PPAR /遺伝子の遺伝子多型に関連する表現型の判定方法 技術分野
[0001] 本発明は、 PPAR γ遺伝子における発現量が異なるアレルを識別するための遺伝 子多型、及び PPAR y遺伝子の遺伝子多型に関連する表現型の判定方法に関する 背景技術
[0002] ゲノムの同じ位置にある同じ遺伝子であっても、それが異なるアレル上にある場合 にその遺伝子発現量に差が見られる現象は、近年報告されて ヽる比較的新 Uヽ概 念で &) ( 特 S午文献丄: Knight JC. Allele— specific gene expression uncovered. Tren ds Genet. Mar;20(3): 113-6. PMID: 15049300、 2004年)。
[0003] アレル間で異なる発現を示す遺伝子というのは大きく分けて刷り込みを受ける遺伝 子(imprinted gene)と刷り込みを受けない遺伝子(non- imprinted gene)の 2種類があ る。前者は、刷り込み (imprinting)といって、ある細胞若しくは組織において、両親か ら片アレルずつ受け継いだ場合にどちらか一方が生理的にメチルイ匕などの不活ィ匕を 受けて発現が抑制されるという現象である。後者、すなわち刷り込みを受けない遺伝 子(non-imprinted gene)においても、アレル間で異なる発現差が見られる場合がある 。これは、遺伝子内若しくはそれに近接しているアレル間のゲノムの多型力 近傍の 遺伝子の発現を調節するシス作用領域 (cis-acting element)として働き、アレル間の 遺伝子発現量の差を生み出すと考えられている。後者に見られる、ゲノム DNAの配 列の違いに起因するアレルごとの発現の変化は、世代を超えて引き継がれる性質と 考えられ、個体間の遺伝子発現量の差、ひいては個人の体質の差、病態とそのリス ク、また薬剤の応答性の違いに影響することが考えられる。従って、このようなアレル 間で発現量が異なる遺伝子は疾患又は障害などの表現型と関係する可能性がある
[0004] 一方、ヒトのペルォキシソーム増殖因子活性化受容体 γ (PPAR γ又は PPARG) は、糖尿病、肥満、虚血性心疾患、炎症、脂質代謝に関わる疾患、腫瘍などの疾患
と関連していること、また薬剤ァ外ス (塩酸ピオグリタゾン)に対する薬剤応答性と関 連して 、ることが報告されて 、る(非特許文献 2:公共データベース OMIN (on-line m endenan inheritance in man) インタ ~~ネット (URL:http:/ノ www.ncDi.nlm. nih.gov/entr ez/dispomim.cgi?id=601487) )。従って、 PPAR y遺伝子の多型又はその発現量と形 質発現との関連性を調べることができれば、疾患の原因や有効な治療法などを検討 することができると考えられる。
発明の開示
[0005] そこで、本発明は、上述した実状に鑑み、 PPAR γ遺伝子の遺伝子多型又は発現 量を利用して PPAR y遺伝子に関連した表現型を判定する方法を提供することを目 的とする。
[0006] 本発明者は、上記課題を解決するため、アレル間で発現量が異なる遺伝子を判定 することができる遺伝子多型を検索するための方法を開発し、実際に当該方法を実 施したところ、ヒトのペルォキシソーム増殖因子活性ィ匕受容体 γ遺伝子がアレル間で 発現量が異なることを見出し、また、各アレルからの発現量の違いを判定することが できる遺伝子多型を見つけることができ、本発明を完成するに至った。
[0007] すなわち、本発明は、以下のいずれかのステップを含む、 PPAR y遺伝子に関連 した疾患の存在の可能性若しくは発症リスク、又は PPAR γ遺伝子に関連した薬剤 応答性の判定方法である:
(a)試料中のペルォキシソーム増殖因子活性化受容体 γ (PPAR γ )遺伝子の核内 RNA (—次転写産物)又は mRNAから増幅した cDNAを用いて、 PPAR γ遺伝子 の遺伝子多型をタイピングするステップ、
