JP2010153039A - 3波長用回折素子、位相板付3波長用回折素子および光ヘッド装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】光ヘッド装置で用いられる3波長帯のレーザ光に対して、適切な回折効率および回折方向が得られる回折素子を得て、この素子を搭載して前記機能を有しながら光ヘッド装置の小型化、軽量化を図る。
【解決手段】3波長λ1、λ2およびλ3が入射する回折素子は2つの回折格子からなり、該回折格子は2つの異なる樹脂が接していて周期的な凹凸状をなし、凸部4、5は複屈折性の樹脂からなり、凹部6、7は光学的等方性の樹脂からなり、第1の回折格子は波長λ1の光を回折すると共に、波長λ2およびλ3の光を透過し、第2の回折格子は波長λ1の光を透過すると共に、λ3の光を回折する素子として、光ヘッド装置に搭載する。
【選択図】図1
【解決手段】3波長λ1、λ2およびλ3が入射する回折素子は2つの回折格子からなり、該回折格子は2つの異なる樹脂が接していて周期的な凹凸状をなし、凸部4、5は複屈折性の樹脂からなり、凹部6、7は光学的等方性の樹脂からなり、第1の回折格子は波長λ1の光を回折すると共に、波長λ2およびλ3の光を透過し、第2の回折格子は波長λ1の光を透過すると共に、λ3の光を回折する素子として、光ヘッド装置に搭載する。
【選択図】図1
Description
本発明は、3波長用回折素子、位相板付3波長用回折素子および光ヘッド装置に関するものである
BD(Blu−rayあるいはHD−DVDを代表とする青紫色半導体レーザで再生および/または記録する次世代DVD)、DVD、CD等の異なる規格の光記録媒体の情報の再生および/または記録(以下、「再生および/または記録」を「再生・記録」と略記。)する互換光ヘッド装置において、装置の小型、軽量化の開発が盛んに行なわれている。
規格が異なるBD、DVDおよびCDでは、その再生・記録に用いられるレーザ光の波長が異なる。BDでは405nm波長帯、DVDでは660nm波長帯、CDでは780nm波長帯のレーザ光が用いられる。これら異なる規格の光記録媒体を交換して使用する互換光ヘッド装置を小型、軽量化するために、上述の3つの波長帯のレーザ光を出力する3波長半導体レーザが開発されている。
3波長半導体レーザを用いることで、レンズ、回折素子等の光学部品を共有化して、光ヘッド装置内の部品点数の削減が期待されている。通常、回折素子は、周期的な凹凸の断面形状からなる回折格子を有するガラスやプラスチックで形成されており、その回折効率はその凹凸の深さおよび材質の屈折率によって決まる。すなわち、BD、DVDおよびCD用の波長帯のレーザ光、それぞれに対し回折効率を自由に制御することができない。さらに、BD、DVDおよびCD用のそれぞれの波長帯のレーザ光に対し最適な回折方向を得るために複数の回折格子を形成することもできるが、前述のとおり回折効率を自由に制御できないため、回折素子の共有化を難しくしている。
3つの波長帯のレーザ光に対して、設計自由度が高くかつ最適な回折効率および回折方向が得られる、すなわち、波長選択的に回折を利用できる回折素子が望まれている。たとえば、660nm波長帯および780nm波長帯のレーザ光を出力する2波長半導体レーザを使う互換光ヘッド装置において、DVDおよびCDの波長帯のレーザ光に用いる回折素子は提案されているが(特許文献1)、さらに405nm波長帯のレーザ光にも対応できる回折素子の提案は数少ない。
本発明は、3波長半導体レーザを用いた互換光ヘッド装置において、従来の回折素子では波長選択性がないため素子の共有化ができず、互換光ヘッド装置の小型化、軽量化に不利であるという課題を解決するためになされたものある。
すなわち、互換光ヘッド装置で用いられる3波長帯のレーザ光それぞれに対して、適切な回折効率および回折方向が得られる回折素子を得て、さらには位相変化と前記回折効果とを合わせ持った位相板付回折素子を得て、これら素子を搭載して前記機能を有しながら互換光ヘッド装置の小型化、軽量化を図るためになされたものである。
本発明は、3つの異なる波長λ1、λ2およびλ3(λ1<λ2<λ3)の入射光が別々に入射して用いられる、少なくとも2つの積層された回折格子を備えた3波長用回折素子において、3波長用回折素子が有する2つの回折格子は、それぞれ2つの異なる樹脂が接していてその断面形状が周期的な凹凸状をなしており、凹凸状の凸部は複屈折性を示す樹脂からなり、凹凸状の少なくとも凸部間は充填された光学的等方性の樹脂からなっていて、2つの回折格子のうち、第1の回折格子は波長λ1の入射光を回折するとともに、波長λ2および波長λ3の入射光を透過し、第2の回折格子は波長λ1の入射光を透過するとともに、波長λ3の入射光を回折するように凸部の屈折率および/または高さ、並びに光学的等方性の樹脂の屈折率が調整されていることを特徴とする3波長用回折素子を提供する。
この構成により、本発明の3波長用回折素子は、偏光方向が互いに直交しており、本素子に入射する波長λ1の光および波長λ3の光それぞれに対して、選択的に透過および回折を制御することができる。
また、前記3波長用回折素子の1つ面に、無機材料からなる周期的な凹凸部または凸部を有する第3の回折格子がさらに形成され、波長λ1および波長λ3の入射光を透過するとともに波長λ2の入射光を回折するように無機材料の凸部の屈折率および/または高さが調整され、かつ前記第2の回折格子が波長λ2の入射光を透過するように構成されている上記の3波長用回折素子を提供する。
この構成により、本発明の3波長用回折素子は、本素子に入射する波長λ1の光および波長λ2の光、波長λ3の光であって、波長λ1の光と波長λ2の光の偏光方向が直交し、波長λ2の光と波長λ3の光が平行であるとき、それぞれの波長の光に対して、選択的に透過および回折を制御することができる。
また、2枚の位相板が上記の3波長用回折素子を挟むように積層されており、前記位相板としてそれぞれ、波長λ1の光に対して2πの位相差を有し、波長λ2の光に対して略πの位相差を有し、かつ波長λ3の光に対して略πの位相差を有する位相板付3波長用回折素子を提供する。
この構成により、本発明の位相板付3波長用回折素子は、偏光方向が互いに平行であり、本素子に入射する波長λ1の光および波長λ3の光それぞれに対して、選択的に透過および回折を制御することができる。
また、前記2枚の位相板のうち一方の位相板の側に、無機材料からなる周期的な凹凸部または凸部を有する第3の回折格子がさらに形成され、波長λ1および波長λ3の入射光を透過するとともに波長λ2の入射光を回折するように無機材料の凸部の屈折率および/または高さが調整されている上記の位相板付3波長用回折素子を提供する。
この構成により、本発明の位相板付3波長用回折素子は、偏光方向が平行であり、本素子に入射する波長λ1の光および波長λ2の光、波長λ3の光に対して、選択的に透過および回折を制御することができる。
さらに、3つの異なる波長λ1、λ2およびλ3の光を出射する光源と、それぞれの波長の光を光記録媒体に集光する対物レンズと、集光されて光記録媒体により反射された光を検出する光検出器とを備え、光記録媒体の情報の再生および/または記録を行なう光ヘッド装置において、光源と対物レンズとの間の光路中に、上記の3波長用回折素子、あるいは上記の位相板付3波長用回折素子のいずれかが設置されていることを特徴とする光ヘッド装置を提供する。
この構成により、本発明の光ヘッド装置は、ひとつの素子でありながら、3つの異なる波長の光に対して選択的に回折することができるので、光ヘッド装置の部品点数を減らすことができ、光ヘッド装置を小型軽量化をすることができる。
本発明の3波長用回折素子は、回折効率および回折方向を素子に入射するレーザ光の波長に応じて選択的に制御ができる、すなわち波長選択的回折効果を有する。
本発明の位相板付3波長用回折素子は、上記の波長選択的回折効果に加えて位相制御の効果も合わせもつ小型の回折素子となる。
また本発明の光ヘッド装置は、上記の3波長用回折素子または位相板付3波長用回折素子を搭載しているため、これらの効果を有しながら装置の小型化、軽量化を図ることができる。
「第1実施形態」
図1は、本発明の第1実施形態に係る3波長用回折素子の構成を示す断面図であり、3波長用回折素子は2つの回折格子を有しており、それぞれの回折格子は2つの異なる樹脂が接していてその断面形状が周期的な凹凸状をなしており、凹凸状の凸部は複屈折性を示す樹脂からなり、凹凸状の少なくとも凸部間(凹部)は充填された光学的等方性の樹脂からなる構成を有している。本構成では第1,第2および第3の3枚の透明基板を有し、第1と第2の透明基板間、第2と第3の透明基板間で2つの異なる樹脂が接していてその断面形状が周期的な凹凸状をなしており、光学的等方性の樹脂として充填接着剤などが用いられている。
