明 細 書
光学素子およびそれを用いた光学測定装置
技術分野
[0001] 本発明は、生体組織または溶液などの試料を光学的に測定することによって、試料 中のグルコース、コレステロール、尿素またはトリグリセリドなどの濃度を測定するため に使用する光学素子およびそれを用いた光学測定装置に関する。
背景技術
[0002] 従来から、生体組織または溶液中の特定成分を測定する際に用いられる種々の光 学素子および光学測定装置が提案されている。例えば、国際公開第 01/58355A1号 パンフレットでは、溝部を有する光学素子に生体組織を接触させて、溝部と生体組織 との屈折率の差を利用して生体内部の情報を得る方法が提案されている。
[0003] ここで、図 8は、国際公開第 01/58355A1号パンフレットにおいて提案されている溝 部を有する従来の光学素子の構成図である。図 8中の矢印は、光源 44から出射され た光の経路を示す。光学素子 41における溝部 42の側面部 42aに入射した光(図 8に おける矢印 X)は、生体組織 48を通過した後、側面部 42bから出射する。この出射光 を検出器などにより検出することにより、生体組織の情報を得ることができる。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0004] 上記のような従来の光学素子の溝部 42は、主に、平面研削もしくは超音波加工な どの機械加工、またはエッチングなどにより、光学素子用材料の平面に直接形成され ているが、これらの方法では、得られた溝部 42に傷が付き易ぐ平滑な加工面を得る ことが困難であるとともに、所定形状に加工し難いという問題がある。
例えば、図 8に示す溝部 42は、加工面が V形状である砥石を回転させて、それを光 学素子用材料の平面に押し当てることにより、 V字状に加工されている。この方法で は、砥石形状の精度がそのまま加工精度および表面粗さに反映されてしまレ、、砥石 が消耗すると溝部 42の深さおよび形状が変化したり、表面の粗さが増大したりしてし まい、溝部 42を所定形状に精度よく加工するのが困難である。そして、溝部 32の深
さおよび形状が変化したり、加工した表面の粗さが増大したりすると、実際の光の経 路が設計した経路とは異なってしまったり、溝部 42の表面で光が散乱したりして、測 定精度が低下してしまう。
[0005] さらに、光源 44から照射される光は一般には平行光である力 S、完全な平行光では なレ、。そのため、溝部 42の底 42cで反射した光(図 8における矢印 Y)、溝部 42以外 の面で反射した光(図 8における矢印 Z)、ならびに、生体組織 48に入射されることな く入射面 42aおよび光学素子 42の内部で反射して出射する光(図示せず)などの不 要光も、上記光 Xとともに検出されてしまい、測定精度が低下してしまう。
[0006] そこで、本発明は、上記のような従来の問題点に鑑み、容易に形成することができ るとともに測定精度に優れた光学素子、ならびに当該光学素子を用いた信頼性の高 い光学測定装置を容易かつ簡便な方法で提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0007] 本発明の光学素子は、
試料に照射する光が出射する光出射面を有する光照射プリズムと、
前記試料から帰還した光が受光される光受光面を有する受光プリズムと、 前記光照射プリズムと前記受光プリズムとの間に設けられた減光部とを具備し、 前記光照射プリズムと前記受光プリズムとが組み合わされて、前記試料が接触する 凹部が形成されており、前記光出射面から出射した光が、前記凹部に接触している 前記試料中を直進して前記光受光面に入射することを特徴とする。
[0008] ここで、本発明における「減光部」とは、通過する光の量を減らす機能を有する部材 ないしは部分のことをいう。そして、本発明における「減光」とは、光が 2以上の媒体間 を移動する際に、入射した光の量に対して出射する光の量を減らすこと、すなわち通 過する光の量を減らすことを意味し、例えば (i)通過する光の量を、媒体間の屈折率 (反射率)を変更することにより減らすこと、ならびに (Π)通過する光の量を、光を遮断 (例えば反射や吸収など)することにより減らすこと、を含む。
[0009] また、本発明の光学測定装置は、上記の本発明の光学素子と、
前記光照射プリズムから前記試料に光を照射させるために前記光照射プリズムに 対して光を出射する光源と、
前記試料から前記受光プリズムに帰還した光を検出する光検出器とを具備すること を特徴とする。
発明の効果
