明 細 書
コロナウィルススパイク S 1融合蛋白及びその発現ベクター
技術分野
[0001] 本発明は、コロナウィルスエンベロープのスパイク蛋白にウィルス由来の特定のぺ プチドを付加した融合蛋白及び当該融合蛋白を発現させるための発現ベクターに関 する。より詳細には、コロナウィルススパイク蛋白 S1の C末側にウィルス膜蛋白のトラ ンスメンブレン領域のペプチド、好ましくは-ユーカツスル病ウィルス (NDV) F蛋白の トランスメンブレン領域のペプチドを付カ卩した融合蛋白、コロナウィルススパイク蛋白 S 1の C末側にスノイク蛋白 S2の N末側領域のペプチドを付加した融合蛋白、当該融 合蛋白をコードする遺伝子が組み込まれた発現ベクター、及び当該発現ベクターを コロナウィルスワクチンの主成分として使用する方法に関する。 背景技術
[0002] 鶏伝染性気管支炎ウィルス(以下、「IBV」と称することもある)はコロナウィルス科に 属する 1本鎖の RNAをゲノムとして有するウィルスで、エンベロープを保有する。ェン ベロープ上には、スパイク蛋白と呼ばれる膜蛋白が存在する力 本蛋白は、 S1及び S2と呼ばれる二つのサブユニットで構成されており、この構造は、コロナウィルスに共 通している。ウィルス複製時には、スパイク蛋白は、一本のプレカーサ一蛋白として合 成された後、サブユニット S1及び S2に切断される。この切断は、ウィルスの感染性獲 得に必要である。それぞれのサブユニットは、異なる性状を有する。 N末側の S1は細 胞への吸着、中和抗体の誘導及びウィルスの血清型を決定する機能を有する。一方 、 C末側の S2は、主として S1をウィルスエンベロープに固定する役目を担う(非特許 文献 1、 4、 5、 6)。
[0003] 鶏が自然宿主である IBVは、伝播力が非常に強いために養鶏産業を営むほとんど の国々で発生.蔓延している。感染鶏の鼻汁、涙、口腔粘液、糞便に多量のウィルス が含まれており、これらが感染源になる。ウィルス抗原は変異しやすぐ多数の抗原 性の異なるウィルス株が存在するため鶏群は繰り返し感染を受ける。症状としては、 呼吸器症状、産卵率の低下や異常卵の産出などの産卵障害、腎炎、下痢などが認
められる。幼齢なものほど症状が激しぐ死亡率も高い。また、マイコプラズマや大腸 菌などとの合併症による発育障害や、幼雛期の感染で多数の無産卵鶏が出現する など経済的な被害が大きい。血清型と病型の間には明らかな関係は認められていな い。組織学的には、気管、腎臓、卵管等の上皮細胞が変性破壊される。
[0004] 鶏伝染性気管支炎(以下、「IB」と称することもある)の発生をコントロールするため に、養鶏場において種々の生ワクチン及び不活ィ匕ワクチンが使用されている力 生ヮ クチンは、病原性復帰による病原性獲得や野外のウィルスとの組換えによる新たな流 行株出現の引き金となるなど、その使用においては問題点も少なくない。このような 現象は他のコロナウィルス科に属するウィルスにおいても同様に起こり得ることであり 、コロナウィルス感染症に対する従来型のワクチンは、上記の問題を内包していると いえる。
[0005] 近年、このような課題を克服するために、遺伝的により安定な DNAウィルスをべクタ 一とする組換え生ワクチンの研究が行なわれている。例えば、 Johnsonらは、アデノウ ィルスプロモータの下流に IBVの S1サブユニット遺伝子を結合させた発現カセットを アデノウイルスゲノムに挿入した組換え生ワクチンを作出し、これを鶏に免疫した後、 I BVの強毒株で攻撃し、そのワクチンとしての効果を調べた。その結果、ある程度の防 御効果は認められるものの、 S1に対する特異抗体は、アデノウイルスに対する抗体 価に比べ、非常に低いものであったことを報告しており、また中和抗体の誘導につい ては言及されて!ヽな!ヽ (非特許文献 1参照)。
[0006] Wangらは、ボックスウィルスゲノムに S1サブユニット遺伝子を組み込んだ組換え生 ワクチンを作出し、鶏における免疫効果を調べた。彼等の報告によると、この組換え 生ワクチンを免疫された鶏では、臨床症状、回収された攻撃ウィルス量及び組織の 損傷が非免疫群に比べて軽減されたが、やはりワクチンによる中和抗体の誘導は認 められて 、な 、 (非特許文献 3)。
[0007] 目的遺伝子をプラスミドなどの発現ベクターに組み込んだ DNAワクチンの研究も行 われている。例えば、 Kapczynskiらは、サイトメガロウィルスプロモーターの下流に IBV の S1サブユニットをコードする遺伝子を結合した発現ベクターを作製し、これを鶏に 投与し、 DNAワクチンとしての効果を調べた。 DNAワクチンは、ウィルスベクターと異
なり体内では増殖しないことから、安全性の点からより有望なワクチンの形態であると いえる。 DNAワクチンを単独で免疫後、強毒ウィルスで攻撃した場合には、ワクチン を大量投与された鶏にのみに臨床症状がなぐ攻撃ウイノレスも再回収されな力つたが 、この場合もワクチンによる中和抗体の惹起は認められていない(非特許文献 2)。
