明 細 書
サプレッサー tRNAの合成方法、 DNA構築物及びそれを用いた非天然 型アミノ酸組み込みタンパク質の製造
技術分野
[0001] 本発明は、 tRNAの合成方法とそのための DNA構築物に関し、特に非天然型アミ ノ酸に対応するサプレッサー tRNAの合成方法及びそのための DNA構築物並びに それらを用いた非天然型アミノ酸組み込みタンパク質の製造方法に関する。
背景技術
[0002] タンパク質中の所望の位置のアミノ酸残基を、通常のタンパク質合成に関わる 20種 類のアミノ酸以外のアミノ酸 (非天然型アミノ酸)で置換した、非天然型アミノ酸組み 込みタンパク質 (以下、「ァロタンパク質」ともいう)は、タンパク質の機能'構造解析の ための有効な手段となり得る。一方、リジン誘導体の中には、ァセチルリジン、メチル リジン等のように、翻訳後修飾により合成されるアミノ酸がある。それらは、特にヒストン による遺伝子発現調節に関わることで有名である力 その他多くのタンパク質の転写 活性化調節、タンパク質—タンパク質相互作用調節、ュビキチンィ匕の抑制 Z促進に 関わることが知られている。このようなリジン誘導体力 真核生物に部位特異的に導 入できれば、リジンのァセチル化、メチルイ匕等について多くの知見が得られると期待 される。
[0003] ピロリジル tRNA合成酵素(PylRS)は、メタン生成古細菌(Methanosarcina属)から 発見された新し 、アミノアシル tRNA合成酵素(aaRS)である。その対応する tRNA ( ピロリジン(pyrrolysine) tRNA)は、サプレッサー tRNAであり、異常に小さい Dル ープ等の特異な二次構造を有する。最近、大腸菌内で PylRSとピロリジン tRNAが、 内在性の aaRS及び tRNAとは相互作用をせず(直交性)、ピロリジンをアンバーコド ン特異的にタンパク質に導入し得ることが見出された (非特許文献 1)。また、野生型 PylRS力 大腸菌内で Ν ε— Boc— L—リジン等の非天然型アミノ酸をピロリジン tR NAに結合させ得ることが報告されて 、る(非特許文献 1)。
[0004] 一方、哺乳動物の細胞内において、タンパク質中のチロシン残基をリン酸化する酵
素(チロシンキナーゼ)は、細胞外からの増殖刺激因子などのシグナルを核内に伝達 する重要な役割を果たしている。このチロシンキナーゼは、チロシン誘導体をリン酸 化できるものと、リン酸ィ匕できないものの両方が存在する。例えば、 Srcキナーゼはョ 一ドチロシン残基をリン酸化するが、 EGF受容体はできないことが分力つている。した がって、所望のタンパク質にチロシン誘導体を導入したァロタンパク質を哺乳動物細 胞内で合成することができれば、細胞内の種々のチロシンキナーゼとの相互作用を 調べるために有用である。例えば、前記所望のタンパク質がどのチロシンキナーゼに よってリン酸ィ匕されるのかを調べることはシグナル伝達機構を解析する上で重要であ る。さらに、これらの非天然型アミノ酸組み込みタンパク質は、それ自体でタンパク質 機能'構造解析の材料として有用であり、新たな生理活性を有する物質にもなり得る
[0005] このような動物細胞内でのァロタンパク質の発現方法としては、(A)大腸菌由来の チロシル tRNA合成酵素の変異体であって、チロシンに対する特異性に比べて非天 然型のチロシン誘導体に対する特異性が高められた変異チロシル tRNA合成酵素( 以下、変異 TyrRSという)と、(B)前記変異チロシル tRNA合成酵素の存在下で前記 チロシン誘導体と結合可能な、バチルス属、マイコプラズマ属、又はスタフイロコッカ ス属真性細菌由来のサブレッサー tRNAと、 (C)所望の位置にナンセンス変異又は フレームシフト変異を受けた所望のタンパク質遺伝子とを動物細胞中で発現させて、 上記タンパク質のナンセンス変異又はフレームシフト変異の位置に上記チロシン誘 導体を取り込ませる方法が開発されている (特許文献 1、非特許文献 2)。
[0006] ここで、上記非真核生物由来のサプレッサー tRNAは、真核細胞内の RNAポリメラ ーゼにより転写されなければならない。原核細胞における 1種類の RNAポリメラーゼ とは異なり、真核細胞では 3種類の RNAポリメラーゼ I、 II、 III (poll, ρο1Π、及び poll II)が夫々機能分担して働くことが知られている。 Pollはリボソーム RNA、 ΡοΙΠは mR NA、そして ΡοΙΠΙは 5SrRNA、 tRNA, U6低分子核内 RNA(snRNA)等を合成す る。従って、真核細胞内の tRNAは、 RNAポリメラーゼ IIIで転写されることによって 合成される。この RNAポリメラーゼ IIIにより転写される遺伝子は、そのプロモータ構 造の特徴により大きく 3つのグループに分類され、夫々代表的な遺伝子として 5SrR
NA遺伝子(タイプ Iプロモータ)、 tRNA遺伝子(タイプ IIプロモータ)、及び U6低分 子核内 RNA (snRNA)遺伝子(タイプ IIIプロモータ)を含む。 tRNAを転写するタイ プ IIプロモータは、 tRNAコーディング配列内の 2つの領域から成り立つ内部プロモ ータであり、そのコンセンサス配列は、ボックス A、ボックス Bとして知られている。ボッ タス Aのコンセンサス配列は、 8位〜 19位の TRGCNNAGYNGG (配列番号 1)であ り、ボックス Bのコンセンサス配列は、 52位〜 62位の GGTTCGANTCC (配列番号 2)である。このため、例えば、バチノレス'ステアロサーモフィラス(Bacillus stearotherm ophilus)のサプレツサーチ口シン tRNAは、原核生物由来であるものの、そのサブレ ッサーチ口シン tRNAコーディング配列内には、ボックス Aとボックス Bが存在している ため(例えば、非特許文献 3参照)、なんら改変を加えなくても動物細胞内で発現さ せることができる。
[0007] また、上記タンパク質のナンセンス変異の位置にアミノ酸を取り込ませることをサプ レツシヨンというが、終止コドンは 3種類しかないため、 1種類のタンパク質に導入でき る非天然型アミノ酸の種類は最大 3種類である。試験管内の実験では自然に存在す る塩基対の他に、人工的な塩基対が開発されており(非特許文献 4及び 5参照)、こ のような人工的な塩基を含む RNAは試験管内において T7ファージの RNAポリメラ ーゼを用いて転写することが可能である。アミノ酸をコードするコドンに人工塩基対を 導入することで、現在、 43個であるコドン数を増やし、天然のアミノ酸をコードしないコ ドンに非天然型アミノ酸をコードさせることで、 1種類のタンパク質に複数の非天然型 アミノ酸を導入できると期待されて 、る。
[0008] 特許文献 1:国際公開第 2004Z039989号パンフレット
非特許文献 1 : Blight, S.K. et al., Nature, 431, 333-335(2004)
非特許文献 2 : Sakamoto, K. et al., Nucleic Acids Research 30, 4692-4699(2002) 非特許文献 3 :M.Sprinzl et al., Nucleic Acids Research 17, 1-172(1989) 非特許文献 4: Hirao, I. et al., Nature Biotechnology 20, 177-182(2002)
