明 細 書
クロスグループ型ボールスプライン 技術分野
[0001] 本発明はクロスグループ型ボールスプラインに関するもので、たとえば、左右のレー ルの間隔 (軌間)の異なる複数種の軌道を走行可能な鉄道車両用軌間可変台車 (G CT: Gauge Changeable Train)におけるギヤボックス(減速機)と車輪を連結する伝動 システムに利用することができる。
背景技術
[0002] 従来、軌間可変台車のギヤボックスと車輪を連結する伝動システムとしては、外筒 に内歯、内筒に外歯を設け、外歯と内歯の間で軸方向に大きな伸縮が可能なスライ デイングギヤや、ボールスプラインまたはころスプラインが提案されて ヽる。
[0003] 特開平 10— 278783号公報の図 8〖こは、スライディングギヤタイプの動力伝達スプ ラインが記載されている。図 9Aおよび 9Bを参照して説明すると、駆動筒 2の端部の 内面には、軸線方向に長く延びる雌スライディングギヤ 3が形成されている。さらに、 車輪と一体に回転するトルク伝達筒 4の先端には、雌スライディングギヤ 3とかみ合う 軸線方向長さの短い雄スライディングギヤ 5が形成されている。したがって、駆動モー タによって駆動筒 2を回転駆動することにより、トルク伝達筒 4を介して車輪を回転さ せることができる。また、雌スライディングギヤ 3と雄スライディングギヤ 5とのかみ合い 位置の変化により、軌間の変化を吸収することができる。符号 1は車軸を示す。
[0004] また、特開平 10— 278783号公報の図 1には、ボールスプラインタイプが記載され ている。ボールスプラインを示す図 10Aおよび 10Bを参照して説明すると、駆動力を 車輪に伝達する駆動力伝達手段としてのボールスプライン筒(5, 7)が、車軸 1に対 して同軸に設けてある。ボールスプライン筒は、互いに同軸な外筒 5と内筒 7を有し、 外筒 5の内周面に形成した軸方向溝 6と、内筒 7の外周面に形成した軸方向溝 8とに ボール 9を介在させてある。ボール 9の作用により、外筒 5と内筒 7とは軸線方向に滑 らカゝにスライドしつつ駆動力を伝達することができる。これにより、このボールスプライ ン筒は、駆動力を車輪に伝達して車輪を回転させながら、軌間の変化を滑らかに吸
収することができる。
特許文献 1:実公平 07 - 047619号公報(図 2)
特許文献 2 :特開平 10— 297487号公報(図 1、図 8)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0005] 鉄道車両では自動車と同様に益々静粛性が求められている。しかし、駆動系のガ タに伴う振動音の問題がある。軌間可変台車のギヤボックスと車輪軸を連結する従来 の伝動機構は、上述のスライディングギヤタイプであれ、ボールスプラインまたはころ スプラインタイプであれ、かみ合い面にすきまを有している。このすきまの影響で、回 転中の速度変動などによって、いわゆるたたき音が発生する。また、連結される車軸 の僅かなミスァライメントによりスライディングギヤタイプでは内方側ギヤと外方側ギヤ のかみ合い面の摺動に伴って摺動音が発生する。ころスプラインタイプは、ころところ を収納する溝とのすきまでミスァライメントに伴う角度を許容している力 殆ど角度自 在性がなぐころと溝との間でギヤと同様のたたき音が発生する。
[0006] 本発明の主要な目的は、このようなたたき音や、摺動音を減らし、車両全体の振動 音を低減させることにある。
課題を解決するための手段
[0007] 本発明は、力かる振動音低減策として、軌間可変台車の伝動システムに、軸方向 に大きな伸縮が可能で、し力も、ガタのないクロスグループジョイントを応用したボー ルスプラインすなわちクロスグループ型ボールスプラインを採用することを提案するも のである。
[0008] 本発明のクロスグループ型ボールスプラインは、軸線に対して角度をなすトラックを 外周面に形成した内輪と、軸線に対して角度をなすトラックを内周面に形成した外輪 と、内輪のトラックと外輪のトラックの交差部に組み込んだトルク伝達ボールと、内輪の 外周面と外輪の内周面との間に介在し、トルク伝達ボールを収容するポケットを形成 したケージとで構成される。
[0009] クロスグループ型ボールスプラインを軌間可変台車の伝動システムにお!/、て利用 する場合、車軸の外周に同軸状に配置し、たとえば外輪をギヤボックスの大歯車と接
