明 細 書
光源、光源システムおよび照明装置
技術分野
[0001] 本発明は、主に照明用途に用いられ、生体への影響度が制御可能な光源と、同光 源を応用した光源システムおよび照明装置に関するものである。
背景技術
[0002] 人類は、古来より自然光である太陽光の下で主に生活し発達してきたため、昼夜と いった光の明喑サイクルに対応するような生理的メカニズムがつくられてきたと考えら れる。そうしたメカニズムの中で、主に光によって引き起こされる反応として、睡眠と覚 醒のリズムがあり、これはおよそ 1日周期のリズム(サ一力ディアンリズム)を持っている 。この生体リズムは、実際には 24時間よりやや長い周期を持っている力 午前中に光 を浴びることにより、生体リズム周期の位相を前進させてリセットを行い、環境光の昼 夜サイクルに同調させてレ、る。
[0003] また、一般的に、夜間の入眠前から睡眠前半の時間帯に、脳にある松果体からメラ トニンというホルモンが多く分泌される。このメラトニンの分泌は、体温低下や入眠促 進の作用があるが、例えば、夜間に比較的強い光を浴びるとその分泌は抑制され、 その後の睡眠に影響を及ぼし、逆に、 日中に比較的強い光を浴びると、その後の夜 間のメラトニン分泌量が増加することが明らかにされている。
[0004] このように、光は生体リズムの調整ゃメラトニン分泌の抑制などと深い関わりを持つ ており、明暗サイクルといった時間的変化を含めた、光の量的、そして質的な変化が 、生理的メカニズム、特に生体リズムに大きな影響を与える。
[0005] 現代社会においては、室内で過ごす時間が増加しているだけでなぐ照明の発達 により生活の夜型化が進んでおり、昼夜であまり明暗変化のない光環境となっている 。このため、生体リズムが 24時間周期へ上手く同調されず、睡眠障害や不眠症とい つた、心身の健康を阻害される人を生むとレ、つたような社会問題をももたらして!/、る。 そうした社会的状況を背景に、居住空間における照明光の量的 ·質的な制御技術が その重要性を増している。
[0006] これに関連して、光の波長と、生体リズムに影響を与えるメラトニンの分泌の関係に ついて、非特許文献 1のような論文が発表されている。この文献では、夜間に受光す る光の波長によって、分泌されるメラトニン量にどう影響を受けるのかをアクションスぺ クトラムという形で明らかにしている。すなわち、波長によるメラトニン分泌抑制の感度 特性は、この文献によると図 1のようになると報告されて!/、る。
[0007] 上記の特性に従えば、感度のピークとなる 464nm前後の波長域のエネルギー量 が異なる、複数の光源を用意して切り替えて照射することにより、メラトニン分泌の抑 制'非抑制を切り替えることが可能となる。このような考え方を応用した技術としては、 例えば特許文献 1がある。この特許文献 1は、メラトニン分泌抑制の感度が高い 410 〜505nm波長域のエネルギー量が多い光源とそうでない光源を切り替えることによ り、メラトニン分泌の抑制や生体リズムの調整を行う照明方法および照明装置である。 特許文献 1 :特開 2005— 310654号公報
非特許文献 1: George C. Brainard, et al. : Action Spectrum for M elatonin Regulation in Humans: Evidence for a Novel し lrcadian P hotoreceptor , The Journal of Neuroscience, August 15, 2001 , 21 (16) , pp. 6405 - 6412.
