WO2006137524A1 - 燃料タンク - Google Patents

Abstract

　それぞれ椀状の鋼板製上部タンク半体（７）及び下部タンク半体（８）の各周縁部にフランジ（７ｆ，８ｆ）を一体に形成し，それらのフランジ（７ｆ，８ｆ）を重ねて液密に結合してなる燃料タンクにおいて，両フランジ（７ｆ，８ｆ）をロール状にかしめ結合して環状の厚肉結合部（１２）を形成し，この結合部（１２）の両側に連なる一対の環状の補強リブ（７ｒ，８ｒ）を上部及び下部タンク半体（７，８）に形成した。かくして，鋼板の板厚を特別増加させなくとも，フランジ結合部周りに充分に強度を付与し得る燃料タンクを提供することができる。

Description

明 細 書

燃料タンク

技術分野

[0001] 本発明は，それぞれ椀状の鋼板製上部タンク半体及び下部タンク半体の各周縁部 にフランジを一体に形成し，それらのフランジを重ねて液密に結合してなる燃料タン ク，特に作業機に搭載される汎用エンジン用に好適な燃料タンクの改良に関する。 背景技術

[0002] 従来のか る燃料タンクでは，上部タンク半体及び下部タンク半体のフランジ相互 の結合に，溶接（特許文献 1)又はかしめが用いられている。

特許文献 1 :日本実公昭 57— 22026号公報

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0003] ところで，汎用エンジンは，その厳しい使用環境により横転等の状態となることがあ り，その際，燃料タンクも大なる衝撃力に耐えなけれならず，特に，上部及び下部タン ク半体のフランジ結合部は，燃料漏れを生じないように高強度が要求される。そこで， 従来では，タンク素材の鋼板の板厚を増して，その要求に対応しているが，鋼板の板 厚増は燃料タンクの重量増を招くことになる。

[0004] 本発明は，力 Aる事情に鑑みてなされたもので，鋼板の板厚を特別増加させなくとも

，フランジ結合部周りに充分に強度を付与し得るようにした燃料タンクを提供すること を目的とする。

[0005] また本発明は，タンク天井部の美観を保ちつ、タンクキャップにより閉鎖される給 油口筒のシール面のシール性を長期間良好に保持することができ，しかも生産性に 優れた燃料タンクを提供することを他の目的とする。

課題を解決するための手段

[0006] 上記目的を達成するために，本発明は，それぞれ椀状の鋼板製上部タンク半体及 び下部タンク半体の各周縁部にフランジを一体に形成し，それらのフランジを重ねて 液密に結合してなる燃料タンクにおいて，前記両フランジをロール状にかしめ結合し て環状の厚肉結合部を形成し，この結合部に連なる環状の補強リブを，上部及び下 部タンク半体の少なくとも一方に形成したことを第 1の特徴とする。

[0007] また本発明は，第 1の特徴に加えて，前記結合部の両側に連なる一対の環状の補 強リブを上部及び下部タンク半体に形成したことを第 2の特徴とする。

[0008] さらに本発明は，それぞれ椀状の鋼板製上部タンク半体及び下部タンク半体の各 周縁部にフランジを一体に形成し，それらのフランジを重ねて液密に結合してなる燃 料タンクにおいて，前記両フランジと，下部タンク半体の下面を覆うように配置される 椀状の底部支持板の周縁部に形成されたフランジとをロール状にかしめ結合して環 状の厚肉結合部を形成し，この結合部に連なる環状の補強リブを，上部タンク半体， 下部タンク半体及び底部支持板に形成し，底部支持板には，これをエンジンに取り 付けるための取り付け部を設けたことを第 3の特徴とする。

[0009] 尚，前記取り付け部は，後述本発明の実施例中のボルト 19及びナット 21に対応す る。

[0010] さらにまた本発明は，第 1〜3の何れかに加えて，少なくとも上部タンク半体を，鋼板 の表面に塗料を予め焼き付けてなるカラー鋼板製としたことを第 4の特徴とする。

[0011] また本発明は，タンク天井部に，それを貫通してタンクキャップにより閉鎖される給 油口筒を結合し，この給油口筒の上端面に，タンクキャップのパッキンが密接する環 状のシール面を形成した，燃料タンクにおいて，前記タンク上部を構成する少なくとも 上部タンク半体を，表面に予め塗装を施したカラー鋼板製とし，この上部タンク半体 に非塗装鋼板製の給油口筒を結合したことを第 5の特徴とする。

