WO2009110030A1

WO2009110030A1 - ヘリカル遊星減速機

Info

Publication number: WO2009110030A1
Application number: PCT/JP2008/000468
Authority: WO
Inventors: 城越教夫
Original assignee: 株式会社ハーモニック・エイディ
Priority date: 2008-03-06
Filing date: 2008-03-06
Publication date: 2009-09-11
Also published as: TW200940851A

Abstract

　二段式のヘリカル遊星減速機（１）では、後段ヘリカル遊星減速機構（２０）の後段プラネタリキャリア（２４）の本体部分を構成している回転出力部材（２４ａ）の入力側端面（２４ｂ）の中心部に鋼球（２６）が装着されている。鋼球（２６）の中心軸線方向（１ａ）の位置は、回転出力部材（２４ａ）の出力側端面（２４ｅ）の側からねじ込まれた位置調整ねじ（２７）によって調整できる。位置調整ねじ（２７）、鋼球（２６）によって、入力側ベアリング（１７）の内輪（１７ａ）が入力側に寄せられて当該入力側ベアリングの軸方向のガタツキが除去される。サンギヤ（１１，２１）の軸方向のガタツキが防止されるので、バックラッシの発生が抑制され、入力軸（１５）に連結されるモータ出力軸のベアリングにスラスト力が作用して破損するという弊害も防止される。

Description

ヘリカル遊星減速機

　本発明はヘリカルギヤからなるサンギヤ、プラネタリギヤおよびインターナルギヤを備えたヘリカル遊星減速機に関し、これらのギヤの噛み合いによって発生するスラスト分力によってサンギヤが軸方向にガタツクことを防止可能なスラスト力支持機構を備えたヘリカル遊星減速機に関する。

　ヘリカルギヤを用いたヘリカル遊星減速機は、平歯車を使用した場合と比べて動力の伝達が滑らかであり騒音などを低減できることが知られている。特許文献１には、ヘリカル遊星減速機がモータの回転を減速してエンジンに伝達するスタータに使用された例が開示されている。ここに開示のヘリカル遊星減速機では、その噛み合いによって生ずるスラスト力によるインターナルギヤの軸方向の移動を弾性部材を用いて阻止するようにしている。

　ここで、ヘリカル遊星減速機では、サンギヤに軸線方向のガタツキがあると、噛み合いスラスト分力によってサンギヤが軸方向に動き、バックラッシが発生する。また、サンギヤに作用するスラスト力によって、当該サンギヤに連結されているモータ出力軸のベアリングを破損するおそれがある。

　そこで、ヘリカル遊星減速機のプラネタリキャリアを深溝玉軸受で支持することによりスラスト力を受けるようにすることが考えられるが、深溝玉軸受の軸方向のガタツキが大きい場合には、バックラッシの抑制対策、モータ保護の対策としては不十分である。
特開２００６－１２５３２５号公報

　本発明の課題は、噛み合いスラスト分力によって生ずるサンギヤの軸方向のガタツキを確実に防止可能なスラスト力支持機構を備えたヘリカル遊星減速機を提案することにある。

　上記の課題を解決するために、本発明のヘリカル遊星減速機は、
　ヘリカルギヤからなるサンギヤを、その中心軸線方向に沿って出力側から入力側に押し付けている押し付け部材と、
　前記押し付け部材の前記中心軸線方向の位置を調整するための調整部材と、
　前記サンギヤを、その入力側において回転自在の状態で支持している入力側ベアリングとを有していることを特徴としている。

　ここで、前記サンギヤの入力側端面から入力側に向けて同軸状態に延びている入力軸を、前記入力側ベアリングを介して、回転自在の状態で減速機ハウジングによって支持し、前記入力軸には、前記入力側ベアリングの前記内輪を出力側から支持している内輪受け面を形成し、前記減速機ハウジングには、前記入力側ベアリングの外輪を入力側から支持している外輪受け面を形成しておけばよい。これにより、前記押し付け部材の押し付け力によって、前記内輪が入力側に寄せられて、前記入力側ベアリングにおけるアキシャル方向のガタツキが除去され、サンギヤの中心軸線方向のガタツキを確実に防止できる。

　また、前記押し付け部材は、ヘリカル遊星減速機の出力回転部材に配置しておくことができる。すなわち、出力回転部材を、前記サンギヤの出力側端面に出力側から対峙させ、回転自在の状態で前記減速機ハウジングによって支持する。この出力回転部材に、前記押し付け部材を前記中心軸線の方向にスライド可能な状態で取り付けておけばよい。

