WO2006011534A1

WO2006011534A1 - 減速ギヤ

Info

Publication number: WO2006011534A1
Application number: PCT/JP2005/013771
Authority: WO
Inventors: Toshiyuki Iwano
Original assignee: Nsk Ltd.
Priority date: 2004-07-27
Filing date: 2005-07-27
Publication date: 2006-02-02
Also published as: JPWO2006011534A1; US20080168854A1; EP1780446A1

Abstract

　ギヤ歯の噛合面を潤滑するグリースが噛合面の全体に亘って充分に供給されるように、噛合面を加工することによって、噛合面に生じる摩耗を低減し、ギヤ歯の耐久性の向上を図った減速ギヤを提供する。　金属より形成されたウォームと、該ウォームと噛合するギヤ歯を有するウォームホイールとからなり、ウォームホイールのうち少なくともギヤ歯は、合成樹脂より形成され、且つ、ギヤ歯の噛合面は、グリースによって潤滑されている減速ギヤにおいて、噛合面が、該噛合面の滑り線に沿って形成された複数のグリース溜まり溝を、全表面に亘って有するようにした。

Description

明細書

減速ギヤ

技術分野

[0001] 本発明は、電動式パワーステアリング等に用いられる減速ギヤに関し、特に、減速ギヤの耐久'性の改良に関するものである。

背景技術

[0002] 従来、電動式パワーステアリング装置などの減速機構には、高速回転且つ低トルクである電動モータの回転力を、大きな減速比を得て、ステアリングシャフトに伝達することができる等の利点から、ウォームと、該ウォームに嚙合するギヤ歯を有するウォームホイールと力なる減速ギヤが用いられて!/、る。

[0003] このような減速ギヤでは、ウォームとギヤ歯との嚙合面（滑り接触面)で大きな滑りを伴うため、ここに粘着性の高い潤滑剤 (グリース）が充填されている。これにより、嚙合面の摩擦を低減し、歯面の摩耗、或いは焼き付きによる強度の低下やバックラッシュ (ガタ）の増加を防止して、る。

[0004] 近年、電動式パワーステアリング装置の減速機構には、伝達トルクの高効率高出力化が要求されているため、ウォームとギヤ歯との嚙合面に負荷する面圧が高くなつている。しかし、従来の減速ギヤでは、嚙合面が鏡面に形成されていたため、高面圧下でのトルク伝達において、嚙合面のグリース油膜が不足している状態になりやすかつた。このような状態では、ウォームとギヤ歯との嚙合による自己発熱増加が、合成樹脂強度を低下させ、この結果、嚙合面の寿命が低下してしまうという問題があった。なお、このような問題は、電動式パワーステアリング装置の減速機構に限らず、ウォームとウォームホイールと力もなる一般の減速ギヤにぉヽても存在して、た。

[0005] そこで、このような問題点を解決するものとして、ウォーム及び Z又はウォームホイ一ルの歯面に、凹み (溝)を設けて、この凹みによって潤滑剤を保持するようにしたもの力例えば、特許文献 1および特許文献 2に開示される。

[0006] 特許文献 1の減速ギヤ（ウォーム減速装置）は、ウォームとウォームホイールの互ヽに摺接する面に使用されている材料を溶解し得る流体で、その摺接面を処理することによって、摺接面に油溜まり部が形成され、該油溜まり部によってグリースが保持されるようにしたものである。さらに、特許文献 1には、上記流体を用いた化学反応による加工方法以外にも、レーザー加工又は放電加工によって、油溜まり部を形成したものも開示されている。

[0007] また、特許文献 2の減速ギヤ (減速歯車）は、ウォーム及び Z又はウォームホイールの歯の両側において、ピッチ円近傍の中央部と歯底との間の歯面、及び Z又は、中央部と歯先との間の歯面に、歯すじ方向に長い溝を設け、該溝に保持されたグリース等の潤滑剤を、回転時の遠心力によって、潤滑剤が不足する状態になった中央部に供給するようにしたものである。

