JP2011067169A - グルクロン酸転移酵素の製造方法 - Google Patents

グルクロン酸転移酵素の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】酵母を用いたグルクロン酸転移酵素の発現系において、従来の方法では酵母内での発現量の低かった分子種について、発現量を向上させることができるグルクロン酸転移酵素の製造方法を提供する。
【解決手段】グルクロン酸転移酵素遺伝子を導入した酵母形質転換体を用いるグルクロン酸転移酵素の製造方法。前記グルクロン酸転移酵素遺伝子は、発現量がUGT1A7の50%以下である低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子である。前記低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子は、シグナル配列遺伝子を、発現量がUGT1A7の80%以上である高発現グルクロン酸転移酵素のシグナル配列遺伝子と置換したものである。酵母形質転換体によるグルクロン酸転移酵素の発現量がシグナル配列遺伝子未置換の形質転換体に比べて強化されている。
【選択図】なし

Description

本発明は、グルクロン酸転移酵素の製造方法に関し、より詳しくは、グルクロン酸転移酵素遺伝子を導入した酵母形質転換体を用いるグルクロン酸転移酵素の製造方法である。
医薬品開発において、ヒト体内における医薬品代謝物の解析は重要である。グルクロン酸抱合体は医薬品の解毒代謝物として排泄されるが、その一部は反応性代謝物となり毒性を示す可能性が指摘されている。そこで、抱合体自身の安全性評価が必要であるが、有機合成法により部位特異的に抱合化することはきわめて困難であり、酵素や微生物等を用いて効率良く目的とする抱合体を製造する方法が切望されている。現在、動物肝臓由来ミクロソーム画分を用いた抱合体調製が実用化されているが、生産性や応用の範囲について十分とはいえない。また、昆虫細胞発現系を用いたヒトグルクロン酸転移酵素がすでに市販されているが、酵素源として抱合体調製に用いるにはコスト面からも現実的ではない。
本発明者らは、これまでに酵母を用いたグルクロン酸転移酵素の発現系を構築し、抱合体調製の酵素源として用いることにより、医薬品代謝物である抱合体の酵素的合成をおこなってきている(非特許文献1)。
S. Ikushiro, M. Sahara, Y. Emi, Y. Yabusaki, T. Iyanogi: Functional co-expression of xenobiotic metabolizing enzymes, rat cytochrome P450 1A1 and UDP-glucuronosylransferase 1A6. Biochimica et Biophysica Acta 1672 (2004) 86-92 Mackenzie, P. I , Walter Bock, K. ,Burchell, B. ,Guillemette, C. , Ikushiro, S. I. ,Iyanagi, T. , Miners, J.O. , Owens, I.S. and Nebert, D.W.: Nomenclature Update for the Mammalian UDP Glycosyltransferase (UGT) Gene Superfamily. Pharmacogenetics and Genomics, 10, 677-685 (2005) Bailey MJ, Dickinson RG. Acyl glucuronide reactivity in perspective: biological consequences. Chem Biol Interact. 145, 117-37. (2003) 生城真一、衣斐義一、井柳堯: UDP-グルクロン酸転移酵素:薬物代謝における最近の進歩, 肝臓, 42 , pp.297-301(2001) T. Sakaki, M. Akiyoshi-Shibata, Y. Yabusaki, H. Ohkawa, Organellatargeted expression of rat liver cytochrome P450c27 in yeast: genetically engineered alteration of mitochondrial P450 into a microsomal form creates a novel functional electron transport chain, J. Biol.Chem. 267 1649716502. (1992) Ikushiro. S., Emi, Y., Kato, Y., Yamada, S. and Sakaki, T.: Monospecific antipeptide antibodies against human hepatic UDP- glucuronosyltransferase 1A subfamily ( UGT1A) isoforms. Drug Metabolism and Pharmacokinetics, 21, 70-75 (2006)
しかしながら、酵母を用いたグルクロン酸転移酵素の発現系においては、分子種によっては発現量の低いものが存在することから、網羅的な抱合体調製の酵素源として十分ではなかった。酵母内での発現量の低かった分子種である、例えば、UGT1A1遺伝子の発現量を上昇させることができれば、多くの医薬品抱合代謝物を調製することができ、酵母発現グルクロン酸転移酵素による抱合体調製法の実用的価値が飛躍的に高まることが予想される。