図1は、本発明の第1実施形態に係る3波長用回折素子の構成を示す断面図であり、3波長用回折素子は2つの回折格子を有しており、それぞれの回折格子は2つの異なる樹脂が接していてその断面形状が周期的な凹凸状をなしており、凹凸状の凸部は複屈折性を示す樹脂からなり、凹凸状の少なくとも凸部間(凹部)は充填された光学的等方性の樹脂からなる構成を有している。本構成では第1,第2および第3の3枚の透明基板を有し、第1と第2の透明基板間、第2と第3の透明基板間で2つの異なる樹脂が接していてその断面形状が周期的な凹凸状をなしており、光学的等方性の樹脂として充填接着剤などが用いられている。
なお、少なくとも凸部間(凹部)が充填されているとは、凸部間を充填しているかまたは凸部間を充填したうえにさらに凸部を完全に埋め尽くすということを意味する。
第1の透明基板1、第2の透明基板2、第3の透明基板3としては、ガラス、石英ガラス、プラスチックなどの透明材料基板を使用できる。また、第1の透明基板1と第3の透明基板3の空気側の表面に、反射防止膜を成膜することで、前記回折素子を透過するレーザ光の不要な反射を防ぐことができて好ましい。
第1の凸部4、第2の凸部5の材料である複屈折性の樹脂としては、高分子液晶などを用いることができる。凸部の形成方法としては、例えばネマチック液晶などの液晶モノマーを第1の透明基板1、第2の透明基板2上に均一に塗布し、UV光を照射して高分子化させた後、フォトリソグラフィとエッチングなどの技術を用いて、断面が凹凸状になるように加工すればよい。
そして、第1の凸部4と充填接着剤6が第1の回折格子の構成要素となり、第2の凸部5と充填接着剤7が第2の回折格子の構成要素となっていて、2つの回折格子が透明基板2を挟んで積層されて3波長用回折素子が形成される。この3波長用回折素子には、異なる3つの波長λ1、λ2およびλ3の光が入射して用いられるが、第1の回折格子は波長λ1の入射光を回折するとともに、波長λ2および波長λ3の入射光を透過し、第2の回折格子は波長λ1の入射光を透過するとともに、波長λ3の入射光を回折する構成となっている。以下、凸部は高分子液晶からなるとして説明する。
第1の回折格子を構成する充填接着剤6としては、その屈折率が、例えば、回折格子を透過する波長λ3に対する第1の凸部4の材料である高分子液晶の常光屈折率と略同じものを選択する。一方、第2の回折格子を構成する充填接着剤7としては、その屈折率が、例えば、回折格子を透過する波長λ1に対する第2の凸部5の材料である高分子液晶の常光屈折率と略同じものを選択する。
さらに、高分子液晶からなる第1の凸部4の異常光屈折率の軸方向と高分子液晶からなる第2の凸部5の異常光屈折率の軸方向とが直交するように、第1の回折格子と第2の回折格子が積層される。
このとき、第1の凸部4の異常光屈折率の軸方向に、波長λ1のレーザ光が偏光方向を有する直線偏光であるとすると、波長λ1のレーザ光が、3波長用回折素子を透過する際、第1の回折格子によって回折し、第2の回折格子では回折せず透過するようできる。一方、波長λ1のレーザ光の偏光方向と波長λ3のレーザ光の偏光方向が直交するとすると、波長λ3のレーザ光が、該3波長用回折素子を透過する際、第1の回折格子によって回折せず、第2の回折格子では回折する。
上述のように、第1実施形態の回折素子によると、前記2つの回折格子の偏光依存性を利用して、波長選択的に回折を制御することができる。
なお、凸部の材料である高分子液晶の異常光屈折率と、充填接着剤の屈折率を考慮して、第1の凸部4、第2の凸部5の高さを適当に決めることで、該3波長用回折素子を透過するレーザ光の波長に対し、それぞれ所望の回折効率を得ることができる。
第1実施形態の3波長用回折素子は、規格が異なるBD、DVDおよびCDの再生・記録を行なう互換光ヘッド装置であって、波長λ1のレーザ光としてBD用の405nm波長帯、波長λ2のレーザ光としてDVD用の660nm波長帯、波長λ3のレーザ光としてCD用の780nm波長帯のレーザ光を出力する3波長半導体レーザを搭載した互換光ヘッド装置において、BDおよびCDのトラッキング用の3ビームを得るための回折素子として利用できる。一方、DVDにおいては、RAM規格の再生・記録をしない場合、3ビームを用いずにトラッキングできるため、該3波長用回折素子の2つの回折格子により回折する光を必要とせず、直進透過するレーザ光のみ利用すればよい。
第1実施形態の3波長用回折素子において、波長λ1のBD用のレーザ光に対して、第2の回折格子は不要な光としての回折光を発生しない、一方、波長λ3のCD用のレーザ光に対しては、第1の回折格子は、不要な光としての回折光を発生しない。すなわち、互換光ヘッド装置において、ノイズとなる不要な回折光を発生することがないので、良好な再生・記録特性を得ることができる。
また、第1実施形態の3波長用回折素子は、BDおよびCD用の波長のレーザ光それぞれに対し、回折効率および回折方向をそれぞれ自由度高く設計でき、一つの素子でありながら、回折効果を波長選択的に利用できるので、小型、軽量化が要望されている3波長半導体レーザを搭載した互換光ヘッド装置を実現できる。
ここで、互換光ヘッド装置として、DVD用の660nm波長帯、CD用の780nm波長帯のレーザ光を出力する2波長半導体レーザと、BD用の405nm波長帯のレーザ光を出力する半導体レーザとの2つを搭載して、BD、DVDおよびCDの再生・記録を行なう互換光ヘッド装置においても、後述する第3実施形態の3波長用回折素子を搭載してもよく、この場合、3つの波長のレーザ光が共通に通る位置に、該3波長用回折素子を設置することで上述と同じ機能を発現させることができる。
「第2実施形態」
図3は、本発明の第2実施形態に係る3波長用回折素子の構成を示す断面図であり、第1実施形態における3波長用回折素子の一方の面に無機材料からなる周期的な凸部を有する第3の回折格子がさらに形成され、かつ第1実施形態における3波長用回折素子のうち第2の回折格子が波長λ2の入射光を透過する3波長用回折素子となっている。ここで、第3の回折格子は、無機材料が周期的な凸部となっていてもよいが、無機材料が周期的な凹凸部すなわち谷底で連続的に繋がっていてもよい。第1実施形態に係る3波長用回折素子の部分の構成は、その説明を省略する。
図3は、本発明の第2実施形態に係る3波長用回折素子の構成を示す断面図であり、第1実施形態における3波長用回折素子の一方の面に無機材料からなる周期的な凸部を有する第3の回折格子がさらに形成され、かつ第1実施形態における3波長用回折素子のうち第2の回折格子が波長λ2の入射光を透過する3波長用回折素子となっている。ここで、第3の回折格子は、無機材料が周期的な凸部となっていてもよいが、無機材料が周期的な凹凸部すなわち谷底で連続的に繋がっていてもよい。第1実施形態に係る3波長用回折素子の部分の構成は、その説明を省略する。
第1実施形態と同様に、凸部は高分子液晶からなり、凸部間を充填する材料は光学的等方性の樹脂である充填接着剤であるとして説明する。
本構成においても3枚の透明基板13、14および15を有し、第1の透明基板13、第2の透明基板14、第3の透明基板15としては、ガラス、石英ガラス、プラスチックなどを使用できる。また、第1の透明基板13の表面に、反射防止膜を成膜することで、該3波長用回折素子を透過するレーザ光の不要な反射を防ぐことができる。第3の透明基板15の表面には無機材料からなる第3の凸部18が形成されており、その表面に、反射防止膜を成膜することで、該3波長用回折素子を透過するレーザ光の不要な反射を防ぐことができる。
ここで、第2の凸部17の高さは、該3波長用回折素子を透過する波長λ2のレーザ光に対する高分子液晶の異常光屈折率と充填接着剤20の屈折率との差と、凸部17の高さとの積が、波長λ2の整数倍、例えば1倍になるように選択する。第2の凸部17と充填接着剤20を構成要素として含む回折格子を第2の回折格子という。
一方、第1の凸部16の高さは、第1の凸部16と第1の充填接着剤19とを構成要素として含む回折格子(これを第1の回折格子という)において、該3波長用回折素子を透過する波長λ1のレーザ光に対し所望の回折効率を得るように選択される。
第3の凸部18の材料である無機材料として、SiO2(石英)を選択するのが、成膜あるいはエッチングによる加工が容易であるので望ましい。特に、第3の透明基板15として石英ガラスを選んだ場合、SiO2膜を成膜しなくてもよく好ましい。ただし、用途によって、少なくとも波長380nm〜波長820nmの間で略無色透明であるTa2O5、SiON等を使用してもよい。ここで、第3の凸部18の高さは、該3波長用回折素子を透過する波長λ1のレーザ光に対する凸部18の屈折率と空気の屈折率との差と、その高さの積が、波長λ1の整数倍、例えば2倍になるように選択する。
