明 細 書
標的糖鎖における構造変化を検出する方法
技術分野
[0001] 本発明は、標的糖鎖における構造変化を検出する方法に関する。
背景技術
[0002] 糖鎖の構造は、種々の原因により変化し得る。例えば、 aーフエトプロテイン (AFP )に含まれる糖鎖に関しては、肝細胞ガンの進行に伴って、 a—L—フコース残基、 N -ァセチルダルコサミン残基 (バイセクティング N -ァセチルダルコサミン)等が付 カロされる。したがって、 AFPに含まれる糖鎖の構造変化を検出することにより、肝細 胞ガンの診断が可能になると考えられる。
[0003] 構造変化により第 1の糖鎖及び第 2の糖鎖として存在し得る標的糖鎖における構造 変化の検出は、例えば、標的糖鎖と、第 1の糖鎖に対する結合性及び第 2の糖鎖に 対する結合性が異なるレクチンとを混合したときの、標的糖鎖に対するレクチンの結 合性を指標として行うことができる (特許文献 1参照)。しかしながら、この場合、標的 糖鎖とレクチンとの結合挙動を詳細に調べ、結合定数等の結合性に関する情報を求 める必要がある。
[0004] また、第 1の糖鎖及び第 2の糖鎖が、糖鎖構造は異なるがタンパク質構造は実質的 に同一な糖タンパク質である場合、標的糖鎖における構造変化の検出は、例えば、 標的糖鎖と、第 1の糖鎖は有するが第 2の糖鎖は有しない特定の糖鎖構造を認識す るレクチンと、当該レクチンが結合して 、な 、第 1の糖鎖及び第 2の糖鎖に結合する 性質を有するが、当該レクチンが結合した第 1の糖鎖への結合が妨げられる性質を 有する抗体とを混合し、標的糖鎖に抗体がしたカゝ否かを指標として行うことができる( 特許文献 2参照)。し力しながら、この場合、レクチンが結合していない第 1の糖鎖及 び第 2の糖鎖に結合する性質を有するが、当該レクチンが結合した第 1の糖鎖への 結合が妨げられる性質を有する特殊な抗体を用いる必要がある。
特許文献 1:国際公開 WO2002Z066634号パンフレット
特許文献 2:特許第 3070418号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0005] 本発明は、構造変化により第 1の糖鎖及び第 2の糖鎖として存在し得る標的糖鎖に おける構造変化を容易かつ効率的に検出することができる方法を提供することを目 的とする。
課題を解決するための手段
[0006] 上記目的を達成するために、本発明は、構造変化により第 1の糖鎖及び第 2の糖鎖 として存在し得る標的糖鎖と、第 1の糖鎖及び第 2の糖鎖に結合し得る第 1〜第 nの レクチン (nは 2以上の整数である。)とを混合したときの、標的糖鎖に対する第 1のレ クチンの結合量及び第 2のレクチンの結合量の比を指標として、標的糖鎖における構 造変化の有無を検出する方法であって、次式 (I):
[0007] [数 1]
B n / B 1 2 A n ZA 1 2
> > 1 t» 2 i z b 2 2 A 2 1 / A 2 2
[0008] [式中、 A は、第 1の糖鎖と第 1のレクチンとを他のレクチンの不存在下で混合したと
11
きの、第 1の糖鎖 1分子に対する第 1のレクチンの結合量を表し、 A は、第 1の糖鎖
12
と第 2のレクチンとを他のレクチンの不存在下で混合したときの、第 1の糖鎖 1分子に 対する第 2のレクチンの結合量を表し、 A は、第 2の糖鎖と第 1のレクチンとを他のレ
21
クチンの不存在下で混合したときの、第 2の糖鎖 1分子に対する第 1のレクチンの結 合量を表し、 A は、第 2の糖鎖と第 2のレクチンとを他のレクチンの不存在下で混合
22
したときの、第 2の糖鎖 1分子に対する第 2のレクチンの結合量を表し、 B は、第 1の
11 糖鎖と第 1〜第 nのレクチンとを混合したときの、第 1の糖鎖 1分子に対する第 1のレク チンの結合量を表し、 B は、第 1の糖鎖と第 1〜第 nのレクチンとを混合したときの、
12
第 1の糖鎖 1分子に対する第 2のレクチンの結合量を表し、 B は、第 2の糖鎖と第 1
21
〜第 nのレクチンとを混合したときの、第 2の糖鎖 1分子に対する第 1のレクチンの結
合量を表し、 B は、第 2の糖鎖と第 1〜第 nのレクチンとを混合したときの、第 2の糖
22
鎖 1分子に対する第 2のレクチンの結合量を表す。 ]
を満たす第 1〜第 nのレクチンを用いる方法を提供する。
[0009] 標的糖鎖は、第 1の糖鎖のみとして存在する可能性、第 2の糖鎖のみとして存在す る可能性、並びに第 1の糖鎖及び第 2の糖鎖の混合状態として存在する可能性があ る。すなわち、標的糖鎖の総分子数 (N)は、 [第 1の糖鎖として存在する標的糖鎖の 分子数 (N ) ] + [第 2の糖鎖として存在する標的糖鎖の分子数 (N;) ]で表される。な
1 2 お、 N及び Nは 0以上の整数を表す力 N及び Nが同時に 0となることはない。
1 2 1 2
[0010] 標的糖鎖と第 1〜第 nのレクチンとを混合したときの、標的糖鎖に対する第 1のレク チンの結合量 (D )は、 [第 1の糖鎖 1分子に対する第 1のレクチンの結合量 (B ) ] X
1 11
[第 1の糖鎖として存在する標的糖鎖の分子数 (N ) ] + [第 2の糖鎖 1分子に対する 第 1のレクチンの結合量 (B ) ] X [第 2の糖鎖として存在する標的糖鎖の分子数 (N
21 2
) ]で表され、標的糖鎖と第 1〜第 nのレクチンとを混合したときの、標的糖鎖に対する 第 2のレクチンの結合量 (D )は、 [第 1の糖鎖 1分子に対する第 2のレクチンの結合
2
量 (B ) ] X [第 1の糖鎖として存在する標的糖鎖の分子数 (N ) ] + [第 2の糖鎖 1分
12 1
子に対する第 2のレクチンの結合量 (B ) ] X [第 2の糖鎖として存在する標的糖鎖の
22
分子数 (N ) ]で表される。
2
[0011] 上記式 (I)を満たす第 1〜第 nのレクチンを使用すると、標的糖鎖と第 1〜第 nのレク チンとを混合したときの、標的糖鎖に対する第 1のレクチンの結合量 (D )と、標的糖 鎖と第 1〜第 nのレクチンとを混合したときの、標的糖鎖に対する第 2のレクチンの結 合量 (D )との比 (D ZD又は D ZD )は、標的糖鎖の存在状態 (すなわち、 N及
2 1 2 2 1 1
ΧβΝの値)に応じて、次のように変動する。
2
[0012] (1)標的糖鎖が第 1の糖鎖のみとして存在する場合 (Ν ≥1 , Ν =0)
1 2
D /Ό =Β /Β
1 2 11 12
D /Ό =Β /Β
2 1 12 11
[0013] (2)標的糖鎖が第 2の糖鎖のみとして存在する場合 (Ν =0, Ν ≥1)
1 2
D /Ό =Β /Β
1 2 21 22
D /Ό =Β /Β
2 1 22 21
[0014] (3)標的糖鎖が第 1の糖鎖及び第 2の糖鎖の混合状態として存在する場合 (Ν Ι, Ν ≥1)
2
Β /Β > D /Ό > Β /Β
11 12 1 2 21 22
Β /Β < D /D < Β /Β
12 11 2 1 22 21
[0015] なお、「Β /Β 」、 「Β /Β 」、 「Β /Β 」、 「Β /Β 」、 「D /Ό」及び「D /
11 12 12 11 21 22 22 21 1 2 2
D は、一定の値を意味する他、一定の値域を意味する。また、「=」は完全に同一 であることを意味する他、実質的に同一であることを意味する。
[0016] したがって、標的糖鎖と第 1〜第 nのレクチンとを混合したときの、標的糖鎖に対す る第 1のレクチンの結合量 (D )と、標的糖鎖と第 1〜第 nのレクチンとを混合したとき の、標的糖鎖に対する第 2のレクチンの結合量 (D )との比(D /Ό又は D ZD )は
2 1 2 2 1
、標的糖鎖における構造変化の有無を検出するための指標とすることができる。すな わち、第 1の糖鎖が構造変化前の糖鎖であり、第 2の糖鎖が構造変化後の糖鎖であ る場合、 B / >D /Ό ≥ B / 又は B / < D /Ό ≤ B /B
