WO2008072505A1 - ロックアップ装置およびそれを備えた流体式トルク伝達装置 - Google Patents

Abstract

　トルクコンバータ(１)のロックアップ装置(７)は、ピストン(７５)と、ピストン連結機構(７６)と、クラッチプレート(７１)と、ダンパー機構(９)と、から構成されている。ピストン連結機構(７６)は、ピストン(７５)をフロントカバー(１１)に対して一体回転可能にかつ軸方向へ移動可能に連結し、ピストン(７５)のタービン(２２)側への移動を所定範囲内に規制する。

Description

明 細 書

ロックアップ装置およびそれを備えた流体式トルク伝達装置

技術分野

[0001] 本発明は、流体式トルク伝達装置のロックアップ装置、特に、フロントカバーとピスト ンとが連結されたロックアップ装置に関する。

背景技術

[0002] 流体式トルク伝達装置として、トルクコンバータが知られている。トルクコンバータは 、 3種の羽根車 (インペラ一、タービン、ステータ）を内部に有し、内部の作動油を介し てトルクを伝達する。このようなトルクコンバータには、ロックアップ装置が設けられて いることが多い。

[0003] ロックアップ装置は、タービンとフロントカバーとによって形成された流体室のうちタ 一ビンとフロントカバーとの間の空間に配置されており、フロントカバーとタービンとを 機械的に連結することでフロントカバーからタービンにトルクを直接伝達するための 機構である。

[0004] 通常、このロックアップ装置は、フロントカバーに押し付けられることが可能な円板状 のピストンと、ピストンおよびフロントカバーに狭持される摩擦プレートと、摩擦プレート を介してフロントカバーとタービンとを回転方向に弹性的に連結可能なダンパー機構 と、ピストンとフロントカバーとを連結する連結機構と、力 構成されている。

[0005] ダンパー機構は、タービンに固定されたドリブンプレートと、摩擦プレートが一体回 転可能にかつ軸方向に移動可能に係合するドライブプレートと、ドライブプレートとド リブンプレートとを回転方向に弾性的に連結するトーシヨンスプリングとを有している。

[0006] また、連結機構は、ピストンをフロントカバーに対して一体回転可能にかつ軸方向 に移動可能に連結している。ピストンは、タービンノ、ブに回転可能にかつ軸方向に移 動可能に支持されている（例えば、特許文献 1を参照）。

[0007] ロックアップ装置の連結時においては、油圧によりピストンがフロントカバー側へ移 動し、ピストンとフロントカバーとの間に摩擦プレートが狭持される。この結果、トルクが フロントカバーから摩擦プレートに伝達され、さらにトーシヨンスプリングを介してター ビンに伝達される。トーシヨンスプリングは、ドライブプレートとドリブンプレートとの間で 回転方向に圧縮され、捩り振動を吸収し減衰させる。

[0008] 一方、ロックアップ装置の連結解除時においては、油圧によりピストンがタービン側 へ移動し、摩擦プレートがフロントカバーおよびピストンに対して回転可能となる。こ の結果、トルクはロックアップ装置を介して伝達されず、インペラ一からタービンへ流 体を介してトルクが伝達される。

特許文献 1：特開 2001 _ 500237号公報

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0009] このロックアップ装置では、ピストンのタービン側への移動は、タービンハブにより規 制されている。連結解除時においてピストンがタービン側へ移動すると、ピストンの内 周側に形成された筒状部先端とタービンノヽブとが摺動する。この結果、長期の使用 により筒状部先端とタービンノヽブとが焼き付いたり、あるいは摩耗し、ピストンがドライ ブプレートやトーシヨンスプリングと干渉し正常に作動しなくなる。

[0010] 本発明の課題は、流体式トルク伝達装置のロックアップ装置において、ピストンの軸 方向への移動に伴い生じる部材の摩耗を防止し、フリクションロスを低減することにあ