また、充填接着剤19としては、その屈折率が、該3波長用回折素子を透過する波長λ3に対する第1の凸部16の材料である高分子液晶の常光屈折率と略同じものを選択する。一方、充填接着剤20としては、その屈折率が、該3波長用回折素子を透過する波長λ1に対する第2の凸部17の材料である高分子液晶の常光屈折率と略同じものを選択する。
さらに、高分子液晶からなる第1の凸部16の異常光屈折率の軸方向と、高分子液晶からなる第2の凸部17の異常光屈折率の軸方向とが直交するように第1の回折格子と第2の回折格子が積層される。
このとき、第1の凸部16の異常光屈折率の軸方向に、波長λ1のレーザ光が偏光方向を有する直線偏光であるとすると、波長λ1のレーザ光が、該3波長用回折素子を透過する際、第1の回折格子によって回折し、第2の回折格子では回折せず透過し、第3の凸部18と空気による第3の回折格子で回折しないようできる。
一方、波長λ1のレーザ光の偏光方向と波長λ2のレーザ光の偏光方向とが直交するとすると、波長λ2のレーザ光が、該3波長回折素子を透過する際、第1の回折格子と、第2の回折格子では回折せず、第3の回折格子で回折する。
一方、波長λ1のレーザ光の偏光方向と波長λ3のレーザ光の偏光方向とが直交するとすると、波長λ3のレーザ光が、該3波長用回折素子を透過する際、第1の回折格子で回折せず、第2の回折格子では回折するようにできる。なお、第3の回折格子では、波長λ3が波長λ1の略2倍であるとき、波長λ1は回折しないので波長λ3はほとんど回折しない。
第2実施形態の3波長用回折素子は、規格が異なるBD、DVDおよびCDの再生・記録を行なう互換光ヘッド装置であって、波長λ1のレーザ光としてBD用の405nm波長帯、DVD用の660nm波長帯、波長λ2のレーザ光としてCD用の780nm波長帯のレーザ光を出力する3波長半導体レーザを搭載した互換光ヘッド装置において、BD、DVDおよびCDのトラッキング用の3ビームを得るための回折素子として利用できる。
第2実施形態の3波長用回折素子において、波長λ1のBD用のレーザ光に対して、第2の回折格子と、第3回折格子とは、不要な光としての回折光を発生しない、一方、波長λ2のDVD用のレーザ光に対して、第1の回折格子と、第2の回折格子とは、不要な光としての回折光を発生しない。他方、波長λ3のCD用のレーザ光に対して、第1の回折格子では回折せず、第3の回折格子においても、CD用の波長λ3がBD用の波長λ1の略2倍となるので、不要な光としての回折光をほとんど発生しない。
すなわち、互換光ヘッド装置において、ノイズとなる不要な回折光を発生することがないので、良好な再生・記録特性を得ることができ、一つの素子でありながら、回折効果を波長選択的に利用できるので、小型、軽量化を要望されている3波長半導体レーザを搭載した互換光ヘッド装置を実現できる。
また、第2実施形態の3波長用回折素子は、BD、DVDおよびCD用の波長のレーザ光それぞれに対し、回折効率、回折方向をそれぞれ自由度高く設計できる。
また、第1施形態の3波長用回折素子に比べ、BD、DVDおよびCD用のレーザ光それぞれに対する回折効率の設計自由度が少なくなっているが、DVD−RAM規格の再生・記録に対応することができる。
「第3実施形態」
図5は、本発明の第3実施形態に係る回折素子の構成を示す断面図であり、第1実施形態の3波長用回折素子を挟むように2枚の位相板が積層されている位相板付3波長用回折素子である。第1実施形態に係る3波長用回折素子の部分の構成は、その説明を省略する。
図5は、本発明の第3実施形態に係る回折素子の構成を示す断面図であり、第1実施形態の3波長用回折素子を挟むように2枚の位相板が積層されている位相板付3波長用回折素子である。第1実施形態に係る3波長用回折素子の部分の構成は、その説明を省略する。
本実施形態では4枚の透明基板31、32、33および34が用いられている。第1実施形態と同様に、凸部は高分子液晶からなり、凸部間を充填する材料は光学的等方性の樹脂である充填接着剤であるとして説明する。また、2枚の位相板は、例えば複屈折性樹脂からなるとする。
第1の透明基板31、第2の透明基板32、第3の透明基板33、第4の透明基板34としては、ガラス、石英ガラス、プラスチックなどを使用できる。また、第1の透明基板31と第4の透明基板34の空気側の表面に、反射防止膜を成膜することで、該位相板付3波長用回折素子を透過するレーザ光の不要な反射を防ぐことができる。
充填接着剤39としては、その屈折率が、該位相板付3波長用回折素子を透過する波長λ3に対する第1の凸部37の材料である高分子液晶の常光屈折率と略同じものを選択する。一方、充填接着剤40としては、その屈折率が、該位相板付3波長用回折素子を透過する波長λ1に対する第2の凸部38の材料である高分子液晶の常光屈折率と略同じものを選択する。なお、凸部の材料である高分子液晶の異常光屈折率と、充填接着剤の屈折率を考慮して、第1の凸部37、第2の凸部38の高さを適当に決めることで、該位相板付3波長用回折素子を透過するレーザ光の波長に対し、それぞれ所望の回折効率を得ることができる。
第1の複屈折性樹脂からなる位相板35としては、波長λ1のレーザ光に対して、リタデーション値が、波長λ1に等しく、かつ波長λ2あるいは波長λ3に対し、波長の略1/2になるように複屈折材料と厚さを決める。同様に、第2の複屈折性樹脂からなる位相板36も同様に、リタデーション値が波長λ1に等しく、かつ波長λ2あるいは波長λ3に対し、波長の略1/2になるように複屈折材料と厚さを決める。
第1から第4の透明基板を積層して3波長用回折素子とする際、第1の位相板35の進相軸と第1の凸部37の異常光屈折率の軸方向のなす角度が例えば45°(135°、225°、315°などでもよい)、第1の凸部37の異常光屈折率の軸方向と第2の凸部38の異常光屈折率の軸方向のなす角度が例えば90°(270°などでもよい)、第1の位相板35の進相軸と第2の位相板36の進相軸とがなす角度が例えば90°(270°などでもよい)になるように積層する。
こうして形成される第3実施形態の位相板付3波長用回折素子において、第1の凸部37の異常光屈折率の軸方向に、波長λ1のレーザ光が偏光方向を有する直線偏光であるとする。波長λ1のレーザ光は、該位相板付3波長用回折素子を透過する際、第1の位相板35をその偏光状態を変えることなく透過し、第1の凸部37と第1の充填接着剤39を備える回折格子(これを、第1の回折格子という)によって回折され、第2の凸部38と第2の充填接着剤40を備える回折格子(これを、第2の回折格子という)に回折されずに直進透過し、第2の位相板36をその偏光状態を変えることなく透過する。
一方、波長λ1のレーザ光の偏光方向と波長該位相板付3波長用λ2のレーザ光とが同じ偏光方向を有するとすると、波長λ2のレーザ光は、回折素子を透過する際、第1の位相板35にてその偏光方向を略90°回転させて透過し、第1の回折格子を回折せずに直進透過し、第2の回折格子では回折し、第2の位相板36にて、さらに、その偏光方向を略90°回転させて、該位相板付3波長用回折素子に入射する前の偏光方向に戻って透過する。
同様に、波長λ1のレーザ光の偏光方向と波長λ3のレーザ光が同じ偏光方向を有するとすると、波長λ3のレーザ光は、該位相板付3波長用回折素子を透過する際、第1の位相板35にて、その偏光方向を略90°回転させて透過し、第1の回折格子を回折せずに直進透過し、第2の回折格子では回折し、第2の位相板36にてさらにその偏光方向を略90°回転させて、該位相板付3波長用回折素子に入射する前の偏光方向に戻って透過する。
上述のように、第3実施形態の位相板付3波長用回折素子によると、2つの位相板の波長依存性と、2つの回折格子の偏光依存性を利用して、波長選択的に回折効果を制御することができる。
第3実施形態の位相板付3波長用回折素子は、BDおよびCDのトラッキング用の3ビームを得るための回折素子として利用できる。すなわち、図7の構成を基本とし、規格が異なるBD、DVDおよびCDの再生・記録を行なう互換光ヘッド装置であって、波長λ1のレーザ光としてBD用の405nm波長帯、波長λ2のレーザ光としてDVD用の660nm波長帯、波長λ3のレーザ光としてCD用の780nm波長帯のレーザ光を出力する3波長半導体レーザ53を搭載した互換光ヘッド装置において、BDおよびCDのトラッキング用の3ビームを得るための回折素子として利用できる。一方、DVDにおいては、RAM規格の再生・記録をしない場合、3ビームを用いずにトラッキングできるため、該位相板付3波長用回折素子の2つの回折格子光を直進透過するレーザ光のみ利用する。