[0008] 非特 S千文献 1: Johnson Μ·Α·ら、 A recombinant fowl adenovirus expressing the SI g ene or infectious bronchitis virus protects against cnailenge with infectious bronchiti s virus", Vaccine, 2003 Jun 20; 21(21-22): p.2730-6
非特言午文献 2 : Kapczynski D.R.ら、 'Protection of chickens from infectious bronchitis by in ovo and intramuscular vaccination with a DNA vaccine expressing the SI glyc oprotein", Avian Dis., 2003 Apr— Jun; 47(2): p.272-85
特言午文献 3 : Wang X.ら、 "Construction and immunogenicity studies of recombinant fowl poxvirus containing the SI gene of Massachusetts 41 strain of infectious bronc hitis virus", Avian Dis., 2002〇ct— Dec; 46(4): p.831-8
非特言午文献 4 : Stern D.F.ら、 Coronavirus protein: Biogenesis of avian infectious bro nchitis virus virion proteins", J. Virol., 1982, 44: p.804-12
非特言午文献 5 : Cavanagh D.ら、 "Coronavirus I.B.V.: removal of the spike glycoprotei n ¾1 by urea abolishes infectivity ana haemagglutination but not attachment to cell", J. Gen. Virol, 1986, 67: p.1442-8
非特言午文献 6 : Cavanagh D.ら、 "Amino acid witnin the hypervariable region I of avian coronavirus IBV (Massachusetts serotype) spike glycoprotein are associated with n eutralization epitopes", Virus Res., 1988, 11 : p.141-50
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0009] このようにエンベロープを構成するスパイク蛋白の一部、すなわち、 S 1サブユニット をコードする遺伝子のみを組み込んだウィルスベクターワクチン又は DNAワクチンを 免疫することにより一応の成果は得られるものの、従来の方法では、有効な中和抗体 の誘導がなされていない。野外の条件下でワクチンを用いる場合、実験室に比べて 有効性が低下することは経験的によく知られており、より効果的且つ十分な免疫効果
を上げるために更なる改良が望まれる。そのためには、細胞性免疫だけでなぐ液性 免疫を十分に惹起させることが重要である。 IBVに関していえば、より高い中和抗体 価や細胞性免疫を獲得するには、 IBVのエンベロープの構成要素である S 1及び S2 の両サブユニットを発現させることが好ましいと考えられる。し力しながら、これらを一 本の Sプレカーサ一蛋白として発現させるには、サイズが大き過ぎ、効率的ではない
課題を解決するための手段
[0010] 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、従来のように コロナウィルススパイク蛋白 S1を単独で発現させるのではなぐ当該スパイク蛋白 S1 の C末側に特定のペプチドを付加させ、融合蛋白(以下、「コロナスパイク S1融合蛋 白」と称することもある)とすることによって、当該融合蛋白がコロナウィルスに対する 高い中和抗体を惹起することができることを見出した。当該融合蛋白は、当該融合蛋 白をコードする遺伝子を発現ベクターに組み込み、当該発現ベクターから当該融合 蛋白を発現させること〖こよって得ることができる。本発明に従い、コロナスパイク S1融 合蛋白又はコロナスパイク S1融合蛋白をコードする遺伝子を組み込んだ発現べクタ 一のいずれかを宿主に投与することにより、コロナウィルスに対する中和抗体を効率 的に惹起することができる。従って、力かるコロナスパイク S1融合蛋白又はコロナスパ イク S1融合蛋白をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターは、目的コロナウイ ルスに対するワクチン抗原として使用することができる。
[0011] 具体的には、本発明は、以下に示す、コロナスノイク S1融合蛋白をコードする遺伝 子が組み込まれた発現ベクターを提供するものである。
1.コロナウィルスのスパイク蛋白 S1の C末側にウィルス膜蛋白のトランスメンブレン 領域のペプチドを付加した融合蛋白をコードする遺伝子が組み込まれた発現べクタ
