JP2010032025A - 遊星ローラねじ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】遊星ローラねじ装置の慣らし運転を不要にする手段を提供する。
【解決手段】外周面に軸ねじ3を形成した中央ねじ軸2と、内周面にナットねじ5を形成した円筒状のナット4と、軸ねじ3とナットねじ5とに噛合うローラねじ7を外周面に有し、中央ねじ軸2とナット4との間を自転しながら公転する複数の遊星ローラ6とを備えた遊星ローラねじ装置1において、軸ねじ3とナットねじ5とローラねじ7との中で、交差噛合となる2つのねじの少なくとも一方のねじ面の表面粗さを、予め算術平均粗さRaで0.1μm以下、かつ最大断面高さRtで1μm以下に形成しておく。
【選択図】 図1

Description

本発明は、射出成形機やプレス成形機等の機械装置の送り機構や動力伝達用等に用いられる遊星ローラねじ装置に関する。
従来の遊星ローラねじ装置は、外周面に軸ねじを形成した中央ねじ軸と内周面にナットねじを形成したナットとの間に、これらのねじと噛合うローラねじを有し、これらの間を自転しながら公転する複数の遊星ローラを配置し、軸ねじのねじ面とローラねじのねじ面とナットねじのねじ面とに、比較的尖鋭な部分を表面に有する炭化珪素粉末をショット材としたショットピーニングにより一旦ねじ面を粗し、その後に表面が滑らかなアルミナ粉末等のショット材によりショットピーニングを施して、ねじ面に算術平均粗さRaで0.4μm以下の微小凹部からなる油溜りを形成し、低速運転時における潤滑性を改善して、そのときの作動効率を向上させている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2008−69846号公報(段落0011−0015、段落0028−0033、第1図、第4図)
しかしながら、上述した従来の技術においては、軸ねじとローラねじとナットねじとのそれぞれのねじ面に、算術平均粗さRaで0.4μm以下の微小凹部からなる油溜りを形成しているため、低速運転時における作動効率を向上させることができるが、一方において、遊星ローラねじ装置の製造後の稼動開始時における作動効率を低下させるという問題がある。
つまり、軸ねじとローラねじとが交差噛合になっている場合には、遊星ローラの自転および公転における転がり運動において、軸ねじとローラねじとの間に軸方向の滑りが生じ、この滑りの作用によって中央ねじ軸とナットとが軸方向に相対運動をすることができるのであるが、軸ねじとローラねじとの間に滑りが生じているわけであるから、摩擦が大きくなり、作動効率を低下させることになる。
なお、交差噛合とは、遊星ローラねじ装置において、ねじ溝の溝筋が平行でない噛合のことをいい、ねじのリード角の絶対値が異なる全ての噛合をいう。また、リード角の絶対値が同じであっても、雄ねじ同士の噛合、例えば軸ねじとローラねじの噛合で捩れ方向が同一の場合は交差噛合となり、雄ねじと雌ねじとの噛合、例えばローラねじとナットねじとの噛合で捩れ方向が逆の場合は交差噛合となる。
上記の摩擦の大きさは、交差噛合となる2つのねじ(例えば、軸ねじとローラねじ)のねじ面の表面粗さの影響が大きく、表面粗さが粗くなると大きくなる。
図4は、軸ねじとローラねじのそれぞれのねじ面を研削で仕上げた場合の例(以下、研削仕上げのねじ面を有する遊星ローラねじ装置を従来例という。)であるが、従来の遊星ローラねじ装置のねじ面の表面粗さは、製造後の稼動開始時において算術平均粗さRa(以下、単にRaという。)で0.2μm以上、粗さ曲線の最大断面高さRt(以下、単にRtという。)で1μm以上の範囲にある。
また、高負荷用途に用いられる遊星ローラねじ装置は、面圧が高いために初期磨耗が発生し、図4に示す従来例Aのように、ねじ面の表面粗さは50km走行後に、Raで0.1μm以下、Rtで1μm以下の滑らかな状態になる。
なお、走行距離とは、荷重負荷状態での、中央ねじ軸とナットの相対移動距離をいう。
図5は従来の遊星ローラねじ装置の走行距離とRaとの関係を、図6は従来の遊星ローラねじ装置の走行距離とRtとの関係を示したものである。
図5に示すように、Raは、稼動開始時(走行距離0km)において0.2μm以上の領域に分布するが、50km走行後には0.1μm以下で安定することが判る。
また、図6に示すように、Rtは、稼動開始時において1μm以上の領域に分布するが、50km走行後には1μm以下で安定することが判る。
