以下、発明の実施の形態を通じて本発明の(一)側面を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、補正装置100の構成を示す。補正装置100は、予め定められたストローブタイミングで測定対象の特性を測定した結果から得られた、確率密度関数を補正する。補正装置100が確率密度関数を補正する対象とする特性値は、被測定信号の論理値が遷移するタイミングの変動値(以下、ジッタと称する)であってよく、被測定信号の電圧値または電流値であってもよい。なお、補正装置100が測定する対象は、電気信号であってよく、光信号、磁気信号などの信号であってもよい。
確率密度関数は、測定対象の特性値を複数回測定して取得したヒストグラムである。例えば、確率密度関数は、隣接するストローブタイミング間において、測定対象信号の論理値が遷移する回数のヒストグラムであってよい。
測定対象の特性の測定に用いる予め定められたストローブタイミングは、一定の時間間隔で発生する理想タイミングに対して、誤差を有する場合がある。ストローブタイミングを生成する可変遅延回路、および、可変遅延回路を制御するアナログ/デジタルコンバータは、設定値に対して非線形特性を有する。可変遅延回路が、理想タイミングのストローブ信号を生成するべく設定値を設定された場合であっても、当該非線形性の影響により、ストローブ信号は、理想タイミングと異なるタイミングで発生される場合がある。つまり、ストローブ信号の発生タイミングが、設定値に対して非線形に変化する場合が生じる。
ストローブタイミングが設定値に対して非線形に変化する場合には、隣接するストローブタイミングの間隔が一定値にならない。例えば、ジッタを測定する装置は、被測定信号の論理値が、被測定信号に対する相対位相が異なる隣接するストローブ信号間で変化する回数を測定する。予め定められた間隔よりも広いストローブタイミング間に含まれる遷移回数は、ストローブタイミングが等間隔である場合のストローブタイミング間に含まれる遷移回数よりも多くなる。また、予め定められた間隔よりも狭いストローブタイミング間に含まれる遷移回数は、ストローブタイミングが等間隔である場合のストローブタイミング間に含まれる遷移回数よりも少なくなる。
設定値に対して非線形のストローブタイミングで測定された結果の確率密度関数には凹凸が生じる。その結果、当該確率密度関数を用いた解析結果に誤差が生じる。例えば、当該確率密度関数が、ジッタ確率密度関数である場合には、当該確率密度関数を用いて算出するジッタの分布パラメータ、および、ジッタ種別の分離結果等に誤差が生じる。
図2は、非線形なストローブタイミングで被測定信号を測定した場合の確率密度関数の一例を示す。当該被測定信号は、線形なストローブタイミングで測定されると、確率密度関数がガウス分布になる信号である。図2の横軸は、ストローブタイミングを示す。本実施形態において、当該ストローブタイミングは、約10psごとに発生している。ストローブタイミングが0になるタイミングは、被測定信号の論理値が遷移するタイミングの設計値に相当する。ストローブタイミングの値が正の方向に大きくなると、ストローブタイミング0に対して、タイミングが遅くなる。これに対して、ストローブタイミングが負の方向に大きくなると、ストローブタイミング0に対して、タイミングが早くなる。
ここで、ストローブタイミング0に対してm番目(mは整数)のストローブタイミングをストローブタイミング番号mと定義する。各ストローブタイミングの発生タイミングは、隣接するストローブタイミング間隔にストローブタイミング番号mを乗算した値を、ストローブタイミング0のタイミングに加算した値に略等しい。例えば、隣接するストローブタイミングの間隔が約10psである場合、ストローブタイミング番号15のタイミングは、ストローブタイミング0のタイミングに対して150ps後となる。
図2の縦軸は、各ストローブタイミングにおけるサンプル数を示す。ストローブタイミングmにおけるサンプル数は、直前のストローブタイミング番号m-1における論理値に比して、ストローブタイミング番号mにおける被測定信号の論理値が遷移したサンプルの数である。図2に示す例においては、測定に用いられたストローブ信号の間隔が一定でないので、ストローブタイミングごとにサンプル数が変動している。その結果、確率密度関数には、凹凸が生じている。当該確率密度関数のそれぞれのストローブタイミングにおけるサンプル数を累積して、累積密度関数を生成すると、ストローブタイミングごとのサンプル数の増減の影響により、当該累積密度関数も滑らかな曲線にならない。
図3は、図2に示す確率密度関数から生成した累積密度関数を示す。図3の横軸は、ストローブタイミングを示す。図3の縦軸は、累積サンプル数を示す。ストローブタイミング番号mにおける累積サンプル数は、隣接するストローブタイミング番号m-1における累積サンプル数に、ストローブタイミング番号mにおけるサンプル数を加算した数である。
