WO2011125403A1 - 磁気記録媒体 - Google Patents
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- a method for physically separating the magnetic recording layer of the patterned medium a method of removing the magnetic recording layer between tracks or bits by etching after forming the magnetic recording layer, or a magnetic recording after forming irregularities on the substrate surface
- a method of forming a layer and using a convex portion as a magnetic recording portion and a method of changing magnetic characteristics by implanting ions into a region to be a guard band portion (for example, Patent Documents 1 and 2).
- the method of partially removing the magnetic recording layer by etching to form a groove is expected to reduce the noise from the guard band portion and obtain a good S / N ratio.
- Patent Document 6 discloses a method of forming an anti-oxidation layer after etching a magnetic recording layer and filling the guard band part back with a filler.
- Patent Document 7 discloses a non-magnetic material contained in the magnetic recording layer as a guard band. A method is shown in which etching is performed so as to remain in the portion, and this is used as an antioxidant layer, and then the guard band portion is backfilled.
- FIG. 6 is a diagram showing standard electrode potentials of sidewall layers and nonmagnetic underlayer materials of Examples 1-1 to 1-3 of the present invention and Comparative Examples 1-1 to 1-5.
- FIG. 6 is a graph showing the relationship between standard electrode potentials and corrosion points of Examples 1-1 to 1-3 of the present invention and Comparative Examples 1-1 to 1-5.
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- the side wall surface of the magnetic recording layer is ionized from hydrogen. It is covered with a side wall layer made of a material having a low tendency, the nonmagnetic underlayer is made of the same material as the side wall layer, and the top surface of the magnetic recording layer and the side surface of the side wall layer are made of a nonconductive material containing C or Si. A structure covered with a protective film is formed.