[0012] さらに本発明は，第 5の特徴に加えて，上部タンク半体と給油口筒とを，給油口筒 の上部が露出するように，力 め結合すると共に，この給油口筒の上方露出面を前 記シール面に形成したことを第 6の特徴とする。

[0013] さらにまた本発明は，第 5又は第 6の特徴に加えて，前記シール面を漏斗状に形成 したことを第 7の特徴とする。

[0014] さらにまた本発明は，第 6又は第 7の特徴の何れかに加えて，給油口筒をメツキ鋼 板製としたことを第 8の特徴とする。

発明の効果 [0015] 本発明の第 1の特徴によれば，上部及び下部タンク半体の両フランジをロール状に 力 め結合することにより， 肉厚が素材より充分に厚く高剛性の厚肉結合部を形成す ること力 Sでき，し力もこの厚肉結合部と，その一側に連なる環状リブとの協働により燃 料タンクを効果的に補強することができる。したがって，燃料タンクの素材の板厚を特 別増加させなくとも，燃料タンクの横方向衝撃力に対する耐久性を高めることができ， 即ち軽量ィヒ及び耐久性向上の両立を図ることができる。

[0016] 本発明の第 2の特徴によれば，燃料タンクを，環状の厚肉結合部と，その両側に連 なる一対の環状の補強リブとの協働により，より効果的に補強することができる。

[0017] 本発明の第 3の特徴によれば，上部タンク半体，下部タンク半体及び底部支持板 の三枚のフランジをロール状に力しめ結合することにより， 肉厚が素材より充分に厚く 高剛性の厚肉結合部を形成することができ，し力もこの厚肉結合部と，それに連なる 三条の環状リブとの協働により燃料タンクを，より効果的に補強することができる。した がって，燃料タンクの素材の板厚を特別増加させなくとも，燃料タンクの横方向衝撃 力に対する耐久性を高めることができ，即ち軽量ィ匕及び耐久性の両立を図ることが できる。

[0018] また底部支持板をエンジンに取り付けるようにしたので，エンジンの振動を底部支 持板で吸収して，上部及び下部タンク半体への振動伝達を抑制することができる。

[0019] 本発明の第 4の特徴によれば，上部タンク半体をカラー鋼板製としたので，ロール 状のかしめによる厚肉結合部の形成によるも，カラー鋼板製上部タンク半体の塗膜 の剥離は起こらず，燃料タンクの美観の向上を図ることができる。

[0020] 本発明の第 5の特徴によれば，上部タンク半体をカラー鋼板製とすることで，その美 観を良好にすることができ，またこの上部タンク半体に結合され，シール面を有する 給油口筒を非塗装鋼板製とすることで，上部タンク半体表面の塗膜の万一の剥離に 関係なく給油口筒のシール面を長期に亙り良好に保つことができる。し力も上部タン ク半体への給油口筒の結合後には，塗装やマスキング等の面倒な工程は不要であ るから，生産性の向上を図ることができる。

[0021] 本発明の第 6の特徴によれば，カラー鋼板製の上部タンク半体と，非塗装鋼板製の 給油口筒とは相互に力 め結合されるので，溶接による結合とは異なり，上部タンク 半体表面の塗膜の焼損や給油口筒のシール面の熱変形の心配がなく，のみならず シール面の剛性を効果的に高めることができる。したがって上部タンク半体の美観の 確保と，シール面の耐久性の向上とを両立させることができる。

[0022] 本発明の第 7の特徴によれば，燃料タンクへの給油中，シール面に燃料が付着し たとき，その燃料を漏斗状のシール面に沿って燃料タンク内に自然に流入させること ができ，これにより燃料による燃料タンク上面の汚損を防ぐことができる。

[0023] 本発明の第 8の特徴によれば，給油口筒をメツキ鋼板製としたことで，給油口筒を， そのメツキ層を剥離することなく上部タンク半体に力 め結合することができると共に, メツキ層によりシール面を良好にすると共に，その耐久性の更なる向上を図ることが できる。