[0008] 特許文献 1 :特開平 8— 226526号公報

特許文献 2：特開 2003 - 207031号公報

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0009] し力しながら、上記特許文献 1および特許文献 2の減速ギヤでは、ギヤ歯の嚙合面におけるグリース油膜切れを防止し、潤滑性を良好に維持するには不十分であった

[0010] 特許文献 1の減速ギヤでは、ウォームとウォームホイールとの両ギヤ歯間におけるグリースを保持する手段が、ウォームホイールの歯の表面に整列して、る複数個の油溜まり部であるため、長期間の運転の間に一部の油溜まり部でグリースが不足する状態になった場合に、構造上、他の油溜まり部力グリースを引き込むことによって補充することができない。そのため、嚙合面におけるグリースの充填状態を、定期的にメンテナンスする必要があり、長期間の連続運転を行なう上で問題があった。

[0011] また、特許文献 1の油溜まり部を形成するための加工方法では、大掛かりな装置が必要であり、且つ、加工作業が繁雑であるため、製造コスト及び労力を要する。さらに、化学反応を利用した加工方法では、化学反応によって、嚙合面の材料性質が変わつてしまうという問題があった。

[0012] 特許文献 2の減速ギヤでは、ウォーム及び Z又はウォームホイールの歯の両側において、ピッチ円近傍の中央部と歯底との間の歯面と、中央部と歯先との間の歯面とに、歯すじ方向に長い溝が設けられている力この 2本の溝だけでは、嚙合面に充填されたグリースを保持するには不十分であった。さらに、グリースを保持する箇所が、この 2本の溝だけであるため、グリースの分布に偏りが生じ、例えば、この溝から離れている箇所である歯底、歯先、或いはその中央部において、グリースの不足が生じるなどの問題があった。

[0013] そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ギヤ歯の嚙合面を潤滑するグリースが嚙合面の全体に亘つて充分に供給されるように、嚙合面を加工することによって、嚙合面に生じる摩耗を低減し、ギヤ歯の耐久性の向上を図った減速ギヤを提供することにある。

課題を解決するための手段

[0014] 本発明の上記目的は、金属より形成されたウォームと、該ウォームと嚙合するギヤ歯を有するウォームホイールと力なり、前記ウォームホイールのうち少なくとも前記ギヤ歯は、合成樹脂より形成され、且つ、前記ギヤ歯の嚙合面は、グリースによって潤滑されている減速ギヤであって、前記嚙合面は、該嚙合面の滑り線に沿って形成された複数のグリース溜まり溝を、全表面に亘つて有することにより、達成される。

[0015] また、上記目的は、前記グリース溜まり溝は、歯面にダイヤモンド砲粒または CBN 砲粒を電着させた加工用ウォームを、前記ギヤ歯に嚙合させながら回転させて前記嚙合面を研削する加工方法によって、前記嚙合面に形成されたことにより、効果的に達成される。

[0016] また、上記目的は、金属より形成されたウォームと、該ウォームと嚙合するギヤ歯を有するウォームホイールと力なり、前記ウォームホイールのうち少なくとも前記ギヤ歯は、合成樹脂より形成され、且つ、前記ギヤ歯の嚙合面は、グリースよって潤滑されている減速ギヤであって、前記ウォームの表面の算術平均粗さ Raは、 0. 以下であり、且つ、前記ウォームホイールの前記嚙合面は、全表面に亘つて点在するように形成された複数のグリース溜まり凹部を有することにより、達成される。

[0017] また、上記目的は、前記グリース溜まり凹部は、前記嚙合面にプラズマ放電を当てて凹みを施し、その後、前記嚙合面を前記ウォームで慣らす加工方法によって、前記嚙合面に形成されたことにより、効果的に達成される。 [0018] また、上記目的は、前記グリース溜まり凹部は、ブラスト加工を用いて前記嚙合面に凹みを施し、その後、前記嚙合面を前記ウォームで慣らす加工方法によって、前記嚙合面に形成されたことにより、効果的に達成される。