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Abstract
耐食性に優れたパターン型磁気記録媒体を提供するために、非磁性下地層122上に設けられたトラック構造またはビット構造などのパターン状に分離された磁気記録層13を有する磁気記録媒体において、磁気記録層13の側壁面が水素よりイオン化傾向の小さい材料から成る側壁層14で覆われており、非磁性下地層122が側壁層14と同一の材料から成り、かつ、磁気記録層13の上面と側壁層の側面がCもしくはSiを含む不導体材料から成る保護膜16で覆われた構造とする。
Description
本発明は、磁気記録再生装置(ハードディスクドライブ)に搭載する磁気記録媒体に関わり、特に磁気記録層にディスクリートパターンやビットパターンに代表されるパターン構造を有する磁気記録媒体に関する。
近年、情報化社会の発展に伴い、新たに生み出される情報量は飛躍的に増加している。したがって、磁気記録再生装置には更なる記録密度の向上が求められている。高密度化のためには情報の記録領域の単位であるビットサイズをより微細化していく必要がある。このための技術の一つとして、垂直磁気記録方式が用いられている。垂直磁気記録は、記録媒体の磁化容易軸を媒体面に対して垂直に配向させ、隣接する記録ビットの磁化が互いに反平行に向くようにした方式で面内磁気記録方式と比べて磁化遷移領域を小さくでき、記録ビットの高密度化が可能である。
しかし、さらにビットサイズの微細化を進めようとすると、1ビット当たりの磁化最小体積が小さくなり、熱揺らぎの影響でデータの消失を起こしてしまうという問題がある。また、トラック密度を高くすると隣接トラック間距離が近づき、再生時に隣接トラックによるノイズの影響が大きくなる。
そこで、熱揺らぎに対する耐性とSN比を向上させる方法として磁気記録層をトラックごとに、もしくはビットごとに分離することが試みられ、それぞれディスクリートトラック媒体、ビットパターンド媒体と呼ばれている。また、これらは総称してパターンド媒体と呼ばれている。
パターンド媒体の磁気記録層を物理的に分離する方法として、磁気記録層を形成した後にトラック間もしくはビット間の磁気記録層をエッチングで除去する方法や、基板表面に凹凸を形成した後に磁気記録層を形成して凸部を磁気記録部として用いる方法や、ガードバンド部となる領域にイオンを注入して磁気特性を変化させる方法などがある(例えば、特許文献1、2)。
磁気記録層を部分的にエッチングで除去して溝を形成する方法は、ガードバンド部からのノイズが小さくなり良好なSN比が得られることが期待される。また、ガードバンド部を軟磁性材料で充填することでサイドイレーズを抑圧し、磁気記録層と軟磁性材料の間に非磁性部材を挿入することでSN比を向上させる構造が示されている。(特許文献3)
ただし、磁気記録層を部分的にエッチングで除去して溝を形成したパターンド媒体においては磁気記録層が立体的な構造となるため、磁気記録層の表面積が大きくなり、従来の垂直磁気記録媒体以上の腐食対策が必要となる。
磁気記録層を部分的にエッチングで除去して溝を形成する方法は、ガードバンド部からのノイズが小さくなり良好なSN比が得られることが期待される。また、ガードバンド部を軟磁性材料で充填することでサイドイレーズを抑圧し、磁気記録層と軟磁性材料の間に非磁性部材を挿入することでSN比を向上させる構造が示されている。(特許文献3)
ただし、磁気記録層を部分的にエッチングで除去して溝を形成したパターンド媒体においては磁気記録層が立体的な構造となるため、磁気記録層の表面積が大きくなり、従来の垂直磁気記録媒体以上の腐食対策が必要となる。
例えば特許文献4、5では、エッチングされた磁気記録層上にカーボン、金属、または金属窒化物などの酸化防止層を成膜することで腐食を防止するとしている。
特許文献6では、磁気記録層をエッチング後に酸化防止層を成膜し、ガードバンド部を充填剤で埋め戻す方法が示され、特許文献7では、磁気記録層に含まれる非磁性材料をガードバンド部に残すようにエッチングを行い、それを酸化防止層としてからガードバンド部を埋め戻す方法が示されている。