(b)試料中のペルォキシソーム増殖因子活性ィ匕受容体 γ (PPAR γ )遺伝子のゲノ ム DNAを用いて、 PPAR γ遺伝子の遺伝子多型をタイピングするステップ、
(c)試料中のペルォキシソーム増殖因子活性化受容体 γ (PPAR γ )遺伝子の発現 量を測定するステップ。
[0008] 上記判定方法において、 PPAR γ遺伝子の遺伝子多型は、一塩基多型 rs 10510 410、 rsl0510411及び rsl0510410、並びに該ー塩基多型の近傍に存在する遺 伝子多型及び該ー塩基多型と連鎖不均衡にある遺伝子多型からなる群より選択され
る少なくとも 1つの多型とすることができる。
[0009] またタイピングした rsl0510410、 rsl0510411及び rsl0510412の遺伝子多型 がそれぞれ CC、 AA及び AAのホモ接合体である場合には、例えば PPAR y遺伝子 の過剰発現に関連した疾患の存在の可能性若しくは発症リスク、又は PPAR y遺伝 子の過剰発現に関連した薬剤応答性があると判定する。
[0010] ここで、 PPAR y遺伝子に関連した疾患としては、限定されるものではないが、糖尿 病、肥満、虚血性心疾患、炎症、脂質代謝にかかわる疾患、及び腫瘍などが挙げら れる。
[0011] また、上記判定方法において、 PPAR y遺伝子に関連した薬剤応答性は、例えば ァクトス (塩酸ピオグリタゾン)に対する応答性である。
[0012] 本発明により、 PPAR y遺伝子に関連した表現型を判定する方法が提供される。
すなわち、 PPAR y遺伝子に関連した疾患の存在の可能性や発症リスク、又は PPA R T遺伝子に関連した薬剤応答性を判定することが可能となる。本発明に従って疾 患の存在や薬剤応答性を判定することによって、疾患の早期発見や有効な治療法 の検討などを行うことができるため、本発明は医療及び薬学分野において有用であ る。
図面の簡単な説明
[0013] [図 l]PPAR y遺伝子上の SNPの位置を示す図である。
[図 2]ダイレクト 'シーケンス法を用いた SNPの確認の概要を示す図である。
[図 3A]日本人 30人の抹消血リンパ球の PPARG遺伝子の発現量と遺伝子多型のタ ィビングとの相関を示す図である。
[図 3B]日本人 30人の抹消血リンパ球の PPARG遺伝子の発現量と遺伝子多型のタ ィビングの度数分布を示す図である。
[図 3C]PPARG遺伝子のハプロタイプ Mと mのアレルを示す図である。
発明を実施するための最良の形態
[0014] 以下、本発明を詳細に説明する。本願は、 2004年 12月 22日に出願された日本国 特許出願第 2004— 371948号の優先権を主張するものであり、上記特許出願の明 細書及び Z又は図面に記載される内容を包含する。
[0015] 本発明者は、アレル間で発現量が異なる遺伝子を判定することができる遺伝子多 型を検索するための方法を開発し、実際に当該方法を実施したところ、ヒトのペルォ キシソーム増殖因子活性化受容体 γ (PPAR y又は PPARG)遺伝子がアレル間で 発現量が異なることを見出し、また、各アレルからの発現量の違いを判定することが できる遺伝子多型を見つけることができた。そのため、 PPAR y遺伝子の発現量、及 び PPAR y遺伝子の遺伝子多型は、 PPAR y遺伝子に関連する表現型、例えば疾 患の存在や疾患の発症リスク、薬剤応答性に関係して 、る可能性がある。
[0016] ここで、 PPAR y遺伝子は、公知の遺伝子であり、その転写産物(mRNA)の塩基 配列は NM015869、 NM005037、 NM138711及び NM138712として登録され ている。また、 PPAR γ遺伝子は、糖尿病、肥満、虚血性心疾患、炎症、脂質代謝に かかわる疾患、腫瘍 (大腸癌、乳癌、前立腺癌、甲状腺癌、脳腫瘍、血液腫瘍、下垂 体腫瘍等)などの疾患と関連して 、ることが報告されて 、る。また PPAR y遺伝子は 、薬剤ァ外ス (塩酸ピオグリタゾン)に対する薬剤応答性と関連していることが報告さ れている。 PPAR γ遺伝子の機能及び性質については、公共データベース ΟΜΙΝ ( on-line mendenan inheritance in man) (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/disp omim.cgi?id=601487)を参照された!ヽ。