11 12 1 2 21 22 12 11 2 1 22 21 であれば、標的糖鎖が第 2の糖鎖のみとして又は第 1の糖鎖及び第 2の糖鎖の混合 状態として存在している、すなわち、標的糖鎖において構造変化が生じていると判別 することができる。また、第 2の糖鎖が構造変化前の糖鎖であり、第 1の糖鎖が構造変 化後の糖鎖である場合、 B /B ≥ D /D > B /B 又は B ZB ≤D /
11 12 1 2 21 22 12 11 2
D < B /B であれば、標的糖鎖が第 1の糖鎖のみとして又は第 1の糖鎖及び第 2
1 22 21
の糖鎖の混合状態として存在している、すなわち、標的糖鎖において構造変化が生 じていると判別することができる。
[0017] 一方、標的糖鎖と第 1のレクチンとを他のレクチンの不存在下で混合したときの、標 的糖鎖に対する第 1のレクチンの結合量 (C )と、標的糖鎖と第 2のレクチンとを他の レクチンの不存在下で混合したときの、標的糖鎖に対する第 2のレクチンの結合量( C )との比(C /C又は C ZC )も、 D /Ό又は D /Όと同様に、標的糖鎖にお
2 1 2 2 1 1 2 2 1
ける構造変化の有無を検出するための指標とすることができる。
[0018] し力しながら、 C /C又は C /Cを指標とする場合、 Cの測定は、標的糖鎖と第 1
1 2 2 1 1
のレクチンとを他のレクチンの不存在下で混合するという条件下で行われ、 Cの測定
2 は、標的糖鎖と第 2のレクチンとを他のレクチンの不存在下で混合するという条件下
で行われるため、 C及び Cの測定は、別々の反応系で行われる必要がある。し力も
1 2
、各反応系における標的糖鎖の存在状態 (すなわち、 N及び Nの値)は同一である
1 2
必要がある。
[0019] これに対して、 D /Ό又は D /Όを指標とする場合、 D及び Dの測定は、標的
1 2 2 1 1 2
糖鎖と第 1〜第 nのレクチンとを混合するという同一の条件下で行われるので、同一 の反応系で行うことができる。同一の反応系で測定すれば、 D
1及び D
2の測定時にお ける標的糖鎖の存在状態 (すなわち、 N
1及び N
2の値)は同一である。
[0020] したがって、 D ZD又は D ZDを指標とする場合は、 C /C又は C /Cを指標
1 2 2 1 1 2 2 1 とする場合よりも容易かつ効率的に、標的糖鎖における構造変化の有無を検出する ことができる。
[0021] また、同一の反応系で D及び Dを複数回測定した場合における各測定値のバラ
1 2
ツキは、異なる反応系で C及び Cを複数回測定した場合における各測定値のバラ
1 2
ツキよりも/ J、さくなる。
[0022] したがって、 D ZD又は D ZDを指標とする場合は、 C /C又は C /Cを指標
1 2 2 1 1 2 2 1 とする場合よりも精度よぐ標的糖鎖における構造変化の有無を検出することができる
[0023] さらに、上記式 (I)を満たす第 1〜第 nのレクチンを使用すると、 B /B 及び B /
11 12 21
B の区別を、 A /A 及び A /A の区別よりも明確に行うことができるとともに、
22 11 12 21 22
B /B 及び B /B の区別を、 A / と A / の区別よりも明確に行うこと
12 11 22 21 12 11 22 21
ができる。
[0024] したがって、 D /Ό又は D /Όを指標とする場合、 C /C又は C /Cを指標と
1 2 2 1 1 2 2 1 する場合よりも精度よぐ標的糖鎖における構造変化の有無を検出することができる。
[0025] 第 1の糖鎖及び第 2の糖鎖の間には、構造変化により生じた糖鎖構造上の相違が あるので、 A は A と異なる値又は値域を示し得る。同様に、 A は A と異なる値又
11 21 12 22
は値域を示し得る。したがって、 A /A は A /A と異なる値又は値域を示し得
11 12 21 22
る。本発明の方法においては、 A /A > A /A を満たす第 1のレクチン及び
11 12 21 22
第 2のレクチンを選択する。
[0026] A は、第 1の糖鎖と第 1〜第 nのレクチンとを混合したときに、第 1の糖鎖に対する
第 1のレクチンの結合が、第 1の糖鎖に対する他のレクチンの結合によって影響を受 けない場合の、第 1の糖鎖 1分子に対する第 1のレクチンの結合量と実質的に同一で ある。したがって、第 1の糖鎖と第 1〜第 nのレクチンとを混合したときに、第 1の糖鎖 に対する第 1のレクチンの結合力 第 1の糖鎖に対する他のレクチンの結合によって 影響を受けることにより、 B は A と異なる値又は値域を示し得る。同様に、第 1の糖
11 11
鎖と第 1〜第 nのレクチンとを混合したときに、第 1の糖鎖に対する第 2のレクチンの結 合力 第 1の糖鎖に対する他のレクチンの結合によって影響を受けることにより、 B
12 は A と異なる値又は値域を示し得る。したがって、第 1の糖鎖と第 1〜第 nのレクチン
12
とを混合したときに、第 1の糖鎖に対する第 1のレクチン及び第 2のレクチンの結合が 、それぞれ第 1の糖鎖に対する他のレクチンの結合によって影響を受けることにより、 B ZB は A / と異なる値又は値域を示し得る。同様に、第 2の糖鎖と第 1〜第
11 12 11 12
nのレクチンとを混合したときに、第 2の糖鎖に対する第 1のレクチン及び第 2のレクチ ンの結合力 それぞれ第 2の糖鎖に対する他のレクチンの結合によって影響を受ける ことにより、 B /B は A /A と異なる値又は値域を示し得る。本発明の方法にお
21 22 21 22
いては、上記式 (I)を満たす第 1〜第 nのレクチンを選択する。
[0027] なお、上記式 (I)が成立する場合としては、例えば、以下の次式 (i)〜(iv)のいずれ 力が成立する場合が挙げられる。
B / > A /A > A /A ≥ B ZB (i)
11 12 11 12 21 22 21 22
B / ≥ A /A > A /A > B /B (ii)
11 12 11 12 21 22 21 22
A /A ≥ B ZB > A /A > B /B (iii)
11 12 11 12 21 22 21 22
B ZB > A /A > B ZB ≥ A /A (iv)
11 12 11 12 21 22 21 22
[0028] 本発明の方法において、第 1〜第 nのレクチンは、上記式 (I)を満たすように第 1の 糖鎖及び第 2の糖鎖に結合し得る限り特に限定されるものではない。第 1〜第 nのレ クチンは、それぞれ所定の糖鎖構造に特異的に結合し得ることが好ましい。この場合 、第 1の糖鎖及び第 2の糖鎖に対する第 1〜第 nのレクチンの結合挙動が把握しやす いので、上記式 (I)を満たす第 1〜第 nのレクチンの選択が容易となる。但し、一般的 に、所定の糖鎖構造に対するレクチンの特異的親和性は厳密なものではなぐレクチ ンは、通常、所定の糖鎖構造以外の糖鎖構造に対しても親和性を示し得る。
[0029] 本発明の方法において、 nが小さい場合、第 1の糖鎖及び第 2の糖鎖に対する第 1 〜第 nのレクチンの結合挙動が把握しやす 、ので、上記式 (I)を満たす第 1〜第 nの レクチンの選択が容易となる。 nは 2以上の整数である限り特に限定されるものではな いが、好ましくは 2〜5であり、さらに好ましくは 2〜3である。
[0030] 本発明の方法において、第 1の糖鎖と第 2の糖鎖との糖鎖構造上の相違が微小で ある場合、第 1の糖鎖に対する第 1〜第 nのレクチンの結合挙動と、第 2の糖鎖に対 する第 1〜第 nのレクチンの結合挙動との相違を把握しやす 、ので、上記式 (I)を満 たす第 1〜第 nのレクチンの選択が容易となる。
