JP6362063B2 - 電気化学セル - Google Patents
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Description
チップ型の電気化学セルは、ケースに凹状容器が用いられている。この凹状容器の凹部(収容部)には正極及び負極からなる一対の電極、両電極の間に設けたセパレータ及び電解質が収容されている。また凹状容器の上面にシールリングを設け、その上に板状の蓋を被せることにより、容器として形成されている。
そこで全体を薄くしようとして、凹状容器の収容部の高さを低くした場合、正極の上端付近と負の電位を持つシールリングの側面部とが近接することになる。このため、蓋部のシールリングへの溶接時や、基板固定の際のリフロー加熱時に、凹状容器や正極の熱変形が起こり内部の相対的な位置関係に変化が生じた場合、正極とシールリングとの接触により、内部ショートが発生することがある。また、正極を凹状容器の収容部に設置する際の製造プロセスにおいて正極の接着位置が凹状容器の中心から偏った場合、正極とシールリングとの接触により、内部ショートが発生することがある。
本発明のうち第1の発明は、内部を収容部2aとし、絶縁性を有する凹状容器2と、凹状容器2の上端面に接合されたシールリング3と、シールリング3の上面に接合され、かつ、シールリング3の上面を塞ぐ蓋部4とから形成され、凹状容器2は、四角板状の底部2bと、底部2bの外縁に立設した四角枠状の壁部2cとから構成されており、底部2bと壁部2cとから形成された凹状容器2の凹部(収容部2a)の内部には、正極8が収容されており、壁部2cの内周面は連続した面により構成されており、壁部2cの高さが、0.3mm以下である場合において、正極8とシールリング3との距離をDとしたときに、D≧60μmを満たすように凹状容器2とシールリング3と正極8とを配置し、収容部2aの底部2b及び壁部2cに接する部分には絶縁性を有する突出部2dが形成され、壁部2c及び突出部2dにより収容部2aの内周面に段差が設けられており、突出部2dは正極8の上面よりも下方に配置されていることを特徴とする。
本発明のうち第2の発明は、内部を収容部2aとし、絶縁性を有する凹状容器2と、凹状容器2の上端面に接合されたシールリング3と、シールリング3の上面に接合され、かつ、シールリング3の上面を塞ぐ蓋部4とから形成され、凹状容器2は、四角板状の底部2bと、底部2bの外縁に立設した四角枠状の壁部2cとから構成されており、底部2bと壁部2cとから形成された凹状容器2の凹部(収容部2a)の内部には、正極8が収容されており、壁部2cの内周面は連続した面により構成されており、壁部2cの高さが、0.3mm以下である場合において、正極8とシールリング3との距離をA、壁部2cの高さをBとしたときに、A/B≧20%を満たすように凹状容器2とシールリング3と正極8とを配置し、収容部2aの底部2b及び壁部2cに接する部分には絶縁性を有する突出部2dが形成され、壁部2c及び突出部2dにより収容部2aの内周面に段差が設けられており、突出部2dは正極8の上面よりも下方に配置されていることを特徴とする。
本発明に係る電気化学セルによれば、負の電位を有するシールリングと正極との距離が一定以上に離れるように、凹状容器とシールリングと正極とを配置している。このため、電気化学セルの小型化に伴い凹状容器を薄くしたとしても、内部ショートが発生しないため、信頼性の高い電気化学セルを提供することができる。
本発明の電気化学セル1は、その外観が略立方形状である。図1に示すとおり、電気化学セル1は、内部に収容部2aを有する絶縁材料からなる有底四角筒状の凹状容器2と、凹状容器2の上端面に接合された四角枠状のシールリング3と、シールリング3の上面に接合され、かつ、シールリング3の上面を塞ぐ四角板状の蓋部4とから構成されている。
凹状容器2は、上方を開放した箱体状のセラミックからなる容器であって、長方形状の底部2bと、底部2bの外縁に立設した長方形枠状の壁部2cを有している。図2に示すとおり、凹状容器2の収容部2aの底面には正極8と電気的に接続される正極集電体6bが4箇所形成されている。また、図1に示すとおり、収容部2aの底面から底部2bの厚さの半分の深さまでビア配線6cが4箇所形成されている。そして、各ビア配線6cの上面が正極集電体6bとして収容部2aの底面に露出している。収容部2aの底面と底部2bの下面との中間部分には層間配線6dが形成されている。この層間配線6dは、一端はビア配線6cに接続され、他端は凹状容器2の側面に露出している。そして、この層間配線6dの露出部分から底部2bの下面にかけて正極外部端子6eが形成されている。さらに、正極外部端子6eのある凹状容器2の側面と反対側の側面の上端部から、壁部2cを経て底部2bの下面にかけて負極外部端子7bが形成されている。