図7の互換光ヘッド装置において、第3実施形態の位相板付3波長用回折素子を回折素子52として設置し、前記3波長半導体レーザ53を出射するレーザ光は、回折素子52を透過した後に偏光ビームスプリッタ54で反射し、コリメートレンズ55、および1/4波長板56、対物レンズ57を透過し、光記録媒体58に集光する。光記録媒体58を反射するレーザ光は、対物レンズ57、1/4波長板56、コリメートレンズ55、偏光ビームスプリッタ54を透過して光検出器59に集光される。偏光ビームスプリッタ54としては、前記3つの波長帯のレーザ光に対し、同様な反射・透過に関する偏光依存性を有するものを選択するのが望ましい。1/4波長板56としても、前記3つの波長帯のレーザ光に対し、同様に1/4の位相差を生じ、直線偏光を円偏光、または円偏光を直線偏光に変換することができるものを選択するのが望ましい。
図7の互換光ヘッド装置において、第3実施形態の位相板付3波長用回折素子は、波長λ1のBD用のレーザ光に対して、第2の回折格子において不要な光である回折光を発生しない、一方、波長λ3のCD用のレーザ光に対しても、第1の回折格子において不要な光である回折光をほとんど発生しない。すなわち、互換光ヘッド装置において、ノイズとなる不要な回折光をほとんど発生しないので、良好な再生・記録特性を得ることができる。
また、第3実施形態の位相板付3波長用回折素子は、BDおよびCD用の波長のレーザ光それぞれに対し、回折効率および回折方向をそれぞれ自由度高く設計でき、一つの素子でありながら、回折効果を波長選択的に利用できるので、小型、軽量化を要望されている3波長半導体レーザを搭載した互換光ヘッド装置を実現できる。特に、3波長半導体レーザから、直線偏光として出力されるレーザ光の偏光方向が、3つの波長帯で略同一である場合に用いることができ、偏光方向を制御する位相板を積層しているので、光ヘッド装置に搭載される部品点数を減らすことができる。
「第4実施形態」
図6は、本発明の第4実施形態に係る回折素子の構成を示す断面図であり、第1実施形態の3波長用回折素子を挟むように2枚の位相板が積層されていて、2枚の位相板のうち一方の位相板に、波長λ1および波長λ3の入射光を透過するとともに波長λ2の入射光を回折する無機材料からなる周期的な凹凸部または凸部を有する第3の回折格子がさらに形成されている構成を有している。ここで、第3の回折格子は、無機材料が周期的な凸部となっていてもよいが、無機材料が周期的な凹凸部すなわち谷底で連続的に繋がっていてもよい。第1実施形態に係る3波長用回折素子の部分の構成は、その説明を省略する。本実施形態では4枚の透明基板41,42,43および44が用いられている。第1実施形態と同様に、凸部は高分子液晶からなり、凸部間を充填する材料は光学的等方性の樹脂である充填接着剤であるとして説明する。また、2つの位相板は、複屈折性樹脂からなるとする。
図6は、本発明の第4実施形態に係る回折素子の構成を示す断面図であり、第1実施形態の3波長用回折素子を挟むように2枚の位相板が積層されていて、2枚の位相板のうち一方の位相板に、波長λ1および波長λ3の入射光を透過するとともに波長λ2の入射光を回折する無機材料からなる周期的な凹凸部または凸部を有する第3の回折格子がさらに形成されている構成を有している。ここで、第3の回折格子は、無機材料が周期的な凸部となっていてもよいが、無機材料が周期的な凹凸部すなわち谷底で連続的に繋がっていてもよい。第1実施形態に係る3波長用回折素子の部分の構成は、その説明を省略する。本実施形態では4枚の透明基板41,42,43および44が用いられている。第1実施形態と同様に、凸部は高分子液晶からなり、凸部間を充填する材料は光学的等方性の樹脂である充填接着剤であるとして説明する。また、2つの位相板は、複屈折性樹脂からなるとする。
第1の透明基板41、第2の透明基板42、第3の透明基板43、第4の透明基板44としては、ガラス、石英ガラス、プラスチックなどを使用できる。また、第1の透明基板41の空気側の表面に反射防止膜を成膜することで、該回折素子を透過するレーザ光の不要な反射を防ぐことができる。第3の回折格子の表面に、反射防止膜を成膜することで、該位相板付3波長用回折素子を透過するレーザ光の不要な反射を防ぐことができる。
充填接着剤50としては、その屈折率が、該位相板付3波長用回折素子を透過する波長λ3に対する第1の凸部45の材料である高分子液晶の常光屈折率と略同じものを選択する。一方、充填接着剤51としては、その屈折率が、該位相板付3波長用回折素子を透過する波長λ1に対する第2の凸部46の材料である高分子液晶の常光屈折率と略同じものを選択する。ここで、第2の凸部46の高さは、該位相板付3波長用回折素子を透過する波長λ2のレーザ光に対する、第2の凸部46の材料である高分子液晶の異常光屈折率と、充填接着剤51の屈折率との差が、波長λ2の整数倍、たとえば1倍になるように選択する。
一方、第1の凸部45の高さは、第1の凸部45と第1の充填接着剤50を備える回折格子(第1の回折格子という)において、該位相板付3波長用回折素子を透過する波長λ1のレーザ光に対し所望の回折効率を得ることができるように選択する。
第3の凸部47の材料である無機材料として、SiO2(石英)を選択するのが、成膜あるいはエッチングによる加工が容易であるので望ましい。特に、第4の透明基板44として石英ガラスを選んだ場合、SiO2膜を成膜しなくてもよく望ましい。ただし、用途によって、少なくとも波長380nm〜波長820nmの間で略無色透明である、Ta2O5、SiON等を使ってもよい。ここで、第3の凸部47の高さは、該位相板付3波長用回折素子を透過する波長λ1のレーザ光に対する凸部47の屈折率と空気の屈折率との差と高さの積が、波長λ1の整数倍、例えば2倍になるように選択する。
第1の位相板48としては、波長λ1のレーザ光に対して、リタデーション値が、波長λ1に等しくなるように複屈折材料と厚さを決める。同様に、第2の複屈折性樹脂からなる位相板49も同様に、リタデーション値が波長λ1に等しく、かつ波長λ2あるいは波長λ3に対し、波長の略2分の1になるように複屈折材料と厚さを決める。
第1から第4の透明基板を回折素子として積層する際、第1の位相板41の進相軸と前記第1の凸部45の異常光透過率の軸方向のなす角度が例えば45°、第1の凸部45の異常光透過率の軸方向と前記第2の凸部46の異常光透過率の軸方向のなす角度が例えば90°、第1の位相板48の進相軸と第2の位相板49の進相軸がなす角度が例えば90°になるように積層する。
こうして形成される第4実施形態の位相板付3波長用回折素子において、第1の凸部45の異常光透過率の軸方向に、波長λ1のレーザ光が偏光方向を有する直線偏光であるとすると、波長λ1のレーザ光が、該位相板付3波長用回折素子を透過する際、第1の位相板48をその偏光状態を変えることなく透過し、第1の凸部45と第1の充填接着剤50を備える回折格子(これを、第1の回折格子という)によって回折され、第2の凸部46と第2の充填接着剤51を備える回折格子(これを、第2の回折格子という)を回折せずに直進透過し、第2の位相板49をその偏光状態を変えることなく透過し、第3の回折格子を回折せずに直進透過する。
一方、波長λ1のレーザ光の偏光方向と同じ偏光方向を有する波長λ2のレーザ光が、該位相板付3波長用回折素子を透過する際、第1の位相板48にて、その偏光方向を略90°回転させて透過し、第1の回折格子を回折せずに直進透過し、第2の回折格子も回折せずに直進透過し、第2の位相板49にて、さらに、その偏光方向を略90°回転させて透過し、第3の回折格子で回折される。
同様に、波長λ1のレーザ光の偏光方向と波長λ3のレーザ光が同じ偏光方向を有するとすると、波長λ3のレーザ光は、該位相板付3波長用回折素子を透過する際、第1の位相板48にて、その偏光方向を略90°回転させて透過し、第1の回折格子を回折せずに直進透過し、第2の回折格子では回折し、第2の位相板49にて、さらに、その偏光方向を略90°回転させて透過する。なお、第3の回折格子では、波長λ3が波長λ1の略2倍であるとき、上記のように波長λ1は回折せずに直進透過するので、波長λ3はほとんど回折しない。
上述のように、第4実施形態の位相板付3波長用回折素子によると、2つの位相板の波長依存性と、2つの回折格子の偏光依存性、無機材料からなる回折格子の波長依存性を利用して、波長選択的に回折効果を制御することができる。
第4実施形態の位相板付3波長用回折素子は、規格が異なるBD、DVDおよびCDの再生・記録を行なう互換光ヘッド装置であって、波長λ1のレーザ光としてBD用の405nm波長帯、DVD用の660nm波長帯、波長λ2のレーザ光としてCD用の780nm波長帯のレーザ光を出力する3波長半導体レーザを搭載した互換光ヘッド装置において、BD、DVDおよびCDのトラッキング用の3ビームを得るための回折素子として利用できる。
