JP6788879B2 - 末梢動脈疾患検査方法及び検査用試薬 - Google Patents

末梢動脈疾患検査方法及び検査用試薬 Download PDF

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Description

本発明は、末梢動脈疾患の発症リスク及び/又は発症の有無を検査する方法並びにその検査用試薬に関する。
末梢動脈疾患(PAD)は、主にアテローム性動脈硬化によって引き起こされる、頸動脈、腸間膜、腎臓、上肢及び下肢を含む複数箇所への血液供給の阻止によって特徴付けられる。下肢動脈の慢性虚血性変化は、当該疾患において最も一般的なものであり、深刻な障害を引き起こし、患者のクオリティオブライフを低減させる。また、PADの患者は、PADではない人々と比較して、およそ3倍の主な心血管疾患発症リスクと死亡率を有することも知られている。PADは、現在、アテローム性動脈硬化関連の血管疾患による死亡の主要原因の第3位であるとみられている。PAD患者数は過去10年間で20%増加しており、罹患率は全世界的に増加すると予想されている。
これまでに知られているPADのリスクファクターとしては、性別、年齢、及び喫煙が挙げられており、高血圧、脂質代謝異常、及び糖尿等の病気とも関連していることが知られている。それらの病気自体は遺伝的な感受性を有するが、ポジティブなPAD家族歴はPADとは独立した予測因子であることが示されていた。スウェーデンの双生児レジストリは、PADに罹患している双子間ではPADがハイリスクであることを報告しており、遺伝的な効果及び共有しない環境効果における発症率変動が、それぞれ58%と42%であると見積もった(非特許文献1)。PADについて、同胞研究に加えて、多数の候補遺伝子及び連鎖解析が行われたが、全体を通して決定的なものは未だに知られていない(非特許文献2)。PADは、複数の環境ファクターによって影響される多遺伝子性の疾患であると考えられているので、遺伝的ファクターを同定するにはより体系的なアプローチが必要とされていた。
Wahlgren,C.M. and Magnusson,P.K. (2011) Genetic influences on peripheral arterial disease in a twin population. Arterioscler Thromb Vasc Biol., 31, 678-682. Leeper,N.J., Kullo,I.J., Cooke,J.P. (2012) Genetics of peripheral artery disease. Circulation., 125, 3220-3228
本発明は、末梢動脈疾患(PAD)を検査する方法、並びに該方法に用いられる検査用試薬を提供することを課題とする。
本発明者らは、PADの感受性部位を同定するために、431,754個の一塩基多型(SNP)を使用して、日本人集団の785名の患者群と3,383名の対照群におけるゲノムワイド関連解析(GWAS)を行った。総計3,164名の患者群と20,134名の対照群を含む段階的な解析の後、本発明者らは、3つの新規なPAD感受性遺伝子を、IPO5/RAP2A、EDNRA及びHDAC9の近傍部位にゲノムワイド有意性をもって同定した。そして、これらの多型を調べることにより、PADの発症リスクおよび/または発症の有無を検査できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]被検者の第13染色体長腕32領域(13q32.2)のIPO5/RAP2A遺伝子近傍に存在する一塩基多型、第4染色体長腕31領域(4q31.2)のEDNRA遺伝子近傍に存在する一塩基多型、及び/若しくは第7染色体短腕21領域(7p21.1)のHDAC9遺伝子近傍に存在する一塩基多型、並びに/又はそれらの塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基における一塩基多型を解析し、該解析結果に基づいて被検者の末梢動脈疾患を検査することを特徴とする、末梢動脈疾患の発症リスクおよび/または発症の有無の判定方法。
[2]前記一塩基多型が、配列番号1〜3から選ばれる1種又は2種以上の塩基配列の塩基番号101番目の塩基に相当する塩基、及び/又は該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基における一塩基多型である、[1]に記載の方法。
[3]前記末梢動脈疾患が、動脈硬化によるものである、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記末梢動脈疾患が、四肢の動脈の狭窄又は閉塞を起こすものである、[1]〜[3]のいずれか一に記載の方法。
[5]被検者の第13染色体長腕32領域(13q32.2)のIPO5/RAP2A遺伝子近傍に存在する一塩基多型、第4染色体長腕31領域(4q31.2)のEDNRA遺伝子近傍に存在する一塩基多型、及び/若しくは第7染色体短腕21領域(7p21.1)のHDAC9遺伝子近傍に存在する一塩基多型、並びに/又はそれらの塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基における一塩基多型を解析可能なポリヌクレオチドを含む、末梢動脈疾患検査用試薬。
[6]前記一塩基多型が、配列番号1〜3から選ばれる1種又は2種以上の塩基配列の塩基番号101番目の塩基に相当する塩基、及び/又は該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基における一塩基多型である、[5]に記載の試薬。
[7]配列番号1〜3から選ばれる塩基配列において、塩基番号101番目の塩基を含む10塩基以上の配列、又はその相補配列を有する末梢動脈疾患検査用プローブ。
[8]配列番号1〜3から選ばれる塩基配列において、塩基番号101番目の塩基を含む領域を増幅することのできる末梢動脈疾患検査用プライマー。
[9]IPO5遺伝子からのmRNAまたはタンパク質の発現量を測定する工程を含む、末梢動脈疾患の検査方法。
本発明によれば、PADの発症リスク(罹患リスク)および/または発症の有無を簡便に検査することができる。したがって、本発明はPADの早期診断による予防や治療に貢献するものである。
