明 細 書
回折素子およびこれを備えた光ヘッド装置
技術分野
[0001] 本発明は、光を回折する回折素子およびこの回折素子を備えて CD、 DVDなどの 光記録媒体 (以下「光ディスク」という。)に対して情報の記録または再生を行う光へッ ド装置に関する。
背景技術
[0002] 従来、この種の光ヘッド装置に用いられる回折素子には、レーザ光源の出射光を 主ビームと 2つの副ビームとを含む 3ビームに分割するものがあり、副ビームはトラツキ ングの制御に使用される。この用途では、回折素子は通常はプラスチックやガラスな どの材料を周期的な凹凸形状に加ェされたものであり、凹凸の深さは数百 nm程度 である。ここで例えば、凹凸形状の凹部が空気、凸部がガラスからなる回折素子では 、回折効率の温度依存性は十分に小さく実用上問題にならない。
[0003] 一方、近年複数の発振波長の半導体レーザを一体形成する技術により、 660nm 帯 (DVD用)及び 785nm帯(CD用)の 2波長の半導体レーザを 1パッケージ化した、 V、わゆるツイン LDが製品化されており、ツイン LDを用いた光ヘッド装置にお!/、ては 、各波長のレーザ光の光路の一部を共通化することによって、装置の部品点数を削 減することが期待されている。共通化された光路中で使用することを想定して、回折 効率の波長選択機能を付加した回折素子が提案されている(例えば特開 2004— 34 2295号公報参照)。
[0004] 上記公報によれば、例えばツイン LD用の DVD波長選択回折素子は、周期的な凹 凸形状の凸部が 2つの波長における透過位相を制御するための光学多層膜からなり 、凹部が透明な材料で充填され、回折効率の波長選択性が得られるようになつてい る。この回折素子の場合、凹凸の深さすなわち格子の深さは約 5 πιとなる。
[0005] しかしながら上記公報に示されたものは、格子を形成する凸部が無機材料からなる 光学多層膜によって形成され、かつ凹部が有機材料によって形成される構造である 場合には、凸部と凹部とにおける屈折率の温度変化率が互いに大きく異なるので、
系の温度に依存して回折効率が変化しやすいという課題がある。
発明の開示
[0006] よって本発明の目的は、回折効率の温度依存性を従来のものよりも低減することが できる回折素子およびそれを備えた光ヘッド装置を提供することである。
[0007] なお本明細書において凹部とは回折素子の作製の過程において凹部となる部分 をいう。この凹部は最終的な形態においては、有機材料または無機材料によって充 填され平坦になるので、凹部と凸部の形状上の区別はないが、以下の説明では回折 素子の作製の過程における凹部および凸部を用いて説明する。
[0008] 上記の目的を達成するため、本発明によれば、回折素子であって、
透明基板と、
第 1の透明材料を含む第 1の層と第 2の透明材料を含む第 2の層を有して前記透 明基板の少なくとも一方の主面上に設けられ、互いに平行に第 1方向に延設されると 共に該第 1方向と直交する第 2方向に周期的に配列された複数の凸部を有する格子 部と、
第 3の透明材料を含む第 3の層により、少なくとも前記複数の凸部の間を充填する 充填部とを具備して成り、
前記第 1の透明材料の屈折率の温度変化率を α 、前記第 2の透明材料の屈折
A
率の温度変化率を α 、前記第 3の透明材料の屈折率の温度変化率を α としたとき
B C
に、 α < a < 0かつ I α | > | α |の関係を満足するものが提供される。
A C C B
[0009] この構成により、第 1〜3の透明材料の屈折率の温度変化率の差異を利用して、温 度変化に対する回折効率をほぼ一定に保つことができるので、回折効率の温度依存 性を従来のものよりも低減することができる。
[0010] 前記第 2の層は、光学多層膜としてよい。
[0011] この構成により、光学多層膜が有する回折効率の波長選択性を利用して、所定波 長の光を回折することができ、その回折効率の温度依存性を従来のものよりも低減す ること力 Sでさる。
