明 細 書
機能性組成物、及びそれを用いた湿紙の剥離性向上方法
技術分野
[0001] 本発明は、機能性組成物、及びそれを用いた湿紙の剥離性向上方法に関する。
背景技術
[0002] 紙を製造するための抄紙工程は、一般に水中にパルプが分散された液を抄紙用の 網 (ワイヤー)に載せ、余分な水を自然落下させることにより湿紙とするワイヤーパート と、湿紙を一対のプレスロール間に通し、フェルトを介してプレスロールで押圧するこ とにより、湿紙中の水分をフェルトに移行させ、これにより湿紙を脱水するプレスパー トと、プレスパートを通過した湿紙を、加熱されたドラムに接触させることで乾燥させ、 紙とするドライヤーパートと、紙をスプールと呼ばれる棒に巻き取るリールパートと、を 有する。
[0003] ところが、従来のプレスパートにおいては、プレスロールを高速で回転させるために 、湿紙がプレスロールにより押圧される点(以下「押圧点」という。)を通過した後、プレ スロールカも剥離されずに付着したままプレスロールが回転してしまう場合がある。
[0004] 具体的には、図 5に示すように、湿紙は押圧点 Pにて押圧され、プレスロール表面 から剥離して搬送される。
湿紙がプレスロール表面から剥離されないでいると、湿紙に過大な張力が力かり、 紙クセが悪くなつたり、断紙するという事態が生じる。
[0005] 一方、上記プレスパートにおいては、一般に湿紙に接触する側のプレスロールに、 該プレスロールの表面に付着した異物を除去するためのドクターブレードが接触する ように配置される。
[0006] ところが、プレスロールが高速で回転するために、ドクターブレードとプレスロールと の摩擦により、ドクターブレードのプレスロールとの接触部分が磨耗し、ドクターブレ ードとプレスロールとの間に空隙が生じる場合がある。
このことは、ドクターブレードがカーボン製である場合、特に顕著に認められる。
[0007] この場合、プレスロール表面上の異物が十分に除去されなくなるため、湿紙が異物
と一緒にプレスロールにより押圧され、湿紙に穴があく等の不具合が生じる。
これらのことから、従来の抄紙工程にぉ 、ては安定した製造ができな 、と 、う問題 がある。
[0008] これらの問題に対し、プレスロールに薬剤を付与する方法が提案されている。
例えば、製紙工程中、湿紙の脱水部のプレスパートにおいて、所定の成分を有効 成分とするストーンロール汚れ防止剤をストーンロール又はフェルトの表面に注ぐこと によって、湿紙のストーンロール力 の剥離が顕著に改善され、しいては、生産性が 向上するストーンロールからの湿紙の剥離性の改善方法が開示されて 、る(特許文 献 1参照)。
[0009] また、多量の水分を含んだ湿紙を一対のプレスロール間に挟んで該湿紙を脱水す るとともに、該プレスロールにドクターブレードを圧接させて該プレスロールの付着物 の除去を行う抄紙プレス工程において、所定の構造を有するフッ素有機化合物を該 プレスロールに付着させるドクターブレードの摩耗防止方法が開示されて 、る(特許 文献 2参照)。
特許文献 1:特開平 11— 217787号公報
特許文献 2:特開 2005 - 273026号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0010] し力しながら、特許文献 1記載の方法によれば、湿紙のプレスロールに対する剥離 性は改善されるものの十分とは 、えな 、。
また、ドクターブレードの磨耗抑制につ 、ても不十分である。
[0011] 一方、特許文献 2記載の方法によれば、ドクターブレードの摩耗は比較的抑制でき るものの、湿紙のプレスロールに対する剥離性が不十分である。
[0012] したがって、上記特許文献 1又は 2記載の方法は、湿紙のプレスロールに対する剥 離性、及びドクターブレードの潤滑性、の両方を満足できるものではない。
すなわち、上記特許文献 1又は 2記載の方法では、上記剥離性を維持できないた め、断紙したり、上記潤滑性が不十分であるためドクターブレードが磨耗し、異物を 十分に除去できな 、傾向にある。
このため、上記特許文献 1又は 2記載の方法では、安定した製造は困難である。
[0013] 本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、プレスロールに 付与することにより、安定した製造が可能な機能性組成物、及びそれを用いた湿紙 の剥離性向上方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0014] 上記課題を解決する本発明の機能性組成物は、湿紙の脱水を行うためのプレス口 ールに付与して用いられ、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴と する。
[化 1]
[式(1)中、 Rは置換基を有していてもよい有機基又は水素原子を示し、 p, rはそれ ぞれ独立に 0〜228の整数を示し、 qは 0〜69の整数を示す。
但し、前記 p,q,rは同時に 0とはならない。 ]
[0015] この機能性組成物を湿紙の脱水を行うためのプレスロールに付与すると、湿紙のプ レスロールへの剥離性が向上する。
これにより、たとえプレスロールが高速で回転した場合であっても、湿紙の剥がれが 維持され断紙が抑制される。
[0016] このことに加え、プレスロールの表面の潤滑性が向上することから、ドクターブレード のプレスロールとの摩擦による磨耗が抑制される。
したがって、ドクターブレードとプレスロールとの摩擦により、ドクターブレードのプレ スロールとの接触部分が磨耗し、ドクターブレードとプレスロールとの間に空隙が生じ ることが抑制される。
[0017] また、ドクターブレードの磨耗が抑制されるため、プレスロール表面上の異物が十 分に除去され、湿紙に穴が空く等の不具合の発生を抑制できる。
さらに、ドクターブレードの磨耗が抑制されるため、ドクターブレードの交換の頻度を 少、なくすることができる。
[0018] よって、本発明の機能性組成物によれば、プレスロールに付与することにより、湿紙 のプレスロールに対する剥離性を向上できると共に、ドクターブレードの磨耗を抑制 できる。
このため、安定した製造が可能となる。
[0019] このように、この場合の機能性組成物をプレスロールに付与することにより、上述し たような効果が得られる理由については、定かではないが、水の表面張力が低下す るため、プレスロール表面に湿紙の接着力を低下させた皮膜が形成されるためでは ないかと推測される。
なお、要因はこれに限定されない。
[0020] 上記機能性組成物にぉ 、て、水溶性ポリマーを更に含有することが好ま U、。
この場合、上記機能性組成物をプレスロールに付与すると、水溶性ポリマーが一般 式(1)で表される化合物と共に、プレスロール表面に皮膜ィ匕されるため、プレスロー ルを長期間用いた場合であっても、湿紙のプレスロールへの高 、剥離性が維持でき る。
