明 細 書
トリテルペン水酸化酵素
技術分野
[0001] 本発明は、植物由来のソャサポゲノール B生合成に関与する酵素遺伝子を遺伝子 工学的な手法を用いて形質転換した細胞、ならびにその細胞を利用することによりソ ャサポゲノール Bを製造する方法に関する。
背景技術
[0002] ソャサポゲノール B (12-oleanene-3,22,24-triol)は、大豆種子より単離、構造決定さ れたォレアナン骨格を有するトリテルペン(Chem. Pharm. Bull.. 24. pl21- 129, 1976 、 Chem. Pharm. Bull.. 30. p2294-2297, 1982) (非特許文献 1および 2)であり、その 配糖体であるソャサポニンはマメ科植物に広く分布している。
これまでにソャサポゲノール Bに関しては、抗補体活性、血小板凝集抑制作用(特 開昭 61-37749) (特許文献 1)、抗腫瘍活性 (特開平 10-234396) (特許文献 2)および 肝保護作用 (Bioorg. Med. Chem. Lett.. 7, 85-88,1997) (非特許文献 3)などが報告 されており、医薬品もしくは医薬品原料としての有用性が期待されて 、る。
[0003] ソャサポゲノール Bの製造法としては、大豆種子に含有されるサポニンの糖鎖をカロ 水分解したのち、ソャサポゲノール Bを精製する方法が知られている力 大豆種子に 含有されているサポニンの割合は約 0.2% (薬学雑誌 104, 162-168, 1984) (非特許文 献 4)と少なぐより効率的な製造法が求められている。
ソャサポゲノール Bの生合成前駆体である |8—アミリンは、メバロン酸経路により生 成した 2, 3—才キシドスクアレンが閉環することにより生合成され、その後、 2段階の水 酸ィ匕反応を経てソャサポゲノール Bが生合成されると推定される。
[0004] ソャサポゲノール Bと構造的に類似するソフオラジオール(12-oleanene-3,22-diol) は槐花(ェンジュ)の成分として報告されている物質 (薬学雑誌 78, 1090-1094, 1958) ( 非特許文献 5)であるが、このソフオラジオールの 24位を水酸化するとソャサポゲノー ル Bを生産することが可能である。
実際、カンゾゥの培養細胞由来の水酸ィ匕酵素を利用して、ソフオラジオールの 24位
を水酸ィ匕することによる、ソャサポゲノール Bの製造法が開示されている。 (
WO02/086142) (特許文献 3)
[0005] 特許文献 1 :特開昭 61— 37749号公報
特許文献 2:特開平 10- 234396号公報
特許文献 3:国際公開 WO02Z086142号公報
非特許文献 l : Chem. Pharm. Bull, 24, pl21- 129, 1976
非特許文献 2 : Chem. Pharm. Bull, 30, p2294-2297, 1982
非特許文献 3 : Bioorg.Med.Chem. Lett., 7, 85-88,1997
非特許文献 4:薬学雑誌 104, 162-168,1984
非特許文献 5 :薬学雑誌 78, 1090-1094,1958
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0006] ソャサポゲノール Bの生合成前駆体である /3 アミリンは、メバロン酸経路により生 成した 2, 3—才キシドスクアレンが閉環することにより生合成され、その後、 2段階の水 酸ィ匕反応を経てソャサポゲノール Bが生合成される。し力しながら、この反応に関与 する水酸ィ匕酵素の遺伝子は明らかにされていな力つた。そのため、水酸化酵素につ V、ての遺伝子工学的な利用が不可能であった。
課題を解決するための手段
[0007] 本発明者らは、 j8—アミリンカもソャサポゲノール Bに至る生合成に関与するシトク口 ーム P450型の酵素の遺伝子力 ソャサポゲノール Bの配糖体であるソャサポニンを 高生産するダイズの EST (Expression Sequence Tags)クローンや機能未同定 クローンの中に含まれていると考え、ラノステロール欠損酵母変異株を用いて、これら ダイズのクローンの機能解析を行った。解析を行ったクローンのうち配列番号 8で表さ れるポリヌクレオチドを転写及び翻訳させた酵母にお!、て本来検出されな 、ォレアナ ン型トリテルペンの 24位の水酸ィ匕活性を検出した。水酸化活性を検出した酵素のポ リヌクレオチド配列は配列番号 8であり、推定されるポリペプチド配列は配列番号 9で ある。配列番号 8に類似する配列として、シトクローム P450遺伝子 CYP93El (Gen Bank Accession Number AF135485、配列番号 10、推定されるポリペプチド
配列は配列番号 11)が知られている。配列番号 8で表されるポリヌクレオチドと配列 番号 10で表されるポリヌクレオチドは、 121番目、 171番目および 1081番目の 3箇 所が異なる。(以下、配列番号 8で表される配列もシトクローム P450遺伝子 CYP93E 1と呼ぶことがある。)また、配列番号 9で表されるポリペプチドと配列番号 11で表され るポリペプチドは、 41番目および 61番目のアミノ酸が異なる。本発明者らは、配列番 号 8で表されるポリヌクレオチドがォレアナン型トリテルペンの 24位を水酸ィ匕する酵素 タンパクをコードしていることを明らかにした。この知見に基づき、本発明者らは鋭意 努力し、本発明を完成させた。
従って、本発明は以下の 1一 17に関する。
1. 配列番号 8で表されるポリヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件下でノヽィ ブリダィズし、かつォレアナン型トリテルペンの 24位を水酸ィ匕する活性を有するポリべ プチドをコードするポリヌクレオチドを有する発現ベクター。
2. ポリヌクレオチドが配列番号 8で表されるポリヌクレオチドである上記 1に記載の 発現ベクター。
3. 上記 1または 2記載の発現ベクターで宿主を形質転換した形質転換体。
4. 宿主が微生物である上記 3記載の形質転換体。
5. 微生物が酵母である上記 4記載の形質転換体。