第4実施形態の位相板付3波長用回折素子は、波長λ1のBD用のレーザ光に対して、第2の回折格子と、第3の回折格子において不要な光である回折光を発生しない、一方、波長λ2のDVD用のレーザ光に対しては、第1の回折格子と、第2の回折格子において不要な光である回折光を発生しない。
一方、波長λ3のCD用のレーザ光に対しては、第1の回折格子では回折せず、第3回折格子においても、CD用の波長λ3がBD用の波長λ1の略2倍となるので、不要な光である回折光をほとんど発生しない。
すなわち、互換光ヘッド装置において、ノイズとなる不要な回折光を発生することがないので、良好な再生・記録特性を得ることができ、一つの素子でありながら、回折効果を波長選択的に利用できるので、小型、軽量化を要望されている3波長半導体レーザを搭載した互換光ヘッド装置を実現できる。特に、3波長半導体レーザから、直線偏光として出力されるレーザ光の偏光方向が、3つの波長帯で略同一である場合に用いることができ、偏光方向を制御する位相板を積層しているので、光ヘッド装置に搭載される部品点数を減らすことができる。
また、第4実施形態の位相板付3波長用回折素子は、BD、DVDおよびCD用の波長のレーザ光それぞれに対し、回折効率、回折方向をそれぞれ自由度高く設計できる。また、第3施形態の位相板付3波長用回折素子に比べ、BD、DVDおよびCD用のレーザ光それぞれに対する回折効率の設計自由度が少なくなっているが、DVD−RAM規格の再生・記録に対応することができる。
「例1」
本例は図1に示した第1実施形態の具体例であり、作製方法を以下に記す。まず、ガラス製の第1の透明基板1の空気側の表面に、真空蒸着法を用いて反射防止膜を成膜する。次に、ガラス製の第1の透明基板1に、複屈折性を有する液晶モノマーを均一に塗布し、UV光を照射して高分子化させて、高分子液晶膜とする。このとき、液晶分子の配向方向が紙面に垂直になるように選択し、かつ厚さが1.8μmになるように、塗布条件を決める。この高分子液晶膜の波長405nmに対する常光屈折率が1.542、異常光屈折率が1.588である。波長660nmに対する常光屈折率が1.517、異常光屈折率が1.556である。波長780nmに対する常光屈折率が1.514、異常光屈折率が1.552である。この高分子液晶膜にフォトリソグラフィとエッチングの技術を用いて、断面が凹凸状になるように加工する。
本例は図1に示した第1実施形態の具体例であり、作製方法を以下に記す。まず、ガラス製の第1の透明基板1の空気側の表面に、真空蒸着法を用いて反射防止膜を成膜する。次に、ガラス製の第1の透明基板1に、複屈折性を有する液晶モノマーを均一に塗布し、UV光を照射して高分子化させて、高分子液晶膜とする。このとき、液晶分子の配向方向が紙面に垂直になるように選択し、かつ厚さが1.8μmになるように、塗布条件を決める。この高分子液晶膜の波長405nmに対する常光屈折率が1.542、異常光屈折率が1.588である。波長660nmに対する常光屈折率が1.517、異常光屈折率が1.556である。波長780nmに対する常光屈折率が1.514、異常光屈折率が1.552である。この高分子液晶膜にフォトリソグラフィとエッチングの技術を用いて、断面が凹凸状になるように加工する。
同様に、ガラス製の第2の透明基板2に、前記液晶モノマーを用いて高分子液晶膜を成膜する。このとき、液晶分子の配向方向が紙面に平行になるように選択し、かつ3.3μmの厚さになるように成膜する。さらに、フォトリソグラフィとエッチングの技術を用いて、断面が凹凸状になるように加工する。このとき、形成する凸部5の周期と方向は、前記第1透明基板1の高分子液晶からなる凸部4の周期と方向と異なっている。すなわち、ピッチにして、数μm〜数10μm、格子角度にして1°程度異なっている。
次に、第2の透明基板2の高分子液晶からなる凸部5を埋めるように、充填接着剤7を用いて第3の透明基板3を接着する。なお、第3の透明基板3の接着していない面には、反射防止膜が成膜されている。このとき、充填接着剤7としては、波長405nmに対する屈折率が1.542、波長660nmに対する屈折率が1.515、波長780nmに対する屈折率が1.512になるものを選ぶ。ここで、凸部5と充填接着剤7を有する回折格子を第2の回折格子とする。
次に、第1の透明基板1の高分子液晶からなる凸部4を埋めるように、充填接着剤6を用いて、第2の透明基板2の接着していない面を接着する。このとき、充填接着剤6としては、波長405nmに対する屈折率が1.544、波長660nmに対する屈折率が1.518、波長780nmに対する屈折率が1.514になるものを選ぶ。ここで、凸部4と充填接着剤6を有する回折格子を第1の回折格子とする。
こうして作製される本例の3波長用回折素子において、波長が405nm、偏光方向が紙面に垂直な直線偏光であるレーザ光が本素子を透過する際、第1の回折格子では、高分子液晶の異常光屈折率と充填接着剤の屈折率の差と格子高さ(1.8μm)の関係から回折する。このとき、0次透過率が約67%、1次回折効率が約13.5%となる。一方、第2の回折格子では、高分子液晶の常光屈折率と充填接着剤7の屈折率が等しいので回折せずに直進透過する。
波長が780nm、偏光方向が紙面に平行な直線偏光であるレーザ光が本素子を透過する際、第1の回折格子では、高分子液晶の常光屈折率と充填接着剤6の屈折率が等しいので回折せずに直進透過し、第2の回折格子では、高分子液晶の異常光屈折率と充填接着剤7の屈折率との差と格子高さ(3.3μm)の関係から回折する。このとき、0次透過率が約74%、1次回折効率が約10%となる。
一方、波長が660nm、偏光方向が紙面に平行な直線偏光であるレーザ光が本素子を透過する際、第1の回折格子では、高分子液晶の常光屈折率と充填接着剤6の屈折率が略等しいのでほとんど回折せずに直進透過し、第2の回折格子では、高分子液晶の異常光屈折率と充填接着剤7の屈折率の差と格子高さ(3.3μm)の関係から回折する。このとき、0次透過率が約64%、1次回折効率が約14.6%となる。
本例の3波長用回折素子は、規格が異なるBD、DVDおよびCDの再生・記録を行なう互換光ヘッド装置であって、BD用の405nm波長帯、DVD用の660nm波長帯、CD用の780nm波長帯のレーザ光を出力する3波長半導体レーザを搭載した互換光ヘッド装置において、BDおよびCDのトラッキング用の3ビームを得るための回折素子として利用できる。
「例2」
本例は図2に示す構造をもつ3波長用回折素子である。第1の透明基板8に形成された高分子液晶からなる凸部10と、第2の透明基板9に形成された高分子液晶からなる凸部11が向かいあうように充填接着剤12にて接着されている。また、第1の透明基板と第2の透明基板の接着していない面には、反射防止膜が成膜されている。ここで、凸部10と充填接着剤12を有する回折格子が第1の回折格子であり、凸部11と充填接着剤12を有する回折格子が第2の回折格子である。
本例は図2に示す構造をもつ3波長用回折素子である。第1の透明基板8に形成された高分子液晶からなる凸部10と、第2の透明基板9に形成された高分子液晶からなる凸部11が向かいあうように充填接着剤12にて接着されている。また、第1の透明基板と第2の透明基板の接着していない面には、反射防止膜が成膜されている。ここで、凸部10と充填接着剤12を有する回折格子が第1の回折格子であり、凸部11と充填接着剤12を有する回折格子が第2の回折格子である。
第1の透明基板8の凸部10と第2の透明基板9の凸部11は、例1の3波長用回折素子と同じ材料を用いて同様に作製する。充填接着剤12としては、波長405nmに対する屈折率が1.542、波長660nmに対する屈折率が1.517、波長780nmに対する屈折率が1.512になるものを選ぶ。
本例の3波長用回折素子は、例1の3波長用回折素子と同様に、規格が異なるBD、DVDおよびCDの再生・記録を行なう3波長半導体レーザを搭載した互換光ヘッド装置において、BDおよびCDのトラッキング用の3ビームを得るための回折素子として利用でき、同様の効果を得ることができる。
さらに、素子を構成する透明基板の数を削減できるので、回折素子自体の小型・軽量化を実現できる。
「例3」
本例は図3に示した第2実施形態の具体例であり、作製方法を以下に記す。
本例は図3に示した第2実施形態の具体例であり、作製方法を以下に記す。