磁気記録層には記録再生特性の観点から鉄族元素のFe、Co、Niを含む磁性材料が用いられるが、このような磁性材料はイオン化傾向が大きく腐食性が高いため、腐食対策が必要である。従来は磁気記録層の表面に保護膜を形成することなどにより対策してきた。
しかし、パターンド媒体においては磁気記録層を部分的にエッチングで除去して溝を形成するため、特許文献4や5に記載されているように磁気記録媒体表面の凹凸に沿って保護膜を形成したとしても、磁気記録層の表面積が大きくなり、従来以上に腐食のリスクが高くなる。また、特許文献6や7に記載されているように磁気記録層を部分的に除去してできた溝を非磁性材料で埋め戻して磁気記録媒体表面を平坦にした場合にも腐食の問題が発生することが判明した。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、耐食性に優れたパターン型磁気記録媒体を実現することを目的としたものである。
上記目的を達成するための一実施形態として、非磁性下地層と、前記非磁性下地層上に設けられたパターン状に物理的に分離された磁気記録層を有する磁気記録媒体において、前記磁気記録層の側壁面が水素よりイオン化傾向の小さい材料から成る側壁層で覆われており、前記非磁性下地層が前記側壁層と同一の材料から成り、前記磁気記録層の上面と前記側壁層の側面が、CもしくはSiを含む不導体材料から成る保護膜で覆われていることを特徴とする磁気記録媒体とする。
本発明によれば、耐食性に優れたパターン型磁気記録媒体が実現できる。
磁気記録層が物理的に分離された凹凸パターンを有する磁気記録媒体において腐食の発生する原因を鋭意検討した結果、以下の現象が腐食の発生に深く関係している問題であることがわかった。異種の金属材料が接合する状態が存在する場合には、金属材料それぞれの電気化学ポテンシャルの違いにより、イオン化傾向のより大きな材料のガルバニック腐食が発生することである。
特にパターンド媒体において物理的に分離された磁気記録層の側壁面は、保護膜あるいは埋め戻し充填層で覆われたとしても欠陥が発生しやすく、水分などの腐食誘発成分が磁気記録媒体表面から侵入しやすい箇所となる。
したがって、磁気記録層の側壁面を埋め戻し充填層で覆った場合には、磁気記録層と埋め戻し充填層の間でガルバニック腐食が発生し、あるいは磁気記録層の側壁面を保護膜で覆った場合には、磁気記録層の側壁面下部に磁気記録層と非磁性下地層が接する状態が存在し、この接合面でガルバニック腐食が発生する。
前記問題を解決するために、非磁性下地層上に設けられたトラック構造またはビット構造などのパターン状に分離された磁気記録層を有する磁気記録媒体において、磁気記録層の側壁面が水素よりイオン化傾向の小さい材料から成る側壁層で覆われており、非磁性下地層が側壁層と同一の材料から成り、かつ、磁気記録層の上面と側壁層の側面がCもしくはSiを含む不導体材料から成る保護膜で覆われた構造を形成する。
ここで、イオン化傾向が水素より小さい材料としては、化学的に安定な金属(Pt、Pd、Ru、Ir、Rh、Os、Au)あるいはこれらを含んだ合金であることが好ましい。このような構造を形成することで、磁気記録層の側壁面と底面が水素よりイオン化傾向が小さい材料で完全に覆われて保護されるために、磁気記録層のガルバニック腐食耐性を向上させることができる。
さらに、側壁層の側面を非金属であるCもしくはSiを含む不導体材料の保護膜で覆うことにより磁気記録層の側壁面近傍におけるガルバニック腐食を抑制することができる。埋め戻し充填層には非磁性材料を用いることができる。
図1に本発明の実施形態に係わる磁気記録媒体の断面図を示す。平坦な基板11上に下地層121を介して、非磁性下地層122を有する。非磁性下地層122上にトラック状またはドット状のパターンに分離された磁気記録層13を有し、磁気記録層13の側壁に非磁性下地層と同材料を用いた側壁層14を有する。磁気記録層13、側壁層14及び非磁性下地層122の表面を被覆する保護膜16及び潤滑層17を有する。なお、図4に示すように、凹凸パターンの凹部の保護膜16上に埋め戻し充填層18を有し、表面を被覆する潤滑膜17を有してもよい。
次に、各層の構造、役割について詳細に説明する。