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] しかしながら、上記 410〜505nmの波長域は、メラトニン分泌の抑制効果、すなわ ち生体への影響度が高いと同時に、照明光としての明るさや色変化に与える影響も 大きい。すなわち、上記波長域の光を単純に増やしたり減らしたりするだけでは、生 体への影響度の変化に連動して明るさや物の色の見え方が変わってしまうため、 日 常的に使用する照明へ応用する場合、必ずしも十分な技術ではなかった。
[0009] そもそも、人間が光の明るさや物の色を知覚できるのは、光の三原色に対応したセ ンサが目に備わっているためであると考えられている。図 2に、人間の目に対応する 分光感度を示す。これを等色関数と呼び、赤、緑、青の波長域にそれぞれ大きな感 度を持つ、 x (え)、 y (え)、 ζ ( λ )の関数で表される。ここで、関数 ζ ( λ )の曲線に注 目すると、約 440〜450nmの青色光の波長に感度のピークがあり、同じ青色系の光
であっても例えば 420nm付近や 480nm付近の波長光に対しては、感度がピークで ある波長と比べると半分を下回る程度の感度しか持って!/、な!/、こと力 S分力、る。逆に言 うと、例えば 420nmの光が 450nmの光と同程度の強さの感覚を人間の目に与える ためには、約 2倍の光の強さが必要であると言える。すなわち、 450nmの光と 420η mの光の強さを変えることは、明るさや色の感じ方に与える影響が大きく異なるため、 特許文献 1に示されるような 410〜505nmの同じ波長域に含まれる光であっても、同 列に极うことは適当でない。
[0010] さらに、照明光による生体への影響度には、個人差や体調等によっても差があるた め、特許文献 1に示されるような生体影響度の強い光とそうでない光を使い分ける、と V、つた程度の制御では、照明利用者の性質や体調によっては、効果が不充分であつ たり過度になりすぎたりという問題が生じる。
[0011] 本発明は、上記問題点に鑑み、特に照明光の特性として重要である明るさや色味 を良好に保ちながら、生体影響の制御が可能な光源および照明装置を提供すること を目的としている。
課題を解決するための手段
[0012] 上記の通り、人間の目は波長に対して感度が異なるため、これを考慮して使用する 波長域を選択することで、人が感じる明るさや色味を良好に保ちながら、照明による 生体影響を制御することが可能になる。
[0013] 本発明では、前記の課題を解決するために、光の波長による生体作用特性と視覚 の等色特性との関係を示す換算作用度特性 α ( λ )を導出し、この特性に基づいた 強度制御を行うことによって、光の明るさと色味を維持しながら生体影響度を可変す ることを可倉 とした。
[0014] 前記換算作用度特性 α ( λ )は、図 1に示すメラトニン分泌抑制のアクションスぺタト ラム Μ ( λ )と、図 2に示す青色光に関する等色関数 ζ ( λ )とから、波長ごとに α ( λ ) = Μ ( λ ) /ζ ( λ )として導出した。ここに得られる特性 α ( λ )の意味するところは、光 の波長ごとの、メラトニン分泌抑制に対して寄与する影響度と視覚上の色感覚に対し て寄与する影響度の大きさに関する傾向である。すなわち、 α ( λ )の値が大きい波 長ほどメラトニン分泌抑制に対する影響度が高ぐ α ( λ )の値が小さい波長ほど色
感覚に対する影響度が高くなる。 α ( λ )の値は、図 3に示すように、アクションスぺク トラム Μ ( λ )と等色関数 ζ ( λ )両方のピーク値が共に 1になるように正規化した上で 算出した。図 4に換算作用度特性 α ( λ )を示す。この特性によれば、波長 430〜44 Onm付近に色感覚に対する影響度が最も高い波長があり、その波長から離れるに従 つて、短波長側も長波長側もメラトニン分泌抑制に対する影響度が増大していくこと 力 s カゝる。
[0015] 上記特性 α ( λ )を考慮した上で光のスペクトルを変えることにより、光の明るさや色 味の変化を極力抑えながら、メラトニン分泌抑制の程度すなわち生体影響度を制御 することの可能な光源または照明装置を提供することができる。
[0016] 以上のような特徴を備える、本発明による光源の構成として、第一の構成は、互い に異なる波長特性を有する少なくとも 2種類の異なる発光体 Αおよび Βで構成される 光源であって、前記発光体 Aと発光体 Bは、その受光によって生体の覚醒度もしくは ホルモン分泌に影響を与える生体作用性質を備えるとともに、発光体 Aは発光体 Bと 比較して同一の発光強度での受光による生体作用度が高ぐ発光体 Bは発光体 Aと 比較して同一の発光強度での受光による生体作用度が低い、という特徴を備える光 源である。