(a)GWASにおける集団の主成分分析(PCA)を示す。HapMapプロジェクトからのヨーロッパ人(CEU)、アフリカ人(YRI)及び東アジア人(JPT及びCHB)データと共に、GWASに使用した患者群と対照群との間における関連度が解析された。各個人が、固有ベクトルファクターの第1成分(X軸)及び第2成分(Y軸)を有する2次元のグラフにプロットされた。(b)HapMapプロジェクトからの東アジア人(JPT及びCHB)データと共に、関連度が解析された結果を示す。 (a)GWASのマンハッタンプロット、及び(b)GWASのquantile-quantileプロットを示す。 13q32.2の感受性領域の局地的プロットを示す図。遺伝子の位置はUCSCゲノムブラウザを使用して注釈されている。ひし形の点は最も顕著に関連性のあったSNPを示す。 4q31.2の感受性領域の局地的プロットを示す図。遺伝子の位置はUCSCゲノムブラウザを使用して注釈されている。ひし形の点は最も顕著に関連性のあったSNPを示す。 7q21.1の感受性領域の局地的プロットを示す図。遺伝子の位置はUCSCゲノムブラウザを使用して注釈されている。ひし形の点は最も顕著に関連性のあったSNPを示す。 rs9584669-IPO5プロモーターコンストラクトを用いたルシフェラーゼアッセイの結果を示す。rs9584669SNPの非リスクアレルを含むクローンは、リスクアレルを含むクローンよりも約2.5倍高い転写活性を示した。評価はstudent’s t-testで行われた。図中、「NR」及び「R」は、「非リスクアレル」及び「リスクアレル」を、それぞれ示す。図中、「(+)」は、イオノマイシン及びPMAにより刺激して6時間後の結果を示す。 IPO5のデュアルレポータールシフェラーゼアッセイの結果を示す。全ての6SNPにおいて、リスクアレルと非リスクアレルとの間に転写活性の違いは観察されなかった。 RAP2Aのデュアルレポータールシフェラーゼアッセイの結果を示す。全ての7SNPにおいて、リスクアレルと非リスクアレルとの間に転写活性の違いは観察されなかった。
<1>本発明の方法
本発明の方法は、ヒトの第13染色体長腕32領域(13q32.2)、第4染色体長腕31領域(4q31.2)、及び第7染色体短腕21領域(7p21.1)に存在するSNPを解析し、該解析結果に基づいて被検者の末梢動脈疾患の発症リスク及び/又は発症の有無を検査することを特徴とする、末梢動脈疾患の発症リスク及び/又は発症の有無の判定方法である。すなわち、本発明において、「検査」とは末梢動脈疾患の発症リスク及び/又は発症の有無の検査を含む。本発明の方法においては、SNPの解析結果を、末梢動脈疾患の発症リスク及び/又は発症の有無と関連付ける。本発明の方法においては、SNPを検査する試料を被検者から得る工程をさらに含めても良い。
末梢動脈疾患には、末梢動脈において血管の狭窄又は閉塞が起こった結果、血行不良または血流遮断等の血流障害を起こす疾患を全て含む。例えば、閉塞性動脈硬化症やバージャー病等が例示される。末梢動脈には、心臓及び冠動脈以外の動脈を全て含み、例えば、上肢又は下肢等の四肢の動脈、胸部又は腹部の大動脈、腹部内臓の動脈、頚動脈、鎖骨下動脈、腸骨動脈等が含まれる。血管の狭窄又は閉塞は、動脈硬化により生じることが多いが、他に血管炎や形成異常等によっても起こり得るものであり、その原因はいかなるものであってもよい。また、急性及び慢性の狭窄又は閉塞のどちらも含まれる。本発明の方法においては、他疾患との併発例も含む。たとえば、冠動脈等における循環障害を起こす冠動脈疾患を、末梢動脈疾患と併発している例も含む。
本発明の方法は、いずれの人種の被検者に対しても用いることができるが、特に、日本人等のアジア人の被検者に好適に用いることができる。また、本発明の方法は、男女いずれの性別、いずれの年齢の被検者に対しても用いることができるが、末梢動脈疾患のリスクファクターが高いとされている男性や高齢者に対して好適に用いることができる。
本発明の方法は、高齢、喫煙歴あり、糖尿病患者、高血圧患者、及び脂質異常症患者等の動脈硬化の危険因子を有している被検者には好適である。また、チアノーゼ、冷感、蒼白、下肢の委縮、潰瘍、壊死等の局所所見に基づくFontaine分類や、足関節上腕血圧比等の末梢動脈疾患の評価方法により、末梢動脈疾患が疑われる被験者にも好適である。末梢動脈疾患は、重症化すると壊死部を切断しなければならないこともあるため、早期発見及び早期治療が大変重要である。そのため、特に自覚症状がない場合であっても、定期的に健康診断等により本発明の方法を適用することが好ましい。
第13染色体長腕32領域(13q32.2)のIPO5/RAP2A遺伝子近傍に存在するSNPとしては、ヒトのSNPのID番号:rs9584669を挙げることができる。ここで、rs番号はNational Center
for Biotechnology InformationのdbSNPデータベース(http//www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/)の登録番号を示す。当該SNPを含む配列情報は、GenBank(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/)等より入手可能である。IPO5遺伝子としては、例えば、GenBank
Accession No. NC_000013.11 の97953638〜98024296の領域が挙げられる。RAP2A遺伝子としては、例えば、GenBank Accession No. NC_000013.11の97434221〜97467998の領域が挙げられる。本発明における「IPO5/RAP2A遺伝子近傍」とは、IPO5遺伝子またはRAP2A遺伝子から250Kb以内の範囲を意味し、または、図3で示す通り、13番染色体の97.0〜97.3Mbの範囲を意味する。
rs9584669は、GenBank Accession No. NT_009952.15の11458249番目の塩基におけるSNPである。また、この多型は、配列番号1で表される塩基配列の第101番目の塩基に相当する塩基におけるチミン(T)/シトシン(C)の多型を意味し、この塩基がT(リスクアレル)である場合には末梢動脈疾患の可能性または発症リスクが高いと判定できる。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>TC>CCの順で末梢動脈疾患の可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基がTである被験者には、末梢動脈疾患の治療を行うことが考えられる。
第4染色体長腕31領域(4q31.2)のEDNRA遺伝子近傍に存在するSNPとしては、ヒトのSNPのID番号:rs6842241を挙げることができる。EDNRA遺伝子としては、NC_000004.12 の147480917〜147544954が例示される。本発明における「EDNRA遺伝子近傍」とは、IEDNRA遺伝子から250Kb以内の範囲を意味し、または、図4で示す通り、4番染色体の148.4〜148.7Mbの範囲を意味する。rs6842241は、GenBank Accession No. NT_016354.20の88558286番目の塩基におけるSNPである。この多型は、配列番号2で表される塩基配列の第101番目の塩基に相当する塩基におけるシトシン(C)/アデニン(A)の多型を意味し、この塩基がA(リスクアレル)である場合には末梢動脈疾患の可能性又は発症リスクが高いと判定できる。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AC>CCの順で末梢動脈疾患の可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基がAである被験者には、末梢動脈疾患の治療を行うことが考えられる。