図3においては、ストローブタイミング間隔が均一でないことに起因して、各ストローブタイミングにおける累積サンプル数が、理想タイミングで測定した場合の累積サンプル数と異なる。例えば、図3の拡大図中のA、B、C、Dは、それぞれストローブタイミング番号5、6、7、8に対応し、それぞれの理想タイミングは、50ps、60ps、70ps、80psである。ところが、図3におけるA、B、C、Dは、それぞれ50ps、62ps、68ps、80psのストローブタイミングで測定した累積サンプル数を示している。従って、BおよびCの間の累積サンプル数は、理想タイミングで測定した場合の累積サンプル数を示す実線から乖離している。理想タイミングで測定した場合の累積密度関数と乖離する累積密度関数を用いて被測定信号を解析すると、解析結果に誤差が生じる。
そこで、補正装置100は、補間部20および補正関数生成部30を備え、累積密度関数を補間する。補間部20には、測定結果の累積密度関数が与えられる。補正装置100は、外部から累積密度関数を与えられてよい。また、補正装置100は、外部から与えられる確率密度関数を用いて、補正装置100の内部で累積密度関数を生成してもよい。
補間部20は、累積密度関数の各ストローブタイミングの間における値を補間して、それぞれの理想タイミングにおける累積密度関数の値を算出し、理想タイミングにおける補正累積密度関数を算出する。つまり、補間部20は、非線形なストローブタイミングで測定した累積密度関数に補間法を適用することにより、等しい間隔を持つストローブタイミングにおける補正累積密度関数を算出する。例えば、補間部20は、ストローブタイミング60psおよび70psにおける補正累積密度関数の値を算出することにより、ストローブタイミングが62ps、68psであったBおよびCにおける累積密度関数の値を補正できる。その結果、補間部20は、図3の実線に示す補正累積密度関数を算出することができる。
補正関数生成部30は、補間部20が算出した補正累積密度関数に基づいて、確率密度関数におけるストローブタイミングの誤差が補正された補正確率密度関数を生成する。例えば、補正関数生成部30は、隣り合う理想タイミングにおける、補正累積密度関数の値の差分に基づいて、補正確率密度関数を生成してよい。
具体的には、理想タイミングを有するストローブタイミング番号をnとすると、補正関数生成部30は、ストローブタイミング番号n(nは整数)における補正累積密度関数値と、ストローブタイミング番号n-1における補正累積密度関数値との差分値を、ストローブタイミング番号nにおける補正確率密度関数値としてヒストグラムを生成してよい。補正関数生成部30は、ストローブタイミング番号nにおける補正累積密度関数値と、ストローブタイミング番号n+1における補正累積密度関数値との差分値を、ストローブタイミング番号nにおける補正確率密度関数値としてヒストグラムを生成してもよい。
補正装置100は、凹凸を有する確率密度関数の各ストローブタイミングの間における値を補間する場合に比べて、凹凸を有しない累積密度関数の各ストローブタイミングの間における値を補間する場合の方が、精度の高い補間をすることができる。その結果、補正累積密度関数に基づいて生成した補正確率密度関数は、測定結果に基づく確率密度関数を補間して得られる確率密度関数に比べて、小さな誤差を有する。
図4は、補正関数生成部30が生成した補正確率密度関数の一例を示す。図4に示す補正確率密度関数は、図3に示す累積密度関数の隣接するストローブタイミングの間における値を補間した補正累積密度関数を確率密度関数に変換することにより得られる。図2に示す確率密度関数に生じていた凹凸が、図4に示す補正確率密度関数においては除去されていることがわかる。
補間は、関数y=f(x)の値が、変数xの不連続な値x1、x2、・・・、xnに対して与えられている場合に、xk(k=1、2、・・・、n)以外のxの値に対するf(x)の値を推測することにより行われる。補間部20は、補間法として、線形補間法(linear interpolation)、多項式補間法(polynomial interpolation)、または、3次スプライン補間法(cubic spline interpolation)のいずれの方法を用いてもよい。
例えば、多項式補間法を用いる場合、補間部20は、以下の手順によって補間する。平面上の2点(x1、y1)および(x2、y2)が与えられたときに、その2点を通る直線y=P1(x)は、
で与えられ、一意的に決められる。この場合、直線を用いて補間するので、当該補間法は線形補間法とも称される。