[0024] 本発明の上記，その他の目的，特徴及び利点は，添付の図面に沿って以下に詳 述する好適な実施例の説明から明らかとなろう。

図面の簡単な説明

[0025] [図 1]図 1は本発明の燃料タンクを搭載した汎用エンジンの正面図である。 （第 1実施 例）

[図 2]図 2は上記燃料タンクの底面図である。 （第 1実施例）

[図 3]図 3は図 2の 3— 3線拡大断面図である。 （第 1実施例）

[図 4]図 4は図 2の 4— 4線断面図である。 （第 1実施例）

[図 5]図 5は図 2の 5— 5線断面図である。 （第 1実施例）

[図 6]図 6は図 3の 6部拡大図である。 （第 1実施例）

[図 7]図 7は図 3の 7部拡大図である。 （第 1実施例）

[図 8]図 8は図 7の 8部拡大図である。 （第 1実施例）

[図 9]図 9は図 7の 9— 9線断面図である。 （第 1実施例）

[図 10]図 10は図 7の 10— 10線断面図である。 （第 1実施例）

符号の説明

[0026] C タンクキャップ

T……燃料タンク

7 上部タンク半体 7 ···フランジ

7ι·····補強リブ

8 下部タンク半体

8 ···フランジ

81·····補強リブ

9……底部支持板

9 ···フランジ

9ι·····補強リブ

38····給油口筒

19, 21···取り付け部（ボルト,ナット）

39····シール面

48····パッキン

発明を実施するための最良の形態

[0027] 以下，添付図面に基づき本発明の好適な実施例について説明する。

実施例 1

[0028] 先ず，図 1において，符号 Εは各種作業機の動力源となる汎用 4サイクルエンジンを 示す。このエンジン Εは，水平方向に配置されるクランク軸 1を支持するクランクケー ス 2と，このクランクケース 2から斜め上方に突出したシリンダ部 3とを備えており，クラ ンクケース 2の直上には，それに支持される燃料タンク Τが配置され，またシリンダ部 3 の一側には気化器 4が取り付けられ，この気化器 4に吸気ダクト 5を介して接続される ェァクリーナ 6が,燃料タンク Τの側方に並ぶようにしてシリンダ部 3の直上に配置さ れる。

[0029] 図 2，図 3及び図 6に示すように，上記燃料タンク Τは，それぞれ椀状をなして燃料 貯留室 10を画成すべく対向する上部タンク半体 7及び下部タンク半体 8と，下部タン ク半体 8の下面を空隙を存して覆う椀状の底部支持板 9の三者で構成される。これら のうち，外部に露出する上部タンク半体 7及び底部支持板 9は，鋼板に塗膜 11を予 め焼き付けてなるカラー鋼板製とされ，底部支持板 9で覆われる下部タンク半体 8は 通常の鋼板製とされる。 [0030] これら上部タンク半体 7，下部タンク半体 8及び底部支持板 9の各周縁部にはフラン ジ 7f, 8f， 9fがー体に形成されており，これら三枚のフランジ 7f， 8f, 9fをロール状に 力 めて環状で，肉厚が素材の数倍も厚い厚肉結合部 12が形成され，この結合部 1 2の燃料室 10に対する液密性をより確実にすべく，力しめ結合前に少なくとも上部二 枚のフランジ 7f, 8fの対向面に接着剤 13が塗布される。

[0031] 上部タンク半体 7，下部タンク半体 8及び底部支持板 9には，それぞれ厚肉結合部 12に連なる環状の補強リブ 7r， 8r， 9rが隆起形成され，各環状リブ 7r， 8r, 9rの高さ は，上部タンク半体 7,下部タンク半体 8及び底部支持板 9の各外面から起立する環 状段部 7s, 8s, 9sによって規定される。

[0032] 上部タンク半体 7の天井部には，それを貫通する給油口筒 38がロール状のかしめ により結合され，それにタンクキャップ Cが螺合により装着される。また下部タンク半体 8の底部には，燃料フィルタ 32を備えた出口管 33が固着され，この出口管 33には， 底部支持板 9を貫通して前記気化器 4に燃料を誘導する燃料導管 34が接続される。