第7染色体短腕21領域(7p21.1)のHDAC9遺伝子近傍に存在するSNPとしては、ヒトのSNPのID番号:rs2074633を挙げることができる。HDAC9遺伝子としては、NC_000007.14 の18086942〜18999521が例示される。本発明における「HDAC9遺伝子近傍」とは、HDAC9遺伝子から250Kb以内の範囲を意味し、または、図5で示す通り、7番染色体の18.9〜19.2Mbの範囲を意味する。rs2074633は、GenBank Accession No. NT_007819.18の18986297番目の塩基におけるSNPである。この多型は、配列番号3で表される塩基配列の第101番目の塩基に相当する塩基におけるアデニン(A)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基がG(リスクアレル)である場合には末梢動脈疾患の可能性又は発症リスクが高いと判定できる。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、GG>GA>AAの順で末梢動脈疾患の可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基がGである被験者には、末梢動脈疾患の治療を行うことが考えられる。
本発明においては、上記SNPに相当する塩基を解析する。「上記SNPに相当する塩基」とは、上記配列がSNP以外の位置で個体差等により若干変化していても、その前後配列に鑑みれば、当該SNPであると認定できる塩基を意味する。
また、本発明において解析するSNPは、上記3つのものに限定されず、上記のSNPと連鎖不平衡にあるSNPを解析してもよい。ここで「上記のSNPと連鎖不平衡にあるSNP」とは、上記のSNPとr2(連鎖不平衡係数)>0.5、好ましくはr2>0.8、さらに好ましくはr2>0.9の関係を満たすSNPをいう。また、上記のSNPと連鎖不平衡にあるSNPは、例えば、HapMapデータベース(http://www.hapmap.org/index.html.ja)等を用いて同定する
ことができる。もしくは、30人程度から採取したDNAの塩基配列を解析し、連鎖不平衡にあるSNPを探索することにより同定してもよい。上記の塩基と連鎖不平衡にある塩基は、遺伝子型を考慮して解析した場合は、リスクアレルのホモ接合体 > リスクアレルと非リスクアレルのへテロ接合体 > 非リスクアレルのホモ接合体の順で末梢動脈疾患の可能性または発症リスクが高い。そのような連鎖不平衡にあるSNPとしては、たとえばrs9556806, rs9805548, rs9556797, rs9556795, rs4001162, rs9556799等が例示される。
rs9556806は、GenBank Accession No. NT_009952.15の11473598番目の塩基におけるSNPである。この多型は、配列番号34で表される塩基配列の第101番目の塩基に相当する塩基におけるチミン(T)/グアニン(G)の多型を意味し、この塩基がT(リスクアレル)である場合には末梢動脈疾患の可能性又は発症リスクが高いと判定できる。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>TG>GGの順で末梢動脈疾患の可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基がTである被験者には、末梢動脈疾患の治療を行うことが考えられる。
rs9805548は、GenBank Accession No. NT_009952.15の11451733番目の塩基におけるSNPである。この多型は、配列番号35で表される塩基配列の第101番目の塩基に相当する塩基におけるチミン(T)/アデニン(A)の多型を意味し、この塩基がT(リスクアレル)である場合には末梢動脈疾患の可能性又は発症リスクが高いと判定できる。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>TG>GGの順で末梢動脈疾患の可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基がTである被験者には、末梢動脈疾患の治療を行うことが考えられる。
rs9556797は、GenBank Accession No. NT_009952.15の11454416番目の塩基におけるSNPである。この多型は、配列番号36で表される塩基配列の第101番目の塩基に相当する塩基におけるシトシン(C)/アデニン(A)の多型を意味し、この塩基がC(リスクアレル)である場合には末梢動脈疾患の可能性又は発症リスクが高いと判定できる。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、CC>CA>AAの順で末梢動脈疾患の可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基がCである被験者には、末梢動脈疾患の治療を行うことが考えられる。
rs9556795は、GenBank Accession No. NT_009952.15の11449746番目の塩基におけるSNPである。この多型は、配列番号37で表される塩基配列の第101番目の塩基に相当する塩基におけるアデニン(A)/シトシン(C)の多型を意味し、この塩基がA(リスクアレル)である場合には末梢動脈疾患の可能性又は発症リスクが高いと判定できる。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AC>CCの順で末梢動脈疾患の可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基がAである被験者には、末梢動脈疾患の治療を行うことが考えられる。
rs4001162は、GenBank Accession No. NT_009952.15の11451928番目の塩基におけるSNPである。この多型は、配列番号38で表される塩基配列の第101番目の塩基に相当する塩基におけるチミン(T)/アデニン(A)の多型を意味し、この塩基がT(リスクアレル)である場合には末梢動脈疾患の可能性又は発症リスクが高いと判定できる。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>TA>AAの順で末梢動脈疾患の可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基がTである被験者には、末梢動脈疾患の治療を行うことが考えられる。