2.前記ペプチドが、鶏伝染性気管支炎ウィルス (IBV)のスパイク蛋白又は-ユー力 ッスル病ウィルス(以下、「NDV」と称することもある)の F蛋白の!、ずれかのトランスメ ンブレン領域のペプチドである、上記 1記載の発現ベクター。
3.前記ペプチドをコードする塩基配列力 それぞれ配列番号 1の 3200〜3418番
目又は配列番号 3記載の配列である、上記 2記載の発現ベクター。
4.コロナウィルスのスパイク蛋白 S1の C末側にスパイク蛋白 S2の N末側領域のぺプ チドを付加した融合蛋白をコードする遺伝子が組み込まれた発現ベクター。
5.前記ペプチドをコードする塩基配列が配列番号 1の第 1568〜1636番目記載の 配列である、上記 4記載の発現ベクター。
6.発現ベクターが、プラスミド又はウィルスベクターである上記 1ないし 5の何れか一 項記載の発現ベクター。
7.前記ウィルスベクターが、アデノウイルス、ボックスウィルス及びマレック病ウィルス 力 なる群より選ばれることを特徴とする上記 6記載の発現ベクター。
8.前記コロナウィルスが IBVである上記 1ないし 7の何れか一項記載の発現ベクター
[0012] 本発明はさらに、以下に示す、コロナスパイク S1融合蛋白を提供する。
9.コロナウィルスのスパイク蛋白 S1の C末側にウィルス膜蛋白のトランスメンブレン 領域のペプチドを付加した融合蛋白。
10.前記ペプチドが、鶏伝染性気管支炎ウィルス (IBV)のスパイク蛋白又は-ユー力 ッスル病ウィルス (NDV)の F蛋白の!、ずれかのトランスメンブレン領域のペプチドであ る、上記 9記載の融合蛋白。
11.前記ペプチドが、それぞれ配列番号 1の 3200〜3418番目又は配列番号 3記 載の塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を有する、上記 10記載の融合蛋白。
12.コロナウィルスのスパイク蛋白 S1の C末側にスパイク蛋白 S2の N末側領域のぺ プチドを付加した融合蛋白。
13.前記ペプチドが、配列番号 1の第 1568〜1636番目記載の塩基配列によってコ ードされるアミノ酸配列を有する、上記 12記載の融合蛋白。
14.前記コロナウィルスが IBVである上記 9ないし 13の何れか一項記載の融合蛋白。
[0013] また、本発明は、上記発現ベクターをコロナウィルスワクチンの主成分として使用す る方法を提供するものである。更に、本発明は、上記の発現ベクターの何れかにより 形質転換した宿主力も得られる組換えコロナスパイク S1融合蛋白、及び当該コロナ スパイク S 1融合蛋白をコロナウィルスワクチンの主成分として使用する方法を包含す
る。
発明の効果
[0014] 本発明によれば、 IBVスパイク蛋白 S1の C末側に、ウィルス膜蛋白のトランスメンブ レン領域のペプチド又は IBVスパイク S2蛋白の N末側領域のペプチドを付カ卩した新 規な融合蛋白をコードする遺伝子が組み込まれた発現ベクターが提供される。当該 発現ベクターは、宿主に免疫されたときに IBVスパイク蛋白 S1単独ではみられない高 レベルの中和抗体を惹起する。従って、本発明の発現ベクターを用いることにより、 I BVスパイク蛋白 S1の免疫原性を高める方法が提供される。
[0015] 本発明の発現ベクターで動物細胞を形質転換することにより、当該動物細胞に IBV スパイク S1融合蛋白を生産させることができる。また、本発現ベクター中の IBVスパイ ク S 1融合蛋白遺伝子を他の発現ベクターに組み込むことにより、種々の宿主 (例え ば、細菌、昆虫細胞、酵母など)に IBVスパイク S1融合蛋白を生産させることができる 。得られる IBVスノイク S1融合蛋白は、高い中和活性を誘導することができる抗原と して使用される。
[0016] 本発明は、 IBVに限らず、他のコロナウィルスのスパイク蛋白 S1に適用することがで き、スパイク蛋白の免疫原性を高める方法として使用することができる。
図面の簡単な説明
[0017] [図 1]図 1は、 pCAGnTM23Sの構築手順を示す。
[0018] [図 2-1]図 2—1は、 pCAGG- LgAs- S1の構築手順を示す。
[0019] [図 2- 2]図 2— 2は、 pCAGG- LgAs- S1の構築手順 (続き)を示す。
[0020] [図 3-1]図 3—1は、 pCAGG- LgAs- SlFtmの構築手順を示す。
[0021] [図 3- 2]図 3— 2は、 pCAGG- LgAs- SlFtmの構築手順(続き)を示す。
[0022] [図 4]図 4は、 pCAGG- LgAs- Sl(l)の構築手順を示す。
[0023] [図 5]図 5は、 pKA4BPの構築手順を示す。
[0024] [図 6]図 6は、 pKA4BP-LgAsSlの構築手順を示す。
[0025] [図 7]図 7は、 pKA4BP-LgAsSlFtmの構築手順を示す。
発明を実施するための最良の形態
[0026] 本発明は、コロナウィルスのスパイク蛋白 S1の C末側に、ウィルス膜蛋白のトランス