一般に、平面上のN点(x1、y1)、(x2、y2)、・・・、(xN、yN)を通るN-1次曲線y=PN-1(x)は一意的に決まり、ラグランジェの公式により、
で与えられる。補間部20は、当該補間法により、それぞれの理想タイミングにおける累積密度関数の値を算出することができる。なお、多項式補間法については、例えば、L.W.Johnson and R.D.Riess, Numerical Analysis, Massachusetts: Addison-Wesley, Section 5.2, 1982に記載されている。
また、補間部20は、以下の3次スプライン補間法によって補間してもよい。スプライン曲線は、予め定められた点を通過すると共に、曲率の2乗積分が最小になる曲線である。平面上の2点(x1、y1)および(x2、y2)が与えられたときに、その2点を通るスプライン曲線は、
で与えられる。ここで、y1"およびy2"は、それぞれ(x1、y1)および(x2、y2)における関数y=f(x)の2次微分値である。3次スプライン補間は、2個の測定点とその測定点における2次微分値から上記の式を用いて、希望のxに対するy=f(x)の値を推定する。補間部20は、補間曲線の近似誤差を小さくするべく、xに近い2点を選択することが望ましい。
以上説明したように、本実施形態に係る補正装置100は、入力される累積密度関数のストローブタイミングの間の値を補間して生成した補正累積密度関数に基づいて、凹凸のない補正確率密度関数を生成する。当該補正確率密度関数を用いて被測定信号を解析することにより、被測定信号の解析精度が向上する。
図5は、補正装置100の他の構成を示す。補正装置100は、図1の補正装置100に対して、さらに累積密度関数算出部40を備える。累積密度関数算出部40は、測定結果に基づく確率密度関数が与えられた場合に、それぞれのストローブタイミングにおける確率密度関数の値を積算する。また、累積密度関数算出部40は、積算した確率密度関数に基づいて累積密度関数を算出し、算出した累積密度関数を補間部20に与える。累積密度関数算出部40は、測定対象に対する相対位相が非線形に変化するストローブタイミングでの測定結果の確率密度関数を受け取ってよい。
具体的には、累積密度関数算出部40は、ストローブタイミング番号n-1以下における積算値に、ストローブタイミング番号nにおけるサンプル数を加算することにより、ストローブタイミング番号n(nは整数)における積算値を算出する。例えば、図3に示す累積密度関数のストローブタイミング番号0における積算値は、図2に示す確率密度関数におけるストローブタイミング番号-1以下における総サンプル数に、ストローブタイミング番号0におけるサンプル数を加算した値であってよい。累積密度関数算出部40は、ストローブタイミング番号-50からストローブタイミング番号+50まで、当該加算を繰り返すことにより、図2に示す確率密度関数に対して図3に示す累積密度関数を生成する。積算の開始タイミングは当該タイミング以下におけるサンプル数がゼロとなるタイミングであってよく、また、積算の停止タイミングは当該タイミング以上におけるサンプル数がゼロとなるタイミングであってよい。
累積密度関数算出部40は、ストローブタイミング番号nにおける積算値を算出する場合に、ストローブタイミング番号n+1以上における積算値に、ストローブタイミング番号nにおけるサンプル数を加算してもよい。例えば、累積密度関数算出部40は、ストローブタイミング番号1以上における積算値にストローブタイミング番号0のサンプル数を加算することにより、ストローブタイミング番号0における積算値を算出してもよい。
また、累積密度関数算出部40は、ストローブタイミング番号nにおける積算値とストローブタイミング番号n-1における積算値との差が予め定められた値以下になるまで、ストローブタイミングにおいて積算値を算出してよい。例えば、図2においては、ストローブタイミングが300ps以上の場合には、サンプル数が略零となっている。従って、ストローブタイミング番号が30以上である場合、ストローブタイミング番号nにおける積算値と、ストローブタイミングn-1番号における積算値とが略等しくなる。そこで、累積密度関数算出部40は、ストローブタイミングが300ps未満のストローブタイミングにおいて積算値を算出し、300ps以上のストローブタイミングにおいては積算値の算出を停止してもよい。
補正装置100は、ストローブタイミングにおける測定結果の累積密度関数について、累積密度関数の各ストローブタイミングの間における値を補間して理想タイミングにおける補正累積密度関数を算出し、補正累積密度関数に基づいて確率密度関数を生成した場合に得られるものと、等価な補正確率密度関数を生成してもよい。具体的には、補正装置100は、累積密度関数算出部40を有しないで、補間部20において、補正累積密度関数を算出することなく補正確率密度関数を生成してよい。例えば、補正装置100は、測定結果の累積密度関数におけるストローブタイミングの積算値を、予め定められた演算式に代入することにより、補正確率密度関数を生成してよい。補正装置100は、当該演算式を、不揮発性メモリ等の情報記憶媒体に格納してよい。
