JP6389430B2 - トルクコンバータのロックアップ装置 - Google Patents
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Description
そこで、連結部材に調整油室を設け、油室と調整油室との間で作動油が連通できるようにして、油室から作動油が排出されない状態でも、連結部材を作動できるようにしている。このような構成にすることによって、第1クラッチ部をトルク伝達状態に維持したまま、連結部材のみを移動させて第2クラッチ部を連結解除状態にすることができる。すなわち、ロックアップの解除時に、第1クラッチ部をトルク伝達状態にした後に第2クラッチ部の連結を解除し、その後第1クラッチ部をトルク伝達解除状態にすることができる。
トルクコンバータ1は、エンジン側のクランクシャフト(図示せず)からトランスミッションの入力シャフトにトルクを伝達するための装置である。トルクコンバータ1は、フロントカバー2と、3種の羽根車(インペラ3、タービン4、ステータ5)からなるトルクコンバータ本体6と、ロックアップ装置7とから、構成されている。
ロックアップ装置7は、フロントカバー2とタービン4との間の空間に配置され、これらの間でトルクを伝達(以下、「ロックアップ状態」又は「ロックアップオン」と記す)あるいはトルク伝達を解除(以下、「ロックアップ解除」又は「ロックアップオフ」と記す)するための装置である。ロックアップ装置7は、摩擦部材28(第1クラッチ部の一例)と、ピストン30(トルク伝達部材の一例)と、ドグクラッチ(第2クラッチ部の一例)32と、ダンパ機構34と、を備えている。また、ロックアップ装置7には、油圧回路が設けられている。
摩擦部材28は、環状に形成されており、ピストン30のフロントカバー2側の外周部側面に固定されている。摩擦部材28は、作動油によって軸方向に移動するピストン30によって、フロントカバー2とダンパ機構34及びタービン4との間でトルクを伝達あるいはトルク伝達を解除するためのものである。以下、この摩擦部材28を「第1クラッチ部28」と記す。
図2に示すように、ドグクラッチ32は、作動油によって作動する連結部材40と、第1リングギア41と、第2リングギア42と、を有している。ドグクラッチ32は、連結部材40によってフロントカバー2とピストン30とを機械的に連結し、フロントカバー2とタービン4との間でトルクを伝達あるいはトルク伝達を解除するためのものである。
このロックアップ装置7は、連結部材40の軸方向の位置決めを行うための位置決め機構49を有している。位置決め機構49は、スラストワッシャ46を有している。スラストワッシャ46は、図2に示すように、タービンハブ17の第3筒状部17dとフロントカバー2との間で、連結部材40の内周側に配置されている。
ダンパ機構34はピストン30とタービン4との間に配置されている。図4に示すように、ダンパ機構34は、入力プレート54と、複数のトーションスプリング55と、フロート部材56と、出力プレート57と、を有している。
図5により油圧回路について説明する。油圧回路は、第1油圧ポートP1と、第2油圧ポートP2と、第1油室Q1と、第2油室Q2と、第3油室Q3及び調整油室Rを含むドグ油室Qdと、メインバルブ(第1バルブの一例)Vcと、開放バルブ(第2バルブの一例)Vo(図7参照)と、を有している。
図8に、ロックアップ装置に対する油圧制御フローと、そのときのロックアップ装置の状態と、を示している。図の上部には、経過時間(横軸)に対する各部の油圧(左側縦軸)と、ピストン30及び連結部材40の変位(右側縦軸)と、を示している。なお、「変位」については、絶対移動量ではなく、最大変位を100%とした場合の割合(%)で示している。また、図の下部には、油圧制御の各ステージにおけるピストン30と連結部材40の動きを示している。
第1ステージは、トルクコンバータ本体6によるトルク伝達状態を示している。この場合は、第2油圧ポートP2から供給される作動油の油圧C2が比較的高く、第1油室Q1及びドグ油室Qdの油圧C1,C3よりも第2油室Q2の油圧C2の方が高い。したがって、第1クラッチ部28及びドグクラッチ32ともにオフであり、フロントカバー2に入力されたトルクはトルクコンバータ本体6を介してタービン4に伝達される。すなわち、ロックアップオフである。
エンジンの回転数が所定の回転数に上昇すると、第2ステージに移行する。この第2ステージでは、第1油圧ポートP1から供給される作動油の油圧C1が第1ステージの油圧から上昇する。一方、第2油圧ポートP2から供給される作動油の油圧C2が低下する。したがって、第1油室Q1の油圧C1の方が第2油室Q2の油圧C2より高くなり、ピストン30がフロントカバー2側に移動して、第1クラッチ部28がオンになる。すなわち、ロックアップオンとなる。
第2ステージの状態を所定時間維持した後は、第3ステージに移行する。この第3ステージでは、第1油室Q1の油圧C1を維持したまま第2油圧ポートP2から供給される作動油の油圧C2をさらに下げる。このとき、ドグ油室Qdの作動油(油圧)は第2ステージのまま維持されているので、第2油室Q2の油圧C2を下げることによって、ドグ油室Qdの油圧C3が第2油室Q2の油圧C2よりも高くなる。このため、連結部材40がフロントカバー2側に移動するとともに、第1油室Q1とドグ油室Qdとの差圧がより大きくなり、メインバルブVcが開く。