メンブレン領域のペプチド又は IBVスパイク蛋白 S2の N末側領域のペプチドを付カロ することにより得られる新規なコロナスノイク S 1融合蛋白をコードする遺伝子が組み 込まれた発現ベクターにより特徴付けられる。
[0027] 本発明に使用されるコロナウィルスとしては、例えば、ヒト呼吸器コロナウィルス(He oV)、重症急性呼吸器症候群ウィルス (SARSCoV)、ブタ伝染性胃腸炎ウィルス (TG EV)、ブタ呼吸器コロナウィルス (PRCoV)、ィヌコロナウィルス (CcoV)、ネココロナゥ ィルス (FECoV)、ネコ伝染性腹膜炎ウィルス (FIPV)、ブタ流行性下痢ウィルス (PED V)、ゥシコロナウィルス (BcoV)、ゥマコロナウィルス (EcoV)、 -ヮトリ伝染性気管支炎 ウィルス (IBV)及びシチメンチヨウコロナウィルス (TcoV)等が挙げられるが、好ましく は、 IBVである。
[0028] IBVは以下の方法により調製される。まず、発育鶏卵又は IBVが増殖可能な動物細 胞を用いて IBVを増殖させる。動物細胞を用いる場合は、自然宿主である鶏の細胞 を用いるのが好ましい。このような細胞として、 -ヮトリ腎などの細胞が挙げられる。こ れらの細胞を用いたウィルスの増殖には、通常用いられる細胞培養方法及びウィル スの増殖方法が取られる。好ましい態様では、 IBV-TM株を 10〜12日齢発育鶏卵に 接種し、 1〜5日間、 35°C〜38°Cで孵卵後、腔液を回収する。粗遠心後、 15〜25%シュ 一クロースをクッションとした超遠心を行い(25〜35k、 1〜2時間)、ウィルスを含有す る沈渣を回収する。また、発育鶏卵を用いてウィルス液を調製することも可能である( Lu ert P.D. Infectious bronchitis. In: Isolation and Identincation of Avian Pathogen s. 2nd Edition" S. B. Hitchnerら、 1980, pp70- 72)。
[0029] IBVスパイク蛋白をコードする遺伝子は、発育鶏卵腔液をそのまま、あるいは腔液を 超遠心により濃縮した沈渣からウィルス RNAを抽出/精製し、これを铸型として RT-PC Rによりスパイク蛋白遺伝子を増幅させ、単一遺伝子としてベクターにクローユングす ることにより調製される。本発明において使用される RT-PCRのプライマーは、 5 '側が 配列表の配列番号 5記載のオリゴヌクレオチド、 3 '側が配列表の配列番号 6記載の オリゴヌクレオチドである。当該 RT- PCRにより、 IBVスパイク蛋白 S 1及び S2をコード する遺伝子配列を含む約 3.5kbの核酸断片が増幅される。増幅された断片を適当な クロー-ングベクターに挿入した後、大腸菌に導入する。大腸菌コロニーの中から IB
Vスノイク蛋白 SI及び S2をコードする遺伝子を有するクローンを選択する。当該クロ ーンの選択は、マーカー遺伝子の有無、標識した IBVスパイク蛋白 S1をコードする遺 伝子断片又は合成ヌクレオチドをプローブとするハイブリダィゼーシヨン、 目的遺伝子 の塩基配列が明らかにされている場合は、適当な制限酵素による遺伝子切断パター ン等によって行われる。
[0030] 上記の RNAの抽出には、市販の Catrimox (宝酒造)、 TRIzol試薬 (インビトロジェン 社)、 ISOGEN (-ツボンジーン社)、 StrataPrep Total RNA Purification Kit (東洋紡) 等の試薬、 RT-PCRには、 one step RNA PCR kit (宝酒造)など市販のキット、遺伝子 のクロー-ングには、 PCR2.1 (インビトロジェン社)など市販のクローユングベクターが 使用される。それぞれの工程における操作は、各キットに添付の方法に従えばよい。 好ましい態様においては、 RNAの抽出 Z精製には Catrimoxを用い、 RT-PCRには on e step RNA PCR kitが使用される。 PCR反応は、 50°C-30分、 94°C-2分の加熱後、 94 °C-30秒、 52°C_30秒、 72°C_5分のサイクルを 30回繰り返すことにより行われる。また、 目的遺伝子のクローユングには、 pCR2.1プラスミドが使用される。こうして得られる IB Vスノイク蛋白 SIをコードする遺伝子の塩基配列は、 DNAシークェンサ一(例えば、 アプライド 'バイオシステムズ 337型)により決定することができる。
[0031] 一方、 IBVスノイク蛋白 S2の N末側領域のペプチドをコードする遺伝子断片は以 下の方法により取得できる。 IBVスパイク蛋白 S2のトランスメンブレン領域をコードす る遺伝子断片は、 RT-PCRのプライマーとして、配列表の配列番号 16記載のオリゴヌ クレオチド (5 '側)及び配列表の配列番号 17記載のオリゴヌクレオチド (3 '側)を用い 、上記と同様の方法により取得できる。