6. 配列番号 8で表されるポリヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件下でノヽィ ブリダィズし、かつォレアナン型トリテルペンの 24位を水酸ィ匕する活性を有するポリべ プチドをコードするポリヌクレオチドおよび j8—アミリン合成酵素遺伝子を有する発現 ベクター
7. ポリヌクレオチドが配列番号 8で表されるポリヌクレオチドである上記 6に記載の 発現ベクター。
8. 上記 6または 7記載の発現ベクターで宿主を形質転換した形質転換体。
9. 宿主が微生物である上記 8記載の形質転換体。
10. 微生物が酵母である上記 9記載の形質転換体。
11. 受託番号 FERM BP— 10201として寄託されているラノステロール合成酵素欠損 酵母変異株。
12. 上記 3から 5のいずれかに記載の形質転換体を培養して、上記 1に記載のポリ ペプチドを産生する工程を含むォレアナン型トリテルペンの 24位を水酸ィ匕する活性 を有するポリペプチドを製造する方法。
13. 上記 8から 10の 、ずれかに記載の形質転換体を培養して、
1)上記 3に記載のポリペプチドを産生する工程および
2) |8—アミリン合成酵素を産生する工程
を含むォレアナン型トリテルペンの 24位を水酸ィ匕する活性を有するポリペプチドおよ び β -アミリン合成酵素を製造する方法。
14. 上記 3から 5のいずれかに記載の形質転換体をォレアナン型トリテルペンに作 用させる工程を含む 24位が水酸ィ匕されたォレアナン型トリテルペンの製造方法。
15. 上記 8から 10の ヽずれかに記載された形質転換体の培養生産による 24位が 水酸化されたォレアナン型トリテルペンの製造方法。
16. 上記 11に記載の酵母変異株の培養生産による 24位が水酸化されたォレアナ ン型トリテルペンの製造方法。
発明の効果
[0009] 本発明により、ォレアナン型トリテルペンの 24位水酸ィ匕酵素の遺伝子塩基配列なら びにアミノ酸配列を明らかにすることができた。さらに、当該遺伝子を遺伝子工学的 に利用することにより、遺伝子産物である酵素タンパクを大量に生産することができる また、生産された酵素タンパク質又は該酵素タンパク質含む形質転換体を用いて、 トリテルペンの 24位を水酸ィ匕することが可能となった。また当該遺伝子と j8—アミリン 合成酵素の遺伝子で形質転換体を用いることにより、 24位が水酸ィ匕されたトリテルべ ンを直接培養生産することが可能となった。
発明を実施するための最良の形態
[0010] 本発明におけるォレアナン型トリテルペンとしては、 13—アミリン、ソフォラジオール、 ソャサポゲノール Aおよび Bなどが知られている力 本発明におけるォレアナン型トリ テルペンは上記に限定されな 、。
24位が水酸ィ匕されるォレアナン型トリテルペンとしては、 β アミリンやソフォラジオ
ールがあげられる力 本発明の方法により 24位が水酸ィ匕される化合物であれば上記 に限定されない。 24位が水酸ィ匕されたトリテルペンとしては、ソャサポゲノーノレ Aおよ び Bがあげられるが、本発明による酸ィ匕成績体であればソャサポゲノール Aおよび B に限定されない。
本発明によれば、シトクローム P450遺伝子 CYP93E1のポリヌクレオチドおよびそ の均等体の転写 ·翻訳産物を利用して 24位が水酸ィ匕されたォレアナン型トリテルべ ンを製造することができる。なお、均等体とは、同一機能を有し、シトクローム P450遺 伝子 CYP93E1に記載の配列の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダィズ する配列を指す。
「ストリンジェントな条件下でハイブリダィズする」とは、シトクローム P450遺伝子 CYP93E1で表される塩基配列を有する DNAの一部又は全部(又は、その相補鎖)を プローブとして、ノ、イブリダィズを使用する手法 (例えば、コロニー 'ハイブリダィゼー シヨン法、プラーク 'ハイブリダィゼーシヨン法、サザンブロットハイブリダィゼーシヨン 法等)を用いることによりヌクレオチドのハイブリダィゼーシヨンが確認できる。具体的 には、 0. 5mol/lの塩化ナトリウム存在下、 55°Cでハイブリダィゼーシヨンを行った後、 2倍濃度の SSC溶液(1倍濃度の SSC溶液の組成は、 150mM NaCl、 15mM ク ェン酸ナトリウム、 pH7. 0よりなる)を用いる場合が例示される。
ハイブリダィゼーシヨンは、モレキユラ一 ·クロー-ング、ァ 'ラボラトリ一 ·マ-ユアル( (Molecular clonings A Laboratory Manual、 T.マニアテイス (T. Maniatis)他著、コー ルド スプリング ノヽーノ ー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、 1989年 発行)等に記載されて 、る方法に準じて行うことができる。ノ、イブリダィズ可能な DNA として具体的には、 BLAST (National Center for Biotechnology Information)を用いて 計算したときに、シトクローム P450遺伝子 CYP93E1で表される塩基配列と少なくとも 8 0%以上、好ましくは 90%以上、さらに好ましくは 95%以上の相同性を有する DNAを 挙げることができる。なお、本発明における相同性は、 BLASTのパラメータを
Wordsize:3、 Matrix:BLOSOM62、 uap し osts:Existence: l l、 Extension: 1に設疋したと きの数値を表す。
また、「シトクローム P450遺伝子 CYP93E1のポリヌクレオチドの相補鎖とストリンジェ
ントな条件下でハイブリダィズし、かつォレアナン型トリテルペンの 24位を水酸化する 活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、具体的には、シトクロー ム P450遺伝子 CYP93E1のポリヌクレオチド配列において、 1若しくは複数のヌクレオ チドが欠失、置換、挿入若しくは付加され、かつ、ォレアナン型トリテルペンの 24位を 水酸ィ匕する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。シトクロー ム P450遺伝子 CYP93E1のヌクレオチド配列において置換されるヌクレオチドの個数 は、上記の相同性を満たし、かつ、ォレアナン型トリテルペンの 24位を水酸ィ匕する活 性を有するポリペプチドをコードする数であれば特に限定されない。