そこで本発明の目的は、酵母を用いたグルクロン酸転移酵素の発現系において、従来の方法では酵母内での発現量の低かった分子種について、発現量を向上させることができるグルクロン酸転移酵素の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、酵母において発現量の低いヒトUGT1A1、UGT1A4及びUGT1A9のN末端シグナル配列部分を他の分子種と比較して発現量を検討した。その結果、UGT1A7のN末端シグナル配列を置換した変異体UGT1A1,UGT1A4及びUGT1A9において2.5〜5倍のタンパク発現が見られた。次にこの改変部分をもつUGT1A1を含むミクロソーム画分を用いてポリフェノールであるケルセチンの抱合体への変換反応をおこなったところ、野生型にくらべて3倍近い変換効率の上昇を得ることができた。これらの結果に基づいて本発明は完成された。
本発明は以下のとおりある。
[1]
グルクロン酸転移酵素遺伝子を導入した酵母形質転換体を用いるグルクロン酸転移酵素の製造方法であって、
前記グルクロン酸転移酵素遺伝子は、発現量がUGT1A7の50%以下である低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子であり、
前記低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子は、シグナル配列遺伝子を、発現量がUGT1A7の80%以上である高発現グルクロン酸転移酵素のシグナル配列遺伝子と置換したものであり、
酵母形質転換体によるグルクロン酸転移酵素の発現量がシグナル配列遺伝子未置換の形質転換体に比べて強化されている、グルクロン酸転移酵素の製造方法。
[2]
前記低発現量グルクロン酸転移酵素は、UGT1A1、UGT1A4、UGT1A8またはUGT1A9である[1]に記載の製造方法。
[3]
前記高発現量グルクロン酸転移酵素は、UGT1A7、UGT1A6またはUGT1A10である[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]
グルクロン酸転移酵素遺伝子を導入した酵母形質転換体を用いるグルクロン酸転移酵素の製造方法であって、
前記グルクロン酸転移酵素遺伝子は、発現量がUGT1A7の50%以下である低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子であり、
前記低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子は、シグナル配列遺伝子を(A)以下に示すアミノ酸配列(a)〜(c)のいずれかをコードする遺伝子、(B)アミノ酸配列(a)〜(c)のアミノ酸の1〜5個が置換若しくは欠失したアミノ酸配列のいずれかをコードする遺伝子、または(C)1〜5個のアミノ酸がアミノ酸配列(a)〜(c)のアミノ酸に付加されたアミノ酸配列のいずれかをコードする遺伝子と置換したものであり、但し、(B)の置換若しくは欠失したアミノ酸配列および(C)の付加されたアミノ酸配列をコードする遺伝子は、シグナル配列遺伝子とした場合にグルクロン酸転移酵素の発現量が野生型の80%以上である、方法。
(a) MARAGWTGLLPLYVCLLLTCGFAKAG(配列番号1)
(b) MACLLRSFQRISAGVFFLALWGMVVG(配列番号2)
(c) MAPRRVDQPRSFMCVSTADLWLCEAG(配列番号3)
[5]
前記低発現量グルクロン酸転移酵素は、UGT1A1、UGT1A4、UGT1A8またはUGT1A9である請求項4に記載の製造方法。
[6]
グルクロン酸転移酵素は、ヒトまたはブタ由来の酵素である[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]
置換するシグナル配列遺伝子は、同一種由来のシグナル配列遺伝子とする[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、酵母内での発現量の低かったUG分子種の発現量を上昇させることができた。特にUGT1A1遺伝子の発現量を上昇させることができたため、多くの医薬品抱合に関与するUGT1A1を用いて抱合代謝物を調製することができるようになった。そのため、酵母発現UGTによる抱合体調製法の実用的価値が飛躍的に高まった。本発明の方法によって、さまざまなUGT遺伝子の発現量を強化することができ、それにより抱合体産生能を高めることができる。
グルクロン酸転移酵素の酵母発現用ベクターpGYR-HindIIIへの挿入を示す摸式図である。 Western blot解析による酵母ミクロソームにおける、UGT1A7のシグナル配列を用いた、グルクロン酸転移酵素UGT1A1、UGT1A4、UGT1A9の発現解析結果を示す。 Western blot解析による酵母ミクロソームにおける、UGT1A6およびUGT1A7のシグナル配列を用いた、グルクロン酸転移酵素UGT1A1、UGT1A8の発現解析結果を示す。WTは野生型を示し、MT1,MT2はそれぞれ1A7,1A6由来シグナル配列置換体を示す。 Western blot解析による酵母ミクロソームにおける、ヒトUGT1A7のシグナル配列を用いた、ブタUGTの発現解析結果を示す。WT,MTはそれぞれブタUGT野生型およびヒトUGT1A7シグナル配列置換体を示す。図中の2本の矢印がブタUGTタンパクを示している。 ヒトグルクロン酸転移酵素(UGT1A1)発現酵母ミクロソームによるケルセチン抱合反応の時間依存性試験結果を示す。 ヒトグルクロン酸転移酵素(UGT1A1)発現酵母ミクロソームを用いたケルセチン抱合体の調製試験結果を示す。
