JPWO2005080572A1 - トリテルペン水酸化酵素 - Google Patents
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Abstract
Description
これまでにソヤサポゲノールBに関しては、抗補体活性、血小板凝集抑制作用(特開昭61-37749)(特許文献1)、抗腫瘍活性(特開平10-234396)(特許文献2)および肝保護作用(Bioorg. Med. Chem. Lett., 7, 85-88,1997)(非特許文献3)などが報告されており、医薬品もしくは医薬品原料としての有用性が期待されている。
ソヤサポゲノールBの生合成前駆体であるβ−アミリンは、メバロン酸経路により生成した2,3−オキシドスクアレンが閉環することにより生合成され、その後、2段階の水酸化反応を経てソヤサポゲノールBが生合成されると推定される。
実際、カンゾウの培養細胞由来の水酸化酵素を利用して、ソフォラジオールの24位を水酸化することによる、ソヤサポゲノールBの製造法が開示されている。(WO02/086142)(特許文献3)
1. 配列番号8で表されるポリヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつオレアナン型トリテルペンの24位を水酸化する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有する発現ベクター。
2. ポリヌクレオチドが配列番号8で表されるポリヌクレオチドである上記1に記載の発現ベクター。
3. 上記1または2記載の発現ベクターで宿主を形質転換した形質転換体。
4. 宿主が微生物である上記3記載の形質転換体。
5. 微生物が酵母である上記4記載の形質転換体。
6. 配列番号8で表されるポリヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつオレアナン型トリテルペンの24位を水酸化する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよびβ−アミリン合成酵素遺伝子を有する発現ベクター。
7. ポリヌクレオチドが配列番号8で表されるポリヌクレオチドである上記6に記載の発現ベクター。
8. 上記6または7記載の発現ベクターで宿主を形質転換した形質転換体。
9. 宿主が微生物である上記8記載の形質転換体。
10. 微生物が酵母である上記9記載の形質転換体。
11. 受託番号FERM BP−10201として寄託されているラノステロール合成酵素欠損酵母変異株。
12. 上記3から5のいずれかに記載の形質転換体を培養して、上記1に記載のポリペプチドを産生する工程を含むオレアナン型トリテルペンの24位を水酸化する活性を有するポリペプチドを製造する方法。
13. 上記8から10のいずれかに記載の形質転換体を培養して、
1)上記3に記載のポリペプチドを産生する工程および
2)β−アミリン合成酵素を産生する工程
を含むオレアナン型トリテルペンの24位を水酸化する活性を有するポリペプチドおよびβ−アミリン合成酵素を製造する方法。
14. 上記3から5のいずれかに記載の形質転換体をオレアナン型トリテルペンに作用させる工程を含む24位が水酸化されたオレアナン型トリテルペンの製造方法。
15. 上記8から10のいずれかに記載された形質転換体の培養生産による24位が水酸化されたオレアナン型トリテルペンの製造方法。
16. 上記11に記載の酵母変異株の培養生産による24位が水酸化されたオレアナン型トリテルペンの製造方法。
また、生産された酵素タンパク質又は該酵素タンパク質含む形質転換体を用いて、トリテルペンの24位を水酸化することが可能となった。また当該遺伝子とβ−アミリン合成酵素の遺伝子で形質転換体を用いることにより、24位が水酸化されたトリテルペンを直接培養生産することが可能となった。
24位が水酸化されるオレアナン型トリテルペンとしては、β−アミリンやソフォラジオールがあげられるが、本発明の方法により24位が水酸化される化合物であれば上記に限定されない。24位が水酸化されたトリテルペンとしては、ソヤサポゲノールAおよびBがあげられるが、本発明による酸化成績体であればソヤサポゲノールAおよびBに限定されない。
本発明によれば、シトクロームP450遺伝子CYP93E1のポリヌクレオチドおよびその均等体の転写・翻訳産物を利用して24位が水酸化されたオレアナン型トリテルペンを製造することができる。なお、均等体とは、同一機能を有し、シトクロームP450遺伝子CYP93E1に記載の配列の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を指す。