[0031] 第 1の糖鎖と第 2の糖鎖との糖鎖構造上の相違が微小である場合としては、例えば 、第 1の糖鎖は第 1のレクチンが結合し得る第 1の糖鎖構造を有するが、第 2の糖鎖 は第 1の糖鎖構造を有しない点で両糖鎖の構造は異なり、それ以外の点で両糖鎖の 構造は実質的に同一である場合が挙げられる。この場合、 A は A よりも大きい
11 21 一 方、 A は A と実質的に同一であるので、 A /A > A /A が成立する。なお
12 22 11 12 21 22
、「両糖鎖の構造が実質的に同一である」には、第 1の糖鎖及び第 2の糖鎖のうち、 第 1〜第 nのレクチンが結合し得ない部分に糖鎖構造上の相違がある場合も含まれ る。
[0032] 第 1の糖鎖は第 1のレクチンが結合し得る第 1の糖鎖構造を有するが、第 2の糖鎖 は第 1の糖鎖構造を有しない点で両糖鎖の構造は異なり、それ以外の点で両糖鎖の 構造は実質的に同一である場合、第 1の糖鎖において、第 1の糖鎖構造に対して第 1のレクチンが結合すると、第 1の糖鎖に対する第 2のレクチンの結合が抑制されるよ うに、第 1〜第 nのレクチンを選択することにより、 B / > A /A が成立する。
11 12 11 12
なお、第 1の糖鎖における複数の糖鎖構造に対して第 2のレクチンが結合し得る場合 、そのうち 1以上の糖鎖構造に対する第 2のレクチンの結合が抑制されればよい。
[0033] B /B > A /A が成立する場合において、第 2の糖鎖と第 1〜第 nのレクチ
11 12 11 12
ンとを混合したときに、第 2の糖鎖に対する第 1のレクチン及び第 2のレクチンの結合 力 それぞれ第 2の糖鎖に対する他のレクチンの結合によって影響を受けなければ、 B /B = A /A が成立する結果、上記式 (I)が成立する。また、第 2の糖鎖に
21 22 21 22
対して第 2〜第 nのレクチンが結合すると、第 2の糖鎖に対する第 1のレクチンの結合
が抑制されれば、 B / < A /A が成立する結果、上記式 (I)が成立する。
21 22 21 22
[0034] 第 1の糖鎖において、第 1の糖鎖構造に対して第 1のレクチンが結合すると、第 1の 糖鎖に対する第 2のレクチンの結合が抑制される場合としては、例えば、第 1の糖鎖 及び第 2の糖鎖が、第 2のレクチンが結合し得る第 2の糖鎖構造を有しており、第 1の 糖鎖において、第 1の糖鎖構造に対して第 1のレクチンが結合すると、第 2の糖鎖構 造に対する第 2のレクチンの結合が抑制される場合が挙げられる。
[0035] 第 1の糖鎖において、第 1の糖鎖構造に対して第 1のレクチンが結合すると、第 2の 糖鎖構造に対する第 2のレクチンの結合が抑制される場合としては、例えば、第 1の 糖鎖において、第 1の糖鎖構造と第 2の糖鎖構造とが近接しており、第 1の糖鎖構造 に対する第 1のレクチンの結合力が、第 2の糖鎖構造に対する第 2のレクチンの結合 力よりも大きい場合が挙げられる。この場合、第 1の糖鎖構造に対する第 1のレクチン の結合と、第 2の糖鎖構造に対する第 2のレクチンの結合とが競合するが、第 1の糖 鎖構造に対する第 1のレクチンの結合力の方が大きいため、第 1の糖鎖構造に対す る第 1のレクチンの結合が優先的に起こり、第 1の糖鎖構造に対して結合した第 1のレ クチンが立体障害となって、第 2の糖鎖構造に対する第 2のレクチンの結合が抑制さ れる。なお、「第 1の糖鎖構造と第 2の糖鎖構造とが近接する」には、第 1の糖鎖構造 の一部と第 2の糖鎖構造の一部とが重複している場合も含まれる。
[0036] 本発明の方法において、標的糖鎖に対する第 1のレクチンの結合量及び第 2のレク チンの結合量の測定方法は特に限定されるものではない。例えば、第 1のレクチン及 び第 2のレクチンにそれぞれ区別して検出可能な標識物質が結合している場合、標 識物質の量に基づいて、標的糖鎖に対する第 1のレクチンの結合量及び第 2のレク チンの結合量を測定することができる。
[0037] 本発明の方法において、第 1〜第 nのレクチンと混合する標的糖鎖が固体支持体 に固定されていることが好ましい。この場合、固体支持体を洗浄することにより、固体 支持体に付着した夾雑物 (例えば、試料中に標的糖鎖とともに含まれて ヽた標的糖 鎖以外の糖鎖等)や、標的糖鎖に対して未結合のレクチンを容易に除去することが できる。
[0038] 標的糖鎖が固定されている固体支持体の材質、形状等は特に限定されるものでは
ないが、粒子又は磁性粒子であることが好ましい。この場合、標的糖鎖が固定された 粒子又は磁性粒子を第 1〜第 nのレクチンとともに液体中に分散させることにより、標 的糖鎖と第 1〜第 nのレクチンとの結合を効率よく進行させることができる。特に磁性 粒子である場合、粒子の操作性が向上し、磁石を作用させることにより液体中に分散 した磁性粒子を容易に捕集することができるとともに、磁石の作用を解除することによ り磁性粒子を液体中に分散させることができる。
[0039] 本発明の方法において、標的糖鎖は、タンパク質、脂質等に結合した糖鎖 (すなわ ち、糖タンパク質、糖脂質等に含まれる糖鎖)であってもよいし、タンパク質、脂質等 に結合して ヽな 、糖鎖であってもよ 、が、糖タンパク質に含まれる糖鎖であることが 好ましい。この場合、糖タンパク質のタンパク質部分に対して特異的に結合し得る抗 体又はその断片を固体支持体に固定しておき、試料と固体支持体とを接触させるこ とにより、試料中の標的糖鎖を固体支持体に固定することができる。また、試料中の 標的糖鎖を固体支持体に固定した後、固体支持体を洗浄することにより、試料中に 含まれる夾雑物と標的糖鎖とを分離することができる。
発明の効果
[0040] 本発明によれば、構造変化により第 1の糖鎖及び第 2の糖鎖として存在し得る標的 糖鎖における構造変化を容易かつ効率的に検出することができる方法が提供される 図面の簡単な説明
[0041] [図 1]T検定に関する図である。
発明を実施するための最良の形態
[0042] 本実施形態に係る方法は、構造変化により糖鎖 G及び糖鎖 Gとして存在し得る標
1 2
的糖鎖 Τと、糖鎖 G及び糖鎖 Gに結合し得るレクチン L及びレクチン Lとを混合し
1 2 1 2
たときの、標的糖鎖 Τに対するレクチン Lの結合量 (D )及びレクチン Lの結合量 (D
1 1 2
)の比 (D ZD )を指標として、標的糖鎖 Tにおける構造変化の有無を検出する方
2 1 2
法である。
[0043] 標的糖鎖 Tは、糖タンパク質に含まれる糖鎖である。標的糖鎖 Tを含む糖タンパク 質は特に限定されるものではないが、例えば、トランスフェリン、血液型糖タンパク質、
ヒト絨毛性ゴナドトロピン (hCG)、甲状腺刺激ホルモン (TSH)、黄体形成ホルモン( LH)等の生理活性物質;前立腺特異抗原 (PSA)、 《2—マクログロブリン、癌胎児 性抗原(CEA)、 a—フエトプロテイン (AFP)等の癌関連抗原; CA19— 9、 CA125 等の糖鎖抗原等が挙げられる。なお、糖鎖抗原には、細胞表面に結合していないも のであってもよいし、細胞表面に結合しているもの(細胞表面糖鎖抗原)であってもよ い。
[0044] 標的糖鎖 Tは、糖鎖構造により糖鎖 G及び Gとして存在し得る糖鎖である。
1 2
糖鎖 Gはレクチン Lが結合し得る糖鎖構造 Sを有する力 糖鎖 Gは糖鎖構造 S を有しない点で糖鎖 G及び Gの構造は相違し、それ以外の点で糖鎖 G及び Gの
1 2 1 2 構造は実質的に同一である。なお、「糖鎖 G及び Gの構造が実質的に同一である」
1 2
には、糖鎖 G及び糖鎖 Gのうち、レクチン L及び Lが結合し得ない部分に糖鎖構
1 2 1 2
造上の相違がある場合も含まれる。
[0045] 糖鎖 Gは、糖鎖構造上の相違がな 、 1種類の糖鎖として存在することが好ま 、が 、糖鎖 Gとレクチン Lとレクチン Lとを混合したときの、糖鎖 G 1分子に対するレクチ
1 1 2 1
ン Lの結合量 (B )及びレクチン Lの結合量 (B )の比(B / )が一定の値又は
1 11 2 12 11 12