本発明は、グルクロン酸転移酵素遺伝子を導入した酵母形質転換体を用いるグルクロン酸転移酵素の製造方法に関する。
グルクロン酸転移酵素は、生体内外の脂溶性化合物に対してUDP-グルクロン酸を糖の供与体としてグルクロン酸転移反応を触媒し、生体外への異物排泄を促進させる役割をもつ異物代謝系のひとつである。約530アミノ酸残基からなる小胞体膜タンパク質であり、肝臓や小腸において複数の分子種が存在する。これら分子種の特徴としてはアミノ末端側半分(約290アミノ酸残基)は抱合化基質を認識するドメインを構成し、分子種間で高い相同性を持つカルボキシル末端側半分(約240アミノ酸残基)は共通の基質であるUDP-グルクロン酸が結合するドメインとして機能している(非特許文献4)。
本発明のグルクロン酸転移酵素の製造方法の第1の態様では、
前記グルクロン酸転移酵素遺伝子は、発現量がUGT1A7の50%以下である低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子であり、
前記低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子は、シグナル配列遺伝子を、発現量がUGT1A7の80%以上である高発現グルクロン酸転移酵素のシグナル配列遺伝子と置換したものであり、
酵母形質転換体によるグルクロン酸転移酵素の発現量がシグナル配列遺伝子未置換の形質転換体に比べて強化されている。
本発明のグルクロン酸転移酵素の製造方法の第2の態様では、
前記グルクロン酸転移酵素遺伝子は、発現量がUGT1A7の50%以下である低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子であり、
前記低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子は、シグナル配列遺伝子を(A)以下に示すアミノ酸配列(a)〜(c)のいずれかをコードする遺伝子、(B)アミノ酸配列(a)〜(c)のアミノ酸の1〜5個が置換若しくは欠失したアミノ酸配列のいずれかをコードする遺伝子、または(C)1〜5個のアミノ酸がアミノ酸配列(a)〜(c)のアミノ酸に付加されたアミノ酸配列のいずれかをコードする遺伝子と置換したものであり、但し、(B)の置換若しくは欠失したアミノ酸配列および(C)の付加されたアミノ酸配列をコードする遺伝子は、シグナル配列遺伝子とした場合にグルクロン酸転移酵素の発現量が野生型の80%以上である。
(a) MARAGWTGLLPLYVCLLLTCGFAKAG(配列番号1)
(b) MACLLRSFQRISAGVFFLALWGMVVG(配列番号2)
(c) MAPRRVDQPRSFMCVSTADLWLCEAG(配列番号3)
変異体構築および宿主・ベクター系
グルクロン酸転移酵素遺伝子は、これまでの研究により多くの分子種がクローニングされ、その塩基配列が明らかにされた(非特許文献2)。本発明の製造方法において製造対象とするグルクロン酸転移酵素は、その遺伝子の発現量がUGT1A7の50%以下である低発現量のグルクロン酸転移酵素である。低発現量グルクロン酸転移酵素としては、例えば、UGT1A1、UGT1A4、UGT1A8およびUGT1A9を挙げることができる。UGT1A1、UGT1A4、およびUGT1A9の発現量は、それぞれUGT1A7の20%、10%、50%および30%である。この点は、第1の態様および第2の態様で共通する。
さらに、本発明の第1の態様では、低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子のシグナル配列遺伝子を、発現量がUGT1A7の80%以上である高発現グルクロン酸転移酵素のシグナル配列遺伝子と置換する。高発現グルクロン酸転移酵素としては、例えば、UGT1A7、UGT1A6およびUGT1A10を挙げることができる。UGT1A7、UGT1A6およびUGT1A10の発現量は、それぞれUGT1A7の100%、80%および90%である。
ヒトUDP-グルクロン酸転移酵素におけるシグナル配列領域のアミノ酸配列比較を以下の表1に示す。
本発明の第1の態様においては、低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子のシグナル配列遺伝子を、発現量がUGT1A7の80%以上である高発現グルクロン酸転移酵素のシグナル配列遺伝子と置換することで、酵母形質転換体によるグルクロン酸転移酵素の発現量がシグナル配列遺伝子未置換の形質転換体に比べて強化される。
さらに、本発明の第2の態様では、前記低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子のシグナル配列遺伝子を、(A)上記アミノ酸配列(a)〜(c)をコードする遺伝子と置換する。アミノ酸配列(a)は、UGT1A7のシグナル配列遺伝子であり、アミノ酸配列(b)は、UGT1A6のシグナル配列遺伝子であり、アミノ酸配列(c)は、UGT1A10のシグナル配列遺伝子である。