[0012] 前記第 1の層の厚さは、前記格子部における透過位相差の温度変化量と、前記充 填部における透過位相差の温度変化量とが同一となる厚さとなるように選ばれている
構成としてよい。
[0013] この構成により、回折効率の温度依存性を従来のものよりも低減することができる。
[0014] 本発明によれば、光ヘッド装置であって、
互いに異なる 2つの波長の光を出射する光源と、
前記光源から出射された光を光記録媒体上に集光する対物レンズと、 前記光記録媒体により反射された光を検出する光検出器と、
前記光源と前記対物レンズとの間の光路上に配置された上記の回折素子とを具 備して成るあのあ提供される。
[0015] この構成により、回折素子が温度変化に対する回折効率をほぼ一定に保つので、 本発明の光ヘッド装置は、温度変化が発生した場合であっても安定したトラッキング 制卸を fiうこと力できる。
図面の簡単な説明
[0016] [図 1]本発明の実施形態に係る回折素子の概念的な構成を示す断面図である。
[図 2A]比較例の回折素子における回折効率比の温度特性を示すグラフである。
[図 2B]図 1の回折素子における回折効率比の温度特性を示すグラフである。
[図 2C]図 1の回折素子における回折効率比の温度特性であって、第 1の層の厚さを
[図 3A]図 1の回折素子における第 1の層の厚さが 1. 70 mである場合の、光の波長 に対する回折効率比を示すグラフである。
[図 3B]図 1の回折素子における第 1の層の厚さが 1. 26 mである場合の、光の波長 に対する回折効率比を示すグラフである。
[図 3C]図 1の回折素子における第 1の層の厚さが 1. 05 mである場合の、光の波長 に対する回折効率比を示すグラフである。
[図 4]図 1の回折素子において 1. 70 mを 1に正規化して第 1の層の厚さを変化させ たときの回折効率比の変化率の特性を示すグラフである。
[図 5]図 1の回折素子を備えた光ヘッド装置の概念的な構成を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
[0017] 以下、本発明の実施形態について添付の図面を用いて詳細に説明する。なお本
発明に係る回折素子を、 CDや DVDなどの記録または再生に用いられる光を回折す るものに適用した例を挙げて説明する。
[0018] 先ず図 1を参照しつつ、本実施形態における回折素子の構成について説明する。
[0019] 本実施形態における回折素子 10は、透明性を有する透明基板 1と、光を回折する 回折格子 2と、回折格子 2に対向配置されたカバーガラス基板 3と、回折格子 2とカバ 一ガラス基板 3とを接着する接着層 4と、透明基板 1およびカバーガラス基板 3に設け られた反射防止膜 5とを備えている。なお以下の記載において、透明基板 1からカバ 一ガラス基板 3に向力、う方向を上方向、その逆方向を下方向と定義し、各構成部品 の上方向側にある面を上面、下方向側にある面を下面という。
[0020] 透明基板 1は、例えばガラス、石英ガラス、プラスチック等の基板で構成されている 。なお透明基板 1の表面をフラットに加工することにより透過波面収差を小さくできて 好ましい。
[0021] カバーガラス基板 3は、例えばガラスやプラスチックなどの透明材料で構成され、回 折格子 2の上面に対して一定の間隔で対向配置されている。なおカバーガラス基板 3の表面をフラットに加工することにより透過波面収差を小さくできて好ましい。
[0022] なお透明基板 1の屈折率とカバーガラス基板 3の屈折率とが実質的に一致するよう に、透明基板 1およびカバーガラス基板 3の材料を選択するのが好ましい。
[0023] また、カバーガラス基板 3及び透明基板 1の一方または両方を、他の光学素子と共 用する構成とすることもできる。他の光学素子としては、波長板、本発明とは別の回折 格子、偏光性回折格子、液晶を用いた光学素子などが挙げられる。この構成による 回折素子は、他の光学素子と積層一体化されることにより、光学系の部品点数が減 つて単純化されるので、光ヘッド装置に適用した場合は光学系の調整が容易になる ので好ましい。
