WIb1~WIb4をスクリーン印刷等の手法により形成し、Al2O3を主成分とする未焼成の絶縁膜COをコーティング等の手法により形成することによって製作される。図示の通り、グリーンシートの四隅には切り欠きCRb1がそれぞれ形成されている。グリーンシート下面において、グリーンシート左辺の両端に位置する一組の切り欠きCRa1に臨む縁部には、弧状のW膜WIb1がそれぞれ形成される。一組のW膜WIb1は、第1シートS11aの一組のW膜WIa5とそれぞれ対応する位置に形成される。グリーンシート上面において、グリーンシート左辺の両端に位置する一組の切り欠きCRb1に臨む縁部に、弧状のW膜WIb3がそれぞれ形成されており、W膜WIb1とW膜WIb3とは、切り欠きCRb1の内面に形成されたW膜WIb2を介して、互いに接続されている。
グリーシート中央には、グリーンシートを厚さ方向に貫通する円柱状のW膜WIb4が形成される。W膜WIb4は、第1シートS11aの円状のW膜WIa10と対応する位置に形成され、その径は、W膜WIa10の径と略等しい。また、グリーシート上面には、W膜WIa3とW膜WIb4を覆わないように絶縁膜COが形成されている。つまり、絶縁膜COは、グリーンシート上面に、W膜WIa3及びW膜WIb4が形成された領域を除く略全面に亘って形成される。
図5は、第3シートS11cの上面図を示す。第3シートS11cは、Al2O3を主成分とする略矩形枠状グリーンシートに、未焼成のW(タングステン)膜WIc1~WIc4をスクリーン印刷等の手法により形成することによって製作される。図示の通り、グリーンシートの四隅には切り欠きCRc1がそれぞれ形成されている。グリーンシート下面において、グリーンシート左辺の両端に位置する一組の切り欠きCRc1に臨む縁部には、弧状のW膜WIc1がそれぞれ形成される。一組のW膜WIc1は、第2シートS11bの一組のW膜WIb1とそれぞれ対応する位置に形成される。グリーンシート上面において、グリーンシート左辺の両端に位置する一組の切り欠きCRc1に臨む縁部に、弧状のW膜WIc3がそれぞれ形成されており、W膜WIc1とW膜WIc3とは、切り欠きCRc1の内面に形成されたW膜WIc2を介して互いに接続されている。
グリーンシート上面には、略矩形枠状のW膜WIc4がさらに形成される。W膜WIc4は、略矩形枠状のグリーンシート上面の幅よりも小さな幅を有していて、その外周縁の一部は、一組の弧状のW膜WIc3にそれぞれ連続している。
次に、以上のようにして準備された第1シートS11aの上に第2シートS11bを重ね、第2シートS11bの上に第3シートS11cを重ねて全体を圧着した後、これを焼成炉に投入して全体を焼成することで、図6に示す仮剛性ケース11’が得られる。焼成後の各W膜WIa1~WIa10、WIb1~WIb3、WIc1~WIc4の厚さはそれぞれ約10μmであり、焼成後の絶縁膜11b1(CO)の厚さは、例えば約5μmである。
この仮剛性ケース11’において、焼成後のW膜WIa1、WIa2、WIa3、WIa4、WIa5、WIb1、WIb2、WIb3、WIc1、WIc2、WIc3及びWIc4は、互いに電気的に導通している、また、焼成後のW膜WIa6、WIa7、WIa8、WIa9、WIa10及びWIb4は、互いに電気的に導通している。焼成後のW膜WIa1は負極端子30の下地膜30aとして利用され、焼成後のW膜WIc4は略矩形枠状の被溶接枠部11dの下地膜11d1として利用され、焼成後のW膜WIa6は正極端子40の下地膜40aとして利用される。
図7に示すように、仮剛性ケース11’の下地膜11d1(焼成後のW膜WIc4)の表面には、電解メッキ等の手法により厚さ約4μmのNi膜11d2が形成され、該Ni膜11d2の表面には、厚さ約5μmのAg-Cuロウ11d3を介して、Fe-Ni-Co合金(コバール)から成る母材11d4が接合される。次に、図8に示すように、下地膜11d1、Ni膜11d2、Ag-Cuロウ11d3及び母材11d4の全ての表面を覆うように、電解メッキ等の手法により厚さ約4μmのNi膜11d5が形成される。さらに、該Ni膜11d5の表面を覆うように、電解メッキ等の手法により厚さ約2μmのAu膜11d6が形成される。これにより、被溶接枠部11dは、下地膜11d1と同様に、略矩形枠状に形成される。