[0017] ここに、前記発光体 Aおよび発光体 Bは、発光体 Aの発光強度を上げて発光体 Bの 発光強度を下げた際に受光による生体作用が弱まり、発光体 Aの発光強度を下げて 発光体 Bの発光強度を上げた際に受光による生体作用が強まる、という特徴を備える
〇
[0018] そして、前記発光体 Aの発光強度を上げる場合には発光体 Bの発光強度を下げ、 発光体 Aの発光強度を下げる場合には発光体 Bの発光強度を上げることによって、 受光による生体作用度を可変させる。
[0019] ここで、前記発光体 Aと発光体 Bの発光強度を制御する際には、光の生体作用に 関するアクションスぺ外ラム特性と青色光に関する等色関数とから算出される換算作 用度に基づいて、両発光体による合成光の色度の青色成分が、ほぼ一定もしくは所 定範囲内の値となるように制御するものである。
[0020] さらに詳細には、前記発光体 Aは、波長略 420〜440nmの範囲に発光エネルギ
一ピークを有し、前記発光体 Bは、波長略 440〜510nmの範囲に発光エネルギーピ ークを有する、という特徴を備えるものである。
[0021] あるいは、前記発光体 Aは、波長略 440〜470nmの範囲に発光エネルギーピーク を有し、前記発光体 Bは、波長略 470〜510nmの範囲に発光エネルギーピークを有 する、という特徴を備えるものである。
[0022] 本発明による光源の構成として、第二の構成は、所定の波長範囲内で発光波長の ピーク値を変化させることが可能な光源であって、その受光によって生体の覚醒度も しくはホルモン分泌に影響を与える生体作用性質を備え、発光波長のピーク値を変 化させることにより前記生体作用を可変する、という特徴を備える光源である。
[0023] より詳細には、前記所定の波長範囲が、少なくとも 420〜440nmの範囲と 440〜5 lOnmの範囲にあり、両範囲の間で切り替え可能である、という特徴を備えるものであ
[0024] あるいは、前記所定の波長範囲が、少なくとも 440〜470nmの範囲と 470〜510n mの範囲にあり、両範囲の間で切り替え可能である、という特徴を備えるものである。
[0025] 上記のような発光波長のピーク値を変化させることが可能な光源としては、例えば 垂直共振器面発光レーザを用いる。
さらに別の発明として、第一 '第二の構成として記したような光源を利用して、生体 作用性質を備えながら、上記光源とは異なる色の光を照射することが可能な光源シ ステムを提供する。
[0026] その第一の構成は、前記!/、ずれかの光源と、該光源の波長特性とは異なる波長特 性を有する発光体とを含んで構成する光源システムである。
[0027] 第二の構成としては、前記いずれかの光源と、該光源と共に使用して白色光を得る 少なくとも一つの発光体とを含んで構成する光源システムである。
さらに別の発明として、前記いずれかの光源システムを利用した照明装置を提供す すなわち、前記いずれかの光源システムを利用する照明装置であって、得られる照 明光による平均演色評価数が所定の数値以上を保ちながら、前記光源システムに含 まれる各光源もしくは発光体の発光強度を制御して生体作用度を可変する、という特
徴を備える照明装置である。
発明の効果
[0028] 以上のような構成によって、本発明は以下の効果を奏する。即ち、本発明の光源に よれば、光源の発する光によって知覚される明るさと色味を略同一に維持しながら、 その受光によって生じる生体への影響度を調整することができる。
[0029] また、上記光源を含む光源システムによれば、上記と同様に生体への影響度を調 整しながら、上記光源単体とは異なる色の光に関して、その明るさと色味を略同一に 維持すること力 Sでさる。
[0030] さらに、上記光源システムを利用して白色光を得られるように構成した照明装置は、 照明光の明るさと色味すなわち色温度だけでなく、演色性も所定の水準を維持しな がら、その受光によって生じる生体への影響度を調整することができるものである。 図面の簡単な説明
[0031] [図 1]人間のメラトニン分泌の抑制感度に関する光の波長特性(アクションスペクトラム
[図 2]人間の目に対応する分光感度 (等色関数)を示す図である。
園 3]メラトニン分泌の抑制感度の特性 M ( λ )と等色関数 ζ ( λ )の関係を示す図であ 園 4]メラトニン分泌の抑制感度の特性と等色関数の比で表される換算作用度 α ( λ )の波長特性を示す図である。