rs9556799は、GenBank Accession No. NT_009952.15の11455876番目の塩基におけるSNPである。この多型は、配列番号39で表される塩基配列の第101番目の塩基に相当する塩基におけるシトシン(C)/チミン(T)の多型を意味し、この塩基がC(リスクアレル
)である場合には末梢動脈疾患の可能性又は発症リスクが高いと判定できる。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、CC>CT>TTの順で末梢動脈疾患の可能性または発症リスクが高い。よって、この塩基がCである被験者には、末梢動脈疾患の治療を行うことが考えられる。
上記SNPの塩基の種類を調べ、得られた結果を上記基準に基づいて末梢動脈疾患と関連付けることにより、末梢動脈疾患を検査することができる。なお、いずれのSNPも、二本鎖DNAのセンス鎖とアンチセンス鎖のどちらを解析してもよい。
上記SNPは単独で解析されてもよいし、上記SNPの少なくとも1つを含む複数のSNPをまとめてハプロタイプ解析してもよい。または、上記SNPの少なくとも1つと、末梢動脈疾患との関連が示唆されているSNPや、当該示唆されているSNPと連鎖不平衡にあるSNPとを組み合わせて解析してもよい。検査の精度を向上するために、末梢動脈疾患と関連する複数のSNPをまとめて解析することが好ましい。
SNPの解析に用いる試料としては、染色体DNAを含む試料であれば特に制限されない。例えば、血液、尿等の体液、口腔粘膜等の細胞、毛髪等の体毛、及び爪などが挙げられる。SNPの解析にはこれらの試料を直接使用することもできるが、これらの試料から染色体DNAを常法により単離したものを用いて解析することが好ましい。
SNPの解析は、通常の遺伝子多型解析方法によって行うことができる。例えば、シークエンス解析、PCR、ハイブリダイゼーション、インベーダー法などが挙げられるが、これらに限定されない。
シークエンス解析は、通常の方法により行うことができる。具体的には、SNPから数十塩基5’側に離れた位置にプライマーを設定し、そのプライマーを使用してシークエンス反応を行い、その解析結果から、該当するSNPがどの種類の塩基であるかを決定することができる。なお、シークエンス反応の前に、PCRなどによって、あらかじめSNP部位を含む断片を増幅しておくことが好ましい。
また、SNPの解析は、PCRによる増幅の有無を調べることによって行うことができる。例えば、プライマーの3’末端が各SNPの位置となるように、プライマーを設計する。それぞれのプライマーを使用してPCRを行い、増幅産物の有無によってどのタイプの多型であるかを決定することができる。また、LAMP法(特許第3313358号明細書)、NASBA法(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification;特許2843586号明細書)、ICAN法(特開2002−233379号公報)、SmartAmp法(特許第3897805号明細書)などによっても増幅の有無を調べることができる。その他、単鎖増幅法を用いてもよい。
また、SNP部位を含むDNA断片を増幅し、増幅産物の電気泳動における移動度の違いによって、どのタイプの多型であるかを決定することもできる。このような方法としては、例えば、PCR−SSCP(single-strand conformation polymorphism)法(Genomics. 1992 Jan 1; 12(1): 139-146.)が挙げられる。具体的には、まず、目的のSNPを含むDNAを増幅し、増幅したDNAを一本鎖DNAに解離させる。次いで、解離させた一本鎖DNAを非変性ゲル上で分離し、分離した一本鎖DNAのゲル上での移動度の違いによってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
さらに、多型を示す塩基が制限酵素認識配列に含まれる場合は、制限酵素による切断の有無によって解析することもできる(RFLP法)。この場合、まず、DNA試料を制限酵素により切断する。次いで、DNA断片を分離し、検出されたDNA断片の大きさによ
ってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
他に、DNAチップ等によりハイブリダイゼーションの有無を調べることによって、多型の種類を解析することも可能である。すなわち、各塩基に対応するプローブを用意し、いずれのプローブにハイブリダイズするかを調べることによって、SNPがいずれの塩基であるかを調べることもできる。
また、DNA三重鎖構造を特異的に認識して切断するクリベース、インベーダーと呼ばれる遺伝子多型を認識するプローブ、及び、蛍光シグナルを発生するよう設計されたプローブを使用するインベーダー法により、多型解析をしてもよい。
本発明の方法の具体的態様の一例としては、まず上記SNPに相当する塩基を解析し、被検者の塩基の種類を決定する。次に、当該塩基の種類がリスクアレルである場合には、末梢動脈疾患の可能性又は発症リスクが高く、非リスクアレルである場合には低いと判定し、検査結果として被験者に直接或いは医師等に情報を提供することができる。当該判定は、被験者の塩基の種類がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかによって機械的に振り分けるものである。従って、本発明の方法に基づく発症リスクの判定及びその情報の提供は、医師等による専門的な判断は要さない。
提供された検査結果に基づき、必要に応じて医師等に提供され、医師等が被験者に対して処置を行うことができる。たとえば、末梢動脈疾患の発症リスクが高いとの判定結果が出た被験者に対しては、まず、現在既に発症しているか否かを、画像診断等のより詳細な検査を行うことによって確認することが重要である。末梢動脈疾患は、初期症状が足の痛みやしびれといった軽度の場合もあり、患者本人が自覚症状を訴えていないこともある。しかし、自覚症状がなくても、狭窄や閉塞が既に起こっている場合もあるため、より詳細な検査を行って、早期治療を行うことが好ましい。詳細な検査でも発症が確認できない場合には、その後定期的に検査を行い、発症の有無を確認することができる。一方、発症リスクが低いとの判定結果が出た被験者に対しては、受診・検査の頻度、回数を減じることができる。このように、本発明の方法を行うことにより、受診の回数や検査の方法を適切に設定し、末梢動脈疾患患者やその疑いのある患者、医療従事者等の医学的、経済的負担、労力を軽減することができる。
<2>本発明の検査用試薬