ハイブリダイゼーションは、モレキュラー・クローニング、ア・ラボラトリー・マニュアル((Molecular cloning、A Laboratory Manual、 T.マニアティス(T.Maniatis)他著、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、1989年発行)等に記載されている方法に準じて行うことができる。ハイブリダイズ可能なDNAとして具体的には、BLAST (National Center for Biotechnology Information)を用いて計算したときに、シトクロームP450遺伝子CYP93E1で表される塩基配列と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するDNAを挙げることができる。なお、本発明における相同性は、BLASTのパラメータをWordsize:3、Matrix:BLOSOM62、Gap Costs:Existence:11、Extension:1に設定したときの数値を表す。
また、「シトクロームP450遺伝子CYP93E1のポリヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつオレアナン型トリテルペンの24位を水酸化する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、具体的には、シトクロームP450遺伝子CYP93E1のポリヌクレオチド配列において、1若しくは複数のヌクレオチドが欠失、置換、挿入若しくは付加され、かつ、オレアナン型トリテルペンの24位を水酸化する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。シトクロームP450遺伝子CYP93E1のヌクレオチド配列において置換されるヌクレオチドの個数は、上記の相同性を満たし、かつ、オレアナン型トリテルペンの24位を水酸化する活性を有するポリペプチドをコードする数であれば特に限定されない。
シトクロームP450遺伝子CYP93E1のポリヌクレオチドに対する変異は、自然界において生じる変異のほかに、人為的な変異も含む。人為的に変異させる手段としては、シトクロームP450遺伝子CYP93E1のポリヌクレオチドを用いて、ランダム変異あるいは部位特異的変異を導入し、遺伝子工学的に、1又は複数のヌクレオチド残基が欠失、置換、挿入、付加の少なくとも1つがなされているポリヌクレオチドを得る方法が挙げられる。こうして得られた変異ポリヌクレオチドを利用することにより、本酵素の活性の至適温度、熱安定性、至適pH、pH安定性、基質特異性等の性質が異なったポリペプチドを得ることが可能となる。
さらに、24位が水酸化されたオレアナン型トリテルペンを産生し得る他の微生物、植物、及び、動物(好ましくはオレアナン型トリテルペン産生し得る、植物、より好ましくはマメ科植物、最も好ましくは大豆)に対してシトクロームP450遺伝子CYP93E1の塩基配列を有するヌクレオチドの一部又は全部(又は、その相補鎖)をプローブとして、ハイブリダイズを使用する手法(例えば、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法)、または、シトクロームP450遺伝子CYP93E1の塩基配列を有するヌクレオチドの一部又は全部(又は、その相補鎖)をプライマーとしてPCRを行う手法等によって、シトクロームP450遺伝子CYP93E1のポリヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつオレアナン型トリテルペンの24位を水酸化する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを得ることもできる。
また、上記ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド配列の情報を基にして、化学合成によって得ることもできる。この方法は、ジーン(Gene)、第60(1)巻、第115-127頁(1987)の記載を参照して行うことができる。
プロモーターとしては、大腸菌、糸状菌等の宿主細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、タカアミラーゼ遺伝子プロモーター、TEF1遺伝子プロモーター等の麹菌等に由来するプロモーター等を挙げることができる。