[0017] 従って、本発明に係る方法は、 PPAR γ遺伝子の発現量を測定するカゝ、又は ΡΡΑ R T遺伝子の遺伝子多型をタイピングし、その結果に基づいて、 PPAR γ遺伝子に 関係する疾患の存在若しくは疾患の発症リスク、又は薬剤応答性を判定するもので ある。ここで、「疾患の存在」とは、すでに疾患に罹患していることを意味する。また、「 発症リスク」とは、疾患への罹りやすさ (感受性)又は罹りにくさ (抵抗性)を意味し、「 発症リスクが高い」とは、他の被験者と比較して、特定の多型を有する被験者が疾患 を発症する確率が高いことを意味し、一方「発症リスクが低い」とは、他の被験者と比 較して、特定の多型を有する被験者が疾患を発症する確率が低 、ことを意味する。 また、「薬剤応答性」とは、薬剤に対する被験者の応答性を意味し、例えば、薬剤に 対して顕著な効果を示す被験者 (good responder)、薬剤の有効性が低い被験者 (po or responder)及び薬剤の効果を全く示さない被験者 (non responder)に分類すること ができる。
[0018] 本方法は、具体的には以下のいずれかのステップを含むものである:
(a)試料中のペルォキシソーム増殖因子活性化受容体 γ (PPAR γ )遺伝子の核内 RNA (—次転写産物)又は mRNAから増幅した cDNAを用いて、 PPAR γ遺伝子 の遺伝子多型をタイピングするステップ、
(b)試料中のペルォキシソーム増殖因子活性ィ匕受容体 γ (PPAR γ )遺伝子のゲノ ム DNAを用いて、 PPAR γ遺伝子の遺伝子多型をタイピングするステップ、
(c)試料中のペルォキシソーム増殖因子活性化受容体 γ (PPAR γ )遺伝子の発現 量を測定するステップ。
[0019] 本方法において、試料は、ヒト被験者に由来する生物学的試料であれば特に限定 されるものではなぐ例えば血液、唾液、リンパ液、気道粘液、骨髄液、尿、腹腔液等 の体液、細胞、組織等である。 PPAR γ遺伝子は血球系、脂肪細胞などで発現され ることが多!、ため、そのような細胞が含まれる試料を用いることが好ま 、。
[0020] 核内 RNA又は mRNAからの cDNAの合成は、当技術分野で公知の方法に従つ て行うことができる。ここで「核内 RNA」とは、ゲノム DNAから転写された後、スプライ シングを受けておらず、そのため細胞質には移行せず、まだ核内に存在している一 次転写産物(primary transcript)をいう。すなわち、核内 RNAは、ゲノム上のェキソン 及びイントロンの両方を含み、長い鎖長を有するものが多い。例えば、試料から総 R NA、細胞質 RNA又は核内 RNAを抽出した後、得られた RNAから PPAR γ遺伝子 に特異的な cDNA合成用プライマーを使用して選択的に cDNAを合成してもよいし 、あるいは得られた RNA力 ランダムプライマー又はポリ Tプライマーを使用して cD NAを合成した後、 PPAR γ遺伝子に特異的な増幅用プライマーを使用して選択的 に cDNAを増幅することができる。 RNAの抽出は当技術分野で公知の方法、例えば 、総 RNAを抽出する場合には、 AGPC (酸グァ -ジゥムーフエノールークロロホルム) 法などを用いて行うことができる。また PPAR γ遺伝子の合成用プライマー又は増幅 用プライマーの設計は、当技術分野で公知の一般的なプライマー設計法に従って行 うことができる。
[0021] ゲノム DNAの抽出は、当技術分野で公知の方法(フ ノール'クロ口ホルム法など) 又は市販のキットを用いて行うことができる。