[0033] 底部支持板 9は，クランクケース 2の上部に固着されるブラケット 14に次のようにして 弾性的に取り付けられる。即ち，図 2〜図 5に示すように，底部支持板 9の底部は，前 記エンジン Eの前後方向に長い概ね長方形をなしており，この底部支持板 9の底部 には，その左右の長辺部に近接して隆起してエンジン Eの前後方向に延びる一対の 長手方向リブ 15, 15と，これら長手方向リブ 15， 15の中間部相互を連結するように 隆起する横方向リブ 16とが形成される。そして各長手方向リブ 15, 15の裏側におい て，それと同方向に延び周縁部 17aをリブ状に起立させた補強板 17, 17が複数のプ レスジョイント 18， 18により底部支持板 9に接合される。

[0034] 各補強板 17の両端部には，底部支持板 9を貫通して下方に突出するボルト 19と， 補強板 17及び底部支持板 9に穿設されたボルト孔 20に臨むナット 21とが溶接等に より固着される。

[0035] 燃料タンク Tは，ボルト 19からのオーバハング量がナット 21からオーバハング量より 大きくなるように形成される。その際，上記一対二組のボルト及びナット 19， 21 ; 19, 21に囲まれる領域に燃料タンク Tの重心が来るように配置されるように，下部タンク半 体 8及び底部支持板 9の底部が，これらのボルト 19側がナット 21側よりも高くなるよう 段付きに形成される。

[0036] 而して，前記ブラケット 14上に燃料タンク Tを搭載したとき，各ボルト 19には，ブラケ ット 14を貫通，配置されるカラー 22と，ブラケット 14の下面に対向する平ヮッシャ 23と がナット 21により固着される。またナット 21には，ブラケット 14を貫通，配置されるカラ 一 22と，ブラケット 14の下面に対向する平ヮッシャ 23とがボルト 25により固着され， 同時に各カラー 22の周囲で，底部支持板 9とブラケット 14,ブラケット 14と平ヮッシャ 23の各間に弾性支持部材 26， 26が介装される。

[0037] これまでの構成の作用について説明する。

[0038] 燃料タンク Tの製作に際しては，上部タンク半体 7,下部タンク半体 8及び底部支持 板 9の三枚のフランジ 7f, 8f, 9fをロール状にかしめ結合することにより， 肉厚が素材 より数倍も厚い環状の厚肉結合部 12を形成するので，この厚肉結合部 12の剛性が 極めて高いこと，また上部タンク半体 7,下部タンク半体 8及び底部支持板 9には，上 記厚肉結合部 12に連なるリブ 7r, 8r, 9rがそれぞれ形成され，これらによって厚肉 結合部 12の周辺部が強固に補強されることにより，燃料タンク Tを効果的に補強する こと力 Sできる。したがって，この燃料タンク Tは，エンジン Eの転倒時等に特に横方向 の大なる衝撃力を受けても，それに充分耐えることができ，し力も上部タンク半体 7, 下部タンク半体 8及び底部支持板 9の板厚を特別増加させずに済む。したがって軽 量ィ匕及び耐久性向上の両立を図ることができる。

[0039] また外部に露出する上部タンク半体 7及び底部支持板 9は，カラー鋼板製とされる ので，ロール状のかしめによる厚肉結合部 12の形成によるも，カラー鋼板の塗膜の 剥離は起こらず，燃料タンク Tの美観の向上を図ることができる。

[0040] また底部支持板 9は弾性支持部材 26， 26を介して，エンジン Eに固着されるブラケ ット 14に弾性支持されるので，エンジン Eの運転中の振動を弾性支持部材 26， 26に より吸収することは勿論，底部支持板 9によっても吸収することができ，したがって上 部及び下部タンク半体 7, 8への振動伝達を抑制し，燃料タンク Tの振動騒音の発生 を防ぐと共に，その振動耐久性を高めることができる。

[0041] し力も底部支持板 9は，互いに離間して略平行に延びる一対の長手方向リブ 15， 1 5と，この両長手方向リブ 15， 15の少なくとも中間部間を連結する横方向リブ 16とに より，広範囲に亙り剛性が効果的に強化される。そして各長手方向リブ 15の両端部 に，弾性支持部材 26, 26を介してブラケット 14に連結するボルト 19及びナット 21固 着されるので，エンジンの振動時，その振動荷重が弾性支持部材 26からボルト 19及 びナット 21に伝達しても，その荷重は長手方向リブ 15， 15及び横方向リブ 16を介し て底部支持板 9の広範囲に分散させ，応力集中を防ぐことができる。したがって，底 部支持板 9の板厚を特別増加させなくとも，底部支持板 9の振動耐久性を向上させる こと力 Sできる。

