明 細 書
光制御素子
技術分野
[0001] 本発明は、光制御素子に関し、特に、電気光学効果を有し、厚みが 10 m以下の 薄板と、該薄板に形成された光導波路と、該光導波路を通過する光を制御するため の制御電極とを有する光制御素子に関する。
背景技術
[0002] 従来、光通信分野や光測定分野において、電気光学効果を有する基板上に光導 波路や制御電極を形成した導波路型光変調器や導波路型光スィッチなどの各種の 光制御素子が多用されている。
現在利用されている光制御素子の多くの形態は、図 1 (a)に示すような、厚さ 0. 5〜 lmm程度の電気光学結晶基板 1に、光導波路 2や信号電極 4及び接地電極 5を形 成したものである。なお、図 1 (a)は Zカット型 LiNbO基板を用いた光変調器の例で
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あり、符号 3は SiO膜などのノッファ層を示している。
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[0003] 特に、導波路型光変調器においては、光導波路内を伝搬する光波を変調制御す るため、マイクロ波信号が制御電極に印加されている。このため、マイクロ波が効率的 に制御電極を伝搬するためには、マイクロ波を光変調器に導入する同軸ケーブルな どの信号線路と光変調器内の制御電極とのインピーダンス整合を図る必要がある。 このため、図 1 (a)に示すように、信号電極 4を接地電極 5で挟み込む形状、いわゆ るコプレーナ型の制御電極が利用されている。
[0004] し力しながら、コプレーナ型制御電極の場合には、基板 1の電気光学効果の効率 が高い方向(図 1 (a)の Zカット型 LiNbO基板の場合には、上下方向が該当する)に
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、効率的に外部電界が作用しないため、必要な光変調度を得るために、より大きな電 圧が必要となる。具体的には、 LiNbO (以下、「LN」という)基板を利用し、光導波路
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に沿った電極長が lcmの場合には、約 10〜15V程度の半波長電圧が必要となる。
[0005] また、図 1 (b)に示すように、特許文献 1には、光導波路の光波の閉じ込めを改善し 、制御電極が生成する電界をより効率良く光導波路に印加するために、光導波路を
リッジ型導波路 20とし、信号電極 4及び 41に対して、接地電極 5, 51, 52をより近接 配置する構成が提案されている。この構成により、ある程度の駆動電圧の低減は実 現できるが、特に、高周波帯域における高速変調を実現するには、より一層の駆動 電圧の低減が不可欠である。
特許文献 1 :米国特許明細書第 6, 580, 843号
[0006] また、特許文献 2には、図 1 (c)に示すように、基板を制御電極で挟み込み、電気光 学効果の効率が高い方向(図 1 (c)の Zカット型 LiNbO基板の場合には、上下方向
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が該当する)に電界を印加することが提案されている。し力も、図 1 (c)の光変調器は 、電気光学効果を有する基板を分極反転し、自発分極の方向(図中の矢印方向)が 異なる基板領域 10及び 11を形成すると共に、各基板領域には光導波路 2が形成さ れており、共通の信号電極 42と接地電極 53で各光導波路に電界を印加した場合に は、各光導波路を伝搬する光波には逆向きの位相変化を発生させることが可能とな る。このような差動駆動により、駆動電圧をより一層低下させることが可能となる。 特許文献 2:特許第 3638300号公報
[0007] し力しながら、図 1 (c)のような電極構造では、マイクロ波の屈折率が高くなり、光導 波路を伝搬する光波と変調信号であるマイクロ波との速度整合を取ることが困難とな る。し力も、インピーダンスは逆に低くなるため、マイクロ波の信号線路とのインピーダ ンス整合を取ることも難しくなるという欠点がある。
[0008] 他方、以下の特許文献 3又は 4にお 、ては、 30 μ m以下の厚みを有する極めて薄 い基板 (以下、「薄板」という)に、光導波路並びに変調電極を組み込み、該薄板より 誘電率の低い他の基板を接合し、マイクロ波に対する実効屈折率を下げ、マイクロ波 と光波との速度整合を図ることが行われて 、る。
特許文献 3 :特開昭 64— 18121号公報
特許文献 4:特開 2003— 215519号公報
[0009] し力しながら、このような薄板を用いた光変調器に対して、図 1 (a)乃至 (c)のような 構造の制御電極を形成した場合であっても、依然として、上述した問題は、根本的に 解消されていない。図 1 (c)のような制御電極で基板を挟み込む場合には、基板の厚 みを薄くした場合、マイクロ波屈折率は下がる傾向にあるが、光波とマイクロ波との速
度整合を実現するのは困難である。電極の幅にも依存する力 例えば、 LNの薄板を 用いた場合で、実効屈折率が約 5程度であり、最適値である 2. 14には及ばない。他 方、インピーダンスは、基板が薄くなるに従い下がる傾向となり、インピーダンス不整 合が拡大する原因となる。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0010] 本発明が解決しょうとする課題は、上述したような問題を解決し、マイクロ波と光波と の速度整合やマイクロ波のインピーダンス整合が実現でき、しかも、駆動電圧の低減 が可能な光制御素子を提供することである。
また、駆動電圧の低減により、光制御素子の温度上昇を抑制でき安定動作が可能 な光制御素子を提供することであり、さらには、コストのより安い低駆動電圧型駆動装 置を利用できる光制御素子を提供することである。