園 5]本発明の第 1の実施形態である光源および光源システムの構成例を示す図で ある。
園 6]本発明の第 1の実施形態である光源システムによる照射光の分光分布の例を 示す図である。
園 7]本発明の第 2の実施形態である光源システムによる照射光の分光分布の例を 示す図である。
園 8]本発明の第 3の実施形態である光源および光源システムの構成例を示す図で ある。
園 9]本発明の第 4の実施形態である照明装置の構成例を示す図である。
符号の説明
[0032] 100…光源システム、皿〜 104…発光体、 110…光源、 200…光源システム、 201 、 202…光源、 203、 204…発光体、 300…照明装置、 301…光源システム、 302· · · 光源制御部、 303· · ·光特性分析部、 304· · ·条件設定部。
発明を実施するための最良の形態
[0033] 以下、本発明による光源、光源システムおよび照明装置の実施形態について、図 面を参照して詳細に説明する。
実施例 1
[0034] 図 5に、本発明の第 1の実施形態である光源および光源システムの構成例を示す。
光源システム 100は、第一の発光体 101と第二の発光体 102とから構成される光源 1 10、および第三の発光体 103と第四の発光体 104とを含んで構成される。光源 110 には、図示しない制御部が接続され、制御部は発光体 101と発光体 102それぞれの 発光強度を制御する。
[0035] 発光体 101と発光体 102は、互いに異なる波長特性を有し、それぞれの発光エネ ルギーピークは、発光体 101は波長約 430nm、発光体 102は波長約 490nmである 。一方、発光体 103と発光体 104は、それぞれのピーク波長が 540nm、 646nmであ つて、これら 4つの発光体を同時に発光させることにより白色の光が得られるような波 長特性の組み合わせで構成される。また、 4つの発光体による光が混合されて最終 的に得られる照射光が、発光体からの光を効率良く利用し、また均一に照射されるよ うに、光源システム 100に、光の拡散板 105や反射板 106を配置しても良い。
[0036] 4つの発光体の内、発光体 101と発光体 102は、図 3で示されるように、 M ( λ )の 値が約 0· 7と約 0. 8と、いずれもメラトニン分泌の抑制作用すなわち生体作用度の 高い波長に発光のピークがあり、これらの発光強度を制御することにより、生体作用 度を大さく可変させること力でさる。
[0037] 一方で、発光体 101と発光体 102の間には、等色関数上では大きな違いがあり、人 間の目に対する感度については差が大きいことが分かる。すなわち、発光体 101は、 その発光ピーク波長が 430nmのため、 ζ ( λ )のピークを 1としたときの相対感度は約 0. 8と高いが、発光体 102の方は、その発光ピーク波長が 490nmであるため、 ζ ( λ
)に関する相対感度は 0. 25前後と低い値を示す。従って、両者の発光強度を変える ことによって生体作用度を調整する場合、単に発光体ごとの生体作用への影響度に 注目して発光強度を変えるだけでは、生体作用度の調整前後で光の明るさや色が 大幅に変化してしまう可能性がある。本実施形態においては、生体作用度の調整前 後で光の明るさや色をほぼ一定に保っために、各発光体の生体影響度と共に、それ ぞれの等色関数 z ( λ )で表される相対感度比を考慮して、各発光体の発光強度を制 御する。
[0038] ここで、上記 4つの発光体の発光強度を定めるアルゴリズムとして、最適化問題の 解法を使用する。未知数が複数あるパターンに適用できる解法としてニュートン法を 用い、特定の条件の下で生体作用度が最大および最小になるような各発光体の発 光強度を算出した。その算出結果を表 1に示す。解を求める際の条件としては、 ΧΥΖ 表色系における色度座標ィ直 χ = 0. 31 ± 0. 005、 y=0. 32 ± 0. 005、平均演色評 価数 80. 0 (CIE標準光 D65基準)の他、放射強度を一定とした。すなわち、照射光 の色がいわゆる白色光の範囲内であり、物体の色の見え方の正確性が高い水準を 保ち、照射光の輝度すなわち明るさが保たれることを条件とするものである。
[0039] [表 1]
[0040] 表 1記載の生体作用度の数直は、標準光 D65の生体作用度を 1とした際の比率で ある。また、各発光体の発光強度を示す数値は相対値であり特定の単位を持たない 。生体作用度を調整する際の各発光体の制御の傾向として、生体作用度を上げる場 合には第 1の発光体の発光強度を下げる一方で第 2の発光体の発光強度を上げ、 生体作用度を下げる場合には、逆に第 1の発光体の発光強度を上げて第 2の発光 体の発光強度を下げるという特徴がある。表 1には例として、本実施形態の光源シス テムで得られる生体作用度の、最大値と最小値に対応する各発光体の発光強度を 示したが、上記の手順で解を求める際の条件として、上記最大と最小の範囲内で生