(1)非磁性下地層122は、側壁層14とともに磁気記録層13の腐食を防止する役割を持つ。非磁性下地層122と側壁層14自体が腐食しないようにするためには、非磁性下地層122と側壁層14には、化学的に安定な材料を用いる必要がある。腐食は大気中の成分である、水、酸素、硫黄などとの反応が問題となるため、これらと反応しにくい元素として、イオン化傾向が水素よりも小さい材料を用いればよい。イオン化傾向が水素よりも小さい材料として、白金族元素(Pt、Pd、Ru、Ir、Rh、Os)や第11族元素の中で安定なAuを用いることができる。
(1)非磁性下地層122は、側壁層14とともに磁気記録層13の腐食を防止する役割を持つ。非磁性下地層122と側壁層14自体が腐食しないようにするためには、非磁性下地層122と側壁層14には、化学的に安定な材料を用いる必要がある。腐食は大気中の成分である、水、酸素、硫黄などとの反応が問題となるため、これらと反応しにくい元素として、イオン化傾向が水素よりも小さい材料を用いればよい。イオン化傾向が水素よりも小さい材料として、白金族元素(Pt、Pd、Ru、Ir、Rh、Os)や第11族元素の中で安定なAuを用いることができる。
前記金属に他の元素を加えた合金でも、イオン化傾向が水素よりも小さければ、非磁性下地層122と側壁層14に用いることができる。ただし、非磁性下地層122と側壁層14の接合部の電気化学ポテンシャル差による磁気記録層13の側壁下部からの腐食を防止するためには、非磁性下地層122と側壁層14に同一の材料を用いる必要がある。
図7(a)、図7(b)に示すように磁気記録層の下部では、非磁性下地層122、磁気記録層13、側壁層14の3種の材料が接合する部分が存在する。図7(a)に示すように側壁層14と非磁性下地層122が異なる金属材料の場合、非磁性下地層122と磁気記録層13との間の電気化学ポテンシャルと、側壁層14と磁気記録層13との間の電気化学ポテンシャルが異なるため、側壁層14と非磁性下地層122との間に電位差が発生しガルバニック腐食が発生する事になる。
一方で、図7(b)に示すように側壁層14と非磁性下地層122が同一材料の場合、非磁性下地層122と磁気記録層13との間の電気化学ポテンシャルと、側壁層14と磁気記録層13との間の電気化学ポテンシャルが釣り合うため当該部分において安定となり耐食性が向上する。
(2)磁気記録層13の上面と側壁層14の側面と非磁性下地層122の上面を覆うように形成する、カーボンやSiなどの不導体材料から成る保護膜16には三つの役割がある。一つ目は、硬質な保護膜によって磁気記録媒体の表面をヘッドから保護することである。このときヘッドと磁気記録層13とのスペーシングは、十分な保護膜の強度を保ちつつ、できる限り低減する必要がある。二つ目は、非金属材料で側壁層14と非磁性下地層122を覆うことによって異種の金属材料によるガルバニック腐食が発生しないようにすることである。三つ目は、パターン状に分離された磁気記録層の間を分断するように不導体の保護膜16が存在することによって、表面欠陥などに起因して発生した腐食が周囲の磁気記録層に広がらないようにすることである。
(1)と(2)に示すような側壁層14と保護膜16を形成することで十分に優れた耐食性が得られる。
基板11、下地層121、磁気記録層13、保護膜16、潤滑層17については、一般的な垂直磁気記録媒体の構造を用いることができる。以下にその代表例を示す。
基板11にはAl-Mg合金などの非磁性金属や、結晶化ガラス、アモルファスガラス、Si、樹脂などの材料を用いることができる。
下地層121は、軟磁性下地層や非磁性中間層などから構成することができる。軟磁性層には、Fe、Co、Niを含む軟磁性材料を用いることができる。非磁性中間層を磁気記録層下部に配置することで、磁気記録層13の結晶配向性や結晶粒径を制御し、結晶粒間の交換結合を制御する役割を持たせることができる。
磁気記録層13は、記録部を担う層であり、結晶粒界にCr偏析もしくは酸化物が存在するグラニュラー構造、CoPt、CoPdなどの人工格子構造、FePtなどのL10規則合金構造、CoPtなどのL11規則合金構造、希土類-遷移金属合金構造などの垂直磁気異方性の大きく熱減磁特性に優れた垂直磁性膜を用いることができる。
保護膜16には、アモルファスカーボンや窒化ケイ素の単層膜、またはこれらの多層膜を用いることができる。
潤滑層17には、パーフルオロポリエーテル、フッ化アルコール、フッ素化カルボン酸などの液体潤滑剤を用いることができる。