続し、内輪を車輪と接続する。
[0010] トルク伝達ボールが内輪のトラックと外輪のトラックの交差部に挟まれているため、 回転方向ガタがなぐ大きな伸縮量が可能で、し力も、トルク伝達ボールの転がり運 動によって僅かなミスァライメントにも対応可能である。したがって、鉄道車両の更な る静粛性向上に寄与する。
[0011] 現状、鉄道車両の標準軌と狭軌の相互乗り入れに必要な軌間可変量が 368mmで あり、減速機を介して左右両輪に伸縮可能なボールスプラインを各 1セット適用する 場合、少なくとも 184mm以上の大きな伸縮量が求められる。また、鉄道車両の車輪 とレール間の摩擦係数 0. 35でこの時にボールスプラインに負荷される最大トルクが 10KNm、車軸径が 180mmで、内輪は少なくともこれ以上の大きさの内径を確保し なければならな!/、。このように制約された条件下で伸縮可能なボールスプラインには 限られたスペースにお 、て高 、捩り剛性と軽量'コンパクトが求められて 、る。
[0012] クロスグループ型ボールスプラインは、ボール数を少なくしてトルク容量を確保しょう とするとボール径を大きくするため必然的に外径が大きくなり所定のスペースを満足 できない。また、ボール径を小さくしてたくさん入れてもトルク容量が確保できない(ボ 一ル径は負荷容量の 3乗で、ボール数はそのままリニアに負荷容量に効いてくる)。 また、トラックの交差角は 3° 未満にするとケージに作用するモーメントの釣り合いが とれず、ミスァライメント時の角度自在性を損ねる(実際は 2° 以下しか許容できない) 。一方、トラック交差角が 7° を越えると、隣り合うトラックの確保ができず大きな伸縮 量が確保できな 、。本発明のクロスグループ型ボールスプラインはこのようにトルク伝 達容量、車軸径、伸縮量およびスペースのバランス上、トルク伝達ボールを 10個以 上 18個以下、トラック交差角を 3° 以上 7° 以下の範囲とするのが好ましい。たとえば 現状の鉄道車両を想定するならば、ボール個数 14個以上 18個以下、トラック交差角 3° 以上 5° 以下が好適である。
発明の効果
[0013] 軌間可変台車のギヤボックスと車輪軸を連結する伝動システムとして、ガタのないク ロスグループ型ボールスプラインを採用することにより、従来のスライディングギヤや、 ボールまたはころスプラインに見られる歯打ち音や擦れ音がなぐ車両全体の振動音
を低減させることができる。
図面の簡単な説明
[0014] [図 1]実施の形態を示すクロスグループ型ボールスプラインの縦断面図である [図 2]図 1の II II矢視図である。
[図 3]クロスグループ型ボールスプラインの要部斜視図である。
[図 4]トラックの展開図である。
[図 5]トラック交差角を示す略図である。
[図 6]軌間可変台車の要部正面図である。
[図 7]別の実施の形態を示す軌間可変台車の要部正面図である。
[図 8]図 7の VIII部拡大断面図である。
[図 9A]従来の技術を示すスライディングギヤの縦断面図である。
[図 9B]図 9Aのスライディングギヤの横断面図である。
[図 10A]従来の技術を示すころスプラインの縦断面図である。
[図 10B]図 10Aのころスプラインの横断面図である。
符号の説明
[0015] 10 早軸
12 車輪
14 減速機
20 内輪
22 卜ラック
30 外輪
32 卜ラック
40 トノレク伝達ふ一ノレ
50 ケージ
52 ポグット
60 シール固定板
68 Oリング
発明を実施するための最良の形態
[0016] 以下、図面に従って本発明の実施の形態を説明する。
[0017] ここで、図 1はクロスグループ型スプラインの縦断面を示し、軌間可変台車の台車枠 や駆動モータを省略した正面図である図 6の I部拡大断面図に相当する。図 6には、 車軸 10と、車軸 10に支持された一対の車輪 12と、減速機 14が現れている。軌間可 変台車は白抜き矢印で示すように軌間が可変で、標準軌の場合を実線で示し、狭軌 の場合を二点鎖線で示してある。また、図 2は図 1の II矢視図、図 3は図 1のクロスダル ーブ型スプラインの一部をカットした要部斜視図、図 4はトラックの展開図、図 5はトラ ック交差角を説明するための略図である。