体作用度の指標値を追加指定することによって、指定した生体作用度に対応する、 各発光体の発光強度を算出することができる。
[0041] このように、本発明の光源システムを用いることにより、照射光としての明るさ、色度 あるいは色温度、演色性をほぼ一定に保ちながら、生体作用度を標準光の約 98% 〜; 114%の範囲で可変させることができる。
[0042] 図 6に、上記表 1に示した発光強度の構成で得られる照射光の分光分布の例を示 す。図 6 (a)は生体作用度が最大の例、図 6 (b)は生体作用度が最小の例である。
[0043] なお、上記の生体作用度の調整幅は、算出する過程で与える条件を緩和させるこ とによって制御することが可能である。例えば、色度座標値 (X, y)の条件をそれぞれ 、 0. 30≤x≤0. 32、 0. 30≤y≤0. 35の範囲まで許容すると、調整可能な生体作 用度の範囲は、表 1の結果よりも広い約 86%〜; 119%の範囲にすることができる。色 度座標値の条件をさらに緩めれば、より広い範囲で生体作用度の調整が可能になる 。平均演色評価数に関しても同様で、上記 80. 0よりも低い値を許容すれば、生体作 用度の調整範囲をより広げることが可能である。このような調整は、本光源システムの 用途や目的に応じて適宜行えば良い。
[0044] なお、本実施形態では、上記 4つの発光体それぞれ独立に発光強度の制御が可 能な構成とするために、発光体として LED (発光ダイオード)を使用する。もちろん、 特定の波長にピークを有する性質を持つ発光体であれば、 LEDの代わりに半導体 レーザ、 EL素子等の各種発光体を用いて良い。
[0045] 一方、第三の発光体,第四の発光体としては、 LEDのような自発光の発光体の代 わりに蛍光体を用いても良い。その場合、蛍光体は、前記第一、第二の発光体から の光を受けて発光し (励起発光)、上記に示した例と同様の波長特性の得られるもの を用いる。蛍光体を用いる場合の、光源システム 100の構成例を図 5 (b)に示す。
[0046] 蛍光体を用いる場合、基本的にその励起光源と独立に発光強度を制御できるわけ ではないが、最終的に得たい照射光となるように蛍光体の量や密度を適切な大きさ に設定することによって、生体作用度の可変幅ゃ演色性の維持度は多少劣るものの 、表 2に示す通り、色度ゃ演色性などの条件を大きく変えること無しに、生体作用度を 調整することが可能である。
[0047] [表 2]
[0048] 次に、本発明の第 2の実施形態である光源および光源システムについて説明する。
光源システムの基本的な構成は第 1の実施形態と同様であり、図 5に示したものと同 様に 4つの発光体で構成されるが、第一の発光体と第二の発光体の各ピーク波長が 第 1の実施形態の構成とは異なる。
[0049] 第 2の実施形態においては、発光体 101と発光体 102それぞれの発光エネルギー ピークは、発光体 101は波長約 455nm、発光体 102は波長約 490nmである。一方 、発光体 103と発光体 104は、第 1の実施形態と同様にそれぞれ 540nm、 646nm のピーク波長を有する。
[0050] 第 1の実施形態と比べると、第 1の発光体 101のピーク波長が、図 3から分かる通り メラトニン分泌抑制に関しても視覚上の色感覚に関しても両方の感度が高い点が、 一つの特徴である。
[0051] この光源システムにおいて、照射光の生体影響度を調整するために、第 1の実施形 態と同様に所定の条件を満たす範囲で 4つの発光体の発光強度の制御範囲を算出 すると、表 3に示す通りになる。
[0052] [表 3]
[0053] 表 3に示される通り、第 1の実施形態の光源システムと比較すると、生体作用度の制
御可能範囲が、作用度の小さい方向へ拡大していることが分かる。生体作用度を調 整する際の各発光体の制御の傾向としては第 1の実施形態と同様に、生体作用度を 上げる場合には第 1の発光体の発光強度を下げる一方で第 2の発光体の発光強度 を上げ、生体作用度を下げる場合には、逆に第 1の発光体の発光強度を上げて第 2 の発光体の発光強度を下げると!/、う特徴がある。
[0054] このように、本発明による第 2の実施形態の光源システムを用いることにより、照射 光としての明るさ、色度あるいは色温度、演色性をほぼ一定に保ちながら、生体作用 度を標準光の約 78%〜; 108%の範囲で可変させることができる。