[0019] さらに、上記目的は、前記ウォーム及び前記ウォームホイールは、電動式パワーステアリング装置の減速機構を構成することにより、効果的に達成される。

発明の効果

[0020] 以上のように、本発明に係る減速ギヤによると、ウォームホイールのギヤ歯の嚙合面力該嚙合面の滑り線に沿って形成された複数のグリース溜まり溝を全表面に亘つて有することによって、高面圧化においてもグリースを十分に保持することができ、嚙合面の全表面における潤滑性を良好な状態に維持することができる。さらに、グリースが不足した状態のグリース溜まり溝が、嚙合面に負荷する面圧が低下した際に、このグリース溜まり溝の近傍に形成された別のグリース溜まり溝力もグリースを引き込むことができるので、局部的なグリース油膜切れを防止することができる。この結果、嚙合面の摩耗を低減することができ、疲れ寿命の延長化を図ることができる。

[0021] また、嚙合面が、全表面に亘つて点在するように形成された複数のグリース溜まり凹部を有することによつても、嚙合面の全表面における潤滑性を良好な状態に維持することができ、疲れ寿命を延ばすことができる。

[0022] また、本発明では、グリース溜まり溝を形成する際の加工手段として、歯面にダイヤモンド砥粒または CBN砥粒を電着させた力卩ェ用ウォームを用い、或いは、グリース溜まり凹部を形成する際の加工手段として、プラズマ放電またはブラスト加工を用いることによって、嚙合面を容易に加工することができる。これにより、高効率、高出力でトルク伝達が可能な減速ギヤを、低コスト及び低労力で製造することができる。

[0023] さらに、本減速ギヤを電動式パワーステアリング装置の減速機構に用いることによつて、強度に対する信頼性が向上し、装置の寿命を延ばすことができる。これにより、減速機構の故障の可能性を低減することができるので、装置の修復に要する労力およびコストの軽減を図ることができる。図面の簡単な説明

[0024] [図 1]本発明の実施形態に係る減速ギヤの斜視図である。 [図 2]本発明の実施例 1に係る上記減速ギヤのギヤ歯の要部斜視図である。

[図 3]上記ギヤ歯の嚙合面の要部断面図であり、（a)は、嚙合面に面圧が負荷されていない状態を示し、（b)は、嚙合面に面圧が負荷された状態を示す。

[図 4]上記減速ギヤを用いた電動式パワーステアリング装置の減速機構の断面図である。

[図 5]本発明の実施例 2に係る上記減速ギヤのギヤ歯の要部斜視図である。

符号の説明

1 減速ギヤ

2 ウォーム

3 ャ困

4 ウォームホイール

7 嚙合面

8 グリース溜まり溝

10 減速機構

14 グリース溜まり凹部

発明を実施するための最良の形態

[0026] 以下、図面を参照にしながら、本発明の実施形態について説明する。

実施例 1

[0027] 図 1は、本発明の実施形態に係る減速ギヤの斜視図である。同図において、減速ギヤ 1は、金属製のウォーム 2と、該ウォーム 2に嚙合するギヤ歯 3を有するウォームホィール 4と力構成されて、る。

[0028] ウォームホイール 4は、外周面にギヤ歯 3を形成してなる榭脂部 5と、金属製の芯金 6とを一体化させたものである。榭脂部⁵は、強化繊維を含有する合成樹脂より形成されている。このような合成樹脂としては、例えば、ナイロン 6、ナイロン 66、ナイロン 46 等のナイロン (ポリアミド）系榭脂、ポリアセタール系榭脂、或いはフエノール系榭脂などを基材にして、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムゥイスカー、ホウ酸アルミ- ゥムゥイスカー等の強化繊維で機械的性質を強化したものが好ま U、。強化繊維を含有しな、合成樹脂を用いる場合には、単独でも一定以上の耐久性を有するモノマ一キャスティングナイロンなどを適用するのが望ましい。

[0029] また、金属製のウォーム 2は、相手材であるウォームホイール 4との摩耗に対して有利に働き、減速ギヤとして十分に機能するように、算術表面粗さ Raが 0. 1 μ m以下であることが好ましい。

[0030] なお、本実施形態では、芯金 6の外周面力ギヤ歯 3の歯端までに亘る榭脂部 5を合成樹脂より形成したが、これに限定されず、例えば、ウォームホイール 4の全体を合成榭脂より形成してもよいし、また、ギヤ歯 3が形成されているウォームホイール 4の外周部のみを合成樹脂より形成してもよい。