この凹状容器2は、長方形状に打ち抜かれた底部2bに対応するセラミックグリーンシートに、長方形枠状に打ち抜かれた壁部2cに対応するセラミックグリーンシートを貼り合せた後、焼成することにより形成される。この際、あらかじめセラミックグリーンシートに電極のパターンを印刷しておけば、ビア配線6c、層間配線6d、正極外部端子6e及び負極外部端子7bを形成することができる。また、ビア配線6cは、あらかじめ各ビアホールに炭素と樹脂を混合したペーストを充填し、凹状容器2となるセラミックグリーンシートと共に焼成することにより形成してもよい。
なお、壁部2cの上端面とシールリング3は、Ag−Cu合金やAu−Cu合金などのロウ材を介して接合してもよい。
蓋部4は、シールリング3の上面に接合されており、凹状容器2の収容部2aを密封している。蓋部4には、熱膨張係数がセラミックの熱膨張係数と近いコバールや42alloyなどの合金にニッケルメッキを施したものが使用される。このような材料を用いた蓋部4は、例えば、抵抗シーム溶接、レーザーシーム溶接、電子ビーム溶接などによってシールリング3に溶接させることができ、塞がれた状態の収容部2aの気密性を向上させる。なお、シールリング3を使用せず、壁部2cの上端面と蓋部4とをロウ材で直接接合させてもよい。
凹状容器2の収容部2aには、正極及び負極からなる一対の電極と電解質などが収容されている。具体的には、収容部2aは図1に示すように、正極集電体6bの上面とその周囲に形成された保護膜6aと、この保護膜6aに接合される正極8と、正極8の上に設置されるセパレータ10と、セパレータ10により正極8と隔離された負極9と、負極9と蓋部4との間位に設けられた接着部7aとから構成されている。また、収容部2a内は、電解質11で満たされている。
また、蓋部4と負極9との間に設けられた接着部7aは、導通性接着剤から形成されており、この導通性接着剤については、保護膜6aに使用される導通性接着剤と同様のものを用いることができる。
また、正極8は、電気化学セルを電池として使用する場合には、リチウム含有マンガン酸化物、リチウム含有コバルト酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物、リチウム含有チタン酸化物、三酸化モリブデン、五酸化ニオブなど、従来から知られている活物質に適当なバインダーと導電助剤であるグラファイトを混合したものを用いることができる。
セパレータ10には、大きなイオン透過度を有し、機械的強度を有する絶縁膜を用いることができる。リフローハンダ付けにおける炉での実装と、蓋部4との溶接による熱影響を考慮すると、セパレータ10は、熱的、機械的耐性に優れたガラス繊維を用いることができる。また、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂を用いてもよい。
液体状及びゲル状の電解質11に用いられる有機溶媒には、アセトニトリル、ジエチルエーテル、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボーネート、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、γ−ブチロラクトン(γBL)などがある。
液体状及びゲル状の電解質11に含まれる材料には、(C2H5)4PBF4、(C3H7)4PBF4、(CH3)(C2H5)3NBF4、(C2H5)4NBF4、(C2H5)4PPF6、(C2H5)4PCF3SO4、(C2H5)4NPF6、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3SO2)2]、チオシアン塩、アルミニウムフッ化塩、リチウム塩などを用いることができるが、これらに限定するものではない。
更に、ピリジン系や脂環式アミン系、脂肪族アミン系やイミダゾリウム系のイオン性液体やアミジン系等の常温溶融塩を用いても構わない。
次に、本電気化学セル1における、凹状容器2、シールリング3及び正極8の位置関係について説明する。
電気化学セル1を薄くするに際し、凹状容器2の壁部2cの高さを低くした場合、正極8の上端付近とシールリング3の側面部とが近接することになる。シールリング3は、蓋部4を介して負極9と通電しているため、負の電位を有している。ここで、正極8の上端付近とシールリング3とが接触すれば、ショートが発生することになる。本実施形態は、壁部2cの高さが、0.3mm以下の超小型化した凹状容器2において、図3(A)に示すように、正極8の上端からシールリング3までの垂直距離をDとすると、D≧60μmを満たすように設計している。
また、図3(B)に示すように、正極8の側面部から、シールリング3までの水平距離をDとした場合、D≧60μmを満たすように設計してもよい。この場合も同様の作用効果を得ることができる。
なお、ロウ材を介してシールリング3を壁部2cの上端面に接合させた場合や、シールリング3を使用せず、壁部2cの上端面と蓋部4とを直接ロウ材で接合させた場合には、負の電荷を有するロウ材と正極8との距離をDとするとよい。