シトクローム P450遺伝子 CYP93E1のポリヌクレオチドに対する変異は、自然界に おいて生じる変異のほかに、人為的な変異も含む。人為的に変異させる手段として は、シトクローム P450遺伝子 CYP93E1のポリヌクレオチドを用いて、ランダム変異 あるいは部位特異的変異を導入し、遺伝子工学的に、 1又は複数のヌクレオチド残 基が欠失、置換、挿入、付加の少なくとも 1つがなされているポリヌクレオチドを得る方 法が挙げられる。こうして得られた変異ポリヌクレオチドを利用することにより、本酵素 の活性の至適温度、熱安定性、至適 pH、 pH安定性、基質特異性等の性質が異な つたポリペプチドを得ることが可能となる。
さら〖こ、 24位が水酸ィ匕されたォレアナン型トリテルペンを産生し得る他の微生物、 植物、及び、動物 (好ましくはォレアナン型トリテルペン産生し得る、植物、より好まし くはマメ科植物、最も好ましくは大豆)に対してシトクローム P450遺伝子 CYP93E1 の塩基配列を有するヌクレオチドの一部又は全部(又は、その相補鎖)をプローブと して、ノ、イブリダィズを使用する手法 (例えば、コロニー 'ハイブリダィゼーシヨン法、プ ラーク.ハイブリダィゼーシヨン法)、または、シトクローム P450遺伝子 CYP93E1の 塩基配列を有するヌクレオチドの一部又は全部(又は、その相補鎖)をプライマーとし て PCRを行う手法等によって、シトクローム P450遺伝子 CYP93E1のポリヌクレオチドの 相補鎖とストリンジェントな条件下でノヽイブリダィズし、かつォレアナン型トリテルペン の 24位を水酸ィ匕する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを得るこ とちでさる。
また、上記ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド配列の情報を基にして、化学合成によつ
て得ることもできる。この方法は、ジーン(Gene)、第 60(1)卷、第 115-127頁 (1987)の記 載を参照して行うことができる。
[0012] さらに、本発明は、シトクローム P450遺伝子 CYP93E1のポリヌクレオチドおよびそ の均等体を保持する、及び Z又は、発現するための自立複製可能なベクター (好ま しくは発現ベクター)で宿主を形質転換した形質転換体に関する。該ベクターは、シト クローム P450遺伝子 CYP93E1のポリヌクレオチドおよびその均等体に加え、さらに β -ァミリン合成酵素遺伝子を含んで良 、。
[0013] 宿主の例としては、特に限定されないが、微生物、植物、動物等が挙げられる。微 生物としては、酵母、大腸菌等が挙げられ、好ましくは酵母が用いられる。動物として はカイコがあげられる。植物としては大豆があげられる。植物に本発明のベクターを 導入する事で、 24位が水酸ィ匕されたォレアナン型トリテルペンの含量の増加した植 物を提供可能である。
[0014] 形質転換する酵母の例としては、ラノステロールシンターゼを欠いた酵母 GIL77 ( Kushiro, T. et al.. Eur. 1. Biochem.. 256. 238-244, 1998)がある。上記シトクローム P450遺伝子 CYP93E1に対応する cDNA及びエンドゥ由来 β アミリン合成酵素遺伝 子を酵母発現ベクター pESC— ERA(Stratagene社製)に組込み、ラノステロール合 成酵素を欠いた酵母 GIL77を形質転換し、 2種の遺伝子を共発現させることにより、 24位が水酸ィ匕されたトリテルペンを培養生産することが可能となる。
[0015] 発現ベクターとしては、宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組 込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドを転写できる位置にプロモーターを含有し ているものが用いられる。
[0016] 宿主細胞が微生物である場合、発現ベクターとしては、例えば、 pBluescript
(STRATAGENE社製)、 pUC18 (タカラバイオ社製)、 pUC118 (タカラバイオ社製)、 PUC19 (タカラバイオ社製)、 pUC119 (タカラバイオ社製)等を例示することができる。 プロモーターとしては、大腸菌、糸状菌等の宿主細胞中で発現できるものであれば いかなるものでもよい。例えば、 trpプロモーター(P )、 lacプロモーター(P )等の、
trp iac 大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、タカアミラーゼ遺伝子プロモーター、 TEF1遺伝子プロモーター等の麹菌等に由来するプロモーター等を挙げることがで
きる。
また、人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
組換えベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へポリヌクレオチドを導入する 方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔
Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 69, 2110 (1972)〕等を挙げることができる。
[0017] 酵母菌株が宿主細胞である場合には、発現ベクターとして、例えば pAURlOl (タカ ラバイオ社製)、 pAUR112 (タカラバイオ社製)、 pト RED1 (東洋紡績社製)等を例示す ることがでさる。
プロモーターとしては、酵母菌株中で発現できるものであればいかなるものでもよい 例えば、解糖系酵素遺伝子プロモーター、 Galプロモーター等のプロモーターを挙 げることができる。
糸且換えベクターの導入方法としては、酵母にポリヌクレオチドを導入する方法であ ればいずれも用いることができ、例えば、エレクト口ポレーシヨン法「Methods.