[0021] 上記機能性組成物において、 Rが水素原子であり、 p及び rがそれぞれ独立に 27〜
228の整数であり、 qが 25〜69の整数であることが好ましい。
[0022] この場合の機能性組成物をプレスロールに付与することにより、湿紙のプレスロー ルに対する剥離性をより向上できると共に、ドクターブレードの磨耗をより抑制できる このため、より安定した製造が可能となる。
[0023] 上記機能性組成物において、 Rが置換基を有していてもよい炭素数 10〜16の炭 化水素基であり、 pと rとの和が 6〜30の整数であり、 qが 0〜2の整数であることが好ま しい。
[0024] この場合の機能性組成物をプレスロールに付与することにより、湿紙のプレスロー ルに対する剥離性をより向上できると共に、ドクターブレードの磨耗をより抑制できる
このため、より安定した製造が可能となる。
[0025] 上記機能性組成物において、一般式(1)で表される化合物の分子量に対する下記 一般式 (2)で表されるエチレンオキサイド基の含有割合が 30質量%以上であること が好ましい。
[化 2]
この場合、ドクターブレードとプレスロールとの間の摩擦がより低減されるため、ドク ターブレードの摩耗がより抑制される。
[0026] 上記機能性組成物において、一般式(1)で表される化合物と、水溶性ポリマーとの 混合比が質量比で 1 : 0. 1〜1: 10であることが好ましい。
この場合、上記一般式(1)で表される化合物と、水溶性ポリマーとの混合比が質量 比で上記範囲であると、より均一な皮膜が形成される。
[0027] 上記機能性組成物にぉ 、て、プレスロール力 表面に付着した異物を除去するた めのドクターブレードを備えて 、ることが好まし 、。
[0028] 上記機能性組成物力 湿紙のプレスロール力 の剥離性を向上させる剥離剤であ ることが好ましい。
また、上記機能性組成物力 ドクターブレードとプレスロールとの潤滑性を向上させ る磨耗抑制剤であることが好ま 、。
[0029] これらの場合、機能性組成物をプレスロールに付与することにより、湿紙のプレス口 ールに対する剥離性を確実に向上できると共に、ドクターブレードの磨耗を確実に抑 制できる。
このため、より安定した製造が可能となる。
[0030] 本発明の湿紙の剥離性向上方法は、上述した機能性組成物を用いることを特徴と する。
本発明によれば、上述した機能性組成物を用いるため、機能性組成物を湿紙に接 触するプレスロールに付与することにより、湿紙の剥離性を向上させることができる。 発明の効果
[0031] 本発明によれば、プレスロールに付与することにより、湿紙のプレスロールに対する 剥離性を向上できると共に、ドクターブレードの磨耗を抑制できるため、安定した製造 が可能となる機能性組成物、及びそれを用いた剥離性向上方法を提供することがで きる。
発明を実施するための最良の形態
[0032] 以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に 説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。 また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づ くものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
[0033] 本発明の機能性組成物は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する。
[0034] ここで、上記一般式(1)中、 Rは置換基を有していてもよい有機基又は水素原子を 示し、 ρ, rはそれぞれ独立に 0〜228の整数を示し、 qは 0〜69の整数を示す。 但し、 p,q,rは同時に 0とはならない。
[0035] 上記有機基としては、炭素原子を含む基であれば特に限定されないが、例えば、 直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基、フ ニル基又はナフチル基等のァリール基 等が挙げられる。
[0036] また、上記置換基としては、フエ-ル基又はナフチル基等のァリール基、ハロゲン
基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボ-ル基、エステル基、スルホ-ル基、ニトロ基、 アルキレンオキサイド基等が挙げられる。
なお、下記一般式(1)で表される化合物は、これらの置換基を単独で有していても 、単独で複数有していても、 2種類以上有していてもよい。
[0037] 上記機能性組成物を湿紙の脱水を行うためのプレスロールに付与すると、湿紙の プレスロールへの剥離性が向上する。
これにより、たとえプレスロールが高速で回転した場合であっても、湿紙の剥がれが 維持され断紙が抑制される
[0038] このことに加え、プレスロールの表面の潤滑性が向上することから、ドクターブレード のプレスロールとの摩擦による磨耗が抑制される。
したがって、ドクターブレードとプレスロールとの摩擦により、ドクターブレードのプレ スロールとの接触部分が磨耗し、ドクターブレードとプレスロールとの間に空隙が生じ ることが抑制される。
[0039] よって、この場合の機能性組成物をプレスロールに付与することにより、湿紙のプレ スロールに対する剥離性を向上できると共に、ドクターブレードの磨耗を抑制できる。 このため、安定した製造が可能となる。
[0040] 上記一般式(1)で表される化合物において、 Rが水素原子である場合、該化合物 が下記一般式(3)で表すように、プロピレンオキサイド基を中心として、その左右にェ チレンオキサイド基を有するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー であることが好ましい。
[化 4]
[0041] ここで、一般式(3)中の p, q, rの値は潤滑性の観点から、以下の範囲であることが
好ましい。
すなわち、 pは 27〜228の整数であることが好ましぐ 38〜199の整数であること力 S より好まし 、。
qは 25〜69の整数であることが好ましぐ 34〜60の整数であることがより好ましい。 rは 27〜228の整数であることが好ましぐ 38〜 199の整数であることがより好まし い。
また、これに加えて pと rとの値が同じであることが更に好ましい。
なお、本発明の機能性組成物は、一般式(1)で表される化合物において、 p, q, r の値が異なる化合物を 2種類以上含んで 、てもよ 、。
[0042] Rが水素原子である場合、機能性組成物をプレスロールに付与することにより、湿 紙のプレスロールに対する剥離性をより向上できると共に、ドクターブレードの磨耗を より抑制できる。
このため、より安定した製造が可能となる。