以上から明らかなように、一実施形態において、剛性ケース11の上部に凹部CPを囲むようにして設けられた略矩形枠状の被溶接枠部11dは、下地膜11d1と、Ni膜11d2と、Ag-Cuロウ11d3と、母材11d4と、Ni膜11d5と、Au膜11d6と、を含んで構成されている。この被溶接枠部11dは略一定の上面視幅W11dを有する矩形枠状に形成されている。Au膜11d6の凹部CPに臨む面は、凹部CPを画定する内面の上部を構成している。
さらに、図9に示すように、仮剛性ケース11’の焼成後のW膜WIb4の表面(露出面)に、電解メッキ等の手法により厚さ約4μmのNi膜41aが形成される。また、該Ni膜41aの上面に、電解メッキ等の手法により厚さ約2μmのAu膜41bが形成される。そして、Ni膜41a及びAu膜41bの表面と絶縁膜11b1(CO)の表面を覆うように、コーティングまたは蒸着等の手法によりAlから成る厚さ約30μmの集電膜41cが形成される。この集電膜41cの大きさは、蓄電素子20の正極プレート22の大きさと略一致している。
さらに、図10に示すように、仮剛性ケース11’の下地膜30a(焼成後のW膜WIa1)及びW膜WIa2の表面を覆うように、電解メッキ等の手法により厚さ約4μmのNi膜30bが形成され、該Ni膜30bの表面を覆うように、電解メッキ等の手法により厚さ約2μmのAu膜30cが形成される。これにより、下地膜30a(焼成後のW膜WIa1)、Ni膜30b及びAu膜30cから成る負極端子30が形成される。
さらに、図11に示すように、仮剛性ケース11’の下地膜40a(焼成後のW膜WIa6)及びW膜WIa7の表面を覆うように、電解メッキ等の手法により厚さ約4μmのNi膜40bが形成され、該Ni膜40bの表面を覆うように、電解メッキ等の手法により厚さ約2μmのAu膜40cが形成される。これにより、下地膜40a(焼成後のW膜WIa6)、Ni膜40b及びAu膜40cから成る正極端子40が形成される。一実施形態においては、Ni膜11d5、Ni膜41a、Ni膜30b、及びNi膜40bを、共通プロセスにより同時に形成してもよい。また、Au膜11d6、Au膜41b、Au膜30c、及びAu膜40cを、共通プロセスにより同時に形成してもよい。
以上により、剛性ケース11の作製が完了する。この剛性ケース11において、焼成後のW膜WIa2、WIa3、WIa4、WIa5、WIb1、WIb2、WIb3、WIc1、WIc2、WIc3、及び被溶接枠部11dにより、第1配線31が構成される。第1配線31は、蓄電素子20の負極プレート21を導電リッド12を介して負極端子30に電気的に接続する。また、焼成後のW膜WIa7、WIa8、WIa9、WIa10、WIb4、Ni膜41a、Au膜41b、及び集電膜41cにより、第2配線41が構成される。第2配線41は、蓄電素子20の正極プレート22を正極端子40に電気的に接続する。
図12は、導電リッドの部分拡大断面図を示す。図示の通り、導電リッド12は、母材12aの上下面に厚さ約5μm程度のNi層12b及び12cを形成したクラッド材から成る。母材12aは、Fe-Ni-Co合金(コバール)から成り、その厚さは、例えば約90μmである。母材12aと各Ni層12b及び12cとの境界面には拡散接合により合金層が形成される。導電リッド12の母材12aとしてFe-Ni-Co合金を用いることにより、導電リッド12の線膨張係数を、Al2O3を主成分とするセラミックから成るパッケージの絶縁部の線膨張係数と同一又は近似した値とすることができる。つまり、導電リッド12の線膨張係数と絶縁部の線膨張係数が近似していれば、電気化学デバイスを回路基板等に表面実装するときのリフローハンダ付け工程等において導電リッド12と絶縁部に熱膨張及び収縮が生じた場合でも、導電リッド12と絶縁部との接合部分が破壊されにくくなる。
また、導電リッド12は、図12に示したように、被溶接枠部11dの上面と向き合う平坦で環状の被溶接部分PPと、該被溶接部分PPの内周縁から内方に傾斜して延伸する環状の補強部分RPと、該補強部分RPの内側の平坦な部分(符号無し)とを有しており、その上面視輪郭は剛性ケース11の被溶接枠部11dの外周縁の上面視輪郭と略一致している。つまり、補強部分RPは、被溶接部分PPの内周縁から内方に向かって上向きに傾く環状部分から成る。このように、導電リッド12は平板状ではなく、補強部分RPの内側に存する平坦な部分が外周の被溶接部分PPよりも上方に張り出した形状に構成されている。補強部分RPを設けることにより、溶接部分PPと被溶接枠部11dとの接合部分に破壊が生じにくくなる。一実施形態において、被溶接部分PPの下面に対する該補強部分RPの傾斜角度は、例えば、5~30度である。