値域をとる限り、糖鎖構造上の相違がある 2種類以上の糖鎖として存在していてもよ い。
[0046] 糖鎖 Gは、糖鎖構造上の相違がな 、 1種類の糖鎖として存在することが好ま 、が
2
、糖鎖 Gとレクチン Lとレクチン Lとを混合したときの、糖鎖 G 1分子に対するレクチ
2 1 2 2
ン Lの結合量 (B )及びレクチン Lの結合量 (B )の比(B / )が一定の値又は
1 21 2 22 21 22
値域をとる限り、糖鎖構造上の相違がある 2種類以上の糖鎖として存在していてもよ い。
[0047] 標的糖鎖 Tにおける構造変化としては、例えば、糖鎖構造 Sの付加、糖鎖構造 S の欠失、糖鎖構造 Sから糖鎖構造 S,への変化、糖鎖構造 S ' 'から糖鎖構造 Sへ の変化等が挙げられる。構造変化が糖鎖構造 sの付加である場合、構造変化前の 糖鎖が糖鎖 Gであり、構造変化後の糖鎖が糖鎖 Gであり、構造変化が糖鎖構造 S
2 1 1 の欠失である場合、構造変化前の糖鎖が糖鎖 Gであり、構造変化後の糖鎖が糖鎖 Gであり、構造変化が糖鎖構造 Sから糖鎖構造 S 'への変化である場合、構造変化
前の糖鎖が糖鎖 Gであり、構造変化後の糖鎖が糖鎖 Gであり、構造変化が糖鎖構
1 2
造 S ' 'から糖鎖構造 Sへの変化である場合、構造変化前の糖鎖が糖鎖 Gであり、
1 1 2 構造変化後の糖鎖が糖鎖 Gである。
[0048] 標的糖鎖 Tにおける構造変化の原因としては、例えば、肝細胞ガン、直腸ガン、肺 ガン、膝ガン、甲状腺ガン、骨髄腫、慢性関節リウマチ等の疾患;シァリダーゼ、ガラ クトシダーゼ、 N—ァセチルダルコサミニダーゼ、マンノシダーゼ、フコシダーゼ等の グリコシダーゼによる処理;血液型の相違等が挙げられる。糖タンパク質に含まれる 糖鎖に構造変化が生じても、糖タンパク質に含まれるタンパク質に構造変化は生じな い。したがって、糖鎖 Gに結合しているタンパク質及び糖鎖 Gに結合しているタンパ
1 2
ク質は、実質的に同一の構造を有する。
[0049] 標的糖鎖丁が oc—フエトプロテイン (AFP)に含まれる糖鎖である場合、標的糖鎖 T には、肝細胞ガンの進行に伴って、 a—Lーフコース残基、 N—ァセチルダルコサミ ン残基 (バイセクティング N—ァセチルダルコサミン)等が付加される。この場合、肝細 胞ガンの進行に伴って付加される糖鎖構造が糖鎖構造 Sであり、糖鎖構造 Sの付 加前の糖鎖が糖鎖 Gであり、糖鎖構造 Sの付加後の糖鎖が糖鎖 Gである。
2 1 1
レクチン L及び Lは、次式 (I):
1 2
[0050] [数 2]
> > 1 ノ b 2 2 A 2 1 /
[式中、 A は、糖鎖 Gとレクチン Lとをレクチン Lの不存在下で混合したときの、糖
11 1 1 2
鎖 G 1分子に対するレクチン Lの結合量を表し、 A は、糖鎖 Gとレクチン Lとをレク
1 1 12 1 2 チン Lの不存在下で混合したときの、糖鎖 G 1分子に対するレクチン Lの結合量を
1 1 2
表し、 A は、糖鎖 Gとレクチン Lとをレクチン Lの不存在下で混合したときの、糖鎖
21 2 1 2
G 1分子に対するレクチン Lの結合量を表し、 A は、糖鎖 Gとレクチン Lとをレクチ
2 1 22 2 2 ン Lの不存在下で混合したときの、糖鎖 G 1分子に対するレクチン Lの結合量を表
1 2 2 し、 B は、糖鎖 Gとレクチン Lとレクチン Lとを混合したときの、糖鎖 G 1分子に対
するレクチン Lの結合量を表し、 B は、糖鎖 Gとレクチン Lとレクチン Lとを混合し
12
たときの、糖鎖 G 1分子に対するレクチン Lの結合量を表し、 B は、糖鎖 Gとレクチ
1 2 21 2 ン Lとレクチン Lとを混合したときの、糖鎖 G 1分子に対するレクチン Lの結合量を
1 2 2 1 表し、 B は、糖鎖 Gとレクチン Lとレクチン Lとを混合したときの、糖鎖 G 1分子に
22 2 1 2 2 対するレクチン Lの結合量を表す。 ]
2
を満たすように、糖鎖 G及び Gに対して結合し得る。
1 2
[0052] レクチン Lは、糖鎖 Gのうち糖鎖構造 Sに対して結合し得るとともに、糖鎖構造 S 以外の糖鎖構造に対しても結合し得る。レクチン Lは糖鎖構造 Sに対して特異的親 和性を示すことが好ましい。但し、レクチン Lの糖鎖構造 Sに対する特異的親和性 は厳密なものではなぐレクチン Lが糖鎖構造 Sに対して特異的親和性を示す場合 であっても、レクチン Lは糖鎖構造 S以外の糖鎖構造に対しても親和性を示し得る。
[0053] 糖鎖 Gはレクチン Lが結合し得る糖鎖構造 Sを有する力 糖鎖 Gは糖鎖構造 S を有しない点で糖鎖 G及び Gの構造は相違し、それ以外の点で糖鎖 G及び Gの 構造は実質的に同一であるから、糖鎖 G 1分子に対するレクチン Lの結合量 (A )
1 1 11 は、糖鎖 G 1分子に対するレクチン Lの結合量 (A )よりも大きい一方、糖鎖 G 1分
2 1 21 1 子に対するレクチン Lの結合量 (A )と、糖鎖 G 1分子に対するレクチン Lの結合量
(A )とは実質的に同一である。
21
したがって、 A /A > A /A が成立する。
11 12 21 22
[0054] よって、例えば、 B / > A /A 及び A /A ≥B / を満たすように
11 12 11 12 21 22 21 22
レクチン L及び Lを選択することにより、上記式 (I)は満たされる。また、 B ZB ≥
1 2 11 12
A / 及び A /A > B ZB となるようにレクチン L及び Lを選択すること
11 12 21 22 21 22 1 2
により、上記式 (I)は満たされる。
[0055] 糖鎖 Gとレクチン Lとレクチン Lとを混合したときに、糖鎖 Gに対するレクチン Lの 結合及びレクチン Lの結合のうち一方が他方によって影響を受けることにより、 B /
2 11
B は A / と異なる値又は値域を示し得る。同様に、糖鎖 Gとレクチン Lとレク
12 11 12 2 1 チン Lとを混合したときに、糖鎖 Gに対するレクチン Lの結合及びレクチン Lの結合
2 2 1 2 のうち一方が他方によって影響を受けることにより、 B /B は A / と異なる値
21 22 21 22 又は値域を示し得る。したがって、 B /B > A /A 及び A /A ≥B /B
11 12 11 12 21 22 21
を満たすようにレクチン L及び Lを選択することが可能であるとともに、 B ZB ≥
22 1 2 11 12
A / 及び A /A > B ZB となるようにレクチン L及び Lを選択すること
11 12 21 22 21 22 1 2
が可能である。
[0056] 糖鎖 Gとレクチン Lとレクチン Lとを混合したときに、糖鎖 Gに対するレクチン Lの 結合及びレクチン Lの結合のうち一方が他方に影響によって影響を受ける場合とし
2
ては、例えば、糖鎖 Gにおいて、糖鎖構造 Sに対してレクチン Lが結合すると、糖鎖 Gに対するレクチン Lの結合が抑制される場合が挙げられる。この場合、 B は A と
1 2 11 11 実質的に同一であるが、 B は A よりも小さくなるので、 B ZB > A /A が成
12 12 11 12 11 12 立する。なお、糖鎖 Gにおける複数の糖鎖構造に対してレクチン Lが結合し得る場
1 2
合、そのうち 1以上の糖鎖構造に対するレクチン Lの結合が抑制されればよい。
2
[0057] B / > A /A が成立する場合において、糖鎖 Gとレクチン Lとレクチン L
11 12 11 12 2 1 2 とを混合したときに、糖鎖 Gに対するレクチン L及び Lの結合が、それぞれ糖鎖 G
2 1 2 2 に対する他のレクチンの結合によって影響を受けなければ、 B /B = A /A
21 22 21 22 が成立する結果、上記式 (I)が成立する。また、糖鎖 Gに対してレクチン Lが結合す
2 2 ると、糖鎖 Gに対するレクチン Lの結合が抑制されれば、 B ZB < A ZA が