図2は遊星ローラねじ装置の走行距離と作動効率との関係を示したものである。
図2に破線で示す従来例の場合は、稼動開始時において作動効率が85%程度であるが、走行距離が2kmを過ぎると作動効率が90%弱となり、走行距離5kmで90%程度の作動効率を示すようになる。
このように、遊星ローラねじ装置の能力を最大限に引出すためには、製造後の稼動初期に慣らし運転を行う必要があり、慣らし運転中は作動効率が悪いので、駆動源となるモータの電力消費量が多く、かつ遊星ローラねじ装置の発熱が大きくなるためにサイクルタイムを上げることができず、遊星ローラねじ装置を装備した射出成形機等の機械装置の立上げ時の生産性を低下させるという問題がある。
また、慣らし運転は、機械装置の利用者にとって大きな負担になるという問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、遊星ローラねじ装置の慣らし運転を不要にする手段を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、外周面に軸ねじを形成した中央ねじ軸と、内周面にナットねじを形成した円筒状のナットと、前記軸ねじと前記ナットねじとに噛合うローラねじを外周面に有し、前記中央ねじ軸とナットとの間を自転しながら公転する複数の遊星ローラとを備えた遊星ローラねじ装置において、前記軸ねじと前記ナットねじと前記ローラねじとの中で、交差噛合となる2つのねじの少なくとも一方のねじ面の表面粗さを、予め算術平均粗さRaで0.1μm以下、かつ最大断面高さRtで1μm以下に形成しておくことを特徴とする。
これにより、本発明は、遊星ローラねじ装置の稼動開始時から高い作動効率を安定して得ることができ、遊星ローラねじ装置の慣らし運転を不要にすることができるという効果が得られる。
以下に、図面を参照して本発明による遊星ローラねじ装置の実施例について説明する。
図1は実施例の遊星ローラねじ装置の側方断面を示す説明図である。
図1において、1は遊星ローラねじ装置である。本実施例の遊星ローラねじ装置1は内歯リングギヤ式の遊星ローラねじ装置である。
2は遊星ローラねじ装置1の中央ねじ軸であり、合金鋼等の鋼材で製作された棒状部材であって、その外周面には1条または多条の軸ねじ3が、所定のねじピッチP、およびねじリードLsで螺旋状に形成されている。
4は遊星ローラねじ装置1のナットであり、合金鋼等の鋼材で製作された円筒状部材であって、その内周面には多条のナットねじ5が、軸ねじ3と同じねじピッチP、および所定のねじリードLnで形成されている。
6は遊星ローラであり、合金鋼等の鋼材で製作された棒状部材であって、その外周面には軸ねじ3とナットねじ5とに噛合うローラねじ7が、軸ねじ3と同じねじピッチP、および所定のねじリードLrで形成されている。
また、遊星ローラ6の両端部には、円柱状の突起軸部8が形成されており、突起軸部8とローラねじ7との間には、遊星ローラ6と同軸に平歯車からなる遊星ピニオンギヤ9が設けられている。
11は保持器であり、樹脂材料や金属材料で製作された円環状部材であって、遊星ローラ6の突起軸部8を回転自在に保持する保持穴11aが所定の角度ピッチで複数設けられており、遊星ローラ6の突起軸部8を保持穴11aで保持して中央ねじ軸2とナット4の間に複数の遊星ローラ6を所定の角度ピッチで配置する機能を有している。
12はC型輪止め等の止め輪であり、ナット4の内周面にピン13で取付けられたリングギヤ14の軸方向の外側の突出部に設けられた係止溝に係止され、保持器11の軸方向の移動を制限する機能を有している。
リングギヤ14は、保持器11に保持された複数の遊星ピニオンギヤ9に噛合う内歯の平歯車であって、ナット4の回転に伴って噛合っている遊星ピニオンギヤ9を回転させ、遊星ローラ6の公転を案内する機能を有している。
16はフランジ部であり、ナット4の外周部の一方の端部に設けられ、フランジ部16に設けられた取付ボルト穴16aにより機械装置の移動台17に取付ボルト18で固定される。
本実施例の交差噛合となっている2つのねじ、つまり中央ねじ軸2の軸ねじ3および遊星ローラ6のローラねじ7のそれぞれのねじ面には、アルミナガラスビーズ等のねじ面の硬度と同等以上の硬度を有する粒径40μm以上、200μm以下のショット材を、100m/s以上の噴出速度で打ち付けるショットピーニングによる表面処理が施され、その表面粗さは、Raで0.1μm以下、かつRtで1μm以下の粗さに形成されている。