蓄電素子20は、図2に示したように、厚さ約200μmの矩形状の負極プレート21と、厚さ約250μmの矩形状の正極プレート22と、両者の間に介在された厚さ約100μmの矩形状のセパレートシート23と、から構成されている。これらの厚さは例示であり、負極プレート21、正極プレート22、セパレートシート23の厚さは、用途に応じて適宜変更可能である。
負極プレート21及び正極プレート22は、活性炭やPAS(ポリアセン系半導体)等の活物質から成り、セパレートシート23はガラス系シート、セルロース系シート、又はプラスチック系シート等のイオン透過シートから成る。負極プレート21及び正極プレート22の上面視輪郭は、互いに略等しいが、セパレートシート23の上面視輪郭は負極プレート21及び正極プレート22の上面視輪郭よりも大きい。
本発明の一実施形態に係る電気化学デバイスの作製方法を図13~図16を参照して説明する。まず、図13に示すように、蓄電素子20の負極プレート21の上面を、黒鉛ペースト等の導電性接着剤(図示省略)を用いて導電リッド12の下側Ni層12cの下面中央(補強部分RPの内側に存する平坦な部分の下面の中央)に貼り付け、この導電リッド12に貼り付けられた負極プレート21を、減圧下250℃以上で10時間乾燥させる。次に、負極プレート21に電解液等を注液して含浸させる。
また、図13に示したように、蓄電素子20の正極プレート22を剛性ケース11の凹部CP内に挿入し、該正極プレート22の下面を、黒鉛ペースト等の導電性接着剤を用いて集電膜41cの上面に貼り付け、この集電膜41cに貼り付けられた正極プレート22を、減圧下250℃以上で10時間乾燥させる。次に、正極プレート22に前記同様の電解液を注液して含浸させ、該正極プレート22の上面にセパレートシート23を載置する。一実施形態において、負極プレート21及び正極プレート22に含浸させる電解液は、例えば、プロピレンカーボネイト(溶媒)に硼弗化トリエチルメチルアンモニウム(溶質)を加えたものである。
次に、図14に示すように、被溶接部分PPの下面が被溶接枠部11dの上面に重なるように、導電リッド12を剛性ケース11の上に載置する。一実施形態においては、被溶接部分PPの下面と被溶接枠部11dの上面との隙間が20μm以下になるように、導電リッド12を剛性ケース11に載置される。この隙間を20μm以下とすることにより、後述するレーザビームLBの照射時に、被溶接部分PPから被溶接枠部11dへの照射エネルギーの伝導をロス無く行うことができる。被溶接部分PPの下面と被溶接枠部11dの上面との隙間は、後述するレーザビームLBの照射時に導電リッド12を適当な治具を用いて被溶接枠部11dに押し付ける手法や、レーザビームLBの照射前に仮止めを行う手法等によって調整することができる。
次に、図14及び図15に示したように、導電リッド12の被溶接部分PPの上面に、所定の照射径LBsのレーザビームLBを照射する。レーザビームLBは、照射位置を図15に示した矢印に沿って一定速度で移動させながら照射される。一実施形態においては、レーザビームLBを照射するときに、照射位置に酸化防止用のシールドガス(Ar、HeまたはN2)が吹き付けられる。
このレーザビームLBは、例えばYAGレーザビームである。一実施形態において、レーザビームLBは、レーザ発振器から発振されたビームを適当な光学系を介して集光レンズに伝送し、該集光レンズによって照射径LBsを調整した上で、導電リッド12の被溶接部分PPの上面に照射される。また、レーザビームLBの照射径LBsは、略矩形枠状の被溶接枠部11dの幅W11d(図8を参照)よりも小さく、該レーザビームLBの照射中心(照射径LBsの中心)は、被溶接枠部11dの幅方向中心に略一致している(図15を参照)。導電リッド12の厚さが100μm、被溶接枠部11dのAu膜11d6の厚さが2μmでNi膜11d5の厚さが4μmの場合には、10~50kWの照射エネルギーがあれば、所期のレーザ溶接を的確に行うことができる。