課題を解決するための手段
[0011] 上記課題を解決するため、請求項 1に係る発明では、電気光学効果を有し、厚み 力 10 m以下の薄板と、該薄板に形成された光導波路と、該光導波路を通過する 光を制御するための制御電極とを有する光制御素子において、該制御電極は、該薄 板を挟むように配置された第 1電極と第 2電極とからなり、該第 1電極は、少なくとも信 号電極と接地電極とからなるコプレーナ型の電極を有し、該第 2電極は、少なくとも接 地電極を有すると共に、第 1電極の信号電極と協働して該光導波路に電界を印加す るよう構成されて 、ることを特徴とする。
本発明における「コプレーナ型の電極」とは、信号電極を接地電極で挟んだものを 意味し、例えば、信号電極と両側の接地電極は同じ電極間隔のものや、電極間隔が 異なるもの、接地電極が片側だけのものも含むものである。また、信号電極を複数の ラインで形成し、これら複数のラインを接地電極で挟むものや、さら〖こ、複数のライン の間に接地電極を追加配置するものなども含むものである。
[0012] 請求項 2に係る発明では、請求項 1に記載の光制御素子において、該光導波路は リッジ型光導波路であることを特徴とする。
[0013] 請求項 3に係る発明では、請求項 1又は 2に記載の光制御素子において、該薄板と
、該第 1電極又は該第 2電極との間にはバッファ層が形成されていることを特徴とする
[0014] 請求項 4に係る発明では、請求項 1乃至 3のいずれかに記載の光制御素子におい て、該信号電極又は該接地電極は、透明電極又は薄板側に透明電極を配置した電 極の 、ずれかで構成されて 、ることを特徴とする。
[0015] 請求項 5に係る発明では、請求項 2乃至 4のいずれかに記載の光制御素子におい て、少なくとも該リッジ型導波路の両側に配置された溝には、低誘電率膜が充填され ていることを特徴とする。
[0016] 請求項 6に係る発明では、請求項 5に記載の光制御素子において、該信号電極に 給電する信号線は、該第 1電極の接地電極を跨ぐあるいは潜るように配置され、該信 号線と該接地電極との間には該低誘電率膜が配置されていることを特徴とする。
[0017] 請求項 7に係る発明では、請求項 1乃至 6のいずれかに記載の光制御素子におい て、該第 2電極は、該光導波路の形状に対応した形状を有するパターン状電極であ ることを特徴とする。
[0018] 請求項 8に係る発明では、請求項 1乃至 7のいずれかに記載の光制御素子におい て、該第 1電極の接地電極と該第 2電極の接地電極とは、該薄板に設けられたスル 一ホールを介して電気的に接続されて ヽることを特徴とする。
[0019] 請求項 9に係る発明では、請求項 1乃至 8のいずれかに記載の光制御素子におい て、該光導波路の少なくとも一部を含む薄板の自発分極が反転されていることを特 徴とする。
[0020] 請求項 10に係る発明では、請求項 1乃至 9のいずれかに記載の光制御素子にお いて、該薄板は該第 1電極又は該第 2電極を挟むように接着層を介して支持基板に 接着されて ヽることを特徴とする。
[0021] 請求項 11に係る発明では、請求項 10に記載の光制御素子において、該第 2電極 は該支持基板上に配置されて ヽることを特徴とする。
[0022] 請求項 12に係る発明では、請求項 1乃至 11のいずれかに記載の光制御素子にお いて、少なくとも第 1電極の信号電極の幅 W、高さ T 、該第 1電極における信号電極
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と接地電極との間隔 G、及び光導波路がリッジ型光導波路である場合にはリッジの深
さ Dは、該信号電極に係る半波長電圧 Vpaiが 8V'cm以下、インピーダンス Zが 30 Ω 以上 60 Ω以下、及び光とマイクロ波との屈折率差 Δ nと該信号電極の電界が光導波 路に作用する作用部分の長さ Lとの積が 1. 3cm以下となるように設定されていること を特徴とする。
発明の効果
[0023] 請求項 1に係る発明により、電気光学効果を有し、厚みが 10 m以下の薄板と、該 薄板に形成された光導波路と、該光導波路を通過する光を制御するための制御電 極とを有する光制御素子において、該制御電極は、該薄板を挟むように配置された 第 1電極と第 2電極とからなり、該第 1電極は、少なくとも信号電極と接地電極とからな るコプレーナ型の電極を有し、該第 2電極は、少なくとも接地電極を有すると共に、第 1電極の信号電極と協働して該光導波路に電界を印加するよう構成されているため、 マイクロ波と光波との速度整合やマイクロ波のインピーダンス整合が実現でき、高速 動作が可能な光制御素子を提供することができる。し力も、駆動電圧の低減が可能 なため、既存の廉価な駆動装置を用いて高速駆動が可能となり、駆動装置に係るコ ストも削減できる。
[0024] 請求項 2に係る発明により、光導波路はリッジ型光導波路であるため、光波の閉じ 込め効率が高ぐまた、制御電極が形成する電界を光導波路に集中させることが可 能となり、より低駆動電圧の光制御素子を実現することができる。
[0025] 請求項 3に係る発明により、薄板と、第 1電極又は第 2電極との間にはバッファ層が 形成されているため、光導波路を伝搬する光波の伝搬損失を抑制しながら、制御電 極を光導波路のより近傍に配置することが可能となる。
[0026] 請求項 4に係る発明により、信号電極又は接地電極は、透明電極又は薄板側に透 明電極を配置した電極の 、ずれかで構成されて 、るため、ノッファ層が無 、場合で も、光導波路を伝搬する光波の伝搬損失を抑制しながら、制御電極を光導波路のよ り近傍に配置することが可能となる。
[0027] 請求項 5に係る発明により、少なくともリッジ型導波路の両側に配置された溝には、 低誘電率膜が充填されて ヽるため、制御電極におけるマイクロ波屈折率やインピー ダンスの調整が可能となり、より適切なマイクロ波屈折率やインピーダンスを得ること
