明 細 書
プラズマディスプレイパネノレ
技術分野
[0001] 本発明は、表示デバイスなどに用いるプラズマディスプレイパネルに関する。
背景技術
[0002] プラズマディスプレイパネル(以下、 PDPと呼ぶ)は、高精細化、大画面化の実現が 可能であることから、 65インチクラスのテレビなどが製品化されて 、る。
[0003] PDPは、基本的には、前面板と背面板とで構成されている。前面板は、フロート法 による硼硅酸ナトリウム系ガラスのガラス基板と、その一方の主面上に形成されたスト ライプ状の透明電極とバス電極とで構成される表示電極と、この表示電極を覆ってコ ンデンサとしての働きをする誘電体層と、この誘電体層上に形成された酸化マグネシ ゥム (MgO)力もなる保護層とで構成されている。一方、背面板は、ガラス基板と、そ の一方の主面上に形成されたストライプ状のアドレス電極と、アドレス電極を覆う下地 誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑 色および青色それぞれに発光する蛍光体層とで構成されている。
[0004] 前面板と背面板とはその電極形成面側を対向させてその周囲を封着材によって気 密封着され、隔壁によって仕切られた放電空間に Ne— Xeの放電ガスが 400Torr〜 600Torrの圧力で封入されている。 PDPは、表示電極に映像信号電圧を選択的に 印加することによって放電させ、その放電によって発生した紫外線が各色蛍光体層 を励起して赤色、緑色、青色の発光をさせてカラー画像表示を実現している。
[0005] これらの誘電体層としては酸化鉛を主成分とする低融点ガラスが用いられ、さらに、 封着材としても酸ィ匕鉛を主成分とする低融点ガラスが用いられて 、る。近年の環境問 題への配慮力も誘電体層として鉛成分を含まない例力 特開 2003— 128430号公 報、特開 2002— 053342号公報、特開 2001— 045877号公報、さらには特開平 9 — 050769号公報に開示されている。
[0006] さらに、封着材として鉛成分を含まな ヽリン酸系の封着材の例や、酸化ビスマス系 の封着材の例が、特開 2004— 182584号公報、特開 2003— 095697号公報に開
示されている。
[0007] 近年、 PDPは従来の NTSC方式に比べて走査線数が 2倍以上のハイディフィ-シ ヨンテレビへの適用が進んでいるとともに、環境問題に配慮して鉛成分を含まない P DPが要求されている。
[0008] 封着材として鉛を含まないリン酸一酸化錫系の低融点ガラスを主体とする封着材で は、酸ィ匕鉛系の封着材に比べて耐水性に劣るため、 PDPの気密性を十分に保持す ることができな 、と!/、う課題がある。
[0009] 酸ィ匕ビスマス系のガラスを主体とする従来の封着材では、封着ステップにおいて前 面板に形成された表示電極や、背面板に形成されたアドレス電極の銀材料と酸化ビ スマスとが反応して気泡を多く発生し、 PDPの気密性を十分に確保できな 、と 、つた 課題がある。特に走査線の数が従来の 2倍以上になるハイディフィニションテレビのよ うな高精細 PDPでは電極本数が増加するためにその課題が顕著になる。
発明の開示
[0010] 本発明の PDPは、ガラス基板上に表示電極と誘電体層と保護層とが形成された前 面板と、基板上にアドレス電極と隔壁と蛍光体層とが形成された背面板とを対向配置 するとともに周囲を封着材で封着して放電空間を形成した PDPであって、封着材が ガラス成分として少なくとも酸ィ匕ビスマスと酸ィ匕モリブデンある 、は酸ィ匕タングステン のうちの少なくとも一つとを含んでいる。
[0011] このような構成によれば、鉛成分を含有しない封着材であっても、前面板と背面板と の気密封止を確実に行!、、環境に配慮した信頼性の高 、PDPを実現することができ る。
図面の簡単な説明
[0012] [図 1]図 1は本発明の実施の形態における PDPの構造を示す斜視図である。
[図 2]図 2は本発明の実施の形態における PDPの前面板の構成を示す断面図である
[図 3A]図 3Aは本発明の実施の形態における PDPの前面板と背面板とを封着接合し た状態を示す平面図である。
[図 3B]図 3Bは図 3Aの 3B— 3B断面図である。
符号の説明
1 PDP