[0031] 上述したように概略構成される減速ギヤ 1では、ウォーム 2とウォームホイール 4との間、少なくともウォーム 2の歯と、ウォームホイール 4のギヤ歯 3との当接部には、潤滑のためのグリースが充填されている。このグリースとしては、ギヤ歯 3の合成樹脂への濡れ性に対して有利に働くように、鉱物油、合成炭化水素油（ポリ a一才レフイン油を含む）、エステル系合成油、フエ-ルエーテル系合成油などを基油とし、これに増ちよう剤及びエステル系化合物を配合したものが好ましい。増ちよう剤としては、ウレアイ匕合物や石けん系化合物 (金属石けん系、複合型を含む)などが望ましぐまた、添カロ剤としてのエステル系化合物としては、エステル系ワックス、または、少量のエステル系合成油（ジエステル油、ポリオールエステル油、芳香族エステル油を含む)などが望ましい。

[0032] 図 2は、本発明の実施例 1に係るギヤ歯の要部斜視図である。同図において、ギヤ歯 3の歯面には、ウォーム 2に対して滑り接触する嚙合面 7が形成され、該嚙合面 7には、滑り線（図 2の矢印 A方向）に沿って複数のグリース溜まり溝 8が、全表面に亘って形成されている。このグリース溜まり溝 8は、充填されているグリースを嚙合面 7に保持するためのものである。なお、図 2では、このグリース溜まり溝 8が数本しか図示されていないが、実際には、嚙合面 7の全表面に亘つて無数に形成されている。

[0033] このグリース溜まり溝 8は、切肖 U、又は研削によってギヤ歯 3が形成された後、加工手段によって形成される。この加工手段としては、例えば、ダイヤモンド砥粒を電着させた力卩ェ用ウォームによって、嚙合面 7を研削する方法がある。この加工用ウォームは、ニッケルメツキ浴にダイヤモンド砥粒を撹拌させると、電解メツキをする際にダイヤモンド砲粒を抱き込みながら皮膜が形成されることを利用して、減速ギヤ 1に使用するウォーム 2と同型のウォームに、粒度が 600前後である天然ダイヤモンドの砲粒を電着させたものである。この加工方法では、ダイヤモンド砥粒を電着させたカ卩ェゥォームをギヤ歯 3の嚙合面 7に嚙合させながら回転させることによって、嚙合面 7を研削し、その後、減速ギヤ 1に使用するウォーム 2で嚙合面 7に慣らしを施すことによって、無数のグリース溜まり溝 8を形成する。

[0034] なお、本実施例では、電着させる砥粒として、天然ダイヤモンドを用いたが、本発明はこれに限定されず、例えば、合成ダイヤモンド、あるいは金属皮膜合成ダイヤモンドなどを用いてもよい。また、電着させる砲粒として、立方晶窒化ホウ素、あるいは金属皮膜立方晶窒化ホウ素などの CBN砲粒を用いてもょ、。

[0035] また、別の加工用ウォームとして、強酸で歯面を荒らして焼入れしたウォーム、或!ヽは、窒化処理で歯面を荒らしたウォームを用いて上述したカ卩工手段を行なっても、上述したダイヤモンド砲粒を電着させた力卩ェ用ウォームを用いたカ卩ェ方法と同様の作用効果を得ることができる。

[0036] さらに、別の加工手段として、嚙合面 7を形成した後に、歯を鋤歯状にしたホブで嚙合面 7を滑り線（図 2中矢印 A方向）に沿って切削する加工手段、或いは、ブラシで嚙合面 7を滑り線に沿って擦る加工手段を適用しても、上述した加工方法と同様の作用効果を得ることができる。

[0037] 図 3は、グリース溜まり溝 8に対して垂直に切断した嚙合面 7の要部断面図であり、 ( a)は、嚙合面 7に面圧が負荷していない状態を示し、（b)は、嚙合面 7に面圧が負荷した状態を示す。