課題を解決するための手段

[0011] 第 1の発明に係るロックアップ装置は、トルクが入力されるフロントカバーと、フロント カバーに固定され作動流体が充填された流体室を形成するインペラ一と、インペラ一 に対向して配置されたタービンとを含む流体式トルク伝達装置に用いられる。ロックァ ップ装置は、フロントカバーとタービンとの間の空間に配置され、フロントカバーとター ビンとを機械的に連結する。ロックアップ装置は、ピストンと、ピストン連結機構と、摩 擦プレートと、ダンパー機構と、力 構成されている。ピストンは、タービンに対して回 転可能にかつ軸方向に移動可能に設けられており、作動流体の圧力に応じて軸方 向に移動可能である。ピストン連結機構は、ピストンをフロントカバーに対して一体回 転可能にかつ軸方向へ移動可能に連結し、ピストンのタービン側への移動を所定範 囲内に規制する。摩擦プレートは、ピストンのフロントカバー側への移動により、ピスト ンおよびフロントカバーの軸方向間に狭持される。ダンパー機構は摩擦プレートを介 してフロントカバーおよびタービンを回転方向に弹性的に連結可能である。

[0012] このロックアップ装置では、ピストン連結機構によりピストンのタービン側への移動が 所定範囲内で規制されている。このため、相対回転が生じない部分においてピストン の移動を規制することができる。これにより、ピストンの軸方向への移動に伴い生じる 部材の摩耗を防止し、フリクションロスを低減できる。

[0013] 第 2の発明に係るロックアップ装置は、第 1の発明に係る装置において、ピストン連 結機構が、フロントカバーに固定された第 1部材と、ピストンに固定された第 2部材と、 第 1部材に対する第 2部材のタービン側への移動を規制する規制部材と、を有してい

[0014] 第 3の発明に係るロックアップ装置は、第 2の発明に係る装置において、第 1部材と 第 2部材とが軸方向に交差する部分を有している。規制部材は交差する部分に係合 している。

[0015] 第 4の発明に係るロックアップ装置は、第 3の発明に係る装置において、第 1部材が 、フロントカバーに固定される第 1環状部と、第 1環状部から半径方向内側へ延びる 複数の第 1内周歯と、を有している。第 2部材は、タービンに固定される第 2環状部と 、第 2環状部から半径方向内側へ延びる複数の第 2内周歯と、を有している。第 1お よび第 2内周歯は軸方向に交差した状態で回転方向に嚙み合っている。

[0016] 第 5の発明に係るロックアップ装置は、第 4の発明に係る装置にお!/、て、第 1内周歯 が半径方向内側に延びる第 1先端部を有している。第 2内周歯は、半径方向内側に 延び、第 1先端部よりもフロントカバー側に配置された第 2先端部を有している。規制 部材は第 1および第 2先端部の軸方向間に配置され外力により外径が変化するリン グ部材である。

[0017] 第 6の発明に係るロックアップ装置は、第 5の発明に係る装置にお!/、て、第 1内周歯 、半径方向内側へ延び、かつ、軸方向へ延びる第 1交差部を有している。第 2内周 歯は第 1交差部と回転方向に嚙み合っている。

[0018] 第 7の発明に係るロックアップ装置は、第 5または第 6の発明に係る装置にお!/、て、 第 2内周歯が、半径方向内側へ延び、かつ、軸方向へ延びる第 2交差部を有してい る。第 1内周歯は第 2交差部と回転方向に嚙み合って!/、る。

[0019] 第 8の発明に係るロックアップ装置は、第 4から第 7の!/、ずれかの発明に係る装置に おいて、第 1部材が第 1環状部から半径方向外側へ延びる複数の第 1外周歯をさら に有している。第 2部材は、第 2環状部から半径方向外側へ延び第 1外周歯と回転方 向に嚙み合う複数の第 2外周歯をさらに有している。

[0020] 第 9の発明に係るロックアップ装置は、第 2から第 8の!/、ずれかの発明に係る装置に おいて、ピストンの内径が第 1部材の内径よりも大きい。

[0021] 第 10の発明に係るロックアップ装置は、第 1から第 9のいずれかの発明に係る装置 において、ピストン連結機構がフロントカバーの内周部と前記ピストンの内周部とを連 結している。

[0022] これにより、ピストン連結機構が設けられている部分の外周側のスペースが大きくな る。このため、ダンパー機構用の弾性部材の大型化が可能となり、設計の自由度が 向上する。

[0023] 第 11の発明に係る流体式トルク伝達装置は、エンジンからのトルクをトランスミツショ ン側へ伝達するための装置であって、トルクが入力されるフロントカバーと、インペラ 一と、タービンと、第 1から第 10のいずれかの発明に係るロックアップ装置と、を備え ている。インペラ一はフロントカバーに固定され作動流体が充填された流体室を形成 する。タービンはインペラ一に対向して配置される。