また、人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
組換えベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へポリヌクレオチドを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972) 〕等を挙げることができる。
プロモーターとしては、酵母菌株中で発現できるものであればいかなるものでもよい。
例えば、解糖系酵素遺伝子プロモーター、Galプロモーター等のプロモーターを挙げることができる。
組換えベクターの導入方法としては、酵母にポリヌクレオチドを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法〔Methods. Enzymol., 194, 182 (1990)〕、スフェロプラスト法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 1929 (1978) 〕、酢酸リチウム法〔ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(J. Bacteriol.)、153, 163 (1983)〕等を挙げることができる。
炭素源としては、ポテトデキストロース、グルコース、スクロース、可溶性デンプン、グリセリン、デキストリン、糖蜜、有機酸等を用いることができる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機塩若しくは有機酸のアンモニウム塩その他の窒素化合物、ペプトン、酵母エキス、コーンスティープリカー、カゼイン加水分解物、肉エキスを用いることができる。無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。
以下に本発明の実施例の概略を記載する。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
水浸14日後のダイズ(早生枝豆、アタリヤ農園)幼葉から、フェノール/クロロフォルム法により全RNAを抽出した。これを鋳型として、逆転写酵素SuperscriptII(GIBCOBRL製)と、配列番号1に示すプライマーを用いてcDNAを調製した。
上記(1)で調製したcDNAを鋳型とし、配列番号2と3に示す、ポリペプチドのN末端とC末端に相当する箇所のオリゴDNAをプライマーとして、アニール温度65℃でPCR(30サイクル、宝酒造社製Ex Taq DNAポリメラーゼ)を行い、CYP93E1(配列番号8)の全長クローンを得た。
上記(2)で得られた全長クローンを制限酵素SpeIとClaIで処理し、酵母発現ベクターpESC−URA(Stratagene社製)のSpeIとClaIサイトに組み込んだ。これをpESC−CYP93Eとした。pESC−CYP93Eを、酵母INVSC2株(Invitrogen社)にFrozen−EZ Yeast Transformation II(Zymo Reaseach 社)を用いて導入した。
グルコースの代わりに2%ラフィノースを含むSC−U培地(Methods in Yeast Genetics, A Laboratory Course Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press,1990)20mlに形質転換酵母を植菌し、30℃、220rpmで18時間培養した。ヘミン(最終濃度13μg/ml)とガラクトース(最終濃度2%)を加え、同条件でさらに20時間培養した。遠心により細胞を収穫し、2mlのスクリューバイアルへと移し、100μlの抽出緩衝液(pH7.5の50mMリン酸―カリウム緩衝液に10%スクロース、1mM EDTA及び14mMの2−メルカプトエタノールを加えたもの)を加え、再懸濁した。ここに希塩酸にて洗浄した0.4−0.6mm径のガラスビーズ(井内盛栄堂)を適量加えた。4℃に冷却し、MINI−BEADBEADER(BIOSPEC社)を用いて細胞の破砕を行った。ここにさらに400μlの抽出緩衝液を加えよく攪拌した後、4℃に冷却しながら3500gで5分間遠心分離を行い、約400μlの上清を粗酵素液として回収した。