[0022] cDNA又はゲノム DNAにおける遺伝子多型(SNP又はハプロタイプなど)のタイピ ング (検出)は、当技術分野で公知の手法を用いて行うことができる。例えば、遺伝子 多型のタイピングは、一の遺伝子多型に特異的なプローブとのハイブリダィゼーショ ンにより行うことができる。プローブは、必要に応じて、蛍光物質や放射性物質等の 適当な手段により標識することができる。プローブは、遺伝子多型部位を含み、 cDN Aと特異的にハイブリダィズするものである限りいかなるものでもよぐ具体的なプロ一 ブの設計は当技術分野で公知である。また、ハイブリダィゼーシヨンの条件も、遺伝 子多型を区別するのに十分な条件であればよぐ例えば一の遺伝子多型の場合に はハイブリダィズする力 他の遺伝子多型の場合にはハイブリダィズしな 、ような条件 、例えばストリンジェントな条件であり、このような条件は当業者に公知である。
[0023] プローブは、一端を基板に固定して DNAチップ (マイクロアレイ)として用いることも できる。この場合、 DNAチップには、一の遺伝子多型に対応するプローブのみが固 定されていても、両方の遺伝子多型に対応するプローブが固定されていてもよい。こ のような DNAチップを用いた遺伝子多型の検出は、例えば「DNAマイクロアレイと最 新 PCR法」、村松正明及び那波宏之監修、秀潤社、 2000年、第 10章などに記載さ れている。
[0024] DNAチップを用いた遺伝子多型の検出の具体的な例として、 Aifymetrix社製の Ge neChip (登録商標) Human Mapping 100K arrayを用いる方法について説明する。 Gen eChip (登録商標) Human Mapping 100K arrayは、 2枚のアレイを含み、ゲノム上に存 在する 100, 000個を超える SNPの検出を行うことができるアレイである。使用方法 は、試料 (ゲノム、 cDNAなど)を制限酵素 (Xbal若しくは Hindlll)で切断し、ァダプ ターをつけて、そのアダプターに特異的な 1種類のプライマー(Xbal、 Hindlllにつ いてそれぞれ 1種類ずつ)を用いて PCR反応により増幅し、ラベリングを行う。 2枚の アレイは各 SNPのアレルごとに相補的になるように設計されており、ハイブリダィゼー シヨン後、シグナルに基づいて試料の SNPを判定し、また各アレルの発現量をシグ ナル強度又はシグナル比に基づ 、て比較することができる。この DNAチップの詳細 については、 http://www.afiymetnx.co.jp/ products/ arrays/ specific/ 100k. S.tJ^htmln ttp:〃 www.afiymetrix.co.jp/pdf/Mapping_100K.pdfC公開されている製品情報及び
データシートを参照された 、。
[0025] また、遺伝子多型は、上述した以外にも、当業者に公知のあらゆる方法によってタ ィビングすることができる。そのような方法としては、遺伝子多型に特異的なプライマ 一を用いる方法、制限断片長多型 (RFLP)を利用する方法、直接配列決定法、変 性勾配ゲル電気泳動法 (DGGE)、ミスマッチ部位の化学的切断を利用した方法 (C CM)、プライマー伸長法(PEX)、インベーダー(Invader)法、定量的リアルタイム P CR検出法 (TaqMan法)等を用いることができる。
[0026] 本方法においては、簡便かつ迅速に遺伝子多型をタイピングすることができる DN Aチップ (マイクロアレイ)を使用することが好まし 、。
[0027] 本方法にお!、て、タイピングすべき PPAR γ遺伝子の遺伝子多型としては、一塩基 多型 rsl0510410、 rsl0510411及び rsl0510410、並びにそれらの近傍に存在 する遺伝子多型及びそれらと連鎖不均衡にある遺伝子多型からなる群より選択され る少なくとも 1つの多型である。好ましくは、 rsl0510410、 rsl0510411及び rsl05 10410からなるハプロタイプをタイピングすることが好ましい。ここで、 2004年 4月に 報告された Human Genome Build34 (http://genome.ucsc.edu/)によると rsl051041 0は染色体 3番の 12321738番目に位置する AZCの SNPであり、 rsl0510411は染 色体 3番の 12321849番目に位置する GZAの SNPであり、 rsl0510412は染色体 3 番の 12321962番目に位置する GZAの SNPである。
