WO2010116797A1 - エアバッグ及びエアバッグ装置 - Google Patents

Abstract

【課題】エアバッグの膨張展開時に乗員から受ける押圧力に抗してより安定的に拘束可能な立体構造とする。 【解決手段】カットパーツを縫製して上壁部４、２つの側壁部５，６、下壁部３、及び接触壁部２を備える袋体に形成されたエアバッグ１であって、本体用カットパーツ１２は、膨張展開状態とした際には、上壁部４がその長手方向において、外方向に山折りになるよう膨出する膨出部４ｆが形成される形状となっている。例えば、エアバッグ１は助手席に設置する助手席用エアバッグであり、カットパーツ１２は、エアバッグ１を車両に設置して膨張展開状態とした際に、上壁部４の膨出部４ｆより上方の部分である上壁上方半部４ｄがフロントガラス２０２に接触するよう形成することができる。

Description

エアバッグ及びエアバッグ装置

　本発明は、自動車等の車両に装備されるエアバッグ及びこれを備えたエアバッグ装置に関する。

　一般に、エアバッグ装置は、乗員の身体を受け止めるエアバッグと、ガスを噴出してエアバッグを膨張させるガス発生器等を有している。このようなエアバッグ装置に用いるエアバッグの製造方法として、一般的には、複数枚のカットパーツを縫合することにより袋体としてのエアバッグを作成する。

　近年では、複数枚のカットパーツを用いて膨張展開時に３次元的に複雑な立体構造の袋体となるエアバッグが提案されている（例えば、特許文献１参照）。

特開平３－１８６４４８号公報

　今後は、３次元的に複雑な立体構造の袋体となるエアバッグでも、エアバッグの膨張展開時に乗員から受ける押圧力に抗してさらに安定的に固定可能な立体構造のエアバッグが要望されている。

　本発明の目的は、膨張展開時に乗員から受ける押圧力に抗してより安定的に拘束可能な立体構造のエアバッグ、及びエアバッグ装置を提供することにある。

　上記目的を達成するために、第１の発明は、カットパーツを縫製して上壁部、２つの側壁部、下壁部、及び接触壁部を備える袋体に形成されたエアバッグであって、前記カットパーツは、前記エアバッグを膨張展開状態とした際に、前記上壁部がその長手方向において、外方向に山折りになるよう膨出する膨出部が形成される形状となっていることを特徴とする。

　これにより、膨張展開状態となったエアバッグの上壁部が外方向に比較的大きく膨出し、その膨出部の近傍が車両の構造部材と接触しやすくなる。このため、エアバッグにおいてその膨出部の近傍と車両との接触により乗員から受ける押圧力に抗して安定的に固定され、また十分な反力をもって乗員の身体を受け止めることができる。この結果、エアバッグの膨張展開時に乗員から受ける押圧力に抗してより安定的に拘束可能な立体構造とすることができる。

　第２の発明は、上記第１発明において、前記エアバッグは助手席に設置する助手席用エアバッグであり、前記カットパーツは、当該助手席用エアバッグを車両に設置して膨張展開状態とした際に、前記上壁部の前記膨出部より上方の部分がフロントガラスに接触するよう形成されていることを特徴とする。

　これにより、エアバッグは上壁部の膨出部より上方の部分でフロントガラスと広い面積で接触し、乗員から受ける押圧力を分散させることができる。このため、エアバッグにおいて車両と接触する部分に局所的な過大な負荷を与えることなく、より安定的に乗員拘束における反力を得ることができる。

　第３の発明は、上記第１又は第２の発明において、前記カットパーツは、本体用カットパーツと接触壁部用カットパーツとを有しており、前記本体用カットパーツは、前記下壁部を左右連接壁部とし、前記上壁部は膨張展開状態の前記エアバッグにおける左右方向の略中央線に沿って２つの分割上壁部に分割して形成され、前記左右連接壁部の左右方向にそれぞれ前記側壁部が連なり、さらにそれぞれの前記側壁部の周囲に各前記分割上壁部が連なって１枚で形成され、前記接触壁部用カットパーツは、外周の縁部が曲線で形成されていることを特徴とする。