[0043] なお、上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーにおける下記一 般式 (4)で表されるプロピレンオキサイド基の平均分子量は、機能性組成物のプレス ロールへの定着性の観点から 1300以上であることが好ましく、 1500以上であること 力 り好ましい。
[化 5]
上記機能性組成物にぉ 、て、水溶性ポリマーを更に含有することが好ま U、。 この場合、上記機能性組成物をプレスロールに付与すると、水溶性ポリマーが一般 式(3)で表される化合物と共に、プレスロール表面に皮膜ィ匕されるため、プレスロー ルを長期間用いた場合であっても、湿紙のプレスロールへの高 、剥離性が維持でき
る。
[0045] 上記水溶性ポリマーは、カチオン性、両性、又はノ-オン性であることが好ましぐ力 チオン性又は両性であることがより好ま 、。
これらの水溶性ポリマーは単独で用いても、 2種類以上混合して用いてもょ 、。 なお、両性とは、カチオン性単量体とァ-オン性単量体とを重合させることにより得 られる。
この場合、湿紙の剥離性がより向上すると 、う利点がある。
[0046] 上記カチオン性水溶性ポリマーとしては、ポリジァリルジメチルアンモ-ゥム、ポリ塩 化ジァリルジメチルアンモ-ゥム、ジシアンジアミドーホルムアルデヒド縮合物、ェピク 口ルヒドリンージメチルァミン縮合物等が挙げられる。
また、カチオン性水溶性ポリマーは、カチオン性単量体である重合可能な官能基を 有するハロゲン化ァミン誘導体と、ノニオン性単量体であるエチレン性二重結合を有 するモノマーとを重合させることにより得られるポリマーであってもよい。
[0047] 上記重合可能な官能基を有するハロゲンィ匕ァミン誘導体としては、(メタ)アクリル酸
2— (N, N—ジメチルァミノ)ェチルベンジンクロリド塩、(メタ)アクリル酸 2— (N, N— ジメチルァミノ)ェチルクロリド塩等が挙げられる。
また、上記エチレン性二重結合を有するモノマーとしては、エチレングリコールモノ( メタ)アタリレート、エチレングリコールジ(メタ)アタリレート、ジエチレングリコールモノ( メタ)アタリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アタリレート、トリエチレングリコールモ ノ(メタ)アタリレート、トリエチレングリコールジ (メタ)アタリレート、プロピレングリコール モノ (メタ)アタリレート等が挙げられる。
これらの単量体は単独で用いても、 2種類以上混合して用いてもょ 、。
[0048] 上記両性水溶性ポリマーとしては、カチオン性単量体である重合可能な官能基を 有するハロゲン化ァミン誘導体と、ァニオン性単量体である重合可能な官能基を有 するカルボン酸誘導体とを重合させることにより得られるポリマーが挙げられる。
なお、上記カチオン性単量体とァ-オン性単量体とを重合させる際には、上述した ノ-オン性単量体を同時に重合させてもょ 、。
[0049] 上記重合可能な官能基を有するハロゲンィ匕ァミン誘導体は、上述したものと同様の
ものが用いられる。
また、上記重合可能な官能基を有するカルボン酸誘導体としては、(メタ)アクリル酸 等が挙げられる。
これらの単量体は単独で用いても、 2種類以上混合して用いてもょ 、。
[0050] 上記一般式(1)で表される化合物にお 、て、 Rが置換基を有して 、てもよ 、有機基 である場合、該有機基は、炭素数が 10〜16の炭化水素基であることが好ましぐ炭 素数 12〜 15の炭化水素基であることがより好ま 、。
なお、上記炭化水素基は置換基を有して 、な 、ものであることが好ま 、。
[0051] 炭素数が 10未満であると、炭素数が上記範囲にある場合と比較して、表面張力が 高くなり、皮膜が十分に形成されない傾向にあり、炭素数が 16を超えると、水中に均 一に分散されにくくなるため、プレスロール表面に均一に付着されない傾向にある。 なお、本発明の機能性組成物は、一般式(1)で表される化合物において、炭素数 が異なる化合物を 2種類以上含んで 、てもよ 、。
[0052] このとき、 pと rとの和は水への相溶性の観点から 6〜30の整数であることが好ましく 、 6〜20の整数であることがより好ましぐ 8〜20の整数であることが更に好ましぐ 9 〜16の整数であることが一層好ましい。
また、 qは 0〜2の整数であることが好ましぐ 0であることがより好ましい。
[0053] すなわち、 qが 0であるときは、下記一般式(5)で表される化合物となる。
[化 6]
これらの中でも、上記一般式(1)で表される化合物が、ポリオキシエチレンラウリル エーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエー テル、ポリオキシエチレンペンタデシルエーテルであることが更に好まし!/、。
[0055] 上記一般式(1)で表される化合物において、有機基が炭化水素基である場合、本 発明の機能性組成物は水溶性ポリマーを共存させて用いられる。
なお、ここでいう水溶性ポリマーは上述した水溶性ポリマーと同義である。
[0056] この場合、上記機能性組成物をプレスロールに付与すると、水溶性ポリマーが一般 式(5)で表される化合物と共に、プレスロール表面に皮膜ィ匕されるため、プレスロー ルを長期間用いた場合であっても、湿紙のプレスロールへの高 、剥離性が維持でき る。
[0057] Rが置換基を有して 、てもよ 、有機基である場合、機能性組成物をプレスロールに 付与することにより、湿紙のプレスロールに対する剥離性をより向上できると共に、ドク ターブレードの磨耗をより抑制できる。
このため、より安定した製造が可能となる。
[0058] 上記機能性組成物において、一般式(1)で表される化合物の分子量に対する下記 一般式 (2)で表されるエチレンオキサイド基の含有割合が 30質量%以上であること が好ましぐ 90質量%以下であることが好ましい。
[化 7]
[0059] エチレンオキサイド基の含有割合が 30質量%未満であると、エチレンオキサイド基 の含有割合が上記範囲にある場合と比較して、皮膜強度が不十分となる傾向にあり 、エチレンオキサイド基の含有割合が 90質量%を超えると、エチレンオキサイド基の 含有割合が上記範囲にある場合と比較して、皮膜がプレスロールに十分に定着しな い傾向にある。
[0060] 上記機能性組成物において、一般式(1)で表される化合物と、水溶性ポリマーとの 混合比が質量比で 1 : 0. 1〜1: 10であることが好ましぐ 1 : 0. 25〜1 :4であることが より好まし 、。
[0061] 機能性組成物 1に対する水溶性ポリマーの質量比が 0. 1未満であると、質量比が 上記範囲にある場合と比較して、皮膜を十分に維持できなくなる傾向にあり、機能性 組成物 1に対する水溶性ポリマーの質量比が 10を超えると、質量比が上記範囲にあ る場合と比較して、タック性が増加するため、剥離性が低下する傾向にある。