[0028] PPAR y遺伝子の一塩基多型 rsl0510410、 rsl0510411、及び rsl0510412 をタイピングするには、例えば上述した GeneChip (登録商標) Human Mapping 100K a rray (Affimetrix社製)を用いることができる。具体的には、限定するものではないが、 下記のプローブを用いることができる:
rsl0501410 :
tagataaaaatatacttcacttcca[ /T]attacactcagagacaaccaaaggc (目 cl歹 号丄ノ rsl0510411 :
gttgctctttatgagacgaaataaa[A/Gjttggatgtcacttataaatggattt (酉己列 号 2) rsl0510412 :
ttaggagttattcaacaagccatta [し/ Ί jgcttacaaaaatttatgagtcaaag (目 3列 ¾·号 3)
また、上記遺伝子多型の近傍に存在する遺伝子多型とは、上記遺伝子多型から、 約 30, OOOkb以内、好ましくは約 10, OOOkb以内に位置する遺伝子多型である。こ のような近傍に存在する遺伝子多型は、染色体組換え時に一緒に組換わる確率が 高い。また、上記遺伝子多型と連鎖不均衡にある遺伝子多型とは、上記遺伝子多型 と関連性のある遺伝子多型であり、具体的には、上記遺伝子多型が Xである場合に は、常に別の遺伝子多型が Yとなるという関係が成立するようなものである。
[0029] 上記 rsl0510410、 rsl0510411及び rsl0510412の遺伝子多型がそれぞれ C C、 AA及び AAのホモ接合体である場合には、 PPAR y遺伝子の発現量が多いと いう結果が得られたため(実施例 2)、当該ホモ接合体を有する被験者は、 PPAR y 遺伝子の過剰発現に起因する疾患の存在の可能性若しくは発症リスクがある、また P PAR γ遺伝子の過剰発現に関連した薬剤応答性があると判定することができる。
[0030] また本方法においては、 PPAR y遺伝子の発現量を測定することにより、 PPAR y 遺伝子と関連する表現型を判定することもできる。この PPAR y遺伝子の発現量の 測定にぉ ヽては、 PPAR y遺伝子の転写産物(核内 RNA又は mRNA)を測定して もよいし、又は PPAR y遺伝子によりコードされるタンパク質を測定してもよい。このよ うな遺伝子発現量の測定は、当技術分野で周知であり、任意の方法により行うことが できる。
[0031] 上記判定方法は、 PPAR γ遺伝子上の上記遺伝子多型を検出することができる手 段を含むキットを用いることにより簡便に行うことができる。従って、本発明は、かかる PPAR γ遺伝子に関連する疾患又は薬剤応答性の判定キットも包含する。 PPAR y 遺伝子上の遺伝子多型を検出することができる手段としては、上記遺伝子多型を有 する核酸と特異的にハイブリダィズすることができるオリゴヌクレオチドプローブ、上記 遺伝子多型を有する核酸を铸型として特異的な増幅反応を行うことができるプライマ 一セット、制限断片長多型 (RFLP)を利用する方法、直接配列決定法、変性勾配ゲ ル電気泳動法 (DGGE)、ミスマッチ部位の化学的切断を利用した方法 (CCM)、プ ライマー伸長法(PEX)、インベーダー(Invader)法、定量的リアルタイム PCR検出 法 (TaqMan法)等などが挙げられる。そのほか、判定キットは、ポリメラーゼ、ノ ッフ ァー、 dNTP、標識及び検出用試薬 (蛍光など)、説明書などを含んでもよい。
実施例
[0032] 以下、実施例を用いて本方法をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこ れら実施例に限定されるものではない。
[0033] 〔実施例 1〕
本実施例にぉ 、ては、アレル間で発現量に差異のある遺伝子の検索を行った。
