明 細 書
エアーフィルター材
技術分野
[0001] 本発明は、ビル空調、自動車用キャビンフィルター、空気清浄器などに使用される エアーフィルター材に関するものである。
背景技術
[0002] これらのエアーフィルター材は、一般に、永久帯電、すなわちエレクトレット加工を 施したポリプロピレン繊維不織布が使用されていて、太さ 10 μ m以下の極細ポリプロ ピレン繊維(以下「極細 PP」 t 、う)力もなるメルトブロー不織布(以下「MB」 t 、う)が ほとんどである。
[0003] 従来の MB力 なる極細 PPエレクトレット不織布は、捕集効率を上げるために構成 繊維が 10 m以下と非常に細い繊維を使用する。このため、圧損が高くなり、また細 い繊維を使用しているので剛性不足になり、プリーツ形状にするときに形態保持する ための硬いサポート材が必要となる欠点を有している。また、サポート材は、剛性確 保、プリーツ加工性の点から、一般に榭脂接着不織布、いわゆるケミカルボンド不織 布が使用されている。このため、このサポート材には、ケミカル剤が多く付着している ので、エレクトレットの効果が期待できない。また、プリーツ加工時の加熱処理の工程 で、揮散ケミカル剤による匂いなどの作業環境にも問題がある。
[0004] 特許文献 1には、サポート材としてケミカルボンド不織布を使用せずに熱融着繊維 を用い厚さ方向に密度勾配を有する構造で、繊維の太さが 1デニール (太さ 10. 1 μ m)以上のポリエステル不織布を上流側に配置し、下流側に極細 PP繊維不織布エレ タトレットィ匕不織布 (0. 03デニール、太さポリプロピレン = 2.: L m)を熱接着した後 、エレクトレツトイ匕したろ材が開示されている。このろ材では、本上流側の材質はポリ エステルなどの難エレクトレット繊維が使用されているので、剛性は出るが、微細粉塵 に対して捕集効率が低ぐまたダストによっては空気流出側と空気流入側の繊維の 太さ比が 2. 1/10. 1 = 0. 21と繊維の太さの差が大きすぎて (比率が小さい)、流入 側にダストが捕集されずに下流側の繊維層を早く目詰まりさせる欠点がある。
[0005] また、特許文献 2には、ケミカルボンド不織布を使用せずに熱融着繊維を用い、厚 さ方向に密度勾配を有する構造とし、かつ極細繊維のエレクトレツトイ匕繊維と自己融 着性繊維と難燃繊維力もなるろ材が開示されている。し力しながら、このろ材は、一部 の繊維しかエレクトレツトイ匕して ヽな 、ので捕集効率が低 、欠点がある。
[0006] 特許文献 1 :特開昭 62— 83017号公報
特許文献 2:特開平 5— 68823号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0007] 本発明は、圧損が低ぐケミカル剤およびサポート材を必要とせず、全体にわたって エレクトレツトイ匕しており、捕集効率の高いエアーフィルター材を提供することにある。 課題を解決するための手段
[0008] 本発明は、繊維長さ 1〜: LOmmで、分子構造に親水基を有しない熱可塑性ポリマ 一からなる合成繊維 (以下「非親水性熱可塑性合成繊維」とも!ヽぅ)を主成分とするェ アレイド不織布を熱溶融接着し、一体化し、かつエレクトレットカ卩ェしたエレクトレット 化工アレイド不織布(以下「エレクトレツトイ匕エアレイド不織布」とも 、う)よりなるエアー フィルター材に関する。
ここで、上記分子構造に親水基を有しない熱可塑性ポリマーとしては、ポリエチレン 、ポリプロピレン、ポリテトラフルォロエチレン、ポリ塩化ビュル、ポリ塩ィ匕ビニリデン、 およびこれらの変性体の群力 選ばれた少なくとも 1種が好ましい。
非親水性熱可塑性合成繊維は、 2種以上を混綿して使用することもできる。
また、これらの非親水性熱可塑性繊維は、融点が異なる 2以上の成分力 なる複合 構造の熱接着性短繊維を主成分とすることが好まし ヽ。