2 1 21 22 21 22 成立する結果、上記式 (I)が成立する。
[0058] 糖鎖 Gにおいて、糖鎖構造 Sに対してレクチン Lが結合すると、糖鎖 Gに対する レクチン Lの結合が抑制される場合としては、例えば、糖鎖 G及び G 1S レクチン L
2 1 2 2 が結合し得る糖鎖構造 Sを有しており、糖鎖 Gにおいて、糖鎖構造 Sに対してレク
2 1 1
チン Lが結合すると、糖鎖構造 Sに対するレクチン Lの結合が抑制される場合が挙
1 2 2
げられる。
[0059] 糖鎖 Gにおいて、糖鎖構造 Sに対してレクチン Lが結合すると、糖鎖構造 Sに対
1 1 1 2 するレクチン Lの結合が抑制される場合としては、例えば、糖鎖 Gにおいて、糖鎖構
2 1
造 Sと糖鎖構造 Sとが近接しており、糖鎖構造 Sに対するレクチン Lの結合力が、
1 2 1 1 糖鎖構造 Sに対するレクチン Lの結合力よりも大きい場合が挙げられる。この場合、
2 2
糖鎖構造 Sに対するレクチン Lの結合と、糖鎖構造 Sに対するレクチン Lの結合と
1 1 2 2 が競合するが、糖鎖構造 Sに対するレクチン Lの結合力の方が大きいため、糖鎖構 造 Sに対するレクチン Lの結合が優先的に起こり、糖鎖構造 Sに対して結合したレ
クチンしが立体障害となって、糖鎖構造 Sに対するレクチン Lの結合が抑制される。
1 2 2
なお、「糖鎖構造 Sと糖鎖構造 Sとが近接する」には、糖鎖構造 Sの一部と糖鎖構
1 2 1
造 Sの一部とが重複している場合も含まれる。
2
[0060] レクチン L及び Lは、上記式 (I)を満たすように糖鎖 G及び Gに結合し得る限り特
1 2 1 2 に限定されるものではなぐ例えば、ヒィロチャワンタケレクチン (AAL)、マッシュルー ムレクチン (ABA)、ムラサキソシンカレクチン(BPA)、バンデリアマメァグルチュン(BS A- 11)、コンカナパリン A (ConA)、ドリコスマメレクチン(DBA)、チョウセンアサガオレク チン(DSA)、ディゴマメレクチン(ECA)、レンズマメレクチン(LCA)、ィヌェンジユレク チン(MAA (MAH) )、ィヌェンジユレクチン(MAM (MAL) )、ピーナッツレクチン(PNA) 、エンドゥマメレクチン(PSA)、アメリカャマゴボウレクチン(PWM)、ヒママメレクチン(R CA120又は RCA60)、ダイズレクチン(SBA)、 -ヮトコレクチン(SNA)、ジャガイモレク チン(STA)、二ホン-ヮトコレクチン(SSA)、ノ、リエ-シダレクチン(UEA-I)、小麦胚芽 レクチン (WGA)等の公知のレクチンの中力も適宜選択することができる。
[0061] 標的糖鎖 Tとレクチン Lとレクチン Lとを混合したときの、糖鎖糖鎖 Tに対するレク
1 2
チンしの結合量 (D )及びレクチン Lの結合量 (D )の比(D ZD )は、以下の工程(
1 1 2 2 1 2
a)〜(e)により求めることができる。
[0062] 工程 (a):試料中の標的糖鎖 Tを固体支持体に固定する。
[0063] 試料は、標的糖鎖 Tを含む限り特に限定されるものではなぐ例えば、血清、血液、 血漿、尿、リンパ球、血球、細胞等の生体由来の試料が挙げられる。試料には、複数 分子の標的糖鎖 Tが含まれており、全ての分子が構造変化を生じている可能性、一 部の分子が構造変化を生じて 、る可能性、及び全ての分子が構造変化を生じて 、 ない可能性がある。
[0064] 標的糖鎖 Tの固体支持体への固定方法は特に限定されるものではなぐ常法に従 つて行うことができる。例えば、標的糖鎖 Tを含む糖タンパク質のタンパク質部分に対 して特異的に結合し得る抗体又はその断片を固体支持体に固定しておき、試料と固 体支持体とを接触させることにより、試料中の標的糖鎖 Tを固体支持体に固定するこ とがでさる。
[0065] 固体支持体の材質は特に限定されるものではなぐ例えば、ガラス;シリコン;セラミ
ッタス;ポリスチレン等のポリスチレン系榭脂、ポリメチルメタタリレート等のアクリル榭 脂 (メタクリル榭脂)、ポリアミド榭脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポ リカーボネート等の合成樹脂;ァガロース、デキストラン、セルロース等の多糖類;ゼラ チン、コラーゲン、カゼイン等の蛋白質等が挙げられる。
[0066] 固体支持体の形状は特に限定されるものではなぐ例えば、プレート状、粒子状等 が挙げられるが、粒子状であることが好ましい。固体支持体が粒子である場合、試料 中に粒子を分散させることにより、試料中の標的糖鎖 Tを効率よく粒子に固定するこ とができる。固体支持体が粒子である場合、粒子は磁性を有することが好ましい。固 体支持体が磁性粒子である場合、粒子の操作性が向上し、磁石の作用により試料中 に分散した粒子を容易に捕集することができるとともに、磁石の作用を解除することに より粒子を試料中に分散させることができる。このような磁性粒子の特性は、固体支持 体の洗浄(工程 (b)、 (d)参照)のときにも有利である。
[0067] 固体支持体への抗体又はその断片の固定方法は特に限定されるものではなぐ常 法に従って行うことができる。固体支持体への抗体又はその断片の固定方法として は、例えば、固体支持体が表面に有する官能基と、抗体又はその断片が有する官能 基とを反応させ、固体支持体の表面に抗体又はその断片を共有結合させる方法が 挙げられる。共有結合を形成し得る官能基としては、例えば、カルボキシル基、ァミノ 基等が挙げられ、これらの官能基は常法に従って固体支持体及び抗体又はその断 片に導入することができる。固体支持体がカルボキシル基を表面に有する場合、カル ポジイミド類でカルボキシル基を活性化させた後、抗体又はその断片が有するァミノ 基と反応させることにより、アミド結合を介して、抗体又はその断片を固体支持体へ固 定することができる。また、固体支持体がアミノ基を表面に有する場合、無水コハク酸 等の環状酸無水物を用いてアミノ基をカルボキシル基に変換した後、抗体又はその 断片が有するァミノ基と反応させることにより、アミド結合を介して、抗体又はその断片 を固体支持体へ固定することができる。この他、ピオチン アビジン系を用いた方法 、例えば、ピオチンィ匕抗体又はその断片を、アビジン又はストレプトアビジンでコーテ イングされた固体支持体の表面に固定する方法を用いることができる。
[0068] 工程 (b):標的糖鎖 Tが固定された固体支持体を洗浄する。
[0069] 試料と固体支持体とを接触させると、試料中に含まれる夾雑物 (例えば、標的糖鎖 T以外の糖鎖等)が固体支持体に付着するが、固体支持体の洗浄により、固体支持 体に付着した夾雑物を除去することができる。
[0070] 固体支持体を洗浄する際、洗浄液としては、例えば、水、アルコール等の比較的極 性の高い溶媒;塩ィ匕ナトリウム、塩ィ匕カリウム、塩ィ匕マグネシウム等の塩類を含む水溶 液;アルコール類を含む水溶液;タンパク質、核酸等を含む水溶液;リン酸、トリス等 の適当な pH緩衝剤を含む上記溶媒又は水溶液等を用いることができる。
試料に夾雑物が含まれて!/、な!/、場合、工程 (b)は省略してもよ 、。
[0071] 工程 (c):固体支持体に固定された標的糖鎖 Tとレクチン Lとレクチン Lとを混合す
1 2 る。
[0072] レクチン L及び Lにはそれぞれ区別して検出可能な標識物質 LB及び LBを予め
1 2 1 2 結合しておく。標識物質 LB及び LBは区別して検出可能である限り特に限定される
1 2
ものではなぐ例えば、フルォレセイン、ローダミン、フィコエリトリン等の蛍光物質;ル ミノール、ルシゲニン、アタリジゥムエステルの化学発光物質;ルシフェラーゼ、ルシフ エリン等の生物発光物質;アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルォキシダー ゼ等の酵素;99 ^c 131I、 125I、 "C、 3H等の放射性同位元素;半導体ナノ粒子;オリゴ ヌクレオチド;磁性体;抗体等が挙げられる。レクチン L 1分子に結合している標識物 質量は、分子間で実質的に同一であることが好ましい。レクチン Lについても同様で