[0062] 本発明の機能性組成物において、一般式(1)で表される化合物の表面張力は、 2 5〜40mNZmであることが好まし!/、。
この場合、機能性組成物をプレスロール表面上により均一に付与することができる。
[0063] 本発明の機能性組成物は、上記一般式(1)で表される化合物、水溶性ポリマー以 外にも、キレート剤、 pH調整剤、防腐剤、分散剤、粘度調整剤、固体潤滑剤等の添 加剤を含んでいてもよい。
[0064] 次に、上述した機能性組成物を用いた湿紙の脱水工程について説明する。
上記機能性組成物は、フェルトと、該フェルトを介して湿紙を押圧するための一対 のプレスロールと、湿紙に接触する側のプレスロールに接触するドクターブレードと、 を備える抄紙機に用いられる。
[0065] 図 1は、本発明の機能性組成物が用いられる抄紙機のプレスパートの構成の一例 を説明するための説明図である。
図 1に示すように、プレスパート 100は、第 1プレス部 Aと、第 2プレス部 Bとを備え、 第 1プレス部 Aでは 2箇所、第 2プレス部 Bでは 1箇所で湿紙の脱水が行われる。
[0066] 第 1プレス部 Aにおいては、中心となるプレスロール 10 (以下「センターロール」とい う。)が備えられており、該センターロール表面の押圧点 PI, P2で、湿紙を押圧でき るように第 1プレスロール 11と、第 2プレスロール 12とが設けられて!/、る。
換言すると、センターロール 10と第 1プレスロール 11とが押圧点 P1で湿紙を押圧 することができ、センターロール 10と第 2プレスロール 12とが押圧点 P2で湿紙を押圧 することができるようになって!/、る。
[0067] 一方、第 2プレス部 Bにおいては、上方のプレスロール 15 (以下「トップロール」とい う。)が備えられており、該トップロール 15表面の押圧点 P3で、湿紙を押圧できるよう に第 3プレスロール 13が設けられている。
換言すると、トップロール 15と第 3プレスロール 13とが押圧点 P3で湿紙を押圧する
ことができるようになって!/、る。
[0068] 湿紙 30は第 1プレス部 Aのセンターロール 10と第 1プレスロール 11との間、センタ 一ロール 10と第 2プレスロール 12との間を通過した後、第 2プレス部 Bのトップロール 15と第 3プレスロール 13との間を通過するように配置されている。
[0069] また、上記湿紙 30が押圧点 PI, P2, P3それぞれで押圧される際には、プレスロー ル間において湿紙 30がフェルト 21, 22, 23を介して押圧されるようになつている。 すなわち、フェルト 21は、センターロール 10と第 1プレスロール 11との間に配置さ れており、第 1プレスロール 11に接するようになって!/、る。
また、フェルト 22は、センターロール 10と第 2プレスロール 12との間に配置されてお り、第 2プレスロール 12に接するようになっている。
さらに、フェルト 23は、トップロール 15と第 3プレスロール 13との間に配置されてお り、第 3プレスロール 13に接するようになっている。
[0070] したがって、湿紙 30が第 1プレス部 Aを通過する際には、センターロール 10と接す ることになり、第 2プレス部 Bを通過する際には、トップロール 15と接することになる。 なお、これらのフェルト 21, 22, 23は、湿紙と共に移動可能となっており、湿紙を押 圧したときに湿紙中の水分を吸収することができる。
[0071] また、上記プレスパート 100は、湿紙 30に接触する側のプレスロール(センターロー ル 10及びトップロール 15)に接触するドクターブレード 10a, 15aを備えている。 すなわち、センターロール 10はドクターブレード 10aと、トップロール 15はドクターブ レード 15aと接触している。
[0072] これらのドクターブレード 10a, 15aはセンターロール 10、トップロール 15の表面に 付着した湿紙 30からの分離物等の異物を取り除くことができる。
また、上記プレスパート 100は、湿紙 30に接触する側のプレスロール(センターロー ル 10及びトップロール 15)に本発明の機能性組成物を付与するためのスプレーノズ ル 10b, 15bを備えている。
すなわち、上述した本発明の機能性組成物は、湿紙の脱水を行うためのプレスロー ルに付与して用いられる。
[0073] かかるスプレーノズル 10b, 15bはいずれも、センターロール 10及びトップロール 1
5の回転方向 Rl, R2に対して、ドクターブレード 10a, 15aが設けられた位置よりも下 流側に設けられる。
このようにスプレーノズル 10b, 15bをドクターブレード 10a, 15aよりも下流に設ける ことにより、剥離性皮膜の均一な形成と過剰分の機能性組成物を除去できるという利 点がある。
[0074] ここで、上記スプレーノズル 10b, 15bとしては、均等扇型ノズル、広角扇型ノズル、 片扇型ノズル、空円錐ノズル、充円錐型ノズル、充角錐型ノズル、直進ノズル等が用 いられる。
[0075] 湿紙 30はプレスパート 100に入ると、第 1プレス部 Aにて、センターロール 10と第 1 プレスロール 11とによりフェルト 21を介して押圧点 P1で押圧される。
そうすると、湿紙 30中の水分がフェルト 21に吸収されるため、湿紙 30が脱水される
[0076] 次いで、湿紙 30は、センターロール 10と第 2プレスロール 12とによりフェルト 22を 介して押圧点 P2で押圧される。
そうすると、湿紙 30中の水分がフェルト 22に吸収されるため、湿紙 30がより脱水さ れる。
[0077] そして、湿紙 30はセンターロール 10から剥離され、第 2プレス部 Bに搬送される。こ のとき、湿紙 30から分離した異物は、ドクターブレード 10aにより除去される。
[0078] 第 2プレス部 Bに搬送された湿紙 30は、トップロール 15と第 3プレスロール 13とによ りフェルト 23を介して押圧点 P3で押圧される。
そうすると、湿紙 30中の水分がフェルト 23に吸収されるため、湿紙 30が更に脱水さ れること〖こなる。
[0079] そして、湿紙 30はトップロール 15から剥離され、図示しないドライヤーパートに送ら れ乾燥される。
なお、湿紙 30から分離した異物は、ドクターブレード 15aにより除去される。
[0080] このようにして、上記プレスパート 100においては、一対のプレスロール間にフェル トを介して湿紙を通過させることにより、該湿紙の脱水が行われる。
[0081] また、上述した機能性組成物を、湿紙に接触するプレスロールに付与することにより
、湿紙の剥離性を向上させることができる。
[0082] さらに、上述した機能性組成物を、表面に付着した異物を除去するためのドクター ブレードに接触したプレスロールに付与することにより、ドクターブレードの磨耗を抑 ff¾することができる。
