明 細 書
転写因子デコイ
技術分野
[0001] 本発明は、生体内の遺伝子発現を調節するのに有効なオリゴヌクレオチドおよび その使用、ならびにそれを含有する医薬組成物に関する。
背景技術
[0002] 最近、核酸およびその誘導体を用いて特定の遺伝子の発現を制御することが、特 定の疾患の治療および予防方法として開発されつつある。例えば、疾患の発症に関 与する遺伝子の発現を抑制することにより、疾患を治療または予防することができる 場合、その遺伝子発現を特異的に抑制可能な核酸またはその誘導体を、対象とする 生体内またはその部位に投与すれば、その疾患の治療または予防が達成される。
[0003] 力かる方法の代表的な例としては、アンチセンス法およびデコイオリゴヌクレオチド 法が挙げられる。前者は、特定の遺伝子の翻訳産物 (すなわち、 mRNA)に対するアン チセンスの一本鎖オリゴヌクレオチドを細胞内に送達して該特定の遺伝子の転写を 抑制することにより発現を抑制するものである。後者のデコイオリゴヌクレオチド法は、 疾患の発症に関与する遺伝子発現を誘導する転写因子が結合する二本鎖オリゴヌ クレオチドを細胞の核内に送達して、その転写因子がゲノム上の結合部位に結合す ることを阻害することにより、該転写因子が誘導する遺伝子発現を抑制するものであ る。なお、デコイ (decoy)とは、英語で「おとり」の意味であり、ある物質が本来結合ある いは作用すべきものと似せた構造を有するものをデコイと呼んで 、る。
[0004] このデコイオリゴヌクレオチド法の機序は、簡単に述べると、以下のとおりである。特 定の転写因子が誘導する遺伝子発現を抑制することを目的として、特定の転写因子 を標的とする二本鎖オリゴヌクレオチドを対象とする組織または細胞に送達させる。 すると、該ニ本鎖オリゴヌクレオチドは、核内に移行し、核内における該転写因子とゲ ノム上の該転写因子結合部位との結合にお!、て競合し、ゲノム上の該転写因子結合 部位と該転写因子との結合が阻害されることとなるため、該転写因子により誘導され る遺伝子発現が抑制される。その結果、該転写因子により誘導される遺伝子発現に
よる生物学的事象は阻害される。
[0005] したがって、疾患の予防または治療薬としてのデコイオリゴヌクレオチドは、標的と する転写因子に対して高 、結合特異性を有して 、ること、および細胞毒性が低 、こと に加えて、上記機序を効率よく作用させるために、標的とする転写因子との結合活性 の高いことが重要である。
[0006] 一般的にデコイオリゴヌクレオチドの設計は、転写因子が結合するコンセンサス配 列を含む配列とすることが有利であると考えられて 、る。このように設計された種々の 転写因子に対するデコイオリゴヌクレオチドが、多くの医薬用途に有効であることも知 られている(例えば、特再表 96/035430号公報、特許 3392143号公報、 W095/11687 号公報など参照のこと)。
[0007] 細胞内に送達されたデコイオリゴヌクレオチドが細胞内でいかに長時間安定して存 在し得る力も、上記機序を効率よく作用させるための重要な鍵となりうることは、周知 の事実である。オリゴヌクレオチドは、細胞内のヌクレアーゼにより分解されるため、細 胞内および核内で安定して存在させることは難題であるが、この難題を克服するため に、オリゴヌクレオチド内の塩基に種々の修飾を施す方法が試みられてきた (例えば 、 Milliganら、 J. Med. Chem. 1993, 36, 1923、特表平 08— 501928)。その中でも最 もよく用いられる修飾は、ホスホロチォエート(PS)による修飾であり、ホスホロチォェ ート化オリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼに対する抵抗性が高いことから、治療用オリ ゴヌクレオチドとして注目されて!/、る。
[0008] し力しながら、ホスホロチォエートイ匕オリゴヌクレオチドは、天然型のホスホジエステ ルオリゴヌクレオチドに比べて顕著に高 、ヌクレアーゼ抵抗性を有する一方で、ホス ホジエステルオリゴヌクレオチドに比べて、標的分子との結合能が低下すること、およ び標的分子への特異性が低下することなどの不利益が認められる場合が多 、 (Millig anら、 J. Med. Chem. 1993, 36, 1923、 Stein & Cheng, Science 1993, 261, 1004)。さ らにまた、ホスホロチォエート基は毒性を有するため、ホスホロチォエートイ匕オリゴヌク レオチドは、ホスホジエステルオリゴヌクレオチドに比べて、細胞毒性が高い場合が 多く(Levinら、 Biochem. Biophys. Acta, 1999, 1489, 69)、これもまた、ホスホロチォェ 一トイ匕オリゴヌクレオチドの治療薬としての用途における不利益となっている。
[0009] これまでに、 NF- κ Bの結合配列を含む配列を有するオリゴヌクレオチドとその相補 鎖力 なる NF- κ Bデコイオリゴヌクレオチド力 NF- κ Bの関連する疾患の治療に有 用であることを見出している(国際公開公報 WO96/35430、 WO02/066070, WO03/0 43663、 WO03/082331、 WO03/099339、 WO04/026342, WO05/004913、 WO05/00 4914)。
[0010] 特許文献 1:特再表 96/035430号公報
特許文献 2:特許 3392143号公報
特許文献 3:国際公開公報 W095/11687
特許文献 4:特表平 08— 501928号公報
特許文献 5:国際公開公報 WO96/35430
特許文献 6:国際公開公報 WO02/066070
特許文献 7:国際公開公報 WO03/043663
特許文献 8:国際公開公報 WO03/082331
特許文献 9:国際公開公報 WO03/099339
特許文献 10:国際公開公報 WO04/026342
特許文献 11:国際公開公報 WO05/004913
特許文献 12:国際公開公報 WO05/004914
非特許文献 l : Milliganら、 J. Med. Chem. 1993, 36, 1923
非特許文献 2 : Levinら、 Biochem. Biophys. Acta, 1999, 1489, 69
非特許文献 3 : FASEB J 2002 Nov 16(13) 1811-3 Epub 2002 Sep 5
非特許文献 4 : Naunyu- Schmiedeberg's Arch Pharmacol(2001) 364 422-429 発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0011] 本発明は、より有効な、すなわち、転写因子結合活性がより高ぐかつ細胞毒性を 低減したデコイオリゴヌクレオチドとして有用な二本鎖オリゴヌクレオチド及びその医 薬用途を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
[0012] 上記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、デコイオリゴヌクレオチドの付加配列中
のコンセンサス配列に隣接する塩基を特定の規則に基づいて決定することにより、転 写因子結合活性が向上したデコイオリゴヌクレオチドを開発するに至り、さらにまた、 デコイオリゴヌクレオチドの細胞内での安定性を向上させ、かつ天然型オリゴヌクレオ チドの化学修飾による細胞毒性が低減された、修飾デコイオリゴヌクレオチドを開発 し、本発明を完成させるに至った。
[0013] したがって、本発明は、以下の発明に関する:
1. 下記式 A:
5 ' - N(m)— G コンセンサス配列 C— N(n) - 3 ' (式 A)
(式 A中、 N(m)は 5'端の付カ卩配列であって、 m個の Nが連結されていることを示し、 N(n )は 3'端の付加配列であって、 m個の Nが連結されていることを示し、全ての Nは互い に独立してヌクレオチド A、 G、 T、 Cまたは Uを意味し、 mおよび nはそれぞれ独立して 0〜20の整数を意味し、コンセンサス配列は、転写因子が結合するコンセンサス配列 を意味する)
で表される塩基配列を有するセンス鎖オリゴヌクレオチドと、該オリゴヌクレオチドと相 補的なアンチセンス鎖オリゴヌクレオチドとがハイブリダィズしてなる二本鎖オリゴヌク レオチド(ただし、センス鎖オリゴヌクレオチドが AGTTGAGGGGACTTTCCCAGGC ( 配列番号 42)又は GATCGAGGGGACTTTCCCTAG (配列番号 43)で示される塩基 配列を有するものを除く)。
[0014] 2. 上記式 Aにおいて、 mおよび nは 6以下の整数である、上記 1記載のオリゴヌタレ ォチド。
3. 上記式 Aにおいて、 mは 2〜6のいずれかの整数である、上記 1または 2記載のォ リゴヌクレオチド。
4. 上記式 Aにおいて、 nは 0、 1、 2または 3のいずれかの整数である、上記 2又は 3 記載のオリゴヌクレオチド。
[0015] 5. 下記式 (A) :
5 ' - N(m)— G コンセンサス配列 C— N(n) - 3 ' (式 A)
(式 A中、 N (m)は 5'端の付加配列であって、 m個の Nが連結されていることを示し、 N( n)は 3'端の付加配列であって、 m個の Nが連結されていることを示し、全ての Nは互い
に独立してヌクレオチド A、 G、 T、 Cまたは Uを意味し、 mおよび nはそれぞれ独立して 0〜20の整数を意味し、コンセンサス配列は、転写因子が結合するコンセンサス配列 を意味し、 N (m)力 GA、 TGA、 TTGA、 CTTGAおよび CCTTGAからなる群より選択 される 1つの配列である)
で表される塩基配列を有するセンス鎖オリゴヌクレオチドと、該オリゴヌクレオチドと相 補的なアンチセンス鎖オリゴヌクレオチドとがハイブリダィズしてなる二本鎖オリゴヌク レオチド。
6. 上記式 Aにおいて、 N(n)力 Cまたは CCである、上記 4又は 5記載のオリゴヌタレ ォチド。
7. 上記式 (A)において、 N(m)が CCTTGAの配列力 なるオリゴヌクレオチドであり、 N(n)が CCの配列力もなるオリゴヌクレオチドである、上記 6記載のオリゴヌクレオチド。
8. 塩基間結合がホスホロチォエート結合を含む上記 1〜7のいずれかに記載のォ リゴヌクレオチド。
9. センス鎖およびアンチセンス鎖のいずれの鎖においても、少なくともいずれか一 方の鎖の末端の 3塩基間の結合がホスホロチォエート結合である、上記 8記載のオリ ゴヌクレオチド。
10. センス鎖およびアンチセンス鎖のいずれの鎖においても、両末端それぞれ 3塩 基対内にはホスホロチォエート結合を含む力 それ以外には、両鎖ともホスホロチォ エート結合で連結されて 、る隣接する塩基対を含まな 、上記 8記載のオリゴヌクレオ チド。
11. センス鎖およびアンチセンス鎖の 、ずれの鎖にお 、ても、ホスホロチォエート 結合が 4つ以上連続して存在しな ヽ上記 8な ヽし 10の 、ずれか〖こ記載のオリゴヌタレ ォチド。
12. センス鎖およびアンチセンス鎖のいずれの鎖においても、ホスホロチォエート 結合が、 2または 3つ連続して存在する上記 8な 、し 11の 、ずれかに記載のオリゴヌ クレオチド。
13. センス鎖およびアンチセンス鎖両方において、 5'末端の 2塩基間の結合がホス ホロチォエート結合である上記 8ないし 12のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
14. センス鎖およびアンチセンス鎖両方において、 5'末端の 3塩基間の結合がホス ホロチォエート結合である上記 13記載のオリゴヌクレオチド。