　さらに、前記調整部材としては、前記出力回転部材に対して、出力側から入力側に向けてねじ込まれているねじ部材を用いることができる。前記ねじ部材のねじ込み量を調整することにより、前記押し付け部材の位置を調整できる。

　次に、押し付け部材とサンギヤの出力側端面の間の接触部分の摩耗防止、摩擦抵抗の低減化のためには、前記押し付け部材は、前記サンギヤの出力側端面に点接触状態で押し付けられていることが望ましい。例えば、前記押し付け部材として球体を用いることが望ましい。

　一方、二段式のヘリカル遊星減速機に対して本発明を適用する場合には、前記押し付け部材により後段サンギヤを入力側に押し付け、前段サンギヤの入力側において当該前段サンギヤを前記入力側ベアリングによって回転自在に支持すればよい。

　また、前記前段サンギヤにかみ合っている前段プラネタリギヤと、前記前段プラネタリギヤを回転自在に支持している前段プラネタリキャリアと、前記前段プラネタリキャリアの出力側端面から出力側に同軸状態に延びている前記後段サンギヤと、前記後段サンギヤにかみ合っている後段プラネタリギヤと、前記減速機ハウジングに固定され、前記前段プラネタリギヤおよび前記後段プラネタリギヤにかみ合っているインターナルギヤとを有している場合には、前記押し付け部材の押し付け力によって、前記前段プラネタリキャリアの入力側端面を、前記前段サンギヤの出力側端面に押し付けた状態を形成すればよい。

　本発明のヘリカル遊星減速機においては、押し付け部材によってサンギヤが入力側に押し付けられ、これによって、サンギヤを回転自在の状態で支持している入力側ベアリングに与圧が付与されて、その軸方向のガタツキが防止される。したがって、バックラッシの発生、サンギヤに連結されるモータ出力軸のベアリングの破損などの弊害を確実に防止できる。

本発明を適用した二段式のヘリカル遊星減速機の縦断面図である。

　以下に、図面を参照して、本発明を適用した二段式のヘリカル遊星減速機の実施の形態を説明する。

　図１を参照して説明すると、本実施の形態に係る二段式のヘリカル遊星減速機１において、その減速機ハウジング２は、筒状のハウジング本体３と、この入力側に同軸状態で締結固定されている入力側ハウジング４と、ハウジング本体３の出力側に同軸状態で締結固定されている出力側ハウジング５とから構成されている。軸方向の中央に位置するハウジング本体３の内部には、その入力側に前段ヘリカル遊星減速機構１０が組み込まれており、その出力側に後段ヘリカル遊星減速機構２０が組み込まれている。

　前段ヘリカル遊星減速機構１０は、減速機中心軸線１ａを回転中心とする前段サンギヤ１１と、前段インターナルギヤ１２と、これら前段サンギヤ１１および前段インターナルギヤ１２に噛み合っている少なくとも１個の前段プラネタリギヤ１３と、前段プラネタリギヤ１３を回転自在の状態で支持している前段プラネタリキャリア１４とを備えている。これらのギヤ１１、１２、１３はいずれもヘリカルギヤである。

　前段サンギヤ１１の入力側端面１１ａからは同軸状態で入力軸１５が入力側に突出しており、当該入力軸１５の入力側の部分には、当該入力軸１５を不図示のモータ出力軸に連結固定するためのカップリング部１６が組み付けられている。入力軸１５は入力側ベアリング１７を介して入力側ハウジング４によって回転自在の状態で支持されている。

　前段プラネタリキャリア１４は前段サンギヤ１１の出力側に隣接配置された円盤状のキャリア本体１４ａと、このキャリア本体１４ａの入力側端面１４ｂにおける外周縁側の部位から入力側に突出しているプラネタリ軸１４ｃとを備えており、プラネタリ軸１４ｃに前段プラネタリギヤ１３が回転自在の状態で支持されている。入力側端面１４ｂの中心部分は入力側に僅かに突出した円形突起１４ｄが形成されており、この円形突起１４ｄの先端面が前段サンギヤ１１の出力側端面１１ｂに当接している。

　後段ヘリカル遊星減速機構２０は、後段サンギヤ２１と、後段インターナルギヤ２２と、これら後段サンギヤ２１および後段インターナルギヤ２２に噛み合っている後段プラネタリギヤ２３と、この後段プラネタリギヤ２３を回転自在の状態で支持している後段プラネタリキャリア２４を備えている。これらのギヤ２１、２２、２３もヘリカルギヤである。