[0083] すなわち、上記機能性組成物は、湿紙のプレスロールからの剥離性を向上させる 剥離剤、及び Z又はドクターブレードとプレスロールとの潤滑性を向上させる磨耗抑 制剤として機能させることができる。
[0084] 以上より、機能性組成物をプレスロールに付与することにより、湿紙のプレスロール に対する剥離性を確実に向上できると共に、ドクターブレードの磨耗を確実に抑制で きる。このため、より安定した製造が可能となる。
[0085] また、湿紙をプレスロールから剥離させるために、湿紙の長さ方向に張力をカ卩えて( 以下「ドローをとる」という。)湿紙をプレスロール表面から引き剥がす場合、本発明の 機能性組成物が付与されたプレスロールは、湿紙のプレスロールに対する剥離性が 向上しているため、ドローを緩めることができる。
[0086] したがって、ドローのとり過ぎによって湿紙端面が内側に縮んだり、断紙したりするこ とを抑制できる。
なお、湿紙端面が内側に縮むと、紙の組織自体に歪みが与えられるため、印刷紙 として用いる場合、色ズレが発生する。
[0087] 以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に 限定されるものではない。
[0088] 例えば、上記実施形態においては、湿紙 30をプレスロール間に通過させる際に、 一方の面をフェルトと接触させている力 湿紙 30の両面にフェルトを接触させてもよ い。
[0089] また、本実施形態においては、一対のプレスロールのうち、湿紙に接する一方のプ レスロールがドクターブレードを備えているが、一対のプレスロールの両方がドクター ブレードを備えて!/ヽてもよ!/ヽ。
実施例
[0090] 以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明する力 本発明は
以下の実施例に限定されるものではない。
[0091] (実施例 1)
[機能性組成物の調製]
水 80質量%中に、下記一般式(3)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピ レンブロックポリマー(プロピレンオキサイド基の分子量: 2000、エチレンオキサイド基 の含有割合: 40質量0 /0、 p = 34、 q = 38、 r= 38、表面張力 38. 6mN/m) 10質量 %と、カチオン性水溶性ポリマー 10質量%とを加えることにより、機能性組成物を得 た。
[化 8]
[0092] なお、上記カチオン性水溶性ポリマーは、カチオン性単量体である (メタ)アクリル酸 2- (N, N—ジメチルァミノ)ェチルベンジンクロリド塩と、ノ-オン性単量体であるェ チレングリコールモノ (メタ)アタリレートとを、質量比 1 : 1となるように混合し、ラジカル 重合させたものである。
[0093] (実施例 2〕
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー中のエチレンオキサイド基 の含有割合を 80質量%としたこと以外は実施例 1と同様にして機能性組成物を得た
[0094] (実施例 3)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー中のエチレンオキサイド基 の含有割合を 20質量%としたこと以外は実施例 1と同様にして機能性組成物を得た
[0095] (実施例 4)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー中のプロピレンオキサイド 基の分子量を 3000とし、エチレンオキサイド基の含有割合を 80質量%としたこと以 外は実施例 1と同様にして機能性組成物を得た。
[0096] (実施例 5)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー中のプロピレンオキサイド 基の分子量を 1200としたこと以外は実施例 1と同様にして機能性組成物を得た。
[0097] (実施例 6)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー中のプロピレンオキサイド 基の分子量を 1500としたこと以外は実施例 1と同様にして機能性組成物を得た。
[0098] (実施例 7)
カチオン性水溶性ポリマーの代わりに、両性水溶性ポリマーを用いたこと以外は実 施例 1と同様にして機能性組成物を得た。
なお、上記両性水溶性ポリマーは、カチオン性単量体である (メタ)アクリル酸 2— ( N, N—ジメチルァミノ)ェチルベンジンクロリド塩と、ァ-オン性単量体であるメタタリ ル酸と、ノ-オン性単量体であるエチレングリコールモノ (メタ)アタリレートとを、質量 比 5: 2: 3となるように混合し、ラジカル重合させたものである。
[0099] (実施例 8)
カチオン性水溶性ポリマーの代わりに、ポリ塩ィ匕ジァリルジメチルアンモ-ゥムを用 いたこと以外は実施例 1と同様にして機能性組成物を得た。
[0100] (実施例 9)
カチオン性水溶性ポリマーの代わりに、ジシアンジアミドーホルムアルデヒド縮合物 を用いたこと以外は実施例 1と同様にして機能性組成物を得た。
[0101] (実施例 10)
カチオン性水溶性ポリマーの代わりに、ェピクロルヒドリンとジメチルァミンとの縮合 物を用いたこと以外は実施例 1と同様にして機能性組成物を得た。
[0102] (実施例 11)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを 2%、カチオン性水溶性 ポリマーを 18質量0 /0 (ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーと水溶
性ポリマーの質量比 1: 9)としたこと以外は実施例 1と同様にして機能性組成物を得 た。
[0103] (実施例 12)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを 18%、カチオン性水溶 性ポリマーを 2質量0 /0 (ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーと水 溶性ポリマーの質量比 1 :0. 11)としたこと以外は実施例 1と同様にして機能性組成 物を得た。
[0104] (実施例 13)
カチオン性水溶性ポリマーを用いな力 たこと以外は実施例 1と同様にして機能性 組成物を得た。
[0105] (実施例 14)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーの代わりに、下記一般式( 1)で表される化合物(以下単に「ィ匕合物 A」という。 ) (エチレンオキサイド基の含有割 合: 55質量%、炭素数 10 (分岐デシル)、 p+r=6、 q= l、表面張力 26. 9mN/m) を用いたこと以外は実施例 1と同様にして機能性組成物を得た。