15. センス鎖およびアンチセンス鎖両方において、 3'末端の 2塩基間の結合がホス ホロチォエート結合である上記 8な 、し 14の 、ずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
16. センス鎖およびアンチセンス鎖両方において、 3'末端の 3塩基間の結合がホス ホロチォエート結合であることをさらなる特徴とする、上記 15記載のオリゴヌクレオチ ド。
17. 上記コンセンサス配列が、 NF- κ B、 E2F、 GATA-3、 STAT- 1、 STAT-6、 Etsま たは AP-1の結合配列力もなる、上記 1〜16のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
18. 前記コンセサス配列力 GGGRHTYYHC (式中、 Rは Aまたは Gを、 Yは Cまたは Tを、 Hは A、 Cまたは Tをそれぞれ意味する) (配列番号 1)である NF- κ Bの結合配列 である上記 17記載のオリゴヌクレオチド。
19. NF- κ Bの結合配列が GGGATTTCCC (配列番号 2)または GGGACTTTCC (配 列番号 3)である、上記 18記載のオリゴヌクレオチド。
20. センス鎖オリゴヌクレオチドが CCTTGAGGGGATTTCCCCCC (配列番号 4)の 配列からなる、上記 20記載のオリゴヌクレオチド。
21. センス鎖 CCTTGAGGGGATTTCCCCCC (配列番号 4)中の塩基間結合におい て、 5 '力 1、 2、 5、 6、 14および 15番目の結合のみがホスホロチォエート結合であり 、アンチセンス鎖中の塩基間結合において、その 5'から 1、 2、 9、 10および 11番目 の結合のみがホスホロチォエート結合であることをさらなる特徴とする、上記 20に記 載のオリゴヌクレオチド。
22. 下記式 C:
5'—N(x)—コンセンサス配列— N(y)— 3' (式 C)
(式 C中、 N(x)は 5'端の付加配列であって、 X個の Nが連結されていることを示し、 N(y) は 3'端の付加配列であって、 y個の Nが連結されていることを示し、全ての Nは互いに 独立してヌクレオチド A、 G、 T、 Cまたは Uを意味し、 mおよび nはそれぞれ独立して 1 〜20の整数を意味し、コンセンサス配列は、転写因子が結合するコンセンサス配列 を意味する)
で表される配列を有するセンス鎖オリゴヌクレオチドと、該オリゴヌクレオチドと相補的 なアンチセンス鎖オリゴヌクレオチドとがハイブリダィズしてなり、該アンチセンス鎖オリ ゴヌクレオチド内に、塩基間の結合がホスホロチォエート結合である連続する 4塩基 を含み、該連続する 4塩基がオリゴヌクレオチドの末端の塩基は含まな ヽニ本鎖オリ ゴヌクレオチド。
23. 前記連続する 4塩基は、前記アンチセンス鎖オリゴヌクレオチド内に 1つだけ含 まれる上記 22記載のヌクレオチド。
24. 前記連続する 4塩基は、前記二本鎖ヌクレオチド内に 1つだけ含まれる上記 23 記載のヌクレオチド
25. 上記式 C中の上記コンセンサス配列力 NF- κ B、 E2F、 GATA-3、 STAT- 1、 S TAT-6、 Etsまたは AP-1の結合配列からなる、上記 1〜24のいずれかに記載のオリゴ ヌクレオチド。
26. 前記コンセサス配列力 GGGRHTYYHC (式中、 Rは Aまたは Gを、 Yは Cまたは Tを、 Hは A、 Cまたは Tをそれぞれ意味する) (配列番号 1)である NF- κ Bの結合配列 である上記 25記載のオリゴヌクレオチド。
27. NF- κ Bの結合配列が GGGATTTCCC (配列番号 2)または GGGACTTTCC (配 列番号 3)である、上記 26記載のオリゴヌクレオチド。
28. 上記式 Cが、下記式 A :
5 ' - N(m)— G コンセンサス配列 C— N(n) - 3 ' (式 A)
(式 A中、 N(m)は 5'端の付カ卩配列であって、 m個の Nが連結されていることを示し、 N(n )は 3'端の付加配列であって、 m個の Nが連結されていることを示し、全ての Nは互い に独立してヌクレオチド A、 G、 T、 Cまたは Uを意味し、 mおよび nはそれぞれ独立して 0〜20の整数を意味し、コンセンサス配列は、転写因子が結合するコンセンサス配列 を意味する)
で表される上記 18ないし 27のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
29. 上記式 Aにおいて、 mおよび nは 6以下の整数である、上記 28記載のオリゴヌク レオチド。
30. 上記式 Aにおいて、 mは 2〜6のいずれかの整数である、上記 29記載のオリゴ
ヌクレオチド。
31. 上記式 Aにおいて、 nは 0、 1、 2または 3のいずれかの整数である、上記 22ない し 30の 、ずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
32. 上記式 Aにおいて、 N(m)が、 GA、 TGA、 TTGA、 CTTGAおよび CCTTGAから なる群より選択される 1つの配列である上記 30又は 31記載のオリゴヌクレオチド。
33. 上記式 Aにおいて、 N(m)が、 GA又は TTGAであり、 nが 0である上記 32記載の オリゴヌクレオチド。
34. センス鎖オリゴヌクレオチドが GAGGGGATTTCCCC (配列番号 8)から成る上 記 33記載のオリゴヌクレオチド。
35. センス鎖 GAGGGGATTTCCCC (配列番号 8)中の塩基間結合において、 5'か ら 1、 2、 10及び 11番目の結合のみがホスホロチォエート結合であり、アンチセンス鎖 中の塩基間結合において、その 5'から 1、 7、 8及び 9番目の結合のみがホスホロチォ エート結合である上記 34記載のオリゴヌクレオチド。
[0019] 36. 上記 1ないし 35のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド力も成る転写因子阻害 剤。
37. 前記転写因子が NF- κ Bである上記 36記載の転写因子阻害剤。
38. 上記 1ないし 35のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドの、転写因子阻害剤の 製造のための使用。
39. 前記転写因子が NF- κ Bである上記 38記載の使用。
40. 上記 1ないし 35のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドの効果量を、生体に投 与することを含む、生体内の転写因子の阻害方法。
41. 前記転写因子が NF- κ Bである上記 40記載の方法。
[0020] 42. 上記 1〜35のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドを有効成分として含有する 、医薬組成物。
43. 上記 1〜35のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドを有効成分として含有する 、虚血性疾患、アレルギー性疾患、炎症性疾患、 自己免疫疾患、ガンの転移'浸潤、 または悪液質の予防、改善及び Z又は治療剤。
44. 上記 1〜35のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドを有効成分として含有する
、血管再狭窄、急性冠症候群、脳虚血、心筋梗塞、虚血性疾患の再灌流障害、アト ピー性皮膚炎、尋常性乾癬、接触性皮膚炎、ケロイド、褥創、潰瘍性大腸炎、クロー ン病、腎症、糸球体硬化症、アルブミン尿症、腎炎、腎不全、慢性関節リウマチ、変 形性関節症、椎間板変性症、喘息、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)または嚢胞性線維 症 (CF)の予防、改善及び Z又は治療剤。
45. 上記 1〜35のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドを有効成分として含有する 、 PTCA (経皮的冠動脈形成術)、 PTA (経皮的血管形成術)、バイパス手術、臓器移 植または臓器の手術後におこる血管の再狭窄の予防、改善及び Z又は治療剤。
46. 前記血管再狭窄が、人工血管、カテーテル、ステントの使用または静脈移植に 起因する再狭窄である上記 45記載の予防、改善及び Z又は治療剤。
47. 前記血管再狭窄が、閉塞性動脈硬化症、動脈瘤、大動脈乖離、急性冠症候 群、脳虚血、マルファン症候群、プラークラブチヤ一に対する外科的治療に起因する 上記 45に記載の予防、改善及び Z又は治療剤。
48. 上記 18〜21、 25〜27のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドを有効成分とし て含有する、 NF- κ Bに起因する疾患の予防、改善及び Z又は治療のための医薬組 成物。
49. NF- κ Βに起因する疾患力 虚血性疾患、アレルギー性疾患、炎症性疾患、自 己免疫疾患、ガンの転移 ·浸潤及び悪液質からなる群より選択される少なくとも 1つで ある、上記 48に記載の医薬組成物。
50. 上記 1〜35のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドの、医薬組成物の製造の ための使用。
51. 上記 18〜21、 25〜27の!/、ずれ力に記載の才リゴヌクレ才チドの、 NF— κ Βに 起因する疾患の治療又は予防剤の製造のための使用。
52. NF- κ Βに起因する疾患力 虚血性疾患、アレルギー性疾患、炎症性疾患、自 己免疫疾患、ガンの転移 ·浸潤及び悪液質からなる群より選択される少なくとも 1つで ある、上記 51に記載の使用。
53. 上記 18〜21、 25〜27のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドの効果量を、 Ν F- κ Βに起因する疾患の治療及び Ζ又は予防を必要とする患者又は動物に投与す
ることを含む、 NF- κ Bに起因する疾患の治療及び Z又は予防方法。
54. NF- κ Bに起因する疾患力 虚血性疾患、アレルギー性疾患、炎症性疾患、自 己免疫疾患、ガンの転移 ·浸潤及び悪液質からなる群より選択される少なくとも 1つで ある、上記 53に記載の方法。
発明の効果
[0021] 本発明により、転写因子結合活性がより高ぐかつ細胞毒性を低減したデコイオリゴ ヌクレオチドとして有用な二本鎖オリゴヌクレオチド及びその医薬用途が初めて提供 された。本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、生体内での安定性が高ぐ転写因子 を効果的に阻害することができ、毒性も低いので、転写活性阻害用途に有用であり、 ひいては転写因子の疎外によりよりもたらされる医薬用途において優れた性能を発 揮する。
図面の簡単な説明
[0022] [図 1]細胞内 NF- κ B結合試験の結果を示すグラフである。
[図 2]細胞の毒性試験の結果を示す図である。
[図 3]安定性試験で得られたポリアクリルアミド電気泳動の画像である。ゲルの染色は 、ェチジゥムブロマイドで行った。
発明を実施するための最良の形態
[0023] 第 1の局面において、本発明は、下記式 A :
5 ' - N(m)— G コンセンサス配列 C— N(n) - 3 ' (式 A)
(式 A中、 N(m)は 5'端の付カ卩配列であって、 m個の Nが連結されていることを示し、 N(n )は 3'端の付加配列であって、 m個の Nが連結されていることを示し、全ての Nは互い に独立してヌクレオチド A、 G、 T、 Cまたは Uを意味し、 mおよび nはそれぞれ独立して 0〜20の整数を意味する)