　後段サンギヤ２１は、前段プラネタリキャリア１４のキャリア本体１４ａに同軸状態で連結固定され、その出力側端面１４ｅから出力側に突出している。後段プラネタリキャリア２４は後段サンギヤ２１の出力側に隣接配置された円盤状の回転出力部材２４ａと、この回転出力部材２４ａの入力側端面２４ｂにおける外周縁側の部位から入力側に突出しているプラネタリ軸２４ｃとを備えている。

　回転出力部材２４ａは出力側ベアリング２５を介して出力側ハウジング５によって回転自在の状態で支持されており、プラネタリ軸２４ｃには後段プラネタリギヤ２３が回転自在の状態で支持されている。出力側ベアリング２５はクロスローラベアリングであり、その内輪が回転出力部材２４ａの外周面に一体形成されており、その外輪が出力側ハウジング５の内周面に一体形成されている。

　回転出力部材２４ａの入力側端面２４ｂの中心部には一定の深さの円形穴２４ｄが形成されており、この円形穴２４ｄには、鋼球２６（押し付け部材）が中心軸線１ａの方向にスライド可能な状態で収納されている。回転出力部材２４ａの出力側端面２４ｅの中心部には円形凹部２４ｆが形成されており、この円形凹部２４ｆの中心には位置調整ねじ２７がねじ込まれている。位置調整ねじ２７の平坦な先端面は円形穴２４ｄに突出しており、ここに収納されている鋼球２６に点接触している。位置調整ねじ２７によって出力側から支持されている鋼球２６は、回転出力部材２４ａの入力側端面２４ｂから僅かに入力側に突出しており、入力側に隣接配置されている後段サンギヤ２１の出力側端面２１ａの中心に点接触している。

　前段インターナルギヤ１２および後段インターナルギヤ２２は同一の円筒状部材１８の内周面に形成されている。円筒状部材１８の外周面からは円環状のフランジ１８ａが突出しており、このフランジ１８ａがハウジング本体３および入力側ハウジング４の間に締結固定されている。また、円筒状部材１８における後段インターナルギヤ２２が形成されている側の部分は半径方向にわずかに撓み可能な弾性ギヤとなっている。

　ここで、入力側ベアリング１７は、負荷容量さえ十分であれば、深溝玉軸受け、アンギュラ玉軸受けのいずれであってもよい。図１においては、上半部分に深溝玉軸受け１７Ａが装着された場合の断面を示し、下半部分にアンギュラ玉軸受け１７Ｂが装着された場合の断面を示してある。

　この入力側ベアリング１７の内輪１７ａは、入力軸１５に形成した内輪受け面１５ａによって軸方向の位置が規定されている。すなわち、その出力側端面１７ｂが、入力軸１５の外周面に形成した矩形断面の円環状突起における円環状の内輪受け面１５ａに入力側から当接している。また、入力側ベアリング１７の外輪１７ｃの軸方向の位置は、入力側ハウジング４の内周面に形成した円環状の外輪受け面４ｂと、これよりも出力側の位置において内周面に嵌めた止め輪１９とによって規定されている。

　この構成のヘリカル遊星減速機１では、位置調整ねじ２７と鋼球２６によって、後段サンギヤ２１を出力側から調整自在に押すことができる。位置調整ねじ２７をねじ込み、鋼球２６を入力側に押すと、後段サンギヤ２１が入力側に押される。後段サンギヤ２１は前段プラネタリキャリア１４に連結されているので、前段プラネタリキャリア１４も入力側に押される。この結果、前段プラネタリキャリア１４の入力側端面１４ｂの中心部に形成されている円形突起１４ｄによって入力側の前段サンギヤ１１が入力側に押される。これにより、前段サンギヤ１１に一体化されている入力軸１５が入力側に押されるので、その内輪受け面１５ａによって入力側ベアリング１７の内輪１７ａが入力側に寄せられ、当該入力側ベアリング１７の軸方向のガタツキが除去される。また、入力軸１５に作用するスラスト力は、入力側ハウジング４の内周面に形成されている外輪受け面４ｂによって支持されるので、スラスト力が入力軸１５から不図示のモータ出力軸の側に作用することがない。

　このように、位置調整ねじ２７のねじ込み量を調整することにより、入力側ベアリング１７に与圧が付与され、その軸方向のガタツキが除去されて、サンギヤ１１、２１の軸方向のガタツキを防止でき、噛み合い部分のバックラッシの発生を抑制できる。また、噛み合いによって発生するスラスト力を入力側ハウジング４の内周面に形成した外輪受け面４ｂによって受けているので、スラスト力がモータ側に伝わり、モータ側のベアリングを破損するなどの弊害も起きない。