[0010] 本発明によれば、凹部を有する光学素子を容易に形成することができ、光学素子 内部における反射光などの不要光に起因する測定精度の低下が抑制された光学素 子を得ることができる。また、本発明の光学素子を用いれば、信頼性の高い光学測定 装置を容易かつ簡便に実現することができる。
図面の簡単な説明
[0011] [図 1]本発明の実施の形態 1における光学測定装置の構成を示す図である。
[図 2]図 1の光学測定装置を用いて指の透過検出光量を測定した場合の透過検出光 量の波長特性を示す特性図である。
[図 3]本発明の実施の形態 1における光学測定装置の変形態様の構成を示す図であ る。
[図 4]本発明の実施の形態 2における光学測定装置の構成を示す図である。
[図 5]本発明の実施の形態 3における光学測定装置の構成を示す図である。
[図 6]本発明の実施の形態 4における光学測定装置の構成を示す図である。
[図 7]本発明の実施の形態 5における光学測定装置の構成を示す図である。
[図 8]従来の試料と接触する溝部を有する光学素子の構成図である。
発明を実施するための最良の形態
[0012] 本発明の光学素子は、試料に照射する光が出射する光出射面を有する光照射プリ ズムと、前記試料から帰還した光が受光される光受光面を有する受光プリズムと、前 記光照射プリズムと前記受光プリズムとの間に設けられた減光部とを具備し、前記光 照射プリズムと前記受光プリズムとが組み合わされて、前記試料が接触する凹部が形 成されており、前記光出射面から出射した光が、前記凹部に接触している前記試料 中を直進して前記光受光面に入射することを特徴とする。
このような構成によれば、光照射プリズムを通過して試料を通過しない光のうち、受 光プリズムに入射する光の量を減らすことができる。すなわち、光照射プリズムを通過 した光のうち、試料を通過せずに受光プリズムに入射する光の量を減らすことができ
る。そして、後述する光検出器に不要な光が到達するのを抑制することができ、測定 精度の低下を確実に抑制することができる。
[0013] また、光照射プリズムおよび受光プリズムの凹部を構成する面をそれぞれ加工した 後、光照射素子と受光プリズムとを組み合わせることにより凹部が形成されるため、凹 部を形成した後で凹部の表面を平滑に加工する必要がない。そのため、表面が平滑 な凹部を容易に形成することができ、凹部における光の散乱によって光学的測定精 度を低下させることのない光学素子を得ることができる。
[0014] 上記凹部は、例えば、平面形状の加工面を組み合わせて容易に構成することがで きる。それ以外にも、公知技術を用いて階段形状などの複数の平面で構成された複 合平面で上記凹部を形成してもよい。また、曲面を組み合わせて上記凹部を形成す ることも可肯である。
また、上記凹部は、光照射プリズムおよび受光プリズムを所定形状に加工した後、 それらを組み合わせることにより形成されるため、特に凹部の底部を精度よく加工し やすい。
[0015] 前記減光部は、前記光照射プリズムと前記受光プリズムとの間に設けられた間隙部 であってもよい。
このような構成によれば、光照射プリズムおよび受光プリズムの屈折率と、間隙部の 屈折率との違いにより、それぞれの界面において反射光が発生するため、光照射プ リズムを通過した光のうち、試料を通過せずに受光プリズムに入射する光の量を減ら すことができる。そして、後述する光検出器に不要な光が到達するのを抑制すること ができ、測定精度の低下を確実に抑制することができる。
[0016] また、前記減光部は、前記光照射プリズムと前記受光プリズムとの間に設けられた 遮光部であってもよい。
このような構成によれば、光照射プリズムと受光プリズムとの間に設けられた遮光部 により、光照射プリズムを通過した光のうち、試料を通過せずに受光プリズムに入射 する光を遮断することができる。そして、後述する光検出器に不要な光が到達するの を抑制することができ、測定精度の低下を確実に抑制することができる。
[0017] さらに本発明の光学素子は、前記光照射プリズムと前記受光プリズムとの間に設け
られたスぺーサーを具備するのが好ましレ、。
このような構成によれば、スぺーサ一の厚みを変えて光照射プリズムと受光プリズム との距離を変えることで、試料における深さ方向の測定位置を容易に調整することが できる。光照射素子と受光素子との距離を広くすれば、試料が接触している凹部によ り深く入り込み、結果として、試料の深部を測定することができる。逆に光照射プリズ ムと受光プリズムとの距離を狭くした場合は、試料が凹部に入り込みにくくなり、結果 として、試料の表層部を測定することができる。