図6は、確率密度関数測定装置200の構成を示す。確率密度関数測定装置200は、測定対象の確率密度関数を測定する。確率密度関数測定装置200は、補間部20、補正関数生成部30、サンプリング部50、および、誤差検出部60を有する。
サンプリング部50は、予め定められた時間間隔の理想タイミングに対して誤差を有するストローブタイミングで測定対象の特性を測定し、測定結果の累積密度関数を生成する。例えば、サンプリング部50は、測定対象に対する相対位相が非線形に変化するストローブタイミングで測定対象を測定する。また、サンプリング部50は、測定結果の累積密度関数に基づいて、確率密度関数を生成してもよい。
補間部20は、測定結果の累積密度関数を取得する。補間部20は、累積密度関数の各ストローブタイミングの間における値を補間して、それぞれの理想タイミングにおける累積密度関数の値を算出し、理想タイミングにおける補正累積密度関数を算出する。補正関数生成部30は、補間部20が算出した補正累積密度関数に基づいて、確率密度関数におけるストローブタイミングの誤差が補正された補正確率密度関数を生成する。
サンプリング部50に入力されるストローブ信号は、例えば、基準信号を可変遅延回路等で遅延させることにより生成される。基準信号に対する遅延時間の設定値は、ストローブタイミングの理想タイミングに対応する値に設定されてよい。なお、理想タイミングは、測定対象に対する相対位相が線形に変化するタイミングである。
ところが、可変遅延回路、および、可変遅延回路を制御するアナログ/デジタルコンバータは、設定値に対して非線形性を有する。その結果、可変遅延回路が出力するストローブ信号の基準信号に対する遅延時間との間には誤差が生じる。具体的には、遅延時間が予め定められた時間間隔で設定されているにもかかわらず、可変遅延回路が出力する信号は、設定された理想タイミングの時間間隔と異なる時間間隔で生成される場合が生じる。
そこで、誤差検出部60は、理想タイミングに対するストローブタイミングの誤差を検出する。誤差検出部60は、理想タイミングの時間間隔で発生するタイミング信号を外部から取得してよい。誤差検出部60は、当該理想のタイミングと、サンプリング部50に入力されるストローブ信号の発生タイミングとを比較した上で、ストローブタイミングの誤差を算出してよい。
また、誤差検出部60は、ストローブタイミングの非線形性を検出してもよい。具体的には、誤差検出部60は、以下の手順によりストローブタイミングの非線形性を検出してよい。
まず、誤差検出部60は、可変遅延回路に初期値を設定して、ストローブ信号を生成する。次に、誤差検出部60は、可変遅延回路が出力するストローブ信号により、予め定められた測定データを複数回サンプリングする。誤差検出部60は、サンプリング値を予め定めた期待値と比較することにより、ビット誤り率を測定する。
誤差検出部60は、測定データの位相を、外部から入力される高精度のクロックに同期して順次シフトする。誤差検出部60は、それぞれの位相におけるビット誤り率を測定した上で、ビット誤り率が予め定められた値になる場合の、位相シフト量を検出する。誤差検出部60は、ビット誤り率が0.5になる位相シフト量を検出することにより、ストローブ信号のタイミングが測定データの遷移タイミングに略一致する位相を検出してよい。
続いて、誤差検出部60は、可変遅延回路の設定値を変化させる。誤差検出部60は、設定値を変化させた可変遅延回路が出力するストローブ信号により測定データをサンプリングして、ビット誤り率を測定する。誤差検出部60は、ビット誤り率が予め定められた値になる場合の、測定データの位相シフト量を検出する。
誤差検出部60は、可変遅延回路の設定値を順次変化させ、それぞれの設定値において、ビット誤り率が予め定められた値になる場合の測定データの位相シフト量を検出する。誤差検出部60は、可変遅延回路の設定値を線形に変化させた場合に、検出した位相シフト量も線形に変化する場合には、ストローブタイミングが線形であると判定してよい。誤差検出部60は、可変遅延回路の設定値を線形に変化させたにもかかわらず、検出した位相シフト量が非線形に変化する場合には、ストローブタイミングが非線形性を有すると判定してよい。
例えば、誤差検出部60は、可変遅延回路の設定値を順次0ps、50ps、100psと設定する。誤差検出部60は、それぞれの設定値においてビット誤り率が予め定められた値になる場合の測定データの位相シフト量が0ps、50ps、100psである場合には、ストローブタイミングは線形であると判定する。これに対して、誤差検出部60は、それぞれの設定値における測定データの位相シフト量が0ps、51ps、103psである場合には、ストローブタイミングが非線形であると判定する。