さらに、本発明の第2の態様では、前記低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子のシグナル配列遺伝子を、(B)アミノ酸配列(a)〜(c)のアミノ酸の1〜5個が置換若しくは欠失したアミノ酸配列のいずれかをコードする遺伝子であって、この遺伝子は、グルクロン酸転移酵素遺伝子のシグナル配列遺伝子として用いた場合に、グルクロン酸転移酵素の発現量がUGT1A7の80%以上である遺伝子と置換する。アミノ酸配列(a)のアミノ酸の1〜5個が置換若しくは欠失したアミノ酸配列をコードする遺伝子をシグナル配列遺伝子として用いた場合に、UGT1A7の発現量が野生型のUGT1A7の80%以上、好ましく90%以上、より好ましくは100%以上である遺伝子とする。アミノ酸配列(b)のアミノ酸の1〜5個が置換若しくは欠失したアミノ酸配列をコードする遺伝子をシグナル配列遺伝子として用いた場合に、UGT1A6の発現量が野生型のUGT1A6の80%以上、好ましく90%以上、より好ましくは100%以上である遺伝子とする。アミノ酸配列(c)のアミノ酸の1〜5個が置換若しくは欠失したアミノ酸配列をコードする遺伝子をシグナル配列遺伝子として用いた場合に、UGT1A6の発現量が野生型のUGT1A10の80%以上、好ましく90%以上、より好ましくは100%以上である遺伝子とする。
さらに、本発明の第2の態様では、前記低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子のシグナル配列遺伝子を、(C)1〜5個のアミノ酸がアミノ酸配列(a)〜(c)のアミノ酸に付加されたアミノ酸配列のいずれかをコードする遺伝子と置換したものであり、この遺伝子は、グルクロン酸転移酵素遺伝子のシグナル配列遺伝子として用いた場合に、グルクロン酸転移酵素の発現量がUGT1A7の80%以上である遺伝子と置換する。アミノ酸配列(a)に1〜5個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列をコードする遺伝子をシグナル配列遺伝子として用いた場合に、UGT1A7の発現量が野生型のUGT1A7の80%以上、好ましく90%以上、より好ましくは100%以上である遺伝子とする。アミノ酸配列(b)に1〜5個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列をコードする遺伝子をシグナル配列遺伝子として用いた場合に、UGT1A6の発現量が野生型のUGT1A6の80%以上、好ましく90%以上、より好ましくは100%以上である遺伝子とする。アミノ酸配列(c)に1〜5個のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列をコードする遺伝子をシグナル配列遺伝子として用いた場合に、UGT1A6の発現量が野生型のUGT1A10の80%以上、好ましく90%以上、より好ましくは100%以上である遺伝子とする。
尚、野生型のグルクロン酸転移酵素の発現量との対比は、実施例に記載のように、ミクロソーム画分におけるグルクロン酸転移酵素の発現を、例えば、ヒトグルクロン酸転移酵素ファミリー1の共通配列認識ペプチド抗体(非特許文献6)を用いたウエスタンブロット法による解析によって行うことができる。
本発明の第2の態様においては、低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子のシグナル配列遺伝子を、上記アミノ酸配列をコードする遺伝子と置換することで、酵母形質転換体によるグルクロン酸転移酵素の発現量がシグナル配列遺伝子未置換の形質転換体に比べて強化される。
本発明におけるグルクロン酸転移酵素は、例えば、ヒトまたはブタ由来の酵素であることができ、それら転移酵素の遺伝子配列およびシグナル配列遺伝子配列は、ヒト由来の酵素はGenBankに登録されており、ブタ由来の酵素はPEDE (Database of full-length cDNA clones and ESTs in pigs) (http://pede.dna.affrc.go.jp)に登録されており、配列情報は容易に入手可能である。UGT遺伝子の代表例を以下に示す。
尚、置換するシグナル配列遺伝子は、同一種由来のシグナル配列遺伝子とすることが本発明の効果をえるという観点から適当である。即ち、例えば、ヒト由来のグルクロン酸転移酵素については、ヒト由来のグルクロン酸転移酵素のシグナル配列遺伝子を用いる。同様に、ブタ由来のグルクロン酸転移酵素については、ブタ由来のグルクロン酸転移酵素のシグナル配列遺伝子を用いる。
本発明の製造方法においては、低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子のシグナル配列遺伝子を、高発現グルクロン酸転移酵素のシグナル配列遺伝子と置換した遺伝子を発現ベクターに挿入して、発現ベクターを得る。遺伝子を挿入する発現ベクターは、宿主である酵母において複製保持され、グルクロン酸転移酵素を発現し得るベクターであれば制限なく利用できる。そのようなベクターとしては、例えば、実施例で用いたpGYRを挙げることができる。但し、例示したベクターに限定される意図ではない。その他のベクターとしては、酵母由来のプラスミドYEp352GAP、YEp51、pSH19なども挙げることができる。
グルクロン酸転移酵素遺伝子およびシグナル配列遺伝子は、上記発現に適したベクター中のプロモーターの下流に連結して発現ベクターを得ることができる。プロモーターとしては、ENO1プロモーター、GAL10プロモーター、GAPDHプロモーター、ADHプロモーターなどが挙げられる。