[0055] 図 7に、上記表 3に示した発光強度の構成で得られる照射光の分光分布の例を示 す。図 7 (a)は生体作用度が最大の例、図 7 (b)は生体作用度が最小の例である。
[0056] なお、上記の生体作用度の調整幅は、第 1の実施形態と同様に、照射光として得た い光の色度等の条件を緩和させることによって制御することが可能である。
[0057] 本実施形態では、第 1の実施形態と同様に、上記 4つの発光体それぞれ独立に発 光強度の制御が可能な構成とするために、発光体として LED (発光ダイオード)を使 用する。もちろん、特定の波長にピークを有する性質を持つ発光体であれば、 LED の代わりに半導体レーザ、 EL素子等の各種発光体を用いて良レ、。
[0058] また、第三の発光体,第四の発光体としては、 LEDのような自発光の発光体の代わ りに蛍光体を用いても良い。その場合、蛍光体は、前記第一、第二の発光体からの 光を受けて発光し (励起発光)、上記に示した例と同様の波長特性の得られるものを 用いる。
[0059] ところで、第 1、第 2の実施形態共に、光源システムを構成する発光体の種類は 4つ より多くても良い。その場合、ピークとなる波長を増やすことになるため、必要な波長 特性に対する条件が緩和され、発光体が 4種類で構成される上記実施例と比較して 、色度や平均演色評価数などが同一条件の場合、より生体作用度の調整範囲を広く すること力 Sでき、また、生体作用度の調整範囲が同程度であれば、発光体が 4種類の 場合と比べて演色評価数をさらに高い値で実現することも可能である。
[0060] なお、第 1、第 2の実施形態共に、第 1の発光体と第 2の発光体とから構成される光 源を単体で使用することも可能である。その場合、上記実施例に示す光源の構成で
は、照射光は青色成分が主体になり、室内全体を照らすような照明用途には不向き であるが、上記と同様の考え方に基づいて制御を行うことにより、照射光の色をほぼ 一定に保ちながら、生体作用度を調整することの可能な照明機器として、利用するこ と力 Sできる。
実施例 3
[0061] 次に、本発明の第 3の実施形態である光源および光源システムについて説明する。
図 8に本実施形態の光源および光源システムの構成例を示す。
[0062] 光源システム 200は、第一の光源 201と第二の光源 202、および発光体 203、 204 とを含んで構成される。光源 201および光源 202には、図示しない制御部が接続さ れ、制御部は光源 201と光源 202それぞれの発光強度を制御する。
[0063] 前記二つの光源は、所定の波長範囲内で発光波長のピーク値を変化させることが 可能な光源であって、例えば、特表 2004— 529501号公報で開示されている波長 可変垂直共振器面発光レーザを使用して構成する。この波長可変垂直共振器面発 光レーザは、電流の注入によって光を放出する光発生層と、位置依存電気光学効果 により光の波長を変調する位相制御要素とを含んで構成され、位相制御要素を波長 の変調方向の異なる二段構成にすることで、波長を長い方向にも短い方向にも偏移 させることのでさる光原である。
[0064] この光源を用いて、 420〜440nmの少なくとも一部の範囲内と 440〜510nmの少 なくとも一部の範囲内で波長を可変できるように構成したものを、光源 201および光 原 202として用いる。
[0065] 発光体 203、 204は、それぞれの発光ピーク波長が 540nm、 646nmであって、前 記 2つの光源と共に発光させることにより白色の光が得られるような波長特性の組み 合わせで構成される。発光体 203、 204は、 LEDのような自発光の発光体でも良いし 、光源 201、 202の光を受けて上記のような波長特性の得られる蛍光体を用いても良 い。蛍光体を用いる場合の、光源システム 200の構成例を図 8 (b)に示す。この場合 、 2つの光源 201、 202からの光を効率良く利用し、また最終的に混合されて得られ る照射光が均一に照射されるように、光源システム 200に、光の拡散板 205を配置し ても良い。
[0066] 光源 201、 202は、実施形態 1や 2の発光体 101、 102と同様に、メラトニン分泌の 抑制作用すなわち生体作用度の高い波長に発光のピークがあり、これらの発光強度 を制御することにより、生体作用度を大きく可変させることができる。同時に、人間の 目に対する色感度については差が大きいため、実施形態 1や 2と同様に、その感度 比を考慮して各光源の発光強度を制御する。
