JP4162070B2 - ボールネジの製造装置及び製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールネジの製造装置及び製造方法に関し、特に、工作機械やロボットなどに使われる高精度の位置決めや物体の移動に使用されるハイリードのボールネジの製造装置及び製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、工作機械やロボットなどに使われる高精度の位置決めや物体の移動に使用されるボールネジは切削と研削加工あるいは転造加工により製造されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の製造方法では、製作期間が長くなり生産性が非常に低く、特にハイリードのボールネジ製作は従来の加工方法では容易ではないため、更に製作期間が長くなり高価である。しかしながら、市場においては超高精度な製品を要求する一方、安価で納期の短い製品を期待しているため、市場の要求に合わなくなっている。
本発明は、このような課題を解決するためのものであり、高精度なボールネジを容易に且つ安価に製造することができるボールネジの製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明のうちで請求項1記載の発明は、支持部と、支持部に支持された超硬のダイスとを備えたボールネジの製造装置であって、ダイスの内周面にはらせん状の突起が形成され、ダイスの側部が単式深溝玉軸受けにより回転可能に支持部に支持されると共に、ダイスの軸方向端部側がスラスト玉軸受けにより回転可能に支持部に支持されており、支持部の軸方向内側には丸棒が挿通可能な挿通孔が形成されており、ダイスは、予めの1パスリダクションとリードの伸び率との関係を示すデータからボールネジのリードの目標寸法になるように設計されたものであり、ダイス内に丸棒を一度嵌通させることによりボールネジの製造を可能にすることを特徴とするものである。
【0005】
このように、ダイス内に丸棒を軸方向に嵌通させるだけで回転するダイスのらせん状の突起により丸棒の外周面にらせん状の深溝を成形することができる。
【0007】
ダイスの側部を単式深溝玉軸受けにより、ダイスの軸方向内部側をスラスト玉軸受けによりそれぞれ回転可能に支持することにより、ダイス内に丸棒を嵌通させる際に、スラスト荷重を受けてもダイスは容易に回転することができる。
【0008】
また、本発明のうちで請求項2記載の発明は、支持部と、支持部に支持された超硬のダイスとを備え、ダイスの内周面にはらせん状の突起が形成され、ダイスの側部が単式深溝玉軸受けにより回転可能に支持部に支持されると共に、ダイスの軸方向端部がスラスト玉軸受けにより回転可能に支持部に支持されており、支持部の軸方向内側には丸棒が挿通可能な挿通孔が形成されている製造装置を用いてボールネジを製造する製造方法であって、予めの1パスリダクションとリードの伸び率との関係を示すデータからボールネジのリードの目標寸法になるようにダイスを設計し、ダイス内に丸棒の一端を挿入して軸方向に嵌通させることによりダイスを回転させて、回転するダイス内周面のらせん状の突起が嵌通していく丸棒の外周面にらせん状の深溝を成形し、ダイス内に丸棒を一度嵌通させることによりボールネジを製造することを特徴とする。
【0009】
これにより、ダイス内に丸棒を一度だけ嵌通させることにより丸棒の外周面に精密な等ピッチのらせん状の深溝が成形されるため、1回のみの塑性加工によりハイリードのボールネジの製造が可能になり、これまで切削・研削での製作が技術的に難しいハイリードのボールネジの製造が可能となるとともに、生産性も向上する。
【0011】
ダイス内に丸棒を嵌通させると、ダイスは単式深溝玉軸受け及びスラスト玉軸受けにそれぞれ支持されて無理なく回転し、丸棒の外周面にらせん状の深溝を形成することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図により説明する。図1は、本発明の実施の形態を示すハイリードボールネジの製造装置の断面図、図2は、図1の製造装置により製造されたハイリードボールネジの側面図である。