Enzvmol.. 194. 182 (1990)〕、スフエロプラスト法「Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 84, 1929 (1978) 1 .酢酸リチウム法「ジャーナル,ォブ 'パクテリォロジ一 Π. Bacteriol.) . 153. 163 (1983)〕等を挙げることができる。
[0018] 宿主細胞の培地、培養条件については、公知の方法に従って適宜選択することが 可能である。微生物を宿主細胞とする場合、得られた形質転換体を培養する培地は 、該微生物が資化しうる炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養 を効率的に行える培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。 炭素源としては、ポテトデキストロース、グルコース、スクロース、可溶性デンプン、グ リセリン、デキストリン、糖蜜、有機酸等を用いることができる。窒素源としては、硫酸ァ ンモ-ゥム、炭酸アンモ-ゥム、リン酸アンモ-ゥム、酢酸アンモ-ゥム等の無機塩若 しくは有機酸のアンモ-ゥム塩その他の窒素化合物、ペプトン、酵母エキス、コーンス ティープリカ一、カゼイン加水分解物、肉エキスを用いることができる。無機塩類とし ては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム 、塩ィ匕ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いるこ
とがでさる。
[0019] 宿主細胞がカイコである場合、例えばバキュロウィルス発現系を用いた公知の方法 により、本発明のポリペプチドを発現させることができる。 ΓΑΡΡΙ. Microbiol.
Biotechnol.. 62, 1-20(2003)]また、植物細胞を宿主として本発明のポリペプチドを形 質転換した植物を得る場合、例えば、ァグロバタテリゥム 'ッメファシエンスの Tiプラス ミドまたはバイナリープラスミド系、ァグロバタテリゥム'リゾジェネスの Riプラスミド、ポリ エチレングリコールを用いる直接的な遺伝子伝達またはエレクト口ポレーシヨン法が 5¾Jで&)る。 iMethods in Molecular Biology, 267, Recombinant Gene Expression 329-50(2004)]
[0020] また、誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターを導入した形質転換体を培養 する場合には、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、 lacプ 口モーターを用いた場合はイソプロピル β _D_チォガラタトピラノシド等を、 trpプロ モーターを用いた場合はインドールアクリル酸等を培地に添加することができる。
[0021] なお、本発明のポリペプチドの発現方法としては、直接発現以外に、モレキュラー' クローユング 第 2版に記載されている方法等に準じて行うことができる。
[0022] 上記 3— 5記載の形質転換体を使用してォレアナン型トリテルペン 24位水酸化体を 製造する場合、形質転換体の培養液に基質となるォレアナン型トリテルペンを添加し て培養し、得られた 24位水酸ィ匕体を酢酸ェチルやエーテルなどの有機溶媒で抽出 後、シリカゲルや ODSを用いて精製する。
[0023] また、形質転換体の培養液から無細胞抽出液を調製してォレアナン型トリテルペン 24位水酸体を製造することもできる。この場合、収穫した細胞を懸濁液に懸濁し、ホ モジナイザー、超音波破砕機あるいはフレンチプレス等により細胞を破砕後、遠心分 離して無細胞抽出液を得る。緩衝液には、ポリペプチドの失活を防ぐため、抗酸化剤 、酵素の安定化剤、ポリフエノール吸着剤、金属配位子などを添加することができる。 さらに比活性を高めるにはポリペプチドを精製することが有効であり、超遠心機による 遠心分離法、硫安等による塩析方、ゲル濾過法、イオン交換クロマトグラフィー法、ァ フィ-ティクロマトグラフィー法、電気泳動法などの手法を単独で、あるいは組み合わ せて用いることができる。
[0024] 得られたポリペプチドを含む緩衝液に、基質となるォレアナン型トリテルペンならび に補酵素を添加して、 15— 40°C、好ましくは 20— 37°Cでインキュベートする。補酵 素としては NADHあるいは NADPHが利用でき、グルコース- 6-リン酸とグルコース- 6- リン酸デヒドロゲナーゼを用いた NADPH再構成系も併用できる。また、形質転換細胞 が産生する NADPH- P450リダクターゼ以外の NADPH- P450リダクターゼを外部から 加えて水酸化反応を行うことも可能である。
[0025] 上記 8— 10記載の形質転換体を使用する場合、形質転換細胞自身が産生する 2,3-ォキシドスクアレンを利用してォレアナン型トリテルペンが産生されるため、外部 カもォレアナン型トリテルペンを添加せずに、ォレアナン型トリテルペン 24位水酸ィ匕 体を製造することができる。得られた 24位水酸ィ匕体は酢酸ェチルやエーテルなどの 有機溶媒で抽出後、シリカゲルや ODSを用いて精製する。
以下に本発明の実施例の概略を記載する。
[0026] ダイズ由来の EST及び機能未同定でかつ全長の塩基配列が報告されて 、るシトク ローム P450クローンを 7種(GenBank Accesion Number: AF 135485, Y104 91、 Y10982、 Y10983、 Y10493、 AF022459、及び、 TIGR Accesion Num ber:TC100921)選択した。このうち、本活性を示した CYP93E1 (GenBank Acc ession Number AF135485)に高い相同性を示した配列番号 8のポリヌクレオチ ドについて、以下に記す。ダイズ芽生えより調製した mRNAから、 RT— PCR法により CYP93E1に対応する cDNA (配列番号 8)を増幅し、酵母発現ベクター pESC— ER A (Stratagene社製)に組込み、ラノステロールシンターゼを欠いた酵母 GIL77 ( Kushiro, T. et al.. Eur. T. Biochem.. 256. 238-244, 1998)を形質転換し機能解析を 行った。形質転換酵母の無細胞抽出液と j8—アミリンを反応させ、生成物をァセチル 化し、 GCMSで解析した。その結果、 3, 24-ジァセトキシ- 12-ォレアネンを検出し た。