　これにより、縫製前の本体用カットパーツの展開状態では、左右連接壁部である下壁部を中心として、２つの側壁部と、２つの分割上壁部を左右対称の略放射状に配置した形状とすることができる。このため、極端に凹凸した部分を備えることなく全体を単純な三角形状に近い形状で１枚の本体用カットパーツを形成し、これを接触壁部用カットパーツとともに縫製することで袋体のエアバッグを作成することができる。したがって、基布から適宜の配置でカットパーツを切り出すことで、切り出した後の基布に残るムダな部分の面積をできるだけ少なくすることができる。つまりより少ない基布で有効な本体用カットパーツをより多く作成することができるため、エアバッグ一つ当たりの製造コストを削減することができる。

　また、接触壁部用カットパーツの外周の縁部が曲線で形成されていることから、この外周縁部に沿って本体用カットパーツに縫製することで、エアバッグの膨張展開時には当該縫製線上に負荷が局所的に集中する箇所がなくほぼ均等に分散させることができる。このため、エアバッグの耐性を向上させることができる。

　第４の発明は、上記第３の発明において、前記エアバッグは、当該エアバッグの内部においてその一部を前記接触壁部に縫製により接合され、前記下壁部に開口している下方袋体を備えていることを特徴とする。

　これにより、身長の低い子供の頭部が接触壁部ではなく下壁部に接触した場合でも、下方袋体の内部にその頭部を保持し、子供の身体を安定的に受け止めることができる。なお、この下方袋体の一部が接触壁部に接合されていることにより、エアバッグの膨張展開時には下方袋体がエアバッグの内部で下壁部と接触壁部との間に展開し、子供の頭部を容易に拘束させることができる。

　第５の発明は、上記第３の発明において、前記接触壁部用カットパーツは、下方部分における左右方向の幅寸法が乗員の肩幅より広く、上方部分における左右方向の幅寸法が乗員の頭部の幅より広く前記下方部分よりも狭く設定されていることを特徴とする。

　これにより、接触壁部の下方部分では乗員の両肩部及び両腕部を含めた身体を幅方向全体で受け止めることができ、また一方、接触壁部の上方部分では乗員の頭部を幅方向全体で受け止めることができる。そして、乗員の頭部の幅は肩幅よりも狭いため、接触壁部の上方部分における左右方向の幅寸法を下方部分よりも狭く設定することができ、エアバッグ内部の必要容積を抑えて、好適な拘束性能とインフレータ出力の低減を両立することができる。

　上記目的を達成するために、第６の発明は、上記第１乃至第５の発明のいずれかのエアバッグと、ガスを噴出して前記エアバッグを膨張させるガス発生器とを有することを特徴とする。

　これにより、上記第１乃至第５発明のエアバッグの効果を有するエアバッグ装置を実現することができる。

　本発明によれば、エアバッグの膨張展開時に乗員から受ける押圧力に抗してより安定的に拘束可能な立体構造とすることができる。

本発明の実施形態に係る助手席用エアバッグを膨張展開させた状態を斜視で模擬的に示す図である。 エアバッグを形成するカットパーツの展開図である。 カットパーツからエアバッグを作成する工程を説明する図である。 エアバッグを用いたエアバッグ装置を車両の助手席に設置して膨張展開させた状態を模擬的に示す側面図である。 基布から本体用カットパーツ、接触壁部用カットパーツ、及び補強布を切り出す際の配置の一例を示す図である。 下壁部に下方袋体を備えた第１変形例に係るエアバッグを膨張展開させた状態を斜視で模擬的に示す図である。 第１変形例に係るエアバッグを形成するカットパーツの展開図である。 第１変形例に係るエアバッグを用いたエアバッグ装置を車両の助手席に設置して膨張展開させ、子供の頭部を受け止めた状態を模擬的に示す側面図である。 乗員の両腕部も受け止められるよう接触壁部を形成した第２変形例のエアバッグを膨張展開させた状態を斜視で模擬的に示す図である。 乗員の正面で膨張展開させた状態の第２変形例のエアバッグを乗員の背部から示した図である。