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
4a, 5a 透明電極
4b, 5b 金属バス電極
5 維持電極
6 表示電極
7 ブラックストライプ (遮光層)
8 誘電体層
9 保護層
10 背面板
11 背面ガラス基板
12 アドレス電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間
50 封着材
51 排気管
52 フリットタブレット
81 第 1誘電体層
82 第 2誘電体層
発明を実施するための最良の形態
[0014] 以下、本発明の実施の形態における PDPについて図面を用いて説明する。
[0015] (実施の形態)
図 1は本発明の実施の形態における PDPの構造を示す斜視図である。 PDPの基
本構造は、一般的な交流面放電型 PDPと同様である。図 1に示すように、 PDP1は 前面ガラス基板 3などよりなる前面板 2と、背面ガラス基板 11などよりなる背面板 10と が対向して配置され、その外周部をガラスフリットなど力もなる封着材(図示せず)によ つて気密封着されている。封着された PDP1内部の放電空間 16には、 Neおよび Xe などの放電ガスが 400Τοπ:〜 600Torrの圧力で封入されている。
[0016] 前面板 2の前面ガラス基板 3上には、走査電極 4および維持電極 5よりなる一対の 帯状の表示電極 6とブラックストライプ (遮光層) 7が互いに平行にそれぞれ複数列配 置されている。前面ガラス基板 3上には表示電極 6と遮光層 7とを覆うようにコンデン サとしての働きをする誘電体層 8が形成され、さらにその表面に酸ィ匕マグネシウム (M gO)などカゝらなる保護層 9が形成されている。
[0017] また、背面板 10の背面ガラス基板 11上には、前面板 2の走査電極 4および維持電 極 5と直交する方向に、複数の帯状のアドレス電極 12が互いに平行に配置され、こ れを下地誘電体層 13が被覆している。さら〖こ、アドレス電極 12間の下地誘電体層 13 上には放電空間 16を区切る所定の高さの隔壁 14が形成されている。隔壁 14間の溝 にアドレス電極 12毎に、紫外線によって赤色、青色および緑色にそれぞれ発光する 蛍光体層 15が順次塗布して形成されて 、る。走査電極 4および維持電極 5とアドレス 電極 12とが交差する位置に放電セルが形成され、表示電極 6方向に並んだ赤色、 青色、緑色の蛍光体層 15を有する放電セルがカラー表示のための画素になる。
[0018] 図 2は、本発明の実施の形態における PDPの前面板 2の構成を示す断面図である 。図 2は図 1と上下反転させて示している。図 2に示すように、フロート法などにより製 造された前面ガラス基板 3に、走査電極 4と維持電極 5よりなる表示電極 6とブラックス トライプ 7がパターン形成されて 、る。走査電極 4と維持電極 5はそれぞれインジウム 錫酸化物(ITO)や酸化錫(SnO )など力 なる透明電極 4a、 5aと、透明電極 4a、 5a
2
上に形成された金属電極となる金属バス電極 4b、 5bとにより構成されている。金属バ ス電極 4b、 5bは透明電極 4a、 5aの長手方向に導電性を付与する目的として用いら れ、銀 (Ag)材料を主成分とする導電性材料によって形成されて ヽる。
[0019] 誘電体層 8は、前面ガラス基板 3上に形成されたこれらの透明電極 4a、 5aと金属バ ス電極 4b、 5bとブラックストライプ 7を覆って設けた第 1誘電体層 81と、第 1誘電体層
81上に形成された第 2誘電体層 82の少なくとも 2層構成とし、さらに第 2誘電体層 82 上に保護層 9を形成している。
[0020] 次に、 PDPの製造方法について説明する。まず、前面ガラス基板 3上に、走査電極 4および維持電極 5と遮光層 7とを形成する。これらの透明電極 4a、 5aと金属バス電 極 4b、 5bは、フォトリソグラフィ法などを用いてパターユングして形成される。透明電 極 4a、 5aは薄膜プロセスなどを用いて形成され、金属バス電極 4b、 5bは銀 (Ag)材 料を含むペーストを所定の温度で焼成して固化している。また、遮光層 7も同様に、 黒色顔料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や黒色顔料をガラス基板の全面 に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターユングし、焼成することにより形成 される。