この場合、好ましくは、上記融点が異なり、分子構造に親水基を有しない 2以上の 成分からなる複合構造の熱接着性短繊維としては、ポリプロピレンとポリエチレン、ポ リプロピレンと変性ポリエチレン、またはポリプロピレンと変性ポリプロピレン力もなり、 サイドバイサイド型、または、芯鞘型の複合短繊維である。
また、本発明のエアーフィルター材は、空気流出側の最下層を細い繊維層とし、空 気流入側の上層に向かって順次太 、繊維層になるように密度勾配を持たせてエアレ
イド法で積層した密度勾配型多層エアレイド不織布を用いたものが好ま 、。
この密度勾配型多層エアレイド不織布は、好ましくは、空気流出側と空気流入側の 繊維の太さ比が 0. 25-0. 7の範囲である。
発明の効果
[0009] 本発明のエレクトレット化工アレイド不織布を用いたエアーフィルター材は、エアレイ ド法なので低圧損であるのに加え、ケミカルボンド法によらず非親水性熱可塑性合成 繊維の熱接着であるのでケミカルボンドより圧損が低ぐ分子構造に親水基を有しな い熱可塑性合成繊維を全体に渡ってエレクトレットしているので、捕集効率が高ぐラ ィフ(ろ過可能時間)の長いエアーフィルター材を供給可能とした。さらに、本発明で は比較的に剛性の高いフィルター材が得られるので、サポート材が不要となり、さらに ケミカル剤を使用して 、な 、ので環境にもやさし 、フィルター材であると言える。 図面の簡単な説明
[0010] [図 1]捕集効率の推移を示すグラフである。
[図 2]圧損の推移を示すグラフである。
[図 3]実施例 1のフィルター材 (下層部)の電子顕微鏡写真(750倍)である。
[図 4]比較例 1のフィルター材 (サポート材)の電子顕微鏡写真(750倍)である。 発明を実施するための最良の形態
[0011] 本発明のエアーフィルター材は、エアレイド不織布製造法によって形成する。すな わち、多孔質ネットコンベア一上に位置する単台または多数台の噴き出し部から、繊 維長 1〜: LOmmの非親水性熱可塑性合成繊維を噴出しネットコンベア一下面に配置 した空気サクシヨン部で吸引しながらネットコンベア一上に繊維層を形成する。
このとき、好ましくは、上層側 (流体流入側)より下層側 (流体流出側)にかけて、太 V、繊維の層から細 、繊維の層となるように順次積層し、この積層された繊維層を熱ォ 一ブンに搬入し、熱風で繊維間を結合し不織布として一体化させる。
繊維量、噴き出し条件、空気サクシヨン条件、熱風条件などによって所定の密度、 厚さに仕上げて本発明に用いられるエアレイド不織布を得ることができる。熱オーブ ンにより熱接着する際の温度は、用いる非親水性熱可塑性合成繊維や熱接着性短 繊維の種類や、全体の目付により適宜選択されるが、通常、 120〜200°C、さらに好
ましくは 130〜 180。Cである。
[0012] 従来から知られて!/ヽる一般的な乾式不織布製造法、つまり短繊維のカーディング 法、あるいは連続繊維のスパンボンド法などによる場合、層を構成する繊維はほぼ面 状に配列していて、厚さ方向に配向させることは困難である。従って、本発明が意図 するエアーフィルター材に使用した場合、圧力損失が高いという欠点を有する。ニー ドルパンチやスパンレースのような機械的繊維交絡の方法をカ卩えれば比較的に厚さ 方向へ繊維を並び変えることができるものの、ニードルまたはスパンレースの水スジ による貫通孔が残るために微細なダストの捕捉作用に欠けるものとなってしまう。 これに対し、本発明のエアーフィルター材に用いられる不織布は、短い繊維を使用 したエアレイド不織布製造法によるものなので、繊維は厚さ方向に配列しやすぐ力 つ層間にお ヽて異なる繊維径の繊維どうしの混じり合!/ヽも生じ、繊維層間の繊維径 勾配は比較的に連続傾斜になる。
従って、圧力損失が小さぐ目詰まりも少なくなつてライフ (ろ過可能時間)が長くな るうえ、圧損上昇が少ないという大きな特徴を有する。また、このような短繊維を原料 繊維とするエアレイド不織布製造法によれば、極めて地合いの良好な、つまり均一性 の良好なフィルターが得られるという大きな特徴を有する。均一性は、本発明が意図 するエアーフィルター材の用途において極めて重要であり、上記した既存の乾式不 織布では得られ難い。