[0024] この流体式トルク伝達装置では、第 1から第 10のいずれかの発明に係るロックアツ プ装置を備えている。このため、ピストンとダンパー部との干渉や摩耗を防止できる。 図面の簡単な説明

[0025] [図 1]トノレクコンバータの縦断面概略図

[図 2]ピストン連結機構の部分断面図

[図 3]第 1プレートの平面図および断面図

[図 4]第 2プレートの平面図および断面図

[図 5]ワイヤリングの平面図および断面図

[図 6]組み付けについての説明図

符号の説明 [0026] 1 トルクコンバータ（流体式トルク伝達装置）

7 ロックアップ装置

9 ダンパー機構

11 フロントカノ一

75 ピストン

76 ピストン連結機構

77 第 1プレート（第 1部材）

77a 第 1環状部

77b 第 1内周歯

77c 第 1外周歯

77d 第 1先端部

77e 第 1交差部

78 第 2プレート（第 2部材）

78a 第 2環状部

78b 第 2内周歯

78c 第 2外周歯

78d 第 2先端部

78e 第 2交差部

79 ワイヤリング (規制部材、リング部材）

発明を実施するための最良の形態

[0027] 以下、図面に基づいて、本発明のロックアップ装置 7に係る実施形態について説明 する。ここでは、ロックアップ装置 7が搭載されたトルクコンバータ 1を例に説明する。

[0028] (1)トルクコンバータの基本構成

図 1を用いてトルクコンバータ 1の基本構成につ!/、て説明する。図 1にトルクコンパ ータ 1の縦断面概略図を示す。トルクコンバータ 1は、エンジンのクランクシャフト（図 示せず）からトランスミッションの入力シャフト（図示せず）にトルクを伝達するための装 置である。図 1の左側に図示しないエンジンが配置され、図 1の右側に図示しないトラ ンスミッションが配置されている。図 1に示す線 O— Oは、トルクコンバータ 1の回転軸 である。

[0029] トルクコンバータ 1は、主に、エンジン側の部材（図示せず）が連結されるフロント力 ノ ー 11と、 3種の羽根車（インペラ一 21、タービン 22、ステータ 23)と、ロックアップ装 置 7と、を備えている。フロントカバー 11とインペラ一 21とにより流体室が形成されて いる。流体室は作動油で満たされている。流体室は、インペラ一 21、タービン 22およ びステータ 23によって囲まれたトーラス形状の流体作動室 6と、ロックアップ装置 7力 S 配置された環状の空間 8と、に分割されている。

[0030] フロントカバー 11の外周部には、トランスミッション側に延びる外周筒状部 11aが形 成されている。この外周筒状部 11aの先端にインペラ一 21のインペラ一シェル 26の 外周縁が溶接等によって固定されている。そして、フロントカバー 11とインペラ一 21 とによって、内部に作動油が充填された流体室が形成されている。

[0031] インペラ一 21は、主に、インペラ一シェル 26と、その内側に固定された複数のイン ペラ一ブレード 27と、インペラ一シェル 26の内周部に溶接等によって固定されたイン ペラーハブ 28と力も構成されて!/、る。

[0032] タービン 22は、流体室内でインペラ一 21に軸方向に対向して配置されている。タ 一ビン 22は、主に、タービンシェル 30と、そのインペラ一 21側の面に固定された複 数のタービンブレード 31と、タービンシェル 30の内周縁に固定されたタービンハブ 3 2とから構成されている。タービンハブ 32は、フランジ部 32aとボス部 32bとから構成さ れている。タービンシェル 30とタービンハブ 32とは、ダンパー機構 9のドリブンプレー ト 73とともに、複数のリベット 33によってタービンハブ 32のフランジ部 32aに固定され ている。また、タービンハブ 32のボス部 32bの内周面には、入力シャフト（図示せず） に係合するスプラインが形成されてレ、る。タービンノヽブ 32は入力シャフトと一体回転 する。

[0033] ステータ 23は、インペラ一 21の内周部とタービン 22の内周部との軸方向間に設置 されており、タービン 22からインペラ一 21に戻る作動油の流れを整流するための機 構である。ステータ 23は主に、環状のステータキャリア 35と、ステータキャリア 35の外 周面に設けられた複数のステータブレード 36と、力も構成されている。ステータキャリ ァ 35は、ワンウェイクラッチ 37を介して筒状の固定シャフト 39に支持されている。固 定シャフト 39は、入力シャフトの外周面とインペラーハブ 28の内周面との間を軸方向 トランスミッション側に向かって延びている。