上記の中央ねじ軸2の軸ねじ3とナット4のナットねじ5とに、保持器11に保持されてリングギヤ14と遊星ピニオンギヤ9により公転を案内された遊星ローラ6のローラねじ7が噛合い、中央ねじ軸2を回転させることによって、遊星ローラ6がグリースにより潤滑されながら中央ねじ軸2の周りを自転しながら公転してナット4を軸方向に移動させる。これにより中央ねじ軸2の回転運動がナット4の直線運動に変換される。
このような構成の遊星ローラねじ装置1の作動効率を、以下に示す諸元の遊星ローラねじ装置1を用いて測定した。
1)遊星ローラねじ装置1の諸元
軸ねじ3の呼び有効径:60mm、ねじリードLs:15mm
ナットねじ5の呼び有効径:100mm、ねじリードLn:15mm
ローラねじ7の呼び有効径:10mm、ねじリードLr:3mm
遊星ローラの本数:11本
噛合有効長さ:120mm
軸ねじ3のねじ面の表面粗さ:Ra=0.078μm、Rt=0.783μm
ローラねじ7のねじ面の表面粗さ:Ra=0.082μm、Rt=0.635μm
2)測定条件
回転速度:300rpm、軸方向荷重:159kN、潤滑:リューベ株式会社製のYS2グリース
上記の諸元の遊星ローラねじ装置1の作動効率の測定結果を図2に示す。
図2に示すように、実線で示す本実施例の遊星ローラねじ装置1の作動効率は、稼動開始時から、破線で示す従来例の慣らし運転後の作動効率に匹敵する90%程度の作動効率を、安定して得られている。
なお、本実施例においては、内歯リングギヤ式の遊星ローラねじ装置1を例に説明したが、図3に示す外歯リングギヤ式の遊星ローラねじ装置21の場合も同様である。
以下に、図3に示す遊星ローラねじ装置21について説明する。上記遊星ローラねじ装置1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
図3において、22は遊星ローラねじ装置21の中央ねじ軸であり、合金鋼等の鋼材で製作された棒状部材であって、その一方の端部の外周面には遊星ローラ6の遊星ピニオンギヤ9間のローラねじ7に噛合う軸ねじ23が所定のねじピッチPおよびねじリードLsで螺旋状に形成されている。
24は遊星ローラねじ装置21のナットであり、合金鋼等の鋼材で製作された上記のナット4より軸方向長さが長い円筒状部材であって、その内周面にはナットねじ25が、軸ねじ3と同じねじピッチP、および所定のねじリードLnで形成されている。
31は保持器であり、上記実施例の保持器11と同様に複数の保持穴31aが設けられており、リングギヤ34の外側の中央ねじ軸22の外周面に設けられた係止溝に嵌合する止め輪32によりその軸方向の移動が制限される。
リングギヤ34は、保持器31に保持された遊星ローラ6の遊星ピニオンギヤ9に噛合う外歯の平歯車であって、軸ねじ23の両端部の中央ねじ軸22の外周面に設けられ、遊星ピニオンギヤ9がリングギヤ34に噛合うことにより遊星ローラ6の公転を案内する。
上記の中央ねじ軸22の軸ねじ23とナット24のナットねじ25とに、保持器31に保持されてリングギヤ34と遊星ピニオンギヤ9により公転を案内された遊星ローラ6のローラねじ7が噛合い、中央ねじ軸22を回転させることによって、遊星ローラ6がグリースにより潤滑されながら中央ねじ軸22の周りを自転しながら公転してナット24をその長さの範囲で軸方向に移動させる。これにより中央ねじ軸22の回転運動がナット24の直線運動に変換される。
このような外歯リングギヤ式の遊星ローラねじ装置21の場合においても、交差噛合となる2つのねじ、つまりナット24のナットねじ25および遊星ローラ6のローラねじ7のそれぞれのねじ面に、ショットピーニング等による表面処理を施して、それらの表面粗さを、Raで0.1μm以下、かつRtで1μm以下の粗さに形成すれば、上記と同様に、稼動開始時から従来例の慣らし運転後の作動効率と同等の作動効率を、安定して得ることができる遊星ローラねじ装置21とすることができる。
上記実施例では、交差噛合となる2つのねじ、内歯リングギヤ式の遊星ローラねじ装置1の場合は軸ねじ3とローラねじ7、外歯リングギヤ式の遊星ローラねじ装置21の場合は、ナットねじ25とローラねじ7のそれぞれのねじ面に表面処理を施すとして説明したが、いずれか一方のねじ面に表面処理を施せば、同様の効果を得ることができる。