[0021] 次に、走査電極 4、維持電極 5および遮光層 7を覆うように前面ガラス基板 3上に誘 電体ペーストをダイコート法などにより塗布して誘電体ペースト層(誘電体材料層)を 形成する。誘電体ペーストを塗布した後、所定の時間放置することによって塗布され た誘電体ペースト表面がレべリングされて平坦な表面になる。その後、誘電体ペース ト層を焼成固化することにより、走査電極 4、維持電極 5および遮光層 7を覆う誘電体 層 8が形成される。なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体ガラス、バインダ および溶剤を含む塗料である。次に、誘電体層 8上に酸ィ匕マグネシウム (MgO)から なる保護層 9を真空蒸着法により形成する。以上のステップにより前面ガラス基板 3上 に所定の構成物(走査電極 4、維持電極 5、遮光層 7、誘電体層 8、保護層 9)が形成 され、前面板 2が完成する。
[0022] 一方、背面板 10は次のようにして形成される。まず、背面ガラス基板 11上に、銀 (A g)材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や、金属膜を全面に形成した後、フ オトリソグラフィ法を用いてパターユングする方法などによりアドレス電極 12用の構成 物となる材料層を形成し、それを所定の温度で焼成することにより金属電極であるァ ドレス電極 12を形成する。次に、アドレス電極 12が形成された背面ガラス基板 11上 にダイコート法などによりアドレス電極 12を覆うように誘電体ペーストを塗布して誘電 体ペースト層を形成する。その後、誘電体ペースト層を焼成することにより下地誘電 体層 13を形成する。なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体ガラスとバイン
ダおよび溶剤を含んだ塗料である。
[0023] 次に、下地誘電体層 13上に隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストを塗布して所定 の形状にパターユングすることにより、隔壁材料層を形成した後、焼成することにより 隔壁 14を形成する。ここで、下地誘電体層 13上に塗布した隔壁用ペーストをパター ユングする方法としては、フォトリソグラフィ法ゃサンドブラスト法を用いることができる 。次に、隣接する隔壁 14間の下地誘電体層 13上および隔壁 14の側面に蛍光体材 料を含む蛍光体ペーストを塗布し、焼成することにより蛍光体層 15が形成される。以 上のステップにより、背面ガラス基板 11上に所定の構成部材を有する背面板 10が完 成する。
[0024] 図 3A、 Bは、本発明の実施の形態における PDPの前面板 2と背面板 10とを封着接 合した状態を示す図であり、前面板 2と背面板 10とをその周囲を封着材 50で封着し て、背面板 10に排気管 51を設けた構成を示している。図 3Aは平面図、図 3Bは図 3 Aの 3B— 3B断面図である。
[0025] 図 2、図 3A、図 3Bに示すように、前面板 2と背面板 10とは表示電極 6とアドレス電 極 12とが直交するように対向配置してその周囲を封着材 50で封着している。また、 放電空間 16を排気管 51によって真空排気した後に、同じく排気管 51から Neや Xe などを含む放電ガスを封入して排気管 51を封じ切ることにより PDP1を完成させてい る。
[0026] 前面板 2の誘電体層 8を構成する第 1誘電体層 81と第 2誘電体層 82について詳細 に説明する。第 1誘電体層 81の誘電体材料は、次の材料組成より構成されている。 すなわち、酸化ビスマス(Bi O )を 20重量%〜40重量%と酸化カルシウム(CaO)を
2 3
0. 5重量%〜15重量%を含んでおり、さらに酸化モリブデン(MoO )、酸化タンダス
3
テン (WO )、酸ィ匕セリウム(CeO )、酸ィ匕マンガン(MnO )から選ばれる少なくとも 1