　以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。

　図１は、本発明の実施形態に係るエアバッグを膨張展開させた状態を斜視で模擬的に示す図であり、図１（ａ）は後方側からの斜視図、図１（ｂ）は前方側からの斜視図である。なお、以下において、空間内の方向を示す語句としては、車両の座席に着座した乗員から見た前後方向、上下方向、左右方向をそのまま用いるものとする。また、図中における各縫製線は点線で表されており、透視した輪郭線又は引き出し線は上記点線よりも粗い破線で表されている。

　これら図１（ａ）、（ｂ）において、本実施形態のエアバッグ１は車両の助手席に設置する助手席用エアバッグである。このエアバッグ１は図示する膨張展開させた状態で乗員の正面に対向しその身体に接触して拘束する接触壁部２と、その下方に位置する下壁部３と、その上方に位置する上壁部４と、その左右それぞれの側方に位置する２つの側壁部５，６とを備えており、全体の形状が上記接触壁部２を底面とする略四角錐の形状となっている。なお、図中では各壁部２，３，４，５，６を区別しやすくする便宜のために各壁部２，３，４，５，６を平面で表し、また各壁部２，３，４，５，６どうしが鋭い角度で屈曲するような接合状態を示しているが、実際には各壁部２，３，４，５，６が緩やかに膨らんだ形状となり、また各壁部２，３，４，５，６どうしの間は丸みを持つように曲がってエアバッグ１全体が図示する多角形状よりも球体に近い形状となる。

　そして、上記上壁部４は、図示するような膨張展開状態のエアバッグ１における左右方向の中央線ＣＬに対して左右それぞれに分割されて配置する分割上壁部４ａ，４ｂからなり、上記中心線ＣＬに沿った上壁部縫製線４ｃで接合されて上壁部４が形成されている。

　また、詳しくは後述の図２で説明するが、上記の上壁部４、下壁部３、及び２つの側壁部５，６は１枚の本体用カットパーツで一体に形成されており、それら各壁部３，４，５，６のそれぞれの後方側の縁部に、接触壁部２を形成する略卵形状の接触壁部用カットパーツの外周の縁部が縫製されて接合されている。本明細書において、この本体用カットパーツの各壁部３，４，５，６の後方側縁部と接触壁部用カットパーツの外周縁部とを接合する縫製線を、接触壁部縫製線２ｃという。

　また、下壁部３の前方側（車両前方側；図１（ａ）中の左奥側）で左右方向の中央位置には、後述するインフレータから圧縮ガスをエアバッグ１の内部に流入させるための矩形形状のガス流入口１０が設けられている。また、２つの側壁部５，６には、エアバッグ１が最大に膨張展開して乗員を拘束する際にガスを外部に放出するための円形のベントホール１１が設けられている。

　また、上記上壁部４は、カットパーツ（後述）の段階におけるその形状に起因して、その長手方向である前後方向の略中間位置で外方向に山折りになるよう曲線的に曲がって膨出する。その膨出部４ｆより上方の部分である上壁上方半部４ｄが下方の上壁下方半部４ｅよりも水平に近い角度で配置される面となっている。この上壁上方半部４ｄの配置角度は、後述するように、上壁下方半部４ｅと比較して車両のフロントガラスに接触しやすい角度となっている。

　図２は、本実施形態のエアバッグ１を形成するカットパーツの展開図であり、図２（ａ）は本体用カットパーツの展開図、図２（ｂ）は接触壁部用カットパーツの展開図である。なお、この図２（ａ）中における下方向が車両の前方側に対応し、図２（ａ）中における上方向が車両の後方側に対応する。