非特許文献 5 : Hirao, I. et al., Nature Methods 3, 729-735(2006)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0009] し力しながら、上述した非真核生物由来のサブレッサー tRNAを真核細胞内で発 現しようとした場合、ボックス Aとボックス Bに対応する配列が真核生物のコンセンサス 配列と大きく異なる場合には内部プロモータとして機能せず、真核細胞内での転写 合成量が極めて少ないか、或いはほとんど転写されないことが問題となる。例えば、メ タン生成古細菌由来のピロリジン tRNAの Dループは、数塩基が欠損した異常に小 さいものであり真核細胞内では内部プロモータとして機能しない。また、大腸菌のサ プレツサーチ口シン tRNAは配列内にボックス Bコンセンサス配列は有しているがボッ タス Aコンセンサス配列を含まな!/ヽ。これらの tRNAにボックス Aとボックス Bを導入す ると、 tRNAとしての機能が失われてしまうため、ボックス Aとボックス Bを導入したピロ リジン tRNAや大腸菌のサプレツサーチ口シン tRNAを用いても、リジン誘導体ゃチ 口シン誘導体を組み込んだァロタンパク質を合成することができない。
[0010] 一方、これらの内部プロモータを持たないサプレッサー tRNAを、外部プロモータを 用いて真核細胞内で発現させた場合に、 tRNAとして機能するかどうかは明らかで はない。すなわち、 tRNAの機能を発揮するためには転写後の塩基修飾及び立体 構造形成などが正常に行われることが必要である力 タイプ Πプロモータ以外の外部 プロモータにより転写された tRNAがどのような細胞内局在性を示し、また転写後修 飾を受ける力、さらには生物学的機能を示す力否かについては未だ明らかではない 課題を解決するための手段
[0011] そこで、本発明者らは、種々の検討を行った結果、メタン生成古細菌由来のピロリ ジン tRNA遺伝子や大腸菌のサプレツサーチ口シン tRNA遺伝子の 5'末端に、真核 生物の tRNA核酸配列や U1及び U6snRN A遺伝子のプロモータ配列を結合させる ことによって動物細胞内で効果的に発現させうることを見出した。また、前記 tRNA遺 伝子の 5'末端にバタテリオファージ由来のプロモータ配列を結合させ、当該プロモ ータを転写可能な RNAポリメラーゼと共に動物細胞内に導入することによって、前記 tRNAを効率的に発現させうることも分力つた。本発明は、これらの知見に基づいて 完成されたものである。
[0012] すなわち、本発明は第一の視点において、真核細胞内で機能する内部プロモータ
配列を含まない非真核生物由来のサプレッサー tRNA遺伝子と、当該 tRNA遺伝子 の 5 '末端に連結された真核生物由来のプロモータとを含むことを特徴とする DNA構 築物を提供する。前記 tRNA遺伝子は、古細菌由来のピロリジン tRNA遺伝子及び
Z又は大腸菌由来のサプレツサーチ口シン tRNA遺伝子であること、並びに前記 tR
NA遺伝子の 3 '末端に転写終結配列をさらに結合させることが好ま U、。さらに好ま しい実施形態において、前記真核生物由来のプロモータは、 RNAポリメラーゼ II又 は ΙΠによる転写を誘導する塩基配列である。前記 RNAポリメラーゼ IIによる転写を誘 導する塩基配列は、例えば、 UlsnRNA遺伝子プロモータであることが好ましい。ま た、前記 RNAポリメラーゼ IIIによる転写を誘導する塩基配列は、例えば、ヒトバリン t
RNA核酸配列のような真核生物の tRNA遺伝子プロモータ、又は U6snRNA遺伝 子プロモータであることが特に好まし 、。
[0013] 第二の視点において、本発明は、上記 DNA構築物を真核細胞内で転写させるこ とを特徴とするサブレッサー tRNAの合成方法、及び上記 DNA構築物により形質転 換又はトランスフエクシヨンされたことを特徴とする組換え真核細胞を提供する。
[0014] 第三の視点において、本発明は非天然型アミノ酸組み込みタンパク質の製造方法 であって、(a)非天然型アミノ酸に対するアミノアシル tRNA合成酵素と、(b)前記アミ ノアシル tRNA合成酵素の存在下で前記非天然型アミノ酸と結合可能であり、上記 何れかの DNA構築物力 転写される tRNAと、(c)所望の位置にナンセンス変異又 はフレームシフト変異を受けた所望のタンパク質と、を前記非天然型アミノ酸の存在 下に真核細胞内で発現させることを特徴とする。
[0015] 第四の視点において、本発明は、真核細胞内で機能する内部プロモータ配列を含 まない非真核生物由来のサプレッサー tRNA遺伝子と、当該 tRNA遺伝子の 5 '末 端に連結されたバタテリオファージ由来のプロモータとを含むことを特徴とする DNA 構築物を提供する。前記 tRNA遺伝子は、古細菌由来のピロリジン tRNA遺伝子及 び Z又は大腸菌由来のサプレツサーチ口シン tRNA遺伝子であること、並びに前記 t RNA遺伝子の 3'末端に転写終結配列をさらに結合させることが好ましい。また、ノ クテリオファージ由来のプロモータは、 T7プロモータ、 T3プロモータ及び SP6プロモ ータを使用することが好ましいが、これらに限定されない。
[0016] 第五の視点において、本発明は、真核細胞内で機能する内部プロモータ配列を含 まない非真核生物由来のサプレッサー tRNA遺伝子と、当該 1^^\遺伝子の5'末 端に連結されたバタテリオファージ由来のプロモータとを含むことを特徴とする DNA 構築物を真核細胞内で転写させることを特徴とするサブレッサー tRNAの合成方法 、及び前記 DNA構築物並びに前記バタテリオファージ由来のプロモータに対応する RNAポリメラーゼを発現する遺伝子により形質転換又はトランスフエクシヨンされたこ とを特徴とする組換え真核細胞を提供する。
[0017] 第六の視点において、本発明は、非天然型アミノ酸組み込みタンパク質の製造方 法であって、真核細胞内で機能する内部プロモータ配列を含まない非真核生物由 来のサブレッサー tRNA遺伝子と、当該 tRNA遺伝子の 5'末端領域に機能的に連 結されたバタテリオファージ由来のプロモータとを含む DNA構築物を用意し、ここで 、前記サプレッサー tRNAは、非天然型アミノ酸に対するアミノアシル tRNA合成酵 素の存在下において当該非天然型アミノ酸と結合可能であり、(a)前記 DNA構築物 カゝら転写される tRNAと、 (b)前記非天然型アミノ酸に対するアミノアシル tRNA合成 酵素と、(c)所望の位置にナンセンス変異又はフレームシフト変異を受けた所望のタ ンパク質と、を前記非天然型アミノ酸の存在下に真核細胞内で発現させることを特徴 とする。