[0032] また、ニューカッスル病ウィルス F蛋白遺伝子(NDV- F)のトランスメンブレン領域を コードする遺伝子断片は、以下の方法により取得できる。すなわち、 Ishidaらの方法に 従って NDV-F遺伝子をクローユングし、これを铸型として目的遺伝子を増幅し、単一 の遺伝子断片としてクロー-ングすることにより達成される(Ishida N.ら、 "Sequence of 2,611 nucleotides from the 3 end of Newcastle disease virus genome RNA and the predicted amino acid sequence of viral NP protein Nucleic Acids Res., 1986, 14: p. 6551-64) oこのとき使用される PCRのプライマーは、 5'側が配列表の配列番号 13記
載のオリゴヌクレオチド、 3 '側が配列表の配列番号 14記載のオリゴヌクレオチドであ る。
[0033] 上記二者以外のウィルス膜蛋白のトランスメンブレン領域を用いる場合は、 目的と する蛋白のアミノ酸配列を、遺伝子解析ソフト、例えば GENETYX (株式会社ゼネティ ックス)あ い ίま ¾OSUI (http://sosui.proteome.bio.tuat.ac.jp/
sosuiframe0.html)等によって解析することで、トランスメンブレン領域を推定し、クロー ニングすることが可能である。
[0034] こうして得られるウィルス膜蛋白のトランスメンブレン領域のペプチドをコードする遺 伝子断片が、 IBVスパイク蛋白 S1の C末側に付加されるように、当該 IBVスパイク蛋白 S 1をコードする遺伝子断片の 3 '側に連結される形でプラスミドやウィルスベクターな どの発現カセットに組み込まれる。当該操作は、 Sambrookらが述べている一般的な 遺 十 ,卞且換 術 (Sambrook J.ら、 'Molecularし loning, A Laboratory Manual Seco nd Edition" Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y., 1989)に従って又は当該技 術に基づき開発された種々の遺伝子操作キットを用いて行われる。
[0035] IBVスパイク蛋白 S 2の N末側領域のペプチドを得るときは、このペプチド部分だけ でなぐ IBVスパイク蛋白 S1に S2の N末側領域のペプチドが付カ卩した融合蛋白をコ ードする遺伝子として得る。具体的には、スノイク蛋白 S1をクローユングしたときと同 様に、 IBV RNAを铸型とした RT- PCRにより遺伝子増幅を行い、単一の遺伝子断片と してクロー-ングすることにより行われる。 RT-PCRのプライマーとして、 5'側が配列番 号 9記載のオリゴヌクレオチド、 3'側が配列表の配列番号 15記載のオリゴヌクレオチ ドが使用される。このとき得られる IBVスパイク蛋白 S2の N末側領域のペプチドをコー ドする遺伝子断片は、配列表の配列番号 4記載の塩基配列を有する。
[0036] 本発明の IBVスパイク蛋白 S1とウィルス膜蛋白のトランスメンブレン領域のペプチド 又はスパイク蛋白 S2の N末側領域のペプチドとを有する融合蛋白を発現させる場合 は、 IBVの S1が本来有する分泌シグナルに代えて、 MDVl-gA、鶏 IgH重鎖、 VSV-g Gなどの分泌シグナルを用いることで、より効果的に発現させることも可能である。発 現に使用されるプロモーターとしては、 β -ァクチン系のプロモーターを始めとする強 力なプロモーター、例えば、 SV40後期、サイトメガロウイノレス IEプロモーター、ニヮトリ
j8 -ァクチンプロモーターなどが挙げられる。好ましくは、 -ヮトリ β -ァクチンプロモー ター及びサイトメガロウィルスェンハンサ一とのハイブリッドプロモーター(CAG等)で ある。膜上型の発現を行う場合は、生体内において発現制御が可能なマレック病ウイ ルスの gBプロモーター(特公平 8— 322559)等当該ウィルス由来のプロモーターを 使用するのが好ましい。
[0037] 力べして得られる発現カセットを-ヮトリに直接投与することにより、 IBVスパイク蛋白 S 1及びウィルス膜蛋白のトランスメンブレン領域のペプチド又はスパイク蛋白 S2の N 末側領域のペプチドを含有する融合蛋白(以下、「組換え IBVスパイク S1融合蛋白」 と称することもある)の免疫原性を調べることができる。
[0038] また、外来遺伝子を発現させるためのプロモーターとしてマレック病ウィルスの gB蛋 白遺伝子プロモーターを使用することにより、以下の効果が期待される。すなわち、 g Bプロモーターの下流に上記の組換え IBVスパイク S 1融合蛋白遺伝子を結合した発 現カセットを挿入された MDVベクターを使用した場合、 MDVに対する高 ヽ抗体価が 惹起されると同時に、 IBVに対して中和抗体を誘導することが可能である。
[0039] さらに、本発現カセット中の IBVスパイク S1融合蛋白遺伝子を他の発現ベクターに 組み込むことにより、種々の宿主 (例えば、細菌、昆虫細胞、酵母など)に IBVスパイク S 1融合蛋白を生産させることができる。