[0034] フロントカバー 11とボス部 32bとの間には、第 1スラストベアリング 41が配置されて おり、タービン 22の回転によって発生するスラスト力を受けている。フランジ部 32aの 内周部とステータ 23と内周部（具体的にはリテーナ 38)との間には、第 2スラストベア リング 42が配置されている。ステータキャリア 35とインペラーハブ 28との軸方向間に は、第 3スラストベアリング 43が配置されている。

[0035] (2)ロックアップ装置の構造

図 1に示すように、ロックアップ装置 7は、タービン 22とフロントカバー 11との間の空 間 8に配置されており、必要に応じて両者を機械的に連結するための機構である。口 ックアップ装置 7は、クラッチ機能およびダンパー機能を有しており、主に、摩擦プレ ートとしてのクラッチプレート 71と、ダンパー機構 9と、ピストン 75と、ピストン連結機構 76とから構成されている。

[0036] クラッチプレート 71は、摩擦部材 71aを有する環状の部材であり、ドライブプレート 7 2の外周部に一体回転可能にかつ軸方向に移動可能に係合している。摩擦部材 71 aが設けられている部分は、フロントカバー 11とピストン 75との軸方向間に配置されて いる。

[0037] ダンパー機構 9は、クラッチプレート 71を介してフロントカバー 11とタービン 22とを 回転方向に弹性的に連結可能である。ダンパー機構 9は主に、ドライブプレート 72と 、ドリプ、ンプレート 73と、第 1トーシヨンスプリング 74aと、第 2トーシヨンスプリング 74bと 、力、ら構成されている。

[0038] ドライブプレート 72は、 2枚のプレート部材 72a、 72bから構成されており、第 1トー シヨンスプリング 74aおよび第 2トーシヨンスプリング 74bを保持して!/、る。ドリブンプレ ート 73は、プレート部材 72aおよび 72bの軸方向間に配置されており、ドライブプレ ート 72に対して一定の範囲内で回転可能である。ドライブプレート 72およびドリブン プレー卜 73は、第 1卜ーシヨンスプリング 74aおよび第 2卜ーシヨンスプリング 74bにより 回転方向に弹性的に連結されている。第 1トーシヨンスプリング 74aおよび第 2トーショ ンスプリング 74bは並列に配置されている。 [0039] ピストン 75は、フロントカバー 11とダンパー機構 9との軸方向間に配置されており、 タービンノヽブ 32により回転可能にかつ軸方向に移動可能に支持されている。ピスト ン 75は、作動流体の圧力に応じて軸方向に移動可能であり、クラッチプレート 71をフ ロントカバー 11に押し付けおよび押し付け解除可能である。ピストン 75はダンパー機 構 9の内周側に配置されたピストン連結機構 76によりフロントカバー 11に連結されて いる。

[0040] (3)ピストン連結機構の構成

図 1から図 5を用いて、ピストン連結機構 76の詳細について説明する。図 2にピスト ン連結機構 76の部分断面図、図 3に第 1プレート 77の平面図および断面図、図 4に 第 2プレート 78の平面図および断面図、図 5にワイヤリング 79の平面図および断面 図を示す。

[0041] 図 1に示すように、ピストン連結機構 76は、ピストン 75をフロントカバー 11に対して 一体回転可能にかつ軸方向に移動可能に連結している。ピストン連結機構 76は、ダ ンパー機構 9の内周側に配置されており、ピストン 75の内周部とフロントカバー 11の 内周部とを連結している。

[0042] 図 2に示すように、ピストン連結機構 76は主に、フロントカバー 11に固定される第 1 部材としての第 1プレート 77と、ピストン 75に固定される第 2部材としての第 2プレート 78と、規制部材としてのワイヤリング 79と、とから構成されている。

[0043] 図 2および図 3に示すように、第 1プレート 77は、フロントカバー 11に固定される第 1 環状部 77aと、複数の第 1内周歯 77bと、複数の第 1外周歯 77cと、力 構成されてい る。第 1プレート 77は一体成形されている。