上記シグナル配列遺伝子を置換した低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子を挿入した発現ベクターを、宿主である酵母に導入する。酵母細胞の例としては、サッカロマイセスまたはシゾサッカロマイセスに属する細胞が挙げられ、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevis1ae)またはサッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)等が挙げられる。酵母宿主としては特に制限はないが、例えば、AH22株等を用いることができる。酵母宿主としては、発現ベクターを安定的に保持することができる酵母宿主であれば制限はない。酵母宿主への組み換えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロブラスト法、酢酸リチウム法等を挙げることができる。
本発明では、上記発現ベクターを酵母宿主に導入した酵母形質転換体を用いて、目的とする低発現量グルクロン酸転移酵素の遺伝子を発現させて、低発現量グルクロン酸転移酵素を得る。低発現量グルクロン酸転移酵素の遺伝子を発現は、酵母形質転換体を培養することで実施できる。酵母形質転換体の培養は、公知の酵母の培養方法を適宜用いて実施できる。酵母宿主が上記AH22株の場合、L-ヒスチジンとL-ロイシン以外の全ての必須アミノ酸を生合成することができる。従って、培地には、これら2つのアミノ酸を添加して培養するか、あるいは実施例に示すように、発現ベクターとして、いずれか一方のアミノ酸合成遺伝子を持つベクターを用いることで、この発現ベクターを有する酵母宿主を選択的に培養することもできる。
培養後、酵母形質転換体の培養液から酵母菌体を回収し、回収した菌体を破砕や溶解をしてグルクロン酸転移酵素を回収する。回収したグルクロン酸転移酵素は常法により精製することもできる。
上記本発明の製造方法で得られた低発現量グルクロン酸転移酵素、例えば、UGT1A1、UGT1A4、UGT1A8およびUGT1A9は、グルクロン酸抱合反応に利用することができる。一般に、生体内外の異物は抱合化反応を受けて体外へ排泄される。とくにグルクロン酸抱合は、化合物中の水酸基、アミノ基、カルボキシル基あるいはチオール基などの官能基にグルクロン酸が付加されることによって水溶性の極性代謝物に変換される。多くの場合、グルクロン酸抱合体は排泄が促進され毒性が減じられるが、エステル型抱合であるアシル抱合体は、反応性代謝物となり薬物性肝障害の原因となる可能性がある(非特許文献3)。本発明の製造方法によれば、これら低発現量グルクロン酸転移酵素も、高発現させることができ、多量に発現させたグルクロン酸転移酵素を上記グルクロン酸抱合反応における挙動の解析に利用することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定される意図ではない。
1. 遺伝子改変グルクロン酸転移酵素発現プラスミドの構築
ヒトグルクロン酸転移酵素におけるシグナル配列領域の塩基配列を表2に示す。シグナル配列置換したヒトグルクロン酸転移酵素は、ヒトグルクロン酸転移酵素遺伝子(UGT1A1,UGT1A4及びUGT1A9)を含むpUC119クローニングベクターを鋳型として、置換配列を有するプライマー(表4 配列番号14〜20)を用いてPCR法によって増幅し構築した。酵母発現ベクターとしては小胞体膜酵素であるシトクロムP450の発現で実績のあるpGYRを用いた(非特許文献5)。図1にはグルクロン酸転移酵素の酵母発現用ベクターpGYRへの挿入を示す。
1-1. N末端置換グルクロン酸転移酵素遺伝子の作成
N末端置換グルクロン酸転移酵素を、ヒトグルクロン酸転移酵素遺伝子(UGT1A1,UGT1A4及びUGT1A9)を含むpUC119クローニングベクターを鋳型としてPCRにより増幅した。DNAポリメラーゼとしてはKOD-plus-(TOYOBO)を用いた。反応液組成は製造業者の指示に従い、以下に示すプライマーと反応条件でPCRを行った。
プライマー
フォワード配列 : 配列番号14〜19
リバース配列 : 配列番号20
PCR条件
変性 94℃ 2分
5サイクル 94℃ 15秒、37℃ 30秒、68℃1分45秒
30サイクル 94℃ 15秒、55℃ 30秒、68℃1分45秒
最終伸長 68℃4分
PCR産物を1%アガロースゲルで電気泳動した結果、目的サイズ(約1.6kb)に特異的な増幅がみられた。(以下、1%アガロースゲルでの電気泳動は、単に電気泳動と略称する)。
PCR断片を37℃で1時間、HindIII処理し、電気泳動後、グルクロン酸転移酵素遺伝子断片をゲルから切り出した。切り出したゲルからWizard(登録商標)SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いてインサート断片を調製した。
サブクローニングベクターとして用いるpUC119を37℃で4時間HindIII処理し、電気泳動後、目的サイズ(約2.8kb)のバンドを切り出した。その後、Wizard(登録商標)SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いてベクター断片を調製した。
インサート(グルクロン酸転移酵素遺伝子断片)とベクター(pUC119)を混合し、等量のDNA Ligation Kit Ver. 2(TaKaRa)のsolution Iを加え、16℃、1時間反応を行った。その後、大腸菌JM109株にヒートショック法を用いてトランスフォーメーションを行い、LBプレート(アンピシリン50μg/ml含有)に展開した。
得られた大腸菌コロニーのうち数個を選択し、それらを鋳型としてコロニーPCRを行った。DNAポリメラーゼとして、Ex Taq(登録商標)DNAポリメラーゼ(TaKaRa)を用い、M13-M4プライマー、M13-Rvプライマーを用いて以下の条件でPCRを行った。
PCR条件
変性 98℃ 5分
30サイクル 94℃ 30秒、50℃ 30秒、72℃ 2分
最終伸長 72℃ 4分