本発明は、被検者の第13染色体長腕32領域(13q32.2)のIPO5/RAP2A遺伝子近傍に存在する一塩基多型、第4染色体長腕31領域(4q31.2)のEDNRA遺伝子近傍に存在する一塩基多型、及び/若しくは第7染色体短腕21領域(7p21.1)のHDAC9遺伝子近傍に存在する一塩基多型、並びに/又はそれらの塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基における一塩基多型を解析可能なポリヌクレオチドを含む、末梢動脈疾患を検査するための検査試薬を提供する。上記「<1>本発明の方法」において説明された事項は、本発明の検査用試薬の説明に全て適用される。当該ポリヌクレオチドとしては、プライマーやプローブなどが含まれるが、それらに限定されない。また、1つのSNPを検出可能なポリヌクレオチドを、単独で検査試薬に含めてもよいし、当該ポリヌクレオチドを複数含めてもよい。検査の精度を向上するために、複数のポリヌクレオチドにより複数のSNPを検査することが好ましい。さらに、非リスクアレルを検出可能なポリヌクレオチドを含めてもよい。
上記プローブとしては、上記SNP部位を含み、ハイブリダイズの有無によってSNP部位の塩基の種類を判定できるプローブが挙げられる。具体的には、配列番号1〜3から選ばれる塩基配列の101番目の塩基を含む配列、又はその相補配列を有する連続した10塩基以上の長さのプローブや、当該101番目の塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基を含む配列、又はその相補配列を有する連続した10塩基以上の長さのプローブが挙げられる。プ
ローブの長さは、好ましくは10〜50塩基であり、より好ましくは15〜40塩基であり、さらに好ましくは20〜35塩基である。複数のプローブを含むセットとしてもよい。
上記プライマーとしては、上記SNP部位を増幅するためのPCRに用いることのできるプライマー、又は上記SNP部位を配列解析(シークエンシング)するために用いることのできるプライマーが挙げられる。具体的には、配列番号1〜3から選ばれる塩基配列の101番目の塩基を含む領域を増幅したりシークエンシングしたりすることのできるプライマーや、当該101番目の塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基を含む領域を増幅したりシークエンシングしたりすることのできるプライマーが挙げられる。このようなプライマーの長さは10〜50塩基が好ましく、15〜50塩基がより好ましく、15〜35塩基がさらに好ましく、20〜35塩基が特に好ましい。プライマーは、単独であってもよいし、または、SNP部位の5’側領域のプライマー及びSNP部位の3’側領域のプライマーを含むプライマーセットであってもよい。複数のプライマーセットを含むセットとしてもよい。
上記SNP部位をシークエンシングするためのプライマーとしては、上記塩基の5’側領域、好ましくは30〜100塩基上流の配列を有するプライマーや、上記塩基の3’側領域、好ましくは30〜100塩基下流の領域に相補的な配列を有するプライマーが例示される。PCRによる増幅の有無で多型を判定するために用いるプライマーとしては、上記塩基を含む配列を有し、上記塩基を3’側に含むプライマーや、上記塩基を含む配列の相補配列を有し、上記塩基の相補塩基を3’側に含むプライマーなどが例示される。
なお、本発明の検査用試薬は、これらのプライマーやプローブに加えて、PCR用のポリメラーゼやバッファー、ハイブリダイゼーション用試薬、蛍光色素などを含むものであってもよい。
<3>IPO5遺伝子の発現量に基づく検査方法
本発明はまた、IPO5遺伝子のmRNAまたはタンパク質の発現量を測定する工程を含む、末梢動脈疾患の検査方法(検査データを得る方法)を提供する。上記「<1>本発明の方法」または「<2>本発明の検査用試薬」において説明された事項は、本項におけるIPO5遺伝子の発現量に基づく検査方法の説明に全て適用される。IPO5遺伝子のmRNAまたはタンパク質の発現量が健常人などの対照と比べて減少している場合、末梢動脈疾患に罹患している、または末梢動脈疾患の危険性が高いと判定することができる。本発明の検査方法においては、発現量を測定する試料を検査対象者から得る工程をさらに含めても良い。
IPO5遺伝子の発現量は、RT−PCR、ノーザンブロット、マイクロアレイ法などで調べることができる。また、IPO5遺伝子産物の発現量はELISA、ウエスタンブロットなどで調べることができる。それら測定に使用する抗IPO5抗体は、市販の抗体を用いることもできるし、公知のIPO5蛋白質のアミノ酸配列(例えば、配列番号33)の一部を抗原として作製された抗体を用いることもできる。IPO5のコード領域の塩基配列としては配列番号32が例示され、この配列等を利用して発現解析用プライマーやプローブなどを設計または取得することができる。検査に用いる試料としては、血液、尿、髄液等の体液、子宮頸部や口腔粘膜などの細胞、毛髪等の体毛などが挙げられる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.実験方法
<研究対象集団>
今回のGWAS及びフォローアップステージに使用された患者群と対照群のサンプルの多くは、バイオバンクジャパンから得られた(Nakamura, Y. (2007) The BioBank Japan Project. Clin Adv Hematol Oncol., 5, 696-697)。再現解析における患者群サンプルのサブセットは、東京医科大学病院、東京大学医学部付属病院及び関連病院から、2009年9月から2014年9月に得られた。
バイオバンク・ジャパンプロジェクトは、日本の全ての地域における66病院の共同ネットワークにより、47疾患のいずれかに診断された約300,000名の患者からのゲノムDNA、血清及び臨床情報の収集を目的として、2003年に開始された。GWAS解析のために、2003年5月から2006年12月の間にバイオバンク・ジャパンにおいて収集されたPAD患者が、臨床情報を確認した後に使用された。臨床情報(足関節・上腕血圧指数、Fontaine分類)によれば、全ての患者はPADであると診断されていた。全ての研究対象者には、本研究に参加する旨のインフォームドコンセントを行った。本研究のプロトコールは、理化学研究所統合生命医科学研究センター、東京医科大学、東京大学及び関連病院の倫理委員会によって承認された。
<SNP遺伝子型解析>
患者群サンプルはIllumina HumanHap610-Quad BeadChipにより遺伝子型解析され、対照群はIllumina HumanHap550v3により遺伝子型解析された。厳格なクオリティコントロール基準を適用し、785名の患者群と3,383名の対照群を、両方のBeadChipにおいて利用可能な431,754常染色体SNPについて検討した。GWASでは、SNPクオリティコントロール(患者群と対照群の両方において0.99以上のコールレート、及び対照群においてハーディワインバーグ平衡テストがP≧1.0×10-6)を適用した。全ての染色体上の431,754SNPが、そのクオリティコントロールフィルターをパスしたので、さらに解析された。