図7は、ジッタ測定装置300の構成を示す。ジッタ測定装置300は、被測定信号のジッタ値を測定する。ジッタ測定装置300は、図6に示した確率密度関数測定装置200と、ジッタ値算出部70とを備える。
ジッタ値算出部70は、確率密度関数測定装置200が生成した補正確率密度関数に基づいて、被測定信号のジッタ値を算出する。ジッタ測定装置300は、補正確率密度関数の実効値(RMS値)をジッタ値として算出してよい。また、ジッタ測定装置300は、補正確率密度関数がゼロでない最大のストローブタイミングと補正確率密度関数がゼロでない最小ストローブタイミングとの差分値(p-p値)をジッタ値として算出してもよい。
以上の通り、本実施形態に係るジッタ測定装置300は、確率密度関数測定装置200が生成した補正確率密度関数に基づいて、ジッタ値を測定する。補正確率密度関数は高い精度を有するので、補正確率密度関数に基づいて測定したジッタ値の精度も高くなる。
図8は、ジッタ分離装置400の構成を示す。論理値が予め定められたタイミングで遷移する信号は、確定成分およびランダム成分を含むジッタを有する。確定ジッタは、データ依存ジッタ、デューティサイクル歪み、有界無相関ジッタ、または、サイン波ジッタ等である。ランダムジッタは、不規則雑音により注入されるタイミングエッジの揺らぎである。
ジッタ分離装置400は、被測定信号のジッタの測定結果から、確定成分およびランダム成分の少なくとも一方を分離する。ジッタ分離装置400は、図6に示した確率密度関数測定装置200と、分離部80とを備える。確率密度関数測定装置200は、被測定信号のジッタの確率密度関数を測定する。
分離部80は、確率密度関数測定装置200が測定した確率密度関数から、確定成分およびランダム成分の少なくとも一方を分離する。分離部80は、一例として、確率密度関数の前縁および後縁をガウス分布でフィッティングすることにより、ジッタのランダム成分を抽出してよい。分離部80は、確率密度関数測定装置200が測定した確率から抽出したランダム成分を除去することにより、ジッタの確定成分を抽出してよい。
また、分離部80は、確率密度関数をフーリエ変換した上で、フーリエ変換後のスペクトルにおける第1ナル周波数から確定成分を求めてもよい。第1ナル周波数とは、スペクトルのパワーが略零となる周波数(または、スペクトルが極小値を示す周波数)のうち、最も低い周波数を指す。
分離部80は、第1ナル周波数に基づいて、確定成分のスペクトルの理論値を算出する。分離部80は、算出した理論値を、予め定められた複数種類の確定成分のモデルと比較することにより、確率密度関数に対応するジッタが含む確定成分の種類を特定してよい。確定成分の理論値は、確定成分のモデルおよびp-p値により定めることができる。当該確定成分のモデルとは、例えばサイン波分布のモデル、一様分布のモデル、台形分布のモデル、デュアルディラックのモデル等であってよい。
以上の通り、本実施形態に係るジッタ分離装置400は、確率密度関数測定装置200が測定した確率密度関数に基づいて、ジッタのランダム成分および確定成分を分離する。確率密度関数測定装置200が測定した確率密度関数は、高い精度を有する。従って、ジッタ分離装置400は、高い精度でランダム成分および確定成分を分離することができる。
図9は、電子デバイス500の構成を示す。電子デバイス500は、与えられる信号に応じて動作する。電子デバイス500は、動作回路90および確率密度関数測定装置200を備える。動作回路90は、与えられる信号に応じた応答信号を生成する。確率密度関数測定装置200は、応答信号の特性の確率密度関数を測定する。
具体的には、動作回路90は、与えられる信号に応じて、予め定められたパターンを有する応答信号を生成する。動作回路90は、確率密度関数測定装置200が生成した補正確率密度関数を取得して、当該補正確率密度関数を、あらかじめ記憶した確率密度関数のモデルと比較する。動作回路90は、当該比較結果に応じて、与えられる信号の特性の評価をしてよい。
例えば、動作回路90は、確率密度関数測定装置200が生成した確率密度関数が、あらかじめ記憶した確率密度関数のモデルに対して予め定められた範囲内の差を有する場合には、与えられる信号の特性を「良」と判断してよい。動作回路90は、確率密度関数測定装置200が生成した確率密度関数が、あらかじめ記憶した確率密度関数のモデルに対して予め定められた範囲外の差を有する場合には、与えられる信号の特性を「否」と判断して、その旨を外部に通知してよい。