それに対し、100μlの濃縮反応緩衝液(抽出緩衝液に10mM NADPH、75mM グルコース−6−リン酸(G6P)、2.5U/ml グルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)を加えたもの)および5μlの10mMのβ−アミリン・メタノール溶液を加えた。これを30℃、6時間反応させた。12N塩酸10μlを添加した後、500μlの酢酸エチルを用いて脂溶性成分の抽出を2回行い濃縮した。20μlのピリジン及び無水酢酸を加えて一晩放置することにより抽出物のアセチル化を行った。これに200μlの50%メタノール水溶液を加えて反応を停止し、200μlのヘキサンを用いて抽出を2回行い濃縮した(1))。対照実験として、2)pESC−URAを用いた形質転換体由来の粗酵素液を用いたもの、3)基質であるβ−アミリンを加えなかったもの、4)100℃、5分で熱処理した粗酵素液で反応を行ったもの、5)pESC−CYP93E1のGAL1プロモーター抑制のためガラクトースの代わりに同量のグルコースを加えたものについても同様の手法でサンプルを調製した。これを20μlのヘキサンに溶解し、1μlをGC−MS分析(島津製作所 ガスクロマトグラフ質量分析計 GCMS−QP2010, カラム:RESTEK社 Rtx−5MS,内径0.25mm 膜厚0.25μm 長さ30m, 昇温プログラム:230℃で3分間ホールド、 10℃/分で昇温、 330℃で8分間ホールド)に供した。全イオンモニター(TIM)、及び、m/z=218(3β,24−ジアセトキシ−12−オレアネンのベースピーク)のマスクロマトグラムで生成物の有無を解析した。TIMでは、3β,24−ジアセトキシ−12−オレアネンの生成は認められなかった(結果未記載)。しかしながら、m/Z=218のマスクロマトグラムにおいて3β,24−ジアセトキシ−12−オレアネンが、1)の条件で観測された(図1)。この結果よりCYP93E1翻訳産物はβ−アミリンへの24位水酸化活性を有することを確認した。
次に、ソフォラジオールに対する反応性を検討するために、ソフォラジオール(5μl 10mM)を基質として、同様に酵素反応を行い、上記と同様にGCMS解析を行った。上記の1)の反応条件の生成物のマスクロマトグラム解析(m/Z=216 トリアセチルソヤサポゲノールBのベースピーク)において、トリアセチルソヤサポゲノールBのピークが観測された(図2)。これより、CYP93E1翻訳産物は、β−アミリンのみならず、ソフォラジオールに対しても、24位水酸化活性を有することが明らかとなった。
グルコースの代わりに2%ラフィノースを含むSC−U培地20mlに形質転換酵母を植菌し、30℃、220rpmで18時間培養した。ヘミン(最終濃度13μg/ml)とガラクトース(最終濃度2%)を加え、さらに基質として10μlの10mMのβ−アミリン・メタノール溶液を加えた。酸素を供給するために、ファルコンチューブの上部を綿栓で封じ、無菌的かつ好気的にさらに24時間培養した。遠心により細胞を収穫し、2mlのスクリューバイアルへ移した。これに250μlの40%水酸化カリウム水溶液及び250μlのメタノールを加え、十分に攪拌し、100℃、5分で熱処理した。500μlのヘキサンを用いて脂溶性成分の抽出を2回行い濃縮した。20μlのピリジン及び無水酢酸を加えて一晩放置することにより抽出物のアセチル化を行った。これに200μlの50%メタノール水溶液を加えて反応を停止し、200μlのヘキサンを用いて抽出を2回行い濃縮した(1))。対照実験として、2)pESC−URAを用いた形質転換体を用いたもの、3)基質であるβ−アミリンを加えなかったもの、4)pESC−CYP93E1のGAL1プロモーター抑制のためガラクトースの代わりに同量のグルコースをくわえたものについても同様の手法でサンプルを調製した。これを10μlのヘキサンに溶解し、1μlを(4)における条件と同条件でGC−MS分析に供した(条件は(4)の実験と同じ)。1)の条件において3β,24−ジアセトキシ−12−オレアネンのピークがTIMで観測され(図3)、かつ、そのピークのMS開裂パターンは標品と一致した(図4)。TIMのピーク面積比による定量結果から、本条件と同一の条件で1L培養した場合(約2mgのβ−アミリンを投与)、数μgの3β,24−ジヒドロキシ−12−オレアネンが得られることになる。