[0018] 第七の視点において、本発明は、非天然型アミノ酸組み込みタンパク質の製造方 法であって、真核細胞内で機能する内部プロモータ配列を含まない非真核生物由 来のサブレッサー tRNA遺伝子と、当該 tRNA遺伝子の 5'末端領域に機能的に連 結されたバタテリオファージ由来のプロモータとを含む DNA構築物を用意し、ここで 、前記サプレッサー tRNAは、非天然型アミノ酸に対するアミノアシル tRNA合成酵 素の存在下において当該非天然型アミノ酸と結合可能であり、(a)前記パクテリオフ ァージ由来のプロモータに対応する RNAポリメラーゼと、 (b)前記非天然型アミノ酸 に対するアミノアシル tRNA合成酵素と、(c)所望の位置にナンセンス変異又はフレ ームシフト変異を受けた所望のタンパク質と、を前記 DNA構築物及び前記非天然型 アミノ酸の存在下に真核細胞内で発現させることを特徴とする。
発明の効果
[0019] 本発明の製造方法を用いれば、非真核生物由来の tRNA、アミノアシル tRNAを、 真核細胞中で効果的に発現させることができ、真核細胞内で機能する内部プロモー タ配列(ボックス A、ボックス B)を有さな!/、非真核生物由来のサプレッサー tRNAを、 真核細胞中で発現させることが可能である。また、本発明の製造方法を用いれば、 人工の非天然型塩基を含む tRNAを真核細胞内で発現させることが可能になると期 待され、 4種類以上の非天然型アミノ酸を含むァロタンパク質の合成が期待される。
[0020] また、本発明の製造方法を用いれば、古細菌由来の野生型のアミノアシル tRNA 合成酵素を用いて、特に真核生物に存在する N ε—ァセチルリジン、 Ν ε—トリメチ ルリジン、 Ν ε —t—ブトキシカルボ-ルリジン、蛍光基を有する N ε 2—メチルアミ ノーベンゾィルリジン等のリジン誘導体が導入されたァロタンパク質を合成することが できる。
図面の簡単な説明
[0021] [図 1]ピロリジン tRNAのクローバー型構造を示す。
[図 2]実施例 1において、ウェスタンブロットによる Grb2 ( 1 1 lamb)のサプレツシヨンの 検出結果を示す。
[図 3]実施例 2において、ウェスタンブロットによる Grb2 ( 1 1 lamb)のサプレツシヨンの 検出結果を示す。
[図 4]3種類のプロモータ又はェンハンサーを用いて tRNAPylを発現させたときの lac Zアンバーサプレツシヨンの結果を示す。
[図 5]U6プロモータに連結した tRNATyrによる lacZアンバーサプレツシヨンについて 3種類の非天然型アミノ酸を添加した場合の結果を示す。
[図 6]大腸菌内で、 PylRS、ピロリジン tRNAの存在下で N ε — Boc リジンがぺプチ ドに取り込まれたことを示すマススペクトルデータである。
[図 7]実施例 5において、 T7プロモータを用いて tRNA^1を発現させたときの、 lacZ ( 91 amber)のサプレツシヨンの検出結果を示す。 T7RNAポリメラーゼを発現させな い場合 (T7RNAP— )に比べ、 T7RNAポリメラーゼを発現させた場合 (T7RNAP + )は有意に高い j8—ガラタトシダーゼ活性が検出され、 lacZ遺伝子のアンバーコド ンがサプレツシヨンされて 、ることが分かる。
[図 8]実施例 5において、 T7プロモータを用いて tRNATyrを発現させたときの、 lacZ ( 91 amber)のサプレツシヨンの検出結果を示す。 T7RNAポリメラーゼを発現させな い場合 (T7RNAP— )に比べ、 T7RNAポリメラーゼを発現させた場合 (T7RNAP + )は有意に高い j8—ガラタトシダーゼ活性が検出され、 lacZ遺伝子のアンバーコド ンがサプレツシヨンされて 、ることが分かる。
[図 9]実施例 6にお!/、て、 UlsnRNA型転写プロモータを用いて tRNATylを発現させ たときの、細胞染色による lacZ Olamber)のサブレッシヨンの検出結果を示す。 発明を実施するための最良の形態
[0022] (非天然型アミノ酸)
本発明に用いられる非天然型アミノ酸としては、例えばリジン誘導体、又はチロシン 誘導体を用いることができる。リジン誘導体は、非天然型のアミノ酸であり、 ε位の窒 素原子に結合した水素原子が他の原子又は原子団に置換されたものが好ましい。 例えば、ピロリジン(pyrrolysine)、 Ν ε —t—ブトキシカルボ-ルリジン(Ν ε Boc —リジン)、 Ν ε —ァセチルリジン、 Ν ε トリメチルリジン、 Ν ε —2—メチルアミノー ベンゾィルリジン (Nma リジン)が挙げられる。また、真核生物に存在する修飾リジ ンであるメチルリジン、ァセチルリジンを部位特異的にタンパク質に導入することによ り、リジンのァセチル化、メチルイ匕について多くの知見が得られる可能性がある。また 、これらのリジン誘導体が導入されたァロタンパク質は、タンパク質機能'構造解析の 材料として有用であり、創薬のターゲットともなる可能性がある。チロシン誘導体として は、チロシンのフ -ル基の 3位又は 4位に置換基を有する 3位置換チロシン、 4位置 換チロシンが挙げられる。 3位置換チロシンとしては、 3—ョードチロシン、 3—ブロモ チロシン等の、 3—ハロゲンィ匕チ口シンが挙げられる。また、 4位置換チロシンとしては 、 4—ァセチルー L フエ-ルァラニン、 4—ベンゾィル L フエ-ルァラニン、 4— アジドー L フエ二ルァラニン、 O—メチル L—チロシン、 4—ョード L フエ-ル ァラニンなどが挙げられる。これらのアミノ酸は公知の方法で作製することができ、あ るいは市販のものを利用することができる。
[0023] (アミノアシル tRNA合成酵素)
本発明で用いられるアミノアシル tRNA合成酵素は、非天然型アミノ酸を認識し、か
つサブレッサー tRNAを特異的に認識して、該非天然型アミノ酸が結合したサブレツ サー tRNAを生成させることができる tRNA合成酵素である。
[0024] 好ま 、実施形態にぉ 、て、アミノ酸としてリジン誘導体を認識し、かつ tRNAとし て併用するピロリジン tRNA (配列番号 4)を特異的に認識して、該リジン誘導体が結 合したサプレッサー tRNAを生成させることができるメタン生成古細菌由来の PylRS がある。メタン生成古細菌としては、メタノサルシーナ 'マゼィ(M.mazei)が好ましい。 PylRSは、真核細胞、好ましくは動物細胞、特に好ましくは哺乳動物細胞中で発現 させる。 PylRSを哺乳動物細胞中で発現させるためには、例えばメタノサルシーナ · マゼィ由来の野生型遺伝子に、 N末端領域に FLAGタグ等が付加するようにした D NA配列を PCR法を用いて増幅し、これを市販の pcDNA3. 1 (インビトロジェン社製 ) , pAGE107 (Cytotechnology,3, 133(1990)) , pAGElO3[J.Biochem.l01, 1307(198 7)]などの Nhel - BamHIサイトに組み込んで構築したプラスミドを、哺乳動物細胞に 導入すればよい。
[0025] 他の実施形態において、チロシン誘導体を特異的に認識し、チロシン誘導体が結 合したサブレッサー tRNA (配列番号 5)を生成させることができる種々の大腸菌由来 TyrRSの変異体を用いることができる。例えば、大腸菌由来 TyrRSの変異体 (V37 C195)は 3 ョードチロシンを特異的に認識する。一方、大腸菌由来 TyrRSの 37位 、 126位、 182位、 185位及び 186位の 5つのアミノ酸に変異を導入して、 4 アジド L フエ-ルァラニン及び 4 ベンゾィル L フエ-ルァラニン等の非天然アミノ 酸を認識する TyrRSの変異体も報告されている (Chin, J.W. Et al., Science, 301, 96 4-967, 2003)。大腸菌由来の TyrRS (野生型)は真核生物の tRNATyrと反応せず、 原核生物由来の tRNATyrは真核生物の TyrRSとは反応しない。