で表される塩基配列を有するセンス鎖オリゴヌクレオチドと、該オリゴヌクレオチドと相 補的なアンチセンス鎖オリゴヌクレオチドとがハイブリダィズしてなる二本鎖オリゴヌク レオチド(ただし、センス鎖オリゴヌクレオチドが AGTTGAGGGGACTTTCCCAGGC ( 配列番号 42)又は GATCGAGGGGACTTTCCCTAG (配列番号 43)で示される塩基 配列を有するものを除く)を提供する。なお、配列番号 42及び配列番号 43に示す塩
基配列を有するオリゴヌクレオチドは、 FASEB J 2002 Nov 16(13) 1811-3 Epub 2002 Sep 5及び Naunyu- Schmiedeberg's Arch Pharmacol(2001) 364 422- 429にそれぞれ 記載された公知の NF- κ Βデコイである。なお、これらの文献には、上記式 Αに包含さ れるオリゴヌクレオチドが記載されている力 これらのオリゴヌクレオチドは、 NF- κ Bを 阻害する実験の中で、たまたま用いられたオリゴヌクレオチドに過ぎず、コンセンサス 配列の上流側に隣接する塩基が G、下流側に隣接する塩基が Cの場合に NF- κ Bと の結合親和性が高まると 、う開示や示唆はな 、。
[0024] なお、配列表では、塩基は小文字で表されるが、本明細書及び請求の範囲では大 文字で表す。ヌクレオチド A、 G、 T、 C及び Uは、それぞれ、塩基としてアデニン、グァ ニン、チミン、シトシン及びゥラシルを有するヌクレオチドであり、配列表中の a、 g、 t、 c 及び uと同義である。
[0025] NF- κ Β等の転写因子は、多くの場合、それぞれファミリーを形成しており、各フアミ リーに属する転写因子が共通して結合するゲノミック DNA上の配列が「コンセンサス 配列」と呼ばれている。上記式 Αや後述の式 C等において、「コンセンサス配列」とは、 この意味である。転写因子としては、 NF- κ B、 E2F、 GATA-3、 STAT- 1、 STAT_6、 Et s及び AP-1等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの転写因子自 体は周知であり、それぞれの転写因子のコンセンサス配列も周知である。
[0026] 公知の転写因子のうち、好ましい例として NF- κ Bを挙げることができる。 NF- κ Β(η uclear factor kappa B)は、サイト力インや接着因子等、免疫反応に関する遺伝子の発 現を調節する役割を持つ一群 (ファミリー)の転写因子 (NF- κ B/Relファミリー、例え ば P52、 P50、 P65、 cRel、 RelB等)の総称であり、 NF- κ Βがゲノム遺伝子上の結合部 位に結合すると、免疫反応に関する遺伝子が過剰に発現する。このため、 NF- κ Βは 、免疫反応が原因となるアトピー性皮膚炎や関節リウマチ等のアレルギー性疾患、自 己免疫疾患、さらには心筋梗塞等の虚血性疾患や動脈硬化等の各種疾患に関与す ることが知られている。
[0027] コンセンサス配列の例としては、 NF- κ Βに対するコンセンサス配列には GGGRHTY YHC (Rは Αまたは G; Yは Cまたは T; Hは A,Cまたは T) (配列番号 1)、 E2Fに対するコ ンセンサス配列には TTTSSCGS (Sは Gまたは C)、 GATA-3に対するコンセンサス配
列には WGATAR (Wは Aまたは T;Rは Aまたは G)、 STAT-1に対するコンセンサス配列 には TTCNNNGAA (Nは A、 G、 Tまたは C)、 STAT- 6に対するコンセンサス配列には T TCNNNNGAA (Νは A、 G、 Tまたは C) (配列番号 5)、 Etsに対するコンセンサス配列に は MGGAW(Mは Aまたは C; Wは Aまたは T)、および AP-1に対するコンセンサス配列 には TGASTMA(Sは Gまたは C; Mは Aまたは C)が挙げられる。より具体的な例としては 、 NF- κ Bでは GGGATTTCCC (配列番号 2)及び GGGACTTTCC (配列番号 3)、 E2F では TTTCCCGC、 ATA- 3では AGATAG、 STAT- 1では TCCGGGAA、 STAT- 6では T TCCCAAGAA (配列番号 6)、 Etsでは CGGAA、および AP- 1では TGAGTCAが、それ ぞれのコンセンサス配列として挙げられる力 これに限定されない。
[0028] 上記式 Aにおいて、 mおよび nは 6以下の整数であることが好ましぐ特に 2〜6のい ずれかの整数であることが好ましい。また、上記式 Aにおいて、 nは 0、 1、 2または 3の いずれかの整数であることが好ましい。一般的に、デコイオリゴヌクレオチドの付加配 列は、 1〜: LOまたは 1〜20塩基であることが望ましいとされている力 本発明者らは、 3'側の付加配列は 1塩基以上でかつ短い方が転写因子結合活性が高ぐまた 5'側 の付加配列は長い方 (ただし好ましくは 2〜6の範囲内で)が転写因子結合活性が高 い傾向にあることを見出した。
[0029] 上記式 A中、コンセンサス配列の 5'側を Gで 3'側を Cで挟んだセンス鎖の付加配列 は、任意の配列であってよいが、例えば、 5'側の付加配列、すなわち、式 A中の N(m) は、 GA、 TGA、 TTGA、 CTTGA、 CCTTGA, ACTTGA、 AGTTGA、 ACCA、 AGCT、 AGTATC、 AGGC、 TTAAC、 TTTG、 GTCCCAC、好ましくは、 GA、 TGA、 TTGA、 CT TGAおよび CCTTGAからなる群より選択される 1つの配列である。 3'末端側の付加配 列、すなわち、式 A中の N(n)は、 AGGC、 TTAAC、 TTTG、 GTCCCAC、 GCゝ CCゝ G および C力 なる群より、独立して任意に選択されたものであることが好ましぐ特に C または CCが好ま 、。好ま 、付加配列の組み合わせの具体例としては、 5'側付加 配列と 3'側付カ卩配列と力 それぞれ (l)CCTTGAと CC、(2)GAと Cまたは CC、 (3)TGA と Cまたは CC、(4)TTGAと Cまたは CCである。特に、上記 (l)CCTTGAと CCの糸且合せ が好ましい。
[0030] したがって好まし!/、態様の例は、上述の式 Aにお!/、て、 N (m)が CCTTGAの配列か
らなるオリゴヌクレオチドであり、かつ/または上記コンセンサス配列の 3'末端に N(n)が CCの配列からなる、すなわち、 CCTTGAG-コンセンサス配列- CCC、 GAG-コンセン サス配列- CC、 GAG-コンセンサス配列- CCC、 TGAG-コンセンサス配列- CC、 TGA G-コンセンサス配列- CCC、 TTGAG-コンセンサス配列- CC、 TTGAG-コンセンサス 配列- CCC、の配列を含有するセンス鎖オリゴヌクレオチドとこれに相補的なアンチセ ンス鎖オリゴヌクレオチドからなる二本鎖オリゴヌクレオチドである。
本発明のオリゴヌクレオチドは、種々の修飾された塩基を 1つ以上含有していてもよ い。例えば、ホスホロチォエート、メチノレホスホエート、ホスホロジチォエート、ホスホロ アミデート、ボラノホスフェート、メトキシェチルホスホエート、モルホリノホスホロアミデ ード、ペプチド核酸 (peptide nucleic acid: PNA)、ロックド核酸 (locked nucleic acid: L NA)ジニトロフヱ -ル(DNP)化および O-メチル化などの修飾された塩基を含んで!/ヽ てもよい。場合によっては(例えば、 0-メチル化、 DNPィ匕など)は、リボヌクレオシドに 対する修飾であるが、本発明においては、オリゴヌクレオチド中の修飾するデォキシリ ボヌクレオシドを、リボヌクレオシドとしてオリゴヌクレオチドを合成し、該塩基を修飾す ることが可能である。中でも、ホスホロチォエートイ匕された塩基 (すなわち、ヌクレオシ ド間の結合がホスホロチォエート結合であること)を含有することがより好ましい。オリ ゴヌクレオチドを構成する塩基の全てが修飾されていてもよぐいずれか 1つ以上の 塩基が修飾されていてもよい。場合によっては、コンセンサス配列を構成する塩基は 修飾されていないことが望ましぐまた、コンセンサス配列を構成する塩基は修飾され ておらず、かつコンセンサス配列を構成する塩基以外の塩基は全て修飾されて ヽる カゝまたは付加配列を構成する塩基のみが全て修飾されて ヽることが望ま ヽ。本発 明の好ましい態様の 1つは、 5'末端の少なくとも 1つのヌクレオシド間結合および/ま たは 3'末端の少なくとも 1つのヌクレオシド間結合がホスホロチォエート結合である上 記オリゴヌクレオチドである。 5'末端と 3'末端とのそれぞれの少なくとも 1つのヌクレオ シド間結合がホスホロチォエート結合であることが好ましい。特に、 5'末端と 3'末端と のそれぞれの 2つのヌクレオシド間結合ずつがホスホロチォエート結合であること、す なわち、 5'および 3'の両末端それぞれにおいて、末端から 3塩基対内の結合がホスホ ロチォエート結合であることが好ましい。なお、ホスホロチォエート結合は、隣接する
ヌクレオチド間のリン酸エステル結合を構成するリン原子に結合している 2個の非架 橋酸素原子のうちの 1個をィォゥ原子に変換した結合である。任意の隣接するヌクレ ォチド間の結合を S化する手法自体は周知であり、例えば、 Marina A.ら、 The Journal of Biological Chemistry, 1995, Vol.270, Number 6, pp. 2620- 2627に記載された方 法により行なうことができ、ホスホロチォエートイ匕オリゴヌクレオチドは商業的にも合成 されている。
[0032] ホスホロチォエートイ匕等の修飾を施すと、オリゴヌクレオチドの細胞内での安定性は 向上するものの、細胞毒性が増大するものと考えられる。そこで、ホスホロチォエート 化する箇所を少なく留め、かつ細胞内での安定性を維持できることが望ましい。かか る目的のために、本発明者らは、ホスホロチォエートイ匕を様々な部位に含有する種々 のオリゴヌクレオチドを作成し、細胞内でデコイオリゴヌクレオチドまたはアンチセンス オリゴヌクレオチドとしての機能を発揮しうるに十分な細胞内での安定性を有し、かつ 十分な低減された細胞毒性を有するオリゴヌクレオチドの開発も試みた。そして、本 発明者らはさらに、ホスホロチォエート結合を特定のパターンで含有する二本鎖デコ ィオリゴヌクレオチド力 デコイオリゴヌクレオチドとして望まし 、活性を有して 、ること を見出した。したがって、本発明は、ホスホロチォエート結合を特定のパターンで含 有する二本鎖デコイオリゴヌクレオチドをも包含する。
[0033] 力かる特定のパターンの 1つとしては、その両末端それぞれの 2または 3塩基対内 に、少なくとも 1つのホスホロチォエート基を含むこと、好ましくは、両末端それぞれに おいて、少なくともいずれか一方の鎖の末端 3塩基内の結合がホスホロチォエート結 合であることである。他のパターンとしては、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方の 鎖の少なくとも 5'末端は、その末端 3塩基内の結合がホスホロチォエート結合である ことである。
[0034] さらにまた、他の上記特定のパターンは、両方の鎖のそれぞれに、連続する 2また は 3つのホスホロチォエート結合が繰り返されその繰り返しの間には、連続する 2〜5 つの連続するホスホジエステル結合が挟まれていること、を含む。このパターンの場 合、二本鎖の両末端にある 2または 3つの塩基対部分を除いて、両方の鎖ともに同じ 位置にホスホロチォエート結合を有することはないこと、すなわち、隣接する 2つ塩基