3 2 2
種を 0. 1重量%〜7重量%含んでいる。
[0027] さらに、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)力 選ばれる少なくとも 1種 を 0. 5重量%〜 12重量%含んでいる。
[0028] なお、酸化モリブデン(MoO )、酸化タングステン (WO )、酸化セリウム(CeO )、
3 3 2 酸化マンガン(MnO )に代えて、酸化銅(CuO)、酸化クロム(Cr O )、酸化コバルト
(Co O )、酸化バナジウム (V O )、酸化アンチモン(Sb o )から選ばれる少なくとも
2 3 2 7 2 3
1種を 0. 1重量%〜7重量0 /0含んでいてもよい。
[0029] また、上記以外の成分として、酸化亜鉛 (ZnO)を 0重量%〜40重量%、酸化硼素
(B O )を 0重量%〜35重量%、酸化硅素(SiO )を 0重量%〜15重量%、酸化ァ
2 3 2
ルミ-ゥム (Al O )を 0重量%〜10重量%など、鉛成分を含まない材料組成が含ま
2 3
れていてもよぐこれらの材料組成の含有量に特に限定はなぐ従来技術程度の材 料組成の含有量範囲である。
[0030] これらの組成成分からなる誘電体材料を、湿式ジェットミルやボールミルで平均粒 径が 0. 5 m〜2. 5 mとなるように粉砕して誘電体材料粉末を作製する。次にこの 誘電体材料粉末 55重量%〜70重量%と、バインダ成分 30重量%〜45重量%とを 三本ロールでよく混練してダイコート用あるいは印刷用の第 1誘電体層用ペーストを 作製する。バインダ成分はェチルセルロースあるいはアクリル榭脂 1重量%〜20重 量%を含むタービネオールあるいはブチルカルビトールアセテートである。また、ぺ 一スト中には、必要に応じて可塑剤としてフタル酸ジォクチル、フタル酸ジブチル、リ ン酸トリフエ-ル、リン酸トリブチルを添加し、分散剤としてグリセロールモノォレート、 ソルビタンセスキォレへート、アルキルァリル基のリン酸エステルなどを添カ卩して印刷 '性を向上させてもよい。
[0031] 次に、この第 1誘電体層用ペーストを用い、表示電極 6を覆うように前面ガラス基板 3にダイコート法あるいはスクリーン印刷法で印刷して乾燥させる。その後、誘電体材 料の軟ィ匕点より少し高い温度の 575°C〜590°Cで焼成して、第 1誘電体層 81を形成 する。
[0032] 次に、第 2誘電体層 82について説明する。第 2誘電体層 82の誘電体材料は、次の 材料組成より構成されている。すなわち、酸ィ匕ビスマス(Bi O )を 11重量%〜40重
2 3
量%と酸化バリウム (BaO)を 6. 0重量%〜28重量%含んでおり、さらに酸化モリブ デン(MoO )、酸化タングステン (WO )、酸化セリウム(CeO )、酸化マンガン(Mn
3 3 2
O )から選ばれる少なくとも 1種を 0. 1重量%〜7重量%含んでいる。
2
[0033] さらに、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)力も選ばれる少なくとも 1 種を 0. 8重量%〜 17重量%含んでいる。
[0034] なお、酸化モリブデン(MoO )、酸化タングステン (WO )、酸化セリウム(CeO )
3 3 2、 酸化マンガン(MnO )に代えて、酸化銅(CuO)、酸化クロム(Cr O )、酸化コバルト
2 2 3
(Co O )、酸化バナジウム (V O )、酸化アンチモン(Sb o )から選ばれる少なくとも
2 3 2 7 2 3
1種を 0. 1重量%〜7重量0 /0含んでいてもよい。
[0035] また、上記以外の成分として、酸化亜鉛 (ZnO)を 0重量%〜40重量%、酸化硼素
(B O )を 0重量%〜35重量%、酸化硅素(SiO )を 0重量%〜15重量%、酸化ァ
2 3 2
ルミ-ゥム (Al O )を 0重量%〜10重量%など、鉛成分を含まない材料組成が含ま
2 3
れていてもよぐこれらの材料組成の含有量に特に限定はなぐ従来技術程度の材 料組成の含有量範囲である。