[0044] 第 1内周歯 77bは第 1環状部 77aから半径方向内側へ延びている部分であり、第 1 交差部 77eと第 1先端部 77dとを有している。第 1交差部 77eは、後述の第 2内周歯 7 8bと軸方向に交差する部分である。具体的には、第 1交差部 77eの一部は、タービ ン 22側へ折り曲げられており、軸方向に延びている。軸方向に延びている部分が第 2内周歯 78bと交差している。第 1先端部 77dは、第 1交差部 77eの先端から半径方 向内側へ延びる部分であり、ワイヤリング 79と軸方向に当接可能である。

[0045] 第 1外周歯 77cは、第 1環状部 77aから半径方向外側へ延びる部分であり、その一 部がタービン 22側へ折り曲げられている。第 1外周歯 77cは、後述する第 2外周歯 7 8cと軸方向に重なり合つており、第 2外周歯 78cと軸方向に交差していない。

[0046] 図 2および図 4に示すように、第 2プレート 78は、ピストン 75に固定される第 2環状 部 78aと、複数の第 2内周歯 78bと、複数の第 2外周歯 78cと、力も構成されている。 第 2プレート 78は一体成形されている。

[0047] 第 2内周歯 78bは第 2環状部 78aから半径方向内側へ延びている部分であり、第 2 交差部 78eと第 2先端部 78dとを有している。第 2交差部 78eは、第 1内周歯 77bの 第 1交差部 77eと軸方向に交差する部分である。具体的には、第 2交差部 78eの一 部は、フロントカバー 11側へ若干折り曲げられており、半径方向に対して傾斜してい る。第 2先端部 78dは、第 2交差部 78eの先端から半径方向内側へ延びる部分であり 、ワイヤリング 79と軸方向に当接可能である。

[0048] 第 2外周歯 78cは、第 2環状部 78aから半径方向外側へ延びる部分であり、その一 部がフロントカバー 11側へ折り曲げられている。第 2外周歯 78cは、第 1外周歯 77cと 軸方向に重なり合つており、第 1外周歯 77cと軸方向に交差していない。

[0049] 図 2および図 5に示すように、ワイヤリング 79は、一部が切り欠かれた概ね環状の部 材であり、切欠部 79aを有している。ワイヤリング 79は半径方向に弾性変形可能であ り、外力を加えることで外径が変化する。

[0050] 図 2に示すように、第 1内周歯 77bは第 2内周歯 78b同士の間に軸方向力も揷入さ れている。このため、第 1プレート 77と第 2プレート 78とは軸方向に移動可能である。 連結時においては、図 2の状態からクラッチプレート 71とピストン 75との隙間の分だ け、第 2プレート 78は第 1プレート 77に対して移動可能である。第 1内周歯 77bと第 2 内周歯 78bとは回転方向に嚙み合っている。このため、第 1プレート 77と第 2プレート 78とは一体回転する。

[0051] 第 1交差部 77eと第 2交差部 78eとは軸方向に交差している。このため、第 1先端部 77dと第 2先端部 78dとは、軸方向に位置が入れ替わつている。具体的には、第 1環 状部 77aが第 2環状部のフロントカバー 11側に配置されているのに対して、第 1先端 部 77dは第 2先端部 78dのタービン 22側に配置されている。

[0052] 第 1先端部 77dと第 2先端部 78dとの軸方向間にはワイヤリング 79が挟み込まれて いる。第 2内周歯 78bが第 1内周歯 77b同士の間に挿入された状態で、第 2先端部 7 8dがワイヤリング 79に引っかけられている。これにより、第 2プレート 78は第 1プレート 77に対してタービン 22側への移動を所定範囲内で規制されている。

[0053] ワイヤリング 79は、第 1内周歯 77bの内周側に配置されており、第 1内周歯 77bの 軸方向に延びる部分に半径方向に位置決めされている。ワイヤリング 79は自由状態 で嵌め込まれている。

[0054] 図 2の状態でピストン 75の筒状部 75aとフランジ部 32aとの軸方向間には隙間 Sが 確保されている。これにより、フランジ部 32aに筒状部 75aが接触するのを防止してい

[0055] 以上に説明したように、ピストン連結機構 76により、ピストン 75はフロントカバー 11 に対して一体回転可能にかつ軸方向に移動可能に連結されている。ピストン 75は、 図 2の状態からフロントカバー 11側へクラッチプレート 71との隙間の分だけ軸方向に 移動可能である。一方、ワイヤリング 79により、ピストン 75のフロントカバー 11に対す るタービン 22側への移動が第 1プレート 77および第 2プレート 78を介して規制されて いる。