対にぉ 、て両方の鎖ともにホスホロチォエート結合で連結されて 、な 、ことが好まし ぐさらにまた、連続する 7塩基対以上、より望ましくは 6塩基対以上、さらに望ましくは 5塩基対以上、特に望ましくは 3または 4塩基対以上力 全くホスホロチォエート結合 を含まな!/、ことがな 、ことが好まし!/、。
[0035] より詳細には、(1)センス鎖およびアンチセンス鎖のいずれの鎖においても、少なくと も!ヽずれか一方の鎖の末端の 3塩基間の結合がホスホロチォエート結合である、 (2) センス鎖およびアンチセンス鎖のいずれの鎖においても、両末端それぞれ 3塩基対 内にはホスホロチォエート結合を含む力 それ以外には、両鎖ともホスホロチォエート 結合で連結されて 、る隣接する塩基対を含まな 、、(3)センス鎖およびアンチセンス 鎖の!/、ずれの鎖にお!、ても、ホスホロチォエート結合が 4つ以上連続して存在しな!ヽ 、(4)センス鎖およびアンチセンス鎖のいずれの鎖においても、ホスホロチォエート結 合力 2または 3つ連続して存在する、(5)センス鎖およびアンチセンス鎖両方におい て、 5'末端の 2塩基間の結合がホスホロチォエート結合である、(6)センス鎖およびァ ンチセンス鎖両方において、 5'末端の 3塩基間の結合がホスホロチォエート結合であ る、(7)センス鎖およびアンチセンス鎖両方において、 3'末端の 2塩基間の結合がホス ホロチォエート結合である、及び (8)センス鎖およびアンチセンス鎖両方において、 3' 末端の 3塩基間の結合がホスホロチォエート結合である、力も選ばれる少なくとも 1つ を満足するものが好ましい。
[0036] 本発明の第 2の局面において、本発明は、 下記式 C:
5'—N(x)—コンセンサス配列— N(y)— 3' (式 C)
(式 C中、 N(x)は 5'端の付加配列であって、 X個の Nが連結されていることを示し、 N(y) は 3'端の付加配列であって、 y個の Nが連結されていることを示し、全ての Nは互いに 独立してヌクレオチド A、 G、 T、 Cまたは Uを意味し、 xおよび yはそれぞれ独立して 1〜 20の整数を意味する)
で表される配列を有するセンス鎖オリゴヌクレオチドと、該オリゴヌクレオチドと相補的 なアンチセンス鎖オリゴヌクレオチドとがハイブリダィズしてなり、該アンチセンス鎖オリ ゴヌクレオチド内に、塩基間の結合がホスホロチォエート結合である連続する 4塩基 を含み、該連続する 4塩基がオリゴヌクレオチドの末端の塩基は含まな ヽニ本鎖オリ
ゴヌクレオチドを提供する。
[0037] 式 C中、コンセンサス配列及びその好ましい例は上記した式 A中のコンセンサス配 列と同様である。また、式 C中、 Xおよび yは 7以下の整数であることが好ましぐ特に X は 3〜7のいずれかの整数、 yは 1、 2、 3又は 4のいずれかの整数であることが好まし い。
[0038] 式 C中、前記連続する 4塩基は、前記アンチセンス鎖オリゴヌクレオチド内に 1つだ け含まれることが好ましぐ特に、前記連続する 4塩基は、前記二本鎖ヌクレオチド内 に 1つだけ含まれることが好ましい。
[0039] あるいはまた、ホスホロチォエート結合は 2または 3つ連続して存在し、両端のそれ ぞれ両末端それぞれ 3塩基対内の結合以外には、両鎖ともホスホロチォエート結合 で連結されている隣接する塩基対を含まないことも、本発明のホスホロチォエートイ匕 パターンに含まれる。また、力かるパターンにおいて、いずれか一方の鎖にホスホロ チォエート結合が偏ることなぐいずれの鎖にも、連続する 2または 3つのホスホロチ ォエート結合が存在することが好まし 、。
[0040] また、上記式 Cで表される配列が、上記式 Aで表される配列に包含されるものである ことが好ましい。換言すれば、上記式 Aで表される塩基配列を有するセンス鎖オリゴヌ クレオチドと、該オリゴヌクレオチドと相補的なアンチセンス鎖オリゴヌクレオチドとがハ イブリダィズしてなる二本鎖オリゴヌクレオチド力 上記式 Cで表される配列を有する センス鎖オリゴヌクレオチドと、該オリゴヌクレオチドと相補的なアンチセンス鎖オリゴヌ クレオチドとがノ、イブリダィズしてなり、該アンチセンス鎖オリゴヌクレオチド内に、塩 基間の結合がホスホロチォエート結合である連続する 4塩基を含み、該連続する 4塩 基がオリゴヌクレオチドの末端の塩基は含まない二本鎖オリゴヌクレオチドでもあるこ とが好ましい。この場合、式 A中の各構成要素 (m及び nを包含する)並びにその好ま し 、例及び範囲は、式 Aにつ!/、て上記したものと同じである。
[0041] 以上から、好ま U、本発明の NF- κ Bデコイオリゴヌクレオチド配列(上記本発明の 第 1及び第 2の局面のものを包含する)としては、
5'-C C TTGAAGG G A TTTCCCT C C- 3' (配列番号 7)とその相補鎖 5'- G G AGG GAAA T C CCTTCAA G G- 3'からなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
5し C*C*TTG*A*AGGGATTT*C*CCT C C- 3' (配列番号 7)とその相補鎖 5'- G G AG
GGAAA T C CCTTC G G- 3'からなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
5し C C TTGAAGGGATTTCCCT C C- 3' (配列番号 7)とその相補鎖 5し G*G*AGGG
AAA T C CCTTC G G- 3'からなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
5し C C TTG A AGGGATTTCCCT C C- 3' (配列番号 7)とその相補鎖 5し G*G*AGG
GAAA T C CCTTC G G- 3'からなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
5'-C C TTGAAGGGATTT C CCT C C- 3' (配列番号 7)とその相補鎖 5'- G G AGG
GAAA T C CCTTC G G- 3'からなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
5し CCTTG A AGGGATTT C CCTCC- 3' (配列番号 7)とその相補鎖 5'- GGAGGGA
* * * *
AA T C CCTTCGG- 3'からなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
* * *
5 -CCTTG A AGGGATTT C CCT C C— 3' (配列番号 7)とその相補鎖 5'— GGAGGG AAA T C CCTTC G G- 3'からなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
5し C C TTG A AGGGATTT C CCTCC- 3' (配列番号 7)とその相補鎖 5し G*G*AGG GAAA T C CCTTCGG- 3'からなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
* * *
などが挙げられる (*印はホスホロチォエート結合部位である(以下同じ))。これら 8種 の二本鎖オリゴヌクレオチドにつ 、ては、全塩基がホスホロチォエートイ匕された同じ 塩基配列からなるデコイと比較して、活性が向上していることが分力 ている。後述の 実施例参照のこと。
さらにまた、他の好まし 、態様の NF- κ Bデコイオリゴヌクレオチド配列としては、 5'- C C TTGAGGGGATTTCCCC C C- 3' (配列番号 4 :一部にホスホロチォエート化を
* * * *
含む)とその相補鎖 5'- G G GGGGAAATCCCCTCAA G G- 3'とからなる二本鎖オリゴ
* * * *
ヌクレ才チド、
5'-C C TTG A GGGGATTT C CCCCC- 3' (配列番号 4 :一部にホスホロチォエート 化を含む)とその相補鎖 5'-G G GGGGAAA T C CCCTCAAGG-3'とからなる二本鎖 オリゴヌクレオチド、
5'-G A GGGGATTT*C*CCC- 3' (配列番号 8)とその相補鎖 5'- GGGGAAA T C CCC TC- 3'とからなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
5'-G A GGGGATTT C CCC- 3' (配列番号 8)とその相補鎖 5'- G GGGAAA T C CC
CTC- 3'と力 なる二本鎖オリゴヌクレオチド、
5'- G*A*GGGGATTT*C*CCC- 3' (配列番号 8)とその相補鎖 5'- GG*G*GAAA T C CC CTC- 3'と力 なる二本鎖オリゴヌクレオチド、
5'-T T G A GGGGATTT C CCC- 3' (配列番号 9)とその相補鎖 5'- G G GGAAA T C CCCTCAA- 3'とからなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
5'-T TT G A GGGGATTT C CCC- 3'とその相補鎖(配列番号 10) 5'- G GGGAAA T C CCCTCAA- 3'とからなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
5 -TTG A GGGGATTT C CCC- 3' (配列番号 9)とその相補鎖 5 '-GGGGAAA T C C CCTCAA- 3'と力もなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
などが挙げられる(いずれも 5'末端力も記載。 *印はホスホロチォエート結合した部位 である)。
[0043] 他には、 5'-C C TTGAAGGGATTTCCCT C C- 3' (配列番号 7)とその相補鎖 5'- G
* * * *
G AGGGAAATCCCT T C AA G G- 3'とからなる二本鎖オリゴヌクレオチド、 5'-C C TTGAAGGGATTTCCCT C C- 3' (配列番号 7)とその相補鎖 5'- G G AGGG A A ATCCCTTCAA G G- 3'とからなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
* * * *
5'-C C TTGAAGGGACTTTCCT C C- 3' (配列番号 11)とその相補鎖 5'- G G AGG
AAAGTCCC T T CAA G G- 3'とからなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
5'-C C TTGAAGGGACTTTCCT C C- 3' (配列番号 11)とその相補鎖 5'- G G AGG
AAAG T C CCTTCAA G G- 3'とからなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
5'-C C TTGAAGGGACTTTCCT C C- 3' (配列番号 11)とその相補鎖 5'- G G AGG
AA A G TCCCTTCAA G G- 3'とからなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
などが挙げられる。
[0044] 本発明のオリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知の種々の方法により作製するこ とができる。化学合成法でもよぐ生化学的合成法でもよい。例えば、アミダイド重合 法などにより化学合成することもできる。