導電リッド12の被溶接部分PPにレーザビームLBを照射すると、図16に示したように、該レーザビームLBの照射エネルギーが、被溶接部分PPの上側Ni層12b、母材12a及び下側Ni層12cを通じて、被溶接枠部11dのAu膜11d6、Ni膜11d5及び母材11d4に伝導する。この照射エネルギーによって、キーホール型に金属が溶融し、この溶融した金属が時間の経過とともに凝固して溶接ビード50が形成される。溶接ビード50は、被溶接部分PPから被溶接枠部11dに及ぶように形成され、被溶接部分PPと被溶接枠部11dとを水密及び気密に接合する。レーザビームLBはその照射位置を図15に示した矢印方向に一定速度で移動させながら照射されるため、溶接ビード50は、図1(A)に示したように所定の幅を有する平面視環状の形状と成る。
また、図16から分かるように、溶接ビード50は、その幅が被溶接枠部11dの幅W11d(図8を参照)よりも小さくなるように、被溶接枠部11dの略幅方向中心を通るように形成されるため、剛性パッケージ10の内部空間(凹部CP)に露出することは無い。
先に述べたように、被溶接部分PPを被溶接枠部11dに対して仮止めした状態で、被溶接部分PPを被溶接枠部11dにレーザ溶接しても良い。この仮止めには、レーザ溶接を部分的に(数カ所)実施する方法、スポット溶接を数カ所実施する方法、シーム溶接を部分的に(数カ所)実施する方法、レーザ溶接時に消失する接着剤を用いて貼り付ける方法等が含まれる。この仮止めは、被溶接部分PPの下面と被溶接枠部11dの上面との隙間を調節するために行われ、必要最小限の接合力が被溶接部分PPと被溶接枠部11dとの間に生じるようにすれば良い。したがって、仮止めにレーザ溶接を用いる場合の照射エネルギーは、溶接ビード50を形成する際に用いられる照射エネルギーよりも低く設定できる。また、仮止めにスポット溶接やシーム溶接を用いる場合の印加電圧は、通常時の印加電圧よりも低く設定できるため、仮止めのためのスポット溶接またはシーム溶接によって生じた溶融物やその凝固物等が剛性パッケージ10の内部空間に侵入することは無い。
次に、本発明の一実施形態に係る電気化学デバイスを回路基板等に表面実装する際に、当該電気化学デバイスに発生する応力について図17を参照して説明する。本発明の一実施形態に係る電気化学デバイスは、一般にリフローハンダ付けにより、回路基板等に表面実装される。このリフローハンダ付けにおいては、回路基板等にクリームハンダを介して搭載された電気化学デバイスがリフロー炉に投入されるため、該電気化学デバイスは、ハンダ溶融温度またはこれに近い温度、例えば、鉛フリーハンダを用いたリフローハンダ付けの場合には220~260℃まで昇温し、これにより電解液の気化等が発生するため、剛性パッケージ10の内部圧力が常温時よりもかなり上昇する。
この上昇内圧IPは、図17に示すように、剛性パッケージ10の内面に略均一に加わる。この上昇内圧IPに生じる応力は、剛性ケース11と導電リッド12との界面に集中し、導電リッド12に上向きの力が作用する。本発明の一実施形態に係る電気化学デバイスにおいては、導電リッド12の被溶接部分PPの内側に補強部分RPが上方に傾斜するように設けられているため、内圧の上昇により導電リッド12に上向きの力が発生しても、この力は補強部分RPによって緩和される。したがって、剛性ケース11と導電リッド12との接合部分にクラックや破壊が発生することを防止し、水密性及び気密性を良好に維持することができる。
リフローハンダ付け以外の原因により電気化学デバイスの内圧が上昇する場合にも、補強部分RPにより、剛性ケース11と導電リッド12との接合部分におけるクラックや破壊の発生を防止することができる。例えば、回路基板等に表面実装された電気化学デバイスが高温環境下で使用されることにより内圧が上昇する場合や、電解液分解によって発生したガスにより内圧が上昇する場合にも、補強部分RPにより、剛性ケース11と導電リッド12との接合部分におけるクラックや破壊の発生を防止することができる。
このように、本発明の一実施形態に係る電気化学デバイスにおいては、導電リッド12が環状の被溶接部分PPの内側に該被溶接部分PPの上方曲げ強度を高めるための補強部分RPを有しているため、リフローハンダ付け時等において剛性パッケージ10の内圧が上昇した場合でも、この内圧の上昇により導電リッド12に加えられる上向きの力を補強部分RPによって緩和することができる。したがって、剛性ケース11と導電リッド12との接合部分におけるクラックや破壊の発生を防止することができ、水密性及び気密性を良好に維持できる。