図1に示すように、10は、ハイリードボールネジ20の製造装置である。製造装置10は、超硬合金などのダイス12の側部が単式深溝玉軸受け14により、またダイス12の軸方向内部側がスラスト玉軸受け16によりそれぞれ支持部18に回転可能に支持されることにより構成される。これにより、丸棒20a引抜き中スラスト荷重を受けてもダイス12は容易に回転することができる。ダイス12の内周面にはらせん状の突起12aが形成されており、支持部18の下部には、丸棒20aが挿通可能な挿通孔18aが形成されている。丸棒20aは、例えば、強じんで耐摩耗性のある浸炭用合金鋼SCM420などの焼きなましたものである。また、丸棒20aの寸法は、例えば、直径15.0〜16.2mm程度である。
【0013】
次に、ハイリードボールネジ20の製造方法について説明する。
まず、丸棒20aを、潤滑石鹸がのりやすいようにリン酸亜鉛被膜等の潤滑処理(ボンデライト、ボンデリューべ)を行い、その後、丸棒20aの一端の直径を縮小(先付け)する。丸棒20aを縮小した一端側から図1中矢印1方向にダイス12内に挿入し、丸棒20aの一端を図1中矢印2方向に引抜く。丸棒20aの引き抜きは、図示してないドローベンチにより、所定の速度で引抜く。丸棒20aを引き抜く際に、ダイス12のらせん状の突起12aが丸棒20aの外周面に食い込むため、丸棒20aを軸方向に移動させることによりダイス12が図1中矢印3方向に回転して、らせん状の突起12aが丸棒20aの外周面にらせん状の深溝20bを成形していく。
このように、ダイス12の側部を単式深溝玉軸受け14により、ダイス12の軸方向内部側をスラスト玉軸受け16によりそれぞれ回転可能に支持することにより、ダイス12内に丸棒20aを嵌通させる際に、スラスト荷重を受けてもダイス12は容易に回転することができる。
これにより、ダイス12内に丸棒20aを軸方向に嵌通させるだけで回転するダイス12のらせん状の突起により丸棒20aの外周面に等ピッチの精密ならせん状の深溝を成形することができる。
【0014】
【実施例】
強じんで耐摩耗性のある浸炭用合金鋼SCM420の焼きなました丸棒20aは、引抜き時のリダクションを変化させるため、その直径を15.0mm、15.2mm、15.4mm、15.6mm、16.2mmの5種類を使用する。図3にそれぞれの丸棒20aの直径に対する引抜きリダクションを示し、試作するハイリードボールネジ20の寸法及び目標仕様を、軸径15mm、リード40mmとし、加工するねじの条数は2と4とする。累積リード誤差の目標は、JISB1191,1192のC10相当(±0.21mm/300mm)であり、溝形状は半円状のものとする。
【0015】
まず、丸棒20aに潤滑処理を行い、その後、丸棒20aの一端の直径を縮小する。丸棒20aの一端をダイス12内に挿入して、図示してないドローベンチにより約2m/minの速度で引抜く。引抜き応力はロードセルより随時測定する。
【0016】
次に、実験結果及び考察を示す。
実験では、図3に示したリダクション内では引抜きが可能であり、1パスの引抜きのみで、図2に示されるような軸径15mmの4条のハイリードボールネジ20が加工される。2条或いはその他のハイリードボールネジ20についても図示していないが同様である。
【0017】
引抜き中ダイス12は相当大きな圧力を受けながら回転する。図3に示した各直径の丸棒20aを用いた際の引抜き応力の測定結果を図4に示す。これによると、1パスリダクション(R/P)が大きくなればなるほど引抜き応力は大きくなり、2条ネジと4条ネジにおける実験結果の相異はあまり見られない。多少複雑形状になる4条ネジの方がかえって引抜き応力が低くなっており、また、1パスリダクションが十数%を超えると引抜き応力の上昇率が小さくなっている。これらは、引き細りのような現象が起き、実リダクションが想定リダクションより小さくなっているためと考えられ、ダイス12を出たハイリードボールネジ20のネジの溝部が引張り応力に耐えられず、溝形状が長手方向に伸ばされた現象と判断される。
【0018】
次に、図3の条件で引抜きを行った2条ネジの各ハイリードボルネジ20の長手方向のリードの測定結果を図5に示す。いずれの条件でも測定されたリードは目標の40mmより大きくなっており、1パスリダクションが大きくなればなるほどリードの伸びが大きくなることがわかる。しかし、長手方向のリードのばらつきは少なく、±0.2mm以内に入っており、ダイス12の設計時にリードの伸びを予想しなければならないことがわかる。そこで、図6に示す1パスリダクションとリードの伸び率の関係のデータと図5のデータを利用してダイス12を設計することにより、ハイリードボールネジ20を目標仕様に仕上げることができるものと判断される。