[0045] ホスホロチォエートイ匕されたオリゴヌクレオチドもまた、公知の方法で作製することが できる。アミダイド重合により連結した末端のヌクレオチドを、脱トリチル反応と含硫ィ匕 合物による酸ィ匕反応に供することによりホスホロチォエートイ匕することができる。
[0046] 本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、転写因子のデコイとして用いることができ、 すなわち、該転写因子の阻害剤として用いることができる。なお、言うまでもなぐここ で「転写因子」は、上記式 A又は式 C中のコンセンサス配列に結合する転写因子であ る。
[0047] 上記転写因子阻害剤は、周知の通り、その転写因子の阻害によりもたらされる薬効 を発揮するので、医薬として用いることができる。本発明のオリゴヌクレオチドを有効 成分として含有する医薬組成物に関する。本発明のオリゴヌクレオチドは、特定の転 写因子に起因する遺伝子発現または特定の遺伝子発現を抑制することから、これら の遺伝子発現が関与する疾患の予防および/または治療のための医薬糸且成物として 有効である。
[0048] 具体的には、該医薬組成物を、虚血性疾患、アレルギー性疾患、炎症性疾患、自 己免疫疾患、ガンの転移,浸潤、悪液質、血管再狭窄、急性冠症候群、脳虚血、心 筋梗塞、虚血性疾患の再灌流障害、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、接触性皮膚炎 、ケロイド、褥創、潰瘍性大腸炎、クローン病、腎症、糸球体硬化症、アルブミン尿症 、腎炎、腎不全、慢性関節リウマチ、変形性関節症、喘息、または慢性閉塞性肺疾 患 (COPD)、嚢胞性線維症 (CF)、 PTCA (経皮的冠動脈形成術)、 PTA (経皮的血管 形成術)、ノ ィパス手術、または臓器移植もしくは臓器の手術後におこる血管の再狭 窄 (人工血管、カテーテル、ステントの使用または静脈移植に起因するもの、および 閉塞性動脈硬化症、動脈瘤、大動脈乖離、急性冠症候群、脳虚血、マルファン症候 群、プラークラブチヤ一に対する外科的治療に起因するものを含む)の、予防、改善 および/または治療剤として使用することができる。目的に応じて適切な標的遺伝子 を選択することは、当業者であれば容易に達成しうる。
[0049] 例えば、コンセンサス配列に NF- κ Bの結合配列を含み、 NF- κ Βのデコイオリゴヌ クレオチドとして機能する二本鎖オリゴヌクレオチドの場合、虚血性疾患、アレルギー 性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患および腫瘍をはじめとするあらゆる NF- κ Βに起 因する疾患の、予防、改善および/または治療剤として使用することができる。 NF- K Βの活性を低減させることにより、これらの疾患の治癒、および/または進行の遅延が 得られることは、種々の文献により、当業者には既に公知である。したがって、本発明
のオリゴヌクレオチドは、疾患部位の細胞に到達させることにより、デコイオリゴヌタレ ォチドとして作用して NF- κ Bと結合し、 NF- κ Bの活性を阻害することにより NF- κ Β が誘発する遺伝子発現を阻害する。
[0050] かかる医薬組成物は、上記したとおり、本発明のオリゴヌクレオチドの他に、安定ィ匕 剤、希釈剤などの他の添加剤を含んでよい。さらにまた、薬学的に許容されうるキヤリ ァーを含んでもよい。力かるキャリアーの例としては、生理的食塩水および生理的リン 酸緩衝液が挙げられる。
[0051] 力かる医薬組成物は、経口投与、非経口投与、局所投与、気道内投与、経皮投与
(塗布など)その他の外用の形で投与されるため、溶液、懸濁液、リボソーム製剤、力 プセル剤、錠剤、軟膏、クリーム剤、ローション、乳液、点鼻剤、スプレー剤、ネブライ ザ一剤、レスビレータ用剤、または粉体投与製剤等、投与形態に応じた剤形に製剤 されうる。
[0052] 特に、遺伝子導入法に適した形態 (例えば、センダイウィルスをはじめとするウィル ス由来のリボソーム製剤、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターなどが挙げ られるがこれらに限定はされない)に製剤されることが好ましい。当業者であれば、適 切な製剤方法を容易に選択可能である。
[0053] 1つの好ましい形態である、センダイウィルスエンベロープベクターに封入した形態 に製剤する場合には、例えば、特開 2001-286282号公報中の実施例 8の記載を参考 に、製剤するとよい。
[0054] 本発明の医薬組成物は、特に限定されないが、非経口的に投与することが好まし い。非経口投与としては、例えば、静脈内、動脈内、気道内、経皮、皮下、真皮内、 筋肉内または腹腔内の投与が挙げられる。
[0055] 本発明の医薬組成物の 1回の投与量および投与回数は、投与の目的により、さら に患者の年齢および体重、症状および疾患の重篤度などの種々の条件に応じて適 宜選択および変更することが可能である。投与回数および投与頻度、約 2〜4週間程 度の間隔で、数回、好ましくは約 1〜3回程度投与するのが好ましい。疾患の状態を モニターしながら投与回数を決定することもできる。通常、オリゴヌクレオチド量として 、成人 1日当たり 0.1〜10000nmol、好ましくは 1〜1000 nmol、より好ましくは 10〜100
nmolを投与することができる。
[0056] 以下の実施例において、本発明を例証するが、これら実施例の記載に限定される わけではない。
実施例
[0057] 1. NF- κ Bデコイオリゴヌクレオチドを用いた転写因子結合活性試験
(1)オリゴヌクレオチドの調製
(0シリーズ Iオリゴヌクレオチド
下記に示すとおり、 SEQ- A、 SEQ- B、 SEQ- E〜J、 SEQ- Xの 9種のオリゴヌクレオチド を作製した。さらに、 SEQ-Xと同じ配列を有しているが全てのヌクレオチドがホスホロ チォエート化されて 、る完全 S化オリゴヌクレオチド SEQ- x、および SEQ- Xと同じ配列 を有して!/、るが両末端の 2塩基ずつがホスホロチォエートイ匕されて 、る部分 S化オリゴ ヌクレオチド SEQ-X-PS、ならびに、 SEQ-Iと同じ配列を有しているが両末端の 2塩基 ずつがホスホロチォエート化されている部分 Sィ匕オリゴヌクレオチド SEQ-I-PSの 3種の 、ホスホロチォエート基を含有するオリゴヌクレオチドを作製した。
[0058] SEQ- - A AGTTGAGGGGATTTCCCCAGGC (配列番号 12)
SEQ- -B CCTTGAAGGGACTTTCCTCC (配列番号 11)
SEQ- -E AGTATCGGGGATTTCCCCTTAAC (配列番号 13)
SEQ- -F AGCTGGGGATTTCCCCTTTG (配列番号 14)
SEQ- - G ACCAGGGGATTTCCCCGTCCCAC (配列番号 15)
SEQ- -H AGTTGAGGGGATTTCCCCGC (配列番号 16)
SEQ- -I CCTTGAGGGGATTTCCCCCC (配列番号 4)
SEQ- -J ACTTGAAGGGATTTCCCTCC (配列番号 17)
SEQ- -x CCTTGAAGGGATTTCCCTCC (配列番号 7)
SEQ- -χ C C T T G A A G G G A T T T C C C T C C (配列番号 7の全塩基 をホスホロチォエート化したもの)
SEQ-X-PS C C TTGAAGGGATTTCCCT C C (配列番号 7の両端 2塩基をホ
* * * *
スホロチォエート化したもの)
SEQ-I-PS C C TTGAGGGGATTTCCCC C C (配列番号 4の両端 2塩基をホ
* * * *
スホロチォエート化したもの)
なお、 *印はホスホロチォエート結合部位である。これらの配列を本発明の式 Aに当て はめると下記表 1のとおりである。
[表 1]
[0060] それぞれのオリゴヌクレオチドは、常法のアミダイト重合法により作製した (高分子化 学と核酸の機能デザイン (高分子学会 Zバイオ'高分子研究会編など参考のこと)。 非修飾オリゴヌクレオチドは、カラムに固定されたヌクレオチドにアミダイト(目的とする ヌクレオチド)を十分量添加し重合反応させた。反応後、脱トリチル反応およびヨウ素 で酸化反応させ,次のアミダイトを添加させ重合反応させた。この方法の繰り返しを行 い、オリゴヌクレオチドを合成した。ホスホロチォエート化は、ホスホロチォエー M匕す るアミダイトの重合反応の後、脱トリチル反応および硫黄を含む化学物質により酸ィ匕 反応させた後、次のアミダイトを添加して重合反応に供した。
[0061] さらに、これらそれぞれに完全に相補的な相補鎖オリゴヌクレオチドを作製し、それ ぞれを常法に従って、ハイブリダィズさせて二本鎖オリゴヌクレオチドを調製した。ここ で、これら相補鎖も、同様のパターンでホスホロチォエート基を含有するように作製し た。すなわち、二本鎖オリゴヌクレオチド中の相補的塩基対をなす一方の塩基がホス ホロチォエートイ匕されて 、る場合は、該塩基対のもう一方の塩基もホスホロチォエート 化されているように作製した。
[0062] GOシリーズ πオリゴヌクレオチド
上記方法を用いて、 SEQ-xのホスホロチォエートイ匕部位の異なるシリーズ Πのオリゴ ヌクレオチドを合成した。シリーズ IIのオリゴヌクレオチドは、互いに相補的な二本鎖か ら成る二本鎖オリゴヌクレオチドで、相補鎖間でホスホロチォエートイ匕塩基の位置が 異なって!/、る。各オリゴヌクレオチドのホスホロチォエートイ匕部位は以下に示す配列 のとおりである:
[0063] SEQ-1 5'- C C TTGAAGG G A TTTCCCT C C -3' (配列番号 7 :—部にホスホロ チォエート結合を含む)と 5し G G AGGGAAA T C CCTTCAA G G -3' (—部にホス ホロチォエート結合を含む)からなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
SEQ-2 5'- C C TTG A AGGGATTT C CCT C C - 3' (配列番号 7:一部にホスホ ロチォエート結合を含む)と 5'- G G AGGGAAA T C CCTTC G G -3' (—部にホスホ ロチォエート結合を含む)からなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
SEQ-3 5'- C C TTGAAGGGATTTCCCT C C - 3'
* * * * (配列番号 7:一部にホスホロチ ォエート結合を含む)と 5'— G G AGGGAAA T C CCTTC G G—3' (—部にホスホロチ ォエート結合を含む)力 なる二本鎖オリゴヌクレオチド、
SEQ-4 5'- C C TTG A AGGGATTTCCCT C C - 3' (配列番号 7 :—部にホスホロ チォエート結合を含む)と 5し G G AGGGAAA T C CCTTC G G -3' (—部にホスホロ チォエート結合を含む)からなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
SEQ-5 5'- C*C*TTGAAGGGATTT*C*CCT C C - 3' (配列番号 7:一部にホスホロ チォエート結合を含む)と 5し G G AGGGAAA T C CCTTC G G -3' (—部にホスホロ チォエート結合を含む)からなる二本鎖オリゴヌクレオチド、
SEQ-6 5'- CCTTG A AGGGATTT C CCTCC -3' (配列番号 7 :—部にホスホロチ
* * * *
ォエート結合を含む)と 5し GGAGGGAAA T C CCTTCGG -3' (—部にホスホロチォ