また、本発明の一実施形態においては、補強部分RPは被溶接部分PPの内周縁から内方に向かって上向きに傾斜する環状部分から成るので、導電リッド12は、平板状の基材をプレス加工によって整形する方法で簡単に作製できる。
また、本発明の一実施形態においては、導電リッド12の被溶接部分PPと剛性ケース11の被溶接枠部11dとのレーザ溶接により形成された溶接ビード50が剛性パッケージ10の内部空間に露出していないため、レーザ溶接により生じる溶融物やその凝固物が剛性パッケージ10の内部空間へ侵入することを防止できる。したがって、レーザ溶接の溶融物やその凝固物に起因する特性劣化を防止できる。
また、本発明の一実施形態においては、レーザビームLBの照射径LBsを調整することによって、溶接ビード50の幅を1.0mm以下、例えば、100μm程度まで小さくすることができるので、電気化学デバイスの小型化に伴って被溶接枠部11dの幅W11d(図8を参照)が小さくなった場合、例えば、1.0mm以下となった場合でも、溶融物やその凝固物を剛性パッケージ10の内部空間へ侵入させることなくレーザ溶接を行うことができる。
また、本発明の一実施形態においては、被溶接枠部11dの剛性パッケージ10の内部空間と向き合う面が電解液に対して耐食性を有するAuから形成されているため、該被溶接枠部11dのFe-Ni-Co合金から成る母材11d4が電解液と接触して腐食することを防止できる。
また、本発明の一実施形態においては、導電リッド12が母材(Fe-Ni-Co合金)12aの上下面にNi層12b及び12cを有するクラッド材から形成されているため、該下側Ni層12cがメッキによって形成されている場合に比べて、該導電リッド12のFe-Ni-Co合金から成る母材12aが電解液と接触して腐食し、ピンホールを生じることを防止できる。
また、本発明の一実施形態においては、導電リッド12の母材12aとしてFe-Ni-Co合金を用いることによって、導電リッド12の線膨張係数を、Al2O3を主成分とするセラミックから成る回路基板の絶縁部の線膨張係数と同一又は近接した値をすることができる。つまり、導電リッド12の線膨張係数と絶縁部の線膨張係数が近似していれば、電気化学デバイスを回路基板等に表面実装するときのリフローハンダ付け工程等において導電リッド12と絶縁部に熱膨張及び収縮が生じた場合でも、導電リッド12と絶縁部との接合部分が破壊されにくくなり、クラック発生を防止することができる。
本発明の実施形態は、本明細書において明示的に述べた態様に限られず、本明細書において具体的に説明した態様に様々な変更を行うことができる。例えば、図18に示すように、補強部分RPの内側に環状平坦部分PP’を介して環状の第2補強部分RP’を設けてもよい。また、補強部分RPや第2補強部分RP’を傾斜した平面ではなく、湾曲した形状に形成してもよい。また、溶接ビード50の形成位置は被溶接枠部11dの幅方向の略中心に限られず、溶接ビード50が剛性パッケージ10の内部空間に露出しない限り任意の位置に形成することができる。また、Au膜11d6に代えて、電解液に対して耐食性を有するPt、Ag、又はPd等の他の金属膜を用いることができる。
また、導電リッド12の上側Ni層12bを省略し、Fe-Ni-Co合金から成る母材12aと下面側のNi層12cとから成る2層のクラッド材(が無いもの)から導電リッド12を形成してもよい。導電リッド12用のNi層12b及び12cに代えて、Pt、Ag、Au、又はPd等の他の金属層を用いることができる。
本明細書において説明された剛性ケース11の被溶接枠部11dを構成する各膜の厚さ、導電リッド12を構成する各層の厚さは例示に過ぎず、本発明は、これらの例示された厚さに限定されるものではない。本明細書において明示的に述べた以外にも、開示された実施形態には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更を加えることができる。また、導電リッド12の被溶接部分PPと剛性ケース11の被溶接枠部11dとをシーム溶接を用いて接合してもよい。