エンドウ由来のβ−アミリン合成酵素PSY(AB034802、Eur.J.Biochem.267,3543−3460,2000)を組み込んだプラスミドを鋳型に、配列番号4、5に示す、ポリペプチドのN末端とC末端に対応するオリゴDNAをプライマーとして、アニール温度58℃でPCR(30サイクル、宝酒造社製Ex Taq DNAポリメラーゼ)を行い、SalI及びNheIサイトをそれぞれN末、C末に導入したPSYの断片を得た。これをpESC−URAのSalIおよびNheIサイトに導入し、pESC−PSYを作成し、既知の手法(Eur.J.Biochem., 267,3543−3460,2000)によりβ−アミリン合成酵素活性を確認した。
pESC−PSY及びpESC−CYP93E1をSalI及びClaIで消化した。得られたPSYを含む断片とCYP93E1を含む断片を連結することにより、PSYとCYP93E1の共発現プラスミドpESC−PSY−CYP93E1を構築した。これを酵母GIL77株にFrozen−EZ Yeast Transformation IIを用いて導入し、形質転換体を得た。
炭素源として2%グルコースを含むSC−U培地20mlにヘミン(最終濃度13μg/ml)、エルゴステロール(最終濃度20μg/ml)、Tween80(最終濃度5mg/ml)を加えた培地へ形質転換した酵母を植菌し、30℃、220rpmで1日半培養した。培地を炭素源として2%ガラクトースを含むSC−U培地20mlにヘミン(最終濃度13μg/ml)、エルゴステロール(最終濃度20μg/ml)、Tween80(最終濃度5mg/ml)を加えた培地へと交換した後、さらに30℃、220rpmで1日培養した。細胞をpH7.5の50mMリン酸−カリウム緩衝液へ移し、ヘミン(最終濃度13μg/ml)及びグルコース(最終濃度3%)を加え、さらに30℃、220rpmで1日インキュベートした。(4)における実験手法と同様にアセチル化したGC−MS分析用サンプルを調製した。対照実験として、pESC−URAを用いた形質転換体、pESC−PSY、pESC−CYP93E1を用いた形質転換体を用いた形質転換体についても同様の手法でサンプルを調製した。これを1000μlのヘキサンに溶解し、1μlをGC−MS分析に供した(条件は(4)実験に同じ)。図5に示すようにpESC−PSY−CYP93E1形質転換酵母を用いた場合のみ3β,24−ジアセトキシ−12−オレアネンに対応するピークがTIMで観測された。ピーク面積比による定量解析の結果、本条件で1L培養した場合、数百μgの3β,24−ジヒドロキシ−12−オレアネンが得られることになる。
500mlの三角フラスコに250mlの炭素源として2%ラフィノースを含むSC−U培地250mlにヘミン(最終濃度13μg/ml)、エルゴステロール(最終濃度20μg/ml)、Tween80(最終濃度5mg/ml)を加えた培地へ形質転換した酵母を植菌した。これを4本作成し、全量で1Lの培養を行った。30℃、220rpmで20時間培養したのち、ガラクトースを加え(最終濃度2%)、さらに30℃、220rpmで20時間培養した。細胞全量を100mlのpH7.5の50mMリン酸―カリウム緩衝液へ移し、ヘミン(最終濃度13μg/ml)及びグルコース(最終濃度3%)を加え、さらに30℃、220rpmで1日インキュベートした。
(9)で得た培養から遠心により細胞を収穫し、50mlの40%水酸化カリウム水溶液及び50mlのメタノールを加え、1時間加熱還流を行った。50mlのヘキサンを用い脂溶性画分の抽出を行った。ヘキサン画分は50mlの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で3回十分に洗浄した。この操作を3回繰り返し抽出を行い、約23mgの脂溶性画分を得た。
これを2段階のシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。まず、上記脂溶性画分をベンゼンに溶解し、シリカゲルFC−40(4g、和光純薬)、ヘキサン・酢酸エチル溶媒系を用いて精製した。次に、当該画分をシリカゲルFC−40(2g)及びベンゼン・酢酸エチル溶媒系を用いて精製し、0.55mgの3β,24−ジヒドロキシ−12−オレアネンを得た。
シロイヌナズナ由来のβ−アミリンを含む9種のトリテルペンを与える多機能型トリテルペン合成酵素YUP43(Tetrahedron lett., 41,7705−7710,2000)を組み込んだプラスミドを鋳型とし、配列番号6、7に示す、ポリペプチドのN末端とC末端に相当するオリゴDNAをプライマーとして、PCR(アニール温度58℃、30サイクル、宝酒造社製Ex Taq DNAポリメラーゼ)を行い、SalI及びNheIサイトをそれぞれN末、C末に含むYUP43の断片を得た。これをpESC−URAのSalIおよびNheIサイトに導入し、pESC−YUP43を作成し、既知の手法(Tetrahedron lett., 41,7705−7710,2000)により多機能型トリテルペン合成酵素活性を確認した。