* * *
エート結合を含む)力 なる二本鎖オリゴヌクレオチド、
SEQ-7 5'- CCTTG A AGGGATTT C CCT C C - 3' (配列番号 7 :—部にホスホロ チォエート結合を含む)と 5し GGAGGGAAA T C*CCTTC G G -3' (—部にホスホロ チォエート結合を含む)からなる二本鎖オリゴヌクレオチド。
SEQ-8 5'- C C TTG A AGGGATTT C CCTCC -3' (配列番号 7 :—部にホスホロ
チォエート結合を含む)と 5し G*G*AGGGAAA*T*C*CCTTCGG -3' (—部にホスホロ チォエート結合を含む)からなる二本鎖オリゴヌクレオチド。
なお、 *印はホスホロチォエート結合部位である。
それぞれの鎖を合成後、二本鎖オリゴヌクレオチドを形成させて結合活性試験に用 いた。
[0064] (2)結合活性試験
結合活性試験は、 TransAM NF- κ Β ρ65 Transcription Factor Assay Kit (ACTIVE MOTIF社)を用いて実施した。
[0065] コンプリートリシスバッファー (Complete Lysis Buffer),コンプリート結合バッファー (C omplete Binding Buffer) , 1 Xゥォッシュバッファー (1 X Wash Buffer)および 1 X抗体結 合バッファー (1 X Ant¾ody Binding Buffer)を調製する。次にコンプリート結合バッファ 一で各オリゴヌクレオチドを 0.00167〜167nmol/Lの濃度内で 4〜7点調製した(NF- κ Bデコイオリゴヌクレオチド希釈液)。 Jurkat核抽出物(Jurkat nuclear extract)を 125 μ g protein/mLになるようにコンプリートリシスバッファーで希釈した。
[0066] 予め NF- κ B結合核酸が固相化されて!/、るキット付属のプレートのゥエルに、上記( 1)で調製した NF- κ Bデコイオリゴヌクレオチド希釈液を 30 Lずつ添加する。ブラン クおよびコントロールのゥエルには、コンプリート結合バッファーを 30 L添カ卩した。次 に、各ゥヱルに上記の Jurkat核抽出物希釈液を 20 Lずつ添カ卩し、ブランクのゥエル にはコンプリートリシスバッファーを 20 Lずつ添加した。室温にて 1時間振とうした後 、 I Xゥォッシュバッファー 200 Lで 3回洗浄し、 I X抗体結合バッファーで 1000倍希 釈したゥサギ抗 NF κ B p65抗体を 100 Lずつ添カ卩し、室温で 1時間振とうした。その 後 1 Xゥォッシュバッファー 200 Lで 3回洗浄し、 1 X抗体結合バッファーで 1000倍希 釈した HRP標識抗ゥサギ IgG抗体を 100 /z Lずつ添加し、室温で 1時間振とうした。そ の後、 1 Xゥォッシュバッファー 200 μ Lで 4回洗浄し、発色溶液 (Developing solution) を 100 Lずつ添加して、暗室にて 5分間発色反応させた。反応後、反応停止液 (Sto p Solution)を 100 Lずつ添カ卩して発色反応を停止させた。各 Wallac 1420 ARVOsx マルチラベルカウンタ(株式会社パーキンエルマ一)にて 450nmと 650nmとの吸光度 を測定 (それぞれの測定値カゝらブランクのゥエルの対応する測定値を引く)し、 450nm/
650nmの吸光度の比を算出した。コントロールのゥエルの該吸光度の比を 100とした 場合の各 NF- κ Bデコイオリゴヌクレオチドの各濃度における吸光度のパーセンテー ジを算出し、その平均値をプロットして得られた近似曲線から、各デコイオリゴヌタレ ォチドの IC を算出した。
50
[0067] 各デコイオリゴヌクレオチドの IC と、デコイオリゴヌクレオチド SEQ-xの IC に対する
50 50 各デコイオリゴヌクレオチドの IC とを下記表 2および表 3に示す。
50
[0068] [表 2]
シリーズ Iオリゴヌクレオチドの結合活性試験の結果
[0069] 上記結果より、シリーズ Iの各デコイオリゴヌクレオチドの NF- κ Bに対する結合活性 は、
SEQ-I>SEQ-H>SEQ-A>SEQ-G=SEQ-E>SEQ-F>SEQ-x>SEQ-B>SEQ-J=SEQ-X の順に高いことが分かった。特に、 SEQ-Iは、その が SEQ-xに比べて 10倍以上小
50
さぐ最も結合活性が高力つた。
[0070] SEQ- A、 SEQ-E, SEQ-F, SEQ- Gおよび SEQ- Hは、 SEQ- xより結合活性が高ぐこ のことより、コンセンサス配列の 5'末端側に G力 3'末端側に Cが隣接する場合に結合 活性が向上することが観察された。すなわち、コンセンサス配列を、その 5'末端側の G とその 3'末端側の Cとで挟むことにより、または、コンセンサス配列の 5'末端の塩基と 同一の塩基 (この場合は G)がその 5'末端に隣接し、かつコンセンサス配列の 3'末端の 塩基と同一の塩基 (この場合は C)がその 3'末端に隣接することにより、結合活性が向 上することが推察される。
[0071] また、最も結合活性が高かった SEQ-Iの 5'および 3'末端の 2塩基をホスホロチォェ ート化した SEQ-I-PSにおいても、その は SEQ-xに比べて 3倍以上小さぐ SEQ-x
50
より顕著に結合活性が向上していた。力かる SEQ-ト PSは、ホスホロチォエートイ匕によ る修飾を施すことにより、細胞内の安定性も向上していることが考えられるために、細 胞内での安定性と高い結合活性を併せ持つ NF- κ Bデコイオリゴヌクレオチド分子と して、特に有用であると考えられる。
[0072] [表 3]
シリーズ I Iオリ ゴヌクレオチドの結合活性試験の結果
[0073] 上記のとおり、シリーズ IIのオリゴヌクレオチドの全て力 SEQ-xより結合活性が向上 していた。
[0074] この結果から、末端の少なくともいずれか一方の鎖の 2塩基がホスホロチォエートさ れているデコイオリゴヌクレオチド、および、ホスホロチォエートイ匕された塩基は 2また は 3塩基連続して存在し、両端のそれぞれ 2塩基対を除く各相補的塩基対にぉ ヽて
、塩基対を形成する塩基の両方ともがホスホロチォエートイ匕されていない、デコイオリ ゴヌクレオチドは、全塩基がホスホロチォエートイ匕されたデコイオリゴヌクレオチドに比 ベて、転写因子結合活性が高いことが示唆される。
[0075] (m)シリーズ IIIオリゴヌクレオチド
さらなる検討のために、下記表 4に示す配列を有するデコイオリゴヌクレオチドを作 製し、結合活性を調べた。なお、各オリゴヌクレオチドについて記載されている上下 2 段の塩基配列のうち、上段はセンス鎖の塩基配列、下段はその相補鎖であるアンチ センス鎖を示す。下段のアンチセンス鎖は、上段のセンス鎖と相補的であることが明 瞭となるように、 3'末端が左側に来るように記載してある。
[0076] [表 4-1]
[0077] [表 4-2]
配列名 配列
GGGGATTTCCCCCC (配列番号 3 3 )
SEQ-27
CCCCTAAAGGGG G
AGGGGATTTCCCCCC (配列番号 3 4 )
SEQ--2S
TCCCCTAAAGGGG G
(配歹 [j番号 3 5 )
TGAGGGGATTTCCCCCC (配列番号 3 β }
SEQ-30
AGTCCCCTAAAGGGGGG
TTGAGGGGATTTCCCCCC 列番号 3 7 )
SEQ-3 I
AA TCCCCTAAAGGGGGG
CTTGAGGGGATTTCCCCCC (配列番号 3 8 )
SKQ-32
GAACTCCCCTAAAGGGGGG
( IB歹 8 )
SEQ-33
C
G*A*GGG G ATTT*C*CCC (配列番号 8 )
C ΐ CCC*C*T*AAAGGG*G
G*A*GGG G A TTT*C*C CC (配列番号 8 )
SEQ-35
T*TG*A*GGG G A TTT*C*CCC (配列番号 9 )
SEQ --36
ίΧΐ ! ΐ
T*T*G*A*GGG G A TTT*C*C C € (配列番号 9 )
SBQ-37
A A C ΐ CCC*C*T*AAA G G*G*G
TTG*A*GGG G A TTT*C*CCC (配列番哥 9 )
SFQ-38
AAC T CCC*C*T*AAA G GGG
CCTTGAGGGGATTTCCCYrC (配歹幡号 4 )
£?f?/lACTCCCCTAAAGGGGGS
CCrrGAGGGGATTTCCCCCi (配列番号 4 )
SEQ-40
(? SAAa/CCCCTAAAGGGB
C-C-TTG-A-GGGG Λ T TT OCCC C C (配列番号 4 )
SE I
G G AAC V CCCC-τ-Λ-ΛΛ G GGG-G-G
C-C-T-T-G-A-G-GGGATTTCCC-C-C-C (配列番号 4 )
CCTTGAGGGGATTTCCCC^; (配列番号 4 )
SEQ-43
AACTCCCCTAAAGGGGGG
C*OTT Q A AGGGATTTCCCT*C*C (配列番号 7 )
SEQ-44
G*G*AA*C*T*TCCCTAAAGGGi *0*G
C*C*TTGAAGGGAT T T CCCT*C*C (配列番号 7 )
SEQ-45
G*G*AACTTCCCTA*A*A*GGGA*G*G
C*C*'n'GAAGGGACTITCCT*C*C (配列番号 .1 丄)
SEQ-46
配列名 配列
C*C*TTG A A GGGACTTTCCT*C*C (配列番号 1 1 )
SEQ-47
G* G*AA C*T*T *CCCT GAAA GGA*G*G
C*C*TTGAAGG G A CTTTCCT*C*C (配列番号 1 1 )
SEQ-48
G* G*AA CTTCC *C*T* GAAA GGA*G*G
C*C*TTGAAGGGA C T TTCCT*C*C (配列番号 1 1 )
SEQ-49
G* G*AA CTTCC CT*G* A*AA GGA*G*G
AG TTGA AGGGA TTTCC CTAG GC 〔配列番号 3 9 )
SEQ-K
TCAACTTCCCTAAAGGGATCCG
CCTTGAGGGGACTTTCCCCC 〔配列番号 4 0 )
SEQ-L
GGAACTCCCCTGAAAGGGGG
AC CAAG GGATT TCCCT GTCC CAC (配列番号 4 1 )
SEQ-M
TGGTTCCCTAAAGGGACAGGGTG
*: S化修飾,下線: 2- Ome,太字: LNA,斜体: RNA, -: dA Ome
[0079] まず、コンセンサス配列の 5'側を G、 3'側を Cでそれぞれ挟むことによる結合活性へ の効果を検討するために、 SEQ- A、 SEQ-K, SEQ- B、 SEQ-L, SEQ- G、 SEQ- Mのデ コィオリゴヌクレオチドについての結合活性を、上記 SEQ-xの IC に対する相対 IC と
50 50 して下記表 5に示す。
[0080] [表 5]
[0081] 上記表 5に示すように、 SEQ-Aと SEQ- K、 SEQ- Lと SEQ- B、 SEQ— Gと SEQ- Μとを それぞれ比較した結果、やはりコンセンサス配列の 5'側を G、 3'側を Cでそれぞれ挟 むことにより、結合活性が向上することがわ力つた。
[0082] また、修飾基の種類による結合活性への影響については、下記表、 SEQ9〜12の 欄に示すように、 SEQ— 2- Ome、 LNA、 dA Omeのいずれの修飾でも結合活性は低か つた。ホスホロチォエートイ匕 (S化修飾)のみが結合活性を向上させ得た。したがって、 ホスホロチォエートイ匕のみについて、位置および数と結合活性との関係について検
討した。
[0083] [表 6]