第5ステージは、フロントカバー2からのトルクがドグクラッチ32を介して機械的にタービン4に伝達されるロックアップ状態である。なお、第5ステージにおいて、ピストン30の変位は第4ステージと同じ変位を示しているが、ここでは、ピストン30に作動油による押圧力は作用していない。したがって、この第5ステージでは、第1クラッチ部28はオフである。この状態では、前述のように、第1油圧ポートP1及び第2油圧ポートP2はドレンに接続されており、各室の油圧C1,C2,C3は「0」である。すなわち、ロックアップ装置に作動油を供給することなく、ロックアップ状態を維持することができる。
第6ステージ及び第7ステージは、ロックアップ状態からロックアップ状態を解除する場合の油圧制御を示している。ここで、ロックアップ状態では、ドグクラッチ32のみによって機械的にトルクが伝達されている状態である。このような状態からドグクラッチ32をオフすると、遷移状態としてのクラッチのすべりが生じないので、ドグクラッチ32のオフ時にショックが生じるおそれがある。
そこで、ここでは、ロックアップ状態からロックアップ解除状態にする際に、いったん第1クラッチ部28をオンした後にドグクラッチ32をオフし、その後第1クラッチ部28をオフするようにしている。
具体的には、まず、第1油圧ポートP1から作動油を供給し、第1油室Q1の油圧C1を上昇させる。これにより、ピストン30に固定された摩擦部材28はフロントカバー2に押し付けられて第1クラッチ部28はオンになる。この状態では、フロントカバー2からのトルクは、ドグクラッチ32のみではなく、第1クラッチ部28をも介してダンパ機構34及びタービン4に伝達される。
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
2 フロントカバー
4 タービン
7 ロックアップ装置
17 タービンハブ(出力部材)
28 摩擦部材(第1クラッチ部)
30 ピストン(トルク伝達部材)
32 ドグクラッチ(第2クラッチ部)
40 連結部材
41 第1リングギア
42 第2リングギア
50 スプリングシート
50b 位置決め突起
51 スプリング
Vc メインバルブ(第1バルブ)
Vo 開放バルブ(第2バルブ)
Q1 第1油圧室
Q2 第2油圧室
Q3 第3油圧室
R 調整油室
Qd ドグ油室
P1 第1油圧ポート
P2 第2油圧ポート
Claims (8)
- フロントカバーとタービンとの間に配置されたトルクコンバータのロックアップ装置であって、
作動油によって作動し、前記フロントカバーと前記タービンとの間でトルクを伝達あるいはトルク伝達を解除する第1クラッチ部と、
前記第1クラッチ部と前記タービンとの間に配置され、前記第1クラッチ部からのトルクを前記タービンに伝達するトルク伝達部材と、
作動油によって作動する連結部材を有し、前記フロントカバーと前記トルク伝達部材とを機械的に連結あるいは連結解除する第2クラッチ部と、
前記第1クラッチ部を作動させるとともに、前記第2クラッチ部の連結部材を作動させる作動油を供給するための第1油圧ポートと、
前記第1クラッチ部をトルク伝達解除状態にするとともに、前記第2クラッチ部の連結部材を連結が解除される方向に移動させる作動油を供給するための第2油圧ポートと、
前記第1クラッチ部、前記第2クラッチ部、及び前記タービンからのトルクを出力する出力部材と、
前記連結部材と前記出力部材との間に形成された油室と、
前記出力部材に設けられ、前記第1油圧ポートからの作動油圧力と前記第2油圧ポートからの作動油圧力との差が所定値以上になったときに、前記油室に前記第1油圧ポートからの作動油を導入する第1バルブと、
を備えたトルクコンバータのロックアップ装置。 - 前記トルク伝達部材は、作動油によって軸方向に移動可能なピストンであり、
前記第1クラッチ部は前記ピストンに固定された摩擦部材を有し、前記摩擦部材は前記フロントカバーに押圧されて前記フロントカバーと前記ピストンとの間でトルクを伝達し、
前記第2クラッチ部の連結部材は前記フロントカバーと前記ピストンとを機械的に連結する、
請求項1に記載のトルクコンバータのロックアップ装置。 - 前記第2クラッチ部は、
前記フロントカバーに設けられ、内周面に複数の歯を有する第1リングギアと、
前記ピストンに設けられ、内周面に複数の歯を有する第2リングギアと、
を有し、
前記連結部材は、前記第1リングギア及び前記第2リングギアの歯に噛み合い可能な複数の歯を外周面に有する、
請求項2に記載のトルクコンバータのロックアップ装置。 - 前記出力部材は、円板状のフランジと、前記フランジから軸方向フロントカバー側に延びる筒状部と、を有し、
前記連結部材は前記出力部材の筒状部外周面に軸方向に摺動自在に支持されている、
請求項1から3のいずれかに記載のトルクコンバータのロックアップ装置。 - 前記出力部材に設けられ、前記第1油圧ポートから供給される作動油圧力が所定値以下になったときに、前記油室の作動油を排出する第2バルブをさらに備えた、請求項1から4のいずれかに記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
- 前記連結部材は、
内部の容積が変化可能な調整油室と、
前記油室と前記調整油室とを連通する連通油路と、
を有している、
請求項1から5のいずれかに記載のトルクコンバータのロックアップ装置。 - 前記連結部材は前記第2油圧ポートからの作動油圧力が所定値以上のときに、前記調整油室の作動油を前記油室に排出する、
請求項6に記載のトルクコンバータのロックアップ装置。 - 前記連結部材を、前記第2クラッチ部が連結解除状態になる第1位置と、前記第2クラッチ部が連結状態になる第2位置とで位置決めするための位置決め機構をさらに備えている、請求項1から7のいずれかに記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
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