ができる。
[0028] 請求項 6に係る発明により、信号電極に給電する信号線は、第 1電極の接地電極を 跨ぐあるいは潜るように配置され、該信号線と該接地電極との間には該低誘電率膜 が配置されているため、制御電極の配線の自由度が増し、光集積回路などの複雑な 配線も可能となる。また、配線を立体ィ匕することができ、より適切なマイクロ波の屈折 率やインピーダンスを得ることも可能となる。
[0029] 請求項 7に係る発明により、第 2電極は、光導波路の形状に対応した形状を有する ノターン状電極であるため、光導波路に印加される電界を、より集中させることができ 、駆動電圧をより一層低減させることが可能となる。
[0030] 請求項 8に係る発明により、第 1電極の接地電極と第 2電極の接地電極とは、薄板 に設けられたスルーホールを介して電気的に接続されて ヽるため、光制御素子に係 る電気配線を簡略化できると共に、第 1電極の接地電極と第 2電極の接地電極と〖こ 発生する浮遊電荷のズレを抑制でき、より適切な電界を光導波路に印カロさせることが 可能となる。
[0031] 請求項 9に係る発明により、光導波路の少なくとも一部を含む薄板の自発分極が反 転されているため、光制御素子の差動駆動が、簡便な制御電極や駆動回路で容易 に実現できる上、駆動電圧を低減することも可能となる。
[0032] 請求項 10に係る発明により、薄板は第 1電極又は第 2電極を挟むように接着層を介 して支持基板に接着されているため、薄板の機械的強度を補強でき、信頼性の高い 光制御素子を提供するが可能となる。
[0033] 請求項 11に係る発明により、第 2電極は支持基板上に配置されているため、制御 電極に係る配置の自由度が増し、光集積回路などの複雑な配線も可能となる。さら に、薄板に配置される制御電極の数が減少でき、薄板に加わる熱応力などにより薄 板が破損する危険性を減少させることも可能となる。
[0034] 請求項 12に係る発明により、少なくとも第 1電極の信号電極の幅 W、高さ T 、該第
Eし
1電極における信号電極と接地電極との間隔 G、及び光導波路がリッジ型光導波路 である場合にはリッジの深さ Dは、該信号線路に係る半波長電圧 Vpaiが 8V' cm以 下、インピーダンス Zが 30 Ω以上 60 Ω以下、及び光とマイクロ波との屈折率差 Δ nと
該信号電極の電界が光導波路に作用する作用部分の長さ Lとの積が 1. 3cm以下と なるように設定されているため、信号電極の幅や高さ、また、信号電極と接地電極と の間隔やリッジの深さなどを調整するだけで、マイクロ波と光波との速度整合や、変 調信号を入力する側のインピーダンスに対するマイクロ波のインピーダンス整合が極 めて容易に実現でき、高速動作が可能な光制御素子を提供することができる。し力も 、駆動電圧の低減が可能なため、既存の廉価な駆動装置を用いて高速駆動が可能 となり、駆動装置に係るコストも削減できる。
図面の簡単な説明
図 1]従来の光制御素子の例を示す図である。
図 2]本発明の光制御素子の実施例を示す図である。
図 3]リッジ型導波路を有する光制御素子の例を示す図である。
図 4]低誘電率膜を有する光制御素子の例を示す図である。
図 5]薄板の裏面側に光導波路を形成した光制御素子の例を示す図である。
図 6]透明電極を利用した光制御素子の例を示す図である。
図 7]第 2電極にパターン状電極を用いた光制御素子の例を示す図である。
図 8]分極反転を用いた光制御素子の例を示す図である。
図 9]スルーホールを利用した光制御素子の例を示す図である。
図 10]計算モデルを説明する図である。
図 11]基板の厚さに対する駆動電圧値の変化示すグラフである。
:図 12]計算結果 (t= - 2 μ ΐΆ, D/t = : 0.2)を示す表である。
:図 13]計算結果 (t= - 2 μ ΐΆ, D/t = 0.4)を示す表である。
:図 14]計算結果 (t= - 2 μ ΐΆ, D/t = 0.6)を示す表である。
:図 15]計算結果 (t= - 2 μ ΐΆ, D/t = 0.8)を示す表である。
:図 16]計算結果 (t= 4 μ m, D/t = 0.2)を示す表である。
:図 17]計算結果 (t= 4 μ m, D/t = 0.4)を示す表である。
:図 18]計算結果 (t= 4 μ m, D/t = 0.6)を示す表である。
:図 19]計算結果 (t= 4 μ m, D/t = 0.8)を示す表である。
:図 20]計算結果 (t= - 6 μ ΐΆ, D/t = 0.2)を示す表である。
圆 21]計算結果 (t= :Ό ^ m, D/t = :0.4)を示す表である。
圆 22]計算結果 (t= :Ό ^ m, D/t = :0.6)を示す表である。
圆 23]計算結果 (t= Ό μ ΐΆ, D/t = :0.8)を示す表である。
圆 24]計算結果 (t= 8 μ ΐΆ, D/t = :0.2)を示す表である。
圆 25]計算結果 (t= 8 μ ΐΆ, D/t = :0.4)を示す表である。
[図 26]計算結果 (t= 8 μ ΐΆ, D/t = :0.6)を示す表である。
[図 27]計算結果 (t= 8 μ ΐΆ, D/t = :0.8)を示す表である。
[図 28]計算結果 (t= 2 μ ΐΆ, W/t = = 2.2-4.0)における Vpai評価を示す表である。
[図 29]計算結果 (t= 2 μ ΐΆ, W/t = = 2.2-4.0)における Z評価を示す表である。
[図 30]計算結果 (t= 2 μ ΐΆ, W/t = =2.2〜4.0)における NM評価を示す表である。 符号の説明
[0036] 1 Zカット型 LN結晶基板
2 光導波路
3, 31 ノ ッファ層
4, 41, 42, 43, 44, 140 信号電極
5, 51, 52, 53, 54, 55, 56, 150 接地電極
6 接着層
7 支持基板
8, 81 低誘電率膜
9, 91, 92, 93, 94, 95, 96 透明電極