さらに、ニードルを使用していないので、ニードル跡による性能低下の問題も解消さ れる。また、ケミカルバインダーを使用していないので、皮膜形成による圧力損失アツ プゃ捕集効率ダウンの弊害が無く、フィルター材カゝら発生する VOCなどの揮発性ガ スもなぐ環境汚染の恐れも無い。
[0013] 本発明に使用する繊維は、繊維長 1〜: LOmmである。 10mmを超える繊維を使用 すると、不織布としての均一性が得られ難いばかりか、生産性が低下し、好ましくない 。一方、 1mm未満では不織布の強度低下を生じるばかりか、脱落繊維が発生し易く なり好ましく無い。好ましくは 2〜7mm、さらに好ましくは 3〜5mmである。
[0014] 本発明のフィルター材を主として構成する繊維は、分子構造に親水性を有しな ヽ、 すなわち非親水性で、好ましくはさらに耐ィ匕学薬品性、耐熱性、耐久性、強度、硬さ
などの特性に優れる熱可塑性ポリマー力もなる。
このような非親水性熱可塑性合成ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンな どのポリオレフイン類、ポリテトラフルォロエチレン (PTFE)、ポリ塩ィ匕ビニル、ポリ塩 化ビ-リデンなどの含ハロゲン系高分子、およびこれらの変性体などが挙げられるが 、コストパフォーマンスの観点から、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフイン 類が好ましい。変性体としては、融点、溶融時の粘度、他の繊維への接着力、などを コントロールする目的で、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボ ン酸、若しくは不飽和カルボン酸無水物またはその酸ィ匕物等を含む、ビニルモノマー をグラフト重合した変性ポリオレフイン (特開 2000— 212866号公報)、エチレン—プ ロピレン—ブテン- 1共重合体などが挙げられる。更に、エレクトレット効果などをコント ロールする目的でヒンダードアミン系、トリアジン系などの第 3成分を添加する(特開 2 003— 260321号公報)などの手段を講じてあっても良い。
これらの非親水性熱可塑性合成ポリマーは、 1種単独で使用することも、また 2種以 上を併用することもできる。
[0015] また、本発明のフィルター材を構成する非親水性熱可塑性繊維は、融点が異なる 2 以上の成分からなる複合構造の熱接着性短繊維を主成分とすることが好ましい。 この場合、好ましくは、上記の熱接着性短繊維としては、ポリプロピレンとポリエチレ ン、ポリプロピレンと変性ポリエチレン、またはポリプロピレンと変性ポリプロピレンから なり、サイドバイサイド型、または芯鞘型の複合短繊維である。この場合、変性体は異 性体であっても良い。
全繊維中に占める上記熱接着性複合繊維の比率は、通常、 30重量%以上、好ま しくは 50〜: LOO重量%、さらに好ましくは 70〜: L00重量%である。 30重量%未満の 場合、脱落繊維が発生し易ぐエアーフィルター材として適さなくなる。
[0016] 本発明のフィルター材には、上記の非親水性の熱可塑性合成繊維のほかに、必要 に応じて種々の機能を持たせるため、エレクトレット効果を阻害しない範囲で他の繊 維を含んでいてもよい。例えば、ポリエステル、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリビ- ールアルコール、ポリ塩化ビュル、ポリアクリル-トリル、ポリフエ二レンサルファイトな どの合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維などの無機繊維、