[0106] (実施例 15)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 59質量%、炭素数 10 (分岐デシル)、 p+r=7、 q= l、表面張力 27. Om NZm)を用いたこと以外は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0107] (実施例 16)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 62質量%、炭素数 10 (分岐デシル)、 p+r=8、 q= l、表面張力 27. Om
NZm)を用いたこと以外は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0108] (実施例 17)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 65質量%、炭素数 10 (分岐デシル)、 p+r= 9、 q= l、表面張力 27. 5m NZm)を用いたこと以外は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0109] (実施例 18)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 75質量%、炭素数 10 (分岐デシル)、 p+r= 15、 q= l、表面張力 27. 5 mN/m)を用いたこと以外は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0110] (実施例 19)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 77質量%、炭素数 10 (分岐デシル)、 p+r= 16、 q= l、表面張力 27. 5 mN/m)を用いたこと以外は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0111] (実施例 20)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 79質量%、炭素数 10 (分岐デシル)、 p+r= 17、 q= l)を用いたこと以外 は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0112] (実施例 21)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 82質量%、炭素数 10 (分岐デシル)、 p+r= 20、 q= l)を用いたこと以外 は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0113] (実施例 22)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 82質量%、炭素数 10 (分岐デシル)、 p+r= 21、 q= l)を用いたこと以外 は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0114] (実施例 23)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 70質量%、炭素数 9 (直鎖ノニル)、 p+r= 10、 q= l)を用いたこと以外
は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0115] (実施例 24)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 67質量%、炭素数 10 (分岐デシル)及び炭素数 12 (直鎖ドデシル)の混 合物、 p+r= 10、 q= l)を用いたこと以外は実施例 14と同様にして機能性組成物を 得た。
[0116] (実施例 25)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 62質量%、炭素数 12 (直鎖ドデシル)、 p+r= 7、 q = 0、表面張力 27. 8 mN/m)を用いたこと以外は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0117] (実施例 26)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 66質量%、炭素数 12 (直鎖ドデシル)、 p+r=8、 q = 0、表面張力 28. 5 mN/m)を用いたこと以外は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0118] (実施例 27)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 70質量%、炭素数 12 (直鎖ドデシル)、 p+r= 10、 q = 0、表面張力 31. OmN/m)を用いたこと以外は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0119] (実施例 28)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 81質量%、炭素数 12 (直鎖ドデシル)、 p+r= 18、 q = 0、表面張力 39. OmN/m)を用いたこと以外は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0120] (実施例 29)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 64質量%、炭素数 13 (直鎖トリデシル)、 p+r=8、 q = 0、表面張力 27. 5mN/m)を用いたこと以外は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0121] (実施例 30)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の