[0084] SEQ-9は SEQ-Iの配列に SEQ-8の Sィ匕修飾部位を組み合わせた部分 Sィ匕修飾オリ ゴヌクレオチドであり、 SEQ- 1および SEQ- 8の結合活性は SEQ- Xより高かった。 SEQ- 1 の配列に SEQ-8の Sィ匕修飾部位を組み合わせた SEQ-9は SEQ-xの結合活性より約 5 0倍高かった。 SEQ-X- PSおよび SEQ-46は、両鎖の両端力も連続する 2ケ所に Sィ匕修 飾が入っている。 SEQ-44、 SEQ-45, SEQ-47, SEQ- 48および SEQ- 49は両鎖の両端 力 連続する 2ケ所およびそのほかの部位に連続する 3ケ所の Sィ匕修飾が入っている。 SEQ- 48および SEQ- 49は、 SEQ- X- PSの S化修飾部位に加えて、コンセンサス配列内 の連続する 3ケ所に S化修飾が入って 、る。 SEQ-47の結合活性は SEQ-46と比較して 約 2.5倍以上高く, SEQ- 48および SEQ- 49の結合活性は SEQ- 46と比較して約 8.5倍 以上高かった。これらの結果から、両鎖の両端力 連続する 2ケ所に Sィ匕修飾が入つ て ヽること、および両末端の 2箇所以外に連続する 3ケ所に S化修飾が存在することが 、結合活性の向上をもたらすことがわかる。
[0085] SEQ- X- PSと SEQ- 44および SEQ- 45の比活性についてさらに詳細に検討したところ
、下記表 7のような結果となった。やはり、 SEQ- 44および SEQ45とも、 SEQ-X- PSに比 ベて活¾が上昇していた。
[0086] [表 7]
[0087] ついで、デコイオリゴヌクレオチドの鎖長について検討した結果を、 SEQ-Iに対する 比活性として下記表 8に示す。
[0088] [表 8]
SEQ-15, SEQ-16, SEQ-17, SEQ- 18, SEQ- 19, SEQ-23, SEQ-24, SEQ-25,およ び SEQ- 26の結合活性は SEQ-Iと比較して高ぐセンス鎖の 3'末端側の付加配列は鎖 長が短いほど結合活性は高く, 5'末端側の付加配列は鎖長が長いほど結合活性は
高!、ことがわかった。これらの結果力も少なくとも 3'末端側の付加配列は 1塩基または 2塩基, 5'末端側の付加配列は 3塩基以上あることが、結合活性の向上をもたらすと 考えられる。
[0090] さらにまた、 14塩基長または 16塩基長のオリゴヌクレオチドを部分的に Sィ匕したデコ ィオリゴヌクレオチド、 SEQ-33, SEQ-34, SEQ-35, SEQ- 36, SEQ- 37および SEQ- 38 の結合活性は SEQ-xと比較して約 50倍〜約 100倍高力つた。下記表 9に本検討で使 用した配列および SEQ-xに対する相対 IC 値を記載した。
50
[0091] [表 9]
[0092] し力しながら、上述(表 2)のとおり、 SEQ-8の結合活性は SEQ-6と比較して約 10倍 高かった。これらの結果から、 20塩基のオリゴヌクレオチドにおいては両端末端側に 連続して 2ケ所の S化修飾を入れる必要はあるが、 14塩基および 16塩基のオリゴヌタレ ォチドにお ヽては必ずしも両末端側に連続して Sィ匕修飾を 2ケ所入れる必要は無ぐ S EQ-6の Sィ匕修飾部位のみで結合活性は向上すると考えられる。
[0093] 3.細胞内 NF- κ Β結合試験
(1)細胞
培養ディッシュ内で約 80%コンフルェントに増殖した RAW264.7細胞を、ディッシュ 力 培地を除去後ダルベッコ改変 PBS(D-PBS)で洗浄し、適量の 10%FBS含有 RPMI1 640培地を添カ卩してスクレーパーにて細胞をディッシュ力 剥離して回収した。細胞を 計数後、 6ゥエルプレート(コ一-ング)に 6.0 X 105cells/well/2mLの細胞密度で播種 し、 5%CO下インキュベータ内で 37°Cにて 24時間培養する。
2
[0094] (2)実験群構成
実験群は以下のとおりとした。
1群. NF- κ B ss 2.0 μ mol/L処置および無刺激(n=3)
2群. NF- κ B ss 2.0 μ mol/L処置および LPS刺激(n=3)
3群. SEQ- x 0.1 μ mol/L処置および LPS刺激(n=3)
4群. SEQ- x 0.3 μ mol/L処置および LPS刺激(η=3)
5群. SEQ-卜 PS 0.1 μ mol/L処置および LPS刺激(η=3)
6群. SEQ-卜 PS 0.3 mol/L処置および LPS刺激(n=3)
[0095] (3) NF- κ Βデコイオリゴヌクレオチドおよび NF- κ B ssの添カロ
上記のとおり調製した細胞を、 D-PBSで洗浄して、各ゥエルに RPMI1640培地を lmL 添ノ J卩する。 DMRIE—C(1.2—dimyristyioxypropyl— 3— dimethyl— hydroxy ethyl ammonium bromide) 2mg/mLを、 RPMI1640で O. l lmg/mLに希釈した(DMRIE- C希釈液)。 SEQ- xおよび SEQ-卜 PSを、 RPMI1640で 0.2および 0.6 μ mol/Lになるように希釈した(オリゴ ヌクレオチド希釈液)。 NF- κ B ss (配列番号 7の一本鎖)を RPMI1640で 0.6 μ mol/L になるように希釈した(NF- κ B ss希釈液)。
[0096] DMRIE- C希釈液と各オリゴヌクレオチド希釈液または NF- κ B ss希釈液を等量で穏 やかに混合し,室温で 30分間静置した (混合液)。各 wellに該混合液 1000 /z Lを添カロ し、 COインキュベータ内で 4時間静置した。 4時間後、 LPSを終濃度 lOOng/mLになる
2
ように添加し、 COインキュベータ内で 1時間静置した。反応終了後、ディッシュ内の
2
細胞を、氷冷 PBSにて 2回洗浄後、スクレーパーで回収した。
[0097] (4)核抽出物の調製
1 X低張バッファー (1 X hypotonic buffer)およびコンプリートリシスバッファー (Comple te Lysis Buffer)を用意し、回収した細胞を 1 X低張バッファー 100 L中に懸濁した。 該懸濁液に、界面活性剤溶液 (Detergen S /z Lをカ卩え、 Vortexにて 10秒間混合後、 4 °Cで 14000 X gにて 30秒間遠心した。上清を除去後、ペレットにコンプリートリシスバッ ファー 20 μ Lを添加し、 4°Cで 30分間静置した。その後、 Vortexにて 30秒間混合し、 4 °Cで 14000 X gにて 10分間遠心した。上清を遠心管に回収し、 -80°Cで保存した。な お、全ての手順は、可能な限り 4°Cまたは氷冷下にて行う。
[0098] (5) NF- κ B p65 ELISA
上記核抽出液は、使用直前に氷冷下にて溶解させる。核抽出液は、コンプリートリ
シスバッファーで 5倍希釈する。 NF- κ B p65 ELISA kitに含まれている 96ゥエルプレ ートにコンプリート結合バッファー 30 Lと、上記希釈した各抽出サンプル液 20 しと を添カ卩し、室温にて 1時間振とうした後、 I Xゥォッシュバッファー 200 /z Lで 3回洗浄し 、 1 X抗体結合バッファーで 1000倍希釈したゥサギ抗 NF κ B p65抗体を 100 /z Lずつ 添加し、室温で 1時間振とうした。その後 I Xゥォッシュバッファー 200 Lで 3回洗浄し 、 1 X抗体結合バッファーで 1000倍希釈した HRP標識抗ゥサギ IgG抗体を 100 しず つ添加し、室温で 1時間振とうした。その後、 I Xゥォッシュバッファー 200 Lで 4回洗 浄し、発色溶液 (Developing solution)を 100 Lずつ添カ卩して、暗室にて 5分間発色反 応させた。反応後、反応停止液 (Stop Solution)を 100 Lずつ添加して発色反応を停 止させた。各 Wallac 1420 ARVOsxマルチラベルカウンタ(株式会社パーキンエルマ 一)にて 450nmと 650nmとの吸光度を測定 (それぞれの測定値からブランクのゥエルの 対応する測定値を引く)し、 450nm/650nmの吸光度の比を算出した。
[0099] 演算には、 Microsoft (登録商標) Excel 2002 (Microsoft)を使用した。平均値は Excel の関数 AVERAGE,標準偏差 (S.D.)は関数 STDEVを用いて算出し、 3例の平均値士 標準偏差として、下記表 10に示し、グラフを図 1に示した。
[0100] [表 10]
SEQ-xでは 0.1 μ mol/Lで対照である NF- κ B ss-LPS刺激群とほぼ同程度であった 力 0.3 μ mol/Lで NF- κ Βタンパク質に対して有意な拮抗作用を示した (抑制率:約 8 5%)。また、 SEQ-ト PSは 0.1 μ mol/Lおよび 0.3 μ mol/Lで NF- κ Βタンパク質に対して 有意な拮抗作用を示した(抑制率:約 99%)。このことより、 SEQ-xは 0.3 mol/Lが活性 ィ匕 NF- κ Bタンパク質に対して拮抗作用を示すのに対し、 SEQ-I-PSは、 0.1 μ mol/L より活性化 NF- κ Bタンパク質に対して拮抗作用を示すことから、 SEQ- 1- PSは、 SEQ-
xと比較して 3倍以上結合活性が高 、と考えられる。
[0102] 4.毒性試験
(1) 96プレートへの播種
培養ディッシュ内で約 80%コンフルェントに増殖した細胞を、ディッシュ力 培地を 除去後ダルベッコ改変 PBS(D-PBS)で洗浄し、適量のトリプシン- EDTAを添カ卩して 37 °C、 5%COインキュベーターで 3分間静置し細胞をディッシュ力 剥離させた後、 10
2
%FBS含有 MEM培地を添カ卩して細胞を回収した。冷却遠心機(Beckman)にて遠心( lOOOrpm, 5分, 25°C)後、上清を除去し、細胞ペレットを 10%FBS含有 MEM培地中に 再懸濁し、細胞を計数後、 96ゥエルプレート(コ一-ング)に 5.0 X 103cells/well/50 μ L の細胞密度で播種した。
[0103] (2)実験群構成
1群.無処置群 (n=3)
2群. SEQ- X 1.0 iu mol/L処置群(n=3)
3群. SEQ- X 3.0 μ mol/L処置群(n=3)
4群. SEQ- X 10 μ mol/L処置群(n=3)
5群. SEQ- X 30 μ mol/L処置群(n=3)
6群. SEQ- X 1.0 mol/L処置群(n=3)
7群. SEQ- X 3.0 μ mol/L処置群(n=3)
8群. SEQ- X 10 mol/L処置群(n=3)
9群. SEQ- X 30 μ mol/L処置群(n=3)
10群. SEQ- X- PS 1.0 mol/L処置群(n=3)
11群. SEQ- X- PS 3.0 iu mol/L処置群(n=3)
12群. SEQ- X- PS 10 mol/L処置群(n=3)
13群. SEQ- X- PS 30 μ mol/L処置群(n=3)
14群. SEQ-卜 PS 1.0 mol/L処置群(n=3)
15群. SEQ- 1- PS 3.0 iu mol/L処置群(n=3)
16群. SEQ-卜 PS 10 mol/L処置群(n=3)
17群. SEQ- 1- PS 30 μ mol/L処置群(n=3)
[0104] (3)毒性測定
細胞播種後、 10%FBS RPMI培地で調製した 2、 6、 20および 60 mol/Lの各オリゴ配 列を各ゥエルに 50 Lずつ添カ卩し、 COインキュベータ内で 24時間静置した。 24時間
2
後、 WST-1を 10 L添カ卩し、 COインキュベータ内で約 30分〜 1時間静置した。反応
2