[0042] その上，底部支持板 9の内面に，一対の長手方向リブ 15, 15に対応して延びる一 対の補強板 17, 17が接合されると共に，これら補強板 17, 17に上記ボルト 19及び ナット 21が固着されるので，補強板 17, 17により長手方向リブ 15, 15の補強効果を 高め，底部支持板 9の剛性の更なる強化を図り，またボルト 19及びナット 21は各補強 板 17の底部支持板 9との接合強度を増強することになるから，これも底部支持板 9の 剛性強化に寄与することになる。

[0043] さらに上記一対二組のボルト及びナット 19, 21 ; 19, 21は，これらに囲まれる領域 に燃料タンク Tの重心が位置するように配置されるので，燃料タンク Tの重量やその 振動荷重を一対二組のボルト及びナット 19, 21 ; 19, 21を介してブラケット 14に常 に安定良く支持させることができる。

[0044] さらにまたボルト 19からの燃料タンク Tのオーバハング量力 ナット 21からの燃料タ ンク Tのオーバハング量より大きく設定されると共に，下部タンク半体 8及び底部支持 板 9の底部が，これらのボルト 19側がナット 21側よりも高くなるよう段付きに形成され るので，燃料タンク Tの容量増やデザイン上の理由から，燃料タンク Tを，特にボルト 19から大きくオーバハングさせる場合でも，燃料タンク Tの重心を，一対二組のボルト 及びナット 19, 21 ; 19， 21に囲まれる領域に収めることができ，設計の自由度を高め ること力 Sできる。

[0045] 次に，図 7〜図 10により，前記給油口筒 38及びタンクキャップ Cについて説明する

[0046] 図 7及び図 8に示すように，上部タンク半体 7の中央部には，それを貫通するメツキ 鋼板製 (即ち非塗装鋼板製）の給油口筒 38の上端部が，該上端部が露出するように して力 め結合され，この給油口筒 38の露出した上端部に漏斗状のシール面 39が 形成される。また給油口筒 38の下端には，燃料貯留室 10に注入される燃料を濾過 する燃料フィルタ 37が連結される。

[0047] 給油口筒 38にはタンクキャップ Cが装着される。このタンクキャップ Cは，合成樹脂 製のキャップボディ 40,同じく合成樹脂製のキャップインナ 41 ,鋼板製のキャップシ エル 42及びパッキン 43を主たる構成要素とする。

[0048] キャップボディ 40は，給油口筒 38の内周面に螺合し得るねじ部 44を外周に形成し た天井付きの円筒部 40aと，この円筒部 40aの上端部から半径方向に張り出すフラ ンジ部 40bとを備えており， 円筒部 40aの上部外周面には，フランジ部 40bの下面に 連なる環状の取り付け溝 45が形成される。この取り付け溝 45に，前記シール面 39に 密接する前記パッキン 43が装着される。またキャップシェル 42の天井部中心には， 給油口筒 38から外したタンクキャップ Cの脱落を防ぐティザ一 46 (図 3及び図 7参照） が接続される。

[0049] 図 8及び図 9に示すように，キャップインナ 41は，キャップボディ 40の直上に配置さ れる。これらキャップインナ 41及びキャップボディ 40は，これらの対向面にそれぞれ 形成された環状の連結鉤形部 47と環状配列の複数の連結爪部 48, 48…との係合 により相互に回動可能に連結される。環状の連結鉤形部 47は，キャップボディ 40と 同軸上に配置される。キャップインナ 41は，その外周に星形に突出すると共に，先端 部を下方に屈曲した複数の突起 41 a, 41a…を備えてレ、る。このキャップインナ 41の 外周に，天井付きで円筒状の前記キャップシェル 42が嵌合される。このキャップシヱ ル 42の外周面には，キャップインナ 41の複数の突起 41a, 41a…を内側に受容する 複数の隆起部 50, 50…がー体に形成されており，これら隆起部 50， 50…から切り起 こされた係止爪 51， 51…を，前記突起 41a, 41a…外面の凹部 52， 52…に係合さ せることにより，キャップシェル 42はキャップインナ 41に固着される。上記隆起部 50, 50…は，キャップシェル 42を回転操作する際の滑り止めとなる。