ポリ乳酸などの生分解性繊維などが挙げられる。この場合、混綿割合は 50重量%以 下が好ましぐさらに好ましくは 30重量%以下である。 50重量%を超える場合は、ェ レクトレット加工が不充分となったり、また、混綿した繊維の脱落が生じたり、強度ダウ ンしたり、耐熱性がダウンしたりして好ましくな 、。
なお、上記非親水性の熱可塑性合成繊維より融点の高い繊維、あるいは融点を持 たない繊維を混綿した場合は、耐熱性を上げ、熱劣化しにくいというメリットを生じる ので好ましい。
[0017] さらに、本発明の作用 ·効果を阻害しない範囲で、親水性の他の低融点バインダー 繊維、例えば熱接着性のポリエステル系複合繊維を配合してもよい。このポリエステ ル系複合繊維としては、芯 Z鞘型やサイドバイサイド型の複合繊維が好適である。こ の場合、芯成分あるいは繊維内層部を構成するポリマーとしては、鞘より高融点であ り、熱接着処理温度で変質しないポリマーが好ましい。このようなポリマーとしては, 脂肪族ジオール単位と芳香族ジカルボン酸単位から主としてなるポリアルキレンァリ レートが挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート
、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどであり、単独でも 2種以 上の併用でもよぐ必要に応じて共重合成分を含んでいてもよい。また、本発明の作 用 ·効果を阻害しな ヽ範囲で変性されて ヽても差し支えがな!ヽ。
[0018] 熱接着性成分である鞘あるいは繊維外周部を構成するポリマーとしては、上記芯 成分あるいは繊維内層部を構成するポリマーより融点の低いポリマーが用いられる。 例えば、上記の芯あるいは繊維内層部に使用される成分に、ジエチレングリコールな どのジオール、イソフタル酸などのジカルボン酸などの共重合成分を含有させたもの 、テトラメチレングリコールなどのポリ(アルキレンォキサシド)グリコールなどをソフトセ グメントとして共重合したポリエステル系エラストマ一などが挙げられる力 これらに限 定されるものでは無い。さらにこれらのポリマーは、本発明の作用.効果を阻害しない 範囲で変性されていても差し支えがない。融点は 110°C以上である必要がある。 110 °c未満の場合は例えば自動車用キャビンエアーフィルター材として耐熱寸法安定性
、耐熱変形性などの問題を生じる。
この場合、混綿割合は、 15重量%以下が好ましぐさらに好ましくは 10重量%以下
である。 15重量%を超えると耐熱寸法安定性、耐熱変形性に影響が出るので、好ま しくない。
[0019] さらに、本発明に用いられるエアレイド不織布には、消臭、抗菌、防カビ、撥水、難 燃、着色などの効果を有する繊維や物質を含有させても良い。
[0020] さらに、本発明に用いられるエアレイド不織布は、 2層以上の多層でもよぐまた、各 層を構成する繊維は、同一でも異なっていてもよい。
[0021] 例えば、本発明に用いられるエアレイド不織布は、空気流出側(最終流体流出側) の最下層を細い繊維層とし、空気流入側の上層に向かって、順次、太い繊維層にな るように、密度勾配を持たせて多層構造で積層することが好まし 、。
[0022] 本発明の繊維径勾配を有するエアーフィルター材の流体の流れ方向は、表面ろ過 と異なり、粗層側(太繊度側)からであって、粒径に分布を有するダストなどの被ろ過 物を、各層の夫々の繊維の表面でバランス良く捕らえることができる。
例えば、 3層構造の場合、上層側の太い繊維層として太さ 30〜50 m、好ましくは 35〜45 /ζ πι、目付 5〜45g/m2、好ましくは 10〜35g/m2、中層の繊維層として太さ 15〜35 m、好ましくは 18〜25 m、目付 5〜45g/m2、好ましくは 10〜35g/m2、 下層側の繊維層として太さ 8〜 15 μ m、好ましくは 9〜 13 μ m、目付 40〜: L 10g/m2 、好ましくは 40〜80g/m2の組合せの構造であれば、 1 μ m以下の粒子をも効率的 にろ過ができ、ライフの長!、エアーフィルター材が得られる。