[0018] また、スぺーサ一は、上記減光部と同じ材料で構成することも可能である。例えば、 スぺーサーを、光照射プリズムおよび受光プリズムよりも低レ、屈折率を有する材料で 形成すると、当該スぺーサ一には上記減光部と同様の役割を持たせることができる。
[0019] 前記光照射プリズムの前記光出射面は、前記試料が接触する平面状の第 1の傾斜 部であり、前記受光プリズムの前記光受光面は、前記試料が接触する平面状の第 2 の傾斜部であり、前記第 1の傾斜部と前記第 2の傾斜部とが対向して前記凹部が形 成されており、かつ前記凹部の前記第 1の傾斜部および前記第 2の傾斜部と垂直な 方向の断面が略 V字状であるのが好ましい。
このような構成によれば、第 1の傾斜部と第 2の傾斜部とをそれぞれ光学研磨した 後に、第 1の傾斜部と第 2の傾斜部とを対向させて試料が接触する V字状の凹部が 形成されるため、容易に平滑な平面を有する光学的精度の高い凹部が得られる。ま た、凹部の形状力 字状の場合、試料が固定され易ぐ光路長を安定させることがで きる。
[0020] さらに、本発明の光学素子は、前記凹部の一部を覆い、前記光照射プリズムおよび 前記受光プリズムとともに組み合わされることによって試料保持部を形成するカバー を具備するのが好ましい。このようなカバーは、例えば前記光照射プリズムの側面、 前記光出射プリズムの側面を覆レ、、かつ前記凹部の上面を開放するように配置され た第 1のカバーおよび第 2のカバーで構成することができる。
このような構成によれば、試料が液状であっても、凹部の側面が、光照射プリズム、 受光プリズムおよびカバーで囲まれるため、試料保持部として機能する凹部内にこぼ れなレ、ように試料を保持することができる。
[0021] さらに、本発明の光学素子は、前記光照射プリズムと前記受光プリズムとの間の距 離を調整する調整手段を具備するのが好ましい。
このような構成によれば、光照射プリズムと受光プリズムとの距離をより容易かつ簡 便に変えることができ、試料における深さ方向の測定位置をより容易かつ簡便に調 整すること力 Sできる。光照射プリズムと受光プリズムとの距離を広くすれば、試料が接 触している凹部により深く入り込み、結果として、試料の深部を測定することができる 。逆に光照射プリズムと受光プリズムとの距離を狭くした場合は、試料が凹部に入り込 みにくくなり、結果として、試料の表層部を測定することができる。
[0022] 本発明の光学測定装置は、上記の本発明の光学素子と、前記光照射プリズムから 前記試料に光を照射させるために前記光照射プリズムに対して光を出射する光源と 、前記試料力 前記受光プリズムに帰還した光を検出する光検出器とを具備すること を特徴とする。
このような構成によれば、上記の本発明の光学素子を用いることから、信頼性の高 い光学測定装置を容易かつ簡便な方法で提供することができる。
[0023] 本発明の光学測定装置は、前記受光プリズムと前記光検出器との間に配置された 分光素子を具備するのが好ましレ、。
このような構成によれば、測定に必要な光のみをより確実に光検出器に送ることが でき、測定精度の向上を実現することができる。
[0024] 以下、図面を参照しながら本発明の代表的な実施の形態について詳細に説明する 。ただし、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説 明は省略することちある。
なお、以下に説明する実施の形態は本発明の一例を示すものであり、本発明を限 定するものではない。
[0025] [実施の形態 1]
図 1は、本発明の光学素子 (測定素子)を用いた本発明の実施の形態 1に係る光学 測定装置 (成分濃度測定装置)の構成を示す図であり、図中の矢印は光路を示す。 以下において、まず光学素子について説明する。
図 1に示すように、光学素子 12は、光を試料に照射する光照射プリズム 13と、試料
力 帰還した光を受ける受光プリズム 14と、を組み合わせて一体化することによって 構成され、光照射プリズム 13と受光プリズム 14との間には、試料を接触させるための 凹部 15が形成される。そして、本実施の形態においては、光照射プリズム 13と受光 プリズム 14との間に、減光部 19として、両者の間において光を遮断するための遮光 部が形成されている。
[0026] 凹部 15は、光照射プリズム 13において試料が接触する第 1の傾斜部 13aおよび受 光素子 14において試料が接触する第 2の傾斜部 14aをそれぞれ研磨して平滑な面 とした後、第 1の傾斜部 13aと第 2の傾斜部 14aとが互いに向かい合うように、光照射 プリズム 13と受光プリズム 14とを接合することにより、 V字状に形成されている。