11 Xカット型 LN結晶基板
20 リッジ型導波路(リッジ部)
100 スルーホールに形成された接続線路
発明を実施するための最良の形態
[0037] 以下、本発明を好適例を用いて詳細に説明する。
本発明に係る光制御素子の基本的な構成は、電気光学効果を有し、厚みが 10 m以下の薄板と、該薄板に形成された光導波路と、該光導波路を通過する光を制御 するための制御電極とを有する光制御素子において、該制御電極は、該薄板を挟む
ように配置された第 1電極と第 2電極とからなり、該第 1電極は、少なくとも信号電極と 接地電極とからなるコプレーナ型の電極を有し、該第 2電極は、少なくとも接地電極 を有すると共に、第 1電極の信号電極と協働して該光導波路に電界を印加するよう構 成されて!/ヽることを特徴とする。
[0038] 図 2は、本発明の光制御素子に係る実施例を示す断面図であり、図 2 (a)は Zカット 型 LN基板 (薄板) 1を利用した場合を、図 2 (b)は Xカット型 LN基板 (薄板) 11を利用 した場合を、各々示している。本発明の光制御素子においては、薄板の厚みは 10 m以下が好ましい。
図 2 (a)では、薄板 1に光導波路 2が形成され、該薄板 1を挟むように制御電極が配 置されている。制御電極としては、薄板 1の上側に配置された第 1電極と、薄板、下側 に配置された第 2電極とがある。第 1電極には、信号電極 4と接地電極 5が設けられ、 また、第 2電極には接地電極 54が設けられている。第 1電極及び第 2電極には、図示 した電極以外に DC電極など、必要な電極を適宜付加できることは言うまでもな!/ヽ。
[0039] 図 2 (a)の光制御素子の特徴は、光導波路 2に対して信号電極 4と接地電極 5によ る電界以外に、信号電極 4と接地電極 54とによる電界が印加されることである。これ により、光導波路 2をおける図の縦方向の電界を強くすることができ、駆動電圧を低 減させることが可會となる。
しかも、制御電極におけるマイクロ波の屈折率及びインピーダンスは、信号電極 4と 接地電極 5及び 54により決定されるため、例えば、最適値であるマイクロ波屈折率 2 . 14、インピーダンス 50 Ωに設定することも可能となる。
[0040] 各電極は、薄板との間に SiO膜などのバッファ層 3又は 31を介して配置されている
2
。バッファ層には、光導波路を伝搬する光波が、制御電極により吸収又は散乱される ことを防止する効果を有している。また、ノ ッファ層の構成としては、必要に応じ、薄 板 1の焦電効果を緩和するため、 Si膜などを組み込むことも可能である。
なお、接地電極 5又は 54と薄板 1との間に存在するバッファ層は、省略することも可 能である力 薄板 1の光導波路と接地電極 54との間にあるノッファ層については、薄 板の厚みが薄くなるに従い、光導波路を伝搬する光波のモード径は薄板の厚みとほ ぼ等しくなることから、接地電極 54による光波の吸収又は散乱も発生するため、この
部分のバッファ層は残しておくことが好ましい。
[0041] また、光制御素子の基板は薄板であるため、薄板 1に対する第 1電極と第 2電極と の配置を、逆にした場合でも、図 1 (a)のものと同様に、光制御素子を動作させること が可能である。
[0042] 薄板 1は、第 2電極が形成された後に、接着層 6を介して支持基板 7に接合される。
これにより、薄板 1が 以下の場合でも、光制御素子として十分な機械的強度を 確保することが可能となる。
また、図 2 (a)では、第 2電極 (第 1電極と第 2電極との配置を逆にした場合には、第 1電極)は、薄板 1側に接して配置されているが、支持基板 7上に第 2電極 (又は第 1 電極)を形成し、接着層を介して薄板 1に接合することも可能である。
[0043] 図 2 (b)は、 Xカット型 LN基板を用いたものであり、電気光学効果の効率が高い方 向は、図の横方向となる。このため、第 1電極では、光導波路 2を挟む位置に信号電 極 4と接地電極 5とを配置し、第 2電極では、信号電極 4と接地電極 55及び 56とが形 成する電界が、光導波路 2に対して横方向の成分を有するように、接地電極 55及び 56の形状及び配置が決定されている。なお、後述するように、第 2電極を光導波路 の形状に対応してパターン状電極とすることにより、より最適な電界分布を形成するこ とが可能となる。
[0044] 薄板に使用される電気光学効果を有する結晶性基板としては、例えば、ニオブ酸リ チウム、タンタル酸リチウム、 PLZT (ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)、及び石英系の 材料及びこれらの組み合わせが利用可能である。特に、電気光学効果の高いニオブ 酸リチウム (LN)やタンタル酸リチウム (LT)結晶が好適に利用される。
[0045] 光導波路の形成方法としては、 Tiなどを熱拡散法やプロトン交換法などで基板表 面に拡散させることにより形成することができる。また、特許文献 5のように薄板 1の表 面に光導波路の形状に合わせてリッジを形成し、光導波路を構成することも可能であ る。
信号電極や接地電極などの制御電極は、 Ti.Auの電極パターンの形成及び金メッ キ方法などにより形成することが可能である。また、後述する透明電極については、 I TOや赤外透明導電膜である Inと Tiの複合酸ィ匕物膜などが利用可能であり、フォトリ
ソグラフィ一法により電極パターンを形成しリフトオフ法によって形成する方法や、所 定の電極パターンが残るようにマスク材を形成し、ドライエッチング、あるいはウエット エッチングにて形成する方法などが使用可能である。
特許文献 5:特開平 6 - 289341号公報