[0026] (tRNA)
上記アミノアシル tRNA合成酵素と組み合わせて使用される tRNAは、通常 20種 類のアミノ酸に割り当てられたコドンではないナンセンスコドンに割り当てられ、かつ、 上記非天然型アミノ酸特異的なアミノアシル tRNA合成酵素にのみ認識され、宿主 の通常のアミノアシル tRNA合成酵素には認識されな! ^orthogonal tRNA)と!、う要 件を備え、かつ真核細胞内で発現しなければならない。アミノアシル tRNA合成酵素
力 SPylRSである場合、対応するピロリジン tRNAは、サプレッサー tRNAとして機能 するためのナンセンスコドンに相補的なアンチコドン及び立体構造を保持しており、 かつ真核細胞中で発現する非真核細胞由来の tRNAである。すなわち、通常の 20 種類のアミノ酸に割り当てられたコドンではないナンセンスコドンに割り当てられ、力 つ、上記リジン誘導体に特異的な PylRSにのみ認識され、宿主の通常の aaRSには 認識されない(直交性)、という要件を備え、かつ動物細胞中で発現するサブレッサ 一 tRNAである。
[0027] ここで、ナンセンスコドンとしては、 UAG (アンバー)、 UAA (オーカ一)、 UGA (ォ パール)が挙げられる力 UAG (アンバー)コドンを用いることが好ましい。また、ナン センスコドンに代えて、 4塩基以上 (好ましくは 4若しくは 5塩基)の塩基力 なるコドン (以下「フレームシフトコドン」 t 、う。)を用いることもできる。
[0028] 上記したように、真核細胞での tRNAの発現は、 tRNAコーディング配列内の 2つ の内部プロモータを必要とし、そのコンセンサス配列は、ボックス A、ボックス Bとして 知られている。ピロリジン tRNAのクローバー型構造を図 1に示す。図 1において、左 側のループ(Dループ)中、〇は塩基の欠損を示す。このように、ピロリジン tRNAは、 Dループ中 3塩基が欠損しており、他の tRNAの Dループに比べて異常に小さい。動 物細胞中でピロリジン tRNAを発現させるために、ピロリジン tRNAにボックス A、ボッ タス B配列を導入しても、ピロリジン tRNAの Dループが異常に小さいため、構造が大 きく変化してしま 、、このためサブレッサー活性を保持することができな力つた。
[0029] (tRNA,アミノアシル tRNAの合成)
本発明のアミノアシル tRNAの合成方法は、真核細胞内で機能的な内部プロモー タ配列を含まな 、非真核生物由来の tRNAの 5 '末端に真核生物由来のプロモータ を結合させ、アミノアシル tRNA合成酵素の存在する真核細胞内、好ましくは動物細 胞内、特に好ましくは哺乳動物細胞内で転写させる。このとき tRNAの 3'末端に転 写終結配列を結合させることが好ましい。より具体的には、まず、メタノサルシーナ ·マ ゼィ由来の野生型ピロリジン tRNAの 5'末端に真核生物由来のプロモータを結合さ せ、また 3'末端に転写終結配列をそれぞれ結合させた配列を DNAプライマーから 合成し、例えば、 pcDNA3. 1、及び pCR4Blunt— TOPO (共にインビトロジェン社
製)等に組み込んで構築したプラスミドを、動物細胞に導入して発現させた後、動物 細胞内で転写してプロセッシングすることにより得られる。
[0030] 上記真核生物由来のプロモータとしては、 RNAポリメラーゼ II又は ΠΙによる転写を 誘導する塩基配列を利用することができる。 RNAポリメラーゼ IIによる転写を誘導す る塩基配列は UlsnRN A遺伝子プロモータが好まし!/、が、 U6snRNA遺伝子プロモ ータの TATAボックス領域を変異させることでも UlsnRN A遺伝子プロモータ型のプ 口モータになることが報告されているので、このようなプロモータを用いても良い。 RN Aポリメラーゼ IIIプロモータによる転写を誘導する塩基配列は、真核生物由来の tR NA遺伝子又は U6snRNA遺伝子プロモータが好ましい。このとき、野生型ピロリジ ン tRNA遺伝子の 5 '末端と真核生物由来の tRNA遺伝子とは、リンカ一を介して結 合させることが好ましい。リンカ一としては、特に制限はなぐ例えば、 BglII、 Xbal、 X hoi等によって切断されるものが挙げられる。 5 '末端に結合する tRNA遺伝子は、真 核生物由来であるが、真核生物としては、特に制限はなぐ例えば動物、植物、昆虫 等が挙げられる。このうち、ヒト由来の tRNA遺伝子が好ましい。 tRNAが結合するァ ミノ酸も、通常の 20種類の天然型アミノ酸であれば特に制限はない。このうち、ノ リン が好ましい。
[0031] ヒト U6低分子核内 RNA (snRNA)は、プレ mRNAがスプライシングする際に形成 するスプライソノームに豊富に存在する RNA種であって、細胞あたり 4〜5 X 105コピ 一に達する。この U6プロモータは低分子異種 RNA(small heterologous RNA)の転写 を駆動し、その活性は tRNAプロモータからの転写よりも高いといわれている。 U6プ 口モータも tRNAプロモータも何れも ΡοΙΠΙによって転写される力 U6プロモータが 構造遺伝子の 5 '上流に位置するのに対し、 tRNAプロモータは自分自身の構造遺 伝子内部に位置する点で相違する。ヒト U6snRNAプロモータはェンハンサー領域( 又は遠位プロモータ領域)及びコア領域 (又は近位プロモータ領域)として知られる特 徴的なプロモータエレメントを有する。好ましくは、配列番号 3に記載の塩基配列、又 は該塩基配列と少なくとも 30%、 50%、 70%、 80%、 90%若しくは 95%の相同性 を有する塩基配列力 なり、かつ哺乳動物細胞内において RNAポリメラーゼ IIIによ る転写活性を有する塩基配列である。塩基配列の相同性 (ホモロジ一)の程度は、 2
つの塩基配列同士を適切に整列(ァライメント)したときの同一性のパーセント値で表 わすことができ、当該配列間の正確な一致の出現率を意味する。同一性比較のため の配列間での適切な整列は種々のアルゴリズム、例えば、 BLASTアルゴリズムを用 いて決定することができる(Altschul SF J Mol Biol 1990 Oct 5; 215(3):403- 10)。