終了後、 Wallac 1420 ARVOsx (株式会社パーキンエルマ一ジャパン)で吸光度(450 nm/640nm)を測定した。
まず、上記シリーズ Iのデコイオリゴヌクレオチド中、 SEQ- X、 SEQ- X- PS、 SEQ- x、 SE Q- I-PSにつ!/、ての結果を図 2に示す。
[0105] 24時間後の測定では、 SEQ- Xの 1、 3、 10および 30 μ mol/Lを添カ卩した群では細胞 死の亢進は認められなかった。 SEQ-xの 1、 3および 10 mol/Lを添カ卩した群では、細 胞死の亢進は認められなかった力 30 mol/Lを添カ卩した群では、約 25%の細胞死が 認められた。また、 SEQ- X- PSおよび SEQ- 1- PSの 1、 3および 10 mol/Lを添カ卩した群 では細胞死の亢進は認められなかった力 30 μ mol/Lで約 10%の細胞死が認められ た.この結果より部分 Sィ匕することで細胞毒性が軽減されたと考えられる。
[0106] さらに、 SEQ- 1、 SEQ- 9、 SEQ- 33、 SEQ- 34、 SEQ- 35、 SEQ- 36、 SEQ- 37および SEQ -38についての毒性測定の結果として、 LD を求め下記表 11に示す。
50
[0107] [表 11]
[0108] 表 11に示されるように SEQ-Iの LD 値(半数致死量)は SEQ と比較して約 1.8倍高
50
かった。部分 S化修飾である SEQ- 9、 SEQ-33、 SEQ-34, SEQ-35, SEQ-36, SEQ-37 および SEQ-38の LD 値は SEQ-xと比較して約 1.5倍〜約 3倍高かった。したがって、 S
50
EQ- 9、 SEQ- 33、 SEQ- 34、 SEQ- 35、 SEQ- 36および SEQ- 37は SEQ- xより毒性が軽減 していた。 20塩基である SEQ-x、 SEQ-Iおよび SEQ-9間での比較から、 S化修飾部位
の数を減らすことで毒性が低減されたことがわ力つた。
[0109] 5.安定性試験
各オリゴヌクレオチド配列溶液の終濃度が lOOng/ zz L、かつマウス血漿の終濃度が 10%、 15%または 20%となるようにサンプル溶液を調製し、これを 24時間 37°Cにて保温し た。その後、 20%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、ェチジゥムブロマ イド染色を行った後、メーター(BIO- RAD)で画像解析を行った。電気泳動の結果を 図 3に示す。
[0110] 実験群
1群. SEQ- -X+ PBS
2群. SEQ- -X+ 10%マウス血漿
3群. SEQ- -X+ 15%マウス血漿
4群. SEQ- -X+ 20%マウス血漿
5群. SEQ- - 1 + PBS
6群. SEQ- -I + 10%マウス血漿
7群. SEQ- -I + 15%マウス血漿
8群. SEQ- -I + 20%マウス血漿
9群. SEQ- -I-PS + PBS
10群. SEQ- 1- PS + 10%マウス血漿
11群. SEQ- 1- PS + 15%マウス血漿
12群. SEQ- 1- PS + 20%マウス血漿
[0111] SEQ-xは 10%、 15%および 20%マウス血漿中においても安定であった。一方、 SEQ- 1 は 10%、 15%および 20%マウス血漿中では分解が認められ、 20%マウス血漿ではほぼ 完全に分解されていた。一方、 SEQ- I-PSは 10%および 15%マウス血漿では安定であ つたが、 20%マウス血漿では若干の分解が認められた力 SEQ-ト PSは SEQ-Iに比べ て、有意に安定であると考えられる。この結果より、デコイオリゴヌクレオチドの両端 2 塩基ずつをホスホロチォエートイ匕することによって、有意に安定性を増加させることが できると考えられる。
[0112] 6.レポーターアツセィ
ここで用いたレポーターアツセィとは、細胞内に導入したレポーター遺伝子が, NF κ Βの活性ィ匕に依存して,転写活性化され,発現した酵素の活性を測定する系であ る。本評価系はシグナル伝達の阻害剤の研究等にぉ ヽても当業者に用いられて 、る ものである。
[0113] 3.1.試験方法
( 1)細胞の 24 well plateへの播種
細胞を観察し,異常のないことおよび約 80%コンフルェントになっていることを確認し た.適量の D- PBS (-)にて洗浄後,適量の Trypsin-EDTAを添カ卩し, 37°C, 5%COィ
2 ンキュベータで 3分間反応させ,細胞を剥離させた.剥離させた細胞を 10%FBS含有 MEM培地で懸濁し,遠心チューブに回収し,冷却遠心機(Beckman)にて遠心分離( 1000 rpm, 5分, 25°C)し,上清を吸引した.沈殿させた細胞を 10%FBS含有 MEM培地 で再懸濁し,改良型ノィゥエル血球計算板を用いて細胞を計数後, 24 well plate (コ 一-ング)に 4.0 X 104 cells/well/0.5 mLで播種し, 37°C, 5%COインキュベータ内で
2
24時間培養した.
[0114] (2)実験群構成
実験 1および実験 2を独立して行った。各実験における実験群は以下のとおりとした。 m
1.無刺激群: FuGENE6 + pNF (pNF κ B- SEAP plasmid)処置 4時間→無刺激
2. TNF- a刺激群: FuGENE6 + pNF処置 4時間→TNF- a刺激 24時間
3.SEQ- X群: FuGENE6 + pNF +SEQ- x (0.1 μ mol/L)処置 4時間
→TNF- o;刺激 24時間
4.SEQ- 9群: FuGENE6 + pNF +SEQ- 9 (0.1 μ mol/L)処置 4時間
→TNF- o;刺激 24時間
5.SEQ- 33群: FuGENE6 + pNF +SEQ- 33 (0.1 μ mol/L)処置 4時間
→TNF- o;刺激 24時間
6.SEQ- 34群: FuGENE6 + pNF +SEQ-34 (0.1 μ mol/L)処置 4時間
→TNF- o;刺激 24時間
7.SEQ- 35群: FuGENE6 + pNF +SEQ- 35 (0.1 μ mol/L)処置 4時間
→TNF- o;刺激 24時間
[0115] 実験 2
1.無刺激群: FuGENE6 + pNF処置 4時間→無刺激
2. TNF- a刺激群: FuGENE6 + pNF処置 4時間→TNF- a刺激 24時間
3.SEQ- X群: FuGENE6 + pNF + SEQ- χ (0.1 μ mol/L)処置 4時間
→TNF- o;刺激 24時間
4.SEQ- 36群: FuGENE6 + pNF +SEQ- 36 (0.1 μ mol/L)処置 4時間
→TNF- o;刺激 24時間
5.SEQ- 37群: FuGENE6 + pNF +SEQ-37 (0.1 μ mol/L)処置 4時間
→TNF- o;刺激 24時間
6.SEQ- 38群: FuGENE6 + pNF +SEQ- 38 (0.1 μ mol/L)処置 4時間
→TNF- o;刺激 24時間
各実験群は n=3で行った.
[0116] (3)各オリゴヌクレオチドの添カロ
HeLa細胞を 24 well plateに播種し, 24時間培養した後, D-PBS (-)で洗浄し, MEM 培地 250 Lを添加した. FuGENE6を MEM培地にて 83.3倍希釈した(FuGENE6希釈 液) .以下の組成で DNA混合溶液を調製した.
[0117] 実験 1
[0118] [表 12] 群番号 各ォリ ゴヌク レオチ ド pNF
4. 0 ng/μ
1, 2
し
4. 0 ng/μ
. 3-8 0. 4 pmol/L
し 実験 2
[0119] [表 13]
群番号 各ォリゴヌク レオチド pNF
4. 0 ng/μ
1, 2
し
4. 0 ng/μ
3-6 0. 4 pmol/L
し
[0120] 調製した各 DNA混合溶液と FuGENE6希釈液を等量で穏やかに混合し、 30分間室 温で反応させた(FuGENE6混合溶液)。反応後、 24 well plateに各 FuGENE6混合溶 液 250 Lを添加し、 4時間反応させた後、 D-PBS (-)で洗浄し、 10%FBS含有 MEM培 地 500 μ Lを添加し、約 20時間反応させた。反応後、 D-PBS (-)で洗浄し、 MEM培地 500 μ Lを添カ卩し、 TNF- o;を終濃度が 50 ng/mLになるように添カ卩し、約 24時間反応 させた。反応後、 1.5 mLチューブに培養上清を回収し、微量高速冷却遠心機(トミー )にて 10000 rpm、 5分間、 4°Cで遠心分離を行い、上清のみを別の 1.5 mLチューブに 移し、細胞培養室用冷凍庫 (-20°C前後)に保存した。
[0121] (4)レポーターの測定
5 X Dilution Bufferを蒸留水にて 5倍希釈し、 1 X Dilution Bufferを調製した。また、 2 5 mmol/Lし SPD Substrate Chemiluminescent Ennancerにて 20倍希釈し、 1.25 mmo 1/L CSPD Substrateを調製した。
[0122] Chemiluminescent Enhancer ^ Assay Dilutionおよび! ^製し 7こ丄 X Dilution Bufferを室 温に戻した。 1.5mLチューブにサンプル 15 μ Lを添加した。次に 1 X Dilution Buffer 4 5 μ Lを添加し、タッピングにて混合した。 Water bathにて 65°C、 30分間反応させた。 反応後、氷上に 3分間放置し、 1.5mLチューブを室温に戻し、 Assay Dilution 60 L を添加し、タッピングにて混合し、室温にて 5分間反応させた。反応後、 1.25 mmol/L CSPD Substrate 60 μ Lを添加し、タッピングにて混合し、 10分間、室温で反応させた 。反応後、 96well plateに反応サンプルを移し、 Wallac 1420 ARVOsxマルチラベル カウンタ (株式会社パーキンエルマ一)で相対発光強度 (RLU)を測定した。本試験に おいては各オリゴ配列の濃度を 0.1 μ mol/Lで実施した。
[0123] 上記実験 1にお 、て TNF- a群の RLU値は無刺激群と比較して約 80倍高力つた。 S EQ-x群の RLU値は TNF- α群と比較して同程度であった。 SEQ-9、 SEQ-33、 SEQ-3
4および SEQ- 35群は TNF- a群と比較して RLU値の低下を示し、阻害率は SEQ-9群 で約 70%、 SEQ- 33で約 70%、 SEQ- 34で約 99%、 SEQ- 35で約 70%であった。
[0124] 実験 2においては、 TNF- o;群の RLU値は無刺激群と比較して約 145倍高力つた。 S EQ-x群の RLU値は TNF- a群と比較して同程度であった。 SEQ-x群の RLU値は TNF - α群と比較して同程度であった。 SEQ-36、 SEQ- 37および SEQ- 38群の RLU値は T NF- α群と比較して低下を示し、阻害率は SEQ-36で約 80%、 SEQ- 37で約 75%、 SEQ- 38で約 90%であった。
[0125] 実験群 1
[0126] [表 14]
SEQ-x群は転写活性化に対して抑制作用を示さなかった。 SEQ- 9、 SEQ-33、 SEQ- 34, SEQ-35, SEQ-36, SEQ- 37および SEQ- 38群は転写活性化を約 70%〜約 99%抑 制した。これらの結果から SEQ- 9、 SEQ-33、 SEQ-34, SEQ-35, SEQ-36, SEQ-37お よび SEQ- 38は SEQ-xより低濃度で NF κ Βシグナル依存的な遺伝子の転写活性化を 抑制すると考えられる。