上記構造を形成することにより、磁気記録層の側壁面下部に磁気記録層と非磁性下地層と埋め戻し充填層などの3種類の材料が接合する状態が存在することがなくなるため、この部分で発生するガルバニック腐食も抑制することができる。また、パターン状に分離された磁気記録層の間に非金属材料である保護膜を挿入していることで、表面欠陥などに起因して発生した腐食が周囲の磁気記録層に波及することを抑制できる。
以下、実施例により詳細に説明する。
第1の実施例について図2(a)~図2(g)を用いて説明する。なお、発明を実施するための形態に記載され、本実施例に未記載の事項は特段の事情が無い限り本実施例にも適用することができる。
図2(a)~図2(g)は本実施例に係るパターン型磁気記録媒体の作製過程の模式図(断面図)である。図2(a)に示すように基板11として、直径65mmのガラス基板を用いた。スパッタ装置を用いて、下地層121、非磁性下地層122、磁気記録層13、インプリント保護膜21を順に形成した。下地層には、FeCoTaZr軟磁性膜、非磁性下地層122、磁気記録層13として下層を13nmのCoCrPt-SiO2グラニュラー膜を用いた。インプリント保護膜21としてスパッタカーボンを4nm形成した。
次に、図2(b)に示すようにインプリント装置を用いて、インプリントレジストパターン22を形成した。レジストの総厚は70nmでパターンの高さが60nm、レジストの残渣が10nmとなるようにした。次に図2(c)に示すようにリアクティブイオンエッチング装置を用いて、酸素ガス中でエッチングを行い、ガードバンド部のレジスト残渣22とインプリント保護膜21を除去した。記録部のレジストの高さは50nmまで減少した。次に、図2(d)に示すようにArガスを用いたイオンビームエッチングでガードバンド部の磁気記録層13を非磁性下地層122がちょうど露出するまで除去した。次に、図2(e)に示すようにスパッタ装置を用いて非磁性下地層122と同一の材料の側壁層14を、磁気記録層13の側壁面を覆うように成膜した。次に、図2(f)に示すように水素を用いたリアクティブイオンエッチングにより記録部の上部に残ったインプリントレジスト22とインプリント保護膜21と側壁層14を除去した。図2(g)に示すようにChemical Vapor Depositionを用いて保護膜16としてカーボンを4nm成膜した。最後に、図1に示すように潤滑層17としてパーフルオロアルキルポリエーテル系の材料をフルオロカーボン材で希釈した潤滑剤を塗布してパターン型磁気記録媒体を作製した。
これらの媒体について、耐食性の評価を以下の手順で行った。まず、温度60℃、相対湿度90%RH以上の高温多湿状態の条件下にサンプルを96時間放置する。次に、Optical Surface Analyzerを用いて半径14mmから25mmまでの範囲内における腐食点の数をカウントし、以下のようにランク付けした。カウント数が50未満のものをA、50以上200未満のものをB、200以上500未満のものをC、500以上のものをDとして評価した。作製した磁気記録媒体を磁気記録装置に取り付けて十分な信頼性を得るには、ランクAであることが必要である。
実施例1は側壁層14としてRuを厚さ2nm形成した媒体である。比較例1-1は側壁層14を形成せずに保護層16としてカーボンを厚さ4nm形成した媒体である。比較例1-2は側壁層14を形成せずに磁気記録層13の側壁面と非磁性下地層122の上面に沿ってCrTiを厚さ13nm形成して溝を埋めてから保護膜16として厚さ4nmのカーボンを形成した媒体である。比較例1-3は保護膜16を形成する前に側壁層14として厚さ2nmのRuと側壁層14の側面と非磁性下地層122の上面に沿ってCrTiを13nm形成し(図2(f)の構造)、溝を埋めて(図2(h)の構造)から保護膜16として厚さ4nmのカーボンを形成し(図2(i)の構造)、更に潤滑層17を形成した図3に示すような断面構造の媒体である。
実施例1と比較例1-1~1-3の腐食性試験の結果について纏めたものを表1に示す。
側壁層14が無く、磁気記録層13の側壁面に接するように保護膜16が形成されている比較例1-1では耐食性ランクCとなり十分な耐食性が得られなかった。磁気記録層の側壁面のように角度のついた面へカーボンを成膜すると膜中に欠陥が生じやすく膜質の良い膜を形成しにくい。その結果、大気中の水、酸素、硫黄などが磁気記録層表面に侵入し易くなり、磁気記録層13の耐食性が低下すると考えられる。
比較例1-2のように磁気記録層13の側壁面に接するようにCrTiを形成した場合には、三種類の金属材料が接することになりガルバニック腐食の発生により耐食性が低下すると考えられ、耐食性ランクはDとなる。