　本実施形態のエアバッグ１の本体は、図示する本体用カットパーツ１２と接触壁部用カットパーツ１３の２枚のカットパーツを縫製して形成されるものである。本体用カットパーツ１２において、中央に下壁部３が配置されており、その左右方向にそれぞれ側壁部５，６が連なり、さらにそれぞれの側壁部５，６の図中下方周囲に分割上壁部４ａ，４ｂが連なっている。この配置から、下壁部３がその左右方向のそれぞれで側壁部５，６及び分割上壁部４ａ，４ｂを連接しているため、当該下壁部３は左右連接壁部として機能している。なお、この図２中に示す一点鎖線は、各壁部３，５，６又は各分割上壁部４ａ，４ｂの間の境界線であり、エアバッグ１が膨張展開している状態では各壁部３，４，５，６どうしがこの境界線に沿って曲がるようになる。また、上述したように、接触壁部２を形成する接触壁部用カットパーツ１３は、外周の縁部がどの部分も緩やかな曲線を描いて全体が略卵形状に形成されている。

　なお、本体用カットパーツ１２における各分割上壁部４ａ，４ｂの外周縁部のうち上記上壁部縫製線４ｃにより縫製させる縁部４ｃ′の形状については、その長手方向の略中間位置で外方向に膨らむよう曲線的に曲がった形状となっている。このため、これら縁部４ｃ′どうしを縫製して形成したエアバッグ１を膨張展開させた状態（図１参照）では、上述したように上壁部４の前後方向の略中間位置で外方向に山折りになるよう曲線的に曲がって膨出するようになる。

　図３は、カットパーツ１２からエアバッグ１を作成する工程を説明する図である。

　まず図３（ａ）に示すように、本体用カットパーツ１２のベントホール１１と、ガス流入口１０のそれぞれの周囲に補強布２１，２２，２３が縫製されて設けられる。特にガス流入口１０の周囲部分は、当該エアバッグ１を車両に固定する部分であるため、大小２枚の補強布２１，２２が重ねて設けられる。なお、上記図１、図２中では、図示の煩雑を避けるためにこれら補強布２１，２２，２３の図示を省略している。

　次に図３（ｂ）に示すように、図３（ａ）中に示した中央線ＣＬに沿って本体用カットパーツ１２の側壁部６側を折返し、重ね合わせる。そして、重ね合わされた２つの分割上壁部４ａ，４ｂどうしを、縁部に沿った上壁部縫製線４ｃで縫製して一体に形成する。

　次に図３（ｃ）に示すように、上壁部４、下壁部３、及び２つの側壁部５，６のそれぞれの後方側の縁部を円形に開口して接触壁部用カットパーツ１３の外周の縁部に合わせ、本体用カットパーツ１２と接触壁部用カットパーツ１３とを縁部に沿った接触壁部縫製線２ｃで縫製して接合する。

　そしてこの状態のエアバッグ１を、上壁部４と下壁部３との間の開口を介して内表面と外表面を裏返し、各縫製線２ｃ，４ｃの近傍に位置する分割上壁部４ａ，４ｂ、側壁部５，６、下壁部３及び接触壁部２の縁部をエアバッグ１の内表面に配置させてから、図３（ｄ）に示すように所定の折り線（特に図示せず）で適宜形状をなじませて上壁部４と下壁部３の互いに近い縁部どうしを重ね合わせる。そして、これら上壁部４と下壁部３どうしで縁部に沿った左右方向縫製線９で縫製して接合する。これにより、本体用カットパーツ１２と接触壁部用カットパーツ１３の２枚のカットパーツから、より簡便に気密性の高いエアバッグ１を形成することができる。

　図４は、本実施形態のエアバッグ１を用いたエアバッグ装置を車両の助手席に設置して膨張展開させた状態を模擬的に示す側面図である。

　この図４において、エアバッグ１はガス流入口１０において圧縮ガス発生器であるインフレータ１０１に固定されており、さらにこのインフレータ１０１が車両の助手席の前方に位置するインストゥルメントパネル２０１に固定されている。

　上記エアバッグ１は、特に図示しないが、通常時にはエアバッグモジュールとしてインストゥルメントパネル２０１の内部に収納されている。車両の衝突時にはインフレータ１０１から圧縮ガスが供給されてガス流入口１０を介してエアバッグ１の内部に流入する。これによりエアバッグ１は圧縮ガスの圧力により膨張し、助手席に着座している乗員Ｍの前に展開する。そして接触壁部２が乗員Ｍの身体に対向して展開し、乗員Ｍを拘束する。またこの時、膨張展開したエアバッグ１が車室内において適正に配置された際には、上壁部４の上壁上方半部４ｄがフロントガラス２０２の表面に広い面積で接触するとともに、反対側の下壁部３の一部３ａがインストゥルメントパネル２０１に対して覆うように接触する。