図10は、補正装置100として機能するコンピュータ1900の構成を示す。図11は、補正装置100として機能するコンピュータ1900の動作フローチャートを示す。本実施形態に係るコンピュータ1900は、ホスト・コントローラ2082により相互に接続されるCPU2000、RAM2020、グラフィック・コントローラ2075、及び表示装置2080を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ2084によりホスト・コントローラ2082に接続される通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、及びCD-ROMドライブ2060を有する入出力部と、入出力コントローラ2084に接続されるROM2010、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070を有するレガシー入出力部とを備える。
ホスト・コントローラ2082は、RAM2020と、高い転送レートでRAM2020をアクセスするCPU2000及びグラフィック・コントローラ2075とを接続する。CPU2000は、ROM2010及びRAM2020に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等がRAM2020内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得し、表示装置2080上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。
入出力コントローラ2084は、ホスト・コントローラ2082と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、CD-ROMドライブ2060を接続する。通信インターフェイス2030は、ネットワークを介して他の装置と通信する。ハードディスクドライブ2040は、コンピュータ1900内のCPU2000が使用するプログラム及びデータを格納する。CD-ROMドライブ2060は、CD-ROM2095からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。
また、入出力コントローラ2084には、ROM2010と、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM2010は、コンピュータ1900が起動時に実行するブート・プログラム、及び/又は、コンピュータ1900のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ2050は、フレキシブルディスク2090からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。入出力チップ2070は、フレキシブルディスク・ドライブ2050を入出力コントローラ2084へと接続すると共に、例えばパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を入出力コントローラ2084へと接続する。
RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク2090、CD-ROM2095、又はICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM2020を介してコンピュータ1900内のハードディスクドライブ2040にインストールされ、CPU2000において実行される。
コンピュータ1900にインストールされ、コンピュータ1900を補正装置100として機能させるプログラムは、コンピュータ1900に、入力された確率密度関数を累積して累積密度関数を生成させる(S101)。続いて、当該プログラムは、コンピュータ1900に、生成した累積密度関数のストローブタイミング間のデータを補間させる(S102)。さらに、当該プログラムは、コンピュータ1900に、累積密度関数を微分することにより補正確率密度関数を生成させる(S103)。
これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータ1900に読込まれることにより、ソフトウェアと上述した各種のハードウェア資源とが協働した具体的手段である補間部20、補正関数生成部30、および、累積密度関数算出部40として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ1900の使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の補正装置100が構築される。