[0034] EBウィルスにて株化したリンパ球 BL1395 (ATCC CRL— 5957)及び BL2122 ( ATCC CRL— 5967)の総 RNAそれぞれ 1 μ gを DNAase処理をした後に逆転写 酵素(Invitrogen社 Superscriptlll RT enzyme)を用いて、添付プロトコールどおり逆転 写して 1本鎖 cDNAを作製した。得られた反応液 20 はり1 1を精製なしに、 Amers ham Bioscienceより発売されている商品名 Genomiphiのプロトコールどおりのランダム プライマー及び phi29酵素の入った反応溶液に添カ卩し、 30°Cにて 16時間の反応を 行い、それぞれ 2. 34 g及び 2. 27 gの収量の cDNAを得た。
[0035] 増幅した cDNAを用いて、 100Kアレイのプロトコール(Affimetrix) (http://www.alf ymetnx.com/ support/ downloads/ manuals/ 100k_manual.pdf)にした力つて 250ng»り 反応をスタートした。具体的には、増幅した cDNAと、同様に phi29で増幅したゲノム DNAとを、通常の 100Kのプロトコールにしたがって増幅した後、そのシグナル強度 の比(cDNAのシグナル強度 Zゲノム DNAのシグナル強度)を取り、その度数分布 を調べた。このようにしてシグナル強度の比を求めることにより、配列の差異が生み出 す二次構造の差によって phi29によって増えやすい配列と増えにくい配列がある(増 幅のバイアス)力 cDNAのシグナル値を phi29で増幅したゲノムのシグナル値で割 ることによって、こうした増幅のバイアスを除くことができた。
[0036] その結果、シグナル比の低いところにはノイズと思われる正規分布曲線に近い形が あらわれ、そこでは遺伝子のな ヽ領域に存在する遺伝子多型に基づくシグナル (プロ ーブセット)が多力つた。この度数分布の形及びプローブセットとゲノム上の遺伝子と の位置関係から、このアツセィによって遺伝子(cDNA)由来のシグナルとノイズが分 離出来ており、 cDNAとゲノムとのシグナル比の測定によって、シグナル比の高い部 分を、発現遺伝子(主に核内 RNA由来の cDNA)によるシグナルであると考えてよい ことがわかった。
[0037] このようにして一方のアレルと他方のアレルとの間の発現量の差異を、 cDNAZゲ ノム比を利用して比較したところ、ヒトペルォキシソーム増殖活性ィ匕受容体 γ (PPAR G)遺伝子に存在する 3つの一塩基多型(SNP)において有意差があった。そのため 、 PPARG遺伝子をアレル間で発現量に差がある遺伝子として選択した。
[0038] 〔実施例 2〕
本実施例にぉ 、ては、 PPARG遺伝子のアレル間の発現差を調べた。
[0039] 100Kアレイに含まれる 50K Xbalアレイにはゲノム上の PPARG遺伝子領域に合 計 7箇所の SNPの位置にプローブセットが設計されて 、る。実施例 2で行ったリンパ 球 BL1395の解析で ίま、上流【こ近!ヽ 300bp以内【こ近接した rsl0510411、 rsl051 0411及び rs 10510412 (NCBI dbSNPデータベース ID)の 3つの SNPがゲノムの タイピングで多型で(すなわち二つのアレルが区別可能で)あった。この 3つの SNP の PPARG遺伝子上の位置を図 1に示す。図 1中、白抜きの星印力 PPARG遺伝 子のアレル間の発現量の差異を判定することができる SNP (informative SNP)で ある。
[0040] V、ずれの位置の SNPにつ!/、ても両アレル間の発現比(アレル Aとアレル Bとの cDN AZゲノム比の比)は、表 1に示すとおり 4倍以上であった。
[表 1]