[0018] 図 1に示すように、クロスグループ型ボールスプラインは、内輪 20と外輪 30と複数の トルク伝達ボール 40とケージ 50を主要な構成要素として成り立つている。内輪 20は 車軸 10の外周に同軸状に位置し、外周面に複数のトラック 22が形成してある。外輪 30は内輪 20の外周に同軸状に位置し、内周面に内輪 20のトラック 22と同数のトラッ ク 32が形成してある。図 4に示すように、内輪 20のトラック 22と外輪 30のトラック 32は 軸線に対して互いに反対方向に角度をなしている。軸線とトラック 22, 32がなす角度 をトラック交差角 αと呼ぶこととする(図 5参照)。内輪 20のトラック 22と外輪 30のトラッ ク 32との交差部にトルク伝達ボール 40が組み込んである。ケージ 50は内輪 20の外 周面と外輪 30の内周面との間に介在し、円周方向の等間隔位置にトルク伝達ボー ル 40を収容するポケット 52を有する。
[0019] 軌間可変台車のギヤボックスと車輪を連結する伝動機構として、トルク伝達ボール 4 0のピッチ径を大きくするとともに、その数を増やし、所定のトルク伝達と軸方向に大き な伸縮が可能なクロスグループ型ボールスプラインとすることができる。具体的に例 示するならば、モータ出力と負荷容量および主軸 10の大きさとのバランスを考慮して 、トルク伝達ボール 40の数は 10以上 18以下、内外輪 20, 30のトラック交差角 αは 3 ° 以上 7° 以下の範囲が好ましい。より具体的には、たとえば、トルク伝達ボール 40 の数を 14、内外輪 20, 30のトラック交差角を 3° とする。
[0020] 組み込み性を考慮するならば、内輪 20はケージ 50に対して軸方向に分離できるタ イブ、すなわち、内輪 20の最大外径をケージ 50の最小内径より小さくする。
[0021] 外輪 30の一端にシール固定板 60が取り付けてある。シール固定板 60は円筒部 6
4と、円筒部 64の一端に形成したフランジ部 62と、円筒部 64の他端に形成したシー ル部 66と力 なり、フランジ部 62を外輪 30の端面に当ててボルト 70で固定してある。 円筒部 64は、外輪 30からスライドアウトした内輪 20のトラック 22がシール部 66の Oリ ング 68を越えて露出しないような長さに設定してある。シール部 66は、内周面に形 成した環状溝に Oリング 68を装着してある。 Oリング 68が常に内輪 20の外周面に摺 接することによって、内部に充填した潤滑剤の漏洩を防止し、また、外部から異物が 侵入するのを防止する。
[0022] 図 6から理解できるとおり、クロスグループ型ボールスプラインの外輪 30は減速機 1 4の大歯車と接続し、内輪 20は車輪 12と接続する。そして、駆動モータ(図示せず) 力ものトルクが減速機 14を介して外輪 30に伝達され、さらにトルク伝達ボール 40、内 輪 20を介して車輪 12へと伝達される。
[0023] 軌間変更に際しては、内輪 20と外輪 30が軸方向に相対変位する。図 1は、トルク 伝達ボール 40が中立位置にあるときの状態を実線で示し、スライドアウト時およびス ライドイン時の状態をそれぞれ二点鎖線で示してある。同図中、符号 Cは中立位置に あるトルク伝達ボール 40の中心、 Cはスライドイン時のトルク伝達ボール 40の中心、
C はスライドアウト時のトルク伝達ボール 40の中心をそれぞれ示して 、る。
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[0024] トルク伝達ボール 40はトラック 22, 32の交差部に組み込まれ、トラック 22, 32によ つて挟まれているため、軸方向にも円周方向にもガタがなぐあるいは非常に小さく抑 えられる。したがって、従来のスライディングギヤタイプやボールまたはころスプライン タイプにおけるようなたたき音ゃ摺動音がなくなり、あるいは、大幅に減少し、車両全 体の振動音を低減させることができる。
[0025] クロスグループ型ボールスプラインは上述の図 1の実施の形態のように片輪当たり 1 個でもよいが、図 7および図 8に示すように、内輪 20同士を共有する 2個一組で使用 すれば、 1個当たりの伸縮量を少なくでき、し力も、交差角を大きくすることができ、よ り角度自在性が高まる。この場合、内輪 20は、図示するように一体ものとするほか、 別々の内輪を中間軸を用いてつないでもよい。