一例として、コンピュータ1900と外部の装置等との間で通信を行う場合には、CPU2000は、RAM2020上にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理内容に基づいて、通信インターフェイス2030に対して通信処理を指示する。通信インターフェイス2030は、CPU2000の制御を受けて、RAM2020、ハードディスクドライブ2040、フレキシブルディスク2090、又はCD-ROM2095等の記憶装置上に設けた送信バッファ領域等に記憶された送信データを読み出してネットワークへと送信し、もしくは、ネットワークから受信した受信データを記憶装置上に設けた受信バッファ領域等へと書き込む。このように、通信インターフェイス2030は、DMA(ダイレクト・メモリ・アクセス)方式により記憶装置との間で送受信データを転送してもよく、これに代えて、CPU2000が転送元の記憶装置又は通信インターフェイス2030からデータを読み出し、転送先の通信インターフェイス2030又は記憶装置へとデータを書き込むことにより送受信データを転送してもよい。
また、CPU2000は、ハードディスクドライブ2040、CD-ROMドライブ2060(CD-ROM2095)、フレキシブルディスク・ドライブ2050(フレキシブルディスク2090)等の外部記憶装置に格納されたファイルまたはデータベース等の中から、全部または必要な部分をDMA転送等によりRAM2020へと読み込ませ、RAM2020上のデータに対して各種の処理を行う。そして、CPU2000は、処理を終えたデータを、DMA転送等により外部記憶装置へと書き戻す。
このような処理において、RAM2020は、外部記憶装置の内容を一時的に保持するものとみなせるから、本実施形態においてはRAM2020および外部記憶装置等をメモリ、記憶部、または記憶装置等と総称する。本実施形態における各種のプログラム、データ、テーブル、データベース等の各種の情報は、このような記憶装置上に格納されて、情報処理の対象となる。なお、CPU2000は、RAM2020の一部をキャッシュメモリに保持し、キャッシュメモリ上で読み書きを行うこともできる。このような形態においても、キャッシュメモリはRAM2020の機能の一部を担うから、本実施形態においては、区別して示す場合を除き、キャッシュメモリもRAM2020、メモリ、及び/又は記憶装置に含まれるものとする。
また、CPU2000は、RAM2020から読み出したデータに対して、プログラムの命令列により指定された、本実施形態中に記載した各種の演算、情報の加工、条件判断、情報の検索・置換等を含む各種の処理を行い、RAM2020へと書き戻す。例えば、CPU2000は、条件判断を行う場合においては、本実施形態において示した各種の変数が、他の変数または定数と比較して、大きい、小さい、以上、以下、等しい等の条件を満たすかどうかを判断し、条件が成立した場合(又は不成立であった場合)に、異なる命令列へと分岐し、またはサブルーチンを呼び出す。
また、CPU2000は、記憶装置内のファイルまたはデータベース等に格納された情報を検索することができる。例えば、第1属性の属性値に対し第2属性の属性値がそれぞれ対応付けられた複数のエントリが記憶装置に格納されている場合において、CPU2000は、記憶装置に格納されている複数のエントリの中から第1属性の属性値が指定された条件と一致するエントリを検索し、そのエントリに格納されている第2属性の属性値を読み出すことにより、予め定められた条件を満たす第1属性に対応付けられた第2属性の属性値を得ることができる。
以上に示したプログラム又はモジュールは、外部の記録媒体に格納されてもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク2090、CD-ROM2095の他に、DVD又はCD等の光学記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスク又はRAM等の記憶装置を記録媒体として使用し、ネットワークを介してプログラムをコンピュータ1900に提供してもよい。
以上、本発明の一側面を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることができる。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
上記説明から明らかなように、本発明の一実施形態によれば、累積密度関数の値を補間して生成した補正累積密度関数に基づいて補正確率密度関数を生成する、補正装置、確率密度関数測定装置、ジッタ測定装置、ジッタ分離装置、電子デバイス、補正方法、プログラム、および、記録媒体を実現することができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。