光照射プリズム 13と受光プリズム 14とを接合する前に、平面状の第 1の傾斜部 13a および第 2の傾斜部 14aをそれぞれ光学研磨するため、第 1の傾斜部 13aおよび第 2 の傾斜部 14aを容易に平滑化することができる。これらのこと力 、光学的精度の高 レ、面を有する凹部 15が容易に得られる。
また、本実施の形態の光学素子 12は、光照射プリズム 13および受光プリズム 14に 分解できるため、分解することができない従来の光学素子(図 8参照)と比べて、凹部 を掃除し易い。
[0027] 光照射プリズム 13および受光プリズム 14を構成する材料としては、当該分野で公 知のものを用いることができる。
中赤外領域に吸収ピークがある物質を測定する場合には、シリコン、ゲルマニウム 、 SiC、ダイヤモンド、 ZnSe、 ZnSまたは KrSなどを用いることができる。
波数 1033cm— 1および 1080cm— 1に吸収ピークを有するグルコースのように、中赤 外領域に吸収ピークがある物質を測定する場合には、約 9〜10ミクロンの赤外波長 で透過率が高ぐ加工性や機械的強度も高いという観点から、シリコンまたはゲルマ 二ゥムを用いるのが好ましい。
また、近赤外領域に吸収ピークがある物質を測定する場合には、溶融石英、単結 晶シリコン、光学ガラス、または透明な樹脂などを用いることができる。
[0028] 本実施の形態における減光部 19は、例えば膜状、シート状、板状または棒状の遮 光部であり、光照射プリズムを通過した光のうち、凹部に到達しない光、すなわち試
料を透過しない光が受光プリズムに入射するのを防ぐ機能を有する。
遮光部には、 Al、 Cuもしくは Agなどの金属の反射膜や、 Crもしくは黒墨などの吸 収膜、または誘電体多層膜を用いるのが好ましい。金属層と誘電体層とで形成され た多層膜を用いても構わない。この場合の遮光部の成膜方法としては、真空蒸着、ス パッタ法または CVD法などの公知の方法を用いればよい。また、光照射プリズム 13 または受光プリズム 14の表面に直接膜を形成してもよぐ両方のプリズムにそれぞれ 膜を形成した後、膜同士を接合してもよい。
[0029] また、上記遮光部としては、上記膜の材料で構成されたシートの他、例えばアルミ 二ゥム箔または Cuの金属シートなどを用いることができる。光照射プリズム 13または 受光プリズム 14に直接金属シートを貼り付けてもよぐ両方のプリズムにそれぞれ金 属シートを貼り付けた後、両者を貼り合わせてもよい。
さらに上記遮光部としては、上記膜または上記シートの材料で構成された板を用い ることちでさる。
[0030] 以上のような構成を有する本実施の形態の光学素子 12を用いて、本実施の形態 の光学測定装置を得ることができる。本実施の形態の光学測定装置は、光学素子 1 2、光を出射する光源 11、受光プリズム 14を介して試料から帰還した光を分光する 分光素子 16、および分光素子 16を通過した光を検出する光検出器 17を備えている 。上記の光学的精度の高い光学素子 12を用いることにより、測定精度が向上し、高 い信頼性が得られる。
また、減光部 19が、上記のように試料を透過しない光が受光プリズムに入射するの を防ぐため、光検出器 17には、試料を透過しない、凹部を形成する面から反射した 光および光源からの不要な光が到達しなレ、。このため、光学測定装置の SZN比が 向上する。
[0031] ここで、光源 11としては、測定対象である測定成分の吸収波長の光を含むものであ れば、特に制限なく用いることができる。
例えば、中赤外領域の光であれば、例えば SiCを棒状に焼結したグローバ光源、 C Oレーザー、タングステン灯、赤外パルス光源または QCL光源などを用いることがで
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きる。
グノレコースのように中赤外領域に強い吸収ピークがある物質を測定する場合には、 例えばグローバ光源、赤外パルス光源または QCL光源が好ましレ、。
また、近赤外領域に吸収ピークがある物質を測定する場合には、例えばハロゲン光 源、半導体レーザーまたは LEDなどを用いることができる。グルコースは、中赤外領 域だけでなぐ近赤外領域にも吸収ピークがあることが知られており、例えば LED光 通信用の DFBレーザーまたは DBRレーザーを用いることが好ましい。