2
ある。レクチン 1分子に結合している標識物質量が分子間で実質的に同一であること により、標識物質量からレクチン量を正確に求めることができる。
[0073] 混合順序は特に限定されるものではなぐレクチン L及び Lを混合した後、標的糖
1 2
鎖 Tを混合してもよいし、レクチン L及び Lのうち一方のレクチンと標的糖鎖とを混合
1 2
した後、他方のレクチンを混合してもよい。
[0074] 標的糖鎖 Tとレクチン Lとレクチン Lとを混合すると、標的糖鎖 Tとレクチン Lとが接
1 2 1 触するとともに、標的糖鎖 Tとレクチン Lとが接触する。標的糖鎖 Tが糖鎖 Gとして存
2 1 在する場合、標的糖鎖 Tの糖鎖構造 S及び糖鎖構造 S以外の糖鎖構造にレクチン Lが結合するとともに、標的糖鎖 Tの所定の糖鎖構造にレクチン Lが結合する。標
1 2
的糖鎖 Tが糖鎖 Gとして存在する場合には、標的糖鎖 Tの所定の糖鎖構造にレクチ
ン Lが結合するとともに、標的糖鎖 Tの所定の糖鎖構造にレクチン Lが結合する。標
1 2
的糖鎖 Tに対するレクチン L及び Lの結合はやがて平衡状態に達する。
1 2
[0075] 標的糖鎖 Tとレクチン Lとレクチン Lとを混合させる際、溶媒としては、例えば、塩
1 2
化ナトリウム、塩ィ匕カリウム、塩化マグネシウム等の塩類を含む水溶液;アルコール類 を含む水溶液;タンパク質、核酸等を含む水溶液;リン酸、トリス等の適当な pH緩衝 剤を含む上記溶媒又は水溶液等を使用することができる。温度は、通常 4〜60°C、 好ましくは 25〜37°Cであり、時間は、通常 1〜120分間、好ましくは 5〜60分間であ り、 pHは、通常 2〜10、好ましくは 5〜8である。レクチン L及び Lの混合量は、標的
1 2
糖鎖 Tの混合量に対して過剰量とする。
[0076] 工程 (d):固体支持体を洗浄し、標的糖鎖 Tに結合して 、な 、レクチン L及び Lを
1 2 除去する。
[0077] 洗浄液としては、例えば、水、アルコール等の比較的極性の高い溶媒;塩ィ匕ナトリウ ム、塩化カリウム、塩化マグネシウム等の塩類を含む水溶液;アルコール類を含む水 溶液;タンパク質、核酸等を含む水溶液;リン酸、トリス等の適当な pH緩衝剤を含む 上記溶媒又は水溶液等を用いることができる。
[0078] 工程 ):標識物質 LB及び LBの量を測定し、標識物質 LB及び LBの量に基づ
1 2 1 2 き、糖鎖糖鎖 Tに対するレクチン Lの結合量 (D )及びレクチン Lの結合量 (D )の
1 1 2 2 比 (D ZD )を測定する。
1 2
[0079] 標識物質 LB及び LBの量の測定方法は、標識物質 LB及び LBの種類に応じ、
1 2 1 2
常法に従って行うことができる。
[0080] レクチン Lの量と標識物質 LBの量とを予め対応付けておくことにより、標識物質 L Bの量に基づき、糖鎖糖鎖 Tに対するレクチン Lの結合量 (D )を求めることができ る。同様にして、標識物質 LBの量に基づき、標的糖鎖 Tに対するレクチン Lの結合
2 2 量 (D )を求めることができる。
2
[0081] 糖鎖 Gが構造変化前の糖鎖であり、糖鎖 Gが構造変化後の糖鎖である場合、 B
1 2 11
/B > D /D ≥ B /B であれば、標的糖鎖 Tが糖鎖 Gのみとして又は糖鎖
12 1 2 21 22 2
G及び糖鎖 Gの混合状態として存在している、すなわち、標的糖鎖 Tにおいて構造
1 2
変化が生じていると判別することができる。また、糖鎖 Gが構造変化前の糖鎖であり
、糖鎖 Gが構造変化後の糖鎖である場合、 B / ≥ D /D >B / であれ
1 11 12 1 2 21 22 ば、標的糖鎖 Tが糖鎖 Gのみとして又は糖鎖 G及び糖鎖 Gの混合状態として存在
1 1 2
している、すなわち、標的糖鎖 Tにおいて構造変化が生じていると判別することがで きる。
[0082] 本実施形態では、標的糖鎖 Tに対するレクチン Lの結合量 (D )及びレクチン Lの
1 1 2 結合量 (D )の比として D ZDを用いたが、 D ZDを用いてもよい。この場合、 B
2 1 2 2 1 12
/B < D /D ≤ B /B であれば、標的糖鎖 Tが糖鎖 Gのみとして又は糖鎖
11 2 1 22 21 2
G及び糖鎖 Gの混合状態として存在していると判別することができる。また、 B /B
1 2 12
≤ D /D < B /B であれば、標的糖鎖 Tが糖鎖 Gのみとして又は糖鎖 G及
11 2 1 22 21 1 1 び糖鎖 Gの混合状態として存在して!/ヽると判別することができる。
2
[0083] 本実施形態では、糖タンパク質に含まれる糖鎖を標的糖鎖 Tとしたが、糖脂質に含 まれる糖鎖、タンパク質、脂質等に結合していない糖鎖等を標的糖鎖 Tとしてもよい。 標的糖鎖 τを含む糖脂質としては、例えば、ガラクトセレブ口シド、ダルコセレブロシド
、グロボシド、ラタトシルセラミド、トリへキソシルセラミド、パラグロボシド、フォルスマン 抗原糖脂質、フコシルガングリオシド、フコシルセラミド、血液型活性糖脂質等が挙げ られる。
実施例
[0084] 〔実施例 1〕
抗トランスフェリン抗体結合磁気ビーズの作製及びトランスフェリン糖鎖の混合レク チンによる構造解析
トランスフェリン(TF) (Serologicals proteins,Inc.)を抗トランスフェリン抗体(INTER- C ELL TECHNOLOGIES,INC.)結合磁気ビーズに特異的に吸着させた。その後、トラ ンスフエリンの糖鎖を部分分解する場合にのみ、磁気ビーズ懸濁液にシァリダーゼを 加えて反応させ、糖鎖非還元末端に存在するシアル酸を除いた。その後、磁気ビー ズ懸濁液にピオチン標識 RCAレクチン及び FITC標識 SSAレクチンを混合して反応さ せ、さらに Cy5標識ストレプトアビジンを反応させることで RCAレクチンに Cy5を特異的 に結合させた。 SSAレクチンは糖鎖非還元末端に存在するシアル酸を含む Sia a 2-6 Gal/GalNAc構造を強く認識し、 RCAレクチンは糖鎖の中の Gal j8 l-4GlcNAc構造を
認識する。シァリダーゼ処理サンプル及びシァリダーゼ未処理サンプルについて、磁 気ビーズ群の Cy5量及び FITC量を蛍光光度計で測定し、その比 Rl (Cy5量/ FITC量 )を求めるとともに、シァリダーゼ未処理サンプルの R1に対するシァリダーゼ処理サン プルの R1の比 R2 (シァリダーゼ処理サンプルの R1/シァリダーゼ未処理サンプルの R 1)を求めた。
[0085] また、シァリダーゼ処理サンプル及びシァリダーゼ未処理サンプルにつ!/、て、磁気 ビーズ懸濁液にピオチン標識 RCAレクチンを FITC標識 SSAレクチンの不存在下で混 合したときの、及び磁気ビーズ懸濁液に FITC標識 SSAレクチンをピオチン標識 RCA レクチンの不存在下で混合したときの、磁気ビーズ群の Cy5量及び FITC量を蛍光光 度計で測定し、その比 Rl (Cy5量/ FITC量)を求めるとともに、シァリダーゼ未処理サ ンプルの R1に対するシァリダーゼ処理サンプルの R1の比 R2 (シァリダーゼ処理サン プルの R1/シァリダーゼ未処理サンプルの R1)を求めた。
[0086] なお、以下、磁気ビーズ懸濁液にピオチン標識 RCAレクチン及び FITC標識 SSAレ クチンを混合する系を「混合系」 t ヽ、磁気ビーズ懸濁液にピオチン標識 RCAレク チン及び FITC標識 SSAレクチンのうち一方を他方の不存在下で混合する系を「非混 合系」という。
[0087] 実験方法の詳細は以下の通りである。