PCR後、電気泳動を行い、予想サイズ(約1.6kb)に特異的な増幅が見られるクローンを数個得た。
得られたクローンのインサート配列にPCRによる変異が入っていないことを確認するために配列決定を行った。まず、得られた大腸菌コロニーを5mlのLB培地(アンピシリン100μg/ml含有)に植菌し、37℃、200rpmで16時間振盪培養を行った。その後、Wizard(登録商標)Plus SV Minipreps DNA Purification System (Promega)を用いてプラスミドを抽出し、プラスミド濃度を260nmの吸光度を用いて測定し、テンプレートDNAとした。サイクルシークエンス反応は、BigDye(登録商標)Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit (Applied Biosystems)を用いて行った。配列決定を行った結果、N末端置換グルクロン酸転移酵素のインサート(UGT1A1,UGT1A4及びUGT1A9)は、UGT1A7のN末端シグナル配列をもち、それぞれ分子種に特有の正確な配列であることが確認できた。
1-2. 酵母におけるN末端置換グルクロン酸転移酵素の発現ベクターの構築
1-1で作成したN末端置換グルクロン酸転移酵素断片を含むプラスミド約1μgを37℃で4時間、HindIII処理し、電気泳動後、グルクロン酸転移酵素遺伝子断片をゲルから切り出した。切り出したゲルからWizard(登録商標)SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いてインサート断片を調製した。
酵母発現ベクターとして用いるpGYRを37℃で4時間HindIII処理し、電気泳動後、目的サイズ(約11kb)のバンドを切り出した。その後、Wizard(登録商標)SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いてベクター断片を調製した。
インサート断片とpGYR-HindIIベクター断片の濃度を電気泳動で確認後、それらのモル比が3:1〜10:1程度になるように混合し、等量のDNA Ligation Kit Ver. 2 (TaKaRa)のsolution Iを加え、16℃、1時間反応を行った。その後、大腸菌JM109株にヒートショック法を用いてトランスフォーメーションを行い、LBプレート(アンピシリン50μg/ml含有)に展開した。得られた大腸菌コロニーのうち数個を選択し、それらを鋳型としてコロニーPCRを行った。DNAポリメラーゼは、Ex Taq(登録商標)DNAポリメラーゼを用いた。プライマーはYGAP-Pプライマー(5'-aatgacaccgtgtggtgatcttcaagg-3')(配列番号21)と上記リバースプライマー(配列番号20)を用いた。以下の条件でPCRを行った。
PCR条件
変性 98℃5分
30サイクル 94℃ 30秒、50℃ 30秒、72℃ 2分30秒
最終伸長 72℃4分
PCR後、電気泳動を行い、予想サイズ(約3kb)に特異的な増幅がみられるクローンを数個得た。
得られた大腸菌コロニーを5mlのLB培地(アンピシリン100μg/ml含有)に植菌し、37℃、200rpmで16時間振盪培養を行った。その後アルカリSDS法を用いてプラスミドを抽出した。そして、その一部を37℃で1時間、HindII処理し、電気泳動をしてインサートの導入を再度確認し、3種のN末端シグナル配列置換グルクロン酸転移酵素(UGT1A1,UGT1A4及びUGT1A9)を含む酵母発現ベクターを得た。
2. 酵母発現系を用いた遺伝子改変グルクロン酸転移酵素の発現
2-1. 酵母への発現用プラスミドの形質転換
発現用には、酵母(Saccharomyces cerevisiae)AH22株を用いた。AH22株は、L-ヒスチジンとL-ロイシン以外は全ての必須アミノ酸を生合成することが出来る。pGYRはL-ロイシン合成遺伝子(LEU2)を持つため、培地にL-ヒスチジンを添加するとプラスミドを持った酵母のみが増殖できる。
グルクロン酸転移酵素発現用コンストラクトを酵母AH22株に塩化リチウム法により形質転換した。以下にプロトコールを示す。
・材料 YPD培地:1%イーストエクストラクト、2%ポリペプトン、2%グルコース
SDプレート:2%グルコース、0.67%N-base w/o アミノ酸、1.5%寒天、20μg/ml L-ヒスチジン、0.2M LiCl: 10ml(フィルター滅菌)、1M LiCl: 10ml(フィルター滅菌)
70%(w/v) PEG 4000: 10ml(溶解後、10mlにメスアップ)
・方法
30℃ で培養したS.cerevisiae AH22株1.0x107細胞を使用し、卓上遠心機で13,000rpm、4分遠心を行い、上清を除いた。ペレットを0.2M LiClで洗浄した(少しボルテックスにかけた)。卓上遠心機で13,000rpm、4分遠心を行い、上清を完全に取り除いた。ペレットを1M LiCl 20μlにピペッティングにより懸濁した。DNA(プラスミド)溶液10μl(0.5μgのプラスミドを含有)を加えた。70%(w/v) PEG 4000を30μl加え、ピペッティングによりよく混合した。40℃で30分間インキュベートした。滅菌水140μlを加えてSDプレートに展開し、30℃にてインキュベートした。SDプレート上で30℃、3日間培養し、3〜5mm程度の大きさのコロニーを数個得た。
2-2. 組換え体酵母の培養とミクロソーム画分の調製