[0050] こゝで，キャップボディ 40を給油口筒 38にねじ込むときのキャップシェル 42及びキ ヤップインナ 41の回転方向を A,それと反対の回転方向を Bとし，キャップインナ 41 の A方向の回転を規定のトルクの範囲内でキャップボディ 40に伝達し，キャップイン ナ 41の B方向の回転は滑りなくキャップボディ 40に伝達し得るラチヱット機構 55がキ ヤップインナ 41及びキャップボディ 40間に介装される。

[0051] 即ち，このラチエツト機構 55は，図 10に示すように，キャップボディ 40に形成されて 前記連結鉤形部 47の内側にそれと同心上に配置されるラチェットギヤ 56と，キャップ インナ 41に一体に形成されて上記ラチヱットギヤ 56に弾発的に係合する複数のラチ エツトポーノレ 57, 57…とからなっており，キャップシェル 42及びキャップインナ 41を A 方向に回転したときは，その回転トルクが，前記パッキン 43を給油口筒 38のシール 面 39に適正に密着させるに足る規定トルクを超えると，ラチエツトポール 57, 57…が ラチェットギヤ 56から滑り出し，これと反対にキャップシェル 42及びキャップインナ 41 を B方向に回転したときは，ラチヱットポール 57, 57…及びラチヱットギヤ 56間に滑り は起こらず，キャップインナ 41及びキャップボディ 40がー体となって回転するようにな つている。

[0052] 図 8に明示するように，前記パッキン 43は，給油口筒 38の前記シール面 39に密接 する環状の下部リップ 43aと，この下部リップ 43aの上方でキャップボディ 40の前記フ ランジ部 40b下面に密接する環状の上部リップ 43bと，この両リップ 43a, 43bの内周 端部を相互に一体に連結してキャップボディ 40の前記取り付け溝 45に装着される連 結部 43cとで構成される。その際，両リップ 43a, 43bの何れか一方，図示例では上 部リップ 43bの外周には，キャップシェル 42の周壁 42aの，隆起部 50, 50…を除く内 周面に弾性的に接触する複数の弾性接片 58， 58· · ·がー体に形成され，ラチェット機 構 55の滑り作用によりキャップシェル 42及びキャップボディ 40間に相対回転が生じ たときは，各弾性接片 58, 58…はキャップシェル 42の内周面をスムーズに滑るように 一定方向に傾斜している。また複数の弾性接片 58， 58…及び前記隆起部 50， 50 …は，タンクキャップ Cの軸線周りに等ピッチに配列されるが，弾性接片 58, 58…及 び前記隆起部 50， 50…の配列個数を異ならせて，それぞれのピッチを相違させて いる。これにより，キャップシェル 42及びキャップボディ 40の如何なる相対回転位置 においても，複数の弾性接片 58, 58…の何れ力が，キャップシェル 42の，複数の隆 起部 50， 50…を除く内周面に常に接触するようになっている。

[0053] 上記パッキン 43は導電性弾性材料，例えば天然ゴムに塩化ビニール及びカーボ ンを練り込んでなる材料で成形される。その際，ノ ノキン 43の体積固有抵抗率は 10⁴ 〜： ίθ"¹ Ωに設定することが望ましい。

[0054] これまでの構成の作用について説明する。

[0055] タンクキャップ Cの給油口筒 38への装着状態では，導電性のキャップボディ 40が 金属製燃料タンク Τの給油口筒 38に螺合すると共に，このキャップボディ 40に取り付 けられた導電性のパッキン 43が給油口筒 38のシール面 39に密接し，このパッキン 4 3の弾性接片 58, 58…が金属製のキャップシェル 42に接触しているから，キャップシ エル 42がパッキン 43を介して燃料タンク Τに電気的にアースされた状態にある。した がって，燃料タンク Τ内に燃料を補給すべく作業者がキャップシェル 42を把持したと き，その作業者が静電気を帯電していれば，その静電気はパッキン 43を通して燃料 タンク Τに逃げることになる。