まず、ガラス製の第1の透明基板13の空気側の表面に、真空蒸着法を用いて反射防止膜を成膜する。次に、ガラス製の第1の透明基板13に、例1(図1)の高分子液晶からなる凸部4と同じ、凸部16を形成する。同様に、ガラス製の第2の透明基板14に、同じ液晶モノマーを用いて高分子液晶膜を成膜する。このとき、液晶の配向方向が紙面に平行になるように選択し、かつ16.1μmの厚さになるように成膜する。さらに、フォトリソグラフィとエッチングの技術を用いて、断面が凹凸状になるように加工する。このとき、形成する凸部17の周期と方向は、第1の透明基板13の高分子液晶からなる凸部16の周期と方向と異なっている。
次に、第2の透明基板14の高分子液晶からなる凸部17を埋めるように、充填接着剤20を用いて第3の透明基板15を接着する。充填接着剤20としては、例1(図1)の充填接着剤4と同じものを用いる。ここで、凸部17と充填接着剤20を有する回折格子が第2の回折格子である。
なお、第3の透明基板15の接着していない面には、無機材料からなる凸部18が形成されている。無機材料からなる凸部18は、第2の透明基板14と接着する前に形成され、その表面には反射防止膜が成膜されている。作製方法は、第3の透明基板15に石英をスパッタで成膜したのち、フォトリソグラフィとエッチングの技術を用いて、断面が凸状になるように加工する。このとき、形成される凸部18の周期と方向は、前記第1の透明基板13の高分子液晶からなる凸部16の周期および方向、第2の透明基板14の高分子液晶からなる凸部17の周期および方向と異なっている。このとき成膜する石英の波長405nmに対する屈折率が1.470、波長660nmに対する屈折率が1.456、波長780nmに対する屈折率が1.454になっている。また、エッチングする凸部の深さは、1.72μmである。ここで、凸部18を有する回折格子が第3の回折格子である。
次に、第1の透明基板13の高分子液晶からなる凸部16を埋めるように、充填接着剤19を用いて、第2の透明基板14の接着していない面を接着する。充填接着剤19として、例1(図1)で用いた充填接着剤6と同じものを用いる。ここで、凸部16と充填接着剤19を有する回折格子が第1の回折格子である。
こうして作製される本例の3波長用回折素子において、波長が405nm、偏光方向が紙面に垂直な直線偏光であるレーザ光が本素子を透過する際、第1の回折格子では、高分子液晶の異常光屈折率と充填接着剤19の屈折率との差と格子高さ(1.8μm)の関係から回折する。このとき、0次透過率が約67%、1次回折効率が約13.5%となる。第2の回折格子では、高分子液晶の常光屈折率と充填接着剤の屈折率が等しいので回折せずに直進透過する。また、第3の回折格子では、その凹部の光路長と凸部の光路長の差が、波長の2倍である810nmになるので回折せずに直進透過する。
波長が660nm、偏光方向が紙面に平行な直線偏光であるレーザ光が本素子を透過する際、第1の回折格子では、高分子液晶の常光屈折率と充填接着剤19の屈折率が略等しいのでほとんど回折せずに直進透過し、第2の回折格子では、その凹部の光路長と凸部の光路長の差が、波長の1倍である660nmになるので、回折せずに直進透過する。また、第3の回折格子では、凸部の石英と凹部の空気の屈折率の差と格子高さ(1.72μm)の関係から回折する。このとき、0次透過率は69%であり、1次回折効率は12.6%となる。
波長が780nm、偏光方向が紙面に平行な直線偏光であるレーザ光が本素子を透過する際、第1の回折格子では、高分子液晶の常光屈折率と充填接着剤19の屈折率が等しいので回折せずに直進透過し、第2の回折格子では、高分子液晶の異常光屈折率と充填接着剤20の屈折率の差と格子高さ(16.1μm)の関係から回折する。このとき、0次透過率が約73%、1次回折効率が約11%となる。また、第3の回折格子では、その凹部の光路長と凸部の光路長の差が、波長の1倍である780nmになるので、回折せずに直進透過する。
本例の3波長用回折素子は、規格が異なるBD、DVDおよびCDの再生・記録を行なう互換光ヘッド装置であって、BD用の405nm波長帯、DVD用の660nm波長帯、CD用の780nm波長帯のレーザ光を出力する3波長半導体レーザを搭載した互換光ヘッド装置において、BD、DVDおよびCDのそれぞれのトラッキング用の3ビームを得るための回折素子として利用できる。
「例4」
本例は図4に示す構造をもつ回折素子である。第1の透明基板21に形成された高分子液晶からなる凸部23と、第2の透明基板22に形成された高分子液晶からなる凸部24が向かいあうように充填接着剤26にて接着されている。また、第1の透明基板21の接着していない面には、反射防止膜が成膜されている。ここで、凸部23と充填接着剤26を有する回折格子が第1の回折格子であり、凸部24と充填接着剤26を有する回折格子が第2の回折格子である。
本例は図4に示す構造をもつ回折素子である。第1の透明基板21に形成された高分子液晶からなる凸部23と、第2の透明基板22に形成された高分子液晶からなる凸部24が向かいあうように充填接着剤26にて接着されている。また、第1の透明基板21の接着していない面には、反射防止膜が成膜されている。ここで、凸部23と充填接着剤26を有する回折格子が第1の回折格子であり、凸部24と充填接着剤26を有する回折格子が第2の回折格子である。
一方、第2の透明基板22の接着していない面には、無機材料からなる凸部25が形成されている。無機材料からなる凸部25は、第2透明基板22のもう1面に形成されている高分子液晶からなる凸部24を形成する前に、形成される。作製方法は、例3(図3)の第3の透明基板15に形成する無機材料からなる凸部18と同様である。また、その表面には反射防止膜が成膜されている。ここで、凸部25を有する回折格子が第3の回折格子である。
透明基板22の凸部24は、例3の3波長用回折素子と同じ材料を用いて同様に作製する。充填接着剤26としては、例2(図2)の回折素子に用いた充填接着剤12を用いる。
本例の3波長用回折素子は、例3の回折素子と同様に、規格が異なるBD、DVDおよびCDの再生・記録を行なう3波長半導体レーザを搭載した互換光ヘッド装置において、BD、DVDおよびCDのトラッキング用の3ビームを得るための回折素子として利用でき、同様の効果を得ることができる。
さらに、素子を構成する透明基板の数を削減できるので、回折素子自体の小型・軽量化を実現できる。
「例5」
本実施例は図5に示した第3実施形態の具体例であり、作製方法を以下に記す。
本実施例は図5に示した第3実施形態の具体例であり、作製方法を以下に記す。
まず、ガラス製の第1の透明基板31の空気側の表面に、真空蒸着法を用いて反射防止膜を成膜する。次に、ガラス製の第1の透明基板31に、例1で用いた複屈折性を有する液晶モノマーを均一に塗布し、UVを照射して高分子化させて、高分子液晶膜とする。このとき、液晶分子の配向方向が紙面奥行き右45度方向になるように選択し、かつ厚さが8.8μmになるように、塗布条件を決める。
同様に、ガラス製の第4の透明基板34の空気側の表面に、真空蒸着法を用いて反射防止膜を成膜する。次に、ガラス製の第4の透明基板34に、上述の複屈折性を有する液晶モノマーを均一に塗布し、UVを照射して高分子化させて、高分子液晶膜とする。このとき、液晶の配向方向が紙面奥行き左45度方向になるように選択し、かつ厚さが8.8μmになるように、塗布条件を決める。
ガラス製の第2の透明基板32には、例1(図1)の高分子液晶からなる凸部4と、同じ凸部37を形成する。同様に、ガラス製の第3の透明基板33には、例1(図1)の高分子液晶からなる凸部5と同じ凸部38を形成する。
次に、第2の透明基板32の高分子液晶からなる凸部37を埋めるように、充填接着剤39を用いて第1の透明基板31の高分子液晶膜35を向かいあわせて接着する。充填接着剤39としては、例1(図1)の充填接着剤6と同じものを用いる。ここで、凸部37と充填接着剤39を有する回折格子が第1の回折格子である。
次に、第3の透明基板33の高分子液晶からなる凸部38を埋めるように、充填接着剤40を用いて、上述の第2の透明基板32の接着していない面を接着する。充填接着剤40としては、例1(図1)の充填接着剤7と同じものを用いる。ここで、凸部38と充填接着剤40を有する回折格子が第2の回折格子である。
さらに、第4の透明基板34の高分子液晶膜36と、第3透明基板33の接着していない面を向かいあわせて、透明な接着剤で接着する。
ここで、本例の位相板付3波長用回折素子を作製する上で、4枚の透明基板の積層方法としては、第2の透明基板32の高分子液晶からなる凸部37を埋めるように、充填接着剤39を用いて、第1の透明基板31の高分子液晶膜35を向かいあわせて接着したもの、第3の透明基板33の高分子液晶からなる凸部38を埋めるように、充填接着剤40を用いて第4の透明基板34の高分子液晶膜36を向かいあわせて接着したものを別々に用意したのち、第2の透明基板32の高分子液晶からなる凸部37のない面と、第3の透明基板33の高分子液晶からなる凸部38のない面を透明な接着剤で接着する積層方法でもよい。これは、図5とは異なる構成である。