[0023] 2層構造の場合は、上層の繊維層として太さ 15〜45 μ m、好ましくは 20〜40 μ m 、目付 10〜60g/m2、好ましくは 20〜50g/m2、下層側の繊維層として太さ 8〜 15 m、好ましくは 9〜 13 μ m、目付 40〜140g/m2、好ましくは 40〜: L00g/m2の組合せ の構造が良い。
[0024] また、各層の繊維の太さの比率、すなわち流体流出側の繊維層の繊維 Z流体流 入側の繊維層の繊維の太さ比率は、種々テストした結果、空気流出側と空気流入側 の太さ比力^). 0. 30〜0. 7、好ましくは 0. 3〜0. 6であれば、 以下の細力なダ ストも効率よく捕集でき、ライフも長いことが判明した。 0. 7を超えると、層間の差がな く単一層に近付き、本発明の趣旨に反する。一方 0. 30未満であると、細かな粒子の 多くが上層に捕集されずに下層に侵入するのでライフが短くなる。
[0025] なお、本発明に用いられるエアレイド不織布の目付は、 50〜200gZm2であり、好 ましく ίま 60〜150g/m2、さらに好ましく ίま 60〜: L00g/m2である。目付力 S50g/m2 未満では、ダストの保持が少なぐライフが短くなり、また、プリーツ形状に支障を来た す。一方、 200gZm2を超えると、圧力損失が大きくなるばかりか、厚くなるので一定 の据付面積に多くのプリーツ面積が取れなくなるといった実用上の問題を生じる。ま た、コストアップにもなるので好ましくない。
[0026] また、本発明に用いられるエアレイド不織布の見掛け密度は、 0. 04〜0. 3g/cm3 、好ましくは 0. 09〜0. 2g/cm3、さらに好ましくは 0. 1〜0. 15g/cm3である。 0. 3 gZcm3を超えると、圧損が高くなり空気清浄機などのフィルター材に使用した場合、 騒音が高すぎるなどの実用上の問題が出て好ましくない。一方、 0. 04gZcm3未満 では、嵩高過ぎてフィルター材のプリーツ形状加工性や形状維持が困難となり、ダス トの吹き抜けなどで効率低下の要因になりやすい。
なお、見掛け密度とは、エアーフィルター材の目付を厚さで割ったものを意味する。
[0027] なお、本発明に用いられるエアレイド不織布を構成することのある熱接着性短繊維 がその接着効果を十分に発揮するには、熱接着温度は該熱接着性短繊維の接着成 分の融点、または融着可能な温度より 5〜40°C高!、温度での加熱処理が好ま 、。 5°C未満であれば接着不良を生じ、 40°Cを超えると繊維収縮や半溶融により均一な 不織布が得られない。温度は、通常、 120〜200°C、好ましくは 130〜180°Cである 力 接着成分のポリマーの融点に応じて適宜選択することができる。
さらに、本発明に用いられるエアレイド不織布は、カレンダー加工を施すことにより、 得られる不織布の厚さや密度を調整することもできる。カレンダー加工においては、 1 対の加熱ローラーの隙間を調整し所望の厚さの不織布に加工する方法が好ましい。 この場合、隙間は 0.3〜4mm、さらに好ましくは 0.8〜3mmである。温度は、熱接着 性短繊維の接着成分の融点、または融着可能な温度より 50〜110°C低く設定する のが好ましい。 50°C未満の場合は融点に接近してくるので、表面繊維が変形しはじ め、皮膜が形成されやすくなつて圧損増加や捕集性能のダウンを生じる。一方、 110 °Cを超える場合は、カレンダー効果が発揮しに《なる。あら力じめ不織布を予熱して ある場合には低温度で加工することもできる。
カレンダーローラーの表面は、フラットでも良いし、凹凸形状を取ることもできる。 これらの条件は所望の厚さ'密度に加工するに適した条件を、本発明の作用'効果 を阻害しな 、範囲で適宜選択することができる。