[0056] また、ピストン連結機構 76は寸法関係にも特徴を有している。具体的には図 2に示 すように、ピストン 75の筒状部 75aの内径（シール部材 32cの外径）を第 1径 Ll、第 1 先端部 77dほたは第 2先端部 78d)の内径を第 2径 L2、ワイヤリング 79の外径ほた は第 1交差部 77eの軸方向に延びる部分の内径）を第 3径 L3とした場合、第 1径 L1 は第 2径 L2および第 3径 L3よりも大きい。このため、ワイヤリング 79をタービン 22側 力も組み付けする際に、第 1先端部 77dおよび第 2先端部 78d周辺がタービン 22側 から見えやすくなり、組み付け性が向上する。

[0057] さらに、第 1先端部 77d、第 2先端部 78dおよびワイヤリング 79は、ボス部 32bと半 径方向に重なり合うように配置されている。具体的には、タービンノ、ブ 32はボス部 32 bから軸方向に延びる筒状部 32dをさらに有している。筒状部 32dの外周側にピスト ン連結機構 76が配置されて!/、る。筒状部 32dの外径はボス部 32bの外径よりも小さく 、ボス部 32bおよび筒状部 32dにより凹部 32eが形成されている。凹部 32eに第 1先 端部 77d、第 2先端部 78dおよびワイヤリング 79が収容されている。これにより、内周 側のスペースをより有効利用でき、ピストン連結機構 76の外周側のスペースを広げる ことが可能となる。

[0058] (4)トルクコンバータの動作

図 1を用いて、トルクコンバータ 1の動作について説明する。

[0059] ロックアップ装置 7の連結時においては、油圧によりピストン 75がフロントカバー 11 側へ移動し、ピストン 75とフロントカバー 11との間にクラッチプレート 71が狭持される

[0060] ピストン連結機構 76によりピストン 75はフロントカバー 11に対して一体回転可能か つ軸方向に移動可能に連結されている。このため、ピストン 75はフロントカバー 11と 一体回転しながらフロントカバー 11側へ移動する。このとき、ピストン連結機構 76 (第 1プレート 77、第 2プレート 78およびワイヤリング 79)によりピストン 75の軸方向の移 動は規制されない。

[0061] クラッチプレート 71が狭持されると、トルクがフロントカバー 11からクラッチプレート 7 1に伝達され、さらにドライブプレート 72、第 1および第 2トーシヨンスプリング 74a 74 bおよびドリブンプレート 73を介してタービン 22に伝達される。ダンパー機構 9により 捩り振動が吸収および減衰させる。

[0062] 一方、ロックアップ装置 7の連結解除時においては、油圧によりピストン 75がタービ ン 22側へ移動し、クラッチプレート 71の狭持が解除される。この結果、クラッチプレー ト 71がフロントカバー 11およびピストン 75に対して回転可能となる。

[0063] ピストン連結機構 76によりピストン 75のタービン 22側への移動が所定範囲内で規 制されている。このため、第 1プレート 77の第 1先端部 77dと第 2プレート 78の第 2先 端部 78dとワイヤリング 79に当接し、ピストン 75が図 2に示す状態で停止する。これ により、ピストン 75の筒状部 75aとタービンハブ 32のフランジ部 32aとの接触を防止 できる。このとき、フロントカバー 11とピストン 75とは一体回転している。このため、第 1 プレート 77、第 2プレート 78およびワイヤリング 79が回転方向に摺動せず、各部材の 摩耗を防止できる。

[0064] クラッチプレート 71がフロントカバー 11およびピストン 75に対して回転可能となる。

トルクはロックアップ装置 7を介して伝達されず、インペラーハブ 28からタービン 22 流体を介してトルクが伝達される。

[0065] 以上のように、トルクコンバータ 1では、流体を介して、またはロックアップ装置 7を介 して直接的に、エンジンからトランスミッションへトルクを伝達することができる。

[0066] (5)ピストン連結機構の組み付け

図 6を用いて、ピストン連結機構 76の組み付けについて説明する。

[0067] 図 6に示すように、ピストン連結機構 76の第 1プレート 77はフロントカバー 11に溶接 により固定される。第 2プレート 78はピストン 75により溶接により固定される。次に、フ ロントカバー 11にクラッチプレート 71、ピストン 75および第 1スラストベアリング 41が組 み付けられる。第 1プレート 77および第 2プレート 78が嚙み合うように、ピストン 75が 組み付けられる。その後、ワイヤリング 79が第 1先端部 77dおよび第 2先端部 78dの 間に嵌め込まれる。