[0046] 光制御素子を含む薄板 1の製造方法は、数百 μ mの厚さを有する基板に上述した 光導波路を形成し、基板の裏面を研磨して、 10 m以下の厚みを有する薄板を作 成する。その後薄板の表面に制御電極を作り込む。また、光導波路や制御電極など の作り込みを行った後に、基板の裏面を研磨することも可能である。なお、光導波路 形成時の熱的衝撃や各種処理時の薄膜の取り扱いによる機械的衝撃などが加わる と、薄板が破損する危険性もあるため、これらの熱的又は機械的衝撃が加わり易い 工程は、基板を研磨して薄板ィ匕する前に行うことが好ましい。
[0047] 支持基板 7に使用される材料としては、種々のものが利用可能であり、例えば、薄 板と同様の材料を使用する他に、石英、ガラス、アルミナなどのように薄板より低誘電 率の材料を使用したり、薄板と異なる結晶方位を有する材料を使用することも可能で ある。ただし、線膨張係数が薄板と同等である材料を選定することが、温度変化に対 する光制御素子の変調特性を安定させる上で好ましい。仮に、同等の材料の選定が 困難である場合には、薄板と支持基板とを接合する接着剤に、薄板と同等な線膨張 係数を有する材料を選定する。
[0048] 薄板 1と支持基板 7との接合には、接着層 6として、エポキシ系接着剤、熱硬化性接 着剤、紫外線硬化性接着剤、半田ガラス、熱硬化性、光硬化性あるいは光増粘性の 榭脂接着剤シートなど、種々の接着材料を使用することが可能である。
[0049] 以下に、本発明に係る光制御素子の応用例について説明する。なお、以下の図面 には、前出した部材と同じ部材を用いる場合には、可能な限り同じ符号を用い、さら に、構成の特徴を明確にするため、必要に応じ接着層や支持基板を省略して記載し ている。
(リッジ型 を する 葡| )
図 3は、本発明の光制御素子に係る応用例であり、光導波路をリッジ型導波路で形 成した例を示す。光導波路をリッジ型光導波路で形成することにより、光波の閉じ込
め効率が高くなり、また、制御電極が形成する電界を光導波路に集中させることが可 能となるため、より低駆動電圧の光制御素子を実現することができる。
[0050] 図 3 (a)は、図 2 (a)の光制御素子の光導波路をリッジ型導波路 20としたものであり 、リッジ部 20に伝搬する光波を閉じ込めている。リッジ部 20には、信号電極 4と接地 電極 5とが形成する電界と、信号電極 4と接地電極 54とが形成する電界とが集中的 に印加されるため、光制御素子の駆動伝達を低減させることにも寄与する。
[0051] 図 3 (b)は、 2つの光導波路 2をリッジ型導波路 20とするものである。リッジ型導波路 に対応して信号電極 4及び 41が配置され、信号電極には互いに逆向きの信号など が印加されている。
例えば、左側のリッジ部 20についてみると、信号電極 4と接地電極 5とが形成する 電界と、信号電極 4と接地電極 54とが形成する電界と、さらには信号電極 4と信号電 極 41とが形成する電界とが集中的に印加される。
[0052] 図 3 (c)は、 2つの光導波路 2をリッジ型導波路 20とすると共に、 2つの光導波路間 に、接地電極 51に対応したリッジ部を形成したものである。リッジ型導波路 20に対応 して信号電極 4及び 41が配置され、信号電極には個々独立した信号などが印加され ている。
例えば、左側のリッジ部 20についてみると、信号電極 4と接地電極 5とが形成する 電界と、信号電極 4と接地電極 54とが形成する電界と、さらには信号電極 4と接地電 極 51とが形成する電界とが集中的に印加される。
[0053] 基板の厚さとほぼ同じ程度までリッジの深さを形成することは、現時点の製造技術 では変調器としての機械的強度に課題が残るが、光導波路の閉じ込めが強くなり、 信号電極により形成される電界が集中的に印加される。機械的強度を強くするため には、リッジ力卩ェ部を低誘電率膜で埋めることができる。
また、接地電極下の基板 1は、電気光学効果を有する必要なぐ図 4又は図 5に示 す低誘電率膜を基板の代替に使用することもできる。これにより、接地電極部の電気 光学基板を残す必要が無く作製条件が広がる。また、信号電極周辺部に低誘電率 層がくるため、電極損が低下し高周波対応が可能となる。
[0054] (低誘 を する ¾P )
図 4は、本発明の光制御素子に係る応用例であり、リッジ型導波路を形成する溝や 、第 1電極を構成する信号電極 4と接地電極 5との間に低誘電率膜を配置した例を示 す。このような低誘電率膜の配置により、制御電極におけるマイクロ波屈折率やイン ピーダンスの調整が可能となり、また、制御電極の配線の自由度を増加させることが 可能となる。
低誘電率膜の材料としては、ベンゾシクロブテン (BCB)などが使用でき、低誘電率 膜の製造方法として、塗付法などが利用できる。
[0055] 図 4 (a)に示すように、リッジ型導波路 20の両側に形成される溝や、信号電極 4と接 地電極 5との間、あるいは第 1電極を覆うように低誘電率膜 8を形成することができる。 また、図 4 (b)に示すように、接地電極 5を跨ぐように信号電極 4の給電部 42を配置 し、接地電極 4と給電部 42との間には低誘電率膜 8が配置される。これにより、制御 電極の立体的な配線が可能となり、制御電極に係る配線設計の自由度が増加する。 さら〖こ、接地電極を信号電極の上方 (薄板から離れる位置)を通過させることも可能 である。
[0056] (薄 の に 成した 制御ま子)
図 5は、本発明の光制御素子に係る応用例であり、光導波路 2 (リッジ型導波路 20) を薄板 1の裏面(図の下側)に形成した例を示す。
厚みが 10 m以下の薄板を使用する場合には、図 5 (a)のように、光導波路 2を薄 板 1の裏面に形成し、第 1電極である信号電極 4及び接地電極 5を薄板の表面に、ま た、第 2電極である接地電極 54を薄板 1の裏面に形成しても、特に信号電極 4と接地 電極 54とが形成する電界により、リッジ部 20に電界を印加させることが可能となる。
[0057] また、図 5 (b)は、 2つの信号電極 4及び 41を用いた例であり、左側のリッジ部 20に 対しては、特に信号電極 4と接地電極 54とが形成する電界により、また、右側のリッジ 部 20に対しては、特に信号電極 41と接地電極 54とが形成する電界により、電界が 印加される。