[0038] 合成樹脂製のギヤ歯 3は、ウォーム 2との嚙合接触によって、図 3 (b)中の矢印 B方向から面圧が負荷されると弾性変形する。これにより、嚙合面 7が押しつぶされ、ダリース溜まり溝 8の口が小さくなる。この結果、口が小さくなつたグリース溜まり溝 8は、毛細効果によってグリースを溝内に吸引し、高い面圧下においても十分にグリースを保持できるようになって、る。

[0039] また、嚙合面 7には、このようなグリース溜まり溝 8が滑り線（図 2中矢印 A方向）に沿つて全表面に亘つて形成されているため、仮に一部のグリース溜まり溝 8のグリースが不足しても、嚙合面 7に負荷する面圧が低下した際に、その近傍に形成された別のグリース溜まり溝 8からグリースを補充できるようになって、る。

[0040] 以上のように、本実施例 1に係る減速ギヤでは、ウォームホイール 4のギヤ歯 3の嚙合面 7に、該嚙合面 7の滑り線に沿って無数のグリース溜まり溝 8が全表面に亘つて形成されている。そのため、嚙合面 7に充填されているグリース力このグリース溜まり溝 8によって保持され、嚙合面 7の全表面における潤滑性を良好な状態に維持することができる。この結果、ウォーム 2とウォームホイール 4との間の摺動摩擦係数を低減することができ、減速ギヤの耐久性の向上を図ることができる。

[0041] また、嚙合面 7の加工手段として、ダイヤモンド砲粒または CBN砲粒を電着させたウォーム、強酸で歯面を荒らして焼入れしたウォーム、窒化処理で歯面を荒らしたゥオーム、歯を鋤歯にしたホブ、或いはブラシを用いることによって、嚙合面 7に無数のグリース溜まり溝 8を容易に形成することができる。

[0042] 以下に、上述したように構成された減速ギヤを装置に適用した例として、電動式パワーステアリング装置の減速機構について説明する力本発明に係る減速ギヤは、これにより制限されるものではなぐ多種多様な装置の減速機構に用いることができる。なお、上述した減速ギヤと同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。

[0043] 図 4は、減速ギヤを適用した電動式パワーステアリング装置の減速機構の断面図である。同図において、減速機構 10は、操舵補助用の電動モータ 11の回転を、電動モータ 11の回転軸 12に連結されたウォーム 2と、該ウォーム 2に嚙合されたウォームホイール 4とを介して減速し、ウォームホイール 4の芯金 6に圧入固定されたステアリングシャフト 13に伝達するようになって!/、る。

[0044] この減速機構 10では、ギヤ歯 3の嚙合面 7における潤滑性を良好に維持しているため、ウォーム 2とギヤ歯 3との嚙合における自己発熱を抑制することができ、装置の寿命を延ばすことができる。これにより、減速機構 10の故障の可能性を低減することができるので、装置の修復に要する労力およびコストの軽減を図ることができる。実施例 2

[0045] 図 5は、本発明の実施例 2に係るギヤ歯の要部斜視図である。なお、実施例 1と同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。

[0046] 本実施例 2のギヤ歯 3の歯面には、ウォーム 2に嚙合するための嚙合面 7が形成され、該嚙合面 7には、複数のグリース溜まり凹部 14が形成されている。このグリース溜まり凹部 14は、充填されているグリースを保持するためのものである。なお、図 5では、このグリース溜まり凹部 14が数個しか図示されていないが、実際には、嚙合面 7の全表面に亘つて無数に点在するように形成されてヽる。

[0047] このグリース溜まり溝 8は、切肖 U、又は研削によってギヤ歯 3が形成された後、加工手段によって形成される。この加工手段としては、例えば、嚙合面 7に無数のプラズマ放電を当て、その表面に無数の凹凸を施し、その後、ウォーム 2で嚙合面 7に慣らしを施すことによって、無数のグリース溜まり凹部 14を形成する加工方法がある。