[0032] 分光素子 16には、例えばグレーティング素子または光学フィルタ素子などを用いる こと力 Sできる。また、 FT— IRやレーザー分光等を用いても構わない。なお、分光素子 の位置は特に限定されない。
また、光検出器 17には、当該分野で公知のものを用いることができる。例えば、中 赤外領域では、焦電センサやサーモパイル、サーミスタ、 MCT検出器 (量子型検出 器の一種である HgCdTe検出器)が用いられる。近赤外領域では、例えば InGaAs 検出器、フォトダイオード、 PbS検出器、 InSb検出器、 InAs検出器、またはこれら検 出器のアレイセンサなどが用いられる。
[0033] 次に、上記の本発明に係る光学測定装置を用いた成分濃度の測定方法を説明す る。ここでは、指の生体組織を測定した場合について説明する。
まず、指 18を光学素子 12の凹部 15に押し付けて当接する。このとき、軽く押し付け るだけで、図 1に示すように、指 18は凹部 15にめり込む。次に、指 18のめり込んだ部 分に光を照射すると、光源 11から出射された光は、光学素子 12の光照射プリズム 13 に到達し、光照射プリズム 13に到達した光は、光学素子 12に設けられた凹部 15また は遮光部 19に到達する。
[0034] そして、減光部 19に到達した光は、受光プリズム 14に入射しないように、吸収また は反射される。凹部 15に到達した光は、凹部 15より出射する際に、光照射プリズム 1 3と指 18の屈折率の差により屈折し、指 18中を透過する。
一方、指 18を透過した光は、受光プリズム 14に入射する。光が上記のような経路で 進むため、受光プリズム 14は指 18中を直進する多くの光を容易に受光することがで き、受光プリズム 14を通過した光は、分光素子 16を介して光検出器 17に到達する。 光検出器 17で検出した光に基づいて、例えば、グルコース濃度などの生体組織の
パラメータを算出することができる。
[0035] 指 18中において光が通過する距離は、特に制限されないが、例えば l〜2mm程 度に設定すればよい。また、凹部 15において第 1の傾斜部と第 2の傾斜部とで形成 される角度は、特に制限されず、例えば 90度に設定すればよい。
ここで、試料である指 18に対する光の入射角度は、凹部 15の形状や光照射プリズ ム 13および受光プリズム 14の屈折率などで決まる。光照射プリズム 13および受光プ リズム 14の屈折率は、試料の屈折率より大きいことが好ましい。測定する際には、試 料を透過した光をできるだけ光検出器 17に到達させることが好ましいため、光学素 子 12の屈折率だけでなぐ試料の屈折率に応じて凹部 15の形状や指 18に対する光 の入射角度を設定するのが好ましい。
[0036] また、分光素子 16は、例えば、成分濃度を検出するのに必要な光のみを透過させ ること力 Sできる。成分濃度は光検出器 17で検出された光に基づいて算出される。す なわち、成分に応じて特定波長の光が吸収され減光し、その減光量が成分濃度に依 存するため、減光量より成分濃度が算出される。
[0037] 次に、上記の本発明の光学測定装置を用いて指 18の生体組織を測定した結果の 一例を図 2に示す。横軸は波長を示し、縦軸は検出光量の任意値を示す。また、 Aは 凹部に指 18を押し当てる前の測定結果を示し、 Bは凹部に指 18を押し当てた時の 測定結果を示す。
これらの結果より、指 18を押し当てる前のスペクトルに対して、指 18を押し当てた時 にスぺタトノレが大きく変化していることがわかる。これは、指 18の中の、水、ダルコ一 ス、中性脂肪およびコレステロールなどの血液成分や指 18を構成する各種成分によ り光源 11からの光が大きく吸収されて、減光したためである。例えば 1. 4ミクロンで大 きく減光している力 これは水の吸収スぺタトノレに相当するもので、生体内の水の存 在を示すものである。
[0038] また、図 3は、本実施の形態の光学測定装置の変形態様の構成を示す図である。
この変形態様は、溶液または液体などの試料液の成分濃度を測定するためのもので あり、図 1と同様の、光源 11、光学素子 12、光照射プリズム 13、受光プリズム 14、凹 部 15、分光素子 16、および光検出器 17に加え、光学素子 12がさらに第 1の測定力
バー 20aおよび第 2の測定カバー 20bを有する。
第 1の測定カバー 20aおよび第 2の測定カバー 20bは、凹部 15の上部を開放しつ つ、光照射プリズム 13および受光プリズム 14の側面を覆っている。