なお、各リッジ部 20を形成する溝には、必要に応じて低誘電率膜 81が形成されて いる。図 5における低誘電率膜 81に替わり、空気層を配置し、誘電率の低い領域を 形成することも可能である。
[0058] 図 3のような光制御素子の場合には、リッジ型導波路のリッジ部の頂上に信号電極 4や 41を正確に配置することが必要である力 図 5のような光制御素子の場合には、 信号電極 4や 41の幅をリッジ型導波路の幅以上に設定するだけで、両者間に若干 の位置ズレが発生しても、効率よくリッジ部に電界を印加することができるという利点 を有している。
[0059] (诱明雷極を刺用した光制御素子)
図 6は、本発明の光制御素子に係る応用例であり、透明電極(9及び 91至 96)を電 極に使用した例を示す。信号電極又は接地電極に、透明電極又は薄板側に透明電 極を配置した電極のいずれかを用いることにより、ノ ッファ層が無い場合でも、光導 波路を伝搬する光波の伝搬損失を抑制しながら、制御電極を光導波路のより近傍に 配置することが可能となり、駆動電圧を低減させることができる。
[0060] 図 6 (a)は、第 2電極の接地電極に透明電極 9を使用する例であり、図 6 (b)は第 1 電極に透明電極 91, 92を使用する例である。これらの場合には、図 3 (a)で示したバ ッファ層 31や 3が不要となり、電極を光導波路に近接して配置することが可能となる。 なお、図 6 (b)の第 1電極を構成する接地電極 (透明電極 91)は、電極の近傍に光 導波路が無いため、通常の金属電極で形成しても良い。
[0061] 図 6 (c)及び (d)は、制御電極の一部(薄板 1又は 11に接する側)に、透明電極を 使用する例を示すものである。透明電極は、一般的に Auなどの金属電極と比較して 電気抵抗率が高いため、電極の電気抵抗を下げる目的で、透明電極 9や 93乃至 96 に接触して金属電極 140, 150, 151を配置することができる。透明電極の厚さは、 例えば、バッファ層と同程度の 0. 相当であればよぐ屈折率によってはそれ以 上の 3 μ m位であっても良い。
また、透明電極は、 93や 95, 96に示したようにリッジ型導波路の近傍又はリッジ型 光導波路の側面に配置することも可能であり、極めて効果的に電界を導波路に作用 させることが可會となる。
なお、図 6 (c)は、 Zカット型 LN基板を用いた例であり、図 6 (d)は Xカット型 LN基板 を用いた例である。
[0062] (第 2電極にパターン状電極を用いた光制御素子)
図 7は、本発明の光制御素子に係る応用例であり、第 2電極を形成する接地電極を パターン状電極で構成した例を示す。第 2電極を、光導波路の形状に対応した形状 を有するパターン状電極とすることにより、光導波路に印加される電界を、より適切な 形状に調整でき、駆動電圧をより一層低減させることが可能となる。
[0063] 図 7 (a)は、接地電極 57を光導波路 2に沿ったストリップ状の電極とし、信号電極 4 と接地電極 57とが形成する電界を、より光導波路 2に集中するように構成している。 また、図 7 (b)は、 Xカット型の薄板 11を用いた例であり、第 2電極を形成する接地 電極 58, 59力 パターン状電極で形成されている。
[0064] (分極 を用いた 制御 子)
図 8は、本発明の光制御素子に係る応用例であり、薄板 1を分極反転した例を示す 。光導波路の少なくとも一部を含む薄板 1の自発分極を反転させることにより、光制御 素子の差動駆動が、簡便な制御電極や駆動回路で容易に実現でき、駆動電圧の低 減も可能となる。
[0065] 図 8 (a)は、薄板 1の基板領域 12と 13とにおいて、互いに異なる向き(図中の矢印) に自発分極が揃えられている。第 1電極を構成する信号電極 43は、各基板領域 12 及び 13に形成された光導波路 2に対して、共通の電界を印加することが可能である 。各光導波路においては互いに基板の分極方向が異なるため、光導波路を伝搬す る光波の位相変化が逆の状態となり、結果として、差動駆動と同様の効果を得ること ができる。
[0066] 図 8 (b)は、薄板 1の基板領域 12と 13との分極方向を互いに異なるように調整する と共に、リッジ型光導波路を利用した場合の例を示す。 2つのリッジ型導波路 20に電 界を印加する信号電極 44は共通であり、さらに、 2つの信号電極 44は接続線路 45 により導通されている。また、リッジ型導波路を形成する溝や、信号電極と接地電極 5 との間には、低誘電率膜 8が形成されている。
[0067] (スルーホールを利用した光制御素子)
図 9は、本発明の光制御素子に係る応用例であり、第 1電極の接地電極と第 2電極 の接地電極との電気的接続に、スルーホールを利用した例である。第 1電極の接地 電極と第 2電極の接地電極とを、薄板に設けられたスルーホールを介して電気的に
接続することにより、光制御素子に係る電気配線を簡略ィ匕できると共に、第 1電極の 接地電極と第 2電極の接地電極とに発生する浮遊電荷のズレを抑制でき、より適切 な電界を光導波路に印カロさせることが可能となる。
[0068] 図 9 (a)は、 Zカット型 LN薄板 1を利用した例であり、第 1電極の接地電極 5と第 2電 極の接地電極 54とが、薄板 1のスルーホール内に配置された接続線路 100により導 通状態に維持されている。
図 2乃至図 8に例示した第 1電極の接地電極と第 2電極の接地電極とは、薄板の周 囲又は外部で電気的に導通されているが、制御電極に印加される変調信号が高周 波になるに従い、接地電極に誘起される浮遊電荷にタイミングのズレが生じ易くなる 。このため、図 9 (a)のように、光導波路に近い場所で両者を導通することで、このタイ ミングのズレを抑制することが可能となる。