　このため、膨張展開状態のエアバッグ１は、乗員Ｍの身体から接触壁部２を介して受ける押圧力に対して、設置位置であるガス流入口１０の近傍部分と、フロントガラス２０２に面接触している上壁部４の上壁上方半部４ｄと、下壁部３のインストゥルメントパネル２０１に接触している部分３ａの３箇所で受け止めることができる。すなわち、乗員Ｍから受ける押圧力に抗してより安定的な反力をもって乗員Ｍの身体を受け止めることができる。

　以上において、エアバッグ１及びインフレータ１０１が、エアバッグ装置１００を構成する。

　以上説明した構成である本実施形態のエアバッグ１によれば、以下の効果が得られる。

　すなわち、本実施形態のエアバッグ１においては、膨張展開状態となったエアバッグ１の上壁部４が外方向に比較的大きく膨出し、その膨出部４ｆの近傍が車両の構造部材と接触しやすくなる。エアバッグ１はその膨出部４ｆの近傍と車両のフロントガラス２０２との接触により乗員Ｍから受ける押圧力に抗してより安定的な反力をもって乗員の身体を受け止めることができる。この結果、エアバッグ１をより安定的に拘束可能な構造とすることができる。

　また、本実施形態においては、エアバッグ１が助手席に設置する助手席用エアバッグであり、本体用カットパーツ１２は、当該助手席用エアバッグを車両に設置して膨張展開状態とした際には、上壁部４の膨出部４ｆより上方の部分である上壁上方半部４ｄがフロントガラス２０２に接触するよう形成されている。

　これにより、エアバッグ１は上壁部４の上壁上方半部４ｄでフロントガラス２０２と広い面積で接触し、乗員Ｍから受ける押圧力を分散させることができる。このため、エアバッグ１において車両と接触する部分に局所的な過大な負荷を与えることなく、より安定的に乗員拘束における反力を得ることができる。

　なお、上記図４の配置例に示したように、インフレータ１０１がフロントガラス２０２から離間した位置に設置されていても、つまり車両室内のレイアウトとしてエアバッグ１の設置位置がフロントガラス２０２から離間している場合でも、エアバッグ１が膨張展開状態となった際には上壁部４がその長手方向において外方向に山折りになるよう膨出する膨出部４ｆが形成されていることにより、フロントガラス２０２に、より広い面積で面接触させることができる。

　また、本実施形態においては、縫製前の本体用カットパーツ１２の展開状態では、左右連接壁部である下壁部３を中心として、２つの側壁部５，６と、２つの分割上壁部４ａ，４ｂを左右対称の略放射状に配置した形状とすることができる。このため、極端に凹凸した部分を備えることなく全体を単純な三角形状に近い形状で１枚の本体用カットパーツ１２を形成し、これを接触壁部用カットパーツ１３とともに縫製することで袋体のエアバッグ１を作成することができる。

　ここで、図５は、基布から本体用カットパーツ１２、接触壁部用カットパーツ１３、及び補強布２１を切り出す際の配置の一例を示す図である。この図５において、図中の横方向に長い帯形状の基布２５には、三角形状に近い形状の複数の本体用カットパーツ１２が、三角形の頂点部分と底辺部分とを交互に向けて一列に配置されている。このように配置することで、本体用カットパーツ１２どうしが重なることなく密集して配置することができる。また、図示する例では、基布２５の幅方向（図中の上下方向）の一方側に本体用カットパーツ１２の列を寄せて配置し、反対側に接触壁部用カットパーツ１３と補強布２１を配置している。

　このように、基布２５から適宜の配置で各カットパーツ１２，１３及び補強布２１を切り出すことで、切り出した後の基布２５に残るムダな部分の面積をできるだけ少なくすることができる。つまりより少ない基布２５で有効な本体用カットパーツ１２及び接触壁部用カットパーツ１３をより多く作成することができるため、エアバッグ１一つ当たりの製造コストを削減することができる。