[0027] 同様に、形質転換酵母の無細胞抽出液とソフオラジオールを反応させ、生成物をァ セチル化し、 GCMSで解析した。その結果、トリァセチルソャサポゲノール Bを検出し た。
[0028] 形質転換酵母の培養に β アミリンを投与し、反応後、細胞を収穫した。脂溶性画
分を抽出し、ァセチルイ匕後、 GCMSで解析した。その結果、 3, 24-ジァセトキシ -1 2—才レアネンを検出した。
[0029] 上記配列番号 8の cDNA及びエンドゥ由来 β アミリン合成酵素遺伝子を酵母発 現ベクター pESC— ERA(Stratagene社製)に組込み、ラノステロール合成酵素を欠 いた酵母 GIL77を形質転換し、 2種の遺伝子を共発現させた。この形質転換酵母を GIL77/pESC 'PSY'CYP93Elと命名し、平成 16年 2月 6日に独立行政法人産業技術 総合研究所特許生物寄託センター(干 305-8566 茨城県つくば巿東 1-1-1 中央第 6)に受託番号 FERM P-19675として寄託した(平成 17年 1月 6日〖こ FERM BP-10201 に移管)。
[0030] 形質転換酵母を培養し、細胞を収穫した。脂溶性画分を抽出し、ァセチル化後、 G CMSで解析した。その結果、 3, 24—ジァセトキシー 12—ォレアネンを検出した。
[0031] 同様に、上記配列番号 8の cDNA及びシロイヌナズナ由来混合トリテルペン合成酵 素遺伝子を酵母発現ベクター pESC— ERA(Stratagene社製)に組込み、ラノステロ ールシンターゼを欠 、た酵母 GIL77を形質転換し、 2種の遺伝子を共発現させた。
[0032] 形質転換酵母を培養し、細胞を収穫した。脂溶性画分を抽出し、ァセチル化後、 GCMSで解析した。その結果、 3, 24 ジァセトキシー 12—才レアネンを検出した。他 のジァセトキシトリテルペンは検出限界以下であった。
[0033] 以上の結果、該酵母において本来検出されないソフオラジオール及び β アミリン の 24位に対する水酸ィ匕活性が認められたことから、配列番号 8はォレアナン型トリテ ルペンの 24位水酸ィ匕酵素をコードする遺伝子であると明らかにすることができた。一 方、同様に活性を調べた他の 6種の Ρ450遺伝子においては、本活性を検出するこ とはできなかった。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例 に限定されるものではない。
実施例 1
[0034] (1)ダイズ芽生えの cDNAの調製
水浸 14日後のダイズ (早生枝豆、アタリャ農園)幼葉から、フ ノール Zクロロフォ ルム法により全 RNAを抽出した。これを铸型として、逆転写酵素 SuperscriptlK
GIBCOBRL製)と、配列番号 1に示すプライマーを用いて cDNAを調製した。
[0035] (2)配列番号 8のポリヌクレオチドの増幅
上記(1)で調製した cDNAを铸型とし、配列番号 2と 3に示す、ポリペプチドの N末 端と C末端に相当する箇所のオリゴ DNAをプライマーとして、ァニール温度 65°Cで PCR( 30サイクル、宝酒造社製 Ex Taq DNAポリメラーゼ)を行い、 CYP93E1 ( 配列番号 8)の全長クローンを得た。
[0036] (3) pESC— CYP93E1の構築及び形質転換酵母の作成
上記(2)で得られた全長クローンを制限酵素 Spelと Clalで処理し、酵母発現べクタ 一 pESC— URA(Stratagene社製)の Spelと Clalサイトに組み込んだ。これを pES C— CYP93Eとした。 pESC— CYP93Eを、酵母 INVSC2株(Invitrogen社)に Froz en— EZ Yeast Transformation II (Zymo Reaseach 干土)を用 ヽて眷入した。
[0037] (4) in vitro酵素活性試験
グルコースの代わりに 2%ラフイノースを含む SC— U培地(Methods in Yeast Genetics, A Laboratory Course Manual, Cold Spring Harbor Labo ratory Press, 1990) 20mlに形質転換酵母を植菌し、 30°C、 220rpmで 18時間 培養した。へミン (最終濃度 13 gZml)とガラクトース (最終濃度 2%)を加え、同条 件でさらに 20時間培養した。遠心により細胞を収穫し、 2mlのスクリューバイアルへと 移し、 100 /z lの抽出緩衝液 (pH7. 5の 50mMリン酸—カリウム緩衝液に 10%スクロ ース、 ImM EDTA及び 14mMの 2—メルカプトエタノールをカ卩えたもの)をカ卩え、再 懸濁した。ここに希塩酸にて洗浄した 0. 4-0. 6mm径のガラスビーズ (井内盛栄堂) を適量カ卩えた。 4°Cに冷却し、 MINI— BEADBEADER (BIOSPEC社)を用いて細 胞の破砕を行った。ここにさらに 400 1の抽出緩衝液を加えよく攪拌した後、 4°Cに 冷却しながら 3500gで 5分間遠心分離を行い、約 400 1の上清を粗酵素液として回 収した。それに対し、 100 1の濃縮反応緩衝液 (抽出緩衝液に 10mM NADPH、 75mM グルコース— 6—リン酸(G6P)、 2. 5U/ml グルコース 6—リン酸デヒドロゲ ナーゼ(G6PDH)をカ卩えたもの)および 5 μ 1の 10mMの j8—アミリン'メタノール溶液 を加えた。これを 30°C、 6時間反応させた。 12N塩酸 10 1を添カ卩した後、 500 1の 酢酸ェチルを用いて脂溶性成分の抽出を 2回行い濃縮した。 20 1のピリジン及び