2-1で得たグルクロン酸転移酵素発現株のコロニーを5mlの濃縮SD培地(2%グルコース、1.6% N-base w/o アミノ酸、20μg/ml L-ヒスチジン)に植菌した。SD培地に植菌した酵母を、30℃、220rpmで培養液が完全に白濁するまで培養し、さらにSD培地5mlx4本に植え継いだ。培養液が完全に白濁した後、さらに300mlのSD培地を含む500ml三角フラスコに植え継ぎ、培養した。最終的に菌体濃度が1.0〜1.2x108細胞/mlとなるまで培養を続け、以下のミクロソーム画分の調製に移った。
(ミクロソーム画分の調製)
・試薬:ザイモリアーゼバッファー:10mM Tris-HCl、2Mソルビトール、0.1mM DTT、0.1mM EDTA、pH7.5、ソニケーションバッファー:10mM Tris-HCl、0.65Mソルビトール、0.1mM DTT、0.1mM EDTA、pH7.5
・方法(300ml培養液の場合)
酵母菌体を4℃、8,000xg、10分間遠心処理を行った(HITACHI高速冷却遠心機、ローターRPR9-2を用いて6,000rpm)。菌体(沈殿)を100mlの蒸留水で洗浄した。 4℃、8,000xg、10分間遠心処理を行った(HITACHI高速冷却遠心機、ローターRPR9-2を用いて6,000rpm)。菌体(沈殿)を25mlのザイモリアーゼバッファーで洗浄した。4℃、8,000xg、10分間遠心処理を行った(HITACHI高速冷却遠心機、ローターRPR20-2を用いて7,800rpm)。菌体(沈殿)を300μg/mlのザイモリアーゼ100-T(生化学工業株式会社)を含む、25mlのザイモリアーゼバッファーに懸濁し、30℃で緩やかに1時間振盪した。4℃、9,000xg、10分間遠心処理を行った(HITACHI高速冷却遠心機、ローターRPR20-2を用いて8,400rpm)。菌体(沈殿)を25mlのザイモリアーゼバッファーで洗浄した。4℃、9,000xg、10分間遠心処理を行った(HITACHI高速冷却遠心機、ローターRPR20-2を用いて8,400rpm)。菌体(沈殿)を25mlのザイモリアーゼバッファーで洗浄した。4℃、9,000xg、10分間遠心処理を行った(HITACHI高速冷却遠心機、ローターRPR20-2を用いて8,400rpm)。菌体(沈殿)を25mlのソニケーションバッファー(1mM PMSF含有)に懸濁した。凍結融解のため、一晩-80℃にて静置した。翌日、菌体液を常温で溶解し、ダウンス型ホモジナイザー(Tight)(WHEATON)で20回程度ホモジナイズした。4℃、12,000xg、20分間遠心処理を行った(HITACHI高速冷却遠心機、ローターRPR20-2を用いて10,000rpm)。上清を超遠心用チューブに移した。4℃、100,000xg、60分間超遠心を行った(日立分離用超遠心機LSCP55H2、ローターPR70Tを用いて35,000rpm)。上清を捨て、沈殿(ミクロソーム画分)をテフロンホモジナイザーにかきとり、適当量(1〜3ml)の50mM Tris-HCl(pH7.4)に完全に懸濁できるまでホモジナイズした。得られた懸濁液を200μlずつ1.5mlのエッペンドルフチューブに分注した。サンプルは-80℃で保存した。
ミクロソーム画分におけるグルクロン酸転移酵素の発現は、ヒトグルクロン酸転移酵素ファミリー1の共通配列認識ペプチド抗体(非特許文献6)を用いたウエスタンブロット法により解析した(図2)。グルクロン酸転移酵素に相当するバンド強度の定量にはNIH image ソフトを用いた。N末端シグナル配列を置換していない野生型(WT)にくらべて、置換導入変異体であるUGT1A1(MT)、UGT1A4(MT)及びUGT1A9(MT)は、それぞれタミクロソームタンパクあたり5倍、2.5倍及び4倍のタンパク発現量の増加がみられた。
さらに、UGT1A1及びUGT1A8に対して高発現分子種であるUGT1A6のN末端シグナル配列への置換をおこなったところ、両分子種ともにUGT1A7とほぼ同程度の発現増強がみられた(図3)。また、ヒト以外の哺乳動物であるブタ由来UGT分子種発現におけるN末端シグナル配列の置換効果を調べたところ、発現量の増強は見られなかった(図4)
3. 活性測定
3.1 ケルセチン抱合活性測定
抱合活性は100mM KPi(pH7.4),10mM MgCl2緩衝液中で、以下のものを含む反応系を用いて測定した。基質:100μMケルセチン、1mg/ml 酵母ミクロソーム画分(野生型あるいは変異体ヒトグルクロン酸転移酵素UGT1A1あるいはUGT1A9を含む)。反応は終濃度2mMになるよう、UDP-グルクロン酸を添加して37℃反応を開始し、37℃で1〜24時間反応させた。反応終了後、2分の1容のアセトニトリルを添加し、激しく攪拌した後に遠心分離により除タンパクを行い、代謝物を高速液体クロマトグラフィーにより分析した。条件は以下のとおりである。カラム:Wako社製 WakoPack Navi C-30-5 (内径3.0mm×長さ300mm)、検出波長:370nm、流速:0.4ml/min、カラム温度:37℃、溶出条件:水/アセトニトリル系(0.5%リン酸を含む)、18%アセトニトリル(10分間)、18-55%アセトニトリル直線濃度勾配(10分間)の後、55%アセトニトリル(5分間)
各反応時間における出発基質に対する抱合体(3位、7位及び3‘位水酸基抱合体)の生成率を算出した。(図5) 酵母発現グルクロン酸転移酵素を酵素源としてケルセチン抱合体の変換反応の時間変化を測定し、示した。図中の(○)及び(□)はそれぞれグルクロン酸転移酵素野生型及びN末端シグナル配列置換体を酵素源として用いたときの時間変化を示す。