磁気ビーズ Dynabeads M-270 Carboxylic acid (Dynal社製)の添付書類に記載され た方法で作製した。まず、 Dynabeads懸濁液原液 10 1 (ビーズ 30 g分)を 1.5ml容 のエツペンドルフチューブに入れ、磁石台にエツペンチューブを立てることで磁気ビ ーズを分離し、磁気ビーズの洗浄を行った。磁気ビーズの洗浄は MiliQ 100 1を用 いて 3回行った。洗浄後、 MiliQに溶解した 0.005M CMC [N- cyclohexy卜 Ν'- (2- morph ohnoethyl) carbodnmide metnyl-p-toluensulfonate] 10 μ 1に條 5¾ヒ ~~スを懸淘し、 4 °Cで 10分間回転混和してカルボキル基を活性ィ匕した。磁気ビーズ液の上澄みを除 いた後、そこに 0.3M MES [2- (N- morpholino) ethane sulfonic acid]バッファー(pH 4. 8) 6 /z 1及び 0.005 M CMC 4 μ 1をカ卩えて懸濁し、 4°Cで 30分間回転混和した。次いで 、磁気ビーズ液の上澄みを除いた後、 0.1 M MESバッファー(pH 4.8) 100 /z lで 2回洗 浄し、磁気ビーズを同バッファー 2 1及び抗トランスフェリン抗体(lmg/ml) 8 1に懸
濁し、 4°Cで 20分間回転混和した。次いで、 MiliQで作製した lOmg/mlの BSA液を磁気 ビーズ液に 5 μ 1添加し、混合後、 4°Cで一晩回転混和した。翌日、磁気ビーズを PBS バッファー 200 μ 1で 3回洗浄した後、磁気ビーズに MiliQで作製した lOmg/mlの BSA液 1.1 μ 1及びトランスフェリン原液(lmg/ml) 10 1を順にカ卩えて懸濁し、室温で 1時間回 転混和した。次いで、磁気ビーズ液の上澄みを除いた後、磁気ビーズを TBSバッファ 一 200 μ 1で 3回洗浄した。次いで、磁気ビーズに C-Pバッファー(50mM Na PO , 1Μ
2 4
Citric acid) 97 μ 1及びシァリダーゼ(10mU/ 1) 3 1を順に加えて懸濁し、 37°Cで 3.5 時間回転混和した。シァリダーゼ処理を行わな 、場合はシァリダーゼの代わりに Mili Qで作製した lmg/mlの BSA液を 3 1カ卩えた。次いで、磁気ビーズ液の上澄みを除い た後、磁気ビーズを TBSバッファー 200 μ 1で 3回洗浄した。次いで、磁気ビーズにビ ォチン標識 RCAレクチン(0.3 mg/ml)及び FITC標識 SSAレクチン(0.3 mg/ml)各 35 1、並びに MiliQで作製した lOmg/mlの BSA液 3.85 1を順に加え、懸濁後、室温で 1時 間回転混和した。非混合系においては、磁気ビーズにピオチン標識 RCAレクチン及 び FITC標識 SSAレクチンの一方のみをカ卩えた。次いで、磁気ビーズ液の上澄みを除 いた後、磁気ビーズを TBSバッファー 200 1で 3回洗浄した。次いで、磁気ビーズに 2 X BWバッファー [10mM Tris-HCl (pH-7.5), ImM EDTA, 2.0M NaCl] 20 μ 1、及び Cy5標識ストレプトアビジン (( mg/ml^O /z lを順にカ卩え、懸濁後、室温で 40分間回 転混和した。次いで、磁気ビーズ液の上澄みを除いた後、磁気ビーズを 1 X BWバッ ファー 200 μ 1で 3回洗浄した。次いで、磁気ビーズを TBSバッファー 100 μ 1に懸濁し 、それを 20 μ 1取り、 TBSバッファー 100 μ 1で希釈したものを 96ゥエル黒色平底プレー トのゥエルに入れ、蛍光プレートリーダーにより Cy5及び FITCの蛍光強度を測定した 混合系における測定結果を表 1に、非混合系における測定結果を表 2に示す。
[表 1]
シァリダ一ゼ未処理 シァリダ一ゼ処理
サンプル No. FITC量 Cy5量 比 R1 FITC量 Cy5量 比 R1 比 R2
1 3.191 7.23 2.27 1.434 29.344 20, 47 9.03
2 3.005 9.398 3.13 0.606 18.821 31.09 9.94
3 5.149 9.787 1.90 0.86 19.905 23.16 12.18
4 1.821 7.944 4.36 0.491 23.752 48.43 11.10
5 1.709 5.587 2.10 0.186 5.472 29.52 14.06
6 5.817 12.812 2.20 1.761 32.964 17.99 8.17
7 2.865 6.695 2.34 1.723 23.4 13.58 5.81
8 2.543 7.549 2.97 0.43 29.789 69.24 23.32
9 1.21 6.597 5.46 0.104 7.868 76.23 13.98
10 1.128 2.176 1.93 0.677 7.592 11.22 5.82
11 1.699 4.888 2.88 0.284 6.432 22.65 7.87
12 0.741 3.596 4.85 0.156 4.259 27.27 5.62
13 2.096 4.181 1.99 0.824 9.245 11.21 5.62
14 3.976 8.679 2.18 1.436 20.665 14.39 6.60
15 2.089 4.396 2.11 0.513 6.622 12.92 6.14
16 3.298 9.672 2.93 1.001 27.244 27.21 9.28 平均 2.646 6.949 2.85 0.78 17.085 28.54 9.66 標準偏差 1.41 2.76 1.10 0.55 10.11 19.74 4.64 相対標準偏差 0.53 0.39 0.39 0.70 0.53 0.69 0.48 ]
シァリダーゼ未処理 シァリダ一ゼ処
理
サンプル No. FITC量 Cy5量 比 R1 FITC量 Gy5量 比 R1 比 R2
1 5.899 14.242 2.41 1.973 26.306 13.3 5.5
2 4.94 7.997 1.62 1.627 19.331 11.9 7.3
3 4.939 6.961 1.41 0, 846 15.324 18.1 12.8
4 6.827 7.734 1.13 1.772 11.9 10.5
5 3.751 3.965 1.06 1.968 6.122 3.11 2.93
6 3.3 2.646 0.8 1.733 3.679 2.12 2.62
7 3.16 3.141 1 0.736 5.081 6.9 6.9
8 2.606 2.476 0.95 0.709 3.549 5 5.26
9 3.416 3.173 0.93 1.761 4.964 2.82 3
10 3.289 1.799 0.54 1.303 2.089 1.62 2.95
11 4.018 11.256 2.8 0.729 19.902 27.3 9.7 平均 4.195 5.945 1.33 1.378 11.595 9.46 6.31 標準偏差 1.304 4.063 0.7 0.526 8.863 8.04 3.49 相対摞準偏差 0.31 0.68 0.52 0.38 0.76 0.85 0.55
[0090] 表 1及び 2に示すように、混合系における比 R2(平均 9.66)は、非混合系における比 R2(平均 6.31)よりも大きかった。
この理由は次のように考えられる。
[0091] トランスフェリン糖鎖のうち SSA結合部位と RCA結合部位とは一部が重複して 、るた め、混合系のシァリダーゼ未処理サンプルにおいては、トランスフェリン糖鎖に対する SSAの結合と RCAの結合とが競合し、 SSAの結合の方が優先的に起こる結果、 RCAの 結合が抑制される。一方、混合系のシァリダーゼ処理サンプルにおいては、シアル 酸の除去によりトランスフェリン糖鎖に対する SSAの結合が抑制される結果、トランスフ エリン糖鎖に対する RCAの結合は抑制されない。
[0092] これに対して、非混合系のシァリダーゼ未処理サンプル及びシァリダーゼ処理サン
プルにぉ 、ては、トランスフェリン糖鎖に対する SSAの結合と RCAの結合とは競合しな V、ので、トランスフェリン糖鎖に対する RCAの結合は抑制されな 、。