[0040] これらの宿主が生産する組換え IBVスパイク S1融合蛋白の精製は、蛋白質化学に おいて通常使用される方法、例えば、塩析法、限外ろ過法、等電点沈殿法、電気泳 動法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、ァフィユティークロ マトグラフィ一等を適宜選択して行うことができる。
[0041] 以下、本発明を、実施例を以つてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限られ るものではない。
実施例 1
[0042] IBV TM株スパイク蛋白遣伝子のクローニング
IBウィルス TM株を 11日齢発育鶏卵に接種し、 3日間 37°Cで孵卵後、腔液を回収し た。粗遠心後、 20%シユークロースをクッションとした超遠心を行い(30k、 1時間)、沈 渣から Catrimox (宝酒造)を用いてウィルス RNAを調製した。これを铸型とし、 one step
RNA PCR kit (宝酒造)を用いて RT-PCRを行 、、スノイク蛋白遺伝子を増幅した。 増幅には以下のプライマーペア一を用い、反応は、 50°C_30分、 94°C_2分の後、 94 °C-30秒、 52°C-30秒、 72°C-5分のサイクルを 30回繰り返した。 5 '側: CAAATTATTG GTCAGAGATGTTGG (配列番号 5)
3 '側: GAATCATTAAACAGACTTTTAGGTCT (配列番号 6)
[0043] 増幅された断片を pCR2.1 (Invitrogen)に TAクローユングし、クローユングサイトの外 側に存在する BamHIおよび EcoRVで切断後、スパイク蛋白 S1及び S 2遺伝子を含む 約 3.5kbpの断片を切り出し、平滑末端処理を行った。この断片を、 Hindlllで切断後平 滑末端処理した pCAGn- mcs- polyA (W097Z46583)に挿入し、 pCAGn- TM23Sを 構築した (図 1)。
実施例 2
[0044] S 1発現プラスミド DCAGG- LgAs- S 1の構築
pCAGn-TM23Sを铸型とし、シグナル配列を含まな 、スパイクの配列を PCRにより増 幅した(配列番号 1)。用いたプライマーペア一は、 5'側には Kpnlサイト、 3'側には Xb alサイトを付加した下記の配列を有する。増幅には宝酒造の LA-Taqを用い、 PCR反 応液の調整は LA-Taq添付の説明書に従った。反応温度及び時間は 98°C-40秒、 56 °C- 10分のサイクルを 20回繰り返した。なお、以降の PCRは、全て宝酒造の LA-taqを 用いて同様に行った。
5,側: GGGGTACCTATTCTTTATGATAATGGTAGTTACG (下線部は Kpnlサイト) ( 配列番号 7) イト) (配列番号 8)
[0045] 増幅した断片を Kpnlで切断後、平滑末端処理し、次に Xbalで切断し、スパイク蛋白 遺伝子断片を得た。一方、 MDV1の糖蛋白 A (以下、「gA」と称することもある)のリー ダ一/シグナル配列を含む領域 (約 330bp)を、 Kpnlあるいは Xbalサイトを付カ卩したプ ライマーで増幅した (配列番号 2)。プライマーの配列は以下に示す。反応温度及び 時間は 94°C_1分、 57°C_1分、 72°C_1分のサイクルを 20回繰り返した。
5 '側: GGGGTACC.TACATATCTTCCCTCATGCTCACGC (下線部は Kpnlサイト) (
配列番号 9)
3 '側: GCJCI AGGGCGTTTTATGAGTGTCGTTCGCA (下線部は Xbalサイト) ( 配列番号 10)
[0046] 同断片を Kpnlおよび Xbalで切断後、 Kpnlおよび Xbalで切断した pUC119に挿入し た(pUCl 19LgAs)。同プラスミドを gAのリーダー/シグナル配列の直後に存在する Eco T14Iサイトで切断後、平滑末端処理し、次に Xbalで切断することによりシグナル配列 より下流の gAの ORF部分が除去された 3.3kbpの断片を回収し、同部位に上記のスパ イク蛋白遺伝子断片を挿入し、 pUC119LgAsTM23Sを得た。
[0047] このプラスミドを铸型とし、 gAのリーダー/シグナル配列が付加された S1部分(1.6kb p)を、 Kpnlあるいは Xbalサイトを付カ卩した下記のプライマーで増幅し、 Kpnl及び Xbal で切断後平滑末端化し、同じく平滑末端ィ匕した pUC-CAGGSの Sailサイトに S1が発 現する向きで挿入し、 pCAGG-LgAs-Slを構築した(図 2-1、 2-2)。増幅には以下の プライマーペア一を用いた。反応温度及び時間は、 94°C-1分、 60°C-5分のサイクル を 20回繰り返した。
5 '側: GGGGTACCTACATATCTTCCCTCATGCTCACGC (下線部は Kpnlサイト) ( 配列番号 9) balサイト、 Xbalサイトの 5 '側に続く TTAは終止コドン) (配列番号 11)
実施例 3
[0048] トランスメンブレン領城付加卑』 S1発現プラスミド DCAGG-LgAs-SlFtmの構築