【0019】
次に、本発明の引抜きによるハイリードボールネジ20の変形機構や加工度をチェックするため、硬さ分布を調べた。これによると、成形された溝部では加工硬化により硬さが最も高く、焼きなましの硬さの10〜15%向上する。
【0020】
なお、丸棒20aの材質、寸法、ねじの条数及びねじの形状、潤滑処理方法は上記実施の形態に示したものに限定されるものではない。
【0021】
また、丸棒20aをダイス12内に嵌通させる方法として、丸棒20aをダイス12内に押し込む方法も考えられる。
【0022】
さらには、本実施例においてはハイリードのボールネジ20について説明したが、これに限るものではなく、ハイリードではないボールネジも同様に製造することができる。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のうち請求項1記載の発明は、ダイス内に丸棒を軸方向に嵌通させるだけで回転するダイスのらせん状の突起により丸棒の外周面にらせん状の深溝を成形することができる。
【0024】
また、ダイスの側部を単式深溝玉軸受けにより、ダイスの軸方向内部側をスラスト玉軸受けによりそれぞれ回転可能に支持することにより、ダイス内に丸棒を嵌通させる際に、スラスト荷重を受けてもダイスは容易に回転することができる。
【0025】
また、本発明のうちで請求項2記載の発明は、ダイス内に丸棒を一度だけ嵌通させるだけで、高精度の寸法精度を有し、成形された溝部の表面状態が良く、溝部硬さは加工硬化により非常に硬く一部の製品においては熱処理の必要がないらせん状の深溝が丸棒の外周面に成形されるため、1回のみの塑性加工によりこれまで切削・研削での製作が技術的に難しいハイリードのボールネジの製造が可能となる。また、加工時間は従来に比べて一割以下になり、生産性が大幅に向上する。
【0026】
また、ダイス内に丸棒を嵌通させると、ダイスは単式深溝玉軸受け及びスラスト玉軸受けにそれぞれ支持されて無理なく回転し、丸棒の外周面にらせん状の深溝を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すハイリードボールネジの製造装置の断面図である。
【図2】図1の製造装置により製造された4条のハイリードボールネジの側面図である。
【図3】各丸棒の直径に対する引抜きリダクションを示す図である。
【図4】種々なリダクションにおけるネジ製造時の引抜き応力を示す図である。
【図5】ハイリードボールネジの長手方向のネジのリードを示す図である。
【図6】各リダクションに対するネジのリードの伸び率を示す図である。
【符号の説明】
12 ダイス
12a らせん状の突起
14 単式深溝玉軸受け
16 スラスト玉軸受け
20a 丸棒
Claims (2)
- 支持部と、支持部に支持された超硬のダイスとを備えたボールネジの製造装置であって、
ダイスの内周面にはらせん状の突起が形成され、ダイスの側部が単式深溝玉軸受けにより回転可能に支持部に支持されると共に、ダイスの軸方向端部側がスラスト玉軸受けにより回転可能に支持部に支持されており、
支持部の軸方向内側には丸棒が挿通可能な挿通孔が形成されており、
ダイスは、予めの1パスリダクションとリードの伸び率との関係を示すデータからボールネジのリードの目標寸法になるように設計されたものであり、ダイス内に丸棒を一度嵌通させることによりボールネジの製造を可能にすることを特徴とするボールネジの製造装置。 - 支持部と、支持部に支持された超硬のダイスとを備え、ダイスの内周面にはらせん状の突起が形成され、ダイスの側部が単式深溝玉軸受けにより回転可能に支持部に支持されると共に、ダイスの軸方向端部がスラスト玉軸受けにより回転可能に支持部に支持されており、支持部の軸方向内側には丸棒が挿通可能な挿通孔が形成されている製造装置を用いてボールネジを製造する製造方法であって、
予めの1パスリダクションとリードの伸び率との関係を示すデータからボールネジのリードの目標寸法になるようにダイスを設計し、
ダイス内に丸棒の一端を挿入して軸方向に嵌通させることによりダイスを回転させて、回転するダイス内周面のらせん状の突起が嵌通していく丸棒の外周面にらせん状の深溝を成形し、
ダイス内に丸棒を一度嵌通させることによりボールネジを製造することを特徴とするボールネジの製造方法。
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