[0056] このように，キャップシェル 42を金属製とすると共に，このキャップシェル 42に接触 する弾性接片 58, 58…付きのパッキン 43を導電性に構成するという極めて簡単な 構造により，作業者の静電気を燃料タンクに逃がすことができ，し力もパッキン 43の 弾性接片 58， 58…には高度の寸法精度は不要であるから，パッキン 43の製造も容 易である。その上，合成樹脂製のキャップボディ 40へのねじ部 44の形成は容易であ り，また金属製のキャップシェル 42は製作が容易であると共に耐衝撃性が高いから， 生産性及び耐久性の高いタンクキャップ Cを安価に提供し得る。

[0057] またキャップボディ 40とキャップシェル 42とを相互に回転可能に連結する共に，こ れらキャップシェル 42及びキャップボディ 40間に，キャップシェル 42の前記ねじ部 4 4に対する締め付け方向 Αの回転トルクが所定値を超えると空転するラチェット機構 5 5を介装し，パッキン 43の外周に，キャップシェル 42の円筒状周壁 42aの内周面に 弾性的に摺接する弾性接片 58， 58…を一体に突設したので，キャップボディ 40の 給油口筒 38への螺合，締め付け時，ラチェット機構 55の空転により過剰締め付けに よるねじ部 44ゃパッキン 43の破損を防ぐことができる。またラチヱット機構 55の空転 時でも，パッキン 43の弾性接片 58, 58…がキャップシェル 42の内周面を滑ることで ，キャップシェル 42の弾性接片 58, 58…との接触状態を保ちつ、パッキン 43の無 理な変形を防ぐことができる。 [0058] さらにキャップシェル 42の円筒状周壁 42aに，外方に隆起して等ピッチに並ぶ複数 の滑り止め用隆起部 50， 50…を形成する一方，パッキン 43の前記弾性接片 58, 58 …を，前記隆起部 50， 50…のピッチとは異なるピッチで並ぶ複数とし，これら弾性接 片 58， 58…の少なくとも一つがキャップシェル 42の円筒状周壁 42aの，前記隆起部 50, 50…に対応する部分を除く内周面に常に接触するようにしたので，キャップシェ ル 42の円筒状周壁 42aに，外方に隆起して等ピッチに並ぶ複数の滑り止め用隆起 部 50， 50…が存在しても，これら隆起部 50， 50…に関係なく，またキャップシェル 4 2及びキャップボディ 40の相対回転位置に関係なぐ常に確実にパッキン 43の弾性 接片 58, 58…のキャップシェル 42との接触状態を確保し，キャップシェル 42のの燃 料タンク Tへのアース状態を保証することができる。

[0059] さらにまたパッキン 43を，給油口筒 38のシール面 39に密接する環状の下部リップ 43aと，この下部リップ 43aの上方でキャップボディ 40のフランジ部 40b下面に密接 する上部リップ 43bと，この両リップ 43a, 43bの内周端を相互に一体に連結してキヤ ップボディ 40の外周面の環状の取り付け溝 45に装着される連結部 43cとで構成し， 上記両リップ 43a, 43bの何れか一方の外周から前記弾性接片 58, 58…を突出させ たので，パッキン 43の上部リップ 43b又は下部リップ 43aを利用して，柔軟性に富む 弾性接片 58， 58…を容易に形成することができ，したがって弾性接片 58, 58…付き のパッキン 43を安価に得ることができる。

[0060] 一方，燃料タンク Tにおいては，上部タンク半体 7をカラー鋼板製とし，この上部タン ク半体 7に非塗装鋼板製の給油口筒 38を，その上部が露出するように，かしめ結合 すると共に，この給油口筒 38の上方露出面をシール面 39に形成したので，上部タン ク半体 7の美観を良好にすることができると共に，上部タンク半体 7表面の塗膜の万 一の剥離に関係なく給油口筒 38のシール面 39を長期に亙り良好に保つことができ る。し力も上部タンク半体 7への給油口筒 38の結合後には，塗装やマスキング等の 面倒な工程は不要であるから，生産性の向上を図ることができる。また溶接による結 合とは異なり，上部タンク半体 7表面の塗膜の焼損や給油口筒 38のシール面 39の 熱変形の心配がなく，しかも，力しめ結合部によりシール面 39の剛性を効果的に高 めることができる。したがって上部タンク半体 7の美観の確保と，シール面 39の耐久 性の向上とを両立させることができる。