　また、接触壁部用カットパーツ１３の外周の縁部が曲線で形成されていることから、この外周縁部に沿う接触壁部縫製線２ｃで本体用カットパーツ１２に縫製することで、エアバッグ１の膨張展開時には接触壁部縫製線２ｃ上に負荷が局所的に集中する箇所がなくほぼ均等に分散させることができる。このため、エアバッグ１の耐性を向上させることができる。

　なお、本体用カットパーツ１２は、各壁部３，５，６及び各分割壁部４ａ，４ｂをそれぞれ個別に、又は、隣り合うものどうしの組み合わせで基布２５から切り出し、それらどうしを上記図２で示した境界線上で縫製して一体に形成したものとしてもよい。

　本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨と技術思想の範囲を逸脱しない範囲で以下に示すような種々の変形が可能である。

（１）下壁部に下方袋体を備える場合
　上記実施形態では、エアバッグ１の接触壁部２に対して通常の身長を有する乗員Ｍの身体が接触することを前提としている。しかしながら、助手席などのような運転席以外の座席には身長の低い子供が着座する可能性があり、その場合には同じエアバッグ１の接触壁部２では配置位置が高すぎるためにそのような子供の身体を安定的に受け止めることができない。これに対応して本発明のエアバッグ１は、例えば身長の低い子供の頭部を保持可能な下方袋体を下壁部３に備える構成としてもよい。

　図６は、本発明の第１変形例に係るエアバッグを膨張展開させた状態を斜視で模擬的に示す図であり、上記実施形態における図１に対応する図である。なお同等の部材には同じ符号を付し、適宜説明を省略する（以下、同様）。

　この図６において、本変形例のエアバッグ１Ａは、その内部に下方袋体２６を備えている。図示する例では、この下方袋体２６は、本体用カットパーツ１２Ａにおいて隣り合う配置に備えられた同じ三角形状の２箇所の下方袋体壁部２６ａ，２６ｂ（後述の図７で詳述する）を左右方向に重ね合わせたものである。そして、その下辺部分が下壁部３Ａの後方側で左右方向の中央位置に開口し、上方前方側の１辺部分が折曲げにより閉じられ、他の上方後方側の１辺部分が縁部に沿った縫製により接触壁部２の内表面に接合されて袋体に形成されている。

　図７は、本変形例のエアバッグ１Ａを形成するカットパーツの展開図であり、上記実施形態における図２に対応する図である。

　この図７において、本体用カットパーツ１２Ａの下壁部３Ａは略Ｖ字型の形状となっており、その中間位置には同じ三角形状の２つの下方袋体壁部２６ａ，２６ｂが左右対称に隣り合って連接している。この本体用カットパーツ１２Ａを用いてエアバッグ１Ａを作成する際には、上述したようにそれら２つの下方袋体壁部２６ａ，２６ｂをエアバッグ１Ａの内部に引き込んで左右方向に重ね合わせるよう折り畳み、各下方袋体壁部２６ａ，２６ｂの上方後方側の縁部を縫製により接触壁部２の内表面に接合する。これにより、２つの下方袋体壁部２６ａ，２６ｂは下壁部３Ａに開口する袋体として形成される。他の工程は上記実施形態と同様であり、説明を省略する。

　図８は、本変形例のエアバッグ１Ａを用いたエアバッグ装置１００Ａを車両の助手席に設置して膨張展開させ、子供の頭部を受け止めた状態を模擬的に示す側面図であり、上記実施形態における図４に対応する図である。

　この図８において、エアバッグ１Ａに正対している乗員は身長の低い子供Ｃであり、その身体は低い位置にあるため接触壁部２に接触せず頭部のみが下壁部３Ａに接触するようになる。ここで、本変形例のエアバッグ１Ａにおいては、下壁部３Ａで開口している下方袋体２６を備えていることにより、図示するように子供Ｃの頭部がその開口部分を介して下方袋体２６の内部に挿入して保持され、結果的にエアバッグ１Ａは子供Ｃの身体を受け止めることができる。