フォローアップステージにおける全ての対照群サンプルは、Illumina HumanHap610-Quad BeadChipを使用して遺伝子型解析された。rs9584669におけるIllumina遺伝子型解析の正確性を確認するために、Invader assay (Third Wave Technologies)(Ohnishi,Y., (2001) J Hum Genet., 46, 471-477)を使用してダイレクト遺伝子型解析を行ったところ、Invader assayとIllumina遺伝子型解析との結果の間に不一致は見られなかった。全てのクラスタープロットは、熟練した人材による外観検査により確認され、不明確なコールを有するSNPは除外された。フォローアップステージにおける患者群には、multiplex PCR-based Invader Assayを使用した。
<統計解析>
SNPとPADとの間の関連性解析は、コクラン・アーミテージの傾向検定により評価された。GWASの有意なレベルは、多重テストのためのボンフェローニ補正後において1.2 x 10-7(0.05/431,754)にセットされた。さらにGWASの結果を確認することを目的として、さらに1,150名の患者及び16,752名の対照群において再現解析をするために、コクラン・アーミテージの傾向検定のP値が最も有意であった500SNPが選択された。選択された500個のSNPの中で、145個のSNPが、Haploviewソフトウェアにより評価されたような他の選択されたマーカーと共に、強い連鎖不平衡の証拠(r2>0.8)を示した。
次に、さらなる遺伝子型解析のために、355個のSNPが選択された。複合解析は、Mantel-Haenszel法を使用して行われた。潜在的な集団階層化の補正は、遺伝子コントロール法(4Freedman,M.L., (2004) Nat Genet., 36, 388-393.)及び主成分分析(PCA)(Price,A.L., (2006) Nat Genet., 38, 904-909)の結果を使用することにより行われた。
臨床プロフィールと患者群の遺伝子型との間の関連性は、χテストによって、性別の
相違、冠疾患危険因子について検討された。定量的臨床パラメーターについては、one-way ANOVAにより検討された。
<ファインマッピング>
rs9584669(染色体部位 (NCBI build 38); 97,658,003-97,758,002)周辺の100kbの領域について、48名の患者サンプルを使用してSangerシークエンスを行った。総計249個のSNPが見つかったので、さらに48名のサンプルを使用して、再度シークエンスを行った。MAF≧0.05の191SNPを選択し、そして、25個のタグSNPを選んだ。また、Haploviewソフトウェアを使用して、連鎖不平衡(LD)パターンを解析し、LDブロックを決定した。全てのタグSNPについて、GWAS患者サンプル(n=750)及びGWAS対照群サンプル(n=2,418)を使用して、Invader assayを行った。統計解析は、Mantel-Haenszel法を使用して行われた。
<細胞>
ヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC, Gibco(登録商標) Invitrogen cell culture)を平滑筋細胞メディウム(SMCM, ScienCell research laboratories)にて培養し、37℃、5%CO2の湿潤環境にて維持した。
<ルシフェラーゼアッセイ>
染色体13q32.2上のIPO5/RAP2A領域にあるH3K27Acシークエンス(UCSC genome browser; http://genome.ucsc.edu)、及びH3K27Acシークエンスの遺伝子断片(染色体位置(NCBI build 38); 97,980,373-97,980,941:IPO5、97,428,261-97,428,846: RAP2A)を、pGL3 basic vector(プロメガ)のマルチプルクローニングサイトにクローニングした。空のpGL3 basic vectorと比較して、ルシフェラーゼ活性の顕著な増加が確認された。
次に、目的とするターゲットSNP (rs9584669, rs9556806, rs9805548, rs9556797, rs9556795, rs4001162, rs9556799)を含む下記表1の25bp二重鎖オリゴヌクレオチドを用意し、それらのそれぞれを、H3K27AcシークエンスをクローニングしたGL3 vectorに挿入した。それらのコンストラクトを、nucleofectorTM system (Amaxa)を使用して、ヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC)にトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、ルミノメーター(Centro LB960, BERTHOLD TECHNOLOGIES GmbH & Co. KG)及びデュアルルシフェラーゼレポーターアッセイシステム(プロメガ)を添付のプロトコールに従って使用して、ルシフェラーゼ活性を解析した。各々のサンプルのfirefly/Renillaルシフェラーゼの相対的な値を計算し、同じ実験においてIPO5/RAP2A H3K27AシークエンスをクローニングしたpGL3 vectorの値に基づいて、各々の値を標準化した。空のpGL3-basic vectorはネガティブコントロールとして使用された。各々の実験は独立して3回行われ、各々のサンプルは二重測定された。非リスクアレルとリスクアレルにおける活性の有意差を評価するために、Student’s t-testが行われた。
<ソフトウェア>
一般的な統計解析には、R statistical environment version 2.10.0. または PLINK1.05(Purcell,S. et al. (2007) Am J Hum Genet., 81, 559-575)を使用した。LDマップは、Haploviewソフトウェアを使用して作成した(Barrett,J.C.,(2005)Bioinformatics.,
21, 263-265)。局所マップはLocus zoomソフトウェアを使用して作成した。
2.結果
<GWAS>
新規なPAD感受性部位を同定するために、785名の患者及び3,383名の対照群を含む日本人集団においてPADについてのGWASを行った。集団階層化の存在を、主成分分析(PCA)を使用してHapMapサンプルとの比較により評価したところ、患者群及び対照群の全員がアジア人集団内に集まり、ほぼ全ての対象者が公知の二つの主な日本人一般的集団のクラスタ内に収まった(図1)。