[0068] このとき、前述のように筒状部 75aの第 1径 L1が第 2径 L2および第 3径 L3よりも大 きいため、タービン 22側（図 6の右側）から第 1先端部 77dおよび第 2先端部 78d周辺 が見えやすい。これにより、ワイヤリング 79の組み付け性が向上する。

[0069] ワイヤリング 79を組み付けた後、ダンパー機構 9、タービン 22およびタービンハブ 3 2のアッセンプリが組み付けられる。

[0070] (6)作用効果

ロックアップ装置 7の作用効果について以下にまとめる。

[0071] (a)

このロックアップ装置 7では、ピストン連結機構 76によりピストン 75がフロントカバー 11に対して一体回転可能にかつ軸方向に移動可能に連結されている。それに加え て、ピストン連結機構 76によりピストン 75のタービン 22側への移動が所定範囲内で 規制されている。このため、相対回転が生じない部分においてピストン 75の移動を規 制すること力 Sでき、ピストン 75の軸方向への移動に伴い生じる部材の摩耗を防止し、 フリクションロスを低減できる。

[0072] (b)

従来のロックアップ装置では、ピストン連結機構はピストンの半径方向中央付近に 配置されている。このため、ダンパー機構の弾性部材は外周側に配置する必要があ る。また、弾性部材が半径方向中央付近に配置された場合、スペースが狭いため、 弾性部材の径を大きくすることができず、設計の自由度が低下する。

[0073] し力、し、このロックアップ装置 7では、ピストン連結機構 76がピストン 75の内周部周 辺に配置されている。このため、ピストン連結機構 76の外周側のスペースが広くなり、 ダンパー機構 9の第 1トーシヨンスプリング 74aおよび第 2トーシヨンスプリング 74bの 径を大きくすること力 Sできる。すなわち、このロックアップ装置 7では設計の自由度が 向上する。

[0074] (c)

ピストン連結機構 76では、第 1内周歯 77bおよび第 2内周歯 78bに加えて、それら の外周側に配置された第 1外周歯 77cおよび第 2外周歯 78cが嚙み合っている。この ため、ピストン 75とフロントカバー 11とが一体回転する際に、回転方向の接触面積が 広くなる。このため、接触部分の面圧が低くなり、第 1プレート 77および第 2プレート 7 8の摩耗を低減できる。

[0075] (d)

このロックアップ装置 7では、ピストン連結機構 76のワイヤリング 79の組み付けが内 周側から行われる。そして、ピストン 75の第 1径 L1がピストン連結機構 76の第 2径 L2 よりも大きい。このため、組み付け時においてワイヤリング 79の組み付け箇所が見え やすくなり、組み付け性が向上する。また、仮に組み付け部品に不具合が発見され た場合も、容易に分解および正常部品との交換が可能となる。

[0076] (6)その他の実施形態

本発明の具体的な構成は、前述の実施形態に限られるものではなぐ発明の要旨 を逸脱しな!/、範囲で種々の変更および修正が可能である。

[0077] (a)

ピストン連結機構 76の形状は前述の実施形態に限定されない。例えば、第 1プレ ート 77と第 2プレート 78とが入れ替わってもよい。具体的には、第 1内周歯 77bの軸 方向に延びる部分が第 2内周歯 78bに形成されてもよいし、第 1内周歯 77bおよび第 2内周歯 78bの!/、ずれにも形成されてもよ!/、。

[0078] (b) 前述の実施形態では、ピストン連結機構 76にワイヤリング 79が用いられているが、 これに限定されない。例えば、第 1プレート 77と第 2プレート 78とが軸方向に係合して いる構成であってもよい。

[0079] (c)

前述の実施形態では、第 1外周歯 77cと第 2外周歯 78cとは軸方向に交差していな い。しかし、第 1外周歯 77cと第 2外周歯 78cとが軸方向に交差していてもよい。

[0080] (d)

前述の実施形態では、ワイヤリング 79は自由状態で第 1内周歯 77bおよび第 2内 周歯 78bに組み付けられている。しかし、ワイヤリング 79が半径方向に圧縮された状 態で組み付けられて!/、てもよレ、。