[0024] 接着層 4は、回折格子 2の上面とカバーガラス基板 3の下面との間の空間に設けら れている。接着層 4の材料を、カバーガラス基板 3と屈折率の値が近い材料にする事 により、界面反射損失を低減できるので好ましい。なお接着層 4の材料として、後述 する回折格子 2の第 1の層 6を構成する第 1の透明材料を用いてもよい。また、接着 層 4を形成せずに、回折格子 2とカバーガラス基板 3とを直接接合させた構成としても
よぐあるいはまた、カバーガラス基板 3を他の素子の基板と共用する構成としてもよ い。
[0025] 反射防止膜 5は、透明基板 1の下面およびカバーガラス基板 3の上面に、例えば蒸 着法により成膜形成されている。反射防止膜 5を設けることにより、 CDや DVDなどの 記録や再生に用いられる光の界面反射によるロスを抑え、入射光に対する回折光の 強度を高めることができて好ましレ、。なお反射防止膜 5を形成しな!/、構成としてもよ!/ヽ
〇
[0026] 回折格子 2は、第 1の透明材料からなる第 1の層 6と、光学多層膜からなる第 2の層 7と、第 3の透明材料からなる第 3の層 8とを備えている。第 2の層 7は、透明基板 1の 上面に透明基板 1上に成膜された複数の層からなり、更に第 2の層 7の最上層の上 面には第 1の層 6が平行に形成されており、第 1の層 6および第 2の層 7の 2層が全体 として回折格子 2の凸部(格子部)を形成している。一方、回折格子 2の凹部は第 3の 透明材料によって凸部と同じ高さになるよう形成されている(充填部)。すなわち、第 3 の層 8の厚さは、第 1の層 6の厚さと第 2の層 7の厚さとの和である。
[0027] なお以下の説明において、第 1の透明材料および第 3の透明材料の使用波長え における屈折率をそれぞれ n および nとし、第 2の層 7の全体としての屈折率を nと
A C B
する。また第 1、第 2および第 3の透明材料の屈折率の温度変化率をそれぞれ α 、
A
a および a (/°C)とし、第 1の層 6、第 2の層 7および第 3の層 8の厚さをそれぞれ d
B C
、 dおよび dとする。
A B C
[0028] ここで第 2の層 7に垂直に入射し透過して出射する波長 λ iの光に対する透過位相 を Φ (ラジアン)とすると、第 2の層 7の全体としての屈折率 nは(φ - λ ) / (2 π · (1
1 Β 1 1 Β
)と考えること力 sできる。
[0029] 第 1の層 6と、凹部に充填されて形成された第 3の層 8とは、常温(25〜30°C)にお ける両者の屈折率が実質的に一致するように、第 1の透明材料および第 3の透明材 料を選択する。本実施形態においては、 n =n = 1. 534である。
A C
[0030] 第 1の透明材料および第 3の透明材料は、固体または液体からなり、無機材料でも 有機材料でもよぐ例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、含フッ素芳香族ポリマー材料 などが用いられる。 α 、 および α の間に、 α < α < 0かつ | α | > | α |
A B C A C C B
の関係が成り立つように、第 1の透明材料および第 3の透明材料を選択することにより 、温度変化に対する回折効率の変化を小さく抑えることができる。本実施形態におい ては、第 1の透明材料としてアクリル系ポリマー、第 3の透明材料として含フッ素芳香 族ポリマーを用いて説明する力 S、本発明はこれに限定されるものではない。なお第 1 の透明材料および第 3の透明材料の形成方法としては、例えば液状の場合はスピン コート後に硬化処理を行う成膜方法が挙げられる。また、第 1の透明材料として重合 性アクリル樹脂を用いて、各第 3の層 8の間の第 2の層 7の上部を充填するとともに第 3の層 8の上面も被覆して重合させ、第 1の透明材料により接着層 4を形成して、回折 格子 2とカバーガラス基板 3とを接着した構成としてもよい。