酵母発現グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)を酵素源としてケルセチン抱合体変換の時間変化をみたところ、N末端シグナル配列を置換していない野生型(WT)にくらべて、置換導入変異体であるUGT1A1(MT)ではおよそ3倍の活性上昇がみられ、タンパク発現の増加に基づいた抱合活性の増強が確認された。また、UGT1A9においても野生型に比べ置換変異導入体では1.5倍と有意な抱合活性の増加を示した。
3.2 トリフルオペラジン(Trifluoperazine)抱合活性測定
抱合活性は100mM KPi(pH7.4),10mM MgCl2緩衝液中で、以下のものを含む反応系を用いて測定した。基質:500μMトリフルオペラジン、1mg/ml 酵母ミクロソーム画分(野生型あるいは変異体ヒトグルクロン酸転移酵素UGT1A4を含む)。反応は終濃度2mMになるよう、UDP-グルクロン酸を添加して37℃反応を開始し、37℃で24時間反応させた。反応終了後、2分の1容のアセトニトリルを添加し、激しく攪拌した後に遠心分離により除タンパクを行い、代謝物を高速液体クロマトグラフィーにより分析した。条件は以下のとおりである。カラム:Wako社製 WakoPack Navi C-30-5 (内径2.0mm×長さ100mm)、検出波長:370nm、流速:0.4ml/min、カラム温度:37℃、溶出条件:水/アセトニトリル系(0.5%リン酸を含む)、18%アセトニトリル(10分間)、18-55%アセトニトリル直線濃度勾配(10分間)の後、55%アセトニトリル(5分間)
トリフルオペラジンはヒトUGT1A4により特異的に抱合化される基質のひとつである。本基質を用いて抱合活性を測定したところ、酵母発現UGT1A4の野生型に比べ置換変異導入体では2.5倍と有意な抱合活性の増加を示した。
4.遺伝子改変グルクロン酸転移酵素を用いたグルクロン酸抱合体の製造
ケルセチン部位特異的なグルクロン酸抱合体を製造するために、1mg/ml 酵母ミクロソーム画分(変異体ヒトグルクロン酸転移酵素UGT1A1を含む)を用いて100mM KPi(pH7.4),10mM MgCl2緩衝液中で2mM UDP-グルクロン酸存在下で100μMケルセチンの抱合体への変換反応をおこなった。反応は37℃で48時間反応させた。この溶液を実施例3と同じ条件で分析した結果、ケルセチン7位、4’位及び3’位抱合体のピークが検出され、変換率はそれぞれ10%、5%及び65%であった(図6)。
医薬品開発におけるヒト体内における医薬品代謝物の解析に関する分野に有用である。

Claims (7)

  1. グルクロン酸転移酵素遺伝子を導入した酵母形質転換体を用いるグルクロン酸転移酵素の製造方法であって、
    前記グルクロン酸転移酵素遺伝子は、発現量がUGT1A7の50%以下である低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子であり、
    前記低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子は、シグナル配列遺伝子を、発現量がUGT1A7の80%以上である高発現グルクロン酸転移酵素のシグナル配列遺伝子と置換したものであり、
    酵母形質転換体によるグルクロン酸転移酵素の発現量がシグナル配列遺伝子未置換の形質転換体に比べて強化されている、グルクロン酸転移酵素の製造方法。
  2. 前記低発現量グルクロン酸転移酵素は、UGT1A1、UGT1A4、UGT1A8またはUGT1A9である請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記高発現量グルクロン酸転移酵素は、UGT1A7、UGT1A6またはUGT1A10である請求項1または2に記載の製造方法。
  4. グルクロン酸転移酵素遺伝子を導入した酵母形質転換体を用いるグルクロン酸転移酵素の製造方法であって、
    前記グルクロン酸転移酵素遺伝子は、発現量がUGT1A7の50%以下である低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子であり、
    前記低発現量グルクロン酸転移酵素遺伝子は、シグナル配列遺伝子を(A)以下に示すアミノ酸配列(a)〜(c)のいずれかをコードする遺伝子、(B)アミノ酸配列(a)〜(c)のアミノ酸の1〜5個が置換若しくは欠失したアミノ酸配列のいずれかをコードする遺伝子、または(C)1〜5個のアミノ酸がアミノ酸配列(a)〜(c)のアミノ酸に付加されたアミノ酸配列のいずれかをコードする遺伝子と置換したものであり、但し、(B)の置換若しくは欠失したアミノ酸配列および(C)の付加されたアミノ酸配列をコードする遺伝子は、シグナル配列遺伝子とした場合にグルクロン酸転移酵素の発現量が野生型の80%以上である、方法。
    (a) MARAGWTGLLPLYVCLLLTCGFAKAG(配列番号1)
    (b) MACLLRSFQRISAGVFFLALWGMVVG(配列番号2)
    (c) MAPRRVDQPRSFMCVSTADLWLCEAG(配列番号3)
  5. 前記低発現量グルクロン酸転移酵素は、UGT1A1、UGT1A4、UGT1A8またはUGT1A9である請求項4に記載の製造方法。
  6. グルクロン酸転移酵素は、ヒトまたはブタ由来の酵素である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 置換するシグナル配列遺伝子は、同一種由来のシグナル配列遺伝子とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
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