[0039] すなわち、凹部 15が、第 1の傾斜部 13a、第 2の傾斜部 14a、第 1の測定カバー 20 aおよび第 2の測定カバー 20bで囲まれ、試料液 21を保持するための試料保持部と して機能する。このため、試料液 21がこぼれることなく凹部 15内に保持される。 このような構成により、本変形態様では、このように図 1の構成に測定カバーを追加 するだけで、試料液の成分を容易に測定することができる。
[0040] [実施の形態 2]
図 4は、本発明の光学素子 (測定素子)を用いた本発明の実施の形態 2に係る光学 測定装置 (成分濃度測定装置)の構成を示す図であり、図中の矢印は光路を示す。 以下において、まず光学素子について説明する。
図 4に示すように、光学素子 12は、試料に光を照射する光照射プリズム 13、および 試料から帰還した光を受ける受光プリズム 14を組み合わせて一体化することにより構 成され、光照射プリズム 13と受光プリズム 14との間には、試料が接触する略 V字状の 凹部 15が形成される。そして、本実施の形態では、光照射プリズム 13と受光プリズム 14との間に、光照射プリズム 13と受光プリズム 14との間の距離を規定しつつ、光照 射プリズム 13を通過して試料を通過しない光のうち、受光プリズム 14に入射する光 の量を減らす減光部 19が設けられている。
[0041] この減光部 19は、例えば光照射プリズム 13と受光プリズム 14の屈折率よりも小さい 屈折率を有する材料 (例えばガラスまたはプラスチックなど)で構成されており、屈折 率(すなわち反射率)の変化により、光照射プリズム 13を通過して試料を通過しない 光のうち、受光プリズム 14に入射する光の量を減らす機能を有している。
減光部 19の厚さ(幅)、すなわち光照射プリズム 13と受光プリズム 14との間の距離 は、特に限定されないが、例えば生体組織を測る場合は、光路長が長すぎると水の 吸収が大きくなりすぎるので、 3mm以下であるのが好ましレ、。
[0042] 本実施の形態において、減光部 19は直方体形状を有し、凹部 15は、光照射プリズ ム 13と、受光プリズム 14と、減光部 19との組み合わせにより略 V字状に形成されてい
る。また、光照射プリズム 13において試料が接触する平面状の第 1の傾斜部 13aお よび受光プリズム 14における試料が接触する平面状の第 2の傾斜部 14aは、互いに 向かい合うように配置され、それぞれ凹部 15の側面部を構成し、減光部 19の上面は 、第 1の傾斜部 13aの下端と第 2の傾斜部 14aの下端との間に位置し、凹部 15の底 面部を構成する。
[0043] したがって、減光部 19の厚さ(幅)を変えることにより、凹部 15を通過する光の光路 を容易に変化させることができる。すなわち、減光部 19を厚くすれば、光照射プリズ ム 13と受光プリズム 14との間の距離が大きくなり、凹部 15に生体組織が深く入りこみ 、より深い部位の生体組織を測定することができる。また、減光部 19を薄くすれば、 光照射プリズム 13と受光プリズム 14との間の距離が小さくなり、より表層の生体組織 を測定することができる。このように減光部 19にスぺーサ一としての役割も持たせ、当 該減光部 19の厚さを適宜設定することで、生体組織を測定したい深さで測定するこ とができる。
[0044] ここで、指 18の組織は、最表面の表皮 18aと、その下部の真皮 18bおよび皮下脂 肪 18cとを含む。例えばグルコースの濃度を測定する場合は、表皮 18aと皮下脂肪 1 8cとの間の真皮 18bを測定することが好ましぐその部分に多くの光を通過させるの が好ましい。
指 18中にぉレヽて光が通過する距離は、例えば波長 16 OOnmのグノレコースの吸収 波長を用いる場合は、 l〜2mm程度に設定すればよい。 3mmを超えると水の吸収 量が大きくなる。また、凹部 15で形成される略 V字の角度(第 1の傾斜部と第 2の傾斜 部とで形成される角度)は、 90度〜 120度に設定すればよい。
[0045] 本実施の形態の光学測定装置では、上記実施の形態 1と同様の効果を得ることが できるとともに、指 18の真皮 18bを通過した多くの光を光検出器 17で検出することが できる。また、光学素子 12において、光照射プリズム 13と受光プリズム 14との間にス ぺーサ一としての機能も有する減光部 19を配して、光照射プリズム 13と受光プリズム 14との間の距離を変えて測定する深さを個人に最適化することにより、指 18中の特 定部分を通過する光の量を増大させ、光検出器 17においてその光に基づく信号強 度を増大させることができる。したがって、本実施の形態の光学測定装置では、検出