　以上説明した構成である本変形例のエアバッグ１Ａによれば、子供Ｃの頭部を保持して身体を受け止められるようにするために、複雑な構造は不要となり、上記構成とすることで比較的簡便に作成することができる。

（２）乗員の両腕部も受け止められるよう接触壁部を形成した場合
　上記実施形態では、接触壁部２が略卵形に形成されており、主に乗員Ｍの身体の左右方向中心部分に接触して受け止めることを前提としている。しかしながら、乗員Ｍの両腕部が接触壁部２の左右両側にはみ出る可能性があり、その場合には接触壁部２で受け止めることができない両腕部がエアバッグ１の側方を大きく回り込んで車両の部材に到達し接触してしまう。これに対応して本発明のエアバッグ１は、乗員Ｍの両腕部も受け止められるよう接触壁部２を形成してもよい。

　図９は、本発明の第２変形例に係るエアバッグを膨張展開させた状態を斜視で示す図であり、上記実施形態における図１に対応する図である。

　この図９において、本変形例のエアバッグ１Ｃは、接触壁部２Ｃの下方部分２Ｃｅにおいて左右方向の幅寸法が広く形成されている。図示する例では、上記実施形態（図１参照）と比較して、接触壁部２Ｃの上方部分２Ｃｄが左右方向の幅寸法で狭くなっており、接触壁部２Ｃの下方部分２Ｃｅが広くなっている。このため、接触壁部２Ｃ全体は、全ての角部が曲線状の略台形形状に形成されている。

　図１０は、乗員Ｍの正面で膨張展開させた状態のエアバッグ１Ｃを乗員Ｍの背部から示した図である。

　この図１０において、接触壁部２Ｃの下方部分２Ｃｅはその幅寸法が乗員Ｍの肩幅より広く形成されているため、乗員Ｍの両肩部及び両腕部を含めた身体を幅方向全体で受け止めることができる。その結果、乗員Ｍの両腕部が側方に伸ばした状態であっても、両肩部及びその近傍の両腕部が接触壁部２Ｃに受け止められているためにエアバッグ１Ｃの側方への回り込みを少なくすることができ、車両の部材には到達することがない。また一方、接触壁部２Ｃの上方部分２Ｃｄでは乗員Ｍの頭部を幅方向全体で受け止めることができる。

　以上説明した構成である本変形例のエアバッグ１Ｃによれば、接触壁部２Ｃの下方部分２Ｃｅでは乗員Ｍの両肩部及び両腕部を含めた身体を幅方向全体で受け止めることができ、また一方、接触壁部２Ｃの上方部分２Ｃｄでは乗員Ｍの頭部を幅方向全体で受け止めることができる。そして、乗員Ｍの頭部の幅は肩幅よりも狭いため、接触壁部２Ｃの上方部分２Ｃｄにおける左右方向の幅寸法を下方部分２Ｃｅよりも狭く設定することができる。このため、それだけ少ない必要面積で接触壁部用カットパーツ１３Ｃを作成できるため、エアバッグ１Ｃ一つ当たりの製造コストを削減することができる。また、エアバッグ１Ｃ内部の必要容積も抑えて、膨張展開性能を維持することができる。

　なお、上述の実施形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。

　１，１Ａ，１Ｃ　　エアバッグ（助手席用エアバッグ）
　２，２Ｃ　　　　　接触壁部
　２ｃ　　　　　　　接触壁部縫製線
　２Ｃｄ　　　　　　上方部分
　２Ｃｅ　　　　　　下方部分
　３，３Ａ　　　　　下壁部（左右連接壁部）
　４　　　　　　　　上壁部
　４ａ，４ｂ　　　　分割上壁部
　４ｃ　　　　　　　上壁部縫製線
　４ｄ　　　　　　　上壁上方半部（上方の部分）
　４ｅ　　　　　　　上壁下方半部
　４ｆ　　　　　　　膨出部
　５，６　　　　　　側壁部
　９　　　　　　　　左右方向縫製線
　１０　　　　　　　ガス流入口
　１１　　　　　　　ベントホール
　１２，１２Ａ　　　本体用カットパーツ
　１３，１３Ｃ　　　接触壁部用カットパーツ
　１４　　　　　　　テザー
　２１，２２，２３　補強布
　２５　　　　　　　基布
　２６　　　　　　　下方袋体
　２６ａ，２６ｂ　　下方袋体壁部
　２７　　　　　　　正面袋体
　２７ａ，２７ｂ　　正面袋体壁部
　１００，１００Ａ　エアバッグ装置
　１０１　　　　　　インフレータ（ガス発生器）
　２０１　　　　　　インストゥルメントパネル
　２０２　　　　　　フロントガラス
　Ｍ　　　　　　　　乗員
　Ｃ　　　　　　　　子供
　ＣＬ　　　　　　　中央線