[0032] さらに本発明において、バタテリオファージ由来のプロモータを用いても上記 tRNA を真核細胞内で効率的に転写することができる。具体的には、大腸菌のファージ由 来の T7プロモータ、 T3プロモータ及び SP6プロモータを使用することができるがこれ らに限定されない。これらのプロモータの挿入位置は、上記 tRNA遺伝子の 5 '末端 領域であれば特に限定されないが、好ましくは、転写開始位置の 10〜50bp上流で ある。また、バタテリオファージ由来のプロモータを用いる場合は、当該プロモータに 対応するバタテリオファージ由来の RNAポリメラーゼを発現している真核細胞を用い る必要がある。具体的には、 T7RNAポリメラーゼ、 T3RNAポリメラーゼ及び SP6R NAポリメラーゼを使用することができるがこれらに限定されない。 T7RNAポリメラー ゼは、哺乳類動物細胞内で発現させた場合、 T7プロモータ配列を含む DNAから R NAを転写し、転写された RNAは最大で細胞内の全 RNAの 20%にも達することが報 告されている。 T7RN Aポリメラーゼと同様に大量の RN Aを調製する目的で T3RNA ポリメラーゼと SP6RNAポリメラーゼが使用され、これらのプロモータは T7プロモータ 同様 20塩基以下と短ぐ更に哺乳動物細胞内でいずれの RNAポリメラーゼも同等 の RNA転写能力があると報告されている。ノ クテリオファージ由来の RNAポリメラー ゼのプロモータとしては、配列番号 13に示した塩基配列の T7プロモータ、又は当該 塩基配列と少なくとも 70%、 80%、 90%若しくは 95%の相同性を有する塩基配列か らなり、かつ哺乳動物細胞内において T7RNAポリメラーゼによる転写を誘導しうる配 列が好ましい。
[0033] (非天然型アミノ酸を組み込ませるためのタンパク質)
本発明で非天然型アミノ酸を組み込ませるタンパク質の種類は、限定されるもので はなぐ発現可能な如何なるタンパク質でもよぐ異種の組換えタンパク質でもよい。 例えば、タンパク質の種類として、いわゆるシグナル伝達関連タンパク質、受容体、 増殖因子、細胞周期関連因子、転写因子、翻訳因子、輸送関連タンパク質、分泌タ
ンパク質、細胞骨格関連タンパク質、酵素、シャペロン又は癌、糖尿病若しくは遺伝 病等を含む疾患関連タンパク質などが挙げられる。
[0034] 本発明にお 、て、非天然型アミノ酸、特にリジン誘導体ゃチロシン誘導体を組み込 ませる位置にナンセンスコドン(サブレッサー tRNAがアンバーサプレッサーのときは アンバーコドン)又はフレームシフトコドンを導入することが必要であり、これによりこの ナンセンスコドン (アンバーコドン)部位又はフレームシフトコドン部位に、特異的に非 天然型アミノ酸、特にリジン誘導体を組み込むことができる。なお、本明細書におい てコーディング配列内の 1、 2又は 4塩基の欠失若しくは挿入により、翻訳されるァミノ 酸配列にフレームシフトが起こることをフレームシフト変異といい、このような変異導入 部位に生ずる異常なコドンをフレームシフトコドンという。フレームシフトコドンとしては 、 4塩基又は 5塩基力 なるコドンが好ましい。種々の宿主細胞内において 4塩基コド ンを用いて遺伝暗号の拡張が試みられており、例えば、大腸菌では AGGAの 4塩基 は細胞機能をあまり乱すことなく利用できる代替コドンとして利用されて 、る (Anderso n, J.C. et al, Proc. Natl. Acad. Sci" USA 101, 7566—7571)。
[0035] タンパク質に部位特異的に変異を導入する方法としては、周知の方法を用いること ができ、特に限定されないが、 Gene 152,271-275(1995)、 Methods Enzymol.100,468- 500(1983)、 Nucleic Acids Res.12,9441—9456(1984)、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82, 488-492(1985)、「細胞工学別冊「新細胞工学実験プロトコール」、秀潤社、 241— 24 8頁(1993)」に記載の方法、または「QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kit」( ストラタジーン社製)を利用する方法などに準じて、適宜実施することができる。
[0036] 本発明は動物細胞内で発現させることができるので、これまで、大腸菌や無細胞タ ンパク質系では、発現しない、あるいは発現量が低い、または活性型となるための翻 訳後の修飾を受けることができな 、ようなタンパク質へ、非天然型アミノ酸を取りこま せることができる。このようなタンパク質としては、当業者には種々のものが知られてい るが、例えば、ヒト EGFR等のチロシンキナーゼ型レセプター(Cell, 110,775-787(200 2))、ヒト Groucho/TLElタンパク質(Structure 10,751- 761(2002))、ラット筋肉特異的 キナーゼ(Structure 10.1187- 1196(2002))などについて、ァロタンパク質を合成する ことができるが、これらに限定されるものではない。
[0037] また、本発明の方法においては、動物細胞内でァロタンパク質を発現させるので、 糖鎖と結合した糖タンパク質に非天然型アミノ酸、特にリジン誘導体を組みこませるこ ともできる。特に、無細胞タンパク質系における糖鎖付加のパターン力 本来のパタ ーンと異なるようなタイプの糖タンパク質の場合には、本発明の動物細胞内での系は 、 目的の (本来の)パターンの糖鎖が付加されたァロタンパク質を得るための有効な 手段と考えられる。
[0038] 非天然型アミノ酸、特にリジン誘導体を組み込ませるためのタンパク質は、例えば 所望の蛋白質の所望のアミノ酸の位置に対応するコドンを、ナンセンスコドン又はフ レームシフトコドンに置換し、さらに C末端に所望のタグを付加するように構築した配 列を有する遺伝子を、例えば pcDNA4ZTO等の BamHI—XhoIサイトに組み込ん でプラスミドを構築し、これを動物細胞に導入して発現させることができる。
[0039] (宿主)
本発明に用いられる、宿主の動物細胞としては、遺伝子組換え系が確立されてい る、哺乳類細胞が好ましい。有用な哺乳動物宿主細胞系の実例は、チャイニーズノ、 ムスター卵巣 (CHO)細胞と COS細胞を含む。より特有な例は、 SV40によって形質 転換したサル腎臓 CV1系 (COS-7,ATCC CRL 1651) ;ヒト胚腎臓系 (293又は懸濁 培養での増殖用にサブクローンした 293細胞、 J.Gen Virol., 36:59(1977)) ;チヤィニー ズハムスター卵巣細胞/- DHFR(CHO、 Pro Natl.Acad.Sci.USA,77:4216(1980》;マ ウスセルトーリ細胞 (TM4, Biol.Reprod.,23:243- 251(1980》;ヒト肺細胞 (W138, ATC C CCL 75) ;ヒト肝臓細胞 (Hep G2, HB 8065) ;及びマウス乳癌 (MMT 060562, ATCC CCL51)を含む。これらの宿主は、各々発現系が確立されており、適切な宿主細胞の 選択は、当業者の技術範囲内である。
[0040] 上記宿主細胞へのベクターの導入方法としては、例えば、電気穿孔法 (Nucleic,Aci ds Res.15, 1311- 1326(1987))、リン酸カルシウム法(Mol.Cell Biol. 7,2745-2752(1987) )、リポフエクシヨン法(Cell 7,1025-1037(1994);Lamb,Nature Genetics 5,22-30(1993) )などが挙げられる。これらは、例えば、 Molecular Cloning第 3版、 Cold Spring Harb or Laboratory Press(2001)などに記載された方法に準じて行なうことができる。従って 、本発明の 1つの実施形態として、上記非真核生物由来のサブレッサー tRNAの発