含有割合: 69質量%、炭素数 13 (直鎖トリデシル)、 p+r= 10、 q = 0、表面張力 27 . 9mN/m)を用いたこと以外は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0122] (実施例 31)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 73質量%、炭素数 13 (直鎖トリデシル)、 p+r= 12、 q = 0、表面張力 31 . 3mN/m)を用いたこと以外は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0123] (実施例 32)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 82質量%、炭素数 13 (直鎖トリデシル)、 p+r= 20、 q = 0、表面張力 36 . 3mN/m)を用いたこと以外は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0124] (実施例 33)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 57質量%、炭素数 14 (直鎖テトラデシル)及び炭素数 15 (直鎖ペンタデ シル)の混合物、 p+r=8及び 9の混合物、 q= l、表面張力 32. OmNZm)を用い たこと以外は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0125] (実施例 34)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 59質量%、炭素数 14 (直鎖テトラデシル)及び炭素数 15 (直鎖ペンタデ シル)の混合物、 p+r= 9、 q= l、表面張力 32. 5mNZm)を用いたこと以外は実施 例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0126] (実施例 35)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 64質量%、炭素数 14 (直鎖テトラデシル)及び炭素数 15 (直鎖ペンタデ シル)の混合物、 p+r= l l、 q= l、表面張力 34. OmNZm)を用いたこと以外は実 施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0127] (実施例 36)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 67質量%、炭素数 14 (直鎖テトラデシル)及び炭素数 15 (直鎖ペンタデ
シル)の混合物、 p+r= 13、 q= l、表面張力 35. OmNZm)を用いたこと以外は実 施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0128] (実施例 37)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 70質量%、炭素数 14 (直鎖テトラデシル)及び炭素数 15 (直鎖ペンタデ シル)の混合物、 p+r= 15、 q= l、表面張力 37. OmNZm)を用いたこと以外は実 施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0129] (実施例 38)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 61質量%、炭素数 16 (直鎖へキサデシル)、 p+r= 10、 q= l)を用いた こと以外は実施例 14と同様にして機能性組成物を得た。
[0130] (実施例 39)
化合物 Aの代わりに、上記一般式(1)で表される化合物 (エチレンオキサイド基の 含有割合: 60質量%、炭素数 16 (直鎖へキサデシル)及び炭素数 18 (直鎖ォクタデ シル)、 p+r= 10、 q= l)を用いたこと以外は実施例 14と同様にして機能性組成物 を得た。
[0131] (実施例 40)
カチオン性水溶性ポリマーの代わりに、両性水溶性ポリマーを用いたこと以外は実 施例 36と同様にして機能性組成物を得た。
なお、上記両性水溶性ポリマーは、カチオン性単量体である (メタ)アクリル酸 2— ( N, N—ジメチルァミノ)ェチルベンジンクロリド塩と、ァ-オン性単量体であるメタタリ ル酸と、ノ-オン性単量体であるエチレングリコールモノ (メタ)アタリレートとを、質量 比 5: 2: 3となるように混合し、ラジカル重合させたものである。
[0132] (比較例 1)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーの代わりに、塩化アルキル ジメチルベンザルコ-ゥムを用いたこと以外は実施例 1と同様にして機能性組成物を 得た。
[0133] (比較例 2)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを用いず、水溶性ポリマー のみを用いたこと以外は実施例 1と同様にして機能性組成物を得た。
[0134] (評価方法)
図 1に示す抄紙機のプレスパートにおいて、上記実施例 1〜40及び比較例 1, 2で 得られた機能性組成物をセンターロール (プレスロール)に付与し、湿紙の剥離性及 びドクターブレードの摩耗性を調査した。
なお、試験で使用した実機の稼働条件は次の通りである。
抄造品種:コート紙
坪量:44gZm2
紙幅: 5m
センターロールの回転速度: 1 lOOmZmin
センターローノレの材質:セラミック溶射ローノレ
ドクターブレードの材質:カーボン
ドクターブレードの線圧: 350g/cm
トップローノレの回転速度: 1140mZmin
トップロールの材質:セラミック溶射ロール
機能性組成物の付与量: 25cc/min
センターロールへの水の付与量: 50LZmin
[0135] [実機剥離性]
図 2は、実機剥離性試験を説明するための説明図である。
図 2に示すように、機能性組成物を付与しない状態においては、所定速度 S1でプ レスロールを稼動させると、湿紙 30は離脱点 T1で剥離する。
一方、各機能性組成物を付与した状態においては、同じ速度 S1でプレスロールを 稼動させると、湿紙 30は離脱点 T2で剥離する。
なお、稼働中では離脱点が上下に振れているので、その振れの中心となる位置を 離脱点とする。
[0136] 次 、で、各機能性組成物を付与した状態にぉ 、て、稼動速度を落として 、く。
そうすると、ドローを取る際の力が弱まり、離脱点 T2は徐々に離脱点 T1の方向に
移行する。
そして、離脱点 T2と離脱点 T1とが一致したときの速度 S2を測定する。
この速度 S1と速度 S2との差を剥離性の大きさとした。
得られた結果を表 1に示す。
[0137] [磨耗性]
また、各機能性組成物を付与した状態において、 2週間実機を稼働させた場合のド クタ一ブレードの摩耗量を一日当たりに換算して測定した。
得られた結果を表 1に示す。
なお、水(ブランク)のみを付与した場合の磨耗量を 100として、各実施例の磨耗性 を規格値 (ブランクに対する相対値)で示す。
[0138] [湿紙剥離性]
次に、本発明の機能性組成物の効果を示す補助試験として、湿紙の剥離性試験を 行った。
その方法を、図を用いて以下説明する。