図4及び図5は第1の実施形態の変形例である。
図4に示すように、シールリング3の幅が狭く、シールリング3の内周面が、凹状容器2の壁部2cの内壁面と一致しない電気化学セル1場合、図5(A)のように、正極8の側面部からシールリング3までの水平距離をDとして、D≧60μmとなるように設計してもよい。この場合、図5(B)のように、正極8の上端からシールリング3までの垂直距離d1と、正極8の側面部からシールリング3までの水平距離d2との和をDと規定してもよい。
この際、正極8の上端からシールリング3までの垂直距離、正極8の側面部からシールリング3までの水平距離又は両距離の和をA、壁部2cの高さをBとすると、B=0.3mmの時、A=60μm(0.06mm)であることを踏まえると、A/B≧20%を満たすように設計することができる。
ショート率(%)=(ショート検体数)/全試験検体数×100・・・式1
一方、Dが60μmの実施例1では、正極8が壁部2cに接触した場合のショート率が27%に低減し、凹状容器2の中央に配置した場合は、ゼロとなった。また、Dが100μmの実施例2では、正極8を壁部2cに接触させても、中央に置いてもショートは発生しない。
更に、より望ましくは100μm以上であれば、正極8の位置に係らずショートは発生しない。したがって、電気化学セル1の小型化に伴い凹状容器2を薄くしたとしても、内部ショートが発生しない、信頼性の高い電気化学セルを提供することができる。
第2の実施形態の電気化学セル1の断面図を図6に示す。第2の実施形態は、第1の実施形態の電気化学セル1の凹状容器2の形状に相違があるのもの、その他については第1の実施形態と同様であるので、相違点についてのみ説明する。
第2の実施形態の凹状容器2は、図6に示すとおり、内部に収容部2aを有する箱体状のセラミックからなる容器であって、長方形状の底部2bと、この底部2bに立設する長方形枠状の壁部2cとが形成されている。さらに、底部2b及び壁部2cに接する部分に突出部2dを形成し、壁部2cに段差を設けている。
突出部2dは絶縁性を有しており、凹状容器2と同じ素材で形成されている。したがって、第2の実施形態に係る凹状容器2は、底部2b、壁部2c及び突出部2dを一体に形成することができる。この凹状容器2は、底部2bにあたる長方形状に切り抜いたセラミックグリーンシートに、壁部2c及び突出部2dに対応する長方形枠状に切り抜いたセラミックグリーンシートを貼り合せ、さらに、壁部2cのみに対応する長方形枠状に切り抜いたセラミックグリーンシートを貼り合せた後、焼成することにより形成される。
2b 底部 2c 壁部 2d 突出部
3 シールリング 4 蓋部
6a 保護膜 6b 正極集電体 6c ビア配線
6d 層間配線 6e 正極外部端子
7a 接着部 7b 負極外部端子
8 正極 9 負極 10 セパレータ
11 電解質
Claims (2)
- 内部を収容部とし、絶縁性を有する凹状容器と、
前記凹状容器の上端面に接合されたシールリングと、
前記シールリングの上面に接合され、かつ、前記シールリングの上面を塞ぐ蓋部とから形成され、
前記凹状容器は、四角板状の底部と、前記底部の外縁に立設した四角枠状の壁部とから構成されており、
前記底部と前記壁部とから形成された前記凹状容器の凹部(収容部)の内部には、正極が収容されており、
前記壁部の内周面は連続した面により構成されており、
前記壁部の高さが、0.3mm以下である場合において、
前記正極と前記シールリングとの距離をDとしたときに、D≧60μmを満たすように前記凹状容器と前記シールリングと前記正極とを配置し、
前記収容部の前記底部及び前記壁部に接する部分には絶縁性を有する突出部が形成され、前記壁部及び前記突出部により前記収容部の内周面に段差が設けられており、
前記突出部は前記正極の上面よりも下方に配置されていることを特徴とする電気化学セル。 - 内部を収容部とし、絶縁性を有する凹状容器と、
前記凹状容器の上端面に接合されたシールリングと、
前記シールリングの上面に接合され、かつ、前記シールリングの上面を塞ぐ蓋部とから形成され、
前記凹状容器は、四角板状の底部と、前記底部の外縁に立設した四角枠状の壁部とから構成されており、
前記底部と前記壁部とから形成された前記凹状容器の凹部(収容部)の内部には、正極が収容されており、
前記壁部の内周面は連続した面により構成されており、
前記壁部の高さが、0.3mm以下である場合において、
前記正極と前記シールリングとの距離をA、前記壁部の高さをBとしたときに、A/B≧20%を満たすように前記凹状容器と前記シールリングと前記正極とを配置し、
前記収容部の前記底部及び前記壁部に接する部分には絶縁性を有する突出部が形成され、前記壁部及び前記突出部により前記収容部の内周面に段差が設けられており、
前記突出部は前記正極の上面よりも下方に配置されていることを特徴とする電気化学セル。
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