[0031] 第 2の層 7の材料としては SiO 、 SiON、 ZrO 、 Ta O 、 Nb O 、 TiO 、 Al Oなど
2 2 2 5 2 5 2 2 3 の無機物材料を用いることができる。第 2の層 7の形成方法としては、真空蒸着法、ス ノ クタリング法などを挙げることができる。
[0032] 次に、第 2の層 7の具体的な構成について設計例を表 1に示す。なお表中の「層」 は透明基板 1の上面からの積層順を示し、透明基板 1の上面に最も近い層を第 1層と している。本設計例は、低屈折材料に SiO薄膜 (屈折率 1. 469)、高屈折率材料に
2
Ta O薄膜(屈折率 2. 172)を用いた 41層、総厚さ 4978nmの光学多層膜である。
2 5
透過光の透過位相の変調から前述のように求めた、波長 λ の光に対するこの光学 多層膜の屈折率 ηは 1. 518である。
Β
[0033] [表 1]
ZlL690/L00Zd£/13d L 989W0/800Z OAV
波長 λ の光が入射すると、回折格子 2の凸部と凹部との間に屈折率の
差による透過位相差が生じ、回折格子 2は、 1次の回折効率が約 5. 4%、 0次の回折 効率 (透過光の透過率)が約 86. 4%、回折効率比(0次 /1次)が約 16の回折格子 として機能する。一方、波長え (785nm)の光に対しては 1次の回折効率は、わずか
2
に 0. 4%程度となり、回折格子 2は、波長え の光をほぼ全透過させる回折格子とし
2
て機能する。
[0034] 次に、系の温度が上昇したときの回折効率について説明する。第 1の層 6および第
3の層 8は、常温における屈折率はともに約 1. 534である力 常温から 80°Cまで温度 が上昇するときの屈折率の温度変化率が異なる。本実施形態において用いたアタリ ノレ系ポリマー、含フッ素芳香族ポリマーの屈折率の温度変化係数はそれぞれ 4 X 10_4 (/°C)、—1 X 10— 4 (/°C)である。また、第 2の層 7の屈折率の温度変化率の 絶対値は、第 1の層 6および第 3の層 8に対して十分小さいので、ここでは略ゼロとし て説明する。
[0035] 上記の温度範囲で系の温度が上昇するとき、波長え の光の回折効率がほぼ一定 に保たれるようにするためには、第 1の層 6および第 2の層 7からなる回折格子 2の凸 部における透過位相差の温度変化量と、第 3の層 8からなる回折格子 2の凹部にお ける透過位相差の温度変化量とが同一であればよい。したがって、 a X d + α X
A A B
d = a X (d + d )となるように、 d を設定すればよい。本実施形態においては、 d
B C A B A A
= 1. 7 mとなる。この構成により、本実施形態における回折素子 10は、波長 の 光に対し、常温から 80°Cまでの範囲において回折効率をほぼ一定に保つことができ る。なお前述の「同一」とは、凸部および凹部における透過位相差の温度変化量が 完全に一致することのみを限定していうものではなぐ使用上ほぼ同一と見なせれば よい。
[0036] また、実際の光ヘッド装置における温度上昇を考慮して、次のように回折効率の温 度変化をさらに低減することができる。すなわち、光ヘッド装置の光源として用いられ る半導体レーザの発振波長は、系の温度上昇に伴って長波長側にシフトする特性が ある。系の温度上昇によるレーザ発振波長が 0. 2nm/°Cの割合でシフトすると、常 温で波長 660nmのレーザ発振波長は、 80°Cでは約 670nmにシフトする。
[0037] 一方、上述の構成の回折格子は回折効率の波長依存性を有し、波長 λ iより長波 長ほど 0次回折光 /1次回折光の強度比である回折効率比が低下する。そのため、 波長 λ の光に対する回折格子の回折効率が温度変化に対して一定に保たれても、 入射光の波長がシフトすると、回折効率比が低下する。
[0038] そこで、 a X d + a X d = a X (d + d )を満たす d に対し、更に光ヘッド装置