Claims (6)

1. 　カットパーツ（１２，１３；１２Ａ；１３Ｃ）を縫製して上壁部（４）、２つの側壁部（５，６）、下壁部（３；３Ａ）、及び接触壁部（２；２Ｃ）を備える袋体に形成されたエアバッグであって、
   　前記カットパーツ（１２，１３；１２Ａ；１３Ｃ）は、
   　前記エアバッグ（１；１Ａ；１Ｃ）を膨張展開状態とした際に、前記上壁部（４）がその長手方向において、外方向に山折りになるよう膨出する膨出部（４ｆ）が形成される形状となっている
   ことを特徴とするエアバッグ（１；１Ａ；１Ｃ）。
2. 　前記エアバッグ（１；１Ａ；１Ｃ）は助手席に設置する助手席用エアバッグ（１；１Ａ；１Ｃ）であり、
   　前記カットパーツ（１２，１３；１２Ａ；１３Ｃ）は、
   　当該助手席用エアバッグ（１；１Ａ；１Ｃ）を車両に設置して膨張展開状態とした際に、前記上壁部（４）の前記膨出部（４ｆ）より上方の部分（４ｄ）がフロントガラス（２０２）に接触するよう形成されていることを特徴とする請求項１記載のエアバッグ（１；１Ａ；１Ｃ）。
3. 　前記カットパーツ（１２，１３；１２Ａ；１３Ｃ）は、本体用カットパーツ（１２；１２Ａ）と接触壁部用カットパーツ（１３；１３Ｃ）とを有しており、
   　前記本体用カットパーツ（１２；１２Ａ）は、前記下壁部（３；３Ａ）を左右連接壁部とし、前記上壁部（４）は膨張展開状態の前記エアバッグ（１；１Ａ；１Ｃ）における左右方向の略中央線（ＣＬ）に沿って２つの分割上壁部（４ａ，４ｂ）に分割して形成され、前記左右連接壁部の左右方向にそれぞれ前記側壁部（５，６）が連なり、さらにそれぞれの前記側壁部（５，６）の周囲に各前記分割上壁部（４ａ，４ｂ）が連なって１枚で形成され、
   　前記接触壁部用カットパーツ（１３；１３Ｃ）は、外周の縁部が曲線で形成されていることを特徴とする請求項１又は２記載のエアバッグ（１；１Ａ；１Ｃ）。
4. 　前記エアバッグ（１Ａ）は、
   　当該エアバッグ（１Ａ）の内部においてその一部を前記接触壁部（２）に縫製により接合され、前記下壁部（３Ａ）に開口している下方袋体を備えていることを特徴とする請求項３記載のエアバッグ（１Ａ）。
5. 　前記接触壁部用カットパーツ（１３Ｃ）は、下方部分（２Ｃｅ）における左右方向の幅寸法が乗員（Ｍ）の肩幅より広く、上方部分（２Ｃｄ）における左右方向の幅寸法が乗員（Ｍ）の頭部の幅より広く前記下方部分（２Ｃｅ）よりも狭く設定されていることを特徴とする請求項３記載のエアバッグ（１Ｃ）。
6. 　請求項１乃至５のいずれか１項に記載のエアバッグ（１；１Ａ；１Ｃ）と、
   　ガスを噴出して前記エアバッグ（１；１Ａ；１Ｃ）を膨張させるガス発生器（１０１）とを有することを特徴とするエアバッグ装置（１００；１００Ａ）。

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