比較例1-3のように側壁層14を形成してから側壁層14に接するように金属材料の埋め戻し充填層18を形成した場合には側壁層14と埋め戻し充填層18との間に電位差が生じてガルバニック腐食が生じると考えられ、耐食性ランクCとなり十分な耐食性は得られない。
実施例1のように側壁層14に非磁性下地層122と同じで化学的に安定なRuを用いて磁気記録層13の側面と底面を完全に覆い、かつ保護膜16を側壁層14の側面に形成した構造では耐食性ランクAとなり十分な耐食性が得られた。
以上述べたように、本実施例で示した側壁層と保護膜とを有することにより、耐食性に優れたパターン型の磁気記録媒体を提供できることが分かった。
第2の実施例について説明する。なお、発明を実施するための形態又は実施例1に記載され本実施例に未記載の事項は特段の事情が無い限り本実施例にも適用することができる。
本実施例と本比較例では、実施例1と同様の過程で磁気記録媒体を作製し、側壁層14の厚さは1.5nmとした。また、耐食性の評価として実施例1と同様の手順で腐食性試験を行った。
図5に、本実施例、比較例で側壁層と非磁性下地層に用いた材料と、水素の標準電極電位Eoを示す。標準電極電位が大きいほどイオン化傾向が小さく、標準電極電位が小さいほどイオン化傾向が大きい。ここで、実施例2-1~2-3、比較例2-1~2-5とは側壁層と非磁性下地層の材料が同一の媒体である。実施例2-1~2-3の材料では、イオン化傾向が水素よりも小さく、比較例2-1~2-5ではイオン化傾向が水素よりも大きいことが分かる。
また、図6に側壁層と下地層に用いた材料の標準電極電位と腐食点数の関係を示す。イオン化傾向が水素よりも小さい、実施例2-1~2-3では腐食点数が50未満のランクAであり、磁気記録媒体として十分な信頼性がある。
一方で、比較例2-1~2-5では腐食点数が、実施例2-1~2-3と比較して大幅に増大しており、ランクCもしくはランクDであった。したがって、側壁層と非磁性下地層に用いる材料のイオン化傾向が水素よりも小さいことが、耐食性には重要であることが分かる。
非磁性下地層122と側壁層14の材料と、腐食性試験の結果について纏めたものを表2に示す。
非磁性下地層122と側壁層14の一方にイオン化傾向が水素より小さい材料を用いないとランクDと非常に腐食しやすかった。一方、非磁性下地層122と側壁層14に異なる材料を用いた場合ランクCとなった。これらに対して、非磁性下地層122と側壁層14に同じ材料を用いるとランクAとなり腐食信頼性の高い媒体が得られることがわかる。
側壁層14にイオン化傾向が水素より小さい材料を用いなかったランクDの媒体で腐食点が発生した場所の断面を透過型電子顕微鏡で観察したところ、磁気記録層13が酸化していることが分かった。また、非磁性下地層122と側壁層14に異なるイオン化傾向が水素より小さい材料を用いた媒体で腐食点が発生した場所の断面を透過型電子顕微鏡で観察したところ磁気記録層13の側壁下部が白くなっており、電子エネルギー損失分光法を用いて分析したところ酸素が増加していることがわかった。これは、磁気記録層13と非磁性下地層122と側壁層14の3層が接合した部分で、非磁性下地層12と側壁層14の間に電気化学ポテンシャルに差が発生すると、空気中の水分の侵入により磁気記録層13中の磁性材料がイオン化し酸化したと考えられる。
すなわち、非磁性下地層122と側壁層14にイオン化傾向が水素より小さい材料でかつ同じ材料を用いることで磁気記録層13の耐食性を格段に向上させることができ、耐食性に優れたパターン型の磁気記録媒体を提供できることが分かった。
第3の実施例について説明する。なお、発明を実施するための形態、実施例1又は実施例2に記載され本実施例に未記載の事項は特段の事情が無い限り本実施例にも適用することができる。
図2(a)~図2(d)、図2(j)、図2(f)、図2(g)、図4に本実施例に係るパターン型磁気記録媒体の作製過程の模式図(断面図)を示す。
図2(a)に示すように基板11として、直径65mmのガラス基板を用いた。スパッタ装置を用いて、下地層121、非磁性下地層122、磁気記録層13、インプリント保護膜21を順に形成した。下地層には、FeCoTaZr軟磁性膜、非磁性下地層122、磁気記録層13として下層を13nmのCoCrPt-SiO2グラニュラー膜を用いた。インプリント保護膜21としてスパッタカーボンを4nm形成した。