A A B B C A B A
において温度が変化したときにシフトしたレーザ発振波長に対して同等の回折効率 比が得られるよう dを微調整する。すなわちこの目的では、後述するように常温で前
A
述の式を満足する d の値に対して約 60〜約 90%とした値とすることが好ましい。そ
A
の結果、光源から出射された光に対する回折効率比を、系の温度に関わらず一定と することができて好ましい。なお d の微調整に代えて α を微調整してもよい。また、 d
A A
および《 の少なくとも一方を微調整することとしてもよい。
A A
[0039] 次に、本発明に係る回折素子 10の具体的な製造方法について、図 1を参照しなが ら詳細に説明する。なお以下に記載する材料や製法は一例であり、本発明はこれら に限定されるものではない。
[0040] 本実施形態における回折素子 10では、反応性スパッタリング法により、表 1に示し た光学多層膜を透明基板 1上に成膜する。その後、フォトリソグラフィおよびドライエツ チングの技術を用いて、光学多層膜からなり、周期的かつ互いに平行に形成された 一方向に伸張する凸部を設ける。その結果生じた凹凸構造の周期は、回折格子 2の 格子ピッチに相当し、本実施形態では 20 m、デューティは 0. 5としている。また、ド ライエッチングは透明基板 1の表面が露出した段階で止めて、ほぼ光学多層膜のみ で凹凸形状を構成するようにする。この工程により第 2の層 7が形成される。
[0041] 次いで、第 2の層 7の上面に、第 3の透明材料である含フッ素芳香族ポリマー材料 をスピンコート法により塗布し、焼成して凹部を充填する。このとき、凹部を充填する のみではなぐ凸部の上面をさらに 3 mの厚みで覆って全体が平坦となるよう被覆 する。
[0042] 続いて、第 2の層 7の上面全体を被覆している第 3の透明材料の表面を、フォトリソ グラフィおよびドライエッチングの技術により加工し、第 2の層 7上の第 3の透明材料を 除去する。その後、第 3の透明材料が除去された凹みを充填するとともに第 3の透明
材料上を覆うように第 1の透明材料を塗布し、カバーガラス基板 3を積層した後、固化 させて接着する。この工程により第 1の層 6および第 3の層 8が形成される。
[0043] そして、透明基板 1の下面およびカバーガラス基板 3の上面に、使用波長における 反射防止膜 5を形成することにより、回折素子 10が得られる。
[0044] 次に、本実施形態における回折素子 10の回折効率比の温度特性について図 2A 〜2Cを用いて説明する。
[0045] これらの図において、黒丸印は、各例の回折格子の波長 660nmの光に対する回 折効率比の温度特性比を、黒三角印は、それぞれの回折格子の波長 670nmの光 に対する回折効率比の温度特性を、白丸印は、各温度での光の波長を、 25°Cから の温度差に応じて 0. 2nm/°C長波長側にシフトさせた波長としたときの、各例の回 折格子の回折効率比の温度特性を示す。
[0046] 図 2Aに示す温度特性は、本発明の回折素子における回折効率比の温度特性を 説明するための比較例のものであり、第 1の層を形成していない。本例では、温度が 常温から 80°Cまで上昇したときに、光の波長が 660nmで一定の場合には回折効率 匕力 18力、ら 36へと 100%増カロし、光の波長力温度上昇とともに 660nm力、ら 670nm にシフトした場合には 18から 22へと 22%増加し、大きな回折効率比の変化が生じる
〇
[0047] 図 2Bに示す温度特性は、本発明の回折素子 10のものであり、光の波長が 660nm で一定の場合には回折効率比が 15. 9から 16. 0へと変化幅が 1 %以下であって実 質白勺に変ィ匕 (まなく、光の波長力 660nm力、ら 670nmにシフトした場合でも 15· 9力、ら 1 3. 5へと 15%の減少に抑えられる。