[0061] また上記シール面 39を漏斗状に形成したので，燃料タンク Tへの給油中，シール 面 39に燃料が付着したとき，その燃料を漏斗状のシール面 39に沿って燃料タンク T 内に自然に流入させることができ，これにより燃料による燃料タンク T上面の汚損を防 ぐこと力できる。

[0062] さらに給油口筒 38をメツキ鋼板製としたので，給油口筒 38を，そのメツキ層を剥離 することなく上部タンク半体 7にかしめ結合することができると共に，メツキ層によりシ ール面 39を良好にすると共に，その耐久性の更なる向上を図ることができる。

[0063] 尚，本発明は前記実施例に限定されるものではなぐその要旨を逸脱しない範囲で 種々の設計変更が可能である。例えば，燃料タンク Tにおいて，下部タンク半体 8の 下面を覆う底板 9を設けない場合には，下部タンク半体 8が外部に露出することにな るから，その美観を保つベぐそれも上部タンク半体 7と同様にカラー鋼板製とする。

Claims

請求の範囲

[1] それぞれ椀状の鋼板製上部タンク半体（7)及び下部タンク半体（8)の各周縁部に フランジ（7f， 8f)を一体に形成し，それらのフランジ（7f, 8f)を重ねて液密に結合し てなる燃料タンクにおいて，

前記両フランジ（7f, 8f)をロール状にかしめ結合して環状の厚肉結合部（12)を形 成し，この結合部（12)に連なる環状の補強リブ（7r， 8r)を，上部及び下部タンク半 体（7， 8)の少なくとも一方に形成したことを特徴とする燃料タンク。

[2] 請求項 1記載の燃料タンクにおいて，

前記結合部（12)の両側に連なる一対の環状の補強リブ（7r， 8r)を上部及び下部 タンク半体（7, 8)に形成したことを特徴とする燃料タンク。

[3] それぞれ椀状の鋼板製上部タンク半体（7)及び下部タンク半体 (8)の各周縁部に フランジ（7f， 8f)を一体に形成し，それらのフランジ（7f, 8f)を重ねて液密に結合し てなる燃料タンクにおいて，

前記両フランジ（7f， 8f)と，下部タンク半体（8)の下面を覆うように配置される椀状 の底部支持板（9)の周縁部に形成されたフランジ（9f)とをロール状にかしめ結合し て環状の厚肉結合部（12)を形成し，この結合部（12)に連なる環状の補強リブ（7r,

8r, 9r)を，上部タンク半体（7) ,下部タンク半体（8)及び底部支持板（9)に形成し， 底部支持板（9)には，これをエンジン (E)に取り付けるための取り付け部（19， 21)を 設けたことを特徴とする燃料タンク。

[4] 請求項 1〜3の何れかに記載の燃料タンクにおいて，

少なくとも上部タンク半体（7)を，鋼板の表面に塗膜（11)を予め焼き付けてなる力 ラー鋼板製としたことを特徴とする燃料タンク。

[5] タンク天井部に，それを貫通してタンクキャップ（C)により閉鎖される給油口筒（38) を結合し，この給油口筒（38)の上端面に，タンクキャップ (C)のパッキン (43)が密接 する環状のシール面（39)を形成した燃料タンクにぉレ、て,

前記タンク上部を構成する少なくとも上部タンク半体（7)を，表面に予め塗装を施し たカラー鋼板製とし，この上部タンク半体（7)に非塗装鋼板製の給油口筒（38)を結 合したことを特徴とする燃料タンク。

[6] 請求項 5記載の燃料タンクにおいて，

上部タンク半体（7)と給油口筒（38)とを，給油口筒（38)の上部が露出するように， 力 め結合すると共に，この給油口筒（38)の上方露出面を前記シール面（39)に形 成したことを特徴とする燃料タンク。

[7] 請求項 5又は 6記載の燃料タンクにおいて，

前記シール面（39)を漏斗状に形成したことを特徴とする燃料タンク。

[8] 請求項 6又は 7記載の燃料タンクにおいて，

給油口筒（38)をメツキ鋼板製としたことを特徴とする燃料タンク。