[0048] また、別の加工手段として、被加工物表面の疲労寿命を向上させる際に、あるいは、被加工物表面のスケール、さび、塗膜などを除去して清浄する際に利用されるブラスト加工を用いてもよい。このブラスト加工には、ショットと呼ばれる鋼製小粒子を被カロェ物表面に多数投射して圧縮応力を残留させることで疲労寿命を向上させるショットピー-ングや、ショットやグリッド (grit)と呼ばれる角のある小粒子などを投射して被加工物表面を研掃するショットブラスト、あるいは、铸物ゃ鋼材などの表面についている砂やスケールなどを取り除くために、砂吹き機を用いて砂（一般的にはアルミナ系統のもの）を被力卩ェ物表面に吹き付けるサンドブラストなどがある。この加工手段では、上述したようなブラスト加工で用いられる研磨材を嚙合面 7に投射して、その表面に無数の凹凸を施し、その後、ウォーム 2で嚙合面 7に慣らしを施すことによって、無数のグリース溜まり凹部 14が形成される。

[0049] 以上のように、本実施例 2に係る減速ギヤでは、ウォームホイール 4のギヤ歯 3の嚙合面 7に、無数のグリース溜まり凹部 14が全表面に亘つて点在するように形成されている。そのため、嚙合面 7に充填されているグリース力このグリース溜まり凹部 14によって保持され、嚙合面 7の全表面における潤滑性を良好な状態に維持することができるので、実施例 1と同様の作用効果を得ることできる。

[0050] また、嚙合面 7の加工手段として、プラズマ放電、或いはブラスト加工を用いることによって、嚙合面 7に無数のグリース溜まり凹部 14を容易に形成することができる。 [0051] なお、本実施例 2に係る減速ギヤも、上述した実施例 1と同様に、電動式パワーステアリング装置の減速機構をはじめ、多種多様な装置の減速機構に用いることができる。

[0052] 以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとつて明らかである。

本出願は、 2004年 7月 27日出願の日本特許出願 (特願 2004-218345)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

産業上の利用可能性

[0053] 本発明により、ギヤ歯の嚙合面を潤滑するグリースが嚙合面の全体に亘つて充分に供給されるように、嚙合面をカ卩ェすることによって、嚙合面に生じる摩耗を低減し、ギヤ歯の耐久性の向上を図った減速ギヤを提供することができる。

Claims

請求の範囲

[1] 金属より形成されたウォームと、

該ウォームと嚙合するギヤ歯を有するウォームホイールと

からなり、

前記ウォームホイールのうち少なくとも前記ギヤ歯は、合成樹脂より形成され、且つ、前記ギヤ歯の嚙合面は、グリースによって潤滑されている減速ギヤであって、前記嚙合面は、該嚙合面の滑り線に沿って形成された複数のグリース溜まり溝を、全表面に亘つて有することを特徴とする減速ギヤ。

[2] 前記グリース溜まり溝は、歯面にダイヤモンド砲粒、または CBN砲粒を電着させたカロェ用ウォームを、前記ギヤ歯に嚙合させながら回転させて前記嚙合面を研削する加ェ方法によって、前記嚙合面に形成された請求項 1記載の減速ギヤ。

[3] 前記ウォーム及び前記ウォームホイールは、電動式パワーステアリング装置の減速機構を構成する請求項 1または 2記載の減速ギヤ。

[4] 金属より形成されたウォームと、

該ウォームと嚙合するギヤ歯を有するウォームホイールと

からなり、

前記ウォームホイールのうち少なくとも前記ギヤ歯は、合成樹脂より形成され、且つ、前記ギヤ歯の嚙合面は、グリースによって潤滑されている減速ギヤであって、前記ウォームの表面の算術平均粗さ Raは、 0. 1 m以下であり、且つ、

前記ウォームホイールの前記嚙合面は、全表面に亘つて点在するように形成された複数のグリース溜まり凹部を有することを特徴とする減速ギヤ。

[5] 前記グリース溜まり凹部は、前記嚙合面にプラズマ放電を当てて凹みを施し、その後

、前記嚙合面を前記ウォームで慣らす加工方法によって、前記嚙合面に形成された請求項 4記載の減速ギヤ。

[6] 前記グリース溜まり凹部は、ブラスト加工を用いて前記嚙合面に凹みを施し、その後

[7] 前記ウォーム及び前記ウォームホイールは、電動式パワーステアリング装置の減速機構を構成する請求項 4なヽし 6のヽずれかに記載の減速ギヤ。