こうして作製される本例の回折素子において、波長が405nm、偏光方向が紙面に垂直な直線偏光であるレーザ光が本素子を透過する際、第1の透明基板31の高分子液晶膜35が、高分子液晶の異常光屈折率と常光屈折率との差と、その厚さ(8.8μm)の積からなるリタデーション値405nmを有する位相板(第1の位相板)としての機能を有する。このリタデーション値が、波長と等しいため、レーザ光の偏光状態を変えることなく透過する。第1の回折格子では、高分子液晶の異常光屈折率と充填接着剤39の屈折率との差と格子高さの関係から回折する。このとき、0次透過率が約67%、1次回折効率が約13.5%となる。一方、第2の回折格子では、高分子液晶の常光屈折率と充填接着剤40の屈折率とが等しいので回折せずに直進透過する。第4の透明基板34の高分子液晶膜36も、リタデーション値405nmを有する位相板(第2の位相板)としての機能を有し、同様にレーザ光の偏光状態を変えることなく透過する。
波長が780nm、偏光方向が紙面に垂直な直線偏光であるレーザ光が本素子を透過する際、第1の位相板である高分子液晶膜35が、リタデーション値334nmを有する位相板としての機能を有し、レーザ光の偏光状態を変化させる。このとき、紙面に垂直な偏光成分の強度は5%、紙面に平行な偏光成分の強度が95%となる楕円偏光に変わる。
紙面に平行な偏光成分のレーザ光は、第1の回折格子では、高分子液晶の常光屈折率と充填接着剤39の屈折率が等しいので回折せずに直進透過し、第2の回折格子では、高分子液晶の異常光屈折率と充填接着剤40の屈折率との差と格子高さの関係から回折する。このとき、0次透過率が約74%、1次回折効率が約10%となる。
一方、紙面に垂直な偏光成分のレーザ光は、第1の回折格子では、高分子液晶の常光屈折率と充填接着剤39の屈折率の差と、格子高さの関係から回折する。このとき、0次透過率が約90%、1次回折効率が約4%となる。一方、の第2の回折格子では、高分子液晶の常光屈折率と充填接着剤40の屈折率が略等しいのでほとんど回折せずに直進透過する。
第2の位相板である高分子液晶膜36も、リタデーション値334nmを有する位相板としての機能を有するが、高分子液晶膜35(第1の位相板)の進相軸と直交した進相軸を有するため、結果的に、高分子液晶膜36(第2の位相板)を透過する際、レーザ光の偏光状態は本例の回折素子に入射する前と略同じ偏光状態、すなわち、偏光方向が紙面に垂直な直線偏光となって、本例の回折素子を出射する。
このとき、本例の回折素子により得られる0次透過率は約75%、1次回折効率は約9.5%である。なお、第1の回折格子による1次回折光は、不要となる光である。ただし、その回折効率は約0.2%であり十分小さい。
一方、波長が660nm、偏光方向が紙面に垂直な直線偏光であるレーザ光が本素子を透過する際、高分子液晶膜35(第1の位相板)が、リタデーション値343nmを有する位相板としての機能を有し、レーザ光の偏光状態を変化させる。このとき、リタデーション値が、波長の略1/2になるので、99%以上の紙面に平行な偏光成分を有する略直線偏光に変わる。
紙面に平行な略直線偏光は、第1の回折格子では、高分子液晶の常光屈折率と充填接着剤39の屈折率が等しいので回折せずに直進透過し、第2の回折格子では、高分子液晶の異常光屈折率と充填接着剤40の屈折率との差と格子高さの関係から回折する。このとき、0次透過率が約64%、1次回折効率が約14.6%となる。
高分子液晶膜36(第2の位相板)も、リタデーション値343nmを有する位相板としての機能を有するが、高分子液晶膜35(第1の位相板)の進相軸と直交した進相軸を有するため、結果的に、高分子液晶膜36(第2の位相板)を透過する際、レーザ光の偏光状態は本例の回折素子に入射する前と略同じ偏光状態、すなわち、偏光方向が紙面に垂直な直線偏光となって、本例の回折素子を出射する。このとき、本例の回折素子により得られる0次透過率は約63%、1次回折効率は約14.5%である。
本実施例の位相板付3波長用回折素子は、規格が異なるBD、DVDおよびCDの再生・記録を行なう互換光ヘッド装置であって、BD用の405nm波長帯、DVD用の660nm波長帯、CD用の780nm波長帯のレーザ光を出力する3波長半導体レーザを搭載した互換光ヘッド装置において、BDおよびCDのトラッキング用の3ビームを得るための回折素子として利用できる。一方、DVDにおいては、RAM規格の再生・記録をしない場合、3ビームを用いずにトラッキングできるため、本実施例の回折素子による回折光を必要とせず、64%の0次透過光のみ利用する。
「例6」
本例は図6に示した第4実施形態の具体例であり、作製方法を以下に記す。
本例は図6に示した第4実施形態の具体例であり、作製方法を以下に記す。
まず、ガラス製の第1の透明基板41の空気側の表面に、真空蒸着法を用いて反射防止膜を成膜する。次に、ガラス製の第1の透明基板41に、例5(図5)の高分子液晶膜35と同じ、高分子液晶膜48を成膜する。
次に、ガラス製の第4透明基板44に、例3(図3)の第3の透明基板15の石英からなる凸部18と同じ、凸部47を形成し、その表面に反射防止膜を成膜する。さらに、凸部47を形成していない面に、例5(図5)の第4の透明基板34の高分子液晶膜36と同じ、高分子液晶膜49を成膜する。
次に、ガラス製の第2の透明基板42に、例5(図5)の第2の透明基板32の高分子液晶からなる凸部37と、同じ凸部45を形成する。同様に、ガラス製の第3の透明基板43に、例3(図3)の第2の透明基板14の高分子液晶からなる凸部17と同じ、凸部46を形成する。
なお、高分子液晶からなる凸部45、46、および石英からなる凸部47の周期と方向は、それぞれ異なっている。
次に、第2の透明基板42の高分子液晶からなる凸部45を埋めるように、充填接着剤50を用いて第1の透明基板41の高分子液晶膜48を向かいあわせて接着する。充填接着剤50としては、例1(図1)の充填接着剤6と同じものを用いる。次に、第3の透明基板43の高分子液晶からなる凸部46を埋めるように、充填接着剤51を用いて、上述の第2の透明基板42の接着していない面を接着する。充填接着剤51としては、例1(図1)の充填接着剤7と同じものを用いる。ここで、凸部45と充填接着剤50を有する回折格子が第1の回折格子であり、凸部46と充填接着剤51を有する回折格子が第2の回折格子である。
さらに、第4の透明基板43の高分子液晶膜49と、第3の透明基板43の接着していない面を向かいあわせて、透明な接着剤で接着する。
ここで、本例の位相板付3波長用回折素子を作製する上で、4枚の透明基板の積層方法としては、第2透明基板42の高分子液晶からなる凸部45を埋めるように、充填接着剤50を用いて、第1透明基板41の高分子液晶膜48を向かいあわせて接着したもの、第3透明基板43の高分子液晶からなる凸部46を埋めるように、充填接着剤51を用いて第4透明基板44の高分子液晶膜49を向かいあわせて接着したものを別々に用意したのち、第2透明基板42の高分子液晶からなる凸部45のない面と、第3透明基板43の高分子液晶からなる凸部46のない面を透明な接着剤で接着する積層方法でもよい。これは図6とは異なる構成である。
こうして作製される本例の位相板付3波長用回折素子において、波長が405nm、偏光方向が紙面に垂直な直線偏光であるレーザ光が本素子を透過する際、第1の透明基板41の高分子液晶膜48が、高分子液晶の異常光屈折率と常光屈折率との差と、その厚さの積からなるリタデーション値405nmを有する位相板(第1の位相板)としての機能を有するが、このリタデーション値が波長と等しいため、レーザ光の偏光状態を変えることなく透過する。第1の回折格子では、高分子液晶の異常光屈折率と充填接着剤50の屈折率との差と格子高さの関係から回折する。このとき、0次透過率が約67%、1次回折効率が約13.5%となる。一方、第2の回折格子では、高分子液晶の常光屈折率と充填接着剤51の屈折率とが等しいので回折せずに直進透過する。高分子液晶膜49も、リタデーション値405nmを有する位相板(第2の位相板)としての機能を有し、同様にレーザ光の偏光状態を変えることなく透過する。さらに、第4の透明基板44の回折格子(第3の回折格子)では、その凹部の光路長と凸部の光路長の差が、波長の2倍である810nmになるように、凸部の深さを決めており、回折せずに直進透過する。