[0036] これらの組成成分からなる誘電体材料を、湿式ジェットミルやボールミルで平均粒 径が 0. 5 m〜2. 5 mとなるように粉砕して誘電体材料粉末を作製する。次にこの 誘電体材料粉末 55重量%〜70重量%と、バインダ成分 30重量%〜45重量%とを 三本ロールでよく混練してダイコート用あるいは印刷用の第 2誘電体層用ペーストを 作製する。バインダ成分はェチルセルロースあるいはアクリル榭脂 1重量%〜20重 量%を含むタービネオールあるいはブチルカルビトールアセテートである。また、ぺ 一スト中には、必要に応じて可塑剤としてフタル酸ジォクチル、フタル酸ジブチル、リ ン酸トリフエ-ル、リン酸トリブチルを添加し、分散剤としてグリセロールモノォレート、 ソルビタンセスキォレへート、アルキルァリル基のリン酸エステルなどを添カ卩して印刷 '性を向上させてもよい。
[0037] 次にこの第 2誘電体層用ペーストを用いて第 1誘電体層 81上にスクリーン印刷法あ るいはダイコート法で印刷して乾燥させる。その後、誘電体材料の軟化点より少し高 い温度の 550°C〜590°Cで焼成して第 2誘電体層 82を作製するとともに、誘電体層 8を形成する。
[0038] なお、誘電体層 8の膜厚が小さいほどパネル輝度の向上と放電電圧を低減すると いう効果は顕著になるので、絶縁耐圧が低下しない範囲内であればできるだけ膜厚 を小さく設定するのが望ましい。このような条件と可視光透過率の観点力 から、本発 明の実施の形態では、誘電体層 8の膜厚を 41 μ m以下に設定し、第 1誘電体層 81 を 5 μ m〜15 μ m、第 2誘電体層 82を 20 μ m〜36 μ mとして! /、る。
[0039] また、第 2誘電体層 82において酸ィ匕ビスマス(Bi O )が 11重量%以下であると着
2 3
色は生じに《なる力 第 2誘電体層 82中に気泡が発生しやすく好ましくない。また、 40重量%を超えると着色が生じやすくなり透過率を上げる目的には好ましくない。
[0040] さらに、第 1誘電体層 81と第 2誘電体層 82の酸化ビスマス (Bi O )の含有量には
2 3
差があることが必要である。これは第 1誘電体層 81と第 2誘電体層 82の酸化ビスマス (Bi O )の含有量が同一であった場合、第 1誘電体層 81中に発生した気泡の影響
2 3
で、第 2誘電体層 82の焼成ステップにおいて第 2誘電体層 82中にも気泡が発生する 現象が確認されたカゝらである。
[0041] そして、第 1誘電体層 81の酸化ビスマス (Bi O )の含有量よりも、第 2誘電体層 82
2 3
の酸ィ匕ビスマス (Bi O )の含有量が小さい場合、誘電体層 8の総膜厚のおよそ 50%
2 3
以上を第 2誘電体層 82が占めるために、着色する黄変現象が発生しにくぐ透過率 を上げることができ、さらに Bi系の材料が高価であることから、使用する原材料のコス トを低減することができる。
[0042] また、第 1誘電体層の酸化ビスマス (Bi O )の含有量よりも、第 2誘電体層 81の酸
2 3
化ビスマス (Bi O )の含有量が大きい場合には、第 2誘電体層 81の軟ィ匕点を下げる
2 3
ことができるために焼成ステップ中の気泡の除去を促進することができる。
[0043] このようにして製造された PDPは、表示電極 6に銀 (Ag)材料を用いても、前面ガラ ス基板 3が着色する黄変現象の発生が少なくて、なおかつ、誘電体層 8中に気泡の 発生などがなぐ絶縁耐圧性能に優れた誘電体層 8を実現することを確認している。
[0044] 次に、本発明の実施の形態における PDPにおいて、これらの誘電体材料によって 形成された第 1誘電体層 81の黄変や気泡の発生が抑制される理由について考察す る。すなわち、酸ィ匕ビスマス (Bi O )を含む誘電体ガラスに酸ィ匕モリブデン (MoO )
2 3 3 あるいは酸化タングステン (WO )を添カ卩することによって、 Ag MoO、 Ag Mo O、
3 2 4 2 2 7
Ag Mo O 、 Ag WO、 Ag W O、 Ag W O といった化合物が 580°C以下の低
2 4 13 2 4 2 2 7 2 4 13
温で生成しやすいことが知られている。本発明の実施の形態では、誘電体層 8の焼 成温度が 550°C〜590°Cであることから、焼成中に誘電体層 8中に拡散した銀イオン (Ag+)は誘電体層 8中の酸ィ匕モリブデン(MoO )、酸化タングステン (WO )、酸ィ匕