[0041] この 3つの SNPを含む領域をダイレクト 'シーケンス法によりアレルの存在比を確認 した。その概要は図 2に示すが、例えば BL1395のサンプルにおける rsl0510410 の場合には、図のようにゲノム DNA (c)においては AZCのへテロであり、それは phi 29で増幅されたゲノム DNA (a及び b)においても変化はなかった。一方、 phi29で 増幅された cDNAにおいてはアレル Aからのシグナルが低下しほぼアレル Cのみの 波形になっている。すなわち、ゲノム上で rsl0510410は AZCのへテロであるが、
実際に発現される遺伝子にぉ 、ては Cのアレル力もの発現量が多 、ことがわかる。こ の結果は 50K Xbalアレイの結果と一致していた。 BL2122のリンパ球では PPAR G遺伝子の発現は認められなかった。
[0042] またこの 3つの SNPについて、 日本人 30人をダイレクト 'シーケンス法によってタイ ビングし、抹消血リンパ球の PPARG遺伝子の発現との相関を調べた。すなわち、上 記 3つの SNPのタイプと PPARG遺伝子の発現量との関係について分析した。 PPA RG遺伝子の発現解析には Amersham Bioscience社発現解析用アレイ CodeLinkを 通常のプロトコールどおりに使用し、各アレイの総プローブのシグナルを中央値が 1と なるように平均化した。
[0043] その結果、図 3A及び 3B (表と度数分布)に示すように、検体は、 日本人 30人にお ける存在頻度に応じて、 rsl0510411、 rsl0510411及び rsl0510412においてそ れぞれ C型、 A型及び A型である存在頻度の低いアレル (m)のホモ型、 rsl051041 1、 rsl0510411及び rsl0510412においてそれぞれ A型、 G型及び G型である存 在頻度の高 、アレル (M)のホモ型、並びにこれらのヘテロ型に分類することができた 。存在頻度の低いアレルのホモ型 (mm型とする。図 3 A及び 3Bで網掛けで表示)で はそれ以外 (mM及び MM型とする)のものに比して発現値が高く(mmの平均値 1. 58に対しそれ以外 0. 80)、特に発現の特に高い上位 3検体のうち 2検体で mmであ つた o
[0044] 以上の結果から、これらの SNP (ノヽプロタイプ)の存在が PPARG遺伝子の発現量 と相関し、個人の PPARG活性、 PPARGとの関連が示唆される病気の診断、スクリ 一-ング及び PPARGを標的とする薬剤の応答性を調べるためにこれらの SNPタイ ビングが有効であることが示された。
[0045] またこれらの 30人の検体で 3箇所の SNP (rsl0510411、 rsl0510411及び rslO 510412)においてメジャーアレル Mとマイナーアレル mの組み合わせが全て一致す ること(図 3A)より、 3つの SNPは完全に連鎖不均衡の状態にあってハプロタイプを 形成し、図 3Cに示すように二つのハプロタイプ M及び mが存在しハプロタイプ mが P PARGの発現量の高!、ほうであると考えられた(図 3A)。このハプロタイプ内及びそ れと連鎖不均衡にある周辺の SNPを調べることによつても上記の目的が達成できると
考えられた。
産業上の利用の可能性
[0046] 本発明により、 PPAR y遺伝子に関連した表現型を判定する方法が提供される。
すなわち、 PPAR y遺伝子に関連した疾患の存在の明確ィ匕ゃそれらの疾患の治療 薬の開発、 PPAR y遺伝子に関連する薬剤による適応症の拡大や薬剤評価、新た な治療薬の開発、発症リスク診断、又は PPAR y遺伝子に関連した薬剤応答性を判 定することが可能となる。本発明に従って疾患の存在や薬剤応答性を判定すること によって、疾患の早期発見や診断、有効な薬剤の選択や副作用の予測、それに基 づく治療法の検討などを行うことができるため、本発明は診断、医療及び医薬品産業 において有用である。
配列表フリーテキスト
[0047] 配列番号 1 : 26番目の kは g又は tを表す
配列番号 2: 26番目の rは a又は gを表す
配列番号 3: 26番目の yは c又は tを表す
配列番号 4〜6:ヒトペルォキシソーム増殖因子活性ィ匕受容体 γの部分配列(配列 番号 6における ηは g又は tを表す)