[0048] 図 2Cに示す温度特性は、本発明の回折素子 10のものであって、且つ後述するよう に系の温度上昇を考慮して第 1の層の厚さを調整したものであり、光の波長が 660η mで一定の場合には回折効率比が 14. 9力、ら 17. 5へと + 17%変化し、図 2Bの例 に比べて変化幅は大きくなる力 変化幅は 20%以下に抑えられる。一方、温度上昇 とともに光の波長が 660nmから 670nmにシフトした場合には変化幅は 1 %以下と実 質的に変化しない。
[0049] 図 2Bに示したように、本発明の回折素子 10によれば、回折格子 2は、第 1の透明
材料からなる第 1の層 6と、光学多層膜からなる第 2の層 7と、第 3の透明材料からなる 第 3の層 8とを備え、第 1、第 2および第 3の透明材料の屈折率の温度変化率をそれ ぞれ α 、 a および α としたときに、 α < α < 0かつ | α | > | α |である構
A B C A C C B
成としたので、第 1、第 2および第 3の透明材料の屈折率の温度変化率の差異を利用 して、温度変化に対する回折効率をほぼ一定に保つことができ、回折効率の温度依 存性を従来のものよりも低減することができる。
[0050] また図 2Cに示したように、第 1の層 6の厚さ dを調整することにより、回折効率の温
A
度特性を容易に補正し、温度により波長がシフトしても回折効率比を一定とすること が可能である。
[0051] 具体的に、第 1の層 6の厚さ dを変化させたときの回折効率比の変化のシミュレ一
A
シヨン結果を図 3A〜3Cに示す。これらの図は d がそれぞれ異なる寸法において、
A
温度 25°Cで 660nmの波長の光に対して回折効率比(0次 /1次)が 16となるように 設計したものである。回折効率比は系の温度変化に対して一定であることが要求さ れ、 25〜80°Cの温度範囲内で回折効率比の変化幅が ± 10 %以内であれば光ディ スクへ到達する光量も安定するので好ましい。図 3Aは、第 1の層 6に使用する材料の 温度変化係数 α の特性を考慮して d = 1. 70 としたときの波長に対する回折
A A
効率比の変化を表すグラフであり、温度変化に関わらず同じ波長の光で同程度の回 折効率比が得られるようにしたものである。図 3Aでは、例えば光の波長が 660nmで 一定であれば回折効率比も一定ではある力 系の温度上昇によって 80°Cとなって光 の波長が約 671nmと長波長側にシフトすると、回折効率比の変化は約— 18 %となる
〇
[0052] 図 3Bは、第 1の層 6の厚さ d = 1. 26 mとしたときの波長に対する回折効率比の
A
変化を表すグラフである。図 3Bでは、系の温度上昇によって 80°Cとなって光の波長 力 S671nmと長波長側にシフトしても回折効率比は 16であるので、回折効率比の変 化は 0%と一定となる。図 3Cは、第 1の層 6の厚さ d = 1. 05 mとしたときの波長に
A
対する回折効率比の変化を表すグラフである。図 3Cでは、系の温度上昇によって 8 0°Cとなって光の波長が約 671nmと長波長側にシフトすると、回折効率比の変化は 約 + 10 %となる。
[0053] このように、第 1の層 6の厚さを一定の温度および一定の光の波長で回折効率比が 略等しい d = 1. 70 mに対して小さい厚さに設定することで、光の波長が長波長
A
側にシフトした場合の回折効率比の変化を低減させることができ、系の温度変化に 対して安定した回折効率比を得ることができる。図 4に d の値を変化させたときの回
A
折効率比の変化率を示したシミュレーション結果のグラフを示す。横軸に d の値を 1
A
. 70 mを基準に正規化した数値を示し、縦軸には波長が 660nm〜671nm (25°C 〜80°C)における回折効率比の変化率を示すものである。図 4より、回折効率比の変 化率が ± 10%以内を満たすためには、 d = 1. 70 mに対する厚さの比率力 S
A 、 0. 6
2〜0. 88の範囲であり、約 0. 6〜約 0. 9の厚さの比率であると安定した回折効率比 が得られ好ましいことが判る。