現ベクターにより形質導入又はトランスフエクシヨンされた組換え真核細胞、好ましく は哺乳動物細胞が提供される。
[0041] (非天然型アミノ酸組み込みタンパク質の製造方法)
すなわち、リジン誘導体が組み込まれたァロタンパク質の発現を例として説明すると 、(A)アミノアシル tRNA合成酵素、特に PylRSを動物細胞内で発現させる発現べク ターと、(B)上記アミノアシル tRNA合成酵素、特に PylRSの存在下で、非天然型ァ ミノ酸、特にリジン誘導体と結合可能なメタノサルシーナ 'マゼィ由来のピロリジン tRN Aを、上記動物細胞内で発現させる発現ベクターと、(C)所望の位置にナンセンス変 異又はフレームシフト変異を受けた所望のタンパク質を発現させる発現ベクターと、 非天然型アミノ酸、特にリジン誘導体と、を有する動物細胞を、その動物細胞の増殖 に適した培地(例えば、 CHO細胞の場合、 Opti-MEM I (Gibco BRL社)など)で、適 当な条件でインキュベートする。例えば、 CHO細胞の場合は、 37°C程度の温度で、 24時間程度、インキュベートする。
[0042] 一方、バタテリオファージ由来のプロモータを用いて上記ピロリジン tRNAを発現さ せる場合は、上記 (A)〜(C)に加えて、(D)上記バタテリオファージ由来のプロモー タを転写可能な RNAポリメラーゼ遺伝子を動物細胞内で発現するベクターを導入す ることが好ましい。例えば、前記 T7プロモータ、 T3プロモータ及び SP6プロモータを 効率的に転写するための RNAポリメラーゼとして、夫々 T7RNAポリメラーゼ、 T3R NAポリメラーゼ及び SP6RNAポリメラーゼが知られている。
[0043] 以下に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施 例に限定されるものではない。
実施例
[0044] 本実施例では、ヒト Grb2の 111位及び 13 ガラクトシダーゼの 91位にリジン誘導 体又はチロシン誘導体を み込む実験を行った。なお、 Grb2は細胞内で上皮成長 因子受容体と相互作用して細胞の癌化に関わるタンパク質である。
[0045] (PylRS及び TyrRS発現プラスミドの構築)
PylRS発現プラスミドとしては、メタノサルシナ ·マゼィ由来の野生型 PylRS遺伝子 に、 N末端領域に FLAGタグが付加するようにした DNA配列(配列番号 8)を PCR法
を用いて増幅した。これを、 pcDNA3. 1の Nhel— BamHI部位に組み込んでプラス ミドを構築した。
[0046] 一方、大腸菌チロシル tRNA合成酵素の 3 ョードー Lーチロシン特異的な変異体
(TyrRS (V37C195) )の発現プラスミド pEYSMlはすでに報告されている(上掲、 非特許文献 2参照)。このプラスミドをサブレッサー tRNAの発現プラスミドと共に哺乳 動物培養細胞にトランスフエタトし、 3—ョードー Lーチロシンを細胞培養液に添加す ることで、アンバー変異を持つタンパク質遺伝子のアンバーコドン部位に 3—ョードー Lーチロシンを導入することができる。上記発現プラスミドの作成方法は、上掲特許文 献 1及び非特許文献 2に記載されており、その内容は参照により本願明細書に組み 込まれる。また、 4—アジド一 L—フエ-ルァラニン及び 4—ベンゾィル L—フエ-ル ァラニン特異的な変異体についても報告されている(Chinら、上掲)。これらの変異体 TyrRSは pcDNA4/TOのマルチクロー-ング部位にクローン化した。
[0047] (サプレッサー tRNA発現プラスミドの構築)
メタノサルシナ'マゼィ由来の野生型ピロリジン tRNA遺伝子の 5 '末端に、リンカ一 (配列番号 10)を介してヒトバリン tRNA遺伝子を結合させ、また、 5'末端にリーダー 配列を、 3 '末端に、転写終結配列をそれぞれ結合させた配列 (配列番号 11)を DN Aプライマーから合成した。これを pCR4Blunt—TOPOに組み込んで、 tRNAVAL— tRNAPylタンデム発現プラスミドを構築した。大腸菌由来のサブレッサー tRNATyrに っ ヽても同様の方法で tRNAVAL—tRNATyrタンデム発現プラスミドを構築した。
[0048] U6プロモータによる tRNA発現プラスミドの構築は以下の方法による。 pcDNA3.
1ベクターを铸型にして CMVェンハンサー領域の 5,側に EcoRI部位、 3,側に U6プ 口モータの 5 '側配列の一部を付カ卩したプライマーを用いて PCRを行った。一方、 siS TRIKEを铸型にして U6プロモータ領域の 5,側に CMVェンハンサ一の 3,側配列の 一部を含み、 3'側に Xbal部位を付加したプライマーを用いて PCRを行った。これら 2つの PCR増幅断片をオーバーラップ PCRでつなぎ合わせると、 EcoRI部位 ZCM Vェンハンサー ZU6プロモータ ZXbal部位からなる DNA断片ができるので、これ を EcoRI及び Xbalで処理し pUC 119にクローン化した。
[0049] 上記プラスミドを調製し、 Xbal及び Hindlllで処理したのち、先に調製した tRNAVA
tRNAPylタンデム発現プラスミドから Xbal及び Hindlll消化により tRNAPyl ター ミネータを含む断片を単離し、これらを連結した。これにより、配列番号 6に示した塩 基配列の DNA断片を有する発現プラスミドが得られる。コントロールとして、 pcDNA 3. 1 +Zeoのマルチクロー-ング部位に tRNAPylを 3つ直列に連結したプラスミドを 構築した。
[0050] 同様に、メタノサルシナ ·マゼィ由来の野生型ピロリジン tRNAPylの代わりに大腸菌 のサプレツサーチ口シン tRNAを用いて CMVェンハンサー及びヒト U6snRNAのプ 口モータを連結した DNA断片 (配列番号 7)を構築し、上記と同様に発現プラスミドを 作製した。なお、 CMVェンハンサ一は U6プロモータからの RNA転写を活性化する という報告がある。
[0051] (リポーター遺伝子発現プラスミドの構築)
ヒト grb2の 111 のロイシンコドンを、 Quick Change site-directed mutagenesis kit ( ストラタジーン社)を用いて、ァンバーコドンに変換した(81¾2 ( 1 1 1&1111½1:) )。次いで 、 C末端に FLAGタグ (DYKDDDDK)が付加するように構築した遺伝子 (配列番号 12)を、 pcDNA4/TOの BamHI— Xholサイトに組み込み、サブレッシヨン検出用 のプラスミドとした。
[0052] 同様に、大腸菌の 13 ガラクトシダーゼ(lacZ)の 91位のチロシンコドンをアンバー コドンに変換し、 pcDNA3. 1 + (Zeolf性)のマルチクロー-ング部位にクローン化 した(lacZ (91amber) )。
[0053] (遺伝子の細胞への導入とサブレッシヨン反応)