[0028] また、本発明に用いられるエアレイド不織布は、本発明のエアーフィルター材として の捕集効率をさらに万全なものとするために、該エアレイド不織布を 2枚以上重ね、 積層一体ィ匕して使用することもできる。
1枚目(2層以上カゝらなる繊維径勾配構造)で仮に洩れたダストがあれば、さら〖こ 2 枚目(2層以上力もなる繊維径勾配構造)で捕集する効果が期待できるうえ、全体とし てフィルター材が硬くなり、よりプリーツ力卩ェが容易になるという利点も生じる。 2枚以 上を重ねて積層一体ィ匕するための作業を効率ィ匕するために、あら力じめエアレイド不 織布製造法によって各層を順次形成するに際して、 2枚以上の層状構造を一挙に形 成しても良い。
[0029] また、本発明に用いられるエアレイド不織布は、他の通気性シートを複合することに より、ダスト捕集性などの性能改良、フィルター材カ卩ェ性などの加工適性の改良、耐 久性などの実用特性の改良などを図ることができる。例えば、紙、湿式不織布、乾式 不織布、スパンボンド、メルトブロー、プラスチックネット、穴あきフィルム、織編物など を、本発明の趣旨の範囲で適宜選択することができる。複合される通気性シートは、 別工程において接着剤や軽度の-一ドルパンチ処理などの方法で一体ィ匕しても良 いし、繊維積層工程において表面層、裏面層、内層のいずれかに入れてから熱ォー ブン中で加熱し、一挙に一体ィ匕しても良い。
また、下層側に点状の榭脂ブロックを塗布したり、エンボス加工された素材をラミネ ートして、フィルター材の隣どうしが接触させないことも可能である。
[0030] また、必要に応じて、フィルターの流体流入側の層または全体に撥水加工をしたり 、難燃加工などを付与することも可能である。撥水加工することにより泥水や雨などで フィルター材が濡れた時の圧損上昇を防ぐことができる。
[0031] 本発明に用いられるエアレイド不織布は、常法に従い、各種榭脂による射出成型 法で枠を作成したり、ウレタン榭脂で枠を固定接着させることができる。
エアーフィルター材としての加工適性を良好にするため、および/またはフィルター
材として風圧での変形を防止するために、本発明の作用 ·効果を阻害しない範囲で、 例えばフエノール系やメラミン系などの熱硬化型榭脂、ポリアクリル酸エステル系など の自己架橋型榭脂などで処理しても良い。
[0032] 以上の本発明に用いられるエアレイド不織布は、エレクトレット加工を施すことにより 、本発明のエアーフィルター材として用いられる。
ここで、エレクトレット加工とは、例えば特開昭 61— 186568号公報に開示されてい る加工方法であり、公知の種々のエレクトレット化の方法、例えば、熱エレクトレット法 、エレクト口エレクトレット法、ラジオエレクトレット法、メカノエレクトレット法などを適用 することによって、シートなどを荷電状態にする加工方法である。
エレクトレット加工する際には、用いられるエアレイド不織布を構成している繊維に 付着している表面油剤などを除去するために、例えば 50〜100°Cの熱水で、 5数秒 〜10数分程度洗浄したのち、熱接着性短繊維を構成するポリマーの融点未満の温 度、例えば 80〜140°Cで数十秒〜数十分程度乾燥処理することが好ましい。油剤な どの除去には、そのほ力ゥォタージェット処理してもよい。
エレクトレット加工の具体的な一例としての条件は、ポリオレフイン系エアレイド不織 布の場合、好ましくは 80〜150°C、さらに好ましくは 90°C〜110°C程度の加熱ローラ 一上にて、 30〜一 5KVあるいは + 5〜 + 30KV、さらに好ましくは一 30〜一 5KV 程度の直流電圧を印加し、次に冷却ロール上にてさらに 30〜一 5KVあるいは + 5 〜 + 30KV、さらに好ましくは一 30〜一 5KV程度の直流電圧を印加する方法などが 挙げられる。生活空間に存在する微少塵埃の多くはプラス帯電しているものが比較 的に多 、ので、印加電圧はマイナスとする方が好ま 、。
実施例
[0033] 実施例 1