SNP遺伝子型とPADとの間の関連性をコクラン・アーミテージの傾向検定を使用して検討した。図2は、検討した431,754のSNPの-log10P値を示す。今回のGWASでは、ボンフェローニ補正(P<1.2×10-7)に基づく統計的有意差の閾値に達したSNPはなかった。検定統計量の拡張(inflation of test statistics)、λgenomic control(λgc)は、1.04であった(図2b)。さらに感受性部位を調査するために、GWASにおけるP値のランクが上位500SNPであるものに着目することとし、連鎖不平衡(LD)を考慮すると355部位となった。次に、1,150名の患者群及び16,752名の対照群からなる他のパネルを遺伝子型解析したところ、13のSNPがP<0.0001を示した。これらの部位について、さらに1,229名の患者群を検査し、PAD患者群の総数を3,164名にまで拡張した(表2)。
これらの解析を通して、PADと関連する3つの部位を同定した。それらの部位は、IPO5/RAP2A, EDNRA及びHDAC9遺伝子に極めて近かった(表3、図3、4及び5)。
次に、有意であった3つのSNPについて、患者群における糖尿病、高血圧、喫煙及び高脂血症を含む典型的なリスクファクター、年齢、及び性別による交絡効果を、one-way ANOVA及びχ2テストを使用して調査したところ、遺伝子型とそれらのファクターとの間に明確な関連は見られなかった。このことは、これら3つのSNP部位は日本人集団におけるPADについての上記ライフスタイルとは独立していることを示している(表4)。
<13q32部位のファインマッピング>
染色体13q32上のIPO5/RAP2A部位を絞り込むために、当該部位のダイレクトシークエンスを行い、100kbのLD部位内にある249のSNPを同定した。さらなるファインマッピングのために、これらの中から、この部位を代表する24のタグSNPを選択した。これらタグSNPの関連解析から、rs9584669が最も強いP値を有することが明らかとなった(表5)。
遺伝子型解析は、rs9584669と13q32.2領域にある6つのSNP(rs9556806, rs9805548, rs9556797, rs9556795, rs4001162, rs9556799)とは完全なLDが保たれていることを明らかにした。
<染色体13q32.2における関連SNPの機能的解析>
この関連領域内にある7つのSNPのいずれもタンパク質のアミノ酸配列を変化させるものではなかったので、これらのSNPがIPO5及び/又はRAP2A発現に影響するかどうかを、ヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC)におけるレポーター遺伝子解析を使用して調査した。この細胞を使用したのは、定量的RT-PCR実験において、IPO5及びRAP2AのどちらのmRNAも豊富に発現することが観察されたからである。図6は、IPO5プロモーターコンストラクトにおいて、rs9584669のSNPの非リスクアレルを含むクローンはリスクアレルを含むクローンと比べて約2.5倍大きい転写活性を有することを示している。他のIPO5プロモーターコンスト
ラクトとRAP2Aプロモーターコンストラクトにおいては、アレル間の差は観察されなかった(図7及び8)。これらの結果は、関連SNPがIPO5の転写レベルには影響するが、RAP2Aには影響しないことを示している。
よって、rs9584669、rs6842241、rs2074633またはそれらと連鎖不平衡であるrs9556806, rs9805548, rs9556797, rs9556795, rs4001162, rs9556799等のマーカーは、末梢動脈疾患患者において強い関連性を示す末梢動脈疾患感受性マーカーであることから、これらのマーカーの遺伝子型を決定することは、末梢動脈疾患診断の指標となることが明らかとなった。
配列番号1:rs9584669の前後100bpを含む配列
配列番号2:rs6842241の前後100bpを含む配列
配列番号3:rs2074633の前後100bpを含む配列
配列番号4:rs9556806 を含むセンスオリゴヌクレオチド
配列番号5:rs9556806 を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
配列番号6:rs9805548 を含むセンスオリゴヌクレオチド
配列番号7:rs9805548 を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
配列番号8:rs9556797 を含むセンスオリゴヌクレオチド
配列番号9:rs9556797 を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
配列番号10:rs9556795を含むセンスオリゴヌクレオチド
配列番号11:rs9556795 を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
配列番号12:rs4001162 を含むセンスオリゴヌクレオチド
配列番号13:rs4001162 を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
配列番号14:rs9556799 を含むセンスオリゴヌクレオチド
配列番号15:rs9556799 を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
配列番号16:rs9584669 を含むセンスオリゴヌクレオチド
配列番号17:rs9584669 を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
配列番号18:rs9556806 を含むセンスオリゴヌクレオチド
配列番号19:rs9556806 を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
配列番号20:rs9805548 を含むセンスオリゴヌクレオチド
配列番号21:rs9805548 を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
配列番号22:rs9556797 を含むセンスオリゴヌクレオチド
配列番号23:rs9556797 を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
配列番号24:rs9556795 を含むセンスオリゴヌクレオチド
配列番号25:rs9556795 を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