pUCl 19-LgAsTM23Sを铸型とし、 gAのリーダー/シグナル配列が付カ卩された S 1部 分(1.6kbp)を、 Kpnlあるいは BssHIIサイトを付カ卩した下記のプライマーで増幅し、 pC R2.1に TAクローユングした (pCR2.1LgAsSl)。増幅の反応温度及び時間は、 94°C-1 分、 60°C_5分のサイクルを 20回繰り返した。
5 '側: GGGGTACCTACATATCTTCCCTCATGCTCACGC (下線部は Kpnlサイト) ( 配列番号 9)
3,側: TTGGCGCGCCAGCTGCGCTTCCATTAGTTAACTT (下線部は BssHIIサイト ) (配列番号 12)
[0049] このプラスミドを BssHIIで切断し、 gAのリーダー/シグナル配列及び S1の配列を含 む 3.4kbpの断片を切り出した。次に、プラスミド XLIII10H (Sato H.ら、 "Molecular cloni ng and nucleotide sequence of P, M and P genes of Newcastle disease virus avirulen t strain D26" Virus Research, 1987, 7: p.241- 255)を铸型として-ユーカツスル病ゥ ィルス F蛋白遺伝子(NDV-F)のトランスメンブレン領域を PCRによりクローユングした 力 その際、 5,末端には BssHIIサイトを、 3,末端には終止コドンと Spelサイトを付加し 、 pCR2.1に TAクローユングした(クローユングした配列を配列番号 3に示した)。増幅 には以下のプライマーペア一を用いた。反応温度及び時間は 94°C-1分、 60°C-5分 のサイクルを 20回繰り返した。
5 '側: TTGGCGCGCTTATTACCTATATCTTTTTAACTGTC (下線部は BssHIIサイ ト) (配列番号 13)
3,側: GACTAGTTCACATTTTTGTAGTGGCCCTCATCTGG (下線部は Spelサイト 、 Spelサイトの 5'側に続く TCAは終止コドン) (配列番号 14)
[0050] このプラスミドを BssHIIで切断することでトランスメンブレン領域を含む 2.3kbpの断片 を切り出し、これと上記の S1を含む 3.4kbpの断片と結合させた(pCR2.1LgAsSlFtm) 。この pCR2.1LgAsSlFtmを Kpnl及び Spelで切断し、 gAのリーダー/シグナル配列、 S 1及び NDV-Fのトランスメンブレン領域を含む約 1.8kbp断片を回収後、平滑末端処 理を行い、 Sail切断後平滑末端ィ匕した pUC-CAGGSに、 S1が発現する向きで挿入し 、 pCAGG- LgAs- SlFtmを構築した(図 3- 1, 3-2)。
実施例 4
[0051] S2N末端付加型 S1発現プラスミド DCAGG- Sl(l)の構築
リーダー配列力 シグナル配列までを gA由来のものに置換したスパイク蛋白 S 1及 び S 2の N末側領域のペプチドをコードする塩基配列(配列番号 4)までを、 pUC119- LgAsTM23を铸型とする PCRにより増幅した。その際、 5,側プライマーには Kpnlサイト を、 3'側プライマーには終止コドン及び Hindlllサイトをつけて増幅した。用いたプライ マーの配列を以下に示す。反応温度及び時間は 94°C-1分、 54°C-1分、 72°C-3分の サイクルを 20回繰り返した。
5 '側: GGGGTACC.TACATATCTTCCCTCATGCTCACGC (下線部は Kpnlサイト) (
配列番号 9)
3,側: CCCAAGCTTTTAACCATCAGGTTCAATGCAATACC (下線部は Hindlllサ イト、 Hindlllサイトの 5'側に続く TTAは終止コドン)(配列番号 15)
[0052] 同断片を Kpnlおよび Hindlll切断後平滑末端処理を行い、 Sail切断後平滑末端化し た pUC- CAGGSに、 S1が発現する向きで挿入した pCAGG- LgAs- Sl(l)を構築した( 図 4)。
実施例 5
[0053] 各 SH プラスミドの免疫試験
実施例 2、 3及び 4で得られた発現プラスミドを、 1群 5羽カゝらなる 2.5週齢の SPF鶏( 化学及血清療法研究所で維持)に免疫し、 DNAワクチンとしての評価を行った。まず 鶏をネンブタールにより麻酔し、右足下腿部の皮膚を切開後、筋肉内に TEバッファ 一で 1 μも / μ 1の濃度に調製したプラスミド液 45 μ 1を注射した。エレクト口ポーレーター (EDIT- TYPE CUY21、 BEX Co., LTD)を用い、注射部位を挟むように針型の電極を 刺し、 40Vで 0.07-0.12Aの電流を 0.5秒間、 0.5秒間隔で 10回流すことでプラスミドの 導入を行った。 2週間後、左足に、同様の方法でプラスミドを投与した。 2回目の投与 から 2週間後に採血を行い、 IBV-TM株に対する中和抗体価を血清希釈法により測 し 7こ。