[0054] このように系の温度変化によって長波長側にシフトする光の波長を考慮して回折効 率比を調整することができるので、本実施形態における回折素子 10は、例えば光へ ッド装置において 3ビームを発生させる回折素子として好ましく用いることができる。
[0055] 次に本実施形態における回折素子 10を光ヘッド装置に適用した場合について図 5 を参照しつつ説明する。
[0056] 図 5に示すように、本実施形態における光ヘッド装置 20は、互いに異なる波長のレ 一ザ光線を出射する光源 21と、入射光を回折する回折素子 10と、入射光を光デイス ク 25または光検出器 26に導くビームスプリッタ 22と、入射光を平行光に変換するコリ メータレンズ 23と、光ディスク 25に集光する対物レンズ 24と、光ディスク 25からの再 生光を検出する光検出器 26とを備えて!/、る。
[0057] 光源 21は、例えば、 DVD用の波長え (660nm)および CD用の波長え (785nm
1 2
)の光を出射する 2波長光発振半導体レーザで構成されて!/、る。
[0058] 回折素子 10は、前述の図 2Bの温度特性を有する構成であり、波長え のレーザ光 を回折せず透過した光(0次回折光)と、波長え のレーザ光を回折した光(± 1次回 折光)とを含む 3ビームをビームスプリッタ 22に出力するようになっている。なお回折 素子 10の配置場所としては、図 5に示された位置に限定されず、光源 21と対物レン ズ 24との間の光路中に配置してあればよい。
[0059] ビームスプリッタ 22は、透光性を有する材料、例えばガラスやプラスチックなどで構
成され、回折素子 10からの 3ビーム光を透過し、光ディスク 25からの再生光を反射す る反射面を備えている。
[0060] コリメータレンズ 23は、透光性を有する材料、例えばガラスやプラスチックなどで構 成され、入射されたレーザ光を平行光に変換するようになっている。
[0061] 対物レンズ 24は、例えば所定の NA (開口数)を有するプラスチック製のレンズで構 成され、入射された光を光ディスク 25の記録層に集光し、記録層からの反射光を捕 捉するようになっている。
[0062] 光検出器 26は、例えばレンズやフォトダイオードなどを含み、ビームスプリッタ 22の 反射面によって反射された光ディスク 25からの再生光を電気信号に変換するように なっている。
[0063] 本実施形態における光ヘッド装置 20は、前述のように構成されているので以下のよ うに動作する。すなわち、光源 21によって、波長え 、 λ の光が回折素子 10に出射
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され、回折素子 10によって波長え の光が主ビームと 2つの副ビームを含む 3ビーム に分割される。波長え の光は、回折素子 10によって回折されず直進透過される。こ
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の 3ビームの光は、ビームスプリッタ 22、コリメータレンズ 23を透過し、対物レンズ 24 により光記録媒体である光ディスク 25に集光される。光ディスク 25によって反射され た光は、対物レンズ 24、コリメータレンズ 23の順に戻り、ビームスプリッタ 22の反射面 で反射されて光検出器 26によって検出される。検出された波長え の副ビームはトラ ッキングの制御に使用される。
[0064] 上記の光ヘッド装置 20によれば、波長 λ の光に対し、回折効率の温度依存性を 従来のものよりも低減することができる本発明の回折素子 10を備えるので、温度変化 が発生した場合であっても安定したトラッキング制御を行うことができる。
産業上の利用可能性
[0065] 以上のように、本発明に係る回折素子は、回折効率の温度依存性を従来のものより も低減することができるという効果を有し、光を回折する回折素子およびこの回折素 子を備えて光ディスクに対して記録または再生を行う光ヘッド装置等として有用であ