図 9 (b)は、 Xカット型 LN薄板 11を用いた例について、同様にスルーホールを設け たものを示している。
実施例
[0069] 本発明の光制御素子の基本的な特性を見るため、図 3 (a)のように、基板の表面側 にコプレーナ電極を有し、裏面側に接地電極を配置した実施例と、図 1 (a)のように 基板表面にコプレーナ電極のみを配置した従来技術例 1、図 1 (c)のように、基板の 表面側と裏面側の制御電極で挟み込んだ従来技術例 2とにっ 、て、基板の厚さが 2 〜: LO μ mの範囲における駆動電圧値 (V' cm)の変化を計算した。実施例について は、信号電極 4の高さ Z基板 1の厚さ = 1. 25,信号電極 4の幅 Z基板 1の厚さ = 1. 5,信号電極 4と接地電極 5とのギャップ Z基板 1の厚さ = 3,リッジ部 20の高さ Z基 板 1の厚さ = 0. 8,バッファ層 3及び 31の厚み 0. 5 /z m,接地電極 54の厚み 1 mと 仮定した。従来技術 1のコプレーナ電極では、信号電極 4の高さ 27 μ m,幅 7 μ m, 信号電極と接地電極とのギャップ 25 m,バッファ層 3の厚み 0. 7 mと仮定した。 また、従来技術 2の対向電極のタイプでは、制御電極 42及び 53の高さ 27 m,幅 4 2 μ χη,バッファ層(図 1では基板の上面のみにしか形成されていないが、計算上は 基板の両面にバッファ層が形成されていると仮定している。)の厚み 0. 7 mと仮定 している。
[0070] その計算結果を図 11に示す。図 11のグラフから、本発明の光制御素子の基本的 な構造は、基板の厚さが 以下においては、従来の光制御素子より駆動電圧 が低ぐ優れた効果を有することが理解される。駆動電圧値 (半波長電圧 Vpai)は、 1 OV' cm以下であることが好ましぐより好ましくは 8V' cm以下である。図 11において は、基板の厚さが 10 /z mにおいて、駆動電圧値が 8V' cmを超えている力 上記実 施例で設定した数値を再調整することにより、基板の厚さが 10 mの場合であっても 、駆動電圧値を 8V' cm以下とすることが可能であることを確認している。
したがって、本発明の光制御素子においては、基板の厚さは 10 μ m以下が好まし いことが容易に理解される。
次に、本発明の光制御素子の構造を決める各種のパラメータについて計算を行つ た結果を説明する。
[0071] 本発明の光制御素子の構成の例として、図 10に示すように、制御電極は、該薄板 を挟むように配置された第 1電極と第 2電極とからなり、該第 1電極は、少なくとも信号 電極と接地電極とからなるコプレーナ型の電極構造を有し、該第 2電極は、少なくとも 接地電極を有すると共に、第 1電極の信号電極と協働して該光導波路に電界を印加 するように構成した場合に、少なくとも信号電極の幅 W、高さ T 、信号電極と接地電
Eし
極との間隔 G、及び光導波路がリッジ型光導波路である場合にはリッジの深さ Dを調 整することで、以下の条件を満足した光制御素子が設計できることを、有限要素法を 用いて確認した。なお、光導波路としては、直線導波路または直線導波路を組み合 わせたマッハツェンダー型干渉系を構成してもよ!/ヽ。
[0072] (信号線路の条件)
(1)信号線路における半波長電圧 Vpaiが 8V'cm以下
(2)インピーダンス Zが 30 Ω以上 60 Ω以下
(3)光とマイクロ波との屈折率差 Δ ηと信号線路の電界が光導波路に作用する作用 部分の長さ (作用長) Lとの積が 1. 3cm以下
なお、 A n X L≤l. 3cmの場合には、光制御素子の光帯域を 10GHz以上とするこ とが可能となる。
[0073] 計算のモデルとしては、波長 1. 55 mの光に対し、信号線路の電界が光導波路
に作用する片側の断面図が図 10に示すマツハツヱンダー型干渉系を構成した、リツ ジ型光導波路を仮定する。基板 1には Zカット型 LN、バッファ層 3、 31には厚さ 0. 5 /z mの SiOを、信号電極 4および接地電極 5には金を用いる。この時、信号電極 4の
2
幅を W、信号電極 4と接地電極 5との間隔を G、信号電極 4や接地電極 5の高さを T
Eし
、リッジ型光導波路 20のリッジの深さを D、そして基板 1の厚さを tとした。
[0074] 基板の厚み tが、 2 m, 4 m, 6 m, 8 mの 4つの場合につ!、て、シミュレーシ ヨンを行い、各パラメータについては、以下の範囲で離散的に条件となる数値を設定 した。
(信号電極の幅 W)
信号電極の幅 Wは、基板の厚さ tで規格化した値を用い、 WZtが 0.2, 0.5, 0.8, 1. 1, 1.4, 1.7, 2.0となるように設定した。
[0075] (リッジの深さ D)
リッジの深さ Dは、基板の厚さ tで規格化した値を用い、 DZtが 0.2, 0.4, 0.6, 0.8と なるように設定した。
(電極の高さ T )
EL
電極の高さ T は、 0.5, 1.0, 1.5, 2.0, 2.5, 3.0 ( /z m)となるよう〖こ設定した。
EL
[0076] (電極の間隔 G)
電極の間隔 Gは、基板の厚さ tで規格ィ匕した値を用い、 GZt (以下の図では「Gap
Zt」と表記)が 1.0, 2.25, 3.5, 4.75, 6.0となるように設定した。
[0077] 各パラメータに設定された数値から、半波長電圧 Vpai (以下の図では「Vpi」と表記
)、インピーダンス Z (以下の図では「Z0」と表記)、マイクロ波屈折率 NMを算出し、次 の条件を満足する結果にっ 、ては「〇」を、同条件を満足しな 、結果にっ 、ては「 X
」を付与した。
(評価条件)
(1) Vpai≤8 (V-cm)
(2) 30 Ω≤Ζ≤60 Ω
(3) 1. 5≤ΝΜ≤2. 8
ただし、マイクロ波屈折率 NMの範囲については、作用長 Lが 2cm≤L≤6cmであ
る場合について、信号線路の条件(AnXLは 1. 3以下)を満足する条件を評価条件 とした。