される光の S/N比が増大し、高精度な成分濃度の測定を実現することができる。
[0046] [実施の形態 3]
図 5は、本発明の光学素子 (測定素子)を用いた本発明の実施の形態 3に係る光学 測定装置 (成分濃度測定装置)の構成を示す図であり、図中の矢印は光路を示す。 以下において、まず光学素子について説明する。なお、実施の形態 3の光学測定装 置において実施の形態 2と共通する部分については説明を省略する。
本実施の形態における減光部 29も、スぺーサ一としての機能を有する。光照射プリ ズム 23および受光プリズム 24における凹部 25よりも下方の後述する減光部 29と対 向する部分は、下方にレ、くにしたがレ、光照射プリズム 23と受光プリズム 24との間の距 離が大きくなるような平面状の傾斜部 23bおよび 24bで構成されてレ、る。傾斜部 23b および 24bと垂直な方向の断面が台形状である減光部 29が、傾斜部 23bおよび 24 bと接する状態で光照射プリズム 23と受光プリズム 24の間に配されている。
[0047] 光照射プリズム 23および受光プリズム 24の側面および底面には、光照射プリズム 2 3と受光プリズム 24との間の距離を調整する調整手段が設けられている。
当該調整手段は、減光部 29を上下方向に移動させる移動素子としてのねじ 21、ね じ 21を保持する保持部 26、ならびに保持部 26と光照射プリズム 23および受光プリズ ム 24との隙間に設けられた変形可能な変形素子 27および 28で構成されている。
[0048] ねじ 21は減光部 29の下方に配され、ねじ 21で減光部 29を下から押すことにより減 光部 29が上方に押し込まれる。このとき、押し込み量を小さくすると、光照射プリズム 23と受光プリズム 24との間の距離を小さく設定することができ、押し込み量を大きく すると、光照射プリズム 23と受光プリズム 24の間の距離を大きく設定することができる 。変形素子 27および 28は、光照射プリズム 23および受光プリズム 24の移動にともな う変位量を弾性的に吸収する。
[0049] 移動後、光照射プリズム 23および受光プリズム 24が再び移動しないように、図示し ないが、光照射プリズム 23および受光プリズム 24を側面部からネジで締め付けて固 定化するのが好ましい。また、接着剤を用いて固定化しても構わない。
なお、本実施の形態では、移動素子にねじ 21を用いたが、移動素子はこれに限定 されない。
[0050] 変形素子 27および 28としては、例えば弾性を有する材料やバネ材を用いることが できる。弾性を有する材料には、特に限定されないが、例えばアクリルゴム、ウレタン ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレ ンゴム、二トリルゴム、クロロプレンゴムまたはブチルゴムなどを用いることができる。 保持部 26を構成する材料としては、特に限定はしないが、プラスチックまたは金属 などが好ましい。金属としては、例えばアルミニウムまたはステンレスなどが好ましい。
[0051] [実施の形態 4]
図 6は、本発明の光学素子 (測定素子)を用いた本発明の実施の形態 4に係る光学 測定装置 (成分濃度測定装置)の構成を示す図であり、図中の矢印は光路を示す。 以下において、まず光学素子について説明する。なお、実施の形態 4の光学測定装 置において実施の形態 1と共通する部分については説明を省略する。
本実施の形態の光学測定装置は、光照射プリズム 13と受光プリズム 14とがスぺー サ 39を介して組み合わされており、光照射プリズム 13と受光プリズム 14との間に間 隙部からなる減光部 19を有する以外は、実施の形態 1と同様である。
本実施の形態において力 間隙部における光の屈折率力 光照射プリズム 13およ び受光プリズム 14の屈折率よりも小さいため、光照射プリズム 13を通過した光のうち 、試料を通過せずに受光プリズム 14に入射する光の量を減らすことができる。そして 、検出に不要な光が到達するのを抑制することができ、測定精度の低下を確実に抑 制すること力 Sできる。
[0052] [実施の形態 5]
図 7は、本発明の光学素子 (測定素子)を用いた本発明の実施の形態 5に係る光学 測定装置 (成分濃度測定装置)の構成を示す図であり、図中の矢印は光路を示す。 以下において、まず光学素子について説明する。なお、実施の形態 5の光学測定装 置において実施の形態 2と共通する部分については説明を省略する。