[実施例 1]ヒトバリン tRNA遺伝子プロモータに連結した tRNAPylによる Grb2アンバ ーサプレツシヨン
PylRS、ヒトバリン tRNA遺伝子プロモータに連結した tRNAPyl及び grb2 (11 lam ber)の 3種類の発現プラスミドを 2. Oml培養スケール 6ゥエルプレートで培養された チャイニーズノヽムスター卵巣細胞 (CHO細胞、継代時の培養液は DMEMZF— 12 (ギブコ)、 10%FBS (ICN)、 1Z100ペニシリン一ストレプトマイシン(ギブコ)を使用 ;) )の 1ゥエルあたりに 0. 5 gずつ、様々な組み合わせで (結果参照)、 90%コンフル ェント時に形質導入を行った。形質導入は,リボフヱクタミン 2000 (インビトロジヱン社
)を用いる方法をとり,そのマニュアルに沿って行った。形質導入時は培養液として o pti— MEM (ギブコ)を使用した。形質導入を行った細胞培養液を、 ImMの N ε - Boc リジン(Bachem)が存在するか、又は存在しない DMEMZF— 12 (ギブコ) で置換し, 1 g/mLテトラサイクリンの添カ卩により発現誘導し、 20時間ほど COイン
2 キュベータ一にお 、て 37°Cで培養を続けた。
[0054] 上記培養細胞から細胞培養液を除き、緩衝液で洗浄後、細胞を溶解させ、タンパク 質を回収した。 SDS ポリアクリルアミド電気泳動を行い、分子量でタンパク質を分 離した後、メンブレンにエレクトロブロット(100V、 1時間)を行った。抗体は抗 FLA G M2 (Sigma)を一次抗体、ヒッジ由来のマウス IgGヮサビパーォキシダーゼ結合 全抗体 (Amersham)を二次抗体として用いた。検出試薬は、 ECLウェスタンブロット 検出試薬 (Amersham)を用いた.測定は冷却 CCDカメラ LASlOOOplus (富士フィ ルム)を用いて行った。
[0055] 図 2に、 Grb2 (11 lamb)のサプレツシヨンのウェスタンブロットによる検出結果を示 す。左端の 1レーンは、 Grb2全長のバンドの位置を示すための対照である。野生型 Grb2の C末端には FLAGタグが付加されており、 C末端まで合成された場合に Grb 2の矢印の部分にバンドが検出される。 2〜4レーンは、 PylRS、ピロリジン tRNA、 N ε Boc リジンのいずれかがない場合である。これらの場合、 Grb2の全長が合成 されていない。一方、レーン 5は、 PylRS、ピロリジン tRNA及び N ε—Boc リジン のすべてが細胞内に導入された場合であり、 Grb2の全長が合成されている。このこ と力ら、 Grb2の 111位に導入したアンバーコドンに、 PylRS及びピロリジン tRNAに よって、 N ε—Boc リジンが導入されたことがわかる。
[0056] [実施例 2]U6プロモータに連結した tRNATyr及び tRNAPylによる Grb2アンバーサ プレツシヨン
続いて、同様の方法を用いて上記で作製したヒト Grb2遺伝子、野生型 TyrRS及び PylRSを発現させ、 U6プロモータを有するメタノサルシナ ·マゼィ由来の野生型ピロ リジン tRNAPyl、又は大腸菌サプレッサー tRNATyrでサブレッシヨンした。図 3は、ゥェ スタンプロットによる Grb2 (11 lamb)のサプレツシヨンの検出結果を示す。右端のレ ーンは野生型 Grb2のバンドの位置を示すための対照である。左の 2つのレーンは、
U6プロモータを有する大腸菌のサプレッサー tRNATyrを発現させたときの結果であ る。 TryRSの発現に依存して Grb2のバンドが検出されることから Grb2のアンバーコ ドンにチロシンが導入されたことが分かる。真中の 2つのレーンは、 U6プロモータを 有するピロリジン tRNAPylを発現させたときの結果である。培地中に N ε— Boc リジ ンを添加することによって Grb2のバンドが検出されること力 Grb2のアンバーコドン に N ε Boc リジンが導入されたことが分かる。これらの結果より、 5'末端に U6プ 口モータを連結した tRNA遺伝子が哺乳動物細胞内で転写されることが示された。な お、チロシン tRNAを発現させた場合に、培地中にチロシンを添加しない対照実験を 行わなかったのは、チロシン非存在下では細胞が成育しな 、からである。
[0057] [実施例 3]tRNAPylによる lacZアンバーサプレツシヨン
チャイニーズノヽムスター卵巣細胞 (CHO— TRex細胞)を、 1ゥエルあたり 1. 2 X 10
5 個ずつ 24ゥエルプレートに播種し、 10%牛胎児血清(ICN)、 1Z100ペニシリン ストレプトマイシン(ギブコ)を含む DMEM/F— 12培地(ギブコ)で培養した。翌日、
lacZ (91amber)を 0. 4 /z g、 PylRS発現プラスミドを 0. 2 g、及び上記で作成した 3種類のサプレッサー tRNA
Pyl発現プラスミド (夫々、ヒトバ リン tRNA、 U6プロモータ、及び CMVェンハンサーを含む)を用いて形質導入を行 つた。形質導入は、 2 1のリポフエクタミン 2000 (インビトロジェン社)を用い、そのマ -ュアルに沿って行った。形質導入時は培養液として Opti— MEM (ギブコ)を使用 した。
[0058] 形質導入を行った細胞培養液を、 ImMの Boc -リジン(Bachem)が存在するか、 又は存在しない DMEMZF— 12 (ギブコ)で置換し、: L gZmLテトラサイクリンの 添加により発現誘導し、 20時間ほど COインキュベーターにおいて 37°Cで培養を続
2
けた。翌日、細胞からタンパク質を回収し、レポーターアツセィキット j8—Gal (TO YO BO)を用いて lacZ酵素活性を調べた。その結果を図 4に示す。ヒトバリン tRNAプロ モータ及び U6プロモータを用いた!/、ずれの場合も、培地中に Boc リジンを添カロす ることによって j8—ガラクトシダーゼ活性が検出され、 lacZ遺伝子のアンバーコドンが サブレッシヨンされていることが分かる。一方、これらのプロモータを含まない CMVプ 口モータを用いた tRNA発現ベクターでは Boc リジンの添カ卩の有無に関わらず j8
ガラクトシダーゼ活性が検出されないこと力 サプレツシヨンされていない。なお、ヒ トバリン tRNAプロモータと比較して U6プロモータによるサプレッサー tRNAの発現 は有意に高 、ことが推測される。
[0059] [実施例 4]U6プロモータに連結した tRNATyrによる lacZアンバーサプレツシヨン 実施例 3と同様の方法により、 U6プロモータに連結した大腸菌サブレッサー tRNA Tyr遺伝子及び 3種類の変異体 TyrRS発現プラスミドを発現させ、ョードチロシン (IY) 、アジドフエ-ルァラニン (AzPhe)及びパラベンゾィルフエ-ルァラニン(pBpa)の 3 種類のチロシン誘導体を添カ卩して lacZアンバーサプレツシヨンを行った。その結果を 図 5に示す。いずれのアミノ酸を添加した場合も無添加の場合と比べて有意に高い β ガラクトシダーゼ活性が検出され、 lacZ遺伝子のアンバーコドンがサブレッショ ンされていることが分かる。なお、ョードチロシン無添加の場合でも j8—ガラクトシダ ーゼ活性が検出されて 1、るのは、 IY特異的な変異体 TyrRSはョードチロシンのみな らず、チロシンをも取り込むので IY非添加でもサブレッシヨンが起こっているためと考 えられる。