下層として、繊度 ldt (繊径 11. 8 m)、繊維長 3mmの鞘部ポリエチレン芯部ポリ プロピレン力もなる熱接着性バインダー複合繊維 (チッソ社製、 ESCタイプ)を、 A繊 維噴射ノズルで目付 60g/m2となるよう紡出し、ネット上に捕集した。
次に、上層として、繊度 3. 3dt (繊径 21. 6 m)、繊維長 3mmの鞘部ポリエチレン 芯部ポリプロピレンカゝらなる熱接着性バインダー複合繊維 (チッソ社製、 ESCタイプ)
を、 B繊維噴射ノズルで目付 30g/m2となるよう、前記下層の上に紡出し、捕集した。 この積層エアレイドウェブをネット状のコンベア一上に運び、 140°Cで熱風処理して、 厚さ 0. 9mm、 目付 90. lg/m2のフィルター材用エアレイド不織布 1を作製した。 次に、本フィルター材用エアレイド不織布 1を構成して 、る繊維に付着して 、る油 剤を 90°Cの湯で洗浄、乾燥した後、—14KVの直流電圧を掛けてエレクトレット加工 し、本発明のエアーフィルター材 1を作製した。 A繊維噴射ノズルより作成された下層 は、繊維の交絡点が熱溶融接着されていて、さらに 40g/m2以上あるので、プリーツ 加工時に充分形態保持が出来るものであった。また、空気流入側と流出側の繊維の 太さ比率は 11. 8/21. 6 = 0. 55であり、その他のろ過試験結果も含めて表 1に示 す。また、捕集効率の推移を図 1に、圧損推移を図 2に、さらにこのフィルター材の電 子顕微鏡写真(750倍)を図 3に示す。
[0034] 実施例 2
下層として、繊度 ldt (繊径 11. 8 m)、繊維長 5mmの鞘部ポリエチレン芯部ポリ プロピレン力もなる熱接着性バインダー複合繊維 (チッソ社製、 ESCタイプ)を、 A繊 維噴射ノズルで目付 50g/m2となるよう紡出し、ネット上に捕集した。
上層として、繊度 l ldt (繊径 39. 2 /z m)、繊維長 3mmのサイドバイサイド型力もな るポリエチレン一ポリプロピレンの熱接着性バインダー複合繊維 (チッソ社製、 ESタイ プ)を、 B繊維噴射ノズルで目付 10g/m2となるよう、前記下層の上に紡出し、捕集し た。この積層エアレイドエブをネット状のコンベア一上に運び、 140°Cで熱風処理し て、厚さ 0. 5mm、 目付 61. 3g/m2のフィルター材用エアレイド不織布 2を作製した。 次に、本フィルター材用エアレイド不織布 2を構成している繊維に付着している油 剤を 90°Cの湯で洗浄、乾燥したる後、—14KVの直流電圧を掛けてエレクトレットカロ ェし、本発明のエアーフィルター材 2を作製した。 A繊維噴射ノズルより作成された下 層は、繊維の交絡点が熱溶融接着されていて、さらに 40g/m2以上あるので、プリ一 ッ加工時に充分形態保持が出来るものであった。空気流入側と流出側の繊維比率 は 11. 8/39. 2 = 0. 30であり、その他のろ過試験結果を表 1に示す。また、捕集効 率の推移を図 1に、圧損推移を図 2に示す。
[0035] 比較例 1
比色法 90%として巿販されて ヽる目付 20g/m2のエレクトレツトイ匕極細 PP (繊径 5 μ m)からなる MBに繊度 3. 3dt (繊径 17. 5 m)のポリエステル繊維を用いた目付 70 g/m2のケミカルボンド不織布をラミネートしたものを比較例 1とした。比較例 1の空気 流入側と流出側の繊維比率は 5Z17. 5 = 0. 29であり、その他のろ過試験結果を表 1に示す。また、捕集効率の推移を図 1に、圧損推移を図 2に示す。さらに、ラミネート 品の電子顕微鏡写真(750倍)を図 4に示す。
[0036] <ろ過試験 >
ろ過試験 1は、大気塵 (0. 3〜5 m)を 5cm/secでろ過した時の圧損およびパーテ イタルカウンターによる捕集効率を示す。
ろ過試験 2は、 TSI試験機を使用して 10. 7cm/secのろ過速度で、 NaCl (ダスト平 均粒径 75nm)ダストを初期圧損の 40%アップまで供給した時までの捕集効率および 圧損上昇を図 1,図 2に示す。ろ過試験 2において実施例 1、 2のダストの投入は 3. 3 dt、 l ldt側より、比較例 1はポリエステル不織布側より投入された。