次に、図2(b)に示すようにインプリント装置を用いて、インプリントレジストパターン22を形成した。レジストの総厚は70nmでパターンの高さが60nm、レジストの残渣が10nmとなるようにした。次に図2(c)に示すようにリアクティブイオンエッチング装置を用いて、酸素ガス中でエッチングを行い、ガードバンド部のレジスト残渣22とインプリント保護膜21を除去した。記録部のレジストの高さは50nmまで減少した。次に、図2(d)に示すようにArガスを用いたイオンビームエッチングでガードバンド部の磁気記録層13と非磁性下地層122がちょうど露出するまで除去した。
次に、図2(j)に示すようにArガスを用いたイオンビームエッチングでガードバンド部の非磁性下地層122の上部2nmまでエッチングした。ここで、エッチング角度を基板に対して垂直に近付けて、非磁性下地層122のエッチング再付着物が磁気記録層13の側壁面に十分に付着するようにし、側壁面を覆うようにする。前記エッチング再付着物を側壁層14とする。次に、図2(f)に示すように水素を用いたリアクティブイオンエッチングにより記録部の上部に残ったインプリントレジスト22とインプリント保護膜21と側壁層14を除去した。図2(g)に示すように保護膜16を成膜した。
次に、図4に示すように保護層16のトップ部が覆われないように埋め戻し充填層18を形成し、最後に潤滑層17としてパーフルオロアルキルポリエーテル系の材料をフルオロカーボン材で希釈した潤滑剤を塗布してパターン型磁気記録媒体を作製した。
ここで、実施例3-1は保護膜16にカーボンを用い、埋め戻し充填層18にCrTiを用いた。実施例3-2は保護膜16にカーボンを用い、埋め戻し充填層18にパーフルオロアルキルポリエーテル系の材料Aを用いた。実施例3-3は保護膜16にカーボンを用い、埋め戻し充填層18にカーボンを用いた。実施例3-4は保護膜16にカーボンを用い、埋め戻し充填層18は形成せず図1と同様の構造とした。実施例3-5は保護膜16にSiNxとカーボンの複合膜を用い、埋め戻し充填層18は形成せず図1と同様の構造とした。
実施例3-1、3-2、3-3、3-4、3-5、実施例1の腐食性試験の結果について纏めたものを表3に示す。
実施例3-1、3-2、3-3、3-4、3-5いずれも腐食点の数は少なく、本実施例の作製方法においても、実施例1と同等の耐食性が得られ、耐食性に優れたパターン型の磁気記録媒体を提供できることが分かった。また、埋め戻し充填層を形成することにより表面平坦性が向上し、安定したヘッドの浮上性が得られた。
11…非磁性基板、
121…下地層、
122…非磁性下地層、
13…磁気記録層、
14…側壁層、
16…保護膜、
17…潤滑層、
18…埋め戻し充填層、
21…インプリント保護膜、
22…ナナノインプリントレジスト。
121…下地層、
122…非磁性下地層、
13…磁気記録層、
14…側壁層、
16…保護膜、
17…潤滑層、
18…埋め戻し充填層、
21…インプリント保護膜、
22…ナナノインプリントレジスト。
Claims (4)
- 非磁性下地層と、前記非磁性下地層上に設けられたパターン状に物理的に分離された磁気記録層を有する磁気記録媒体において、
前記磁気記録層の側壁面が水素よりイオン化傾向の小さい材料から成る側壁層で覆われており、
前記非磁性下地層が前記側壁層と同一の材料から成り、
前記磁気記録層の上面と前記側壁層の側面が、CもしくはSiを含む不導体材料から成る保護膜で覆われていることを特徴とする磁気記録媒体。 - 請求項1記載の磁気記録媒体において、
前記非磁性下地層材料がPt、Pd、Au、Ru、Ir、Rh、Osのいずれかの金属、あるいはこれらの元素のうち少なくとも一つを含む合金であることを特徴とする磁気記録媒体。 - 請求項1記載の磁気記録媒体において、
前記保護膜上に存在する凹凸パターンの凹部が非磁性材料により充填されていることを特徴とする磁気記録媒体。 - 非磁性下地層と、前記非磁性下地層上に互いに離間して設けられ、側壁面と上面とを備えた磁気記録層とを有する磁気記録媒体において、
前記非磁性下地層は、水素よりイオン化傾向の小さい第1の材料からなり、
前記磁気記録層の前記側壁面を覆い、前記第1の材料と同一の材料からなる側壁層と、
前記磁気記録層の上面と、前記第1の材料からなる前記側壁層および前記非磁性下地層とを覆い、CもしくはSiを含む不導体材料からなる保護膜と、
前記磁気記録層間凹部の保護膜上に形成された埋め戻し充填層と、を更に有することを特徴とする磁気記録媒体。
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