無水酢酸をカ卩えてー晚放置することにより抽出物のァセチルイ匕を行った。これに 200 μ 1の 50%メタノール水溶液を加えて反応を停止し、 200 μ 1のへキサンを用いて抽 出を 2回行い濃縮した(1))。対照実験として、 2)pESC— URAを用いた形質転換体由 来の粗酵素液を用いたもの、 3)基質である |8—アミリンをカ卩えなカゝつたもの、 4)100°C
、 5分で熱処理した粗酵素液で反応を行ったもの、 5)pESC— CYP93E1の GAL1プ 口モーター抑制のためガラクトースの代わりに同量のグルコースをカ卩えたものについ ても同様の手法でサンプルを調製した。これを 20 1のへキサンに溶解し、 l ^ l^G C-MS分析(島津製作所 ガスクロマトグラフ質量分析計 GCMS-QP2010, 力 ラム: RESTEK社 Rtx— 5MS,内径 0. 25mm 膜厚 0. 25 ^ m 長さ 30m, 昇温 プログラム: 230°Cで 3分間ホールド、 10°CZ分で昇温、 330°Cで 8分間ホールド )に供した。全イオンモニター(TIM)、及び、 mZz = 218 (3 β , 24 ジァセトキシー 1 2—ォレアネンのベースピーク)のマスク口マトグラムで生成物の有無を解析した。 ΤΙ Μでは、 3 j8 , 24 ジァセトキシー 12—才レアネンの生成は認められなかった(結果未 記載)。しかしながら、 m/Z = 218のマスク口マトグラムにおいて 3 j8 , 24—ジァセトキ シ— 12—才レアネン力 1)の条件で観測された(図 1)。この結果より CYP93E1翻訳 産物は β アミリンへの 24位水酸ィ匕活性を有することを確認した。
次に、ソフォラジオールに対する反応性を検討するために、ソフォラジオール(5 1 10mM)を基質として、同様に酵素反応を行い、上記と同様に GCMS解析を行つ た。上記の 1)の反応条件の生成物のマスク口マトグラム解析 (mZZ = 216 トリァセ チルソャサポゲノール Bのベースピーク)において、トリァセチルソャサポゲノール Bの ピークが観測された(図 2)。これより、 CYP93E1翻訳産物は、 |8—アミリンのみなら ず、ソフオラジオールに対しても、 24位水酸ィ匕活性を有することが明ら力となった。 (5) in vivo酵素活性試験
グルコースの代わりに 2%ラフイノースを含む SC— U培地 20mlに形質転換酵母を 植菌し、 30°C、 220rpmで 18時間培養した。へミン (最終濃度 13 gZml)とガラタト ース (最終濃度 2%)を加え、さらに基質として 10 μ 1の 10mMの /3 -アミリン'メタノー ル溶液を加えた。酸素を供給するために、ファルコンチューブの上部を綿栓で封じ、 無菌的かつ好気的にさらに 24時間培養した。遠心により細胞を収穫し、 2mlのスクリ
ユーバイアルへ移した。これに 250 μ 1の 40%水酸化カリウム水溶液及び 250 μ 1のメ タノールを加え、十分に攪拌し、 100°C、 5分で熱処理した。 500 1のへキサンを用 いて脂溶性成分の抽出を 2回行い濃縮した。 20 1のピリジン及び無水酢酸を加えて ー晚放置することにより抽出物のァセチルイ匕を行った。これに 200 1の 50%メタノー ル水溶液をカ卩えて反応を停止し、 200 1のへキサンを用いて抽出を 2回行い濃縮し た(1) )。対照実験として、 2)pESC-URAを用いた形質転換体を用いたもの、 3)基質 である j8—アミリンをカ卩えなかったもの、 4)pESC—CYP93Elの GAL1プロモーター 抑制のためガラクトースの代わりに同量のグルコースをくわえたものについても同様 の手法でサンプルを調製した。これを 10 1のへキサンに溶解し、 1 μ 1を (4)におけ る条件と同条件で GC— MS分析に供した (条件は (4)の実験と同じ)。 1)の条件にお いて 3 β , 24—ジァセトキシー 12—才レアネンのピークが TIMで観測され(図 3)、かつ 、そのピークの MS開裂パターンは標品と一致した(図 4)。 TIMのピーク面積比によ る定量結果から、本条件と同一の条件で 1L培養した場合 (約 2mgの |8—アミリンを投 与)、数 gの 3 β , 24—ジヒドロキシー 12—ォレアネンが得られることになる。
[0039] (6)発現プラスミド pESC— PSYの構築
エンドゥ由来の j8—アミリン合成酵素 PSY(AB034802、 Eur. J. Biochem. 267, 3 543-3460, 2000)を組み込んだプラスミドを铸型に、配列番号 4、 5に示す、ポリべ プチドの N末端と C末端に対応するオリゴ DNAをプライマーとして、ァニール温度 58 °Cで PCR(30サイクル、宝酒造社製 Ex Taq DN Aポリメラーゼ)を行い、 Sail及び Nhelサイトをそれぞれ N末、 C末に導入した PSYの断片を得た。これを pESC— UR Aの Sailおよび Nhelサイトに導入し、 pESC— PSYを作成し、既知の手法 (Eur. T. B iochem.. 267. 3543—3460, 2000)により j8—アミリン合成酵素活性を確認した。
[0040] (7)発現プラスミド pESC - PSY - CYP93E1の構築および形質転換酵母の作成 pESC— PSY及び pESC— CYP93E1を Sail及び Clalで消化した。得られた PSY を含む断片と CYP93E1を含む断片を連結することにより、 PSYと CYP93E1の共発 現プラスミド pESC— PSY— CYP93E1を構築した。これを酵母 GIL77株に Frozen— EZ Yeast Transformation IIを用いて導入し、形質転換体を得た。