pESC−YUP43及びpESC−CYP93E1をSalI及びClaIで消化した。YUP43を含む断片とCYP93E1を含む断片を連結することによりYUP43とCYP93E1を共発現させるプラスミドpESC−YUP43−CYP93E1を構築した。これを酵母GIL77株にFrozen−EZ Yeast Transformation IIを用いて導入し、形質転換体を得た。
(8)と同様の手法により、pESC−URA、pESC−YUP43、pESC−CYP93E1、pESC−YUP43−CYP93E1、それぞれによる形質転換体ついてサンプルを調製した。これらを1000μlのヘキサンに溶解し、1μlをGC−MS分析に供した(条件は(4)実験に同じ)。図7に示すようにpESC−YUP43−CYP93E1形質転換酵母を用いた場合のみ、TIMにおいて3β,24−ジアセトキシ−12−オレアネンのピークが観測された。YUP43におけるβ−アミリンの生産量がPSYのものより低いため、3β,24−ジアセトキシ−12−オレアネンの産生量はpESC−PSY−CYP93E1形質転換体と比較して低下した。一方、他のトリテルペン(ルペオール、ブチロスペルモール、チルカラジエノール、タラキサステロール、シュードタラキサステロール、バウレエレノール、α−アミリン、マルチフロレノール)の水酸化体と考えられるピークは検出限界以下であった。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2004年2月25日出願の日本特許出願(特願2004-049123)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
Claims (16)
- 配列番号8で表されるポリヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつオレアナン型トリテルペンの24位を水酸化する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有する発現ベクター。
- ポリヌクレオチドが配列番号8で表されるポリヌクレオチドである請求項1に記載の発現ベクター。
- 請求項1または2記載の発現ベクターで宿主を形質転換した形質転換体。
- 宿主が微生物である請求項3記載の形質転換体。
- 微生物が酵母である請求項4記載の形質転換体。
- 配列番号8で表されるポリヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつオレアナン型トリテルペンの24位を水酸化する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよびβ−アミリン合成酵素遺伝子を有する発現ベクター。
- ポリヌクレオチドが配列番号8で表されるポリヌクレオチドである請求項6に記載の発現ベクター。
- 請求項6または7記載の発現ベクターで宿主を形質転換した形質転換体。
- 宿主が微生物である請求項8記載の形質転換体。
- 微生物が酵母である請求項9記載の形質転換体。
- 受託番号FERM BP−10201として寄託されているラノステロール合成酵素欠損酵母変異株。
- 請求項3から5のいずれかに記載の形質転換体を培養して、請求項1に記載のポリペプチドを産生する工程を含むオレアナン型トリテルペンの24位を水酸化する活性を有するポリペプチドを製造する方法。
- 請求項8から10のいずれかに記載の形質転換体を培養して、
1)請求項3に記載のポリペプチドを産生する工程および
2)β−アミリン合成酵素を産生する工程
を含むオレアナン型トリテルペンの24位を水酸化する活性を有するポリペプチドおよびβ−アミリン合成酵素を製造する方法。 - 請求項3から5のいずれかに記載の形質転換体をオレアナン型トリテルペンに作用させる工程を含む24位が水酸化されたオレアナン型トリテルペンの製造方法。
- 請求項8から10のいずれかに記載された形質転換体の培養生産による24位が水酸化されたオレアナン型トリテルペンの製造方法。
- 請求項11に記載の酵母変異株の培養生産による24位が水酸化されたオレアナン型トリテルペンの製造方法。
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