[0093] したがって、トランスフェリン糖鎖 1分子に対する RCAの結合量は、混合系のシァリ ダーゼ未処理サンプルの方が非混合系のシァリダーゼ未処理サンプルよりも小さい 一方、混合系のシァリダーゼ処理サンプルと非混合系のシァリダーゼ処理サンプル との間で実質的に同一である。なお、トランスフェリン糖鎖 1分子に対する SSAの結合 量は、混合系のシァリダーゼ未処理サンプルと非混合系のシァリダーゼ未処理サン プルとの間、及び混合系のシァリダーゼ処理サンプルと非混合系のシァリダーゼ処 理サンプルとの間で実質的に同一であると考えられる。
[0094] このため、混合系における比 R1はシアル酸の有無をより反映した値又は値域を示 し、混合系におけるシァリダーゼ未処理サンプルの比 R1 (2.85)とシァリダーゼ処理サ ンプルの比 R1 (28.54)との差は、非混合系におけるシァリダーゼ未処理サンプルの 比 R1 (1.33)とシァリダーゼ処理サンプルの比 R1 (9.46)との差よりも大きくなり、この結 果、混合系における比 R2 (平均 9.66)は、非混合系における比 R2(平均 6.31)よりも大 きくなる(混合系における比 R2の平均値 Z非混合系における比 R2の平均値 = 1.53) 。このような傾向は、 RCA及び SSAの組み合わせの代わりに、コンカナパリン A (ConA )及び小麦胚芽レクチン (WGA)の組み合わせを使用して、 β マンノシダーゼ処理 によるトランスフェリン糖鎖構造の変化を検出した場合にも観察された。すなわち、トラ ンスフヱリン(TF) (Serologicals proteins,Inc.)を抗トランスフェリン抗体(INTER- CELL TECHNOLOGIESJNC.)結合磁気ビーズに特異的に吸着させた後、トランスフェリン の糖鎖を部分分解する場合にのみ、磁気ビーズ懸濁液に j8—マンノシダーゼを加え て反応させた。その後、磁気ビーズ懸濁液にピオチン標識 ConA及び FITC標識 WGA を混合して反応させ (反応溶媒: TBS + 0.5M NaCl,各レクチン濃度: 0.3mg/mL)、さ らに Cy5標識ストレプトアビジンを反応させることで ConAに Cy5を特異的に結合させた 。 13 マンノシダーゼ処理によってトランスフェリン糖鎖からマンノースが切り取られる ため、トランスフェリン糖鎖に対する WGAの結合はほぼそのままであるのに対して、ト ランスフェリン糖鎖に対する ConAの結合は弱くなる。 β—マンノシダーゼ処理サンプ ル及び j8—マンノシダーゼ未処理サンプルについて、磁気ビーズ群の Cy5量及び FI
TC量を蛍光光度計で測定し、その比 Rl (Cy5量/ FITC量)を求めるとともに、 β マ ンノシダーゼ未処理サンプルの R1に対する 13 マンノシダーゼ処理サンプルの R1の 比 R2 ( j8 マンノシダーゼ処理サンプルの Rl/ j8 マンノシダーゼ未処理サンプル の R1)を求めた(混合系における比 R2)。また、 β マンノシダーゼ処理サンプル及 び 13 マンノシダーゼ未処理サンプルについて、磁気ビーズ懸濁液にピオチン標識 ConAを FITC標識 WGAの不存在下で混合したときの、及び磁気ビーズ懸濁液に FIT C標識 WGAをピオチン標識 ConAの不存在下で混合したときの、磁気ビーズ群の Cy5 量及び FITC量を蛍光光度計で測定し、その比 Rl (Cy5量/ FITC量)を求めるとともに 、 β マンノシダーゼ未処理サンプルの Rlに対する j8—マンノシダーゼ処理サンプ ルの R1の比 R2 ( j8 マンノシダーゼ処理サンプルの Rl/ j8 マンノシダーゼ未処理 サンプルの R1)を求めた (非混合系における比 R2)。その結果、混合系における比 R2 の平均値(1.24) Z非混合系における比 R2の平均値 (0.77) = 1.61であった。
[0095] したがって、混合系における比 R1を指標とすれば、非混合系における比 R1を指標 とするよりも精度よぐシァリダーゼ処理又は j8—マンノシダーゼ処理によるトランスフ エリン糖鎖の構造変化を検出することができる。また、混合系における測定値のバラ ツキは、非混合系における測定値のバラツキよりも小さくなり、混合系における比 R1を 指標とすれば、非混合系における比 R1を指標とするよりも精度よぐシァリダーゼ処 理によるトランスフェリン糖鎖の構造変化を検出することができる。
このことは、以下の信頼性一統計処理によって証明される。
[0096] シァリダーゼ未処理サンプル又はシァリダーゼ処理サンプルが与えられたときに、 それがどちらのサンプルであるかを評価する試験を想定し、混合系の測定結果及び 非混合系の測定結果を 2つの母平均と仮定して、 2つの母平均の差を検定した (T検 定)。
[0097] 仮説 H0 : 1 = 2
母分散未知だが、 σ 1 = σ 2と考える、場合において検定統計量 Τは図 1に示す式 (1)及び (2)に基づいて計算した。
[0098] ここで、各変数の意味は以下の通りである。
μ:正規母集団の平均値
σ:正規母集団の分散
m :標本の平均値
s :標準偏差
N :自由度又は標本 (サンプル)の大きさ
t : t分布
T : T検定により得られた Tの値
mean:平 3¾/
[0099] 有意水準 5%のときの T値は、混合系では 5.1976であり、 t(N +N - 2) a Z2のパ
1 2
一セント点は 2.04227である。一方、非混合系では 3.3411となっており、 t(N +N —2
1 2
) α Ζ2のパーセント点は 2.085962である。混合系及び非混合系の Τ値≥t(N +N
1 2
— 2) α Ζ2となっており、 TER (棄却域)(図 1参照)である。有意水準 5%のとき仮説 ΗΟは棄てられる。つまり、混合系と非混合系で、 2つの母平均は同じではない。
[0100] 正規母集団の平均値を図 1の式(3)に基づいて求めると、シァリダーゼ未処理サン プルについて、混合系の信頼空間は、 2.85— 0.58≤ μ≤2.85 + 0.58であり、非混合 系の信頼空間は、 1.33 - 0.47≤ μ≤ 1.33 + 0.47である。シァリダーゼ処理サンプル について、混合系の信頼空間は、 28.54— 10.53≤ μ≤28.54+ 10.53であり、非混合 系の信頼空間は、 9.46 - 5.40≤ μ≤ 9.46 + 5.40である。
[0101] 有意水準 5%のとき、 2つの母平均差の信頼区間 100(1—ひ)%を図 1の式 (4)に基 づいて求めると、混合系の場合、 25.69 ± 10.09であり、非混合系の場合、 8.13 ± 5.07 である。
[0102] 例えば、非混合系の場合には混合系と同じ誤差範囲 10.09 (95%信頼性)と仮定し た場合に求めた t(N +N — 2) α Ζ2のパーセント点は 4.1483となり、信頼空間は 99.
1 2
9%と推測される。したがって、混合系の方が信頼性は高いと考えられる。
[0103] 〔実施例 2〕
腫瘍マーカーの 1つであるチログロブリンの糖鎖構造の識別を、実施例 1に記した 方法においてトランスフェリン及び抗トランスフェリン抗体をそれぞれチログロブリン (Β iogenesis)及び抗チログロブリン抗体(SIGMA)に変更して行った。混合系の測定結 果を表 3に、非混合系の測定結果を表 4示す。
[0104] [表 3]
[0105] [表 4]
表 3及び 4に示すように、混合系におけるシァリダーゼ未処理サンプルの比 R1とシ ァリダーゼ処理サンプルの比 R1との差は、非混合系におけるシァリダーゼ未処理サ ンプルの比 R1とシァリダーゼ処理サンプルの比 R1との差よりも大きぐその結果、混 合系における比 R2は、非混合系における比 R2よりも大き力 た。
したがって、混合系における比 R1を指標とすれば、非混合系における比 R1を指標 とするよりも精度よぐシァリダーゼ処理によるチログロブリン糖鎖の構造変化を検出 することができる。