[0139] 図 3の (A)及び (B)は、湿紙剥離性試験を説明するため説明図である。
図 3に示すように、セラミックス溶射板 51の上面の全面に水で 2000倍に希釈した 各機能性組成物を 5cc付与した。
[0140] 次いで、セラミックス溶射板 51上に湿紙 30を載置し、湿紙 30上にフェルト 52を載 置して積層体とした。
そして、この積層体を、金属製のプレスロール 53により押圧し、湿紙 30の全体が均 一な圧力によって押圧されるように、積層体を水平方向に移動させた。
[0141] これにより、湿紙 30が脱水された。
なお、湿紙 30の湿紙の重さに対する湿紙力 水分を除去した部分の重さの割合( ドライネス)は約 38%であった。
[0142] 次いで、湿紙 30の端部にワイヤー付きフック 54を取り付け、このワイヤー付きフック 54を水平に移動可能な滑車に引掛け、ワイヤーの先端をロードセル 55 (株式会社共 和電業製)に接続した。
[0143] そして、滑車を移動させ、湿紙が実際に実機を離れる時の一定の角度( Θ = 15° )
を保ちながらセラミック溶射板 51から湿紙 30を剥がした。
その時、ロードセル 55が示した剥離力を測定した。
得られた結果を表 1に示す。
なお、セラミック溶射板 51に水(ブランク)のみを付与した場合の剥離力を 100とし て、各実施例の剥離力を規格値 (ブランクに対する相対値)で示す。
[0144] [動摩擦力測定]
次に、本発明の機能性組成物が動摩擦力を低下させる効果を確かめる試験を行つ た。
図 4は、動摩擦力測定試験を説明するため説明図である。
図 4に示す通り、セラミックス溶射板 51全面に水で 2000倍に希釈した機能性組成 物を 5cc付与した。
[0145] 次いで、セラミック溶射板 51と一定の角度( α = 30° )で立てたカーボン製ドクター ブレード 56とロードセル 55とをワイヤーで接続し、且つロードセル 55とモーター 57と をワイヤーで接続した。
[0146] そして、モーター 57でロードセル 55を引っ張り、カーボン製ドクターブレード 56が セラミック溶射板 51を摺動する間にロードセル 55が示す動摩擦力を測定した。 得られた結果を表 1に示す。
なお、セラミック溶射板 51に水のみを付与した場合の動摩擦力を 100として、各実 施例の動摩擦力を規格値 (ブランクに対する相対値)で示す。
[0147] 〔表 1〕
実機剥離性 磨耗性 湿紙剥離性 動庫據カ測定
( m / m i n )
実施例 1 3 8 5 9 45 50 実施例 2 37. 7 47 43 45 実施例 3 38. 5 70 65 54 実施例 4 37. 5 55 40 40 実施例 5 3 8. 8 8 5 6 5 66 実施例 6 38. 5 68 65 62 実施例 7 3 8 57 45 48 実施例 8 38. 2 60 47 50 実施例 9 39. 5 59 45 49 実施例 1 0 3 9 57 47 45 実施例 1 1 39. 5 80 60 65 実施例 1 2 39. 8 65 45 58 実施例 1 3 39. 5 7 5 50 50 実施例 1 4 39 - 2 7 0 60 58 実施例 1 5 39 - 1 65 57 55 実施例 1 6 3 9 66 56 56 実施例 1 7 38. 6 55 53 53 実施例 1 8 3 8. 5 56 50 5 1 実施例 1 9 3 8. 3 5 6 54 5 1 実施例 20 38. 8 59 56 57 実施例 2 1 39. 1 60 56 58 実%例 22 39. 8 64 60 6 1 実施例 23 39. 8 65 66 68 実旄例 24 38. 2 55 54 5 1 実施例 25 38. 7 60 55 55 実施例 26 38. 4 58 53 50 実施例 2 7 3 7. 4 48 40 3 8 実施例 28 3 8 54 50 53 実施洌 29 38. 2 54 47 52 実施例 30 3 7. 0 46 42 44 実施例 3 1 37. 0 47 40 40 実施例 32 3 8 5 1 5 1 54 実施例 33 37. 8 50 48 47 実施例 34 37. 2 48 40 40 実施例 35 37. 2 50 40 44 実施例 36 3 7. 1 48 4 1 43 実施例 3 7 37. 8 50 43 46 実施例 38 38. 3 55 48 50 実施例 39 39. 4 60 66 70 実施例 40 3 7. 3 52 40 39 比較例 1 40. 3 96 1 02 97 比較例 2 39 - 8 9 5 90 9 5 水 (ブランク) 40 1 00 1 00 1 00 1に示した結果から明らかなように、実施例 1〜40の機能性組成物によれば、比
較例 1、 2の機能性組成物と比較して、実機剥離性、磨耗性、湿紙剥離性、動摩擦力 の 、ずれにお ヽても優れて 、ることがわかった。
[0149] このことから、本発明によれば、プレスロールに付与することにより、湿紙のプレス口 ールに対する剥離性を向上できると共に、ドクターブレードの磨耗を抑制できるため 、安定した製造が可能となる機能性組成物、及びそれを用いた湿紙の剥離性向上方 法を提供できることが確認された。
産業上の利用可能性
[0150] 本発明の機能性組成物は、フェルトと、該フェルトを介して湿紙を押圧するための 一対のプレスロールと、湿紙に接触する側のプレスロールに接触するドクターブレー ドと、を備える抄紙機等に用いられ、このプレスロールに付与することにより、湿紙の プレスロールに対する剥離性を向上できると共に、ドクターブレードの磨耗を抑制で きるため、安定した製造が可能となる。
図面の簡単な説明
[0151] [図 1]図 1は、本発明の機能性組成物が用いられる抄紙機のプレスパートの構成の一 例を説明するための説明図である。
[図 2]図 2は、実施例における実機剥離性試験を説明するための説明図である。
[図 3]図 3の (A)及び (B)は、実施例における湿紙剥離性試験を説明するため説明 図である。
[図 4]図 4は、動摩擦力測定試験を説明するため説明図である。
[図 5]図 5は、プレスロールにおける湿紙の剥離性を説明するための説明図である。 符号の説明
[0152] 10…センターロール(プレスロール)
10a, 15a, 56· ··ドクターブレード
10b, 15b…スプレーノズル
11, 12, 13, 53· ··プレスロール
15…トップローノレ (プレスローノレ)
21, 22, 23, 52· ··フェル卜
30· ··湿紙
51···セラミックス溶射板
54···ワイヤー付きフック
55···ロードセノレ
57···モーター
100···プレスノ ート
A…第 1プレス部
B…第 2プレス部
P, PI, P2, Ρ3···押圧点
Q…点、 Rl, R2…回転方向
T1, Τ2···離脱点