本実施の形態の光学測定装置は、光照射プリズム 13と受光プリズム 14とがスぺー サー 39を介して組み合わされており、スぺーサー 39と光照射プリズム 13との間、お よびスぺーサー 39と受光プリズム 14との間に、膜状の遮光部で構成された減光部 1 9が設けられている。
[0053] スぺーサー 39は直方体形状を有し、凹部 15は、光照射プリズム 13と、受光プリズ ム 14と、スぺーサー 39、および減光部 19の組み合わせにより略 V字状に形成されて いる。また、光照射プリズム 13において試料が接触する平面状の第 1の傾斜部 13a および受光プリズム 14における試料が接触する平面状の第 2の傾斜部 14aは、互い に向かい合うように配置され、それぞれ凹部 15の側面部を構成し、スぺーサー 19の 上面は、第 1の傾斜部 13aの下端と第 2の傾斜部 14aの下端との間に位置し、凹部 1 5の底面部を構成する。
[0054] したがって、スぺーサー 39の厚さ(幅)を変えることにより、凹部 15を通過する光の 光路を容易に変化させることができる。すなわち、スぺーサー 39を厚くすれば、光照 射プリズム 13と受光プリズム 14との間の距離が大きくなり、凹部 15に生体組織が深く 入りこみ、より深い部位の生体組織を測定することができる。また、スぺーサー 19を薄 くすれば、光照射プリズム 13と受光プリズム 14との間の距離が小さくなり、より表層の 生体組織を測定することができる。このようにスぺーサー 39の厚さを適宜設定するこ とで、生体組織を測定したレ、深さで測定することができる。
[0055] 光が通過する凹部 15の側面部は、第 1の傾斜部 13aおよび第 2の傾斜部 14aをそ れぞれ光学研磨して平滑な面とした後、第 1の傾斜部 13aと第 2の傾斜部 14aとが互 いに向かい合うように光照射プリズム 13と受光プリズム 14とをスぺーサー 39を挟んで 接合することにより容易に形成される。また、光照射プリズム 13と受光プリズム 14とを 接合する前に、平面形状の第 1の傾斜部 13aおよび第 2の傾斜部 14aをそれぞれ光 学研磨するため、第 1の傾斜部 13aおよび第 2の傾斜部 14aを容易に平滑化すること ができる。これらのこと力 、光学的精度の高い面を有する凹部 15が容易に得られる
[0056] スぺーサー 39の材料は特に限定されないが、機械的強度が高ぐ測定に用いられ る光を吸収'透過しやすぐかつ反射しにくい材質が好ましい。例えば、ガラスやブラ スチックが好ましぐ光照射プリズム 13と受光プリズム 14の屈折率よりも小さい材質を 用いれば、上述のようにスぺーサー 39に減光部としての機能を持たせることもできる スぺーサー 39の厚さ(幅)、すなわち光照射プリズム 13と受光プリズム 14との間の
距離は、特に限定されないが、例えば生体組織を測る場合は、光路長が長すぎると 水の吸収が大きくなりすぎるので、 3mm以下であるのが好ましい。
なお、減光部 19としては、上記実施の形態におけるものを採用することができる。
[0057] 以上、本発明の好ましい実施の形態について説明した力 本発明はこれらのみに 限定されるものではなぐ請求の範囲の記載に基づき、種々の構成要素の組合せに よる設計変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、凹部 15、 25は略 V字状であつたが、第 1の傾斜部 および第 2の傾斜部を曲面にして略 U字状の凹部を形成してもよぐ第 1の傾斜部お よび第 2の傾斜部を階段状にして、階段状の凹部を形成してもよい。
[0058] 上記実施の形態では、試料が指の場合について説明した力 試料は特にこれに限 定されない。指の他、例えば、 口唇、前腕および耳などの生体組織を測定することも できる。
また、実施の形態 1の変形態様においては、静止中の試料液を測定する場合を説 明したが、本発明はこれに限定されるものではなぐ流体でも測定することが可能で ある。例えば、第 1の測定カバー 20aの凹部 15に対応する側面に試料液が流入する 流路を接続し、第 2の測定カバー 20bの凹部 15に対応する側面に試料液が流出す る流路を接続し、凹部 15を、試料液を流す通路とすることで、流体中の成分も容易に 測定することができる。
産業上の利用可能性
[0059] 本発明の光学素子および光学測定装置は、例えば液体、溶液、流体および生体 組織などの成分濃度を測定する装置に好適に用いることができる。