[0060] (参考例 1)
図 6は、大腸菌内で、 PylRS、ピロリジン tRNAの存在下で N ε— Boc リジンがぺ プチドに取り込まれたことを示すマススペクトルデータである。図中、分子量 (MW)が 1327. 67のピークは、配列が NSYSPILGYWKであるペプチドを示している。分子 量力 392. 76のピークは、左から 11番目のチロシンが N ε—Boc リジンに置換さ れた( *で示す)ペプチドを示して 、る。
[0061] [実施例 5]T7プロモータによるサプレッサー tRNAの発現系の構築と lacZアンバー サブレッシヨン
T7RNAポリメラーゼ遺伝子を PCRで増幅し、 pcDNA4/TOの EcoRIと Xholとの 間にクローン化することで、 T7RNAポリメラーゼ発現プラスミドを作成した。 T7— tR NATyr遺伝子の作成については、まず、 U6— tRNATyr (配列番号 7)を铸型にして P CRを行って T7プロモーターを tRNATyr配列に付カ卩した後、 pCR4blunt— TOPO にクロー-ングした。その後、 EcoRIで処理して T7— tRNATyr遺伝子を切り出し、 pB R322の EcoRIサイトにクローニングした。このようして作成した T7— tRNATyr遺伝子
とプラスミド配列の一部(配列番号 15)を PCRによって増幅し、得られた DNAを精製 して細胞の形質転換に用いた。 tRNAPyl発現プラスミドの構築については、上記のよ うに T7—tRNATyr遺伝子をクローユングした pBR322を Xbal及び Hindlllで処理し たのち、 U6プロモータによる tRNA発現プラスミドから Xbal及び Hindlll消化により t RNAPyl—ターミネータを含む断片を単離し、これらを連結した。このようして作成した T7—tRNAPyl遺伝子とプラスミド配列の一部(配列番号 14)を PCRによって増幅し、 得られた DNAを精製して細胞の形質転換に用いた。
[0062] 実施例 3と同様の方法で TY—tRNA^1発現プラスミドを 0. 2 g、 PylRS発現ブラ スミドを 0. 1 g、 lacZ (91amber)発現プラスミドを 0. 4 g、 T7RNAポリメラーゼ発 現プラスミド 0. 3 μ gを用いて形質導入を行って lacZアンバーサプレツシヨンを行った 。ただし 1Z100ペニシリン一ストレプトマイシン(ギブコ)を含まない DMEMZF— 12 培地 (ギブコ)で培養した。その結果を図 7に示す。 T7RNAポリメラーゼを発現させ ない場合に比べ、 T7RNAポリメラーゼを発現させた場合は有意に高い |8—ガラタト シダーゼ活性が検出され、 lacZ遺伝子のアンバーコドンがサブレッシヨンされて!、る ことが分力ゝる。
[0063] 実施例 3と同様に、 T7— tRNATyr遺伝子 DNAを 0. 18 μ g、 TyrRS発現プラスミド を 0. 1 g、 lacZ (91amber)発現プラスミドを 0. 4 g、 T7RNAポリメラーゼ発現プ ラスミド 0. 3 /z gを用いて形質導入を行って lacZアンバーサプレツシヨンを行った。た だし 1Z100ペニシリン ストレプトマイシン(ギブコ)を含まない DMEMZF— 12培 地 (ギブコ)で培養した。その結果を図 8に示す。 T7RNAポリメラーゼを発現させな い場合に比べ、 T7RNAポリメラーゼを発現させた場合は有意に高い |8—ガラクトシ ダーゼ活性が検出され、 lacZ遺伝子のアンバーコドンがサブレッシヨンされていること が分かる。
[0064] [実施例 6] UlsnRNA型転写プロモータによるサプレッサー tRNAの発現系の構築 と lacZアンバーサプレツシヨン
UlsnRNA型プロモーターによる tRNA発現プラスミドの構築は以下の方法による 。先に調製した U6— tRNATry (配列番号 7)を铸型として、 U6プロモーター転写開 始位置の 198塩基上流力も TATAボックス上流までを下記プライマーを用いて PCR
により増幅した。
5'- ATGATATCAGAGGGCCTATTTCCCAT- 3' (配列番号 16)
5'- TGCTCGAGAAGCCAAGAATCGAAATAC- 3' (配列番号 17)
[0065] この領域は転写エレメント PSEを含んでおり、増幅された DNA断片の 5'側に Eco RVサイト、 3 '側に Xholサイトが付加されている。この PCR産物を一度プラスミド pcD NA3. 1 +の EcoRV—XhoI部位に組み込んだ。 Xholサイトの下流にはベクター由 来の EcoO 1091及び Notlサイトが存在する。この Xholと EcoO109I間に U6プロモ 一ターの TATAボックスの下流の配列とポリメラーゼ IIIによる転写を止めるためのタ ーミネーターを挿入した。 EcoO109Iサイトに tRNATyr配列を挿入した後、さらに、 N otlサイトにポリメラーゼ IIのターミネータ一である 3'ボックスを挿入した。 EcoRVから 3'ボックスまでの全領域が PSE— tRNATyr遺伝子 (配列番号 18)となる。この遺伝子 を PCRで増幅し、 pCR4blunt—TOPOにクローユングしたプラスミドが、 PSE— tR NATyr発現プラスミドである。このようにして作成した PSE— tRNATyr遺伝子にぉ 、て は, U6プロモーターから TATA配列が除かれており、 RNAポリメラーゼ IIによる転写 が起きるようになる (Das et al., Nature 1995, Vol.374, pp.657- 660)。また、 U6プロモ 一ターと同様の CMVェンハンサーを 2つのプライマー:
5 '-ATCGAATTCTAGTTATTAATAGTAATCAATTACG-3 ' (配列番号 19)及び 5'- AGCCTTGTATCGTATATGC- 3' (配列番号 20)
を用いて PCR増幅し、更に 5'リン酸化して PSE— tRNATyr遺伝子の EcoRVサイトに 挿入し、 CMV— DSE— PSE— tRNATyrを作製した。
[0066] 実施例 3と同様の方法で PSE— tRNATyr発現プラスミド、又は CMV— PSE— tRN ATyr発現プラスミドを 0. 2 g、 TyrRS発現プラスミドを 0. 2 g、 lacZ (91amber)発 現プラスミドを 0. 4 /z g用いて形質導入を行った。形質導入の翌日に細胞を j8 -Gala ctosidase Staining Kit (Mirus¾:)を用いて染色し、 lacZのアンバーサプレツシヨンが起 きる力調べた。サブレッシヨンが起きている細胞は青く染まると期待される。細胞を染 色した写真を図 9に示す(図中、染色細胞は矢印で示されている)。ェンハンサ一の 有無で特に大きな差は見られないが、いずれも、低いながらもサブレッシヨン活性が 確認された。
産業上の利用可能性
本発明は、リジン誘導体ゃチロシン誘導体等の非天然アミノ酸を導入したァロタン パク質を有効に製造することができる。