3 3 セリウム(CeO )、酸ィ匕マンガン (MnO )と反応し、安定な化合物を生成して安定ィ匕
する。すなわち、銀イオン (Ag+)が還元されることなく安定化されるために、凝集して コロイドを生成することがない。したがって、銀イオン (Ag+)が安定ィ匕することによって 、銀 (Ag)のコロイドィ匕に伴う酸素の発生も少なくなるため、誘電体層 8中への気泡の 発生も少なくなる。
[0045] 一方、これらの効果を有効にするためには、酸化ビスマス (Bi O )を含む誘電体ガ
2 3
ラス中に酸ィ匕モリブデン (MoO )あるいは酸ィ匕タングステン (WO )、酸ィ匕セリウム(C
3 3
eO )、酸化マンガン(MnO )の含有量を 0. 1重量%以上にすることが好ましいが、 0
2 2
. 1重量%以上 7重量%以下がさらに好ましい。特に、 0. 1重量%以下では黄変を抑 制する効果が少なぐ 7重量%以上になるとガラスに着色が起こり好ましくない。
[0046] また、第 1誘電体層に酸ィ匕カルシウム (CaO)を含むことによって、第 1誘電体層の 焼成ステップ中にぉ ヽて酸ィ匕カルシウム (CaO)が酸化剤として作用し、電極中に残 留したノインダ成分の除去を促進する効果がある。一方、第 2誘電体層に酸化バリゥ ム(BaO)を含むことによって、第 2誘電体層の透過率を上げる効果がある。
[0047] すなわち、本発明の実施の形態における PDPの誘電体層 8は、銀 (Ag)材料よりな る金属バス電極 4b、 5bと接する第 1誘電体層 81では黄変現象と気泡発生を抑制し、 第 1誘電体層 81上に設けた第 2誘電体層 82によって高 、光透過率を実現して!/、る。 その結果、誘電体層 8全体として、気泡や黄変の発生が極めて少なく透過率の高い PDPを実現することが可能となる。
[0048] 次に、本発明の実施の形態における PDPの、封着材 50の材料組成と封着方法に ついて詳細に説明する。背面板 10または前面板 2のどちらか一方の周縁に、少なく とも酸化ビスマス(Bi O )と酸化モリブデン(MoO )あるいは酸化タングステン (WO
2 3 3 3
)を含有したガラスと、耐熱性フィラーと、有機バインダ成分とを含むペースト状封着 組成物を塗布する。その後、一定時間乾燥後、 400°C付近で仮焼成を行い有機バイ ンダ成分を焼失除去する。その後、前面板 2の表示電極 6群と背面板 10のアドレス電 極 12とが直交するように対向して両基板を配置し、 450°C〜480°Cで焼成して封着 材 50を固化させる。
[0049] ここで用いた封着材の組成は、ガラス成分としてはガラス軟ィ匕点の温度が 410°C以 上で、少なくとも酸化ビスマス(Bi O )を 75重量0 /0以上と酸化モリブデン(MoO )あ
るいは酸ィ匕タングステン (WO )が 0. 2重量%以上含むガラス成分が好ましい。さら
3
に、酸化ビスマス(Bi O )が 75重量%〜85重量%、酸化亜鉛(ZnO)が 5. 6重量%
2 3
〜18重量%、酸化硼素(B O )が 2重量%〜9重量%、酸化アルミニウム (Al O )が
2 3 2 3
0. 2重量%〜1. 1重量0 /0、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(Sr)、酸化 ノ リウム (BaO)力 選ばれる少なくとも 1種が 0. 1重量%〜1重量0 /0、酸化モリブデン (MoO )、酸化タングステン (WO )から選ばれる少なくとも 1種が 0. 2%〜5重量%
3 3
力 なるガラス成分が特に好ましい。酸ィ匕ビスマス(Bi O )の量が 75重量%より少な
2 3
いとガラスの軟ィ匕点が下がりに《封着できないためであり、逆に 85重量%よりも多く なると表示電極 6やアドレス電極 12中の銀 (Ag)との反応が激しく発泡しやすくなるた めである。
[0050] また、耐熱性フイラ一は、封着材 50の熱膨張係数を調整するとともに、ガラスの流 動状態をコントロールするのに使用される力 コージライト、フォルステライト、 βーュ 一クリプタイト、ジルコン、ムライト、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、酸化チタ ン、酸化モリブデン、酸化錫、酸ィ匕アルミニウム、石英ガラスなどが特に好ましい。