[0054] その結果、 pCAGG- S1群では 5羽中 1羽しか抗体が陽転しなかったのに対し、 pCAG G- Sl(l)群では 4例、 pCAGG- SlFtm群では 5例全例が陽転した。なお、コントロール 群の pUC-CAGGS投与群及び非投与群(一)では抗体の上昇は認められな力つた。
[0055] [表 1]
実施例 6
[0056] S 1を発現する組換え体ウィルスの構築
組換え体ウィルスの作出は、ウィルス感染細胞にインサーシヨンプラスミドをエレクト 口ポーレーシヨン法により導入することで行った。このとき用いるインサーシヨンプラスミ ド PKA4BP- LgAsSlは、以下の手順で作製した。
[0057] MDV1 DNAを EcoRIで切断した際に得られる 2.8kbの断片(A4断片)(特許 3428666 )を PUC119の EcoRIサイトにクローユングした(pKA4)。次に、巿販されている動物細 胞用発現プラスミド pSVLを BsaBI及び Xholで消化後平滑末端処理して得られた 0.3k の断片(転写終結因子)を、 Sadサイトを潰した pKA4の Ballサイトに挿入した。このブラ スミドを Xbalで消化後平滑末端ィ匕したものに、平滑末端処理を行った MDVト gBプロ モーター P断片(特開平 8- 322559 (特願平 7- 160106) )を挿入した (pKA4BP) (図 5)。
[0058] 実施例 2記載の pCAGG-LgAs-Slを構築する過程で構築した、 pUC119LgAsTM23 Sを铸型とし、 gAのリーダー/シグナル配列が付加された S1部分(1.6kbp)を、 Kpnlあ るいは Xbalサイトを付カ卩した下記のプライマーで増幅し、 Kpnl及び Xbalで切断後平 滑末端化し、同じく平滑末端ィ匕した PKA4BPの Sadサイトに S 1が発現する向きで挿入 し、 pKA4BP-LgAsSlを構築した(図 6)。増幅には以下のプライマーペア一を用いた 。反応温度及び時間は、 94°C-1分、 60°C-5分のサイクルを 20回繰り返した。
5 '側: GGGGTACCTACATATCTTCCCTCATGCTCACGC (下線部は Kpnlサイト) ( 配列番号 9) balサイト) (配列番号 11)
[0059] 構築したインサーシヨンプラスミド pKA4BP-LgAsSlを制限酵素 EcoRIにより消化し、 線状ィ匕した。それを親株感染細胞と共にジーンパルサー用キュベット内で混合後、ジ ーンパルサー(BioRad社)を用いてパルスをカ卩え、インサーシヨンプラスミドを感染細 胞に導入した。組換え体ウィルスの作出の詳細は、特開平 8-322559 (特願平 7-1601 06)に記載されている。 MDV1感染細胞にインサーシヨンプラスミドを導入後、同感染 細胞を、 96 wellで培養後、翌日 CEFを 6万〜 8万個/ wellの濃度添加培養し、 1週間 後に PCRにより組換え体ウィルスの有無をスクリーニングした。 PCR陽性の wellから細 胞を回収し、希釈して CEF細胞とともに再び 96 wellで培養した。 PCRによるスクリー-
ングと上記クローユング作業を、組換え体ウィルスが純ィ匕されるまで繰り返し、 MDV1- S1の構築を行った。
実施例 7
[0060] SlFtmを発現する組椽ぇ体ウィルスの構築
実施例 3の pC AGG- LgAs- S 1 Ftmを構築する過程で構築した、 pCR2.1 LgAsS 1 Ftm を Kpnl及び Spelで切断し、 gAのリーダー/シグナル配列、 S1及び NDV-Fのトランスメ ンブレン領域を含む約 1.8kbp断片を回収後、平滑末端処理を行い、 Sad切断後平滑 末端化した PKA4BPに S1が発現する向きで挿入し、 pKA4BP-LgAsSlFtmを構築した (図 7)。同プラスミドを用い、実施例 6に記載の方法で組換え体ウィルスを作出した。 実施例 8
[0061] S1あるいは SI Ftm発現組換え体ウィルスの免疫試験
実施例 6及び 7で得られた組換え体ウィルスを、 1群 5羽からなる 1日齢の SPF鶏 (ィ匕 学及血清療法研究所で維持)の頸部皮下に 1万 PFU免疫した。その後経時的に採血 し、 IBV TM株に対する中和抗体価を調べることで評価を行った。
[0062] 表 2に示すように、 MDV1/S1群では中和抗体の誘導が確認されなかったのに対し、
MDVl/Ftm群では 5例全例が陽転した。また、 Ftm群では、一度の免疫により、少なく とも 20週に亘り中和抗体が持続することが確認された。
[0063] [表 2]
[0064] 本発明の方法により得られる新規な組換え IBVスパイク S1融合蛋白をコードする遺 伝子が組み込まれた発現ベクターは、スパイク蛋白 S1をコードする遺伝子が組み込 まれた発現ベクターで免疫した場合に比べてより高!ヽ免疫効果を示すので、従来の スパイク蛋白 S 1のみを発現させるように構築された DNAワクチンやウィルスベクター
ワクチンを凌ぐ有効なワクチンとなることが期待される。また、本発明の発現ベクター で形質転換した動物細胞力も調製される組換え IBVスパイク S1融合蛋白は、疫学や ワクチン効果を調べる際に多用される ELISA、 WBなどの抗原抗体検出システムの構 築材料として使用することができる。