[0041] (8) PSYおよび CYP93E1の共発現実験
炭素源として 2%グルコースを含む SC— U培地 20mlにへミン (最終濃度 13 gZ ml)、エルゴステロール (最終濃度 20 μ g/ml)、 Tween80 (最終濃度 5mgZml)を 加えた培地へ形質転換した酵母を植菌し、 30°C、 220rpmで 1日半培養した。培地 を炭素源として 2%ガラクトースを含む SC— U培地 20mlにへミン (最終濃度 13 g/ ml)、エルゴステロール (最終濃度 20 μ g/ml)、 Tween80 (最終濃度 5mgZml)を 加えた培地へと交換した後、さらに 30°C、 220rpmで 1日培養した。細胞を pH7. 5 の 50mMリン酸-カリウム緩衝液へ移し、へミン (最終濃度 13 gZml)及びダルコ一 ス(最終濃度 3%)を加え、さら〖こ 30°C、 220rpmで 1日インキュベートした。(4)にお ける実験手法と同様にァセチルイ匕した GC— MS分析用サンプルを調製した。対照実 験として、 pESC— URAを用いた形質転換体、 pESC— PSY、 pESC— CYP93E1を 用いた形質転換体を用いた形質転換体につ!ヽても同様の手法でサンプルを調製し た。これを 1000 μ 1のへキサンに溶解し、 1 μ 1を GC— MS分析に供した(条件は (4) 実験に同じ)。図 5に示すように pESC— PSY— CYP93E1形質転換酵母を用いた場 合のみ 3 β , 24—ジァセトキシー 12—ォレアネンに対応するピークが TIMで観測され た。ピーク面積比による定量解析の結果、本条件で 1L培養した場合、数百; z gの 3 β , 24-ジヒドロキシ 12-ォレアネンが得られることになる。
[0042] (9) GIL77ZPESC— PSY—CYP93E1の大量培養(1L)
500mlの三角フラスコに 250mlの炭素源として 2%ラフイノースを含む SC— U培地 250mlにへミン (最終濃度 13 g/ml)、エルゴステロール (最終濃度 20 μ g/ml) 、 TWeen80 (最終濃度 5mgZml)を加えた培地へ形質転換した酵母を植菌した。こ れを 4本作成し、全量で 1Lの培養を行った。 30°C、 220rpmで 20時間培養したのち 、ガラクトースを加え (最終濃度 2%)、さらに 30°C、 220rpmで 20時間培養した。細 胞全量を 100mlの pH7. 5の 50mMリン酸—カリウム緩衝液へ移し、へミン(最終濃度 13 gZml)及びグルコース(最終濃度 3%)をカ卩え、さらに 30°C、 220rpmで 1日ィ ンキュペートした。
[0043] (10) GIL77ZpESC— PSY— CYP93E1の 1L培養から生成物の単離
(9)で得た培養力も遠心により細胞を収穫し、 50mlの 40%水酸ィ匕カリウム水溶液 及び 50mlのメタノールをカ卩え、 1時間加熱還流を行った。 50mlのへキサンを用い脂
溶性画分の抽出を行った。へキサン画分は 50mlの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 で 3回十分に洗浄した。この操作を 3回繰り返し抽出を行い、約 23mgの脂溶性画分 を得た。
これを 2段階のシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。まず、 上記脂溶性画分をベンゼンに溶解し、シリカゲル FC— 40 (4g、和光純薬)、へキサン •酢酸ェチル溶媒系を用いて精製した。次に、当該画分をシリカゲル FC— 40 (2g)及 びベンゼン '酢酸ェチル溶媒系を用いて精製し、 0. 55mgの 3 j8 , 24—ジヒドロキシー 12—才レアネンを得た。
[0044] (11)発現プラスミド pESC— YUP43の構築
シロイヌナズナ由来の /3 アミリンを含む 9種のトリテルペンを与える多機能型トリテ ルペン合成酵素 YUP43 (Tetrahedron lett. . 41, 7705-7710, 2000)を組み 込んだプラスミドを铸型とし、配列番号 6、 7に示す、ポリペプチドの N末端と C末端に 相当するオリゴ DNAをプライマーとして、 PCR (ァニール温度 58°C、 30サイクル、宝 酒造社製 Ex Taq DNAポリメラーゼ)を行い、 Sail及び Nhelサイトをそれぞれ N末 、 C末に含む YUP43の断片を得た。これを pESC— URAの Sailおよび Nhelサイトに 導入し、 pESC - YUP43を作成し、既知の丰法 (Tetrahedron lett. . 41, 7705 - 7710, 2000)により多機能型トリテルペン合成酵素活性を確認した。
[0045] (12)発現プラスミド pESC— YUP43—CYP93E1の構築および形質転換酵母の作 成
pESC— YUP43及び pESC— CYP93E1を Sail及び Clalで消化した。 YUP43を 含む断片と CYP93E1を含む断片を連結することにより YUP43と CYP93E1を共発 現させるプラスミド pESC— YUP43— CYP93E1を構築した。これを酵母 GIL77株に Frozen— EZ Yeast Transformation IIを用いて導入し、开質転換体を得た。
[0046] ( 13) YUP43および配列番号 8のポリヌクレオチドの転写 ·翻訳産物のポリペプチド の共発現実験
(8)と同様の手法により、 pESC— URA、 pESC— YUP43、 pESC— CYP93E1、 p ESC— YUP43— CYP93E1、それぞれによる形質転換体つ!/、てサンプルを調製し た。これらを 1000 1のへキサンに溶解し、: 1を GC— MS分析に供した (条件は (4