[0051] このようなガラス成分の封着材を用いると、前述の誘電体層で述べたのと同様に、 酸ィ匕モリブデン (MoO )あるいは酸ィ匕タングステン (WO )を添加することによって、
3 3
封着材 50を焼成中に、表示電極 6やアドレス電極 12の銀イオン (Ag+)と反応して安 定な化合物を形成する。その結果、銀イオン (Ag+)が安定ィ匕することによって、銀 (A g)のコロイドィ匕に伴う酸素の発生も少なくなるため、封着材 50中への気泡の発生も 少なくなり、気密性を確保した封着が可能となる。特に走査線の数が従来の 2倍以上 になるノ、ィディフィニションテレビのような高精細 PDPでは電極本数が増加するため に本発明の効果が顕著となり、信頼性の高い PDPを実現することができる。
[0052] なお、上記の実施の形態では、排気管 51や排気管 51を背面ガラス基板 11などに 固定する際の図 3に示すフリットタブレット 52も、上述の封着材 50と同様の材料組成 とすることも可能であり、さらには、排気管 51も同様の材料組成とすることによって、 封着材 50、排気管 51、フリットタブレット 52を鉛 (Pb)を含まない環境に優しい材料 組成とすることができる。
[0053] (実施例)
なお、本発明の実施の形態における PDPとして、放電セルとして 42インチクラスの ハイディフィニションテレビに適合するようしている。すなわち、隔壁の高さを 0. 15m m、隔壁の間隔(セルピッチ)を 0. 15mm,表示電極の電極間距離を 0. 06mmとし、 封着材 50の材料組成を異ならせ、 Xeの含有量が 15体積%の Ne—Xe系の混合ガ スを封入圧 60kPaに封入した PDPを作製した。
[0054] 表 1には、封着材 50のガラス成分を変えた試料を示し、表 2には表 1のガラス成分と 耐熱性フリットとの組合せを示すとともに、 PDPの気密性評価の結果を示している。
[0055] [表 1]
[0056] [表 2]
パネル 封着材の
封着材の 封着材用耐熱フイラ一の種類とその使用量 封着後 1 00時間放電後の ス成分
w o 言式料 No. ガラ
(重量%) 真空リーク有無 (重量%)
1 No.l 96 ュ一クリプタイト: 4重 S% なし
2 Νο.ϊ 96 フホルステライト: 4重量 ¾ なし
3 No.l 96 石英ガラス: 4重量% なし
4 No.2 90 フすルス亍ライト: 4重董%、酸化モリブデン: 6重量% なし
5 No.2 90 ムライト: 1 0重量% なし
6 No.2 90 チタン酸 くリゥム: 5重量%、酸化アルミニウム: 5重量% なし
7 No.3 SO コ一ジライト: 1 5重量%、酸化アルミニウム: 5重 S¾ なし
ジルコン: 1 0重量%、酸化チタン: 5重量%、
8 No.3 80
石英ガラス: 5重畳% なし θ No.3 80 チタン酸バリウム: 1 5重量%、酸化アルミニウム: 5重量% なし
10 o'4 85 コ一ジライト: 1 5重量% なし
11 No.4 85 β—ュ一クリプタイト: 10重量1 ¾、ジルコン: 5重量 ¾ なし
12 No.4 85 フオルステライ卜: 9重量%、厶ライト 6重量% なし
13 No.l 95 コージライト: 5重景% なし
14 No.2 95 コ一ジライト: 5重量% なし
15 No.3 95 コージライト: 5重量% なし
16 No.5 90 コージライト: 10重量 ¾ fey
17 No.6 90 コージライト: 5重量%、ムライト: 5重量% ぁリ
[0057] 気密性の評価は、封着材で前面板と背面板とを封着した後に、 100時間連続放電 させ、放電空間内のリークがあるかどうかで判断した。表 2の結果より、封着材のガラ ス成分が本発明の範囲外である試料 No5、 6の場合に、耐熱性フリットの種類と組成 に関わらず、真空リークの発生することがわかる。
[0058] 以上のように、本発明の実施の形態における PDPによれば、封着材として信頼性 が高ぐかつ、鉛 (Pb)成分を含まない環境に優しい PDPを実現することができる。 産業上の利用可能性
[0059] 以上のように、本発明の PDPは、封着の信頼性を高め、さらに、環境に優しく表示 品質に優れた PDPを実現して大画面の表示デバイスなどに有用である。