　なお、本例は二段式のヘリカル遊星減速機の例であるが、本発明は一段のヘリカル遊星減速機に対しても同様に適用可能なことは勿論である。

Claims

　ヘリカルギヤからなるサンギヤ（１１，２１）を、その中心軸線方向（１ａ）に沿って出力側から入力側に押し付けている押し付け部材（２６）と、
　前記押し付け部材（２６）の前記中心軸線方向（１ａ）の位置を調整するための調整部材（２７）と、
　前記サンギヤ（１１，２１）を、その入力側において回転自在の状態で支持している入力側ベアリング（１７）とを有していることを特徴とするヘリカル遊星減速機（１）。
　請求項１に記載のヘリカル遊星減速機（１）において、
　前記サンギヤ（１１）の入力側端面（１１ａ）から入力側に向けて同軸状態に延びている入力軸（１５）と、
　前記入力軸（１５）を前記入力側ベアリング（１７）を介して回転自在の状態で支持している減速機ハウジング（４）とを有し、
　前記入力軸（１５）には、前記入力側ベアリング（１７）の前記内輪（１７ａ）を出力側から支持している内輪受け面（１５ａ）が形成されており、
　前記減速機ハウジング（４）には、前記入力側ベアリング（１７）の外輪を入力側から支持している外輪受け面（４ｂ）が形成されており、
　前記押し付け部材（２６）の押し付け力によって、前記内輪（１７ａ）が入力側に寄せられて、前記入力側ベアリング（１７）におけるアキシャル方向のガタツキが除去されていることを特徴とするヘリカル遊星減速機（１）。
　請求項２に記載のヘリカル遊星減速機（１）において、
　前記サンギヤ（２１）の出力側端面（２１ａ）に出力側から対峙している出力回転部材（２４ａ）を有し、
　前記出力回転部材（２４ａ）は、回転自在の状態で前記減速機ハウジング（５）によって支持されており、
　前記押し付け部材（２６）は、前記中心軸線方向（１ａ）にスライド可能な状態で、前記出力回転部材（２４ａ）によって支持されていることを特徴とするヘリカル遊星減速機（１）。
　請求項３に記載のヘリカル遊星減速機（１）において、
　前記調整部材（２７）は、前記出力回転部材（２４ａ）に対して、出力側から入力側に向けてねじ込まれているねじ部材であり、
　前記ねじ部材のねじ込み量を調整することにより、前記押し付け部材（２６）の位置を調整できることを特徴とするヘリカル遊星減速機（１）。
　請求項４に記載のヘリカル遊星減速機（１）において、
　前記押し付け部材（２６）は、前記サンギヤの出力側端面に点接触状態で押し付けられていることを特徴とするヘリカル遊星減速機（１）。
　請求項５に記載のヘリカル遊星減速機（１）において、
　前記押し付け部材（２６）は球体であることを特徴とするヘリカル遊星減速機（１）。
　請求項１ないし６のうちのいずれかの項に記載のヘリカル遊星減速機（１）において、
　前記サンギヤとして、前段サンギヤ（１１）と、この前段サンギヤ（１１）の出力側に同軸状態に配置した後段サンギヤ（２１）とを備えており、
　前記押し付け部材（２６）は前記後段サンギヤ（２１）を入力側に押し付けており、
　前記入力側ベアリング（１７）は、前記前段サンギヤ（１１）の入力側において当該前段サンギヤ（１１）を回転自在に支持していることを特徴とするヘリカル遊星減速機（１）。
　請求項７に記載のヘリカル遊星減速機（１）において、
　前記前段サンギヤ（１１）にかみ合っている前段プラネタリギヤ（１３）と、
　前記前段プラネタリギヤ（１３）を回転自在に支持している前段プラネタリキャリア（１４）と、
　前記前段プラネタリキャリア（１４）の出力側端面から出力側に同軸状態に延びている前記後段サンギヤ（２１）と、
　前記後段サンギヤ（２１）にかみ合っている後段プラネタリギヤ（２３）と、
　前記減速機ハウジング（２）に固定され、前記前段プラネタリギヤ（１３）および前記後段プラネタリギヤ（２３）にかみ合っているインターナルギヤ（１２、２２）とを有しており、
　前記押し付け部材（２６）の押し付け力によって、前記前段プラネタリキャリア（１４）の入力側端面（１４ｄ）が前記前段サンギヤ（１１）の出力側端面（１１ｂ）に押し付けられることを特徴とするヘリカル遊星減速機（１）。