産業上の利用可能性

[0081] 本発明に係るロックアップ装置および流体式トルク伝達装置では、上記の構成によ り、ピストンの軸方向への移動に伴い生じる部材の摩耗を防止し、フリクションロスを 低減できる。したがって、本発明は動力伝達装置の分野で有用である。

Claims

請求の範囲

[1] トルクが入力されるフロントカバーと、前記フロントカバーに固定され作動流体が充 填された流体室を形成するインペラ一と、前記インペラ一に対向して配置されたタ一 ビンとを含む流体式トルク伝達装置にぉレ、て、前記フロントカバーと前記タービンとの 間の空間に配置され、前記フロントカバーと前記タービンとを機械的に接続するため のロックアップ装置であって、

前記タービンに対して回転可能にかつ軸方向に移動可能に設けられ、前記作動流 体の圧力に応じて軸方向に移動可能なピストンと、

前記ピストンを前記フロントカバーに対して一体回転可能にかつ軸方向へ移動可 能に連結し、前記ピストンの前記タービン側への移動を所定範囲内で規制するピスト ン連結機構と、

前記ピストンの前記フロントカバー側への移動により、前記ピストンおよびフロント力 バーの軸方向間に狭持される摩擦プレートと、

前記摩擦プレートを介して前記フロントカバーおよびタービンを回転方向に弹性的 に連結可能なダンパー機構と、

を備えたロックアップ装置。

[2] 前記ピストン連結機構は、前記フロントカバーに固定された第 1部材と、前記ピスト ンに固定された第 2部材と、前記第 1部材に対する前記第 2部材の前記タービン側へ の移動を前記所定範囲内で規制する規制部材と、を有している、

請求項 1に記載のロックアップ装置。

[3] 前記第 1部材と前記第 2部材とは、軸方向に交差する部分を有しており、

前記規制部材は、前記交差する部分に係合して!/、る、

請求項 2に記載のロックアップ装置。

[4] 前記第 1部材は、前記フロントカバーに固定される第 1環状部と、前記第 1環状部か ら半径方向内側へ延びる複数の第 1内周歯と、を有しており、

前記第 2部材は、前記タービンに固定される第 2環状部と、前記第 2環状部から半 径方向内側へ延びる複数の第 2内周歯と、を有しており、

前記第 1および第 2内周歯は、軸方向に交差した状態で回転方向に嚙み合ってい る、

請求項 3に記載のロックアップ装置。

[5] 前記第 1内周歯は、半径方向内側に延びる第 1先端部を有しており、

前記第 2内周歯は、半径方向内側に延び、前記第 1先端部よりも前記フロントカバ 一側に配置された第 2先端部を有しており、

前記規制部材は、前記第 1および第 2先端部の軸方向間に配置され外力により外 径が変化するリング部材である、

請求項 4に記載のロックアップ装置。

[6] 前記第 1内周歯は、半径方向内側へ延び、かつ、軸方向へ延びる第 1交差部を有 しており、

前記第 2内周歯は、前記第 1交差部と回転方向に嚙み合っている、

請求項 5に記載のロックアップ装置。

[7] 前記第 2内周歯は、半径方向内側へ延び、かつ、軸方向へ延びる第 2交差部を有 しており、

前記第 1内周歯は、前記第 2交差部と回転方向に嚙み合って!/、る、

請求項 5または 6に記載のロックアップ装置。

[8] 前記第 1部材は、前記第 1環状部から半径方向外側へ延びる複数の第 1外周歯を さらに有しており、

前記第 2部材は、前記第 2環状部から半径方向外側へ延び、前記第 1外周歯と回 転方向に嚙み合う複数の第 2外周歯をさらに有している、

請求項 4から 7のいずれかに記載のロックアップ装置。

[9] 前記ピストンの内径は、前記第 1部材の内径よりも大きい、

請求項 2から 8のいずれかに記載のロックアップ装置。

[10] 前記ピストン連結機構は、前記フロントカバーの内周部と前記ピストンの内周部とを 連結している、

請求項 1から 9のいずれかに記載のロックアップ装置。

[11] エンジンからのトルクをトランスミッション側へ伝達するための流体式トルク伝達装置 でめって、 トルクが入力されるフロントカバーと、

前記フロントカバーに固定され作動流体が充填された流体室を形成するインペラ一 と、

前記インペラ一に対向して配置されたタービンと、

請求項 1から 10のいずれかに記載のロックアップ装置と、

を備えた流体式トルク伝達装置。