[0078] 上記評価条件で評価した結果を、図 12乃至 27に示す。
t= 2 mの場合の結果は、図 12 (DZtが 0.2) ,図 13 (同 0.4) ,図 14 (同 0.6) ,及び 図 15 (同 0.8)に示す。
図 16 (DZtが 0.2) ,図 17 (同 0.4) ,図 18 (同 0.6) ,及び 図 19 (同 0.8)に示す。
t= 6 mの場合の結果は、図 20 (DZtが 0.2) ,図 21 (同 0.4) ,図 22 (同 0.6) ,及び 図 23 (同 0.8)に示す。
t= 8 mの場合の結果は、図 24 (DZtが 0.2) ,図 25 (同 0.4) ,図 26 (同 0.6) ,及び 図 27 (同 0.8)に示す。
[0079] また、上記評価条件の(1)乃至(3)の全ての条件を満足している部分に、網掛けを 施している。
図 12乃至 27から、本発明の光制御素子において、上述した条件を満足する光制 御素子を、信号電極の幅 W、信号電極と接地電極との間隔 G、信号電極や接地電極 の高さを T 、リッジ型光導波路のリッジの深さ D、そして基板の厚さ tを調整すること
Eし
で、容易に実現可能であることが理解される。
[0080] さらに、図 12乃至 27の結果から、各パラメータについては、以下のことも理解できる
[0081] (信号電極幅 Wの範囲)
基板の厚み tが 2, 4, 6 mのいずれにおいても、上記評価条件を満足する部分は 、 WZt>0. 2の範囲に存在する。
特に、
て、 WZtをさらに 2.2〜4.0まで変化させたデータ(図 28乃至 30参照)を見ると、 WZtの上限値は、 Zが上記評価条件を外れることにより規定され 、 WZtの下限値は、 Z又は Vpaiが上記評価条件を外れることにより規定される。これ は、 WZtが大きくなると、信号電極と接地電極間の容量が大きくなり、 Zが小さくなる ために、上述の条件を満足しなくなる。一方、 WZtを小さくすると、電極間の容量が 小さくなるために、 Zが大きくなり上述の条件を満足しなくなる。また、 WZtが小さくな
り過ぎても、光導波路に光が閉じこもらなくなる。このため光導波路と信号電極が形成 する電界の変調効率は低下し、 Vpaiが上述の条件を満足しなくなる。
[0082] Wの上限値について、より詳細に検討する。
t= 2 /z mの場合の WZtの上限値が約 4.0であり、 ί= 6 μ mの場合の WZtの上限 値が約 1.4であることから、図 10のモデルの場合には、 W/tの上限値は WZt =— 0 . 65t+ 5. 3で制限されていることが容易に理解できる。つまり、図 10に示すモデル の一例として、薄板の厚み tと信号電極の幅 Wとの関係 WZtが 0. 2以上、 0. 65t + 5. 3以下で規定される範囲内にある場合には、第 1電極の信号電極の高さ T 、
Eし 第 1電極における信号電極と接地電極との間隔 G、及び光導波路がリッジ型光導波 路である場合にはリッジの深さ Dの各パラメーターの設定自由度を大きくしながら、信 号線路に係る半波長電圧 Vpaiが 8V ' cm以下、インピーダンス Zが 30 Ω以上 60 Ω 以下、及び光とマイクロ波との屈折率差 Δ ηと該信号電極の電界が光導波路に作用 する作用部分の長さ Lとの積が 1. 3cm以下となる条件を実現することが可能となる。
[0083] (リッジの深さ Dの範囲)
ΐ=4 /ζ πιのデータ(図 16〜19参照)を見ると、 Dの下限値は、 WZtの上限付近又 は下限付近で、制限される条件が異なっている。
Dと Wを小さくすると光波の閉じ込め効率が下がるため、制御電極が形成する電界 による変調効率は低下する。よって、 Wの下限の境界付近では、 Vpaiが上記評価条 件より高くなるため、 Dの下限値が規定される。 WZtの上限の境界付近では、信号 電極と接地電極間容量が大きくなり、 Zが小さぐ NMは大きくなるため、 Z又は NMが 上記評価条件を外れることにより規定されている。
なお、 ΐ = 4 /ζ πιにおける WZt = 0. 8のデータを見ると、 DZtが大きくなるに従い、 電極間容量が小さくなり Zが大きくなるため、 Zが上記評価条件を外れる傾向にあるこ とから、 Zの変化により Dの上限値が規定される可能性もある。
[0084] (電極間隔 Gの範囲)
ί= 2 μ ι, D/t= 0. 4、 WZt= 0. 8、 T = 2〜3 /ζ mのデータ(図 13参照)を見
EL
ると、 Gの下限値は、 NMが上記評価条件を外れることにより規定される。また、 WZt = 0. 8と 1. 1のデータを見ると、 Gの上限値は、 Zが上記評価条件を外れることにより
規定される。 Gの下限付近で電極間隔が狭くなるため NMが小さく上記評価条件を 外れるためであり、反対に Gの上限付近では Zが高くなるため上記評価条件力 外れ るためである。
[0085] (電極高さ T の範囲)
EL
ί=4 μ ι, WZt= 2、 D/t= 0. 4、 0. 6、 0. 8のデータ(図 17〜19参照)を見ると 、 T の上限値及び下限値は、 Zまたは NMが上記評価条件を外れることにより規定
Eし
される。 T の上限値は、 T が高くなると Zが低く NMが小さくなり、 Zまたは NMの上
EL EL
記評価条件を外れるためである。 T の下限値は、 T が低くなると Zが高く NMが大
EL EL
きくなり、 Zまたは NMの上記評価条件を外れるためである。
産業上の利用可能性
[0086] 本発明に係る光制御素子によれば、マイクロ波と光波との速度整合やマイクロ波の インピーダンス整合が実現でき、しカゝも、駆動電圧の低減が可能な光制御素子を提 供することが可能となる。
また、駆動電圧の低減により、光制御素子の温度上昇を抑制でき安定動作が可能 な光制御素子を提供でき、さらには、コストのより安い低駆動電圧型駆動装置を利用 できる光制御素子を提供することが可能となる。