)実験に同じ)。図 7に示すように pESC— YUP43— CYP93E 1形質転換酵母を用 ヽ た場合のみ、 TIMにおいて 3 β , 24 ジァセトキシー 12—才レアネンのピークが観測さ れた。 YUP43における j8—アミリンの生産量力 PSYのものより低いため、 3 β , 24— ジァセトキシー 12—才レアネンの産生量は pESC— PSY— CYP93E1形質転換体と比 較して低下した。一方、他のトリテルペン(ルぺオール、ブチロスペルモール、チルカ ラジェノーノレ、タラキサステロ一ノレ、シユードタラキサステロ一ノレ、ノ ウレエレノーノレ、 α アミリン、マルチフロレノール)の水酸ィ匕体と考えられるピークは検出限界以下で めつに。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲 を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明ら かである。
本出願は、 2004年 2月 25日出願の日本特許出願 (特願 2004-049123)に基づくもの であり、その内容はここに参照として取り込まれる。
産業上の利用可能性
[0047] 本発明により、ォレアナン型トリテルペンの 24位を水酸ィ匕する酵素を遺伝子工学的に 取り扱うことが可能となった。従って、当該水酸化酵素遺伝子を み込んだ細胞を用 い、例えば酵母などによる水酸ィ匕酵素の生産、水酸化反応の利用、植物トリテルペン の微生物生産などに利用可能である。また、水酸化酵素の遺伝子を植物に組み込 むことによりソャサポゲノールなどのトリテルペンの生産を増大させる等、農業分野で の利用可能性がある。
図面の簡単な説明
[0048] [図 1]は配列番号 8の翻訳産物による β アミリンの 24位水酸ィ匕活性 (iiudlm)を示す 。さらに詳しくは、生成物をァセチルイ匕後 GCMSで解析した mZZ = 218をモニター したマスク口マトグラムを表す。 A— Fは以下の結果を示す。 A: 3 j8 , 24-ジァセト キシ- 12-ォレアネンの標品 B :pESC- CYP93E1による形質転換酵母力 調製 した粗酵素液と j8 -アミリンを NADPH再生システム共存下反応させて得られる生成 物 C : Bの反応系から |8 -アミリンを除いて反応させた生成 D : Bの反応において 、熱変性させた粗酵素液を用いて反応させた生成物 E :pESC- CYP93E1による
形質転換酵母を、グルコースを添加して培養。他は Bと同一条件。 F:ボイドべクタ 一 pESC-URAによる形質転換酵母カゝら調製した粗酵素液を使用。他は Bと同一条 件。
[図 2]は配列番号 8の翻訳産物によるソフオラジオール 24位水酸ィ匕活性 (in vitro)を 表す。さらに詳しくは、生成物をァセチルイ匕後 GCMSで解析した mZZ = 216をモ- ターしたマスク口マトグラムを表す。 A— Fは以下の結果を示す。 A:トリァセチルソ ャサポゲノール Bの標品 B:pESC- CYP93E1による形質転換酵母力 調製した 粗酵素液と j8アミリンを NADPH再生システム共存下反応させて得られた生成物 C: Bの反応系力 ソフオラジオールを除 、て反応させた生成 D: Bの反応にぉ ヽ て、熱変性させた粗酵素液を用いて反応させた生成物 E :pESC- CYP93E1によ る形質転換酵母を、グルコースを添加して培養。他は Bと同一条件。 F:ボイドべク ター pESC-URAによる形質転換酵母カゝら調製した粗酵素液を使用。他は Bと同一 条件。
[図 3]は配列番号 8の翻訳産物による β アミリンに対する 24位水酸ィ匕活性 Qiud^) 生成物を示す。さら〖こ詳しくは、生成物をァセチルイ匕後 GC- MSで解析した TIMによ るクロマトグラムを示す。 A— Eは以下の結果を示す。 Α: 3 β , 24-ジァセトキシ -1 2-ォレアネンの標品(20pmol) B:pESC-CYP93Elによる形質転換酵母に β - アミリンを投与して得られた生成物 C : β -アミリンを投与しない場合。他は Βと同じ 。 D:形質転換酵母を、グルコースを添加して培養。他は Βと同一条件。 Ε:ボイ ドベクター pESC-URAによる形質転換酵母 β -アミリンを投与。他は Βと同一条件。
[図 4]は、配列番号 8の翻訳産物の β アミリン 24位水酸ィ匕活性 (iojdX2)を示す。 A および Bは以下の結果を示す。 A:図 3の Bにおいて検出した保持時間 15. 35分 のピークのマススペクトル B:図 3の Α(3 β , 24-ジァセトキシ- 12-ォレアネンの標 品)のマススぺクトノレ
[図 5]は CYP93E1と 13—アミリン合成酵素(PSY)の共発現による 3 β , 24—ジヒドロ キシー 12—才レアネンの生産を示す。さら〖こ詳しくは、各形質転換酵母 (GIL77)から 得られた脂溶性画分をァセチル化し、 GCMS解析による TIMによるクロマトグラムを 示す。 A— Eは以下の結果を示す。 Α: 3 β , 24-ジァセトキシ- 12-ォレアネンの
標品(20pmol) B:pESC-PSY-CYP93Elによる形質転換酵母の抽出物 C: pESC- PSYによる形質転換酵母の抽出物 D:pESC- CYP93E1による形質転 換酵母の抽出物 E:pESC-URAによる形質転換酵母の抽出物
[図 6]は GIL77ZPESC— PSY— CYP93E1の 1L培養から得た生成物の1 H— NMR を示す。
圆 7]は配列番号 8の翻訳産物と多機能型トリテルペン合成酵素 (YUP43)の共発現 による 3|8, 24—ジヒドロキシー 12—才レアネンの生産を示す。さら〖こ詳しくは、各形質 転換酵母 (GIL77)カゝら得られた脂溶性画分をァセチルイ匕し、 GCMS解析における TIMによるクロマトグラムを示す。 A— Eは以下の結果を示す。 A:3j8, 24-ジァ セトキシ- 12-ォレアネンの標品(20pmol) B:pESC— YUP43— CYP93E1によ る形質転換酵母の抽出物 C:pESC— YUP43による形質転換酵母の抽出物 D : pESC— CYP93E1による形質転換酵母の抽出物 E:pESC— Uraによる形質転 換酵母の抽出物