[0037] 表 1の PF値は、
PF=—LN(1—捕集効率) Z圧損
で表され、 PF値の絶対値が大きいほど高捕集効率で低圧損になる良い空調フィルタ 一であるといえる。
表 1より、本発明の実施例 1および実施例 2の PFの絶対値は 0. 34と 0. 21で比較 例 1の 0. 14に比べて大きいため、優れたフィルター材といえる。
[0038] ろ過試験 2の結果を示した図 1(ダスト負荷による捕集効率の推移)および図 2(ダスト 負荷による圧損上昇の推移)力も次のことが 、える。
すなわち、エレクトレツトイ匕フィルタ一は繊維の表面の静電気でダストを吸着捕集す るため、ダストが付着すると繊維の静電気吸着作用が少なくなり、図 1に示す如くダス トの増加と共に捕集効率は低下し、ある程度フィルターにダストが詰まれば篩目効果 により捕集効率は増加するが、この篩目効果が出ると圧損は急上昇し、フィルターと しては使用できなくなる。
[0039] 実施例 1のフィルタ一は、表 1に示す如く初期効率が 75. 2%と比較例 1の 46. 8% に比べて高いにも拘らず、表 1に示す初期圧損が 16. 9Paと比較例 1の 20. 6Paに
比べて低 、ことを示して 、る。
図 1よりダスト負荷に対しての捕集効率のダウンは、実施例 1の場合、比較的ゆるや かなダウンで捕集効率が高 ヽ事を示して 、る。
また、図 2に見られる如ぐ比較例 1はダスト量と共に圧損が急激に上昇している(す なわち、篩目効果が早く出てライフが短い)のに対して、実施例 1, 2は圧損上昇が緩 やかでライフが比較例 1より長 、ことを示して 、る。
この原因の一つとして、比較例 1の圧損の急上昇はダスト側と流出側の繊維太さの 比率が 0. 30以下のため、細かいダストが流入側の繊維層で捕集されずに、流出側 の微細構造である繊維層を早く詰めて圧損が急激に上昇し、最終のダスト量は 5. 4 mgと実施例 1、 2に比べて 1/3〜 1/4のライフになることを示して 、る。
一方、実施例 1は流入側と流出側の繊維太さの比率が 0. 55で繊維太さのバランス が良いため、圧損上昇は少なく最終のダスト量は 22. 3mgでライフの長いフィルター 材といえる。
また、本発明品(実施例 1)は、熱接着性合成繊維によって図 3に示す如く繊維の 交点が接着されてシートとして一体化されており、ケミカルバインダー榭脂が不要な ので、比較例にあるような既存のケミカルボンド不織布によるものに較べて、プリーツ 加工時のケミカル剤の揮散がなく作業環境にやさしいフィルター材といえる。さらに、 図 4に示されて 、る比較例 1のサポート材 (ケミカルボンド不織布)の繊維交点に形成 される水力き状の部分がな 、ので、圧損上昇も緩やかで理想的なエアーフィルター 材といえる。
[0040] [表 1]
[0041] <圧損(1)、効率 (1) >
パーティクルカウンターでの大気塵 (0. 3〜5 μ m)を速度 5cmZsecでろ過したとき の圧損(1)と捕集効率 ( 1)
<初期圧損、初期効率 >
TSI試験機で Nacl(0. 075 m、 16. 5mg/m3)を 10. 7cmZsecでろ過したとき の初期圧損と初期効率
<最終効率、ダスト量 >
TSI試験機で Naclを負荷させて、圧損が初期圧損の 40%アップしたときまでの最 終効率とダスト量
産業上の利用可能性
[0042] 本発明は、ビル空調、自動車用キャビンフィルター、空気清浄器などに使用される エアーフィルター材に関するものである。
本発明のエアーフィルター材は、環境汚染がなぐニードル跡がなぐダスト捕集効 率が高ぐロングライフであり、薄くて均一性が高ぐビル空調用フィルター材、 自動車 キャビンフィルター材、空気清浄機用フィルター材などの用途に有用である。