配列番号26:rs4001162 を含むセンスオリゴヌクレオチド
配列番号27:rs4001162 を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
配列番号28:rs9556799 を含むセンスオリゴヌクレオチド
配列番号29:rs9556799 を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
配列番号30:rs9584669 を含むセンスオリゴヌクレオチド
配列番号31:rs9584669 を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
配列番号32:IPO5遺伝子のmRNA配列
配列番号33:IPO5のアミノ酸配列
配列番号34:rs9556806の前後100bpを含む配列
配列番号35:rs9805548の前後100bpを含む配列
配列番号36:rs9556797の前後100bpを含む配列
配列番号37:rs9556795の前後100bpを含む配列
配列番号38:rs4001162の前後100bpを含む配列
配列番号39:rs9556799の前後100bpを含む配列
rs9584669、rs6842241、rs2074633またはそれらと連鎖不平衡であるrs9556806, rs9805548, rs9556797, rs9556795, rs4001162, rs9556799等の遺伝子型を決定することにより、末梢動脈疾患を正確かつ迅速に検査することができ、当該疾患患者の早期診断による予防及び治療に貢献するものである。

Claims (6)

  1. 被検者の第13染色体長腕32領域(13q32.2)のIPO5/RAP2A遺伝子近傍に存在する一塩基多型、第4染色体長腕31領域(4q31.2)のEDNRA遺伝子近傍に存在する一塩基多型、及び/若しくは第7染色体短腕21領域(7p21.1)のHDAC9遺伝子近傍に存在する一塩基多型、並びに/又はそれらの塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基における一塩基多型を解析し、該解析結果に基づいて被検者の末梢動脈疾患を検査することを特徴とする、末梢動脈疾患の発症リスクおよび/または発症の有無の判定方法であって、
    前記一塩基多型が、配列番号1〜3から選ばれる1種又は2種以上の塩基配列の塩基番号101番目の塩基に相当する塩基、及び/又は該塩基と連鎖不平衡の関係にある配列番号34〜39から選ばれる1種又は2種以上の塩基配列の塩基番号101番目の塩基に相当する塩基における一塩基多型であり、
    配列番号1の101番目の塩基に相当する塩基がT(リスクアレル)の場合;
    配列番号2の101番目の塩基に相当する塩基がA(リスクアレル)の場合;
    配列番号3の101番目の塩基に相当する塩基がG(リスクアレル)の場合;
    配列番号34の101番目の塩基に相当する塩基がT(リスクアレル)の場合;
    配列番号35の101番目の塩基に相当する塩基がT(リスクアレル)の場合;
    配列番号36の101番目の塩基に相当する塩基がC(リスクアレル)の場合;
    配列番号37の101番目の塩基に相当する塩基がA(リスクアレル)の場合;
    配列番号38の101番目の塩基に相当する塩基がT(リスクアレル)の場合;または、
    配列番号39の101番目の塩基に相当する塩基がC(リスクアレル)の場合、
    末梢動脈疾患の発症リスクまたは発症の可能性が高いと判定する、方法。
  2. 前記末梢動脈疾患が、動脈硬化によるものである、請求項1記載の方法。
  3. 前記末梢動脈疾患が、四肢の動脈の狭窄又は閉塞を起こすものである、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 被検者の第13染色体長腕32領域(13q32.2)のIPO5/RAP2A遺伝子近傍に存在する一塩基多型、第4染色体長腕31領域(4q31.2)のEDNRA遺伝子近傍に存在する一塩基多型、及び/若しくは第7染色体短腕21領域(7p21.1)のHDAC9遺伝子近傍に存在する一塩基多型、並
    びに/又はそれらの塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基における一塩基多型を解析可能なポリヌクレオチドを含む、末梢動脈疾患検査用試薬であって、
    前記一塩基多型が、配列番号1〜3から選ばれる1種又は2種以上の塩基配列の塩基番号101番目の塩基に相当する塩基、及び/又は該塩基と連鎖不平衡の関係にある配列番号34〜39から選ばれる1種又は2種以上の塩基配列の塩基番号101番目の塩基に相当する塩基における一塩基多型であり、
    配列番号1の101番目の塩基に相当する塩基がT(リスクアレル);
    配列番号2の101番目の塩基に相当する塩基がA(リスクアレル);
    配列番号3の101番目の塩基に相当する塩基がG(リスクアレル);
    配列番号34の101番目の塩基に相当する塩基がT(リスクアレル);
    配列番号35の101番目の塩基に相当する塩基がT(リスクアレル);
    配列番号36の101番目の塩基に相当する塩基がC(リスクアレル);
    配列番号37の101番目の塩基に相当する塩基がA(リスクアレル);
    配列番号38の101番目の塩基に相当する塩基がT(リスクアレル);または、
    配列番号39の101番目の塩基に相当する塩基がC(リスクアレル);
    である、試薬。
  5. 配列番号1〜3及び34〜39から選ばれる塩基配列において、塩基番号101番目の塩基を含む15塩基以上の配列、又はその相補配列を有する末梢動脈疾患検査用プローブであって、
    配列番号1の101番目の塩基に相当する塩基がT(リスクアレル);
    配列番号2の101番目の塩基に相当する塩基がA(リスクアレル);
    配列番号3の101番目の塩基に相当する塩基がG(リスクアレル);
    配列番号34の101番目の塩基に相当する塩基がT(リスクアレル);
    配列番号35の101番目の塩基に相当する塩基がT(リスクアレル);
    配列番号36の101番目の塩基に相当する塩基がC(リスクアレル);
    配列番号37の101番目の塩基に相当する塩基がA(リスクアレル);
    配列番号38の101番目の塩基に相当する塩基がT(リスクアレル);または、
    配列番号39の101番目の塩基に相当する塩基がC(リスクアレル);
    である、プローブ
  6. 配列番号1〜3及び34〜39から選ばれる塩基配列において、塩基番号101番目の塩基を含む領域を増幅することのできる末梢動脈疾患検査用プライマー。
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