[0067] 本実施形態の光源システムによれば、実施形態 1や 2と比べると、光源 201、 202に 関して照射光の波長制御が可能であるため、一種類のみの光源の制御で生体作用 度の調整範囲をより広くできるという利点がある。また、現行の LEDでは実現できな いような波長特性を得ることも可能であり、生体作用度の調整範囲を広くできると共に 、平均演色評価数がより高レ、値の得られる光源システムを構成することも可能である
〇
[0068] なお、上記波長可変垂直共振器面発光レーザを利用した光源 201、 202の波長可 変範囲としては、上記の例の他に、 440〜470nmの少なくとも一部の範囲内と 470 〜510nmの少なくとも一部の範囲内を対象とするように、光源 201、 202を構成して も良い。その場合、前記実施形態 1と実施形態 2の関係と同様に、照射光による生体 作用度の調整範囲を変えることができる。このような変更は、本光源システムの用途 や目的に応じて適宜行えば良い。
実施例 4
[0069] 次に、本発明の第 4の実施形態である照明装置について説明する。図 9に本実施 形態の照明装置の構成例を示す。照明装置 300は、光源システム 301、光源制御部 302、光特性分析部 303、条件設定部 304を含んで構成される。
[0070] 光源システム 301は、実施例 1〜3で示したような、その照射光の受光によって生体 の覚醒度もしくはホルモン分泌に影響を与える生体作用性質を備える光源を含んで 構成され、光源システムとしての照射光がいわゆる白色光になるよう、蛍光体を含み 得る他の発光体と共に構成される。
[0071] 光源制御部 302は、光源システムの照射光から得た!/、生体作用度に応じて、光源 システムに含まれる各光源あるいは発光体の強度を制御する。その際には、実施例
1で示したような最適化問題の解法を用いて、各光源あるいは発光体の強度バランス
を決定する。各光源や発光体の強度を変える際には、各光源や発光体の特性を図 示しない記憶手段に予め記憶しておき、その特性に従って与える電圧や電流を変化 させることによって行えば良いが、各光源や発光体の実際の特性は、使用環境や経 年変化等に依存して変化し得るため、後述する光特性分析部 303から通知される実 際の照射光の分析結果に従って、随時フィードバック制御を行うような構成としても良 い。また、最適化問題に与える条件としては、後述する条件設定部 304から通知され
[0072] 光特性分析部 303は、光の受光部とその特性の分析手段を含んで構成されるもの であって、前記光源システムからの照射光を受光し、その強度や波長特性等を分析 する。分析結果は、前記光源制御部 302へ通知する。通知される判定結果は、照射 光に含まれる所定の波長間隔ごとの放射束など、光のエネルギー量を示す情報を少 なくとも含み、さらに、照射光の色度座標上の位置 (ベクトル値)および、照射光の色 温度に対応する標準光 (D65など)を基準とした平均演色評価数の値を含んでも良 い。
[0073] 条件設定部 304は、光源システムによる照射光の特性パラメータを規定するもので あって、ユーザが操作する操作部を含んで構成されても良い。規定する照射光の特 性パラメータとしては、光の輝度もしくは所定位置における照度、および光の色温度 もしくは色度、および平均演色評価数、および生体作用度の指標値を含む。これら の特性パラメータは、図示しない記憶手段に予め記憶しておいても良いし、ユーザが 操作部を介して指定しても良い。記憶または指定された特性パラメータは、光源制御 部 302へ通知する。光源制御部 302は、通知された特性パラメータを条件として、前 記最適化問題の解を算出して各光源あるいは発光体の強度バランスを決定する。
[0074] 上記特性パラメータは、次のような考え方に基づいて定めれば良い。例えば、ユー ザが集中して仕事や読書などの作業をしたい場合や朝方すつきり目覚めたいような 場合には、覚醒度を上げることを狙って生体作用度の高!/、特性パラメータを指定もし くは選択し、ユーザ力 Sリラックスして時間を過ごした!/、場合や安眠できるような体の状 態にしたい場合には、逆に生体作用度の低い特性パラメータを指定もしくは選択す ると良い。特性パラメータの指定 ·選択は、ユーザが操作部を介して行っても良いし、
時刻に応じて予め設定されたパラメータが自動的に呼び出されるような構成にしても 良い。
なお、光源システム 301は、その照射光を照明光として用いる目的上、光源および 発光体の周囲もしくは前面に拡散板を設け、その照射光が均一に照射されるように 構成しても良ぐまた、レンズを配置して照射光を集光させ、スポットライトのような使い 方に適した構成としても良い。