以上説明したように、本実施例では、外周面に軸ねじを形成した中央ねじ軸と、内周面にナットねじを形成した円筒状のナットと、軸ねじとナットねじとに噛合うローラねじを外周面に有し、中央ねじ軸とナットとの間を自転しながら公転する複数の遊星ローラとを備えた遊星ローラねじ装置において、軸ねじとナットねじとローラねじとの中で、交差噛合となる2つのねじの少なくとも一方のねじ面の表面粗さを、Raで0.1μm以下、かつRtで1μm以下に形成しておくようにしたことによって、遊星ローラねじ装置の稼動開始時から高い作動効率を安定して得ることができ、遊星ローラねじ装置の慣らし運転を不要にすることが可能になり、稼動開始時における発熱による温度上昇を低く抑えて、遊星ローラねじ装置を装備した機械装置の立上げ時の生産性を向上させることができると共に、機械装置の利用者の負担を軽減することができる。
なお、上記実施例においては、ねじ面の表面粗さを、Raで0.1μm以下、かつRtで1μm以下の粗さにする表面処理は、ショットピーニングであるとして説明したが、表面処理は以下に示す方法であってもよい。
a)テープにサブミクロンから数十μmの粒径の砥粒を接着剤で均一に塗布したラッピングテープを用いてねじ面の研磨を行うテープ研磨
b)皮や毛、樹脂などの柔軟材を回転させながらねじ面の研磨を行うバフ研磨
c)遊星ローラねじ装置1の組立て後に交差噛合となる2つのねじの間に、ダイヤモンドペーストを塗布し、これらのねじ面を慣らし装置で磨いた後に洗浄する磨合せ研磨
d)交差噛合となる2つのねじ、例えば軸ねじ3およびローラねじ7のいずれか一方のねじ面に噛合う他方のねじに倣ったねじ面を有する磨合せ工具に、ダイヤモンドペーストを塗布し、これらのねじ面を慣らし装置で磨いた後に洗浄する磨合せ研磨
実施例の遊星ローラねじ装置の側方断面を示す説明図 遊星ローラねじ装置の走行距離と作動効率との関係を示すグラフ 実施例の遊星ローラねじ装置の他の態様を示す説明図 従来の遊星ローラねじ装置のねじ面の表面粗さを示す説明図 従来の遊星ローラねじ装置の走行距離とRaとの関係を示すグラフ 従来の遊星ローラねじ装置の走行距離とRtとの関係を示すグラフ
符号の説明
1、21 遊星ローラねじ装置
2、22 中央ねじ軸
3、23 軸ねじ
4、24 ナット
5、25 ナットねじ
6 遊星ローラ
7 ローラねじ
8 突起軸部
9 遊星ピニオンギヤ
11、31 保持器
11a、31a 保持穴
12、32 止め輪
13 ピン
14、34 リングギヤ
16 フランジ部
16a 取付ボルト穴
17 移動台
18 取付ボルト

Claims (6)

  1. 外周面に軸ねじを形成した中央ねじ軸と、内周面にナットねじを形成した円筒状のナットと、前記軸ねじと前記ナットねじとに噛合うローラねじを外周面に有し、前記中央ねじ軸とナットとの間を自転しながら公転する複数の遊星ローラとを備えた遊星ローラねじ装置において、
    前記軸ねじと前記ナットねじと前記ローラねじとの中で、交差噛合となる2つのねじの少なくとも一方のねじ面の表面粗さを、予め算術平均粗さRaで0.1μm以下、かつ最大断面高さRtで1μm以下に形成しておくことを特徴とする遊星ローラねじ装置。
  2. 請求項1において、
    前記少なくとも一方のねじ面を、100m/s以上の噴出速度で、前記ねじ面と同等以上の硬度を有し、粒径40μm以上、200μm以下のショット材を打ち付けるショットピーニングにより形成することを特徴とする遊星ローラねじ装置。
  3. 請求項1において、
    前記少なくとも一方のねじ面を、テープ研磨により形成することを特徴とする遊星ローラねじ装置。
  4. 請求項1において、
    前記少なくとも一方のねじ面を、バフ研磨により形成することを特徴とする遊星ローラねじ装置。
  5. 請求項1において、
    前記少なくとも一方のねじ面を、当該ねじ面に交差噛合するねじに倣ったねじ面を有する磨合せ工具を用いて、ダイヤモンドペースト塗布による磨合せ研磨により形成することを特徴とする遊星ローラねじ装置。
  6. 請求項1において、
    前記交差噛合となる2つのねじのねじ面を、ダイヤモンドペースト塗布による磨合せ研磨により形成することを特徴とする遊星ローラねじ装置。
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