一方、波長が660nm、偏光方向が紙面に垂直な直線偏光であるレーザ光が本素子を透過する際、高分子液晶膜48(第1の位相板)が、リタデーション値343nmを有する位相板としての機能を有し、レーザ光の偏光状態を変化させる。このとき、リタデーション値が、波長の略1/2になるので、99%以上の紙面に平行な偏光成分を有する略直線偏光に変わる。
紙面に平行な略直線偏光は、第1の回折格子では、高分子液晶の常光屈折率と充填接着剤50の屈折率が略等しいのでほとんど回折せずに直進透過し、第2の回折格子では、その凹部の光路長と凸部の光路長の差が、波長の等倍である660nmになるように、凸部の高さを決めており、回折せずに直進透過する。
第2の位相板である高分子液晶膜49も、リタデーション値343nmを有する位相板としての機能を有するが、高分子液晶膜48(第1の位相板)の進相軸と直交した進相軸を有するため、結果的に、高分子液晶膜49(第2の位相板)を透過する際、レーザ光の偏光状態は本例の回折素子に入射する前と略同じ偏光状態になる。また、第3の回折格子では、凸部の石英と凹部の空気の屈折率の差と格子高さの関係から回折する。このとき、0次透過率は69%であり、1次回折効率は12.6%である。
このとき、本例の回折素子により得られる0次透過率は約68%、1次回折効率は約12.5%である。
波長が780nm、偏光方向が紙面に垂直な直線偏光であるレーザ光が本素子を透過する際、高分子液晶膜48(第1の位相板)が、リタデーション値334nmを有する位相板としての機能を有し、レーザ光の偏光状態を変化させる。このとき、紙面に垂直な偏光成分の強度は5%、紙面に平行な偏光成分の強度が95%となる楕円偏光に変わる。
紙面に平行な偏光成分は、第1の回折格子では、高分子液晶の常光屈折率と充填接着剤50の屈折率が等しいので回折せずに直進透過し、第2の回折格子では、高分子液晶の異常光屈折率と充填接着剤51の屈折率との差と格子高さの関係から回折する。このとき、0次透過率が約73%、1次回折効率が約11%となる。
一方、紙面に垂直な偏光成分のレーザ光は、第1の回折格子では、高分子液晶の常光屈折率と充填接着剤50の屈折率との差と格子高さの関係から回折する。このとき、0次透過率が約90%、1次回折効率が約4%となる。一方、第2の回折格子では、高分子液晶の常光屈折率と充填接着剤51の屈折率が略等しいのでほとんど回折せずに直進透過する。
高分子液晶膜49(第2の位相板)も、リタデーション値334nmを有する位相板としての機能を有するが、高分子液晶膜48(第1の位相板)の進相軸と直交した進相軸を有するため、結果的に、高分子液晶膜49(第2の位相板)を透過する際、レーザ光の偏光状態は本例の回折素子に入射する前と略同じ偏光状態になる。また、第3の回折格子では、その凹部の光路長と凸部の光路長の差が、波長の等倍である780nmになるように、凸部の高さを決めており、回折せずに直進透過する。
このとき、本例の回折素子により得られる0次透過率は約74%、1次回折効率は約10.5%である。なお、第1の回折格子による1次回折光は、不要となる光である。ただし、その効率は約0.2%であり十分小さい。
本例の回折素子は、規格が異なるBD、DVDおよびCDの再生・記録を行なう互換光ヘッド装置であって、BD用の405nm波長帯、DVD用の660nm波長帯、CD用の780nm波長帯のレーザ光を出力する3波長半導体レーザを搭載した互換光ヘッド装置において、BD、DVDおよびCDのそれぞれのトラッキング用の3ビームを得るための回折素子として利用できる。
本発明の3波長用回折素子または位相板付3波長用回折素子は、複屈折性樹脂による回折格子、位相板と無機媒質による回折格子を形成したものであり、それぞれのもつ偏光依存性および波長依存性を利用して、1つの回折素子でありながら複数波長の光に対して、選択的に回折効率および回折方向を制御できる効果を有する。この回折素子を用いることで、小型、軽量化を期待される3波長半導体レーザを搭載した互換光ヘッド装置を実現できる。
1、2、3、8、9、13、14、15、21、22 透明基板
31、32、33、34、41、42、43、44 透明基板
4、5、10、11、16、17 凸部
23、24、37、38、45、46 凸部
15、18、25、47 凸部
6、7、12、19、20、26、39、40、50、51 充填接着剤
35、36、48、49 位相板
53 3波長半導体レーザ
52 本発明の第3実施形態の位相板付3波長用回折素子
54 偏光ビームスプリッタ
55 コリメートレンズ
56 1/4波長板
57 対物レンズ
58 光記録媒体
59 光検出器
31、32、33、34、41、42、43、44 透明基板
4、5、10、11、16、17 凸部
23、24、37、38、45、46 凸部
15、18、25、47 凸部
6、7、12、19、20、26、39、40、50、51 充填接着剤
35、36、48、49 位相板
53 3波長半導体レーザ
52 本発明の第3実施形態の位相板付3波長用回折素子
54 偏光ビームスプリッタ
55 コリメートレンズ
56 1/4波長板
57 対物レンズ
58 光記録媒体
59 光検出器
Claims (5)
- 3つの異なる波長λ1、λ2およびλ3(λ1<λ2<λ3)の入射光が別々に入射して用いられる、少なくとも2つの積層された回折格子を備えた3波長用回折素子において、
3波長用回折素子が有する2つの回折格子は、それぞれ2つの異なる樹脂が接していてその断面形状が周期的な凹凸状をなしており、凹凸状の凸部は複屈折性を示す樹脂からなり、凹凸状の少なくとも凸部間は充填された光学的等方性の樹脂からなっていて、2つの回折格子のうち、第1の回折格子は波長λ1の入射光を回折するとともに、波長λ2および波長λ3の入射光を透過し、第2の回折格子は波長λ1の入射光を透過するとともに、波長λ3の入射光を回折するように凸部の屈折率および/または高さ、並びに光学的等方性の樹脂の屈折率が調整されていることを特徴とする3波長用回折素子。 - 前記3波長用回折素子の1つ面に、無機材料からなる周期的な凹凸部または凸部を有する第3の回折格子がさらに形成され、波長λ1および波長λ3の入射光を透過するとともに波長λ2の入射光を回折するように無機材料の凸部の屈折率および/または高さが調整され、かつ前記第2の回折格子が波長λ2の入射光を透過するように構成されている請求項1に記載の3波長用回折素子。
- 2枚の位相板が請求項1に記載の3波長用回折素子を挟むように積層されており、前記位相板としてそれぞれ、波長λ1の光に対して2πの位相差を有し、波長λ2の光に対して略πの位相差を有し、かつ波長λ3の光に対して略πの位相差を有する位相板付3波長用回折素子。
- 前記2枚の位相板のうち一方の位相板の側に、無機材料からなる周期的な凹凸部または凸部を有する第3の回折格子がさらに形成され、波長λ1および波長λ3の入射光を透過するとともに波長λ2の入射光を回折するように無機材料の凸部の屈折率および/または高さが調整されている請求項3に記載の位相板付3波長用回折素子。
- 3つの異なる波長λ1、λ2およびλ3の光を出射する光源と、それぞれの波長の光を光記録媒体に集光する対物レンズと、集光されて光記録媒体により反射された光を検出する光検出器とを備え、光記録媒体の情報の再生および/または記録を行なう光ヘッド装置において、光源と対物レンズとの間の光路中に、請求項1または2に記載の3波長用回折素子、あるいは請求項3または4に記載の位相板付3波長用回折素子のいずれかが設置されていることを特徴とする光ヘッド装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2010089548A JP2010153039A (ja) | 2010-04-08 | 2010-04-08 | 3波長用回折素子、位相板付3波長用回折素子および光ヘッド装置 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN107589549A (zh) * | 2017-10-19 | 2018-01-16 | 四川思创优光科技有限公司 | 一种光纤激光合成器 |
-
2010
- 2010-04-08 JP JP2010089548A patent/JP2010153039A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN107589549A (zh) * | 2017-10-19 | 2018-01-16 | 四川思创优光科技有限公司 | 一种光纤激光合成器 |
CN107589549B (zh) * | 2017-10-19 | 2023-10-27 | 四川思创激光科技有限公司 | 一种光纤激光合成器 |
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